ゲスト
(ka0000)
木漏れ日を浴び白翼は駆ける
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/05/20 15:00
- 完成日
- 2018/06/05 11:32
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「道が分からん」
クロウはため息混じりにそう呟いた。
今いるのはとある山の中。なんでも未確認の飛行物体が発見されたとのことで、クロウは調査に来ていた。
もちろん一人で来るほど無謀なわけではないが、途中歪虚と遭遇。調査に来ていた人員には非覚醒者も混じっていたため、クロウが囮になって歪虚を引き付けている間に逃がした。その結果、日は暮れ、道も分からなくなってしまったというわけだ。
「まぁ、なるようになるか……」
襲ってきた歪虚は獣型。見た目は狼の姿が近いと思われる。ただ、数はそれなりだったが、集団で狩りをするような感じではない。きっちり連携を取ってくるようならこんな能天気なことを言ってはいられなかったので、その点はありがたかった。
「……っと、危ねぇな」
不意に飛退くクロウ。みるとその先に地面は無い。崖になっているようだ。
(暗くなってて気づかなかったか。やれやれ、これ以上動くのは危険かもな……)
そう思っていた矢先だった。
「……なっ!!」
後ろから何かに押されたかのような衝撃。クロウの身は空中に放り出された。とっさにクロウはジェットブーツを使用。空中で反転し、機導剣を振るう。
剣に両断されたのはスライムだった。こんなところでも雑魔が発生するのか、と冷や汗をかきながらクロウは地面に足をつける。
「あ」
同時に、その地面が崩れた。
「くそったれぇぇっ!!!」
折角カッコよくスライムを仕留めたものの、詰めを誤ったクロウはそのまま真っ逆さまに落ちていったのだった。
●
調査隊からの依頼を受けたハンター達が到着したのは次の日だった。
ハンターたちは調査隊からの情報を基におおよその位置情報を把握。ただ、クロウが囮となって歪虚たちをおびき寄せたということから、クロウが留まっている可能性は低い。
捜索は難航するかもしれないという予感を胸に、ハンターたちは山へと入り込んでいった。
クロウはため息混じりにそう呟いた。
今いるのはとある山の中。なんでも未確認の飛行物体が発見されたとのことで、クロウは調査に来ていた。
もちろん一人で来るほど無謀なわけではないが、途中歪虚と遭遇。調査に来ていた人員には非覚醒者も混じっていたため、クロウが囮になって歪虚を引き付けている間に逃がした。その結果、日は暮れ、道も分からなくなってしまったというわけだ。
「まぁ、なるようになるか……」
襲ってきた歪虚は獣型。見た目は狼の姿が近いと思われる。ただ、数はそれなりだったが、集団で狩りをするような感じではない。きっちり連携を取ってくるようならこんな能天気なことを言ってはいられなかったので、その点はありがたかった。
「……っと、危ねぇな」
不意に飛退くクロウ。みるとその先に地面は無い。崖になっているようだ。
(暗くなってて気づかなかったか。やれやれ、これ以上動くのは危険かもな……)
そう思っていた矢先だった。
「……なっ!!」
後ろから何かに押されたかのような衝撃。クロウの身は空中に放り出された。とっさにクロウはジェットブーツを使用。空中で反転し、機導剣を振るう。
剣に両断されたのはスライムだった。こんなところでも雑魔が発生するのか、と冷や汗をかきながらクロウは地面に足をつける。
「あ」
同時に、その地面が崩れた。
「くそったれぇぇっ!!!」
折角カッコよくスライムを仕留めたものの、詰めを誤ったクロウはそのまま真っ逆さまに落ちていったのだった。
●
調査隊からの依頼を受けたハンター達が到着したのは次の日だった。
ハンターたちは調査隊からの情報を基におおよその位置情報を把握。ただ、クロウが囮となって歪虚たちをおびき寄せたということから、クロウが留まっている可能性は低い。
捜索は難航するかもしれないという予感を胸に、ハンターたちは山へと入り込んでいった。
リプレイ本文
●
クロウの捜索を依頼されたハンターたちは現地に到着した。集まった8人はいずれも精鋭ぞろいであり、有事の際も安心であろう。ただ、今回重要なのは、戦うことよりも探すこと。
「……とりあえず、最終目撃地点から痕跡辿れば追えるかなと思ってたけど……」
周囲を見渡しながら呟く十色 エニア(ka0370)。クロウ一行が襲われたのはこの辺りであることは間違いない。打ち捨てられ、散乱した荷物がそれを証明している。
「思っていたよりも、森が深いな……見通しが悪い」
膝をつき地面を探るロニ・カルディス(ka0551)。だが、足跡の類は判別できない。分かるのはかなりの数の敵がこの辺りを駆け回っていたということぐらいだ。
一行は周囲を軽く探索する。
「どうっすか?」
「ん……ちょっと分からないかな。足跡自体は結構あるんだけど……」
「多すぎる、っすか」
神楽(ka2032)と時音 ざくろ(ka1250)はともに頭を抱える。
「荷物を漁りに来た……まぁ歪虚か獣かは判別できないが、それらの痕跡が混在してしまっているのだろう」
アウレール・V・ブラオラント(ka2531)の分析に一同は頷くが、そうなるとこの場でこれ以上できることは無い。
「調査範囲を広げるしかないだろう。敵に警戒しつつ、な」
「まぁ見つかりませんでしたと帰るわけにはいかないですね。ここからは分かれていきましょう」
「まったく……クロウさんは手間をかけさせてばっかりですねぇ」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)とフェリア(ka2870)に続くように、やれやれと星野 ハナ(ka5852)が言った。
こうしてハンターたちは2人1組の形で、さらに奥へと歩を進めるのであった。
●
「それじゃ、まずはモフロウを飛ばして周囲を確認してみるっす」
「分かった。こちらでカバーする」
まずはロニ・神楽組。神楽がファミリアズアイを利用して空から周辺を見渡す。
その間、動けない神楽をカバーするようにロニは周囲を警戒。加えて、生えている木々を観察する。
(不自然に折れた枝……だが、この高さはクロウの物ではないな。歪虚によるものか)
次いでロニは双眼鏡を取り出したものの、遠方が確認できるほど見通しは良くない。
「そちらはどうだ?」
溜息をつきながら神楽に問いかける。
「……やっぱり木が邪魔で上から状況を確認するのは難しいっすね。ただ……」
「ん?」
「ちらっと影みたいなのが見えたっす。何かが近づいてきてるかも……」
「ふむ……方角は?」
それを聞いて、ロニは再度双眼鏡を覗く。見ると、狼型歪虚の姿がかすかに確認できた。
「情報にあった歪虚だな。数は1……まぁはっきりとは見えないから周囲にどれぐらいいるかは分からんが……」
「数が多いんだったら避けたほうが……でも、探してるとき横から出てこられたら邪魔っすね」
敵の接近を考慮してモフロウを下がらせる神楽。
「では……仕掛けるか」
「了解!」
声と共に飛び出していく神楽。先手必勝、向こうが動く前に仕留めるつもりだ。
敵も接近する神楽に気づいた。迎撃しようとこちらに牙をむく。神楽は聖盾剣を振りかざす。
……が、神楽が攻撃する前に、無数の刃が敵を貫いた。ロニのプルガトリオだ。
ロニからしてみれば神楽を援護するために足止めを行ったつもりだった。が、それがそのまま止めとなってしまったようだ。
「……まぁ、楽が出来て良いってことで……」
行き場を失った聖盾剣の切っ先で空を切り、二人はさらに奥へと進んでいった。
●
「数が多くても……っと。連携がないなら怖くもないぜ」
最後の1匹を斬り捨てレイオスが言った。
こちらはレイオス・ハナ組。
「あぁ~~、無事でよかったですぅ」
そういってハナは犬を撫でている。
ハナはマッピングセットを使用した占いによりクロウの居場所を捜索、おおよその位置に見当をつけたうえで犬を先行させていた。
だが、その犬が敵を連れて慌てて逃げてきたので、その対応に追われていたのだ。
「ふぅ……少し休憩するか」
周囲の確認を行ったレイオス。安全を確保したうえで休憩を取る。
「了解ですぅ。それでは一応……」
ハナは御霊符を使用。式神を作り出し、念のために壁役として配置する。
「助かる。それにしても、どこにいるんだか……」
「歩ける状況なら山頂目指して移動してる可能性があると思いますよぉ?」
式神を用意したハナは、次いでマッピングセットを準備。占いでのダウジングを再度試みるつもりだ。
「山で迷ったら登って周囲確認は鉄則じゃないですかぁ」
「なるほどな……しかし、撒き餌にアイテムでも持ってくればよかったかな」
その場に座り込みながらレイオスが言った。
「クロウのくず鉄を作る習性を利用したら案外向こうからこっちにきてくれそうかと思ったんだがな……」
「おぉ。くず鉄マイスターにしてくず鉄信徒なクロウさんならつられてきたかもしれませんねぇ……ん? どうかしましたかぁ?」
冗談めかして言うレイオスに真顔で答えるハナだったが、レイオスの様子が変わったのに気づいた。
「見てくれ、足跡だ」
そこにあったのは間違いなく人の足跡。大きさと新しさからもクロウのものでほぼ間違いないだろう。
「考えることは同じか。クロウも同じようにここで休んだってことかもしれないな。辿ってみよう」
「分かりましたぁ……あれ?」
マッピングセットを片付けようとしたハナだったが、こちらも何かに気づいたようだ。
「おかしいですねぇ……」
痕跡は確かにこの先に続いている。だが、占いはその先ではない方を指しているようだ。
(まぁ、精度を高めても100%というわけではないですしぃ……とりあえずは実際の痕跡を優先したほうがいいでしょうかねぇ)
そう判断したハナは、レイオスに続く。すぐに、自身の占いが正しかったことを知ることになるのだが。
●
一方、こちらはエニア、ざくろ組。こちらは調査隊の当初の目的であった未確認飛行物体に興味があるようだ。
「鳥よりも大きくて、グリフォンでないものか……」
「場所柄グリフォンは見間違えないでしょうから、その目撃証言は信用していいでしょうね……ざくろさん、そろそろ」
「そうだね。ホシノ!」
ざくろはエニアに促され、モフロウのホシノを飛ばす。
「今、ざくろ達の絆は結ばれた!」
ファミリアズアイを使用しての捜索だ。だが、これに関しては大した成果を得られない……いや。
「……! 光が見えた!」
陽の光が何かに反射したようだ。
「人工物があるとは考えにくいし……水場か何かがあるのかもしれないわね。行ってみましょうか」
ざくろがモフロウを手元に戻すのを待って、二人は光が見えた場所へと移動する。
そこには、想像通り泉のようなものがあった。クロウが道に迷う中、立ち寄ったかもしれない。それに、未確認飛行物体も喉を潤していったかもしれない。
「……と思ったんだけど……」
「これじゃ……ねぇ……」
だが、泉には壊れた魔導機械、あるいは何かしらのバッテリーのようなもの。廃棄場所に困ったのだろうか、そう言ったものが無造作に捨てられていた。
「上から見えにくいっていうのはこういう弊害もあるのかしらね」
呆れたように呟くエニア。その後ろに、蠢くものには気づいていない。
「エニア、後ろ!」
こういう時ほど、2人1組であってよかったと思うことは無いだろう。ざくろの声に反応したエニアは、すぐさま大鎌を振り抜く。
軟体を斬った手ごたえ。それはスライムの類に相違なかった。
「……雑魔の類かな。適切に処理されなかった魔導機械からの魔法公害で……」
「辻褄は合いそうね。後で軍にも通報したほうがいいかもしれないわね」
2人はそのまま何かしらの痕跡が無いか周辺の確認を行ってその場を後にした。
レイオス達から全体に連絡が入ったのはそんな時だった。
●
「崖から落ちた可能性か……了解した」
アウレールは通話を切った後、深くため息を吐いた。
「そうなると、これってやっぱり……」
「確証はないが、恐らくはクロウの物だろう」
フェリアが手に持っていたのは、魔導機械の破片。二人がここにたどり着いたのは偶然だった。ハナと同じように犬を利用しようとしたアウレールだったが、やはりハナと同じように運悪く敵に襲われた。その後犬を利用するのは危険と判断し、他の組とは違う方面での捜索を行った結果、今ここにいるわけだ。
「……とにかく、近くを探してみよう」
「ええ……」
アウレールとフェリアは、ともに近くを探し、すぐにそれを見つけた。何かがぶつかった後と、乾き始めた血痕。
万が一を2人は想像し、すぐにそれを頭から振り払う。共に冷静に、状況を探る。なぜなら……もし仮にクロウが死んでいたなら、ここに死体がなければおかしいのだから。
「あれを見てくれ」
アウレールが指さしたその先には、削れた崖の壁面が見える。
「……なんとか壁を掴んで減速しようとした、といった感じですね。大怪我は免れなかったでしょうけど、致命傷は避けられたのではないかと」
「では、辛うじて助かったとして、クロウはどこにいったのか……」
「少しは動けたみたいだけど、やっぱり血もここで途切れてる。こういう時は……」
「あぁ、そうだな……」
促すフェリアの意図を察し、アウレールは犬を使う。血の匂いを覚えさせ、その匂いを追わせる。その先にクロウがいることを信じて。
思惑は当たり、犬たちは次の血痕を見つけた。最初の場所からは離れている。
さらに、木々の中に分け入っていき、木の枝にかすかに血がついているのを発見。そのまま、血は点々と続いていく。木の高いところに血が見えることが多いのが特徴だ。まるで木の上を飛んでいるかのように。
「引きずられた感じではないな」
「ええ。空を飛んでる……グリフォンか何かかしら」
「あるいは、例の未確認飛行物体かもしれないな」
やがて、2人は少し開けた場所に出る。そこには何かしらの……蹄のような跡がある。そしれそれは、そのまま木々の陰に入っていく。
「……世話を焼かせてくれたな」
「これで依頼は達成ってことでいいわよね? でも、どうなってるのかしら」
やがて、2人は探し求めていた人物……クロウの姿を見つけた。
ただ、不思議なことに、クロウはどこにも傷を負ってはいないようだった。
●
発見の報からハンター達が集まるまで時間はかからなかった。探索中地道にマッピングを行っていたお陰で、場所の共有がすぐにできたのが大きい。
「まぁ、殺しても死なないのがクロウさんのウリですからねぇ」
「……おっかないこと言うっすねぇ……」
クロウの様子を見て真顔で言ったハナ。それを見て神楽は少し身震いした。そうこうしていると、周囲が騒がしくなってきたことに気づいたのか、クロウが目を覚ました。
「お、目が覚めたか。これで依頼完了……無事で何よりだぜ」
レイオスの声でそれに気付いたロニは念のためクロウを治療するためフルリカバリーを使おうとする。が、見る限り重篤なダメージは残っていないようだ。
「二人が治療を? 崖から落ちて全くの無傷とはいかなかったと思ったが」
その問いに対し、アウレールとフェリアが帰還する前にと状況を説明する。
「……つまり、誰かがここまで運んできた可能性が高いとみる」
「調査対象だった未確認の生物が、とも考えられます。敵でないならですが……」
話が途切れたところで、エニアが前に出る。
「これ……そのクロウを運んできた何かの落とし物じゃないかな」
そういって示されたのは、馬の蹄のような足跡に、白い羽。
「さっきの足跡もあるし、これってもしかして……」
と、ざくろの口から続けられた名前に皆が、特にクロウは大いに納得した。
それは、グリフォンが空を飛びまわる環境故に今はもう帝国にはいないと思われていたある幻獣の名前。
「……『ペガサス』か。それなら合点がいく」
癒しの力を持つと言われるこの幻獣であれば、この状況に説明がつけられそうであった。
こうしてハンターたちはクロウの救助と共に、探していた未確認飛行物体の正体にも近づいた。だが、納得のいく答えであっても、その目で実物を確かめたわけではない。今後、さらなる調査が必要だろう。
ただ恐らく……ハンター達の敵となる存在ではないだろう。敵であればクロウと今こうして話すことはできなかったかもしれないのだから。
クロウの捜索を依頼されたハンターたちは現地に到着した。集まった8人はいずれも精鋭ぞろいであり、有事の際も安心であろう。ただ、今回重要なのは、戦うことよりも探すこと。
「……とりあえず、最終目撃地点から痕跡辿れば追えるかなと思ってたけど……」
周囲を見渡しながら呟く十色 エニア(ka0370)。クロウ一行が襲われたのはこの辺りであることは間違いない。打ち捨てられ、散乱した荷物がそれを証明している。
「思っていたよりも、森が深いな……見通しが悪い」
膝をつき地面を探るロニ・カルディス(ka0551)。だが、足跡の類は判別できない。分かるのはかなりの数の敵がこの辺りを駆け回っていたということぐらいだ。
一行は周囲を軽く探索する。
「どうっすか?」
「ん……ちょっと分からないかな。足跡自体は結構あるんだけど……」
「多すぎる、っすか」
神楽(ka2032)と時音 ざくろ(ka1250)はともに頭を抱える。
「荷物を漁りに来た……まぁ歪虚か獣かは判別できないが、それらの痕跡が混在してしまっているのだろう」
アウレール・V・ブラオラント(ka2531)の分析に一同は頷くが、そうなるとこの場でこれ以上できることは無い。
「調査範囲を広げるしかないだろう。敵に警戒しつつ、な」
「まぁ見つかりませんでしたと帰るわけにはいかないですね。ここからは分かれていきましょう」
「まったく……クロウさんは手間をかけさせてばっかりですねぇ」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)とフェリア(ka2870)に続くように、やれやれと星野 ハナ(ka5852)が言った。
こうしてハンターたちは2人1組の形で、さらに奥へと歩を進めるのであった。
●
「それじゃ、まずはモフロウを飛ばして周囲を確認してみるっす」
「分かった。こちらでカバーする」
まずはロニ・神楽組。神楽がファミリアズアイを利用して空から周辺を見渡す。
その間、動けない神楽をカバーするようにロニは周囲を警戒。加えて、生えている木々を観察する。
(不自然に折れた枝……だが、この高さはクロウの物ではないな。歪虚によるものか)
次いでロニは双眼鏡を取り出したものの、遠方が確認できるほど見通しは良くない。
「そちらはどうだ?」
溜息をつきながら神楽に問いかける。
「……やっぱり木が邪魔で上から状況を確認するのは難しいっすね。ただ……」
「ん?」
「ちらっと影みたいなのが見えたっす。何かが近づいてきてるかも……」
「ふむ……方角は?」
それを聞いて、ロニは再度双眼鏡を覗く。見ると、狼型歪虚の姿がかすかに確認できた。
「情報にあった歪虚だな。数は1……まぁはっきりとは見えないから周囲にどれぐらいいるかは分からんが……」
「数が多いんだったら避けたほうが……でも、探してるとき横から出てこられたら邪魔っすね」
敵の接近を考慮してモフロウを下がらせる神楽。
「では……仕掛けるか」
「了解!」
声と共に飛び出していく神楽。先手必勝、向こうが動く前に仕留めるつもりだ。
敵も接近する神楽に気づいた。迎撃しようとこちらに牙をむく。神楽は聖盾剣を振りかざす。
……が、神楽が攻撃する前に、無数の刃が敵を貫いた。ロニのプルガトリオだ。
ロニからしてみれば神楽を援護するために足止めを行ったつもりだった。が、それがそのまま止めとなってしまったようだ。
「……まぁ、楽が出来て良いってことで……」
行き場を失った聖盾剣の切っ先で空を切り、二人はさらに奥へと進んでいった。
●
「数が多くても……っと。連携がないなら怖くもないぜ」
最後の1匹を斬り捨てレイオスが言った。
こちらはレイオス・ハナ組。
「あぁ~~、無事でよかったですぅ」
そういってハナは犬を撫でている。
ハナはマッピングセットを使用した占いによりクロウの居場所を捜索、おおよその位置に見当をつけたうえで犬を先行させていた。
だが、その犬が敵を連れて慌てて逃げてきたので、その対応に追われていたのだ。
「ふぅ……少し休憩するか」
周囲の確認を行ったレイオス。安全を確保したうえで休憩を取る。
「了解ですぅ。それでは一応……」
ハナは御霊符を使用。式神を作り出し、念のために壁役として配置する。
「助かる。それにしても、どこにいるんだか……」
「歩ける状況なら山頂目指して移動してる可能性があると思いますよぉ?」
式神を用意したハナは、次いでマッピングセットを準備。占いでのダウジングを再度試みるつもりだ。
「山で迷ったら登って周囲確認は鉄則じゃないですかぁ」
「なるほどな……しかし、撒き餌にアイテムでも持ってくればよかったかな」
その場に座り込みながらレイオスが言った。
「クロウのくず鉄を作る習性を利用したら案外向こうからこっちにきてくれそうかと思ったんだがな……」
「おぉ。くず鉄マイスターにしてくず鉄信徒なクロウさんならつられてきたかもしれませんねぇ……ん? どうかしましたかぁ?」
冗談めかして言うレイオスに真顔で答えるハナだったが、レイオスの様子が変わったのに気づいた。
「見てくれ、足跡だ」
そこにあったのは間違いなく人の足跡。大きさと新しさからもクロウのものでほぼ間違いないだろう。
「考えることは同じか。クロウも同じようにここで休んだってことかもしれないな。辿ってみよう」
「分かりましたぁ……あれ?」
マッピングセットを片付けようとしたハナだったが、こちらも何かに気づいたようだ。
「おかしいですねぇ……」
痕跡は確かにこの先に続いている。だが、占いはその先ではない方を指しているようだ。
(まぁ、精度を高めても100%というわけではないですしぃ……とりあえずは実際の痕跡を優先したほうがいいでしょうかねぇ)
そう判断したハナは、レイオスに続く。すぐに、自身の占いが正しかったことを知ることになるのだが。
●
一方、こちらはエニア、ざくろ組。こちらは調査隊の当初の目的であった未確認飛行物体に興味があるようだ。
「鳥よりも大きくて、グリフォンでないものか……」
「場所柄グリフォンは見間違えないでしょうから、その目撃証言は信用していいでしょうね……ざくろさん、そろそろ」
「そうだね。ホシノ!」
ざくろはエニアに促され、モフロウのホシノを飛ばす。
「今、ざくろ達の絆は結ばれた!」
ファミリアズアイを使用しての捜索だ。だが、これに関しては大した成果を得られない……いや。
「……! 光が見えた!」
陽の光が何かに反射したようだ。
「人工物があるとは考えにくいし……水場か何かがあるのかもしれないわね。行ってみましょうか」
ざくろがモフロウを手元に戻すのを待って、二人は光が見えた場所へと移動する。
そこには、想像通り泉のようなものがあった。クロウが道に迷う中、立ち寄ったかもしれない。それに、未確認飛行物体も喉を潤していったかもしれない。
「……と思ったんだけど……」
「これじゃ……ねぇ……」
だが、泉には壊れた魔導機械、あるいは何かしらのバッテリーのようなもの。廃棄場所に困ったのだろうか、そう言ったものが無造作に捨てられていた。
「上から見えにくいっていうのはこういう弊害もあるのかしらね」
呆れたように呟くエニア。その後ろに、蠢くものには気づいていない。
「エニア、後ろ!」
こういう時ほど、2人1組であってよかったと思うことは無いだろう。ざくろの声に反応したエニアは、すぐさま大鎌を振り抜く。
軟体を斬った手ごたえ。それはスライムの類に相違なかった。
「……雑魔の類かな。適切に処理されなかった魔導機械からの魔法公害で……」
「辻褄は合いそうね。後で軍にも通報したほうがいいかもしれないわね」
2人はそのまま何かしらの痕跡が無いか周辺の確認を行ってその場を後にした。
レイオス達から全体に連絡が入ったのはそんな時だった。
●
「崖から落ちた可能性か……了解した」
アウレールは通話を切った後、深くため息を吐いた。
「そうなると、これってやっぱり……」
「確証はないが、恐らくはクロウの物だろう」
フェリアが手に持っていたのは、魔導機械の破片。二人がここにたどり着いたのは偶然だった。ハナと同じように犬を利用しようとしたアウレールだったが、やはりハナと同じように運悪く敵に襲われた。その後犬を利用するのは危険と判断し、他の組とは違う方面での捜索を行った結果、今ここにいるわけだ。
「……とにかく、近くを探してみよう」
「ええ……」
アウレールとフェリアは、ともに近くを探し、すぐにそれを見つけた。何かがぶつかった後と、乾き始めた血痕。
万が一を2人は想像し、すぐにそれを頭から振り払う。共に冷静に、状況を探る。なぜなら……もし仮にクロウが死んでいたなら、ここに死体がなければおかしいのだから。
「あれを見てくれ」
アウレールが指さしたその先には、削れた崖の壁面が見える。
「……なんとか壁を掴んで減速しようとした、といった感じですね。大怪我は免れなかったでしょうけど、致命傷は避けられたのではないかと」
「では、辛うじて助かったとして、クロウはどこにいったのか……」
「少しは動けたみたいだけど、やっぱり血もここで途切れてる。こういう時は……」
「あぁ、そうだな……」
促すフェリアの意図を察し、アウレールは犬を使う。血の匂いを覚えさせ、その匂いを追わせる。その先にクロウがいることを信じて。
思惑は当たり、犬たちは次の血痕を見つけた。最初の場所からは離れている。
さらに、木々の中に分け入っていき、木の枝にかすかに血がついているのを発見。そのまま、血は点々と続いていく。木の高いところに血が見えることが多いのが特徴だ。まるで木の上を飛んでいるかのように。
「引きずられた感じではないな」
「ええ。空を飛んでる……グリフォンか何かかしら」
「あるいは、例の未確認飛行物体かもしれないな」
やがて、2人は少し開けた場所に出る。そこには何かしらの……蹄のような跡がある。そしれそれは、そのまま木々の陰に入っていく。
「……世話を焼かせてくれたな」
「これで依頼は達成ってことでいいわよね? でも、どうなってるのかしら」
やがて、2人は探し求めていた人物……クロウの姿を見つけた。
ただ、不思議なことに、クロウはどこにも傷を負ってはいないようだった。
●
発見の報からハンター達が集まるまで時間はかからなかった。探索中地道にマッピングを行っていたお陰で、場所の共有がすぐにできたのが大きい。
「まぁ、殺しても死なないのがクロウさんのウリですからねぇ」
「……おっかないこと言うっすねぇ……」
クロウの様子を見て真顔で言ったハナ。それを見て神楽は少し身震いした。そうこうしていると、周囲が騒がしくなってきたことに気づいたのか、クロウが目を覚ました。
「お、目が覚めたか。これで依頼完了……無事で何よりだぜ」
レイオスの声でそれに気付いたロニは念のためクロウを治療するためフルリカバリーを使おうとする。が、見る限り重篤なダメージは残っていないようだ。
「二人が治療を? 崖から落ちて全くの無傷とはいかなかったと思ったが」
その問いに対し、アウレールとフェリアが帰還する前にと状況を説明する。
「……つまり、誰かがここまで運んできた可能性が高いとみる」
「調査対象だった未確認の生物が、とも考えられます。敵でないならですが……」
話が途切れたところで、エニアが前に出る。
「これ……そのクロウを運んできた何かの落とし物じゃないかな」
そういって示されたのは、馬の蹄のような足跡に、白い羽。
「さっきの足跡もあるし、これってもしかして……」
と、ざくろの口から続けられた名前に皆が、特にクロウは大いに納得した。
それは、グリフォンが空を飛びまわる環境故に今はもう帝国にはいないと思われていたある幻獣の名前。
「……『ペガサス』か。それなら合点がいく」
癒しの力を持つと言われるこの幻獣であれば、この状況に説明がつけられそうであった。
こうしてハンターたちはクロウの救助と共に、探していた未確認飛行物体の正体にも近づいた。だが、納得のいく答えであっても、その目で実物を確かめたわけではない。今後、さらなる調査が必要だろう。
ただ恐らく……ハンター達の敵となる存在ではないだろう。敵であればクロウと今こうして話すことはできなかったかもしれないのだから。
依頼結果
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サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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クロウ救出相談卓 神楽(ka2032) 人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2018/05/19 22:23:14 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/05/19 09:16:09 |