ゲスト
(ka0000)
【陶曲】もんきちさいきょうのCAM
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 7日
- 締切
- 2018/05/21 19:00
- 完成日
- 2018/05/31 03:37
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
どことも知れない地下深く。
嫉妬の歪虚モンキチはシンバルを叩き喜びを表している。
『ウッキキキー! 出来た出来た! とうとう出来たぞー!』
苦節数カ月。手間と労力と復讐心の結晶である「モンキチさいきょうのCAM」がついに完成したのだ。
我ながら惚れ惚れする出来栄えであると自画自賛するモンキチの周囲には、部下というか手下というかそんな感じのダニ歪虚がびっしり取り巻いていた。
『何だお前ら反応悪いな。拍手しろ、拍手!』
ダニの知能は0に等しいがモンキチの命令は聞く。それぞれ脚部をたたき合わせて拍手した。意味はさっぱり分かっていないながら。
そこにしわがれた声。
「おやモンキチ、出来たのかい」
シルクハットに燕尾服といった装いの小柄な老人が、闇の中から現れた。
『あ、ラルヴァさま!』
モンキチはそちらに向かってうれしげに跳ねて行く。シルクハットに飛び乗る。
『そーなんだ、出来たんだ。これから地上で試運転させてみるんだ。これさー、これさー、変形すんだぜ』
「ほほう、それは面白そうだね。やってみせてくれるかい?」
『いいよー』
モンキチはシルクハットから跳び離れ、自分の体に合うよう改造した小さなコクピットのハッチを乗り込む。
彼の存在を認識するや、操縦システムが自動的に起動された。
システム・オールグリーン。
モンキチが右手を振り上げ、きいきい声を上げる。
『トランスフォーム!』
それに応じてCAMの外殻が割れた。各部位のジョイントが外れ、移動し、再結合され、全く別の形を作り上げる。
老人はしわの寄った口元をうっすら持ち上げた。
「ほほう、これはなかなか大したものじゃないか。上手に作ったね、モンキチ」
『でしょ、でしょ! オレ様すっげー研究したんだ、リアルブルーの資料とか一杯見てさー。カッツォは最近エバーグリーンのもんばっかり使ってるけど、オレは断然リアルブルーのもんの方がいいね! 巨大メカとか、デザインすげーかっけーもん』
「クリムゾンウェストにもアーマーやゴーレムといったものがあるが、そっちはどうだね?」
『んー、アーマーはともかくとしてゴーレムはクソ。デザインダサすぎ。乗り込めねーし』
全てのゴーレム使いにケンカを売ったモンキチは、そのまま意気揚々と地上に向かう。
●
自由都市同盟。ジェオルジ。
早朝。欠伸しながら羊小屋を開けに出た百姓は、けたたましい振動音を聞いた。
「な、なんだ?」
朝もやに包まれた平坦な野の向こうから、何かが近づいてくる。
形は魔導トラックぽい。
けれども大きすぎる。車高5メートルはありそうな感じがする。
そして前部に、回転する鋸円盤がついている……。
「うわ、うわ、うわあああ!」
百姓は身を翻し、家の方に逃げた。
トラックとおぼしきものはそのまま真っすぐ突っ込んでくる。
羊小屋をいとも簡単に中身ごと轢き潰し、速度を緩めぬまま突っ走って行った。こんな声を残して。
『ん? 今なんか轢いたか。まあいいや』
と言いながら彼は、座席の右にあるレバーを押した。
トラックの荷台部分がぱかりと開く。そこから出てきたのは、2連の砲台だった。
『プラズマキャノン、発射-!』
砲口から、膨大な量に上る負のマテリアルが照射された。前方の丘に見えた建物に向けて。
次の瞬間建物は、丘と一緒に吹き飛んだ。影も形もなく。
『うーん、あんなちんけなのじゃ、いまいち威力わかんねーな。もっとでけー建物ねーかな』
●
「わしー……」
ハンターオフィス・ジェオルジ支局隣に居を構えるコボルドコボちゃんは、欠伸しながら外に出た。
起きたら近くの小川で顔を洗うのが日課だ。オフィスの洗面所は使えない。職員が来るまで開いていないから。
「わしし」
顔をぶるぶるして、丘の向こうを見る。
もう日が上っている。小屋から出された羊がメーメー鳴いて草を食んでいる。
そろそろジュアンが来てくれるはず。オフィスを開けてくれるはず。そう思っているところに、足音。
「あ、コボちゃんおはよー」
……ジュアンではない。マリーだ。いつもジュアンより早く来たことなどないのに今日はどうしてだ、と怪しむコボちゃん。
そんな彼をマリーは抱き上げ、しまりのない笑顔で言った。
「あのね、あのね、昨日ナルシスくんと……きゃー!」
勝手に興奮し勝手にぎゅうぎゅうされる。大迷惑だとコボちゃんは思う。ので、暴れてすたこら逃げた。
「あっ、ちょっと待ちなさいよ、話を聞いてってば!」
それを走って追いかけるマリー。
そこへ道の向こうからジュアンがやってきた。
「あれ、マリー。どうしたの、こんなに早く――」
その時ハンターオフィスが、謎の光線によって吹き飛んだ。
●
通報を受け現場を訪れたハンターたちは、牧草地に残された幅4メートルほどの掘り返し跡を見る。潰れた家屋や家畜小屋、サイロの姿も。そして、避難していた周辺住民からことの次第を聞く。
「暴走トラック?」
「はい。いきなりどこからともなく現れて……どこかへ去って行きまして。なにしろあれよあれよという間の出来事でして、私たちも詳しくは確認することは出来なかったのですが」
「何の前兆もありませんでしたので……まさかこんなことになるとは……夢にも思いませんで……」
近隣には、クレータの出来た丘もあった。砲撃を食らったとのこと。聞けばここにハンターオフィス・ジェオルジ支局があったとか。
「うわあああ……職場が……」
「なんなのよ一体! どうしてくれんのよ!」
「わしわし、わしー」
職員のジュアン、マリー、コボちゃんが離れた場所にいて無事だったというのは不幸中の幸いだが、修復には時間がかかりそうだ。オフィス本部の支援があるとは思うが。
「……とにかく、そのトラックとやらの後を追わないとな」
「幸い痕跡は残しまくっていますからね。そう難しいことではないでしょう」
●
モンキチはCAMトラックの操縦席ではしゃいでいた。野を越え山越え悪路を無視し突っ走る。障害物を切り刻み引き潰しながら。
その時速――平均90キロ。
『ヒューッ! オレ様かっけー!』
モンキチはそのことにたいへん満足である。
やはりというか、ハンターたちが迎撃に集まってきたことにも満足である。
何故なら、ようやく仕返しが出来るからだ。
『ウキキキキキ、来やがったな』
モンキチはトラックの方向を変えた。
『トランスフォーム!』
●
追跡していたハンターたちの目の前で、暴走トラックが変形する。
それは、これまで見たこともない型のCAMだった。
背は曲がっている。
胸と肩幅が妙に広い。
足は短いが手は長い。
端的に言ってその形は、『人』のものではなかった。
あえて言うなら、そう。
「……ゴリラ?」
リプレイ本文
●モントラ参上
R7エクスシアを駆るコーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)は、土煙を吹き上げながら近づいてくるトラックに、ミサイルランチャー『ガダブタフリール』の照準を合わせた。
引き金を引く。
八連装のミサイルが唸りを上げ目標に向かって行く。だがトラックは攻撃を全てかわした。
――とにかく足が速い。時速90キロは出ているのではないだろうか。
エーミ・エーテルクラフト(ka2225)はそのように思い、自身のリーリー『アーテリー』に囁く。
「アーテリー、回避のほかにもしっかり盾を使ってね?」
トラックの前面には横一列に6連の円盤カッターが取り付けられている。それは唸りを上げて回転し、行く手の地面とその上にあるものを見境なく粉砕していた。
コンフェッサー『シャイニングウィザード』の中でゾファル・G・初火(ka4407)が、組んだ指をぽきぽき鳴らす。楽しい遊び相手を見つけたかのように目を輝かせて。
「単純なスピード勝負じゃ、勝てないなーあれ」
そのときトラックから甲高い声が響き渡った。
『ウキキキキキ、来やがったな』
ゾファルはその声に聞き覚えがあった。組んだ指をほどき、にやりと口の端を上げる。
「ははーん、性懲りもなくやってきやがったなこのエテ公。こないだは見逃してやったのに命がおしくないんじゃーん?」
同じくその声に聞き覚えがある天竜寺 舞(ka0377)は、魔導型デュミナス『弁慶』の操縦席から腰を浮かしかける。眉を吊り上げて。
「エテ公!」
東條 奏多(ka6425)はトラックの運転席に目をこらした。
彼の鋭い目は運転者の姿を捕捉する――背中に大きな巻ネジをつけた、小さなブリキのサルだ。
思わず次の言葉が口をついて出る。
「なんだ、サルがおもちゃ持ってはしゃいでるだけじゃねえか」
その直後サルは彼の刻令ゴーレム『Gnome』を腐してきた。
『うわ、ダッセーwwなんかゴーレム使ってる奴いるクソダセエww下半身キャタピラとかwwイモ過ぎて死ぬww』
奏多は決意した。サルとトラックをまとめて鉄くずにするということを。
ルベーノ・バルバライン(ka6752)は呵々大笑した。R7エクスシアでジグザク走行をして存在を誇示しつつ、トラックに接近して、相手の注意をひきつける。そして煽りまくる。
「分不相応な大型車の中からしかイキり倒せんとは……ハーッハッハ、自分が不細工で力も知恵も不足していると良く分かっているようではないか! 身の程を弁えるなら許してやるぞ、エテ公!」
『んだと! 一般CAM使用者のくせしていい気になってんじゃねえ! オレ様のCAMは無敵だコラァ!』
思った通りのよい反応に満足しつつ彼は、バズーカ『ロウシュヴァスト』を撃つ。
モンキチが叫んだ。
『トランスフォーム!』
トラックからまばゆい光が発された。と同時に、バリヤーが張られた。バズーカはすべてそのバリヤーに弾かれる。
それを見た他のハンターたちは、一斉攻撃に移る。
ゾファルがバズーカ『ロウシュバウスト』を、最短射程距離からぶちこんだ。
「そのバリヤー無敵なんだろ? 耐えて見せろや、ホレイッキイッキ」
コーネリアもリロードしたミサイルランチャーを、最短射程距離から撃ち込む。
精霊纏化で巨大な銀の鎧を纏った岩井崎 旭(ka0234)が、フェンリルライズによるオーラを纏ったイェジド『ウォルドーフ』と共闘する。
「わざわざバリヤー貼ってるってことは、突破出来りゃあ脆いってこったろ。出し惜しみは無しだ!」
舞は武器をライフルから魔導槍鋸『ドレーヴング』に持ち替え、連激を繰り出した。
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は鋼刀『大輪一文字』で斬り付ける。奏多は絶火刀を振り上げる。相手に対する挑発を忘れずに。
「どうせそのバリヤーのせいですぐガス欠になるんだろ? だったらただの欠陥機だな」
トラックの周囲に展開しているバリヤーはハンターたちの総攻撃により損傷を受け、いくらかその大きさを縮小させる。
しかし消滅にまでは及ばなかった。バリヤーはモンキチを守りきった。
トラックが分割され組み替えられ別の形になっていく。
エーミは魔導カメラを向け、その過程を写真に撮った。どうやらこの歪虚、CAMに対してかなりのこだわりを持っている相手らしい。ならばこれが気を引く材料に出来るかもしれないと思って。
きっかり20秒かけてトラックは、身の丈10メートルあるゴリラ型CAMに変形する。同時にバリヤーが消えた。
勝ち誇るようなモンキチの声。
『じゃじゃーん! 見ろー! オレ様のスペシャル改造CAMだー!』
コーネリアは舌を打つ。どうも面倒なことになってきたようだ、と。
「あのエテ公、コソコソと何を企んでいるかと思えばこいつが狙いか。いいだろう、奴の最高傑作も今日限りで見納めだ」
ひとまずエーミはアースウォールを立ち上げた。ゴリCAMの進行方向に向けて。
「みんな十分に気を付けて、っていっても難しいわよね?」
彼女は修祓陣を発動する。ゴリCAMに肉薄する前衛メンバーが中に入るように。
秦多のゴーレムに命じ、罠の設営を始めた。なるべく相手に気づかれないようにして。
旭はウォルドーフに言い聞かせる。
「いいか、あのデカさと重さに任せて轢き逃げされたら、最悪なことになるからな。下敷きにだけはならないように気をつけろ!」
●ゴリCAM見参
変形機構を付けている上変形中の対策までとっているとは、モンキチの癖に生意気過ぎ。
苦々しく呟いて舞は、105mmスナイパーライフルを構える。
「おいこら! エテ公! そんなゴリラもどきであたしらが倒せるとでも思ってんのか!?」
ゴリCAMは弾を受けたが、ダメージはほとんどなし。装甲の強度はかなりのものなようだ。
『へへー、なんだそんなもん。オレ様のCAMにはハナクソほどにも通じねえぜww』
と言ってこれ見よがしにアースウォールを殴りつけ、一撃のもとに粉砕する。
「確かにゴリラはリアルブルーでも大人気で何本も映画ができたと聞くが、お前のようなエテ公主役の映画の話はとんと聞いたことがない! 自分を三下以下の端役と認めて他の威を借る、実に三下のエテ公らしいぞ、ハハハハハ」
ルベーノの鎧通しがゴリCAM目がけて炸裂する。
ゴリCAMは急所への攻撃を体捌きでかわした。そして反撃した。
『食らえ、ゴリパンチ!』
通常CAMより二回りは太い鋼の腕が、エクスシアの腹部に入る。マテリアルカーテンの防御があってなおその一撃は、コクピットの中にいるルベーノにまで伝わってくる。胃液が一瞬込み上げかけた。が、何事もなかったように装う。
「ク……ハハハハ! その程度かエテ公! いくら機体が優れていようが乗る者がエテ公ではどうにもならんな!」
『んだとてめえ!』
ゴリCAMの両手がエクスシアの頭部を掴み、めきめきという音を立て潰して行く。
直後旭が魔斧『モレク』の二連撃を踵に見舞い姿勢を崩させた。
『ムキィ! 邪魔すんじゃねえ!』
ゴリCAMは彼に向け腕を振り上げる。
ウォルドーフがその正面に飛び出し牙をむいた。
モンキチは一瞬気圧された。そのせいで拳がずれた。
地面が陥没し大量の土砂が吹き上がる。
『このくそ犬!』
ゴリCAMはウォルドーフに向け何度も手のひらを打ち付ける。ウォルドーフは跳躍し、それらを避けた。
イレーネがそこに参戦した。ゴリCAMの前に回り込み、咆哮し、動きを封じようとする。
モンキチは明らかに苛立っていた。猿だから犬的なものが苦手なのかどうなのか。
『うるせえ!!』
ゴリCAM両腕の上部がばかりと開いた。
そこから出てきたのは片方に2つづつ、合計4枚の円盤カッター。それがイェジドたちを襲う。
肉にまで達する傷を負うものの、2匹は退却しようとしない。
「頼むぜウォルドーフ。お前が頼りだ! デカいからって狼がゴリラに負けてらんねーだろ!」
旭はウォルドーフにライフリンクをかけ、回復させる。
イレーネにはアーテリーがリーリーヒーリングをかけ、回復させる。
そこでアルトが仕掛けた。炎のごときオーラをまとい瞬時に加速。一気に間合いを詰め、ゴリCAMの腕に大輪一文字を叩き込む。
「躊躇と加減を加減を知らん馬鹿には、早々退場願おうか!」
ソードブレイカーがうまくきいた。腕に仕込まれていた円盤カッターの回転が止まってしまう。
舞の弁慶がゴリCAMの背に乗り掛かる。魔導鋸槍『ドレーウング』を突き刺す。肩の関節目がけて。
槍の先に取り付けられた丸い刃が回転し、機体の継ぎ目に入った。
「マジでゴリラで勝てると思ってんの? バーカバーカ!」
次の瞬間ゴリCAMの背中がばくっと割れた。残り2つの円盤カッターが飛び出してきた。
「ちっ!」
舞は反射的に相手の背を蹴り離れたが、弁慶の肩から胸にかけ深い切り込みが入った。
『キャキャキャ! ざまーみれバーカバーカ!』
●ゴリCAM大活躍
自分が今展開している修祓陣の結界内においてあれほどのダメージを与えられるということは、やはりあのCAMただものではないとエーミは思う。思いながらアースウォールを立て直し続ける。。
奏多は作業中であるゴーレムを庇うように、アクセルオーバーによる残映をまとって、ゴリCAMに突っ込む。
シャイターンを膝にひと太刀浴びせ、立て板に水の挑発。
「よう、えらい調子のってんなチンパン! そんなCAMお前みたいなチンパンが作れるわけないだろ、どこで盗んできた」
『チンパンじゃねーモンキチ様だ!』
「はぁ? モンキーならチンパンじゃねーか。顔と同じでアホだなこの単細胞。鳥頭の方が100倍ましだ」
『殺す!』
ゴリCAMが奏多を狙って全力のパンチ。
奏多は直撃を避けた。
彼と入れ替わるように、コーネリアが出た。Mハルバード『ウンヴェッター』を発動体としマテリアルライフルを浴びせる。
「貴様の思考回路はすぐキレることしかないんだな? そのざまでは先は永くは無かろうよ」
紫色の光線がゴリCAMの巨体を直撃したじろがせた。表面の塗装が一部はがれ落ちる。
首の角度がおかしくなったルベーノのエクスシアが、ゴリCAMの横っ面に拳を入れた。
「所詮エテ公、知恵も力もその程度か。お前ごとき低脳の部下しか居ないとは、嫉妬王も先が見えたな、ハッハッハ」
『んだと、この量産型! ナメんじゃねえ!』
負けじとゴリCAMはエクスシアへ体当たりを加えた。姿勢を崩した相手の上に、雨あられと拳を降り注がせる。
そこに技と呼べるものはない。ただ単に感情の赴くまま腕を振り回し、当てているだけだ。しかし機体のあり余る破壊力が、雑な攻撃を十二分に補っている。
そこでゾファルが動いた。
前回モンキチとやり合ったとき取り逃がしてしまった事について彼女は、いささか責任を感じていた。なので今回はきっちり引導渡してやる所存である。
斬艦刀『天翼』を抜き放つ。
まずは搭載されていると報告にあったプラズマ砲から破壊したいところだが、ゴリCAMに変化した時点で在りかが分からなくなっている。恐らく円盤カッター同様、体内にしまい込まれているのだろう。なのでひとまず頭部に目標を定める。
「チェストォォォォォ」
『ウキ!?』
真上から振り下ろされてきた巨大な刃をモンキチは――避けた。
ゾファルはそれを揶揄する。
「あーれー、なんで避けちゃうんじゃん? さてはゴリCAM弱いんじゃん?」
『んだとぉ……調子のんじゃねーぞ人間のくせに!』
ゴリCAMがゾファルに向け拳を振り回す。ゾファルは敏捷にかわし、致命的なダメージを免れた。
奏多がモンキチの注意を引きにかかる。
「おいおい、興奮するなよチンパン。バナナやるから早く森に帰れ?」
ルベーノも参加する。
「違うぞ奏多。こいつはそもそもチンパンですらない。ブリキの三文玩具だ。帰るべきなのはワゴンセールのカゴの中……いや、それともゴミ置き場かなハッハッハ」
ここでモンキチの怒りは頂点に達した。
『てめえらぶっ殺す!』
ゴリCAMの頭が割れた。2連のプラズマ砲が顔を出す。砲口に黒い光が収束していく。
舞は考えるより先にスナイパーライフルを構えた。引き金を引いた。来るべき衝撃を相殺させようと。
奏多はラストテリトリーを発動させた。パリィグローブを中心に光の障壁が生まれる。
発射されたプラズマ砲は周囲全体に拡散するべきだったその力を、奏多一人に収束させる。
この時点においてエーミの修祓陣の効果は生きている。舞のプラズマシューターによる効果もあった。
しかしそれらの効果があってなお、破壊力を消すことは出来なかった。
奏多のいた場所に深い深い穴が穿たれる。彼の姿は――見えない。衝撃波によってその穴の底に叩き込まれたのだ。
「……くそお……俺の方が穴に落ちてどうすんだよ……」
かなりボロボロだ。
とはいえ、生きてはいる。自力で穴をはい上がれるくらいには力も残っている。
●CAM→トラック
地面に空いた穴から、濃い負のマテリアルが立ちのぼっている。周囲に生えている草がみるみるうちに枯れて行く。汚染だ。
旭は世界樹の盾を地面に突き立てた。「祓いしもの」を発動させた。汚されていた周辺のマテリアルが浄化されて行く。
ゴリCAMは開いていた頭をいったん戻す。どうやら連続してプラズマ砲を撃つことは出来ないらしい。
エーミはいかにも感心したような表情を作り、モンキチに呼びかける。
「わあ、すごい。頭が開いて砲が出るなんて、とてもオリジナリティに溢れているわ」
『へっ。やっと分かったか。オレ様はスゲーんだ。敬ってひれ伏せ』
「そうね、いつか機会があったらそうするわ。ところであなたのCAMのとってもかっこいい変身の完全なコマ送り写真撮っているんだけど……見たい?」
と言いながらエーミは、魔導カメラを掲げ振る。予想通りモンキチは大いに反応した。
ぐぐっと前かがみになって、カメラに手を伸ばそうとする。
『それ、よこせ』
「あら駄目よ。魔導カメラってすごーく高いんだから。おさるさんには、とても触らせられないわ」
と言ってエーミは、アーテリーを方向転換させ走り出す。
モンキチはそれを追って足を踏み出した。
『よこせよ!』
周囲に転々と壁のようなものが出来ている。奏多のゴーレムがスキル「wall」で作ったものだ。
その後ろにエーミが隠れる。
モンキチは見た目盛り土にしか見えないそれを軽んじた。
『なんだこんなもん』
と踏み付け進んで行った矢先――4メートルの深さの縦穴に足を突っ込んだ。
奏多のゴーレムがスキル「hole」で作った罠だ。モンキチは見事それに引っ掛かったのである。
『うおおおっ!? なんだコンチクショー騙しやがったな!』
急いで穴から足を抜こうとするゴリCAM。
この好機をハンターが見逃すわけがない。
コーネリアはマテリアルライフルで制圧射撃をかけ、ゴリCAMの動きを制した。
「こんなオモチャで遊んでいる暇があったら生身で戦え。その方が貴様を殺す甲斐があるからな。どうした、怖いのか?」
動きが止まっている相手に銃弾はとてもよく当たった。
加えてエーミが風雷陣を放つ。
立て続けの雷撃はゴリCAMの回路に悪影響を及ぼした。作動系統の一部に混乱が生じる。外にはっきり現れないまま蓄積されていた機体へのダメージが、それをきっかけとして徐々に顕在化し始める。
舞が再び背中に乗り掛かり攻撃して来た際、背中から円盤カッターを出したものの、それを動かすことが出来なかった。
「あれあれー、どうしたのエテ公、もう壊れちゃったわけこのCAM?」
舞の斧は円盤カッターの刃を欠いた。
旭はファントムハンドを延ばし破壊されたパーツを掴む。そうしておいてから殴りつける。
ガタガタになっていた円盤カッターが一対もぎ取れた。
穴底から地上に戻ってきた奏多はゴーレムにマテリアルバーストを使わせ、上がってこようとするゴリCAMの動きを邪魔する。
そうしておいて絶火刀を振るい、もう一対の円盤カッターを削ぎ落とした。
「そも変形機能のために無駄が多すぎる、機能美もわからないやつが様式美を語るな」
ゴリCAMの周囲を取り囲んでいた3体のシャイニングウィーザード(2体はマテリアルバルーン)がその周囲であかんべしたりお尻ペンペンしたりして、野次る。
「やーい、もう壊れたー」「安物ー」「サルが作ったゴミに負けるわけないじゃんばーかばーか」
『ムッキー!』
妨害を受けつつ何とか穴から脱出したモンキチは、すぐさまバリヤーを展開した。
『トランスフォーム!』
周囲にいたハンター、及びユニットがバリヤーの内部から弾き出される。
トラックになったゴリCAMはバリヤーが解除されるや、逃げようとした。
「おいおい、わざわざ変形まで自慢しといて、俺らにトドメも差さずに逃げるってこたぁ、ねーよなぁ? ウォルドーフ!」
旭の声に応えウォルドーフがトラックの前に飛び出した。
フェンリルライズを使って巨大化した体でブロッキングを試みる。
『どけこのやろう!』
トラックの円盤カッターがウォルドーフの正面から激突する。
イレーネも進路妨害を試みた。トラックのバンパーに齧り付く。
両者力で競り負けたものの、すでに動きを止めてしまっている円盤カッターを破壊した。
そういった小競り合いがあった故、トラックの発進が遅れる。
アクティブスラスターを全開にした弁慶が追いついてきた。スナイパーライフルを構え、タイヤを狙う。
「何? 勝てないと思って逃げ出すの? なっさけない猿だねー」
『ちげーよ!』
狙いは外れた。
しかしモンキチのトラックは停止する。奏多のゴーレムがスキル「bind」で作った罠に引っ掛かったのだ。
ゾファルは遠慮会釈なく大爆笑してやった。
「マジか、もうエンコしてやんの! クソダセー!」
エーミは相手が距離を大きく離し逃走するなら幻獣ミサイルを使おうと思っていたが、どうやらそれを使う必要は無さそうだった。リーリーヒーリングにより素早く仲間の負傷を癒し、トラック前方にアースウォールを立ち上げる。
トラックの荷台が開きプラズマ砲が顔を出した。黒い光が砲口に収束して行く。
奏多は再度ラストテリトリーを展開した。砲の重圧はまたしても、すべて彼にかかる。それによって他のハンターに及ぶダメージは大幅に押さえられた。
コーネリアはトラックに追いつくやコクピットのハッチを開け、重機関銃『ラワーユリッヒNG5』による制圧射撃を浴びせた。キラースティンガー、並びにフローズンパニッシャーも交えて。
凍った弾丸がトラックのタイヤに食い込み、貫き、破壊する。
そこへ傾いだルベーノの機体が近づいてくる。足を引きずりながら。彼自身も彼の機体も相当のダメージを受けてはいたが、まだ行動不能になっていなかった。
それを見たモンキチは、運転席の内側からシャッターを降ろす。ルベーノはその行動をあざ笑った。
「守りだけは万全というわけか、いかにも臆病者の機体にふさわしいではないか、ハハハハハ!」
それから、ひたすら殴りつける。
ゾファルもそれに加勢した。
「サルが作ったゴミに負けるわけないじゃーん、やーいばーかばーか」
彼女は斬艦刀をこれでもかというほど、思い切り、トラックの荷台に振り下ろす。
積んであったプラズマ砲の砲身がひしゃげた。
と同時にバリヤーが張られた。
トラックは再びゴリCAMへと組み変わった。しかし、それは不完全なものだった。パーツが破損したので、組み替えがうまくいかなくなったのだ。円盤カッターを収容していた腕と背中の部分に隙間が出来ている。
旭とウォルドーフは再び巨大化し、ここぞとばかりその部分に猛攻を加える。斧と牙を食い込ませ、傷口をさらに大きく押し広げようと試みる。
ゴリCAMは危険と判断し間を取ろうとした、その足を舞が、ワイヤーウィップで絡める。前足をついての歩行をしているため転倒することはなかったが、動きが止まった。
ゾファルは引き続き斬艦刀を振るった。
エーミは残っていた符をすべて使い、風雷陣を2度放つ。落雷を受けたゴリCAMの開口部から火花が上がった。
ショートが起きたようだ。
アルトはゴリCAM頭部のパーツ接合部がわずかに開いたのを見逃さなかった。カッターの収納部と同様、可変部分の緩みが激しくなっているらしい。
「どこを見ている? お前の敵は一人ではないぞ」
紅糸で紐づけられた手裏剣『飛燕十文字』をその箇所に目掛けて飛ばし、食い込ませ、破壊しようとする。
舞が狙うはゴリCAMの頭である。あそこに収納してあるプラズマ砲を完全に破壊してしまえば、もう相手に武器はなくなるのだ。馬鹿力以外。
「脳天かちわってやるよ、ゴリ吉ィ!」
次の瞬間、ゴリCAMの頭頂部が開いた。
『調子乗ってんじゃねーぞゴラァ!』
シールドを構えた相手にプラズマ砲が放たれるはずであった。
しかしそこでハンターはおろかモンキチにすら予想していなかった事態が起きた。
プラズマ砲がその場で破裂したのである。先のゾファルの攻撃により砲身が歪んだためのアクシデントだ。
モンキチがマテリアル砲を撃つ余地はまだあった。マテリアルエネルギーは尽きていなかった。だけに、爆発がより激しいものとなった。
周囲への巻き込みはもちろん、ゴリCAMも上半分がほとんど吹き飛ぶ。
そのさい起きた爆発は、数キロ離れた場所からも確認出来た。
もうもうと上がるきのこ雲を見た人は、誰しもが思ったそうだ。ハンターが全滅したのではないかと。
幸い、そんなことはなかった。
――衝撃から立ち上がった旭はくらくらする頭を振り、周囲の無事を確かめる。
「……なんだおい、勝てねえと悟って自爆したのかあのサル」
コーネリアは機体を立て直し、首を振る。
「いや、奴にそんな殊勝心掛けはなかろう。今のは恐らく事故だ」
「あたしもそう思う」
同意した舞は目をこらした。土煙の向こう、ちらっと小さい影が動いた。爆発の影響か、動きが鈍っている。
「そこかああ!!」
『ウキッ!』
モンキチは逃げた。いつぞやのように。しかしいつぞやとは違い、彼の性格を読んだゾファルが先回りしていた。
「そう来ると思ってたじゃーん!」
広げられたマテリアルネットが、動きの落ちているモンキチの尻尾を捕らえた。
舞はヒートソードをかざし最速で、ものも言わずに打ちかかる。
モンキチは頭を開き、仕込んである銃で対抗しようとした。しかし敵は彼女一人ではない。
アルトが破格の攻撃力を乗せた鋼刀を振りかざしてくる。それからコーネリアが、秦多が――
『ウキー!! てめえら一人に対して大勢で来るなんて卑怯――』
お前が言うのかというような台詞の後、先程のゴリCAMに比べだいぶ見劣りする爆発が起きた。
モンキチは粉みじんに吹き飛ぶ。
それを見て奏多は勝ち誇った一言を呟いた。あちこち焦げ跡だらけになった自分のゴーレムを見上げて。
「単純にゴーレムの方が有能」
●事後処理
「退治されたの? よかったー。あんなのがいつまでもこの辺うろうろしてたら、危なくて仕事も出来ない所だったわ」
モンキチを始末した後、ハンターオフィス・ジェオルジ支局の破壊現場に戻った舞は、マリーらが元気であることを確認し一息ついた。それから、コボちゃんに目を向けた。
自分のおうちがなくなったのがショックなのか、草の上に座りいじけている。
「わしいい……」
彼女はその体を抱き上げ、励ましてやった。
「大丈夫だって、また立て直してやるから」
その後ろではゾファルが、荷を積んだトラックの指揮をしている。
「オーライオーライ、大事に運んでくれよー。世にも珍しい変形CAMの残骸だからなー」
彼女の希望によりゴリCAMの残存物は、今後の研究のためフマーレに運び込まれることとあいなった。
●モンキチ→?
夜中。
ゴリCAMの炸裂跡が残るぼこだらけの牧草地に、一人の小柄な老人が現れた。シルクハットを被り、しゃれた燕尾服を着ている。
「おやおや……派手にやられてしまったようだね……とても面白くていい子だったのだけど……」
と言いながら彼は人差し指を動かす。
すると地面の中から巻ネジがひとつ、ぽこりと浮き上がった。
彼はそれを手にしハンカチで拭き、それから――抱き抱えてきたブリキのウサギの背に指した。
そして、クルクル回す。
ブリキのウサギがぴょこんと顔を上げた。
『あれ? ここはどこ? おじいさんだれ?』
「私かい。私はラルヴァというんだよ」
『ふーん。ぼくはだれ?』
「キミは、そうだな――ぴょんきちとでも名付けようか……」
R7エクスシアを駆るコーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)は、土煙を吹き上げながら近づいてくるトラックに、ミサイルランチャー『ガダブタフリール』の照準を合わせた。
引き金を引く。
八連装のミサイルが唸りを上げ目標に向かって行く。だがトラックは攻撃を全てかわした。
――とにかく足が速い。時速90キロは出ているのではないだろうか。
エーミ・エーテルクラフト(ka2225)はそのように思い、自身のリーリー『アーテリー』に囁く。
「アーテリー、回避のほかにもしっかり盾を使ってね?」
トラックの前面には横一列に6連の円盤カッターが取り付けられている。それは唸りを上げて回転し、行く手の地面とその上にあるものを見境なく粉砕していた。
コンフェッサー『シャイニングウィザード』の中でゾファル・G・初火(ka4407)が、組んだ指をぽきぽき鳴らす。楽しい遊び相手を見つけたかのように目を輝かせて。
「単純なスピード勝負じゃ、勝てないなーあれ」
そのときトラックから甲高い声が響き渡った。
『ウキキキキキ、来やがったな』
ゾファルはその声に聞き覚えがあった。組んだ指をほどき、にやりと口の端を上げる。
「ははーん、性懲りもなくやってきやがったなこのエテ公。こないだは見逃してやったのに命がおしくないんじゃーん?」
同じくその声に聞き覚えがある天竜寺 舞(ka0377)は、魔導型デュミナス『弁慶』の操縦席から腰を浮かしかける。眉を吊り上げて。
「エテ公!」
東條 奏多(ka6425)はトラックの運転席に目をこらした。
彼の鋭い目は運転者の姿を捕捉する――背中に大きな巻ネジをつけた、小さなブリキのサルだ。
思わず次の言葉が口をついて出る。
「なんだ、サルがおもちゃ持ってはしゃいでるだけじゃねえか」
その直後サルは彼の刻令ゴーレム『Gnome』を腐してきた。
『うわ、ダッセーwwなんかゴーレム使ってる奴いるクソダセエww下半身キャタピラとかwwイモ過ぎて死ぬww』
奏多は決意した。サルとトラックをまとめて鉄くずにするということを。
ルベーノ・バルバライン(ka6752)は呵々大笑した。R7エクスシアでジグザク走行をして存在を誇示しつつ、トラックに接近して、相手の注意をひきつける。そして煽りまくる。
「分不相応な大型車の中からしかイキり倒せんとは……ハーッハッハ、自分が不細工で力も知恵も不足していると良く分かっているようではないか! 身の程を弁えるなら許してやるぞ、エテ公!」
『んだと! 一般CAM使用者のくせしていい気になってんじゃねえ! オレ様のCAMは無敵だコラァ!』
思った通りのよい反応に満足しつつ彼は、バズーカ『ロウシュヴァスト』を撃つ。
モンキチが叫んだ。
『トランスフォーム!』
トラックからまばゆい光が発された。と同時に、バリヤーが張られた。バズーカはすべてそのバリヤーに弾かれる。
それを見た他のハンターたちは、一斉攻撃に移る。
ゾファルがバズーカ『ロウシュバウスト』を、最短射程距離からぶちこんだ。
「そのバリヤー無敵なんだろ? 耐えて見せろや、ホレイッキイッキ」
コーネリアもリロードしたミサイルランチャーを、最短射程距離から撃ち込む。
精霊纏化で巨大な銀の鎧を纏った岩井崎 旭(ka0234)が、フェンリルライズによるオーラを纏ったイェジド『ウォルドーフ』と共闘する。
「わざわざバリヤー貼ってるってことは、突破出来りゃあ脆いってこったろ。出し惜しみは無しだ!」
舞は武器をライフルから魔導槍鋸『ドレーヴング』に持ち替え、連激を繰り出した。
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は鋼刀『大輪一文字』で斬り付ける。奏多は絶火刀を振り上げる。相手に対する挑発を忘れずに。
「どうせそのバリヤーのせいですぐガス欠になるんだろ? だったらただの欠陥機だな」
トラックの周囲に展開しているバリヤーはハンターたちの総攻撃により損傷を受け、いくらかその大きさを縮小させる。
しかし消滅にまでは及ばなかった。バリヤーはモンキチを守りきった。
トラックが分割され組み替えられ別の形になっていく。
エーミは魔導カメラを向け、その過程を写真に撮った。どうやらこの歪虚、CAMに対してかなりのこだわりを持っている相手らしい。ならばこれが気を引く材料に出来るかもしれないと思って。
きっかり20秒かけてトラックは、身の丈10メートルあるゴリラ型CAMに変形する。同時にバリヤーが消えた。
勝ち誇るようなモンキチの声。
『じゃじゃーん! 見ろー! オレ様のスペシャル改造CAMだー!』
コーネリアは舌を打つ。どうも面倒なことになってきたようだ、と。
「あのエテ公、コソコソと何を企んでいるかと思えばこいつが狙いか。いいだろう、奴の最高傑作も今日限りで見納めだ」
ひとまずエーミはアースウォールを立ち上げた。ゴリCAMの進行方向に向けて。
「みんな十分に気を付けて、っていっても難しいわよね?」
彼女は修祓陣を発動する。ゴリCAMに肉薄する前衛メンバーが中に入るように。
秦多のゴーレムに命じ、罠の設営を始めた。なるべく相手に気づかれないようにして。
旭はウォルドーフに言い聞かせる。
「いいか、あのデカさと重さに任せて轢き逃げされたら、最悪なことになるからな。下敷きにだけはならないように気をつけろ!」
●ゴリCAM見参
変形機構を付けている上変形中の対策までとっているとは、モンキチの癖に生意気過ぎ。
苦々しく呟いて舞は、105mmスナイパーライフルを構える。
「おいこら! エテ公! そんなゴリラもどきであたしらが倒せるとでも思ってんのか!?」
ゴリCAMは弾を受けたが、ダメージはほとんどなし。装甲の強度はかなりのものなようだ。
『へへー、なんだそんなもん。オレ様のCAMにはハナクソほどにも通じねえぜww』
と言ってこれ見よがしにアースウォールを殴りつけ、一撃のもとに粉砕する。
「確かにゴリラはリアルブルーでも大人気で何本も映画ができたと聞くが、お前のようなエテ公主役の映画の話はとんと聞いたことがない! 自分を三下以下の端役と認めて他の威を借る、実に三下のエテ公らしいぞ、ハハハハハ」
ルベーノの鎧通しがゴリCAM目がけて炸裂する。
ゴリCAMは急所への攻撃を体捌きでかわした。そして反撃した。
『食らえ、ゴリパンチ!』
通常CAMより二回りは太い鋼の腕が、エクスシアの腹部に入る。マテリアルカーテンの防御があってなおその一撃は、コクピットの中にいるルベーノにまで伝わってくる。胃液が一瞬込み上げかけた。が、何事もなかったように装う。
「ク……ハハハハ! その程度かエテ公! いくら機体が優れていようが乗る者がエテ公ではどうにもならんな!」
『んだとてめえ!』
ゴリCAMの両手がエクスシアの頭部を掴み、めきめきという音を立て潰して行く。
直後旭が魔斧『モレク』の二連撃を踵に見舞い姿勢を崩させた。
『ムキィ! 邪魔すんじゃねえ!』
ゴリCAMは彼に向け腕を振り上げる。
ウォルドーフがその正面に飛び出し牙をむいた。
モンキチは一瞬気圧された。そのせいで拳がずれた。
地面が陥没し大量の土砂が吹き上がる。
『このくそ犬!』
ゴリCAMはウォルドーフに向け何度も手のひらを打ち付ける。ウォルドーフは跳躍し、それらを避けた。
イレーネがそこに参戦した。ゴリCAMの前に回り込み、咆哮し、動きを封じようとする。
モンキチは明らかに苛立っていた。猿だから犬的なものが苦手なのかどうなのか。
『うるせえ!!』
ゴリCAM両腕の上部がばかりと開いた。
そこから出てきたのは片方に2つづつ、合計4枚の円盤カッター。それがイェジドたちを襲う。
肉にまで達する傷を負うものの、2匹は退却しようとしない。
「頼むぜウォルドーフ。お前が頼りだ! デカいからって狼がゴリラに負けてらんねーだろ!」
旭はウォルドーフにライフリンクをかけ、回復させる。
イレーネにはアーテリーがリーリーヒーリングをかけ、回復させる。
そこでアルトが仕掛けた。炎のごときオーラをまとい瞬時に加速。一気に間合いを詰め、ゴリCAMの腕に大輪一文字を叩き込む。
「躊躇と加減を加減を知らん馬鹿には、早々退場願おうか!」
ソードブレイカーがうまくきいた。腕に仕込まれていた円盤カッターの回転が止まってしまう。
舞の弁慶がゴリCAMの背に乗り掛かる。魔導鋸槍『ドレーウング』を突き刺す。肩の関節目がけて。
槍の先に取り付けられた丸い刃が回転し、機体の継ぎ目に入った。
「マジでゴリラで勝てると思ってんの? バーカバーカ!」
次の瞬間ゴリCAMの背中がばくっと割れた。残り2つの円盤カッターが飛び出してきた。
「ちっ!」
舞は反射的に相手の背を蹴り離れたが、弁慶の肩から胸にかけ深い切り込みが入った。
『キャキャキャ! ざまーみれバーカバーカ!』
●ゴリCAM大活躍
自分が今展開している修祓陣の結界内においてあれほどのダメージを与えられるということは、やはりあのCAMただものではないとエーミは思う。思いながらアースウォールを立て直し続ける。。
奏多は作業中であるゴーレムを庇うように、アクセルオーバーによる残映をまとって、ゴリCAMに突っ込む。
シャイターンを膝にひと太刀浴びせ、立て板に水の挑発。
「よう、えらい調子のってんなチンパン! そんなCAMお前みたいなチンパンが作れるわけないだろ、どこで盗んできた」
『チンパンじゃねーモンキチ様だ!』
「はぁ? モンキーならチンパンじゃねーか。顔と同じでアホだなこの単細胞。鳥頭の方が100倍ましだ」
『殺す!』
ゴリCAMが奏多を狙って全力のパンチ。
奏多は直撃を避けた。
彼と入れ替わるように、コーネリアが出た。Mハルバード『ウンヴェッター』を発動体としマテリアルライフルを浴びせる。
「貴様の思考回路はすぐキレることしかないんだな? そのざまでは先は永くは無かろうよ」
紫色の光線がゴリCAMの巨体を直撃したじろがせた。表面の塗装が一部はがれ落ちる。
首の角度がおかしくなったルベーノのエクスシアが、ゴリCAMの横っ面に拳を入れた。
「所詮エテ公、知恵も力もその程度か。お前ごとき低脳の部下しか居ないとは、嫉妬王も先が見えたな、ハッハッハ」
『んだと、この量産型! ナメんじゃねえ!』
負けじとゴリCAMはエクスシアへ体当たりを加えた。姿勢を崩した相手の上に、雨あられと拳を降り注がせる。
そこに技と呼べるものはない。ただ単に感情の赴くまま腕を振り回し、当てているだけだ。しかし機体のあり余る破壊力が、雑な攻撃を十二分に補っている。
そこでゾファルが動いた。
前回モンキチとやり合ったとき取り逃がしてしまった事について彼女は、いささか責任を感じていた。なので今回はきっちり引導渡してやる所存である。
斬艦刀『天翼』を抜き放つ。
まずは搭載されていると報告にあったプラズマ砲から破壊したいところだが、ゴリCAMに変化した時点で在りかが分からなくなっている。恐らく円盤カッター同様、体内にしまい込まれているのだろう。なのでひとまず頭部に目標を定める。
「チェストォォォォォ」
『ウキ!?』
真上から振り下ろされてきた巨大な刃をモンキチは――避けた。
ゾファルはそれを揶揄する。
「あーれー、なんで避けちゃうんじゃん? さてはゴリCAM弱いんじゃん?」
『んだとぉ……調子のんじゃねーぞ人間のくせに!』
ゴリCAMがゾファルに向け拳を振り回す。ゾファルは敏捷にかわし、致命的なダメージを免れた。
奏多がモンキチの注意を引きにかかる。
「おいおい、興奮するなよチンパン。バナナやるから早く森に帰れ?」
ルベーノも参加する。
「違うぞ奏多。こいつはそもそもチンパンですらない。ブリキの三文玩具だ。帰るべきなのはワゴンセールのカゴの中……いや、それともゴミ置き場かなハッハッハ」
ここでモンキチの怒りは頂点に達した。
『てめえらぶっ殺す!』
ゴリCAMの頭が割れた。2連のプラズマ砲が顔を出す。砲口に黒い光が収束していく。
舞は考えるより先にスナイパーライフルを構えた。引き金を引いた。来るべき衝撃を相殺させようと。
奏多はラストテリトリーを発動させた。パリィグローブを中心に光の障壁が生まれる。
発射されたプラズマ砲は周囲全体に拡散するべきだったその力を、奏多一人に収束させる。
この時点においてエーミの修祓陣の効果は生きている。舞のプラズマシューターによる効果もあった。
しかしそれらの効果があってなお、破壊力を消すことは出来なかった。
奏多のいた場所に深い深い穴が穿たれる。彼の姿は――見えない。衝撃波によってその穴の底に叩き込まれたのだ。
「……くそお……俺の方が穴に落ちてどうすんだよ……」
かなりボロボロだ。
とはいえ、生きてはいる。自力で穴をはい上がれるくらいには力も残っている。
●CAM→トラック
地面に空いた穴から、濃い負のマテリアルが立ちのぼっている。周囲に生えている草がみるみるうちに枯れて行く。汚染だ。
旭は世界樹の盾を地面に突き立てた。「祓いしもの」を発動させた。汚されていた周辺のマテリアルが浄化されて行く。
ゴリCAMは開いていた頭をいったん戻す。どうやら連続してプラズマ砲を撃つことは出来ないらしい。
エーミはいかにも感心したような表情を作り、モンキチに呼びかける。
「わあ、すごい。頭が開いて砲が出るなんて、とてもオリジナリティに溢れているわ」
『へっ。やっと分かったか。オレ様はスゲーんだ。敬ってひれ伏せ』
「そうね、いつか機会があったらそうするわ。ところであなたのCAMのとってもかっこいい変身の完全なコマ送り写真撮っているんだけど……見たい?」
と言いながらエーミは、魔導カメラを掲げ振る。予想通りモンキチは大いに反応した。
ぐぐっと前かがみになって、カメラに手を伸ばそうとする。
『それ、よこせ』
「あら駄目よ。魔導カメラってすごーく高いんだから。おさるさんには、とても触らせられないわ」
と言ってエーミは、アーテリーを方向転換させ走り出す。
モンキチはそれを追って足を踏み出した。
『よこせよ!』
周囲に転々と壁のようなものが出来ている。奏多のゴーレムがスキル「wall」で作ったものだ。
その後ろにエーミが隠れる。
モンキチは見た目盛り土にしか見えないそれを軽んじた。
『なんだこんなもん』
と踏み付け進んで行った矢先――4メートルの深さの縦穴に足を突っ込んだ。
奏多のゴーレムがスキル「hole」で作った罠だ。モンキチは見事それに引っ掛かったのである。
『うおおおっ!? なんだコンチクショー騙しやがったな!』
急いで穴から足を抜こうとするゴリCAM。
この好機をハンターが見逃すわけがない。
コーネリアはマテリアルライフルで制圧射撃をかけ、ゴリCAMの動きを制した。
「こんなオモチャで遊んでいる暇があったら生身で戦え。その方が貴様を殺す甲斐があるからな。どうした、怖いのか?」
動きが止まっている相手に銃弾はとてもよく当たった。
加えてエーミが風雷陣を放つ。
立て続けの雷撃はゴリCAMの回路に悪影響を及ぼした。作動系統の一部に混乱が生じる。外にはっきり現れないまま蓄積されていた機体へのダメージが、それをきっかけとして徐々に顕在化し始める。
舞が再び背中に乗り掛かり攻撃して来た際、背中から円盤カッターを出したものの、それを動かすことが出来なかった。
「あれあれー、どうしたのエテ公、もう壊れちゃったわけこのCAM?」
舞の斧は円盤カッターの刃を欠いた。
旭はファントムハンドを延ばし破壊されたパーツを掴む。そうしておいてから殴りつける。
ガタガタになっていた円盤カッターが一対もぎ取れた。
穴底から地上に戻ってきた奏多はゴーレムにマテリアルバーストを使わせ、上がってこようとするゴリCAMの動きを邪魔する。
そうしておいて絶火刀を振るい、もう一対の円盤カッターを削ぎ落とした。
「そも変形機能のために無駄が多すぎる、機能美もわからないやつが様式美を語るな」
ゴリCAMの周囲を取り囲んでいた3体のシャイニングウィーザード(2体はマテリアルバルーン)がその周囲であかんべしたりお尻ペンペンしたりして、野次る。
「やーい、もう壊れたー」「安物ー」「サルが作ったゴミに負けるわけないじゃんばーかばーか」
『ムッキー!』
妨害を受けつつ何とか穴から脱出したモンキチは、すぐさまバリヤーを展開した。
『トランスフォーム!』
周囲にいたハンター、及びユニットがバリヤーの内部から弾き出される。
トラックになったゴリCAMはバリヤーが解除されるや、逃げようとした。
「おいおい、わざわざ変形まで自慢しといて、俺らにトドメも差さずに逃げるってこたぁ、ねーよなぁ? ウォルドーフ!」
旭の声に応えウォルドーフがトラックの前に飛び出した。
フェンリルライズを使って巨大化した体でブロッキングを試みる。
『どけこのやろう!』
トラックの円盤カッターがウォルドーフの正面から激突する。
イレーネも進路妨害を試みた。トラックのバンパーに齧り付く。
両者力で競り負けたものの、すでに動きを止めてしまっている円盤カッターを破壊した。
そういった小競り合いがあった故、トラックの発進が遅れる。
アクティブスラスターを全開にした弁慶が追いついてきた。スナイパーライフルを構え、タイヤを狙う。
「何? 勝てないと思って逃げ出すの? なっさけない猿だねー」
『ちげーよ!』
狙いは外れた。
しかしモンキチのトラックは停止する。奏多のゴーレムがスキル「bind」で作った罠に引っ掛かったのだ。
ゾファルは遠慮会釈なく大爆笑してやった。
「マジか、もうエンコしてやんの! クソダセー!」
エーミは相手が距離を大きく離し逃走するなら幻獣ミサイルを使おうと思っていたが、どうやらそれを使う必要は無さそうだった。リーリーヒーリングにより素早く仲間の負傷を癒し、トラック前方にアースウォールを立ち上げる。
トラックの荷台が開きプラズマ砲が顔を出した。黒い光が砲口に収束して行く。
奏多は再度ラストテリトリーを展開した。砲の重圧はまたしても、すべて彼にかかる。それによって他のハンターに及ぶダメージは大幅に押さえられた。
コーネリアはトラックに追いつくやコクピットのハッチを開け、重機関銃『ラワーユリッヒNG5』による制圧射撃を浴びせた。キラースティンガー、並びにフローズンパニッシャーも交えて。
凍った弾丸がトラックのタイヤに食い込み、貫き、破壊する。
そこへ傾いだルベーノの機体が近づいてくる。足を引きずりながら。彼自身も彼の機体も相当のダメージを受けてはいたが、まだ行動不能になっていなかった。
それを見たモンキチは、運転席の内側からシャッターを降ろす。ルベーノはその行動をあざ笑った。
「守りだけは万全というわけか、いかにも臆病者の機体にふさわしいではないか、ハハハハハ!」
それから、ひたすら殴りつける。
ゾファルもそれに加勢した。
「サルが作ったゴミに負けるわけないじゃーん、やーいばーかばーか」
彼女は斬艦刀をこれでもかというほど、思い切り、トラックの荷台に振り下ろす。
積んであったプラズマ砲の砲身がひしゃげた。
と同時にバリヤーが張られた。
トラックは再びゴリCAMへと組み変わった。しかし、それは不完全なものだった。パーツが破損したので、組み替えがうまくいかなくなったのだ。円盤カッターを収容していた腕と背中の部分に隙間が出来ている。
旭とウォルドーフは再び巨大化し、ここぞとばかりその部分に猛攻を加える。斧と牙を食い込ませ、傷口をさらに大きく押し広げようと試みる。
ゴリCAMは危険と判断し間を取ろうとした、その足を舞が、ワイヤーウィップで絡める。前足をついての歩行をしているため転倒することはなかったが、動きが止まった。
ゾファルは引き続き斬艦刀を振るった。
エーミは残っていた符をすべて使い、風雷陣を2度放つ。落雷を受けたゴリCAMの開口部から火花が上がった。
ショートが起きたようだ。
アルトはゴリCAM頭部のパーツ接合部がわずかに開いたのを見逃さなかった。カッターの収納部と同様、可変部分の緩みが激しくなっているらしい。
「どこを見ている? お前の敵は一人ではないぞ」
紅糸で紐づけられた手裏剣『飛燕十文字』をその箇所に目掛けて飛ばし、食い込ませ、破壊しようとする。
舞が狙うはゴリCAMの頭である。あそこに収納してあるプラズマ砲を完全に破壊してしまえば、もう相手に武器はなくなるのだ。馬鹿力以外。
「脳天かちわってやるよ、ゴリ吉ィ!」
次の瞬間、ゴリCAMの頭頂部が開いた。
『調子乗ってんじゃねーぞゴラァ!』
シールドを構えた相手にプラズマ砲が放たれるはずであった。
しかしそこでハンターはおろかモンキチにすら予想していなかった事態が起きた。
プラズマ砲がその場で破裂したのである。先のゾファルの攻撃により砲身が歪んだためのアクシデントだ。
モンキチがマテリアル砲を撃つ余地はまだあった。マテリアルエネルギーは尽きていなかった。だけに、爆発がより激しいものとなった。
周囲への巻き込みはもちろん、ゴリCAMも上半分がほとんど吹き飛ぶ。
そのさい起きた爆発は、数キロ離れた場所からも確認出来た。
もうもうと上がるきのこ雲を見た人は、誰しもが思ったそうだ。ハンターが全滅したのではないかと。
幸い、そんなことはなかった。
――衝撃から立ち上がった旭はくらくらする頭を振り、周囲の無事を確かめる。
「……なんだおい、勝てねえと悟って自爆したのかあのサル」
コーネリアは機体を立て直し、首を振る。
「いや、奴にそんな殊勝心掛けはなかろう。今のは恐らく事故だ」
「あたしもそう思う」
同意した舞は目をこらした。土煙の向こう、ちらっと小さい影が動いた。爆発の影響か、動きが鈍っている。
「そこかああ!!」
『ウキッ!』
モンキチは逃げた。いつぞやのように。しかしいつぞやとは違い、彼の性格を読んだゾファルが先回りしていた。
「そう来ると思ってたじゃーん!」
広げられたマテリアルネットが、動きの落ちているモンキチの尻尾を捕らえた。
舞はヒートソードをかざし最速で、ものも言わずに打ちかかる。
モンキチは頭を開き、仕込んである銃で対抗しようとした。しかし敵は彼女一人ではない。
アルトが破格の攻撃力を乗せた鋼刀を振りかざしてくる。それからコーネリアが、秦多が――
『ウキー!! てめえら一人に対して大勢で来るなんて卑怯――』
お前が言うのかというような台詞の後、先程のゴリCAMに比べだいぶ見劣りする爆発が起きた。
モンキチは粉みじんに吹き飛ぶ。
それを見て奏多は勝ち誇った一言を呟いた。あちこち焦げ跡だらけになった自分のゴーレムを見上げて。
「単純にゴーレムの方が有能」
●事後処理
「退治されたの? よかったー。あんなのがいつまでもこの辺うろうろしてたら、危なくて仕事も出来ない所だったわ」
モンキチを始末した後、ハンターオフィス・ジェオルジ支局の破壊現場に戻った舞は、マリーらが元気であることを確認し一息ついた。それから、コボちゃんに目を向けた。
自分のおうちがなくなったのがショックなのか、草の上に座りいじけている。
「わしいい……」
彼女はその体を抱き上げ、励ましてやった。
「大丈夫だって、また立て直してやるから」
その後ろではゾファルが、荷を積んだトラックの指揮をしている。
「オーライオーライ、大事に運んでくれよー。世にも珍しい変形CAMの残骸だからなー」
彼女の希望によりゴリCAMの残存物は、今後の研究のためフマーレに運び込まれることとあいなった。
●モンキチ→?
夜中。
ゴリCAMの炸裂跡が残るぼこだらけの牧草地に、一人の小柄な老人が現れた。シルクハットを被り、しゃれた燕尾服を着ている。
「おやおや……派手にやられてしまったようだね……とても面白くていい子だったのだけど……」
と言いながら彼は人差し指を動かす。
すると地面の中から巻ネジがひとつ、ぽこりと浮き上がった。
彼はそれを手にしハンカチで拭き、それから――抱き抱えてきたブリキのウサギの背に指した。
そして、クルクル回す。
ブリキのウサギがぴょこんと顔を上げた。
『あれ? ここはどこ? おじいさんだれ?』
「私かい。私はラルヴァというんだよ」
『ふーん。ぼくはだれ?』
「キミは、そうだな――ぴょんきちとでも名付けようか……」
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/05/17 00:13:41 |
|
![]() |
作戦相談 東條 奏多(ka6425) 人間(リアルブルー)|18才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2018/05/21 14:59:08 |