ゲスト
(ka0000)
【CF】輝かんばかりのツリー
マスター:御影堂

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/12/22 22:00
- 完成日
- 2014/12/29 15:05
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
12月、リアルブルーでは多くの街がどこもかしこもクリスマスに染まるこの時期、クリムゾンウェストでもまた同じようにクリスマスムードに包まれる。
それはここ、崖上都市「ピースホライズン」でも変わらない。
むしろどこもかしこも華やかに、賑やかにクリスマス準備が進められていて。
リアルブルーの街に輝くという電飾の代わりに、ピースホライズンを彩るのは魔導仕掛けのクリスマス・イルミネーション。
立ち並ぶ家や街の飾りつけも、あちらこちらが少しずつクリスマスの色に染まっていく。
特に今年は、去年の秋に漂着したサルヴァトーレ・ロッソによって今までになく大量に訪れたリアルブルーからの転移者たちが、落ち着いて迎えられる初めてのクリスマス。
ハンターとして活躍している者も多い彼らを目当てにしてるのか、少しばかり変わった趣向を凝らす人々もいるようで。
果たして今年はどんなクリスマスになるのか、楽しみにしている人々も多いようだった。
●
クリスマス需要が高まるに連れて、とある商売に活気が付いていた。
それは、木こりである。
何故かモミの木の発注が増えたため、連日のように斬れそうな木を探して木こりは山を訪れる。雪が降る山の中を、毛皮で作られた靴で踏みしめれば寒さが身にしみる。
「なんだかわからんが、稼ぎどきだ。しっかりとやらねぇとな」
隊長格の木こりを中心に、山の中を見渡しながら進む。立派な木であればある程、高値で売れるのは言うまでもない。逆に、弱々しい木や子供の木を伐るわけにもいかないのだった。
木こりであればこそ、木々の状態を見極めて伐採しなければならない。
ベテランの男たちは、そこをしっかりと極めていた。頼もしいことこの上ない。
「隊長、今日、明るくないですか?」
「ん?」
隊員の言葉に、隊長格の男は髭を撫で付けながら空を見上げる。ここのところ、曇天が続く空は相変わらず太陽を隠していた。
それでも、昼間は明るいのだが、確かに隊員が告げるように連日よりも明るく思えた。
「気のせい……というわけでもねぇな」
光源を探すように見渡せば、遠方で光り輝く何かが見えた。そいつの光がここまで届いているのだろう。
この山は木こり達の管理下にあるはずで、他者の立ち入りは原則禁じている。また、野生動物が火やライトのようなものを扱えるはずがない。野盗の類が紛れ込んだに違いない、と結論づけた隊長は猟銃を手にするように命じた。
クマや狼が時折現れる山であること、野盗ぐらいであれば追い返せるようにと全員用意がある。弾を込め、互いに視線を交わす。
「……眩しいな」と近づくにつれて、強くなっていく光に目を背けたくなる。野盗にしては、あまりにも不用心に思えた。目立たないようにするのが常道であるにも関わらず、この光源は「ここにいるぞ」とアピールしているようだ。
木々の間をすり抜け、この光の主を見定めた瞬間、隊長の口が引きつった。
「は?」
目の前に立ち現れたのは、立派に育ったモミの木だった。
ただし、とても素晴らしい笑顔が幹の部分にくっついていた。そして、枝葉には光り輝く謎の球が無数にくっついていた。
それが複数群れをなしていたのだ。
笑い声のような不気味な音を発しながら、モミの木は一斉に木こり達をまっすぐ見つめた。
「うわぁあああああああ!?」と声を荒らげた木こりが、たまらず猟銃を発砲した。弾丸を受けてなお、モミの木は超笑顔を崩さずにいた。
「待て! 騒ぐな!」と隊長が制するのも聞かず、たまらなくなった木こり達が引き金を引く。
超笑顔のままモミの木は、根っこをもぞもぞと動かして、まっすぐ向かって来るではないか。
隊長が例の音に顔を歪ませ、全員に退避を呼びかける。商売道具の斧も投げ捨て、身を軽くしながら木こり達は逃げ出した。
例の音と光だけが、追ってくるように感じて、下山してもなお男たちは震えが止まらなかったという。
●
「由々しき事態なのです」
渋面を作って、腕を組むのはピースホライズンの材木問屋である。
クリスマスにおけるモミの木の取り扱いも、行っていた。
しかし、契約していた木こり達が涙ながらに用意ができないと訴えてきたのだ。
理由を聞けば聞くほどに、材木問屋の顔は渋くなっていったのである。
「このままでは……クリスマスツリーが間に合わないのです」
ですます口調であるが、この材木問屋は小太りのオッサンである。
決して萌えキャラではないので注意されたい。
「材木問屋のプライドとして、それだけは避けねばならぬのです!」
椅子を倒す勢いで立ち上がり、材木問屋は宣言する。そして、すぐさま部下を呼びつけるとハンターオフィスへ向かわせるのだった。
12月、リアルブルーでは多くの街がどこもかしこもクリスマスに染まるこの時期、クリムゾンウェストでもまた同じようにクリスマスムードに包まれる。
それはここ、崖上都市「ピースホライズン」でも変わらない。
むしろどこもかしこも華やかに、賑やかにクリスマス準備が進められていて。
リアルブルーの街に輝くという電飾の代わりに、ピースホライズンを彩るのは魔導仕掛けのクリスマス・イルミネーション。
立ち並ぶ家や街の飾りつけも、あちらこちらが少しずつクリスマスの色に染まっていく。
特に今年は、去年の秋に漂着したサルヴァトーレ・ロッソによって今までになく大量に訪れたリアルブルーからの転移者たちが、落ち着いて迎えられる初めてのクリスマス。
ハンターとして活躍している者も多い彼らを目当てにしてるのか、少しばかり変わった趣向を凝らす人々もいるようで。
果たして今年はどんなクリスマスになるのか、楽しみにしている人々も多いようだった。
●
クリスマス需要が高まるに連れて、とある商売に活気が付いていた。
それは、木こりである。
何故かモミの木の発注が増えたため、連日のように斬れそうな木を探して木こりは山を訪れる。雪が降る山の中を、毛皮で作られた靴で踏みしめれば寒さが身にしみる。
「なんだかわからんが、稼ぎどきだ。しっかりとやらねぇとな」
隊長格の木こりを中心に、山の中を見渡しながら進む。立派な木であればある程、高値で売れるのは言うまでもない。逆に、弱々しい木や子供の木を伐るわけにもいかないのだった。
木こりであればこそ、木々の状態を見極めて伐採しなければならない。
ベテランの男たちは、そこをしっかりと極めていた。頼もしいことこの上ない。
「隊長、今日、明るくないですか?」
「ん?」
隊員の言葉に、隊長格の男は髭を撫で付けながら空を見上げる。ここのところ、曇天が続く空は相変わらず太陽を隠していた。
それでも、昼間は明るいのだが、確かに隊員が告げるように連日よりも明るく思えた。
「気のせい……というわけでもねぇな」
光源を探すように見渡せば、遠方で光り輝く何かが見えた。そいつの光がここまで届いているのだろう。
この山は木こり達の管理下にあるはずで、他者の立ち入りは原則禁じている。また、野生動物が火やライトのようなものを扱えるはずがない。野盗の類が紛れ込んだに違いない、と結論づけた隊長は猟銃を手にするように命じた。
クマや狼が時折現れる山であること、野盗ぐらいであれば追い返せるようにと全員用意がある。弾を込め、互いに視線を交わす。
「……眩しいな」と近づくにつれて、強くなっていく光に目を背けたくなる。野盗にしては、あまりにも不用心に思えた。目立たないようにするのが常道であるにも関わらず、この光源は「ここにいるぞ」とアピールしているようだ。
木々の間をすり抜け、この光の主を見定めた瞬間、隊長の口が引きつった。
「は?」
目の前に立ち現れたのは、立派に育ったモミの木だった。
ただし、とても素晴らしい笑顔が幹の部分にくっついていた。そして、枝葉には光り輝く謎の球が無数にくっついていた。
それが複数群れをなしていたのだ。
笑い声のような不気味な音を発しながら、モミの木は一斉に木こり達をまっすぐ見つめた。
「うわぁあああああああ!?」と声を荒らげた木こりが、たまらず猟銃を発砲した。弾丸を受けてなお、モミの木は超笑顔を崩さずにいた。
「待て! 騒ぐな!」と隊長が制するのも聞かず、たまらなくなった木こり達が引き金を引く。
超笑顔のままモミの木は、根っこをもぞもぞと動かして、まっすぐ向かって来るではないか。
隊長が例の音に顔を歪ませ、全員に退避を呼びかける。商売道具の斧も投げ捨て、身を軽くしながら木こり達は逃げ出した。
例の音と光だけが、追ってくるように感じて、下山してもなお男たちは震えが止まらなかったという。
●
「由々しき事態なのです」
渋面を作って、腕を組むのはピースホライズンの材木問屋である。
クリスマスにおけるモミの木の取り扱いも、行っていた。
しかし、契約していた木こり達が涙ながらに用意ができないと訴えてきたのだ。
理由を聞けば聞くほどに、材木問屋の顔は渋くなっていったのである。
「このままでは……クリスマスツリーが間に合わないのです」
ですます口調であるが、この材木問屋は小太りのオッサンである。
決して萌えキャラではないので注意されたい。
「材木問屋のプライドとして、それだけは避けねばならぬのです!」
椅子を倒す勢いで立ち上がり、材木問屋は宣言する。そして、すぐさま部下を呼びつけるとハンターオフィスへ向かわせるのだった。
リプレイ本文
●
ピースホライズン近郊。
一面の銀世界、木々も白く枝葉を染める山の中に、ハンターたちは足跡を着ける。
白い息を吐きながら、夢路 まよい(ka1328)はふと隣を行くヴィルマ・ネーベル(ka2549)を見上げた。
「ん~っ、ねえねえ、ヴィルマ。何だか動きがぎこちないよね?」
「そ、そうかのぅ」
ヴィルマはほんのり頬を赤らめて、顔を背けた。
防寒着の下からわずかに飛び出ているフリルを、まよいはじっと見つめる。
「な、何かのぅ」
「ん~ん、何でもないよ~」
笑顔で先を行くまよいに、ヴィルマは安堵の息を投げかけた。
奇声をあげる木への防護策として、ゴシックドレスを着込んでいる。この歳になってゴシックドレスを着ることに、ヴィルマはいささか恥ずかしくもあるのであった。
「ツリーのないクリスマスなんてお酒のない忘年会みたいなものだよ! 味気ないよ!」
ヴィルマたちの少し前を行く、テトラ・ティーニストラ(ka3565)はやる気に満ちていた。
手裏剣片手に、意気揚々と前衛に追いついた。
というより、コリーヌ・エヴァンズ(ka0828)たちが立ち止まっていた。
「明るい一体が見えるね。戦闘準備だよ」
振り返りざまにコリーヌが告げる。
遠方から風の音に紛れて、笑い声のような音が響く。
「木なのに笑う、奇音を出すと何とも不気味かつ愉快なものだねぇ。まぁ、脅威なのに変わりないかな」
壬生 義明(ka3397)はそう告げながら、耳栓を取り出す。
コリーヌも耳栓を取り付けながら、
「なるべく聞こえなくても問題のない動きをするつもり―。なので攻撃は遠慮なくなんだよー」
と後衛へ投げかける。
「目配せとかで示し合わせるから、大丈夫だよ―」
そういいながら、まよいは敵影をすっと望み見る。
「あははっ、変な雑魔! おもしろーい」
見てくれに無邪気な反応を示す、まよいである。
「気持ち悪いなの! こんなツリーちっちゃい子が泣いちゃうなの」
アルナイル・モーネ(ka0854)は笑うどころではない。
「ばっさり倒して報酬しっかり貰うなのっ」と気合充分だ。
「我は大丈夫そうじゃから、そなたにこれを預けておくぞ」
ヴィルマは耳栓をアルナイルに手渡す。
ありがとうなのとお礼を言いながら、装着するのであった。
●
コリーヌ、アルナイル、義明。
まずは前衛組の三人が、全力で木々の足止めに入る。木々は一体を中心に、左右に広がりをもたせていた。
中心となる一体が、わずかに味方陣営に近い。
「こいつをまず狙うぞ」とハンドサインを出しながら、義明がまず接敵を果たす。
目の前に、超笑顔のひっついた幹が現れるが、自身に流し込んだマテリアルの力を借りて耐え切る。
だが、油断すると奇面から目が離せなくなりそうだ。
コリーヌは側面から回りこむように、動き射線をあける。
「なんだか笑顔見てるとイラつくの」
近づこうとするだけで、その奇面は神経を逆なでする。
アルナイルはグッと堪えるべく、
「こういうときは、お姉ちゃんのこと考えるの」と思考を切り替える。
そんなアルナイルの後ろから、テトラが半身ずらして狙いをつけていた。
「ツリーのためにも、手裏剣でザクザク飾り付けしちゃうんだから!」
間合いに入ったところで、手裏剣にマテリアルを込める。
「やはっ」と笑いかけながら、構えて腕を振るう。
「愉快なツリーさんたち、手裏剣のデコレーションはいかが?」
しかし、手裏剣は空を切った。カサカサと木々をこする音を立てて、素早く木は避けてみせた。
木なのに素早い、しかも、笑顔だった。
「なんかムカつくよ! その不気味な笑い、絶対、あたしが凍り付かせてあげるよっ!」
気合を入れなおすテトラの後方では、ヴィルマとまよいが臨戦態勢に入っていた。
ヴィルマはやや前のめりに踏み出し、状況を見定める。
「群れると異質な雰囲気がさらに割増される気がするのぅ」
感想をこぼしつつ、義明に向けて杖をかざす。
風をまとわせ、義明の動きを助ける。
「ん~っ」と唸っていたまよいは、ヴィルマに目配せしつつ接敵されている木に細身の杖を向ける。
「雑魔さんたち、枝ぼうぼうで伸び放題みたいだから、私が散髪したげるね」
惜しみなく気を集中し、枝葉の部分に風刃を放つ。
だが、こちらも幹をしならせモミの木はかわし切る。
「大人しくしてくれないと、切れないよ~?」
文句を述べたところで、聞き入れてくれるわけがない。
モミの木は目の前の露を払うべく、根を振り回し義明を襲う。
「……っと」
予想以上に早い動きにも、何とか受け身を取る。
胴部への攻撃は、かろうじて受けきることが出来た。
「おっと、危ないんだよー」
両翼から接敵しているコリーヌと義明めがけ、光弾が飛び交う。
動物霊の力を借り、コリーヌは雪の上を跳ねる。
義明もヴィルマから受けた風が、光弾を逸らしてくれた。だが、被るように放たれた二発目を足元に食らう。
「ふぅ、こいつはきついね」
調子を確かめながら、自身の動きを補助するようにマテリアルを流しこむのだった。
●
「下手に野放しにすると、後ろが危ないんだよね」
義明はコリーヌとアイコンタクトを交わし、側面から回り込もうとしていたモミの木に目標を変える。
接近に合わせ、再度マテリアルを重ねて流入させる。
コリーヌは義明の動きを受け、近づきつつあったアルナイルにサインをとばす。
「任せてもらって大丈夫なの!」
OKサインに頷いて、コリーヌは義明とは逆側に向かう。
踏み込みと同時に、大きく振りかぶった拳を叩き込んでやる。
「ふっふふー……今すぐにそのにやけフェイスを潰してあげるんだよー!」
小刻みに身体を左右に揺らし、構え直すコリーヌであった。
あいた場所へは逃すまいと、アルナイルが潜り込む。
目の前に現れた奇面に、アルナイルは後ずさりかけた。
「あぁ……お姉ちゃん」とすかさずアルナイルは姉のことに意識を飛ばす。
ドジなお姉ちゃんのことだから、どこかで転んでないかな……とか。
お姉ちゃんのために早く帰らないと、と決意を新たにしたり……と、思いを馳せたところで、
「くぁwせdrftgyふじこlp!!」
「うわぁ!?」
接近したことにより笑い声はより明瞭になる。耳栓で抑えていても、幾ばくかは聞こえるのだ。
姉から意識を強制的に戻させられたアルナイルの刀は空を切る。
「今度こそ、さっぱりしてもらうからね」
「耳障りな声も根本から留めさせてもらうのじゃ」
アルナイルへモミの木が、根をしならせている隙を狙い、後衛組が風刃で斬りかかる。
まよいの刃はわずかにそれ、幹に大きな傷を付けた。ヴィルマの刃はといえば、中央に作られた笑顔を斜めに切り裂いていた。
それでも崩れない笑顔の造形には、一番近くにいたアルナイルが小さな悲鳴をあげていた。
その悲鳴を耳にしながら、テトラは、別のモミの木に意識を向けていた。
義明が押さえた右舷の一体とは、別の一体だ。
光弾をまき散らしながら、次第に近づきつつあるのだ。だが、まずはアルナイルの眼前にいる一体。
こいつを落とすことが先決だと、テトラは手裏剣を構える。
「っせい!」
シュッシュと風を切りながら、回転する手裏剣がモミの木の注意を引いた。
ある種の陽動、幹の顔がそちらに向いたことでアルナイルの呪縛が解けたのである。
「こんな木に構ってる暇は……ないのっ!」
雪を踏みしめ、構え直したところから、予備動作を感じさせることなく刀を振るう。
マテリアルが循環し、洗練さに磨きがかかる。
振り返るより早く、ヴィルマの付けた顔面の傷がより大きく切り開かれた。
「まずは、一体……なの」
ぐらついた瞬間、乾いた音を立ててモミの木は真っ二つに倒れるのであった。
●
中心を失ったモミの木は、左右から挟み込むような動きを加速させていた。
左舷の敵をコリーヌとアルナイルが、右舷を義明とテトラが抑えに入る。
だが、接敵すれば当然の如く、奇声は大きくなり奇面を見つめることになる。
「うぐっ」
動きの乱れをつかれ、光弾を浴び、義明は呻き声をあげる。
それでも一体ずつ抑えざるをえない状況では、援護も期待できない。
「わーーーーっ!!」と尋常ならぬ声を聞き、視線を送れば、コリーヌが叫んでいた。
何をやっているんだと思ったが、どうやら自身の声で奇声をかき消すつもりらしい。
「なるほど、ね」
気合を込めるにもうってつけだと、考えながら拳へとマテリアルを込めていく。
武道に通じる声を発し、一気に叩き込むのである。
同じく右舷のテトラは、避けることに集中力を割いていた。
「……っ。あたしは美少女だもん。怖くなんか、ないよっ!!」
美少女ならば怖がった方が、ヒロインっぽくあるのではないか。
だが、声に出しているということはお察しなのかもしれない。
「よっ、ほっ、それ」
軽快に転がっていた倒木や、岩を利用してモミの木の攻撃を避ける。
かといって、自身から注意を外されるのもまずいので牽制に手裏剣を時たま放つ。
「ここを抜けられと、困るからね」
周囲を見定め、一定の距離でテトラは戦線を維持する。
前線組の中で、真っ先にこの拮抗状態を脱したのはコリーヌだった。
件の気合の一声で、辛くも奇声を防ぎ、気合で奇面の恐怖を脱していた。
拳一つを、何度も何度も何度も何度も、執拗に叩き込んで顔面をフルボッコしていた。
「さぁ、終わりなんだよ!」
明らかに動きが鈍ってきたモミの木に、しかし、容赦はしない。
笑顔はすでに、叩きこまれた拳によって崩されていた。
えぐり込むように放たれた、最後の一撃はミシッという音をたてて、木をへし折るのだった。
「油断大敵、次なんだよ」
起き上がらないのを確認し、反転、右舷へと向かう。
「おねぇちゃーーーん!!」
愛があふれる叫びで奇声を吹き飛ばし、アルナイルは日本刀を振るっていた。
これでテトラを除き、接敵している面々が全員叫んでいることになる。
「あははっ、すごい光景! 面白~いっ!」
無邪気な感想を零すまよいが、アルナイルの堰き止める木を狙う。
風の刃で今度こそ、枝葉をきりおとしていた。光の弾が反応して、空中で弾けることもあったが、被害には至っていない。
「クリスマスは笑い声が似合う行事とはいえ、そなた等のような不気味な輩に用はないのじゃ」
ツリーの奇声が叫び声に混じって、漏れ聞こえてくるのにヴィルマはそう告げる。
「あまり、叫び合うのも似合わないしのぅ」とこの戦いの光景にも苦笑する。
そうであるならば、さっさと倒すのが本筋というものだ。
燃え盛る炎の矢を紡ぎ、モミの木へと放つ。
「派手に燃え尽きて消えるがいい、雑魔共」
まよいに伐採され、すっきりとした頭部へと炎の矢が突き刺さる。
一瞬炎上したのち、黒き跡を残してモミの木の動きが止まった。
眼前にいたアルナイルが刀をおさめて、
「倒せたみたいだよ―」と合図を送る。
「ふふっ、さっぱりした? と~っても似合ってると思うな、私」
直立のまま倒された雑魔の頭部に、まよいは満足した声をだすのだった。
●
残る二体は、つつがなく伐採された。
義明はコリーヌの接近に気づくと、槍に持ち替えて隊列を組んだ。
同じ箇所を穿つコリーヌに合わせ、義明が突き刺しその笑顔を消し飛ばしたのであった。
テトラが抑えていたところへは、アルナイルが辿り着く。
「それじゃあ、任せるよ」とテトラは距離をあけてじっくりと手裏剣を構える。
後衛の戦線に近いこちらには、ヴィルマの炎とまよいの風が降りかかり、時間はかからなかった。
最後の飾り付けとばかりに、笑顔のど真ん中に手裏剣を残してモミの木は潰えるのであった。
「これが普通のモミの木で、手裏剣が星なら綺麗だったのに。残念なの」
間近に立つアルナイルの感想は、雪にしんしんと溶けこむのであった。
●
「非常に助かりましたのです!」
小太りな材木問屋は、相変わらずのですます口調でハンターたちを出迎えた。
材木問屋の店先には、やや広めの庭があった。早速切り倒してきたという大きなモミの木がドーンと置かれている。
もちろん、不気味な声も顔もない真っ当なモミの木だ。
「さぁさぁ、せっかくですから皆様飾り付けるのです」
材木問屋の好意に甘え、ハンターたちは飾り付けを始めた。
「やっぱり本物のツリーの方がいいよねー。何飾ろうかぬ」
「これとかお姉ちゃんに似てる! これ飾るわ」
悩んでいるコリーヌの横で、アルナイルが問屋の用意したオーナメントを飾っていく。
不意にオーナメントを取り付け、アルナイルが手を組んで目をつむった。
「お姉ちゃんが怪我しないようにーなの」
「何やっているんだ?」
「お願いごとしないとなの」
鈴を取り付けていた義明の問いに、アルナイルは真顔で答える。
きれいな音を鳴らしながら、
「……そうか。なら、ちゃんと飾り付けないとな」
と器用に色とりどりの鈴を手渡す。
雑魔の奇音なんかより、クリスマスの鈴の音の方が圧倒的に綺麗に響く。
「材木屋さーん」
そんな音の間にテトラが材木問屋を呼ぶ声が、紛れていた。
何か用意してもらうつもりなのか、とてとてと走って行く。
「キラキラしたリボンでも巻いてみるー?」
今の状態を見つつ、コリーヌがバランスよく飾りをつけようとしていた。
対照的に、心赴くまま用意されている装飾品を、まよいが片っ端からつけていく。
「……こうして飾り付けするのも懐かしいのう」
まよいが崩したバランスを正すようにヴィルマが装飾品を動かす。
が、青系が増えた気がするのは気のせいであろうか。
「やはっ」と嬉しそうな声を上げたのは、戻ってきたテトラだ。
「あたしとお揃いのマフラーみたい」と語るように、大きな青布をツリーに巻きつけていた。
なんかもう、皆、思うがままである。
「小さな頃は一番上の星を飾りたくてのせようと四苦八苦したものじゃ」
最後にヴィルマが、大きな星をてっぺんに飾り付けてツリーは完成した。
蒼色の布が全体に巻かれ、色とりどりの鈴やオーナメント、リボンが躍る。
「テトラちゃんツリー、みんな見てくれるかな?」
「これだけ立派なツリーだからな、目立つに違いない」
義明の隣では、アルナイルが再び祈りを捧げていた。
「お姉ちゃんが詐欺に騙されないように」
「私も祈る~」と楽しげにまよいが参じる。
白雪に染まる街の中、鈴の音も軽やかに、気がつけばツリーに祈る一行なのであった。
ピースホライズン近郊。
一面の銀世界、木々も白く枝葉を染める山の中に、ハンターたちは足跡を着ける。
白い息を吐きながら、夢路 まよい(ka1328)はふと隣を行くヴィルマ・ネーベル(ka2549)を見上げた。
「ん~っ、ねえねえ、ヴィルマ。何だか動きがぎこちないよね?」
「そ、そうかのぅ」
ヴィルマはほんのり頬を赤らめて、顔を背けた。
防寒着の下からわずかに飛び出ているフリルを、まよいはじっと見つめる。
「な、何かのぅ」
「ん~ん、何でもないよ~」
笑顔で先を行くまよいに、ヴィルマは安堵の息を投げかけた。
奇声をあげる木への防護策として、ゴシックドレスを着込んでいる。この歳になってゴシックドレスを着ることに、ヴィルマはいささか恥ずかしくもあるのであった。
「ツリーのないクリスマスなんてお酒のない忘年会みたいなものだよ! 味気ないよ!」
ヴィルマたちの少し前を行く、テトラ・ティーニストラ(ka3565)はやる気に満ちていた。
手裏剣片手に、意気揚々と前衛に追いついた。
というより、コリーヌ・エヴァンズ(ka0828)たちが立ち止まっていた。
「明るい一体が見えるね。戦闘準備だよ」
振り返りざまにコリーヌが告げる。
遠方から風の音に紛れて、笑い声のような音が響く。
「木なのに笑う、奇音を出すと何とも不気味かつ愉快なものだねぇ。まぁ、脅威なのに変わりないかな」
壬生 義明(ka3397)はそう告げながら、耳栓を取り出す。
コリーヌも耳栓を取り付けながら、
「なるべく聞こえなくても問題のない動きをするつもり―。なので攻撃は遠慮なくなんだよー」
と後衛へ投げかける。
「目配せとかで示し合わせるから、大丈夫だよ―」
そういいながら、まよいは敵影をすっと望み見る。
「あははっ、変な雑魔! おもしろーい」
見てくれに無邪気な反応を示す、まよいである。
「気持ち悪いなの! こんなツリーちっちゃい子が泣いちゃうなの」
アルナイル・モーネ(ka0854)は笑うどころではない。
「ばっさり倒して報酬しっかり貰うなのっ」と気合充分だ。
「我は大丈夫そうじゃから、そなたにこれを預けておくぞ」
ヴィルマは耳栓をアルナイルに手渡す。
ありがとうなのとお礼を言いながら、装着するのであった。
●
コリーヌ、アルナイル、義明。
まずは前衛組の三人が、全力で木々の足止めに入る。木々は一体を中心に、左右に広がりをもたせていた。
中心となる一体が、わずかに味方陣営に近い。
「こいつをまず狙うぞ」とハンドサインを出しながら、義明がまず接敵を果たす。
目の前に、超笑顔のひっついた幹が現れるが、自身に流し込んだマテリアルの力を借りて耐え切る。
だが、油断すると奇面から目が離せなくなりそうだ。
コリーヌは側面から回りこむように、動き射線をあける。
「なんだか笑顔見てるとイラつくの」
近づこうとするだけで、その奇面は神経を逆なでする。
アルナイルはグッと堪えるべく、
「こういうときは、お姉ちゃんのこと考えるの」と思考を切り替える。
そんなアルナイルの後ろから、テトラが半身ずらして狙いをつけていた。
「ツリーのためにも、手裏剣でザクザク飾り付けしちゃうんだから!」
間合いに入ったところで、手裏剣にマテリアルを込める。
「やはっ」と笑いかけながら、構えて腕を振るう。
「愉快なツリーさんたち、手裏剣のデコレーションはいかが?」
しかし、手裏剣は空を切った。カサカサと木々をこする音を立てて、素早く木は避けてみせた。
木なのに素早い、しかも、笑顔だった。
「なんかムカつくよ! その不気味な笑い、絶対、あたしが凍り付かせてあげるよっ!」
気合を入れなおすテトラの後方では、ヴィルマとまよいが臨戦態勢に入っていた。
ヴィルマはやや前のめりに踏み出し、状況を見定める。
「群れると異質な雰囲気がさらに割増される気がするのぅ」
感想をこぼしつつ、義明に向けて杖をかざす。
風をまとわせ、義明の動きを助ける。
「ん~っ」と唸っていたまよいは、ヴィルマに目配せしつつ接敵されている木に細身の杖を向ける。
「雑魔さんたち、枝ぼうぼうで伸び放題みたいだから、私が散髪したげるね」
惜しみなく気を集中し、枝葉の部分に風刃を放つ。
だが、こちらも幹をしならせモミの木はかわし切る。
「大人しくしてくれないと、切れないよ~?」
文句を述べたところで、聞き入れてくれるわけがない。
モミの木は目の前の露を払うべく、根を振り回し義明を襲う。
「……っと」
予想以上に早い動きにも、何とか受け身を取る。
胴部への攻撃は、かろうじて受けきることが出来た。
「おっと、危ないんだよー」
両翼から接敵しているコリーヌと義明めがけ、光弾が飛び交う。
動物霊の力を借り、コリーヌは雪の上を跳ねる。
義明もヴィルマから受けた風が、光弾を逸らしてくれた。だが、被るように放たれた二発目を足元に食らう。
「ふぅ、こいつはきついね」
調子を確かめながら、自身の動きを補助するようにマテリアルを流しこむのだった。
●
「下手に野放しにすると、後ろが危ないんだよね」
義明はコリーヌとアイコンタクトを交わし、側面から回り込もうとしていたモミの木に目標を変える。
接近に合わせ、再度マテリアルを重ねて流入させる。
コリーヌは義明の動きを受け、近づきつつあったアルナイルにサインをとばす。
「任せてもらって大丈夫なの!」
OKサインに頷いて、コリーヌは義明とは逆側に向かう。
踏み込みと同時に、大きく振りかぶった拳を叩き込んでやる。
「ふっふふー……今すぐにそのにやけフェイスを潰してあげるんだよー!」
小刻みに身体を左右に揺らし、構え直すコリーヌであった。
あいた場所へは逃すまいと、アルナイルが潜り込む。
目の前に現れた奇面に、アルナイルは後ずさりかけた。
「あぁ……お姉ちゃん」とすかさずアルナイルは姉のことに意識を飛ばす。
ドジなお姉ちゃんのことだから、どこかで転んでないかな……とか。
お姉ちゃんのために早く帰らないと、と決意を新たにしたり……と、思いを馳せたところで、
「くぁwせdrftgyふじこlp!!」
「うわぁ!?」
接近したことにより笑い声はより明瞭になる。耳栓で抑えていても、幾ばくかは聞こえるのだ。
姉から意識を強制的に戻させられたアルナイルの刀は空を切る。
「今度こそ、さっぱりしてもらうからね」
「耳障りな声も根本から留めさせてもらうのじゃ」
アルナイルへモミの木が、根をしならせている隙を狙い、後衛組が風刃で斬りかかる。
まよいの刃はわずかにそれ、幹に大きな傷を付けた。ヴィルマの刃はといえば、中央に作られた笑顔を斜めに切り裂いていた。
それでも崩れない笑顔の造形には、一番近くにいたアルナイルが小さな悲鳴をあげていた。
その悲鳴を耳にしながら、テトラは、別のモミの木に意識を向けていた。
義明が押さえた右舷の一体とは、別の一体だ。
光弾をまき散らしながら、次第に近づきつつあるのだ。だが、まずはアルナイルの眼前にいる一体。
こいつを落とすことが先決だと、テトラは手裏剣を構える。
「っせい!」
シュッシュと風を切りながら、回転する手裏剣がモミの木の注意を引いた。
ある種の陽動、幹の顔がそちらに向いたことでアルナイルの呪縛が解けたのである。
「こんな木に構ってる暇は……ないのっ!」
雪を踏みしめ、構え直したところから、予備動作を感じさせることなく刀を振るう。
マテリアルが循環し、洗練さに磨きがかかる。
振り返るより早く、ヴィルマの付けた顔面の傷がより大きく切り開かれた。
「まずは、一体……なの」
ぐらついた瞬間、乾いた音を立ててモミの木は真っ二つに倒れるのであった。
●
中心を失ったモミの木は、左右から挟み込むような動きを加速させていた。
左舷の敵をコリーヌとアルナイルが、右舷を義明とテトラが抑えに入る。
だが、接敵すれば当然の如く、奇声は大きくなり奇面を見つめることになる。
「うぐっ」
動きの乱れをつかれ、光弾を浴び、義明は呻き声をあげる。
それでも一体ずつ抑えざるをえない状況では、援護も期待できない。
「わーーーーっ!!」と尋常ならぬ声を聞き、視線を送れば、コリーヌが叫んでいた。
何をやっているんだと思ったが、どうやら自身の声で奇声をかき消すつもりらしい。
「なるほど、ね」
気合を込めるにもうってつけだと、考えながら拳へとマテリアルを込めていく。
武道に通じる声を発し、一気に叩き込むのである。
同じく右舷のテトラは、避けることに集中力を割いていた。
「……っ。あたしは美少女だもん。怖くなんか、ないよっ!!」
美少女ならば怖がった方が、ヒロインっぽくあるのではないか。
だが、声に出しているということはお察しなのかもしれない。
「よっ、ほっ、それ」
軽快に転がっていた倒木や、岩を利用してモミの木の攻撃を避ける。
かといって、自身から注意を外されるのもまずいので牽制に手裏剣を時たま放つ。
「ここを抜けられと、困るからね」
周囲を見定め、一定の距離でテトラは戦線を維持する。
前線組の中で、真っ先にこの拮抗状態を脱したのはコリーヌだった。
件の気合の一声で、辛くも奇声を防ぎ、気合で奇面の恐怖を脱していた。
拳一つを、何度も何度も何度も何度も、執拗に叩き込んで顔面をフルボッコしていた。
「さぁ、終わりなんだよ!」
明らかに動きが鈍ってきたモミの木に、しかし、容赦はしない。
笑顔はすでに、叩きこまれた拳によって崩されていた。
えぐり込むように放たれた、最後の一撃はミシッという音をたてて、木をへし折るのだった。
「油断大敵、次なんだよ」
起き上がらないのを確認し、反転、右舷へと向かう。
「おねぇちゃーーーん!!」
愛があふれる叫びで奇声を吹き飛ばし、アルナイルは日本刀を振るっていた。
これでテトラを除き、接敵している面々が全員叫んでいることになる。
「あははっ、すごい光景! 面白~いっ!」
無邪気な感想を零すまよいが、アルナイルの堰き止める木を狙う。
風の刃で今度こそ、枝葉をきりおとしていた。光の弾が反応して、空中で弾けることもあったが、被害には至っていない。
「クリスマスは笑い声が似合う行事とはいえ、そなた等のような不気味な輩に用はないのじゃ」
ツリーの奇声が叫び声に混じって、漏れ聞こえてくるのにヴィルマはそう告げる。
「あまり、叫び合うのも似合わないしのぅ」とこの戦いの光景にも苦笑する。
そうであるならば、さっさと倒すのが本筋というものだ。
燃え盛る炎の矢を紡ぎ、モミの木へと放つ。
「派手に燃え尽きて消えるがいい、雑魔共」
まよいに伐採され、すっきりとした頭部へと炎の矢が突き刺さる。
一瞬炎上したのち、黒き跡を残してモミの木の動きが止まった。
眼前にいたアルナイルが刀をおさめて、
「倒せたみたいだよ―」と合図を送る。
「ふふっ、さっぱりした? と~っても似合ってると思うな、私」
直立のまま倒された雑魔の頭部に、まよいは満足した声をだすのだった。
●
残る二体は、つつがなく伐採された。
義明はコリーヌの接近に気づくと、槍に持ち替えて隊列を組んだ。
同じ箇所を穿つコリーヌに合わせ、義明が突き刺しその笑顔を消し飛ばしたのであった。
テトラが抑えていたところへは、アルナイルが辿り着く。
「それじゃあ、任せるよ」とテトラは距離をあけてじっくりと手裏剣を構える。
後衛の戦線に近いこちらには、ヴィルマの炎とまよいの風が降りかかり、時間はかからなかった。
最後の飾り付けとばかりに、笑顔のど真ん中に手裏剣を残してモミの木は潰えるのであった。
「これが普通のモミの木で、手裏剣が星なら綺麗だったのに。残念なの」
間近に立つアルナイルの感想は、雪にしんしんと溶けこむのであった。
●
「非常に助かりましたのです!」
小太りな材木問屋は、相変わらずのですます口調でハンターたちを出迎えた。
材木問屋の店先には、やや広めの庭があった。早速切り倒してきたという大きなモミの木がドーンと置かれている。
もちろん、不気味な声も顔もない真っ当なモミの木だ。
「さぁさぁ、せっかくですから皆様飾り付けるのです」
材木問屋の好意に甘え、ハンターたちは飾り付けを始めた。
「やっぱり本物のツリーの方がいいよねー。何飾ろうかぬ」
「これとかお姉ちゃんに似てる! これ飾るわ」
悩んでいるコリーヌの横で、アルナイルが問屋の用意したオーナメントを飾っていく。
不意にオーナメントを取り付け、アルナイルが手を組んで目をつむった。
「お姉ちゃんが怪我しないようにーなの」
「何やっているんだ?」
「お願いごとしないとなの」
鈴を取り付けていた義明の問いに、アルナイルは真顔で答える。
きれいな音を鳴らしながら、
「……そうか。なら、ちゃんと飾り付けないとな」
と器用に色とりどりの鈴を手渡す。
雑魔の奇音なんかより、クリスマスの鈴の音の方が圧倒的に綺麗に響く。
「材木屋さーん」
そんな音の間にテトラが材木問屋を呼ぶ声が、紛れていた。
何か用意してもらうつもりなのか、とてとてと走って行く。
「キラキラしたリボンでも巻いてみるー?」
今の状態を見つつ、コリーヌがバランスよく飾りをつけようとしていた。
対照的に、心赴くまま用意されている装飾品を、まよいが片っ端からつけていく。
「……こうして飾り付けするのも懐かしいのう」
まよいが崩したバランスを正すようにヴィルマが装飾品を動かす。
が、青系が増えた気がするのは気のせいであろうか。
「やはっ」と嬉しそうな声を上げたのは、戻ってきたテトラだ。
「あたしとお揃いのマフラーみたい」と語るように、大きな青布をツリーに巻きつけていた。
なんかもう、皆、思うがままである。
「小さな頃は一番上の星を飾りたくてのせようと四苦八苦したものじゃ」
最後にヴィルマが、大きな星をてっぺんに飾り付けてツリーは完成した。
蒼色の布が全体に巻かれ、色とりどりの鈴やオーナメント、リボンが躍る。
「テトラちゃんツリー、みんな見てくれるかな?」
「これだけ立派なツリーだからな、目立つに違いない」
義明の隣では、アルナイルが再び祈りを捧げていた。
「お姉ちゃんが詐欺に騙されないように」
「私も祈る~」と楽しげにまよいが参じる。
白雪に染まる街の中、鈴の音も軽やかに、気がつけばツリーに祈る一行なのであった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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作戦相談卓 夢路 まよい(ka1328) 人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/12/22 19:27:47 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/18 15:19:05 |