ゲスト
(ka0000)
【羽冠】雑貨屋、生きて前を見る
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/05/14 15:00
- 完成日
- 2018/05/20 20:03
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●報告
雑貨屋のオーナーであり、ライル・サヴィスとシールの保護者であるルーベン・クーリオはイスルダ島の開拓の報告書を見て唇を噛んだ。
一筋縄でいかないとはわかっていた。保護者としては非常に心配なことであった。
「シール君が追い詰められていることが心配だな」
イスルダ島に歪虚が襲撃し始めたころ、たまたま知り合ったライルの案内で向かったのがサヴィス家がある近辺だった。そこに歪虚がおり、逃げる選択しかなかった。雑魔の類ならばどうにかできたが、歪虚であると難しかったからだ。
殺されかかっていたシールを連れて何とか大陸まで来た。呆然とした状況から抜けられないシールに対し、どうすればいいのか彼もライルも打つ手を見つけられなかった。
彼らの保護者としてあろうと、ルーベンは国の混乱時に騎士の身を引いた。それが逃げたといわれることは承知の上だった。一族から見捨てられなかったが、よそよそしくはなった。
目の前にあった光景から、護れない自分が口惜しかった。その悩みを引きずったまま居残れば、部下を死地に追いやる危険性がある。
恐怖におびえるシールを助けることが第一だと考えたのだ。この幼い子を助けられずに、誰が助けられるのだろうと考えてしまった。
シールはライルを虐げることで何とか自分を保った。ライルも自分はおろかで何もできないということを示すことでシールの許しを請おうとした。
それを見ているだけで、包み込むだけしかできなかった。ライルは「それでいいよ、あなたがいてくれることで俺は」シールへの後ろめたさからそう言っていた。
辛いのは彼も一緒であろうにと思ったが、かける言葉も見つからなかった。
「私が行っても足を引っ張る。こちらで支援者を募るほうがいい」
報告には私信もあり、シールの強い決意も見られた。
「少しずつ進むしかないのだね……。支援者の出してくれたのはやはり私兵だろうね……明言はしていなかったけれど」
それが助かっている一面もある。しかし、支援者の貴族たちが動くと困るとはルーベンは考える。善意かもしれないし、下心があるかもしれない。
「どちらにせよ、我々は前に進むしかないんだ」
ルーベンはペンを手にした。
●森を抜けて
シールとライルは力を貸してくれるハンターとともに第二の拠点となるはずの村まで来た。
そこまで雑魔と出会っても、大したことなく進めている。
「兵士にいてもらってもいいのかな?」
雑貨屋の民間による発掘・開拓に協力してくる貴族や商人からお金以外で貸し出されたものだった。
非覚醒者である兵士なため、歪虚であるリーヤ・サヴィスとの接触直後に港の拠点に戻ってもらっている。何もしないよりはと港の整備に尽力しているのだ。
「もしいれば、人質に取られない保証がない」
ライルがきっぱり言う。
リーヤは歪虚となっており、義兄であるライルと使用人兼遊び相手であるシールに執着していた。
次は「全力で戦う」と宣言している。それは「全力で戦ってでも二人を手に入れる」なのだろう。
ただし、二人が行かないことで、リーヤはハンターと戦うかは不明だ。
「シー坊、大丈夫か?」
「何を今さら。いや、ううん、僕が心配かけたんだよね……」
リーヤの声を聞いて動けなくなってしまったのだ。
歪虚がエッタというリーヤの実姉に対し、助かりたければシールを殺せと命じた。リーヤがシールをかばった。それを神の力により癒そうとしたシールであるが、エッタにリーヤの死体を奪われた。
死体だとあの時は思っていたのだ。大量の血と呼吸停止を感じたからだ。
エッタに奪われたことにより、それ以上は確認できず。シールは救出に来たライルたちに連れられて逃げた。
「精一杯やるよ。リーヤのために……使用人のはずの僕の親友になってくれたリーヤ様のために」
エクラ教の聖印を握りしめる。
「僕はもう逃げないから。メェメェにも笑われちゃう」
その死んだ母親の手作り人形もこの世にはいない。
「まさかあの人形が歪虚化するって……」
「さてと……俺たちも行こう。リーヤをこのままにしておけない」
ライルがシールを促した。
リーヤがいると思われるのはかつて牧草地だったところ。そこに向かって一行は歩きだす。途中の道は曲がり、木々で見通しは悪かった。
●歪虚
リーヤは楽しそう牧草地を走る。
「落とし穴がたくさんあるな、気を付けないと。ああ、キミたち、気を付けろ。落ちたら承知しないし、くし刺しになったら面白くないじゃないか。あ、面白いかな? でも戦力減るのは愚かだ」
雑魔たちは命令に従う。
「シールは大きくなってた。ボクはぜひとも、護ってもらわないとね。兄さんはきっと、ちゃんとそばにいてと言わないとな」
ハンターが来るのを楽しみ待っていた。
「ボクは全力で戦うのは当たり前。だって、ボクはシーと兄さんがほしいから。ぜひとも奪い取らないといけないね」
楽しそうにとがった杭を見る。
すでに穴を掘るのに使った道具や残った材料は牧草地の隅っこにためておいた。シールやライル、ハンターが来るのが遅くなるならもっと作るつもりだった。
雑貨屋のオーナーであり、ライル・サヴィスとシールの保護者であるルーベン・クーリオはイスルダ島の開拓の報告書を見て唇を噛んだ。
一筋縄でいかないとはわかっていた。保護者としては非常に心配なことであった。
「シール君が追い詰められていることが心配だな」
イスルダ島に歪虚が襲撃し始めたころ、たまたま知り合ったライルの案内で向かったのがサヴィス家がある近辺だった。そこに歪虚がおり、逃げる選択しかなかった。雑魔の類ならばどうにかできたが、歪虚であると難しかったからだ。
殺されかかっていたシールを連れて何とか大陸まで来た。呆然とした状況から抜けられないシールに対し、どうすればいいのか彼もライルも打つ手を見つけられなかった。
彼らの保護者としてあろうと、ルーベンは国の混乱時に騎士の身を引いた。それが逃げたといわれることは承知の上だった。一族から見捨てられなかったが、よそよそしくはなった。
目の前にあった光景から、護れない自分が口惜しかった。その悩みを引きずったまま居残れば、部下を死地に追いやる危険性がある。
恐怖におびえるシールを助けることが第一だと考えたのだ。この幼い子を助けられずに、誰が助けられるのだろうと考えてしまった。
シールはライルを虐げることで何とか自分を保った。ライルも自分はおろかで何もできないということを示すことでシールの許しを請おうとした。
それを見ているだけで、包み込むだけしかできなかった。ライルは「それでいいよ、あなたがいてくれることで俺は」シールへの後ろめたさからそう言っていた。
辛いのは彼も一緒であろうにと思ったが、かける言葉も見つからなかった。
「私が行っても足を引っ張る。こちらで支援者を募るほうがいい」
報告には私信もあり、シールの強い決意も見られた。
「少しずつ進むしかないのだね……。支援者の出してくれたのはやはり私兵だろうね……明言はしていなかったけれど」
それが助かっている一面もある。しかし、支援者の貴族たちが動くと困るとはルーベンは考える。善意かもしれないし、下心があるかもしれない。
「どちらにせよ、我々は前に進むしかないんだ」
ルーベンはペンを手にした。
●森を抜けて
シールとライルは力を貸してくれるハンターとともに第二の拠点となるはずの村まで来た。
そこまで雑魔と出会っても、大したことなく進めている。
「兵士にいてもらってもいいのかな?」
雑貨屋の民間による発掘・開拓に協力してくる貴族や商人からお金以外で貸し出されたものだった。
非覚醒者である兵士なため、歪虚であるリーヤ・サヴィスとの接触直後に港の拠点に戻ってもらっている。何もしないよりはと港の整備に尽力しているのだ。
「もしいれば、人質に取られない保証がない」
ライルがきっぱり言う。
リーヤは歪虚となっており、義兄であるライルと使用人兼遊び相手であるシールに執着していた。
次は「全力で戦う」と宣言している。それは「全力で戦ってでも二人を手に入れる」なのだろう。
ただし、二人が行かないことで、リーヤはハンターと戦うかは不明だ。
「シー坊、大丈夫か?」
「何を今さら。いや、ううん、僕が心配かけたんだよね……」
リーヤの声を聞いて動けなくなってしまったのだ。
歪虚がエッタというリーヤの実姉に対し、助かりたければシールを殺せと命じた。リーヤがシールをかばった。それを神の力により癒そうとしたシールであるが、エッタにリーヤの死体を奪われた。
死体だとあの時は思っていたのだ。大量の血と呼吸停止を感じたからだ。
エッタに奪われたことにより、それ以上は確認できず。シールは救出に来たライルたちに連れられて逃げた。
「精一杯やるよ。リーヤのために……使用人のはずの僕の親友になってくれたリーヤ様のために」
エクラ教の聖印を握りしめる。
「僕はもう逃げないから。メェメェにも笑われちゃう」
その死んだ母親の手作り人形もこの世にはいない。
「まさかあの人形が歪虚化するって……」
「さてと……俺たちも行こう。リーヤをこのままにしておけない」
ライルがシールを促した。
リーヤがいると思われるのはかつて牧草地だったところ。そこに向かって一行は歩きだす。途中の道は曲がり、木々で見通しは悪かった。
●歪虚
リーヤは楽しそう牧草地を走る。
「落とし穴がたくさんあるな、気を付けないと。ああ、キミたち、気を付けろ。落ちたら承知しないし、くし刺しになったら面白くないじゃないか。あ、面白いかな? でも戦力減るのは愚かだ」
雑魔たちは命令に従う。
「シールは大きくなってた。ボクはぜひとも、護ってもらわないとね。兄さんはきっと、ちゃんとそばにいてと言わないとな」
ハンターが来るのを楽しみ待っていた。
「ボクは全力で戦うのは当たり前。だって、ボクはシーと兄さんがほしいから。ぜひとも奪い取らないといけないね」
楽しそうにとがった杭を見る。
すでに穴を掘るのに使った道具や残った材料は牧草地の隅っこにためておいた。シールやライル、ハンターが来るのが遅くなるならもっと作るつもりだった。
リプレイ本文
●現地へ
エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)は牧草地だったところを見て唇を結ぶ。歪虚支配地域後に変化はあっただろうと想像はしていたが、まさか木が生えているとは思わないだろう。
「二人の護衛が優先。狙撃者が狙われる問題……」
いかに解決するか思考をめぐらす。護衛が優先であるため、あまりばらばらになることはできない。連絡を密にし、敵の出方を考えつつ動くしかない。
エルバッハ・リオン(ka2434)は軍用双眼鏡で覗く。罠があるだろうと予測はしているが、見通しが利かない。
(シールさんたちのことを考えると、余計なことを言わない方がいいでしょうね)
これからの戦いを考えて、心の中でつぶやいた。
ルカ(ka0962)も双眼鏡でうかがう。
(ここに来るまでに何もなかったです。それならば、ここに罠がある可能性は高いですね)
心の中でつぶやく。用心して、地面の方を見る。草地であるが、不自然なところあるようにも見えた。しかし、明確に言える部分がない。
愛梨(ka5827)は符を取り出す。
「偵察してみるね。足元が見たいなら、すれすれ飛べばいいし」
【式符】で式神を作り向かわせる。小さいそれはふよふよと進む。術が及ぶ範囲内を見る。なんとなく、草の様子がおかしい部分があると分かる。
夜桜 奏音(ka5754)はうなずく。
「以前の時も罠があったようですし、今回もあるとみるべきですね。見える範囲で違和感がないとなると、落とし穴か上から物を落とすかでしょうか? 落とし穴なら【御霊】で踏み抜かせます」
状況がわからないため、仲間の偵察の状況を待つ。早く使えばその分、何もしないで術は消える可能性もある。
マリィア・バルデス(ka5848)はライル・サヴィスとシールに心得を言う。
「シール、ライル、みんなと一緒に注意していきなさい。リーヤが全力で相手するといった以上、この牧草地には罠や敵がたくさん隠れていると思う。絶対、二人だけで先行しては駄目よ」
二人は神妙に話を聞く。道案内として重要であるが、敵としているだろうリーヤ・サヴィスの狙いを考えると、来ないことも選択肢の一つだ。ただし、ライルとシールがいないことでリーヤが逃げることを優先することもありうるため、一概に名案とは言い難かった。
ミオレスカ(ka3496)は見渡せない状況に眉をひそめる。
「何があるかわからないのです。でも、長距射撃で後れを取ることはありません」
依頼人の二人はうなずく。心強かった。
トリプルJ(ka6653)は【天駆けもの】を用いて、空を舞う。舞うといっても敵陣となっているだろう牧草地の状況を確認して戻ってきただけだ。敵の動きがわかることが重要だ。
「直線ではいけないだろうな、奥に誰かいる」
目視できた部分を仲間に告げた。双眼鏡や式神で見ている者の見たものの補完だ。それなりに育っている木が邪魔をしている事実が明確にはなった。
「ぶめええ」
羊の声が響き、戦端が開かれた。
●接敵まで
「ばれているならばまずはこうします」
エルバッハが前に向かって【ファイアボール】打ち込む。雑魔たちが慌てて動き、一部は落とし穴に落ちた。このおかげで、ハンターが意識していた足元の罠の一部があらわになった。
落とし穴が一か所だけなはずがない、丁寧に植樹しているくらいなのだからと考えられる。
エラはエルバッハとは異なる方向を足元を見て、落とし穴があるだろう所を推測する。敵が近づいたところで【散炎】を放った。「罠があろうとも焼けばいい」と遮蔽物も落とし穴を覆っている偽装もすべて薙ぎ払うつもりだった。
「地面から何か出てくるとか槍が設置されているとか……」
「ないとは言い切れません。前に行くならば気を付けてくださいね。それに、雑魔が落とし穴に配置されている可能性もあり得ます」
「そうですね。ライルさんとシールさん、後方の警戒を落とし穴注意でお願いできますか?」
ミオレスカの推測にルカは同意を示すと二人に指示を出す。槍など動かないものが配置されているならば落とし穴を避ければ終わりだが、動くものであれば要注意だ。踏み抜いて確認した直後に、スキルや矢を射かけられることもあるだろう。
「良く見えなかったが奥にいたのはリーヤだろうな、毛色が違ったから。こちらまで来るか? それとも俺たちを待つか?」
トリプルJは穴が開いたところを避け、前に進み雑魔に攻撃をする。
マリィアは重魔導バイクを銃架とし、全長180センチある大型魔導銃を構える。
「適度に木を植えるのは頭がいい子ね。でも……見逃す気はない」
マリィアは動く標的に引き金を絞った。
愛梨は近づいてくる雑魔に対し符を放つ。
「三の矢、雷獣の舞! 【雷撃陣】」
幻の矢を放つような動作をすると、雷が敵を討った。
ライルとシールはルカの指示を理解し、開いた落とし穴の警戒をして念のため中を確認する。
「……いた」
「えい」
石を投げるシールとは別に、ライルは銃を構えて狙った。
「落とし穴を使えなくしてしまいましょう【御霊符】」
奏音は符を放つ。符から生まれた生命力も持つ式神は奏音の指示に従い、進んだ先の怪しげなところ踏み抜く。
リーヤの姿をまだ確認できていないし、どう行動とるか不明だ。歪虚である彼を逃がすつもりはないため、むしろハンターに向かってくることは歓迎だった。
「待たせられた……。さて、兄さんとシールを迎えに行こう」
リーヤはにこりと微笑み、走り出した。
威嚇を込めた矢が飛んでくるが、ところどころいある木が遮蔽物になる。
「木登りも、落とし穴も楽しくなくちゃ」
身軽に走った。
エルバッハは進行方向を確保するため、羊雑魔を狙い攻撃していく。
「この雑魔も倒しておかないと結局は困りますね」
島の探索に雑魔がいること自体、安全が確保されない状況となってしまう。
敵の後方を狙うミオレスカは木々の揺れがおかしいと気づいた。全力で移動しているような感覚だ。罠も仕掛けているため、リーヤは泰然と待っていると思われたが違うようだ。
「右側から回り込んできています!」
ミオレスカはマテリアルを込め、命中させるために極限まで意識を研ぎ澄ませ矢を放つ。
「本当だ。それだけ焦っているということか? いや、自信があるということか」
マリィアはリーヤが出てくるとは思っていたが、ここまで早い動きだとは思わなかったので意識を切り替えた。
「ルカ、防御を。その間に、邪魔なものは倒しておく」
エラが再び【散炎】で敵と見なした木も倒した。足元が不安定となるが、元々落とし穴もあるし、遮蔽物になり攻撃の阻害されるよりましだった。
「もちろんです。絶対に守り抜きます」
ルカは推測される方向を意識する。ライルとシールと敵の間に割って入りやすい推測の位置に立つ。
愛梨は符を用意するとすぐさま放つ。
「終の舞、陽光の舞! 【五色光符陣】」
これにより手前の方にいた雑魔はおおよそ片付くが、まだ奥にもいる為、ひとまずでしかない。リーヤの接敵を考え、ルカとは違う方向で盾を構えた。
「雑魔は今のうちに掃除しておくべきだな」
トリプルJが前に出るために敵を倒した。
「結界張りますね……けど、無理はしないでください」
奏音はライルとシールを含め【結界術】を使う。敵の能力を考えればこその対応だ。
雑魔は多かった。ハンターたちが倒した以外にも奥からやってくる。それらは穴を丁寧に避けてくる。避けているが時々落ちるのがいるのは、それの力が大したことのない証拠でもある。しかし、手練れのハンターならそう思えるのであり、駆け出しや一般人には脅威である。
来れば倒す必要があるのだ。
それらより上位に属すリーヤのことが問題だった。
「あははー! 来てる、来てる! 兄さん、シール! もう一度聞くよ! ボクと一緒に来てくれる?」
リーヤは楽しそうに、自分より大きなハンターを見下すように見つめる。
「断る」
ライルがきっぱりと言った。
「でも、断らないよ、結局はね! ボクは絶対、兄さんとシールとずーと、遊ぶんだから!」
にこりと微笑む。そして、「全力で行くから」と言った瞬間、負のマテリアルはハンターたちを圧倒する。
そして、リーヤはシールに向かうが、その射線にエラがいる。
「そうはさせない」
「そうか! お姉さん、ボクのお願い聞いてくれるかな?」
エラは心を閉ざすような冷たい目でリーヤを見つめる。【強制】がかからなかったと気づいた瞬間、エラに手にした鋏を叩き込む。鎧の隙間を縫う。
「つっ」
「ふーん。このお姉さん面倒くさい」
リーヤは下がる。
エルバッハは即刻リーヤを倒す必要性を感じているとともに、押し寄せる雑魔にも問題を覚える。距離等を考え、意識を集中させ【アイスボルト】をリーヤに放つ。
ミオレスカは敵の状況を考え【ハウンドバレット】を放つ。ただし、リーヤの状況によっては今後矢や弾の数を意識し、行動したいところだ。
マリィアも【ハウンドバレット】を放つ。外しようがないのだが、なぜか当たっていないような気がしてならなかった。
エラは【エンジェルフェザー】をシールに使う。ライルよりも体力が持たないようだったのもあった。
奏音は【白龍の息吹】を使う。手ごたえがあるかわからないが、リーヤに嫌な顔をされたのは間違いなかった。
ルカは【ブルカガトリオ】を放ち、ライルとシールの拉致を阻止し、少しでも早くリーヤを倒すことを願う。
トリプルJは【ワイルドラッシュ】をでリーヤを狙う。
愛梨は早く倒すべきと考え【五色光符陣】を放つ。近寄った雑魔も巻き込んでいた。
ライルとシールはハンターの後方で、背後に敵が回り来ないかなど周囲に目を配る。本来なら自分たちで引導を渡したいが、足を引っ張りかねない力差がある。そのため、生き延びることが重要だと何度も自分に言い聞かせる。
「ひどいな……いたいけな子供を寄ってたかってさ」
リーヤは大きなハンマーを構えると、ひょいとジャンプをし、地面をたたく。マテリアルの力を含んだ衝撃波が周囲を襲う。その上、横に構えると振り回した。
「ぐっ」
「このくらい」
盾を構えているルカと愛梨は耐えるが、かなりの衝撃が加わっている。
ルカは必要ならば傷を癒やすことに専念しないとならないと目を走らせる。
「早いですね……」
エルバッハは行動の阻害がすることも考えていたが、意識を切り替える。動きを考えると計算して確実性を求めると、打ち損じる可能性がある。そのため、近づいてきた敵を含めて【ファイアボール】を放つ。
「気を付けますね……」
ミオレスカは集中し狙いつつも、弾の数を確実に把握して、次の攻撃に備える。【妨害射撃】を行う必要性があるからだ。敵の動きの速さについて行けるかやはり問題だ。
「巻き込めれば巻き込めるといいです【五色光符】」
奏音は符を放つ。
「いい子だからおとなしくしなさい」
マリィアは唇を噛む。素早くリロードすると、生きているモノを守るためトリガーを引き【ハウンドバレット】を放った。
「食えねぇ羊はいらねー。子どもの遊びには付き合いはするぜ」
トリプルJは再び【ワイルドラッシュ】を放つ。
「こちらには来させません【プルガトリオ】」
ルカが放つ魔法が、集まる敵も含めてさく裂する。
「何が面倒くさいのか?」
エラはリーヤに対し【機導剣】で挑む。先ほど嫌がられたということは、苛立たせて正常な判断をさせづらくすることができるだろうから。
「ここまで来るなら【修祓陣】」
愛梨は護法籠手にある力を解放し、仲間を守る力とした。
膠着状態が続く。しかし、雑魔は減り、リーヤに疲れが見えるようだった。
ハンター側にはルカの傷を癒す力とシールも微力ながら持っている。そのため、【強制】さえかけられることがなけば、ハンターは有利だった。
「なんで、ボクを拒否するんだ!」
リーヤが苛立ちを見せた。
「ごめん、リー」
「……僕はリーヤが一番の親友だと思っているよ」
ライルとシールが淡々と告げる。言葉通りに感情を表すと付け入るスキを与えるようだった。
「嘘つき! なら、ボクと一緒に――」
ライルとシールは悲しそうな顔で彼を見る。そして、ハンターたちの攻撃に合わせて、それぞれできる攻撃をしたのだった。
「来――て……ぐっ、うわああ」
リーヤは貫かれると、塵となって消えた。
●未来を前に
雑魔も刈り取ると、ぼこぼこと穴が開いた土地が残る。
ライルはため息をつき、シールは膝をつく。
「……無事でよかった。この辺りの司令塔は倒したということは、あとは雑魔がいるかどうか確認すれば……いいわけよね」
マリィアが二人に声をかける。リーヤがこの辺りで強い歪虚であろう、今わかっている状況では。
「歪虚としての本気でもあり、子どもとしての本気にもとれた……」
エラはリーヤの行動から、兄と親友への思いは感じ取れた。生死を分けて進んでしまった今、歪虚は倒さないとならない相手だ。二人が前を見ていることは救いだ。
「怪我……もう治せないですが……」
「一旦戻るんだろう? これ以上、何も出なければ大丈夫だ。ルカ、お疲れさん」
「いえ、皆さんこそ……お疲れ様です」
トリプルJにルカは頭を下げる。
「一応何もいないか確認していったほうがいいよね?」
「ここくらいは見て行ったほうがいいのでしょうか。敵がいないとは限りませんし」
「式符で……」
「なるほど」
奏音と愛梨が余力があるため、少し集団から離れ捜索する。
「ここ、だけでなく、どこでも歪虚化は起こるのかもしれません」
ミオレスカがぽつりとつぶやく。大陸の方では歪虚に惹かれた少年がいたし、東方の地でも怒りから歪虚となった人たちがいた。
各所で歪虚絡みの事件にかかわってきた者たちは同意を示す。
「楽しく元気に過ごしているだけでも、歪虚は減るような気がします」
「ミオさん……まるで、民間療法みたいですよ。笑っていると病気が減る、というような」
エルバッハが苦笑する。言いたいことはなんとなくわかっていた。歪虚がいると悲しみがあるのか、悲しみがあるから歪虚が生じるのか。
「故人をしのびつつ、甘いものでも食べましょうか。桜餅、きっとおいしいですよ」
ミオレスカの控えめな笑顔につられて、桜餅を手にするライルとシール。頬ばると甘みが口に広がる。
シールは涙をこぼし、笑顔で「おいしい」という。
「そうだな」
ライルはシールの頭をかき回し、髪をぐしゃぐしゃにして怒られた。
一行は港に無事に戻った。
元の土地に戻れる人がどれだけいるのかわからないが、開拓が一歩進んだのは間違いなかった。
エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)は牧草地だったところを見て唇を結ぶ。歪虚支配地域後に変化はあっただろうと想像はしていたが、まさか木が生えているとは思わないだろう。
「二人の護衛が優先。狙撃者が狙われる問題……」
いかに解決するか思考をめぐらす。護衛が優先であるため、あまりばらばらになることはできない。連絡を密にし、敵の出方を考えつつ動くしかない。
エルバッハ・リオン(ka2434)は軍用双眼鏡で覗く。罠があるだろうと予測はしているが、見通しが利かない。
(シールさんたちのことを考えると、余計なことを言わない方がいいでしょうね)
これからの戦いを考えて、心の中でつぶやいた。
ルカ(ka0962)も双眼鏡でうかがう。
(ここに来るまでに何もなかったです。それならば、ここに罠がある可能性は高いですね)
心の中でつぶやく。用心して、地面の方を見る。草地であるが、不自然なところあるようにも見えた。しかし、明確に言える部分がない。
愛梨(ka5827)は符を取り出す。
「偵察してみるね。足元が見たいなら、すれすれ飛べばいいし」
【式符】で式神を作り向かわせる。小さいそれはふよふよと進む。術が及ぶ範囲内を見る。なんとなく、草の様子がおかしい部分があると分かる。
夜桜 奏音(ka5754)はうなずく。
「以前の時も罠があったようですし、今回もあるとみるべきですね。見える範囲で違和感がないとなると、落とし穴か上から物を落とすかでしょうか? 落とし穴なら【御霊】で踏み抜かせます」
状況がわからないため、仲間の偵察の状況を待つ。早く使えばその分、何もしないで術は消える可能性もある。
マリィア・バルデス(ka5848)はライル・サヴィスとシールに心得を言う。
「シール、ライル、みんなと一緒に注意していきなさい。リーヤが全力で相手するといった以上、この牧草地には罠や敵がたくさん隠れていると思う。絶対、二人だけで先行しては駄目よ」
二人は神妙に話を聞く。道案内として重要であるが、敵としているだろうリーヤ・サヴィスの狙いを考えると、来ないことも選択肢の一つだ。ただし、ライルとシールがいないことでリーヤが逃げることを優先することもありうるため、一概に名案とは言い難かった。
ミオレスカ(ka3496)は見渡せない状況に眉をひそめる。
「何があるかわからないのです。でも、長距射撃で後れを取ることはありません」
依頼人の二人はうなずく。心強かった。
トリプルJ(ka6653)は【天駆けもの】を用いて、空を舞う。舞うといっても敵陣となっているだろう牧草地の状況を確認して戻ってきただけだ。敵の動きがわかることが重要だ。
「直線ではいけないだろうな、奥に誰かいる」
目視できた部分を仲間に告げた。双眼鏡や式神で見ている者の見たものの補完だ。それなりに育っている木が邪魔をしている事実が明確にはなった。
「ぶめええ」
羊の声が響き、戦端が開かれた。
●接敵まで
「ばれているならばまずはこうします」
エルバッハが前に向かって【ファイアボール】打ち込む。雑魔たちが慌てて動き、一部は落とし穴に落ちた。このおかげで、ハンターが意識していた足元の罠の一部があらわになった。
落とし穴が一か所だけなはずがない、丁寧に植樹しているくらいなのだからと考えられる。
エラはエルバッハとは異なる方向を足元を見て、落とし穴があるだろう所を推測する。敵が近づいたところで【散炎】を放った。「罠があろうとも焼けばいい」と遮蔽物も落とし穴を覆っている偽装もすべて薙ぎ払うつもりだった。
「地面から何か出てくるとか槍が設置されているとか……」
「ないとは言い切れません。前に行くならば気を付けてくださいね。それに、雑魔が落とし穴に配置されている可能性もあり得ます」
「そうですね。ライルさんとシールさん、後方の警戒を落とし穴注意でお願いできますか?」
ミオレスカの推測にルカは同意を示すと二人に指示を出す。槍など動かないものが配置されているならば落とし穴を避ければ終わりだが、動くものであれば要注意だ。踏み抜いて確認した直後に、スキルや矢を射かけられることもあるだろう。
「良く見えなかったが奥にいたのはリーヤだろうな、毛色が違ったから。こちらまで来るか? それとも俺たちを待つか?」
トリプルJは穴が開いたところを避け、前に進み雑魔に攻撃をする。
マリィアは重魔導バイクを銃架とし、全長180センチある大型魔導銃を構える。
「適度に木を植えるのは頭がいい子ね。でも……見逃す気はない」
マリィアは動く標的に引き金を絞った。
愛梨は近づいてくる雑魔に対し符を放つ。
「三の矢、雷獣の舞! 【雷撃陣】」
幻の矢を放つような動作をすると、雷が敵を討った。
ライルとシールはルカの指示を理解し、開いた落とし穴の警戒をして念のため中を確認する。
「……いた」
「えい」
石を投げるシールとは別に、ライルは銃を構えて狙った。
「落とし穴を使えなくしてしまいましょう【御霊符】」
奏音は符を放つ。符から生まれた生命力も持つ式神は奏音の指示に従い、進んだ先の怪しげなところ踏み抜く。
リーヤの姿をまだ確認できていないし、どう行動とるか不明だ。歪虚である彼を逃がすつもりはないため、むしろハンターに向かってくることは歓迎だった。
「待たせられた……。さて、兄さんとシールを迎えに行こう」
リーヤはにこりと微笑み、走り出した。
威嚇を込めた矢が飛んでくるが、ところどころいある木が遮蔽物になる。
「木登りも、落とし穴も楽しくなくちゃ」
身軽に走った。
エルバッハは進行方向を確保するため、羊雑魔を狙い攻撃していく。
「この雑魔も倒しておかないと結局は困りますね」
島の探索に雑魔がいること自体、安全が確保されない状況となってしまう。
敵の後方を狙うミオレスカは木々の揺れがおかしいと気づいた。全力で移動しているような感覚だ。罠も仕掛けているため、リーヤは泰然と待っていると思われたが違うようだ。
「右側から回り込んできています!」
ミオレスカはマテリアルを込め、命中させるために極限まで意識を研ぎ澄ませ矢を放つ。
「本当だ。それだけ焦っているということか? いや、自信があるということか」
マリィアはリーヤが出てくるとは思っていたが、ここまで早い動きだとは思わなかったので意識を切り替えた。
「ルカ、防御を。その間に、邪魔なものは倒しておく」
エラが再び【散炎】で敵と見なした木も倒した。足元が不安定となるが、元々落とし穴もあるし、遮蔽物になり攻撃の阻害されるよりましだった。
「もちろんです。絶対に守り抜きます」
ルカは推測される方向を意識する。ライルとシールと敵の間に割って入りやすい推測の位置に立つ。
愛梨は符を用意するとすぐさま放つ。
「終の舞、陽光の舞! 【五色光符陣】」
これにより手前の方にいた雑魔はおおよそ片付くが、まだ奥にもいる為、ひとまずでしかない。リーヤの接敵を考え、ルカとは違う方向で盾を構えた。
「雑魔は今のうちに掃除しておくべきだな」
トリプルJが前に出るために敵を倒した。
「結界張りますね……けど、無理はしないでください」
奏音はライルとシールを含め【結界術】を使う。敵の能力を考えればこその対応だ。
雑魔は多かった。ハンターたちが倒した以外にも奥からやってくる。それらは穴を丁寧に避けてくる。避けているが時々落ちるのがいるのは、それの力が大したことのない証拠でもある。しかし、手練れのハンターならそう思えるのであり、駆け出しや一般人には脅威である。
来れば倒す必要があるのだ。
それらより上位に属すリーヤのことが問題だった。
「あははー! 来てる、来てる! 兄さん、シール! もう一度聞くよ! ボクと一緒に来てくれる?」
リーヤは楽しそうに、自分より大きなハンターを見下すように見つめる。
「断る」
ライルがきっぱりと言った。
「でも、断らないよ、結局はね! ボクは絶対、兄さんとシールとずーと、遊ぶんだから!」
にこりと微笑む。そして、「全力で行くから」と言った瞬間、負のマテリアルはハンターたちを圧倒する。
そして、リーヤはシールに向かうが、その射線にエラがいる。
「そうはさせない」
「そうか! お姉さん、ボクのお願い聞いてくれるかな?」
エラは心を閉ざすような冷たい目でリーヤを見つめる。【強制】がかからなかったと気づいた瞬間、エラに手にした鋏を叩き込む。鎧の隙間を縫う。
「つっ」
「ふーん。このお姉さん面倒くさい」
リーヤは下がる。
エルバッハは即刻リーヤを倒す必要性を感じているとともに、押し寄せる雑魔にも問題を覚える。距離等を考え、意識を集中させ【アイスボルト】をリーヤに放つ。
ミオレスカは敵の状況を考え【ハウンドバレット】を放つ。ただし、リーヤの状況によっては今後矢や弾の数を意識し、行動したいところだ。
マリィアも【ハウンドバレット】を放つ。外しようがないのだが、なぜか当たっていないような気がしてならなかった。
エラは【エンジェルフェザー】をシールに使う。ライルよりも体力が持たないようだったのもあった。
奏音は【白龍の息吹】を使う。手ごたえがあるかわからないが、リーヤに嫌な顔をされたのは間違いなかった。
ルカは【ブルカガトリオ】を放ち、ライルとシールの拉致を阻止し、少しでも早くリーヤを倒すことを願う。
トリプルJは【ワイルドラッシュ】をでリーヤを狙う。
愛梨は早く倒すべきと考え【五色光符陣】を放つ。近寄った雑魔も巻き込んでいた。
ライルとシールはハンターの後方で、背後に敵が回り来ないかなど周囲に目を配る。本来なら自分たちで引導を渡したいが、足を引っ張りかねない力差がある。そのため、生き延びることが重要だと何度も自分に言い聞かせる。
「ひどいな……いたいけな子供を寄ってたかってさ」
リーヤは大きなハンマーを構えると、ひょいとジャンプをし、地面をたたく。マテリアルの力を含んだ衝撃波が周囲を襲う。その上、横に構えると振り回した。
「ぐっ」
「このくらい」
盾を構えているルカと愛梨は耐えるが、かなりの衝撃が加わっている。
ルカは必要ならば傷を癒やすことに専念しないとならないと目を走らせる。
「早いですね……」
エルバッハは行動の阻害がすることも考えていたが、意識を切り替える。動きを考えると計算して確実性を求めると、打ち損じる可能性がある。そのため、近づいてきた敵を含めて【ファイアボール】を放つ。
「気を付けますね……」
ミオレスカは集中し狙いつつも、弾の数を確実に把握して、次の攻撃に備える。【妨害射撃】を行う必要性があるからだ。敵の動きの速さについて行けるかやはり問題だ。
「巻き込めれば巻き込めるといいです【五色光符】」
奏音は符を放つ。
「いい子だからおとなしくしなさい」
マリィアは唇を噛む。素早くリロードすると、生きているモノを守るためトリガーを引き【ハウンドバレット】を放った。
「食えねぇ羊はいらねー。子どもの遊びには付き合いはするぜ」
トリプルJは再び【ワイルドラッシュ】を放つ。
「こちらには来させません【プルガトリオ】」
ルカが放つ魔法が、集まる敵も含めてさく裂する。
「何が面倒くさいのか?」
エラはリーヤに対し【機導剣】で挑む。先ほど嫌がられたということは、苛立たせて正常な判断をさせづらくすることができるだろうから。
「ここまで来るなら【修祓陣】」
愛梨は護法籠手にある力を解放し、仲間を守る力とした。
膠着状態が続く。しかし、雑魔は減り、リーヤに疲れが見えるようだった。
ハンター側にはルカの傷を癒す力とシールも微力ながら持っている。そのため、【強制】さえかけられることがなけば、ハンターは有利だった。
「なんで、ボクを拒否するんだ!」
リーヤが苛立ちを見せた。
「ごめん、リー」
「……僕はリーヤが一番の親友だと思っているよ」
ライルとシールが淡々と告げる。言葉通りに感情を表すと付け入るスキを与えるようだった。
「嘘つき! なら、ボクと一緒に――」
ライルとシールは悲しそうな顔で彼を見る。そして、ハンターたちの攻撃に合わせて、それぞれできる攻撃をしたのだった。
「来――て……ぐっ、うわああ」
リーヤは貫かれると、塵となって消えた。
●未来を前に
雑魔も刈り取ると、ぼこぼこと穴が開いた土地が残る。
ライルはため息をつき、シールは膝をつく。
「……無事でよかった。この辺りの司令塔は倒したということは、あとは雑魔がいるかどうか確認すれば……いいわけよね」
マリィアが二人に声をかける。リーヤがこの辺りで強い歪虚であろう、今わかっている状況では。
「歪虚としての本気でもあり、子どもとしての本気にもとれた……」
エラはリーヤの行動から、兄と親友への思いは感じ取れた。生死を分けて進んでしまった今、歪虚は倒さないとならない相手だ。二人が前を見ていることは救いだ。
「怪我……もう治せないですが……」
「一旦戻るんだろう? これ以上、何も出なければ大丈夫だ。ルカ、お疲れさん」
「いえ、皆さんこそ……お疲れ様です」
トリプルJにルカは頭を下げる。
「一応何もいないか確認していったほうがいいよね?」
「ここくらいは見て行ったほうがいいのでしょうか。敵がいないとは限りませんし」
「式符で……」
「なるほど」
奏音と愛梨が余力があるため、少し集団から離れ捜索する。
「ここ、だけでなく、どこでも歪虚化は起こるのかもしれません」
ミオレスカがぽつりとつぶやく。大陸の方では歪虚に惹かれた少年がいたし、東方の地でも怒りから歪虚となった人たちがいた。
各所で歪虚絡みの事件にかかわってきた者たちは同意を示す。
「楽しく元気に過ごしているだけでも、歪虚は減るような気がします」
「ミオさん……まるで、民間療法みたいですよ。笑っていると病気が減る、というような」
エルバッハが苦笑する。言いたいことはなんとなくわかっていた。歪虚がいると悲しみがあるのか、悲しみがあるから歪虚が生じるのか。
「故人をしのびつつ、甘いものでも食べましょうか。桜餅、きっとおいしいですよ」
ミオレスカの控えめな笑顔につられて、桜餅を手にするライルとシール。頬ばると甘みが口に広がる。
シールは涙をこぼし、笑顔で「おいしい」という。
「そうだな」
ライルはシールの頭をかき回し、髪をぐしゃぐしゃにして怒られた。
一行は港に無事に戻った。
元の土地に戻れる人がどれだけいるのかわからないが、開拓が一歩進んだのは間違いなかった。
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相談卓 エルバッハ・リオン(ka2434) エルフ|12才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2018/05/14 11:40:46 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/05/13 11:37:57 |