ゲスト
(ka0000)
青竜紅刃流~奥義開眼の血闘
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/05/21 19:00
- 完成日
- 2018/06/04 22:23
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「鬼ザルの大規模な襲来と全滅はこれがあったからか……」
同盟領は農業推進地「ジェオルジ」の寒村「タスカービレ」で、イ寺鑑(kz0175)がひそやかに呟いた。
村の奥はずれにある銃剣流派・青竜紅刃流道場の窓枠から顔を覗かせて確認していたのは、森の中から出て来た西洋全身甲冑の騎士。マイナスマテリアルを纏っているので歪虚のたぐいであることはすぐに分かる。
実力のほどは――。
「撃ちます!」
隣に身を隠していた門下生の若手が銃をぶっ放した。
――カキィン、ガシッ!
「……覚醒者のスキルなし射撃くらいじゃ倒れはしない、か」
鑑の言う通り、甲冑歪虚は一発目を食らったものの対してダメージはないようで、二発目は大きな盾を構えて防いだ。
「前に発見したのもこんな感じでした」
撃った門下生の報告。
一方、歪虚は遠くから狙い打たれて警戒したようで、そのままじりじり後退して森の中へと退却していった。
「森の奥にある温泉旅館は?」
「念のため従業員は引き上げさせました。もぬけの殻です」
妥当な判断である。
その時だった。
「鑑先生、こっちからもです!」
別方向からの報告。やはり甲冑歪虚がぬっそりと歩み寄ってきていた。
「……流派の基本通り、これまでは射撃のみだな?」
「はい。接近事例は一度だけでしたが、近接戦闘は避けて村に来させないように努めてました」
「よし。試してみよう」
だっ、と鑑が駆け出し隠れていた道場から飛び出した。
刹那、甲冑も反応し素早くがっしゃがっしゃと走り寄ってきた。もちろん右手に長剣、左手に大きな盾を構えている。
鑑、ぎらりと相手をにらみつつ抜刀!
「いいのか? その重そうな体で全力移動して!」
敵、右袈裟で先制すべく振りかぶった!
瞬間、さらに加速する鑑。速度変化から盾を持つ敵の左手に回った。
身をひねり合わせる敵。
そこへ鑑が飛び込んだ!
「一つ!」
敵の振りかぶった剣の出がけに刀を振るい止める。捨て身のタイミング。それするなら敵を攻撃したほうがという論もあるが、成功すれば身の安全とのちの流れの掌握する手段をとった。
「二つ!」
すかさず二の太刀。が、敵もさるもの。技に合わせて盾で受け止めて押し込んできた。
鑑、体勢を崩すが意地で流していなした。強引な力技である。
しかも、流した先は左。
敵は盾を左手に持ったまま前につんのめる形に。いなした鑑は左手のさらに左。攻撃手段の剣は右手にある。
「もらった! 三つ!」
無防備な敵左側面をとった鑑、勝利を確信して渾身の唐竹割――ダウンスイングを敢行した。
が、その時ッ!
――ぐぐぐ……しゃらん……。
「ばかな?!」
なんと、敵の背中から黒い人型の影がむくりと――まるで着ぐるみの背中のファスナーから上半身を出したように姿を現すと、両腰に下げていた短めの剣二本を引き抜き一本で鑑の攻撃をいなした!
そして逆に無防備になった鑑にもう一方の手に持った剣が振り下ろされる。
――どしっ!
「鑑先生!」
師範の窮地に道場から門下生の射線が集中した。
それはもう、銃を持って見守っていた門下生すべてが撃ったのだ。威力はともかく瞬間出力と迫力は特筆すべきものがある。
――ざ……ガッシャガッシャ……。
「大丈夫ですか、鑑先生!」
森にものすごい勢いで逃げた甲冑歪虚。門下生も鑑を守れとばかりに大挙して飛び出して駆け寄った。
「追うな! 私は大丈夫だ。誰か、すぐにハンターを手配してきてくれ!」
片膝をついて弟子に指示する鑑。のちの治療により肩の打撲と診断されることになる。
「甲冑の化け物……の中に人影の歪虚?」
「いや……影が出てきたときに甲冑は力が抜けたようだった。完全分離しないところを見ると上半身だけ一瞬分離できると見た」
弟子の疑問に、刃を交えた鑑の所感。
「二体もいたんですね……」
「鬼ザルの被害が温泉襲撃の一件以来ないということだったな? ……鬼ザルもあれに森を追われた可能性がある。鬼ザルをあれから見ないということはおそらく全滅だろう。とすると……」
「甲冑の敵はまだいる、ということですかね」
「そういうことだ。本日これより道場は監視拠点とする。村の民家も森に近いところは避難させて監視拠点にするように。奴ら、遠距離攻撃がないんで近寄られる前に撃てばとりあえず逃げるみたいだし、それで時間は稼げるだろう……これまでの稽古でやってきたから、やれるな?」
「はい!」
こうして西洋剣術と歪虚戦術をミックスで使う甲冑歪虚を討伐するハンターが募られた。
同盟領は農業推進地「ジェオルジ」の寒村「タスカービレ」で、イ寺鑑(kz0175)がひそやかに呟いた。
村の奥はずれにある銃剣流派・青竜紅刃流道場の窓枠から顔を覗かせて確認していたのは、森の中から出て来た西洋全身甲冑の騎士。マイナスマテリアルを纏っているので歪虚のたぐいであることはすぐに分かる。
実力のほどは――。
「撃ちます!」
隣に身を隠していた門下生の若手が銃をぶっ放した。
――カキィン、ガシッ!
「……覚醒者のスキルなし射撃くらいじゃ倒れはしない、か」
鑑の言う通り、甲冑歪虚は一発目を食らったものの対してダメージはないようで、二発目は大きな盾を構えて防いだ。
「前に発見したのもこんな感じでした」
撃った門下生の報告。
一方、歪虚は遠くから狙い打たれて警戒したようで、そのままじりじり後退して森の中へと退却していった。
「森の奥にある温泉旅館は?」
「念のため従業員は引き上げさせました。もぬけの殻です」
妥当な判断である。
その時だった。
「鑑先生、こっちからもです!」
別方向からの報告。やはり甲冑歪虚がぬっそりと歩み寄ってきていた。
「……流派の基本通り、これまでは射撃のみだな?」
「はい。接近事例は一度だけでしたが、近接戦闘は避けて村に来させないように努めてました」
「よし。試してみよう」
だっ、と鑑が駆け出し隠れていた道場から飛び出した。
刹那、甲冑も反応し素早くがっしゃがっしゃと走り寄ってきた。もちろん右手に長剣、左手に大きな盾を構えている。
鑑、ぎらりと相手をにらみつつ抜刀!
「いいのか? その重そうな体で全力移動して!」
敵、右袈裟で先制すべく振りかぶった!
瞬間、さらに加速する鑑。速度変化から盾を持つ敵の左手に回った。
身をひねり合わせる敵。
そこへ鑑が飛び込んだ!
「一つ!」
敵の振りかぶった剣の出がけに刀を振るい止める。捨て身のタイミング。それするなら敵を攻撃したほうがという論もあるが、成功すれば身の安全とのちの流れの掌握する手段をとった。
「二つ!」
すかさず二の太刀。が、敵もさるもの。技に合わせて盾で受け止めて押し込んできた。
鑑、体勢を崩すが意地で流していなした。強引な力技である。
しかも、流した先は左。
敵は盾を左手に持ったまま前につんのめる形に。いなした鑑は左手のさらに左。攻撃手段の剣は右手にある。
「もらった! 三つ!」
無防備な敵左側面をとった鑑、勝利を確信して渾身の唐竹割――ダウンスイングを敢行した。
が、その時ッ!
――ぐぐぐ……しゃらん……。
「ばかな?!」
なんと、敵の背中から黒い人型の影がむくりと――まるで着ぐるみの背中のファスナーから上半身を出したように姿を現すと、両腰に下げていた短めの剣二本を引き抜き一本で鑑の攻撃をいなした!
そして逆に無防備になった鑑にもう一方の手に持った剣が振り下ろされる。
――どしっ!
「鑑先生!」
師範の窮地に道場から門下生の射線が集中した。
それはもう、銃を持って見守っていた門下生すべてが撃ったのだ。威力はともかく瞬間出力と迫力は特筆すべきものがある。
――ざ……ガッシャガッシャ……。
「大丈夫ですか、鑑先生!」
森にものすごい勢いで逃げた甲冑歪虚。門下生も鑑を守れとばかりに大挙して飛び出して駆け寄った。
「追うな! 私は大丈夫だ。誰か、すぐにハンターを手配してきてくれ!」
片膝をついて弟子に指示する鑑。のちの治療により肩の打撲と診断されることになる。
「甲冑の化け物……の中に人影の歪虚?」
「いや……影が出てきたときに甲冑は力が抜けたようだった。完全分離しないところを見ると上半身だけ一瞬分離できると見た」
弟子の疑問に、刃を交えた鑑の所感。
「二体もいたんですね……」
「鬼ザルの被害が温泉襲撃の一件以来ないということだったな? ……鬼ザルもあれに森を追われた可能性がある。鬼ザルをあれから見ないということはおそらく全滅だろう。とすると……」
「甲冑の敵はまだいる、ということですかね」
「そういうことだ。本日これより道場は監視拠点とする。村の民家も森に近いところは避難させて監視拠点にするように。奴ら、遠距離攻撃がないんで近寄られる前に撃てばとりあえず逃げるみたいだし、それで時間は稼げるだろう……これまでの稽古でやってきたから、やれるな?」
「はい!」
こうして西洋剣術と歪虚戦術をミックスで使う甲冑歪虚を討伐するハンターが募られた。
リプレイ本文
●
イ寺鑑(kz0175)の寝込む青竜紅刃流道場二階の自室は静かだった。
「やれやれ、情けない……」
呟いたところでノックが。返事をするとタスカービレに遣わされているジェオルジ役人の女性、フィーネ・リスパルミオが入ってきた。
「お加減、どうですか?」
「おかげさまで。フィーネさんにまでお世話になってしまい……」
「あら、私は望んで……」
フィーネが頬を赤らめ鑑のそばに腰掛けた時だった!
――ばぁん!
「話は全部聞いたよ、鑑センセ!」
ウーナ(ka1439)が扉を勢いよく開いて部屋に飛び込んできた。そのままずずいと鑑の横に。
それだけではない。
「鑑さん無事ですのーっ?!」
間髪入れずディーナ・フェルミ(ka5843)がばーんと入ってきて鑑に一直線。むぎゅうしてからフルリカバリーする。ウーナとフィーネ、びっくり。その間まくし立てるディーナ。
「村に聖導師教会新たに造るの。私が常駐すればこんな怪我で鑑さんも寝込まなくて済むの! 鑑さん死んだら嫌なの。こんな怪我で寝込むのも見たくないの。いつも元気に村おこし頑張ってくれなきゃ嫌なの」
「あの、ディーナ? 何を言ってるのか……」
「だったら鑑さんとこに押しかけ女房するのも決めたの!」
「えええ! 『だったら』ってなに?」
そこへ、さらに扉ばーん!
「よぉ、大丈……」
トリプルJ(ka6653)が入ってきたが、心配そうな表情が即座に崩れた。ずかずか部屋に入るとバシバシ鑑の肩を叩く。
「見舞客は女性ばかりかよ。羨まし過ぎるぞこの野郎リア充死すべし慈悲はなしだ爆発しろ地の果てまでも」
「……なんでこう口を開けばくし立てるのばかりかなぁ」
鑑がぐったりこぼしたところで門下生が入ってきた。なお、ディーナは「依頼で知り合った工場主さんが歪虚に殺されてそれで鑑さんも……」とかべそべそ泣いてむぎゅうしている。
「すみません、打ち合わせをお願いできますか?」
「みんなも無事? 今行くから。……鑑センセは、片付いたらちょっとゆっくり話そうか?」
門下生に向き直ったウーナが振り向き指差す。
「分かったよ、ウーナ。それよりあの敵の攻撃には気を付けろよ。ディーナもほら」
鑑、ウーナに返しつつディーナの涙を拭いてやる。
「ま、そこそこ元気そうなんで一安心だ。じゃ、いってくるぜ」
Jも面を引き締め打ち合わせへと向かう。
その頃、道場の庭先にて。
「そうですか……まさかイ寺様が……」
多由羅(ka6167)が吹き抜ける風に取り残されるように立ち尽くし言葉を失っていた。
「あの、先生はまだ亡くなった訳では……」
青竜紅刃流門下生銃撃隊が慌てて念を押す。
「いや、すべて言わずとも! 目を閉じれば思い出します……イ寺様との思い出……」
多由羅、全く聞いていない。
そして、くわと開眼した!
「もうそれを語り合える日が来ないのであれば私のなすべき事は一つ! 仇討ちなど望む御身ならずとも、見ていてください草葉の陰から」
ここで斬魔刀を構えた。刀身、ぎらり。
「貴方の仲間たちの戦いを……!」
――だだだッ!
「あーっ、走り出した!」
「とにかく追うんだ。まだ他の助っ人と打ち合わせも済んでないのに!」
門下生たちが追う。
同じころ、道場の裏で。
「じゃ、温泉宿の方に行ってみるって伝えてなんだよ」
狐中・小鳥(ka5484)がそう言い残し森への道へと進んだ。
「いいんですかね?」
「鑑さんは……うん、モテモテみたいだし私が行くまでもないんだよ」
心配する門下生銃撃隊に説明する。「天国なのかな?」、「いやほら、狐中師範代、汗たら~してるだろ」、「ああ、フィーネさんもいたし、修羅場か……」とかささやき合う門下生たち。
「とにかくせっかく造った温泉、入れなくなったら困るしね。きっちり討伐するんだよ」
「お、おおー!」
士気を上げ、小鳥が行く。
この時、多由羅や小鳥はもちろん、門下生たちの様子もじっくりと見ていた人物がいた。
「噂の銃剣二刀流の青竜紅刃流……でも門下生の人たちは銃だけを持っている様子でしょうか?」
ユウ(ka6891)である。
「あ!」
その様子に門下生の一人が気付いた。
「あの……もしかしてその剣、銃としても使えるんですか?」
ユウの腰にある魔導剣「カオスウィース」に気が付いたようで、寄ってきた。
「ええ……ああ、柄にトリガーがあるからですね。これは残念ながら銃の引き金とは違うんです」
カオスウィースの柄の両側にあるトリガーの説明をしようとしたところで門下生、多由羅と小鳥が出発した様子に気付いた。
「あ、いけない。森近く民家の方が手薄なんです。すぐにあちらに移動をお願いします」
というわけでユウ、この場を離れることになる。
●
さて、多由羅を追った門下生たちは何とか追い付いていた。
でもって鑑の存命と奥義を見ておけという指示を受けていることを話した。
「…くだらない…」
多由羅が答えたその時。
「わっ! あっちにいる!」
門下生、西洋甲冑歪虚を発見!
瞬間、多由羅の表情が引き締まる。
「袮々切丸、タスカービレで抜くのは初めてですね……参ります!」
ざっ、と敵へと殺到。門下生たちは多由羅の背後へと一斉に引く。
敵、こちらに気付いた。がっしゃがっしゃと加速しつつ寄ってきて剣を振りかぶる!
そして接敵!
――がきぃ……ん。
敵のダウンスイングに横殴りの袮々切丸がぶつかる。ウエイトの違いか多由羅が当たり負けするが……。
にやり。
「――さあ、共に死にましょう―――」
弾かれるまま横に流れると巨大な袮々切丸を振り回しつつさらに一撃。
敵、この早い攻撃を盾で防ぐ。多由羅はそれでも流れて手を休めない。
剣に体重を預け、遠心力や慣性を利用しながらスピードを止めずにとにかく振り切り攻める。
一方、ウーナ。
「ついに道場までお出ましか……」
ぬっそりと道場まで来た西洋甲冑歪虚一体と対峙していた。
「チャイナドレスの銃剣二刀流、見せてあげるよ!」
両方の銃を抜いたところで左手の魔導拳銃剣「エルス」を操作。直刀モードにして構える。
敵、先手を取るべく殺到した!
「青竜紅刃流・射の型!」
ウーナ、撃つ。敵、見越して盾で反らしてさらに前に!
振りかぶった剣を突撃の勢いのまま振り下ろす。いくら何でもこの威力は受けきれないぞ?
刹那、ひゅんと刃のきらめきが円弧を描く。
「青竜紅刃流・攻め崩し!」
――がきっ。
応じたウーナ、剣で敵の大剣を狙い反らしてわが身は横へ。
ここで敵の背後で中の人のような影がでできてウーナを斬った。
「ウーナさん!」
「見せてあげるよ。二刀流と銃剣二刀流の違いを!」
味方の悲鳴を制し、ウーナが仕掛ける!
もう一人のチャイナドレス。
「今回は歌は無しで真面目に行かせて貰うんだよ! …や、歌ってる時も真面目だけども! も!」
小鳥はすでに交戦中。
かきんかきんと魔剣「バルムンク」及び禍炎剣「レーヴァテイン」で敵の攻撃をいなしている。
もちろん攻撃もしている。防御もしている。
とにかく忙しい。
その様子は少し離れて門下生たちが見ている。
「すげえ……あれ、円舞だろ?」
「いや、不留一歩も使ってると思う。一度反撃食らってから一撃離脱を優先してるみたいだ」
スピード対パワーの構図だ。ひらひらのチャイナドレスが舞い、武骨な全身鎧ががちゃがちゃ鳴り響く。
しばらくすると小鳥の方が優位になった。直接ダメージではなく、位置取りの話だ。
「盾の無い方向からなら受けられないよね♪ 二連之業、食らうんだよ!」
がら空きの斜め後ろを取った。唸る魔剣。
が、ここで敵の中身的な上半身の影が鎧から出てきてその剣を受けた。影、二刀持ちである。
「私と同じ二刀流だね。二刀流同士なら絶対に負けられないね! どっちの二刀流が上か、いざ尋常に勝負だよ!」
いったん離れた小鳥、禍炎剣を前に構えた!
こちら、森近くの民家の前。
ぬっそりと全身鎧歪虚が森から出てきて民家へと近付いてきた。
その背後に人影が。
「やれやれ。やっとお出ましかい?」
トリプルJである。パシンと左拳を右手に打ち付けたのは、こっちを向けという合図である。
ただ、敵は早かった。
振り向きざまに長剣をぶん回した。
――ばしっ!
「……この程度の歪虚に鑑がやられるっておかしくねぇか?」
J、左手のパリィグローブでこれを受けた。パワーで負けるつもりはない。
「おらよ!」
すかさず右手の鉄爪「インシネレーション」で斬りかかるがこれは盾で止められた。次の敵の攻撃も受け、鉄爪で鎧徹し!
ぐら、と一瞬よろける鎧歪虚。
「おかしい。よっぽど堅いのか、隠し玉があるのか……どっちだ」
とにかく食らえ、と回り込んでもう一撃!
いや、敵の背後から中身的な上半身の影が出て来たぞ?
「お……これか、鑑がやられたのは」
J、敵の攻撃をモロに食らってしまいよろけた。
ユウも戦闘中。
「移動速度で優位に立つしかないですね」
魔導剣「カオスウィース」を構えてアクセルオーバー。残像を纏い敵の剣を横にかわし盾でのどつきを後退で回避。敵を手玉に取る動きを見せる。
が、敵も対応してきた。
「……あの残像、すごいけど敵に動きを読まれてる?」
「ああ。動き自体は正統だから読みやすい」
遠巻きに見ている門下生たちでもそれは分かった。それだけに、敵はユウを追い詰めつつあった。
「うわっ。まずい!」
門下生たちの悲鳴が響いたのは、ユウが敵の動きにはまったから。
ワンパターンの剣での攻撃を盾のある方に回避させ、そこを盾での突撃で狙われたのだ。ちょうど、背後に大木がある。これまでのようにバックステップすれば押しつぶされる!
「……飛び道具の二刀流でしたね?」
ユウ、慌てない。
左手の手裏剣「八握剣」を投げた。
が、敵は盾を構えて突っ込んでいる。かきんと防がれ横に逸れた。もう、逃げるためのステップを踏む余裕はない。
その瞬間だった!
「チェイシングスロー……」
歪虚の前から突然、ユウが消えたッ!
そして、ディーナ。
「私は、怒ってるの」
いつもと雰囲気、違う!
「お前なんかが鑑さんに怪我をさせたことを、とってもとっても怒ってるの!」
敵歪虚の重たい一撃をパリィグローブ「ディスターブ」で受け、ホーリーメイス「レイバシアー」で殴る。もちろん敵は盾で受け、また攻撃。ディーナも受けてまた殴る。
この繰り返しはしかし、グローブで受けるディーナが不利だ。
しかし、意に介さない。
「鬼猿だって! 脳みそは白子並みの珍味と聞いたの!」
――がきぃ……。
横殴りの怒りの一撃。
これで敵は少し離れた。
狙いは、助走を付け体重を乗せた攻撃。ディーナを押し潰す作戦だ。
その一歩目はしかし!
「それをみんなみんな……許さないの!」
プルガトリオ!
魔法の無数の闇の刃が鎧歪虚を串刺しにした。一瞬宙に浮く敵。
「あの味もこの味も試したかったの!」
逆に助走して重い一撃。横を向く敵。さらに追い打ちを……。
いや、敵の背中から中の人的な影が出できたぞ。
二振りの剣がディーナを襲う!
「させないの!」
ばしゅん、とホーリーヴェール。そしてメイスを振りかぶる。
「鬼猿の仇なの鑑さんの仇なの!」
完全に圧倒したディーナがそのまま押し切る。
……鑑はまだ死んでないが。
●
多由羅の下段攻撃、紅蓮斬が唸りをあげる!
がきっ、と盾で止められたが威力十分。敵は前のめりに崩れた。
「終わりですね」
止めの動きを見せたところ、背後から敵の内部的な影が出てきて多由羅を斬った。
「イ寺様がやられたという二段攻撃……それならば!」
食らったがすぐに動く。影は再び鎧の中に戻ろうとしている。
この隙を逃す手はないッ。
「鎧ともう一つの本体を同時に捉え、断ち割ります!」
敵とは、距離があった。
ゆえに影は中に戻ろうとしていた。
それが、空間ごと斬られた。
次元斬である。
「……秘剣──瞬──(またたき)」
多由羅、身を正してそう言い残す。
ウーナの方は。
「攻め崩し!」
撃った弾は敵とは違う方向。ただし、リフレクションショットで横から敵に命中した。
「どう? どこから攻撃が来るか分からない。これが……」
ウーナ、敵の盾を直刀で横殴りしてまたも無防備な横に回り込む。
「銃剣二刀流……」
敵の背後から影がむくり。右の剣でウーナの剣を止め左の剣で止めの形だ。
が、ウーナは直刀を銃に戻した。剣を合わせる気はない!
「くらえ、『リヒトクーゲル』。青竜紅刃流・走射!」
光属性の特殊弾を撃ち込んだ!
敵鎧、崩れて二度と動かなかった。
そして、小鳥。
「横の動きだけじゃないんだよ……紅蓮斬!」
それまでの横薙ぎの攻撃から一瞬の隙を突き、下段から斬り上げた。
ごおう、と紅蓮の炎が唸りをあげる。
敵、盾で受けたが足が止まった。上半身の影が背中から出てくる。
その、出たところを狙った!
「隙ありなんだよ! この一撃で終わりにするよー!」
横に回ってひねりを加える。チャイナドレスの腰が括れ、二連之業が炸裂した。
敵に攻撃準備を差せなかった小鳥、そのまま連撃を叩き込んで勝負を決めた。
Jも戦闘が終わりそうだ。
「ウララララララーッ」
ファントムハンドで敵の影を止めて先手を取ると、殴る、殴る。
おや、Jは泣いているぞ?
「お前のせいで鑑が……このリア充製造機め絶対許さねぇ」
血の涙である!
リア充な状況を作ったのはコイツのせいとばかりに殴り続けるッ。
「影……」
一方、ユウは影を見て目つきが変わっていた。
「くっ」
剣のトリガー、引いた。
それまでの横の動きから一直線。攻撃を食らっても最小限の回避で敵に食らいつくと瞬影、連撃。力と技なら、技を取ったというべきか。とにかく力押しがない隙に勝負を仕掛け……。
――がしゃん。
「……なんとか仕留めることが出来ましたね」
敵を倒し、安堵の息をついた。
●
戦い終わって、鑑とウーナ。
「そろそろ報酬をおねだりしたいなー、って。三食寝床付、鑑センセの家無期限お泊り権。家事半分と護衛料はサービスしたげるから」
「待て、年齢的に犯罪にならんか?」
尻込みする鑑。くっついてるディーナともどもこれで言いくるめるつもりか。
「……だって、一人にすると無茶で怪我してばっかじゃない」
「う……」
上目遣いした、普段見せないウーナの魅力にやられる鑑。これを見てにへー、と見上げるディーナ。
「ちょっとまあ……なんだ。少し待ってくれ」
鑑、逃げた。
「温泉はそのままなのかな?」
ここで小鳥の助け舟。
「くっそぉ、治ったらベコベコにしてから快癒祝いしてやるぜ、鑑」
「温泉で稽古もするんですか?」
「なかなか良いところでした」
小鳥の後ろではあーもーやってらんねーな感じのJ、流派に興味津々のユウ、うっとりした多由羅の三人がチクワと白ワインでわいわいやっていた。
イ寺鑑(kz0175)の寝込む青竜紅刃流道場二階の自室は静かだった。
「やれやれ、情けない……」
呟いたところでノックが。返事をするとタスカービレに遣わされているジェオルジ役人の女性、フィーネ・リスパルミオが入ってきた。
「お加減、どうですか?」
「おかげさまで。フィーネさんにまでお世話になってしまい……」
「あら、私は望んで……」
フィーネが頬を赤らめ鑑のそばに腰掛けた時だった!
――ばぁん!
「話は全部聞いたよ、鑑センセ!」
ウーナ(ka1439)が扉を勢いよく開いて部屋に飛び込んできた。そのままずずいと鑑の横に。
それだけではない。
「鑑さん無事ですのーっ?!」
間髪入れずディーナ・フェルミ(ka5843)がばーんと入ってきて鑑に一直線。むぎゅうしてからフルリカバリーする。ウーナとフィーネ、びっくり。その間まくし立てるディーナ。
「村に聖導師教会新たに造るの。私が常駐すればこんな怪我で鑑さんも寝込まなくて済むの! 鑑さん死んだら嫌なの。こんな怪我で寝込むのも見たくないの。いつも元気に村おこし頑張ってくれなきゃ嫌なの」
「あの、ディーナ? 何を言ってるのか……」
「だったら鑑さんとこに押しかけ女房するのも決めたの!」
「えええ! 『だったら』ってなに?」
そこへ、さらに扉ばーん!
「よぉ、大丈……」
トリプルJ(ka6653)が入ってきたが、心配そうな表情が即座に崩れた。ずかずか部屋に入るとバシバシ鑑の肩を叩く。
「見舞客は女性ばかりかよ。羨まし過ぎるぞこの野郎リア充死すべし慈悲はなしだ爆発しろ地の果てまでも」
「……なんでこう口を開けばくし立てるのばかりかなぁ」
鑑がぐったりこぼしたところで門下生が入ってきた。なお、ディーナは「依頼で知り合った工場主さんが歪虚に殺されてそれで鑑さんも……」とかべそべそ泣いてむぎゅうしている。
「すみません、打ち合わせをお願いできますか?」
「みんなも無事? 今行くから。……鑑センセは、片付いたらちょっとゆっくり話そうか?」
門下生に向き直ったウーナが振り向き指差す。
「分かったよ、ウーナ。それよりあの敵の攻撃には気を付けろよ。ディーナもほら」
鑑、ウーナに返しつつディーナの涙を拭いてやる。
「ま、そこそこ元気そうなんで一安心だ。じゃ、いってくるぜ」
Jも面を引き締め打ち合わせへと向かう。
その頃、道場の庭先にて。
「そうですか……まさかイ寺様が……」
多由羅(ka6167)が吹き抜ける風に取り残されるように立ち尽くし言葉を失っていた。
「あの、先生はまだ亡くなった訳では……」
青竜紅刃流門下生銃撃隊が慌てて念を押す。
「いや、すべて言わずとも! 目を閉じれば思い出します……イ寺様との思い出……」
多由羅、全く聞いていない。
そして、くわと開眼した!
「もうそれを語り合える日が来ないのであれば私のなすべき事は一つ! 仇討ちなど望む御身ならずとも、見ていてください草葉の陰から」
ここで斬魔刀を構えた。刀身、ぎらり。
「貴方の仲間たちの戦いを……!」
――だだだッ!
「あーっ、走り出した!」
「とにかく追うんだ。まだ他の助っ人と打ち合わせも済んでないのに!」
門下生たちが追う。
同じころ、道場の裏で。
「じゃ、温泉宿の方に行ってみるって伝えてなんだよ」
狐中・小鳥(ka5484)がそう言い残し森への道へと進んだ。
「いいんですかね?」
「鑑さんは……うん、モテモテみたいだし私が行くまでもないんだよ」
心配する門下生銃撃隊に説明する。「天国なのかな?」、「いやほら、狐中師範代、汗たら~してるだろ」、「ああ、フィーネさんもいたし、修羅場か……」とかささやき合う門下生たち。
「とにかくせっかく造った温泉、入れなくなったら困るしね。きっちり討伐するんだよ」
「お、おおー!」
士気を上げ、小鳥が行く。
この時、多由羅や小鳥はもちろん、門下生たちの様子もじっくりと見ていた人物がいた。
「噂の銃剣二刀流の青竜紅刃流……でも門下生の人たちは銃だけを持っている様子でしょうか?」
ユウ(ka6891)である。
「あ!」
その様子に門下生の一人が気付いた。
「あの……もしかしてその剣、銃としても使えるんですか?」
ユウの腰にある魔導剣「カオスウィース」に気が付いたようで、寄ってきた。
「ええ……ああ、柄にトリガーがあるからですね。これは残念ながら銃の引き金とは違うんです」
カオスウィースの柄の両側にあるトリガーの説明をしようとしたところで門下生、多由羅と小鳥が出発した様子に気付いた。
「あ、いけない。森近く民家の方が手薄なんです。すぐにあちらに移動をお願いします」
というわけでユウ、この場を離れることになる。
●
さて、多由羅を追った門下生たちは何とか追い付いていた。
でもって鑑の存命と奥義を見ておけという指示を受けていることを話した。
「…くだらない…」
多由羅が答えたその時。
「わっ! あっちにいる!」
門下生、西洋甲冑歪虚を発見!
瞬間、多由羅の表情が引き締まる。
「袮々切丸、タスカービレで抜くのは初めてですね……参ります!」
ざっ、と敵へと殺到。門下生たちは多由羅の背後へと一斉に引く。
敵、こちらに気付いた。がっしゃがっしゃと加速しつつ寄ってきて剣を振りかぶる!
そして接敵!
――がきぃ……ん。
敵のダウンスイングに横殴りの袮々切丸がぶつかる。ウエイトの違いか多由羅が当たり負けするが……。
にやり。
「――さあ、共に死にましょう―――」
弾かれるまま横に流れると巨大な袮々切丸を振り回しつつさらに一撃。
敵、この早い攻撃を盾で防ぐ。多由羅はそれでも流れて手を休めない。
剣に体重を預け、遠心力や慣性を利用しながらスピードを止めずにとにかく振り切り攻める。
一方、ウーナ。
「ついに道場までお出ましか……」
ぬっそりと道場まで来た西洋甲冑歪虚一体と対峙していた。
「チャイナドレスの銃剣二刀流、見せてあげるよ!」
両方の銃を抜いたところで左手の魔導拳銃剣「エルス」を操作。直刀モードにして構える。
敵、先手を取るべく殺到した!
「青竜紅刃流・射の型!」
ウーナ、撃つ。敵、見越して盾で反らしてさらに前に!
振りかぶった剣を突撃の勢いのまま振り下ろす。いくら何でもこの威力は受けきれないぞ?
刹那、ひゅんと刃のきらめきが円弧を描く。
「青竜紅刃流・攻め崩し!」
――がきっ。
応じたウーナ、剣で敵の大剣を狙い反らしてわが身は横へ。
ここで敵の背後で中の人のような影がでできてウーナを斬った。
「ウーナさん!」
「見せてあげるよ。二刀流と銃剣二刀流の違いを!」
味方の悲鳴を制し、ウーナが仕掛ける!
もう一人のチャイナドレス。
「今回は歌は無しで真面目に行かせて貰うんだよ! …や、歌ってる時も真面目だけども! も!」
小鳥はすでに交戦中。
かきんかきんと魔剣「バルムンク」及び禍炎剣「レーヴァテイン」で敵の攻撃をいなしている。
もちろん攻撃もしている。防御もしている。
とにかく忙しい。
その様子は少し離れて門下生たちが見ている。
「すげえ……あれ、円舞だろ?」
「いや、不留一歩も使ってると思う。一度反撃食らってから一撃離脱を優先してるみたいだ」
スピード対パワーの構図だ。ひらひらのチャイナドレスが舞い、武骨な全身鎧ががちゃがちゃ鳴り響く。
しばらくすると小鳥の方が優位になった。直接ダメージではなく、位置取りの話だ。
「盾の無い方向からなら受けられないよね♪ 二連之業、食らうんだよ!」
がら空きの斜め後ろを取った。唸る魔剣。
が、ここで敵の中身的な上半身の影が鎧から出てきてその剣を受けた。影、二刀持ちである。
「私と同じ二刀流だね。二刀流同士なら絶対に負けられないね! どっちの二刀流が上か、いざ尋常に勝負だよ!」
いったん離れた小鳥、禍炎剣を前に構えた!
こちら、森近くの民家の前。
ぬっそりと全身鎧歪虚が森から出てきて民家へと近付いてきた。
その背後に人影が。
「やれやれ。やっとお出ましかい?」
トリプルJである。パシンと左拳を右手に打ち付けたのは、こっちを向けという合図である。
ただ、敵は早かった。
振り向きざまに長剣をぶん回した。
――ばしっ!
「……この程度の歪虚に鑑がやられるっておかしくねぇか?」
J、左手のパリィグローブでこれを受けた。パワーで負けるつもりはない。
「おらよ!」
すかさず右手の鉄爪「インシネレーション」で斬りかかるがこれは盾で止められた。次の敵の攻撃も受け、鉄爪で鎧徹し!
ぐら、と一瞬よろける鎧歪虚。
「おかしい。よっぽど堅いのか、隠し玉があるのか……どっちだ」
とにかく食らえ、と回り込んでもう一撃!
いや、敵の背後から中身的な上半身の影が出て来たぞ?
「お……これか、鑑がやられたのは」
J、敵の攻撃をモロに食らってしまいよろけた。
ユウも戦闘中。
「移動速度で優位に立つしかないですね」
魔導剣「カオスウィース」を構えてアクセルオーバー。残像を纏い敵の剣を横にかわし盾でのどつきを後退で回避。敵を手玉に取る動きを見せる。
が、敵も対応してきた。
「……あの残像、すごいけど敵に動きを読まれてる?」
「ああ。動き自体は正統だから読みやすい」
遠巻きに見ている門下生たちでもそれは分かった。それだけに、敵はユウを追い詰めつつあった。
「うわっ。まずい!」
門下生たちの悲鳴が響いたのは、ユウが敵の動きにはまったから。
ワンパターンの剣での攻撃を盾のある方に回避させ、そこを盾での突撃で狙われたのだ。ちょうど、背後に大木がある。これまでのようにバックステップすれば押しつぶされる!
「……飛び道具の二刀流でしたね?」
ユウ、慌てない。
左手の手裏剣「八握剣」を投げた。
が、敵は盾を構えて突っ込んでいる。かきんと防がれ横に逸れた。もう、逃げるためのステップを踏む余裕はない。
その瞬間だった!
「チェイシングスロー……」
歪虚の前から突然、ユウが消えたッ!
そして、ディーナ。
「私は、怒ってるの」
いつもと雰囲気、違う!
「お前なんかが鑑さんに怪我をさせたことを、とってもとっても怒ってるの!」
敵歪虚の重たい一撃をパリィグローブ「ディスターブ」で受け、ホーリーメイス「レイバシアー」で殴る。もちろん敵は盾で受け、また攻撃。ディーナも受けてまた殴る。
この繰り返しはしかし、グローブで受けるディーナが不利だ。
しかし、意に介さない。
「鬼猿だって! 脳みそは白子並みの珍味と聞いたの!」
――がきぃ……。
横殴りの怒りの一撃。
これで敵は少し離れた。
狙いは、助走を付け体重を乗せた攻撃。ディーナを押し潰す作戦だ。
その一歩目はしかし!
「それをみんなみんな……許さないの!」
プルガトリオ!
魔法の無数の闇の刃が鎧歪虚を串刺しにした。一瞬宙に浮く敵。
「あの味もこの味も試したかったの!」
逆に助走して重い一撃。横を向く敵。さらに追い打ちを……。
いや、敵の背中から中の人的な影が出できたぞ。
二振りの剣がディーナを襲う!
「させないの!」
ばしゅん、とホーリーヴェール。そしてメイスを振りかぶる。
「鬼猿の仇なの鑑さんの仇なの!」
完全に圧倒したディーナがそのまま押し切る。
……鑑はまだ死んでないが。
●
多由羅の下段攻撃、紅蓮斬が唸りをあげる!
がきっ、と盾で止められたが威力十分。敵は前のめりに崩れた。
「終わりですね」
止めの動きを見せたところ、背後から敵の内部的な影が出てきて多由羅を斬った。
「イ寺様がやられたという二段攻撃……それならば!」
食らったがすぐに動く。影は再び鎧の中に戻ろうとしている。
この隙を逃す手はないッ。
「鎧ともう一つの本体を同時に捉え、断ち割ります!」
敵とは、距離があった。
ゆえに影は中に戻ろうとしていた。
それが、空間ごと斬られた。
次元斬である。
「……秘剣──瞬──(またたき)」
多由羅、身を正してそう言い残す。
ウーナの方は。
「攻め崩し!」
撃った弾は敵とは違う方向。ただし、リフレクションショットで横から敵に命中した。
「どう? どこから攻撃が来るか分からない。これが……」
ウーナ、敵の盾を直刀で横殴りしてまたも無防備な横に回り込む。
「銃剣二刀流……」
敵の背後から影がむくり。右の剣でウーナの剣を止め左の剣で止めの形だ。
が、ウーナは直刀を銃に戻した。剣を合わせる気はない!
「くらえ、『リヒトクーゲル』。青竜紅刃流・走射!」
光属性の特殊弾を撃ち込んだ!
敵鎧、崩れて二度と動かなかった。
そして、小鳥。
「横の動きだけじゃないんだよ……紅蓮斬!」
それまでの横薙ぎの攻撃から一瞬の隙を突き、下段から斬り上げた。
ごおう、と紅蓮の炎が唸りをあげる。
敵、盾で受けたが足が止まった。上半身の影が背中から出てくる。
その、出たところを狙った!
「隙ありなんだよ! この一撃で終わりにするよー!」
横に回ってひねりを加える。チャイナドレスの腰が括れ、二連之業が炸裂した。
敵に攻撃準備を差せなかった小鳥、そのまま連撃を叩き込んで勝負を決めた。
Jも戦闘が終わりそうだ。
「ウララララララーッ」
ファントムハンドで敵の影を止めて先手を取ると、殴る、殴る。
おや、Jは泣いているぞ?
「お前のせいで鑑が……このリア充製造機め絶対許さねぇ」
血の涙である!
リア充な状況を作ったのはコイツのせいとばかりに殴り続けるッ。
「影……」
一方、ユウは影を見て目つきが変わっていた。
「くっ」
剣のトリガー、引いた。
それまでの横の動きから一直線。攻撃を食らっても最小限の回避で敵に食らいつくと瞬影、連撃。力と技なら、技を取ったというべきか。とにかく力押しがない隙に勝負を仕掛け……。
――がしゃん。
「……なんとか仕留めることが出来ましたね」
敵を倒し、安堵の息をついた。
●
戦い終わって、鑑とウーナ。
「そろそろ報酬をおねだりしたいなー、って。三食寝床付、鑑センセの家無期限お泊り権。家事半分と護衛料はサービスしたげるから」
「待て、年齢的に犯罪にならんか?」
尻込みする鑑。くっついてるディーナともどもこれで言いくるめるつもりか。
「……だって、一人にすると無茶で怪我してばっかじゃない」
「う……」
上目遣いした、普段見せないウーナの魅力にやられる鑑。これを見てにへー、と見上げるディーナ。
「ちょっとまあ……なんだ。少し待ってくれ」
鑑、逃げた。
「温泉はそのままなのかな?」
ここで小鳥の助け舟。
「くっそぉ、治ったらベコベコにしてから快癒祝いしてやるぜ、鑑」
「温泉で稽古もするんですか?」
「なかなか良いところでした」
小鳥の後ろではあーもーやってらんねーな感じのJ、流派に興味津々のユウ、うっとりした多由羅の三人がチクワと白ワインでわいわいやっていた。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/05/20 00:24:22 |
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これが最後の戦いです! 多由羅(ka6167) 鬼|21才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2018/05/21 15:46:03 |