ゲスト
(ka0000)
【羽冠】知追う者、イスルダ島を視察する?
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/05/22 22:00
- 完成日
- 2018/05/29 20:29
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●しがらみ
グラズヘイム王国のとある町、領主のイノア・クリシスは色々な手紙を受け取り困惑した。
派閥が異なるところから誘いやら脅しやら色々来ている。裏工作から、実際行動しないと問題の内容もあったり、イノアは判断に困っている。相談したこの町のエクラ教の責任者も「下手に受けない訳にもいかない、しかし」と目を伏せる。
この町も隣も比較的穏やかだ。王女のことも貴族のことも静観に近い様子。
田舎町と言えばその通りで、主要街道からも外れている。だから穏やかなのかもしれない。
「イスルダ島の調査の手伝い……人員を出すのは」
難しい。
兵の数すら最低限のクリシス側は本当に無理だ。
「そういえば、お父様は開拓したいという民間の人にお金は出していたわね……」
お金の動きは分かっている。あくまで領主はイノアなのだから。
「……お父様に相談すると……」
厄介だからと出向くに違いない。港にいる分には安全という話もあるが、行ったらそれで終わるかわからない。
「……誰か相談できる方が……」
イノアは解決できないまま手紙を執務室に置いて一晩おいた。
翌日、父ウィリアム・クリシスに「イスルダ島に行ってくるよ」と言われた。
「わたくしが信用できませんか! 勝手に手紙を見るなんて!」
「……え? いや、手紙は見ていないよ? 教会の人が相談に来たんだ」
そのルートで行くことをイノアは考えていなかった。教会の人間はウィリアムについて良くも悪くも気にしている。
「でも、イスルダ島なんて危険すぎます! せめてハンターくらいは雇ってください」
負のマテリアルのことを考えるとそれが重要だ。非覚醒者である父は何かのはずみで負のマテリアルに触れると、覚醒者より大変な目に合う。
「私としては、しっかりしているとは言え、イノアだけを置いていくのも不安なのだよ?」
「……それは……べリンガーさんに」
「そうなるね……」
二人はため息を吐く。
「イノア様、今よろしいでしょうか?」
騎士のジョージ・モースが取次でやってきた。
「大江 紅葉さまが近くに寄ったからといらっしゃっています」
「……紅葉様!」
飛んで火に来る夏の虫やら鴨葱とは思わなかったがそれに近い状況に違いはなかった。
紅葉のことは大変信用し、信頼し、姉がいたらこんなだといいなという人物とイノアは認識している。
イノアに打ち明けられた瞬間、紅葉の表情が一瞬凍り付いたのをウィリアムとジョージは見なかったことにした。
●休暇届がどうしてこうなる
紅葉は妹分のイノアの心配に盛大に「ついて行ってあげます」と滑らかに答えたまでは良かった。
紅葉はエトファリカ連邦国の陰陽寮に席を置く役人だ。役人がそんなに休めない。陰陽寮は特殊な部分もあるため、長期現場に詰めていることもありうる。
が、今回はは他国のことであり、どうやって理由をつけるかで悩む。とはいえ、意外とするすると理由を付けたが、師匠であり兄弟子であり、兄がいたらこんなだろうかと思う相手に相談する。まあ、紅葉の場合、従兄弟がいたので兄ってこんなかということで幻想は抱いていない。
「師匠、おはようございます」
同じ屋根の下に暮らす上司で師匠で兄弟子の吉備 灯世に朝のあいさつする。
「どうした、朝からその顔」
まじめな顔をしていることを指している。
「実は――」
経緯を語った。
「……結局、歪虚支配地域の扱いはこっちでもあったわけだし、それを盾に言えばいい」
「でも、下手なことを言うと、国の動きみたいになってしまいますよ」
「そのあたりは、これをこうしてだな」
「……なるほど」
二人はにこにこ笑顔で、公務に仕立てる届け出を書き上げたのだった。調査と研究というもっともらしいことを言う。
そのあと、灯世は別の動きを見せている。
幕府に寄り、知り合いのところで「護衛ほしいんだけど」と告げる。それはすでに暗黙の了解であるが、なかなか成就しない恋愛物語の符号だった。
「それにしても……あなたは武家に対して何も思わないのか不思議です」
「それを言うなら、あなたもだ」
双方、にこにこ笑顔。類は友を呼ぶのだった。
●洋装でも大丈夫な人、駄目な人
グラズヘイム王国のとある地域の領主だったウィリアムは物資と人を載せた船でイスルダ島に向かった。無事到着後、ウィリアムは感慨深げに港を見る。
「ここにニコラスもいたんだな……」
唐突に今は亡き息子を思い出す。ニコラス・クリシスは歪虚となり、紆余曲折の上、この島に一時的にいたという。
「クリシス殿、紅葉殿のあれを止めなくていいですか?」
クリシス家の騎士が着ている服をまとった松永 光頼がウィリアムの側に控えため息を漏らしている。エトファリカ連邦国の人間であるというのも明確にわかるのもいかがなものかということでウィリアムのところの者ということがわかる服装になったのだ。
一方で紅葉はいつもの服装。洋装を試みたが好みを探す以外に似合わないという問題が難関として立ちふさがった。
現在、空を見て、地面を見て、海を見て、あれは何かこれは何か確認に走り回っているのだ。鬱陶しいし、何歳の子供だろうかという状況だ。
「……ハンターと言い張ればいいという話だからね」
「……にしても、目立つんですよね」
紅葉はハンターという触れ込みになっている、顔が知られていない役人は楽である。
「邪魔にならない程度に邪魔」
はしゃいでいたのは良かった。
膝をついて、倒れた。
「紅葉殿!」
二人は駆けよる。
真っ青な顔の紅葉は吐いていた。
「……そういえば、船の上から妙な行動していたな」
「……そうですね」
船酔いをしていたらしい。それを悟られないよう、好奇心と気力でどうにかしていたのだと思われる。
「……楽しいですぅう……うぷっ……」
「……」
二人はひとまず紅葉を運ぶ。
「……それほど楽しくはないと思うんですが、他の者を気遣っているのです」
「なぜ?」
「紅葉殿実家の回りも似たり寄ったりでしたし」
光頼は思いたい、紅葉が自分を奮い立たせるためはしゃいでいるふりをしているのだと。
ウィリアムはなんとなく「彼女の素じゃないかな」と思っている。しかし、つらそうな光頼を見て、同意をしておいた。
「さて、本来なら神殿跡地まで行きたいのだ」
その言葉に紅葉と光頼は眉を寄せる。もしもの浄化のために紅葉がいることはいるが、それでウィリアムを守り切るかはわからない。
「そこまで不安そうな顔をしないでほしい。さすがに状況もわからずにいかないから」
ウィリアムの指示は、港や道の安全確保のための見回りだった。
グラズヘイム王国のとある町、領主のイノア・クリシスは色々な手紙を受け取り困惑した。
派閥が異なるところから誘いやら脅しやら色々来ている。裏工作から、実際行動しないと問題の内容もあったり、イノアは判断に困っている。相談したこの町のエクラ教の責任者も「下手に受けない訳にもいかない、しかし」と目を伏せる。
この町も隣も比較的穏やかだ。王女のことも貴族のことも静観に近い様子。
田舎町と言えばその通りで、主要街道からも外れている。だから穏やかなのかもしれない。
「イスルダ島の調査の手伝い……人員を出すのは」
難しい。
兵の数すら最低限のクリシス側は本当に無理だ。
「そういえば、お父様は開拓したいという民間の人にお金は出していたわね……」
お金の動きは分かっている。あくまで領主はイノアなのだから。
「……お父様に相談すると……」
厄介だからと出向くに違いない。港にいる分には安全という話もあるが、行ったらそれで終わるかわからない。
「……誰か相談できる方が……」
イノアは解決できないまま手紙を執務室に置いて一晩おいた。
翌日、父ウィリアム・クリシスに「イスルダ島に行ってくるよ」と言われた。
「わたくしが信用できませんか! 勝手に手紙を見るなんて!」
「……え? いや、手紙は見ていないよ? 教会の人が相談に来たんだ」
そのルートで行くことをイノアは考えていなかった。教会の人間はウィリアムについて良くも悪くも気にしている。
「でも、イスルダ島なんて危険すぎます! せめてハンターくらいは雇ってください」
負のマテリアルのことを考えるとそれが重要だ。非覚醒者である父は何かのはずみで負のマテリアルに触れると、覚醒者より大変な目に合う。
「私としては、しっかりしているとは言え、イノアだけを置いていくのも不安なのだよ?」
「……それは……べリンガーさんに」
「そうなるね……」
二人はため息を吐く。
「イノア様、今よろしいでしょうか?」
騎士のジョージ・モースが取次でやってきた。
「大江 紅葉さまが近くに寄ったからといらっしゃっています」
「……紅葉様!」
飛んで火に来る夏の虫やら鴨葱とは思わなかったがそれに近い状況に違いはなかった。
紅葉のことは大変信用し、信頼し、姉がいたらこんなだといいなという人物とイノアは認識している。
イノアに打ち明けられた瞬間、紅葉の表情が一瞬凍り付いたのをウィリアムとジョージは見なかったことにした。
●休暇届がどうしてこうなる
紅葉は妹分のイノアの心配に盛大に「ついて行ってあげます」と滑らかに答えたまでは良かった。
紅葉はエトファリカ連邦国の陰陽寮に席を置く役人だ。役人がそんなに休めない。陰陽寮は特殊な部分もあるため、長期現場に詰めていることもありうる。
が、今回はは他国のことであり、どうやって理由をつけるかで悩む。とはいえ、意外とするすると理由を付けたが、師匠であり兄弟子であり、兄がいたらこんなだろうかと思う相手に相談する。まあ、紅葉の場合、従兄弟がいたので兄ってこんなかということで幻想は抱いていない。
「師匠、おはようございます」
同じ屋根の下に暮らす上司で師匠で兄弟子の吉備 灯世に朝のあいさつする。
「どうした、朝からその顔」
まじめな顔をしていることを指している。
「実は――」
経緯を語った。
「……結局、歪虚支配地域の扱いはこっちでもあったわけだし、それを盾に言えばいい」
「でも、下手なことを言うと、国の動きみたいになってしまいますよ」
「そのあたりは、これをこうしてだな」
「……なるほど」
二人はにこにこ笑顔で、公務に仕立てる届け出を書き上げたのだった。調査と研究というもっともらしいことを言う。
そのあと、灯世は別の動きを見せている。
幕府に寄り、知り合いのところで「護衛ほしいんだけど」と告げる。それはすでに暗黙の了解であるが、なかなか成就しない恋愛物語の符号だった。
「それにしても……あなたは武家に対して何も思わないのか不思議です」
「それを言うなら、あなたもだ」
双方、にこにこ笑顔。類は友を呼ぶのだった。
●洋装でも大丈夫な人、駄目な人
グラズヘイム王国のとある地域の領主だったウィリアムは物資と人を載せた船でイスルダ島に向かった。無事到着後、ウィリアムは感慨深げに港を見る。
「ここにニコラスもいたんだな……」
唐突に今は亡き息子を思い出す。ニコラス・クリシスは歪虚となり、紆余曲折の上、この島に一時的にいたという。
「クリシス殿、紅葉殿のあれを止めなくていいですか?」
クリシス家の騎士が着ている服をまとった松永 光頼がウィリアムの側に控えため息を漏らしている。エトファリカ連邦国の人間であるというのも明確にわかるのもいかがなものかということでウィリアムのところの者ということがわかる服装になったのだ。
一方で紅葉はいつもの服装。洋装を試みたが好みを探す以外に似合わないという問題が難関として立ちふさがった。
現在、空を見て、地面を見て、海を見て、あれは何かこれは何か確認に走り回っているのだ。鬱陶しいし、何歳の子供だろうかという状況だ。
「……ハンターと言い張ればいいという話だからね」
「……にしても、目立つんですよね」
紅葉はハンターという触れ込みになっている、顔が知られていない役人は楽である。
「邪魔にならない程度に邪魔」
はしゃいでいたのは良かった。
膝をついて、倒れた。
「紅葉殿!」
二人は駆けよる。
真っ青な顔の紅葉は吐いていた。
「……そういえば、船の上から妙な行動していたな」
「……そうですね」
船酔いをしていたらしい。それを悟られないよう、好奇心と気力でどうにかしていたのだと思われる。
「……楽しいですぅう……うぷっ……」
「……」
二人はひとまず紅葉を運ぶ。
「……それほど楽しくはないと思うんですが、他の者を気遣っているのです」
「なぜ?」
「紅葉殿実家の回りも似たり寄ったりでしたし」
光頼は思いたい、紅葉が自分を奮い立たせるためはしゃいでいるふりをしているのだと。
ウィリアムはなんとなく「彼女の素じゃないかな」と思っている。しかし、つらそうな光頼を見て、同意をしておいた。
「さて、本来なら神殿跡地まで行きたいのだ」
その言葉に紅葉と光頼は眉を寄せる。もしもの浄化のために紅葉がいることはいるが、それでウィリアムを守り切るかはわからない。
「そこまで不安そうな顔をしないでほしい。さすがに状況もわからずにいかないから」
ウィリアムの指示は、港や道の安全確保のための見回りだった。
リプレイ本文
●釘を刺す
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)はこのようなところまで来たウィリアム・クリシスに内心同情する。薄茶色の髪に白いものが混じっているのを見ると、より一層大変さを感じた。
「そういえば、神殿跡地に行きたいとか思っていると聞いたぞ。さすがに今日はダメだぜ。行った本人が言うんだからな」
「さすがに無謀だと思っているからすぐにとは思っていないよ」
「代わりといったらなんだが、報告とかでいるとかあるなら、後で話すくらいはするから参考にしてくれ」
ウィリアムは礼を述べる。レイオスはどこか不安だった。それは彼の行動にあるが、彼の子絡みだったと気づけばひとまずは不安はぬぐえる。
夢路 まよい(ka1328)は港の状況を見て回ってきた。要人であるウィリアムに何かあっては困るだろうと配慮だ。必要ならばウィリアムの護衛をするつもりだ。
(プエル(kz0127)を討伐にかかわっちゃたし、そのお父さんであるウィリアムの動向や安全は気になるかなぁ)
まよいは人のよさそうな人物のウィリアムを眺める。港の安全は見回って問題なさそうなため、大江 紅葉(kz0163)についていくことにした。
エルバッハ・リオン(ka2434)は紅葉に対し、釘を刺す。
「この島もまだ危険は多いですから、十分気を付けてくださいね」
紅葉は神妙にうなずいているが、突然前のめりに行動することがないと言い切れないと考えられる。
「我を忘れて行動することがあるならば、後で何か罰を受けてもらいます」
エルバッハは実際にしなくとも脅しておく。
なお、紅葉の格好がこの場で浮くことを考え、エルバッハは念のため「ハンターの符術師は色々な格好をしている」というのをアピールする服装をしている。その上、露出度が高い。そのおかげで、紅葉の印象は薄まった。
ステラ・フォーク(ka0808)は優しく見守るお姉さんのように紅葉を見ている。
「相変わらず、大江さんは自由奔放ですわ♪ 連邦国の大使として視察する姿勢は素敵です」
挨拶後のステラの言葉に、紅葉と松永 光頼が激しく首を横に振った。そして、二人そろってステラにずずいと近付き、アップ状態で「勝手に来ているだけですので大仰ではありません」と異口同音に言った。
「王国関係者が多く動ている状態で、平役人とはいえ他国の者が混じっているのは知られたくないのです」
ステラは微妙な国のやり取りにうなずいた。
ミオレスカ(ka3496)はふとどこかで見た物語を思い出した。
「あの物語も隠居でしたね。つまり、クリシス領のご老公の、世直し道中ということでしょうか。お供の紅葉さん、松永さん頑張ってください……とか……」
光頼はともかく、紅葉は頼りなく思える。それでも知識に関してはそれなりに持っているのは知っている。
レイア・アローネ(ka4082)は紅葉に対し挨拶をしつつ、最近も会った記憶があると首をひねる。
「久しぶりだ……それと、ああ、最近、夢で見たような」
「それはさすがにわからないですね。私も夢の中で色々な人に会っていますから、そういことですね」
紅葉はにこにこと答える。なぜか手でハンマーをたたくしぐさをしている。
レイアは彼女が何を思い出しているのかと想像するしかなかった。
●港の外
光頼はウィリアムに護衛として残り、紅葉のみハンターに同行することとなった。光頼が異様に不安そうに紅葉を見ている。
ハンターたちも「紅葉が何かする危険性」を考えているため、知らないのは本人のみであった。
一行が出たのは舗装された街道ではなく、踏み固められた道である。
ステラは気づいたことがあるとメモを取っていく。荒地に近い場所だったり、道はないが何か通った跡などだろう。【超聴覚】を使い、紅葉の護衛という意識も忘れないし、聞こえることに重要なこともあるかもしれない。
「あちらは何があるのでしょうか」
ステラが聞いたものは人の発する声に近かった。
つぶやきが耳に届いたらしく、紅葉が脇道に足を向ける。それに気づいたハンターの緊張が高まる。必要ならば見てくることは構わないが、紅葉がダッシュで行くことが一番問題だ。
「紅葉さん、まず見てから行きましょう」
「そうだね。安全第一だよ」
エルバッハが軍用双眼鏡を手にして片手では紅葉のそでを持ち、まよいもがっちりと彼女のそでを握った。
「そうですね」
二人に紅葉はうなずいた。
「必要なら見に行くのは私たちだ」
レイアがさりげなく前に出て、紅葉の進路をふさぐ。
「脇道ですね……一応、確認していきますか?」
エルバッハが確認後、紅葉に行動指針を問う。
「島には人間が住んでいたんだし、集落跡があった可能性だってあるだろう?」
「そうよね。調査や発掘に来て懐かしいとか思っていく人もいるかもしれないし」
レイオスとまよいが同意した。
一行は向かうことにした。その脇道の入り口付近からは見通しが悪いため、警戒を強くした。
「獣道みたいですね。そもそも、歪虚支配地域だったわけですから、最近動物を離したということがない限り、雑魔ということですよね……あら? これは人の足跡……でしょうか?」
ミオレスカの指摘に、覗き込むレイア。
「確かに人間のように見えるが、人の姿をした雑魔や歪虚ということもあり得るな」
レイアは慎重さを忘れない。
ステラは【超聴覚】を再び用いる。人のうめき声と複数の声が近くなってくる。
「けが人がいるようです。それ以外、今は動くものは特にないようですわ」
「急ごう」
レイオスの言葉の後、一行は陣形は崩さないように急いだ。
道の途中に三頭の馬と倒れる人影が見える。ハンターが見えた瞬間、その馬の主たちほっと息を吐いた。
「どうかしたのですか」
ステラが倒れる人の横に膝をつく。傷があり出血をしている。他の者も応急手当で現状問題ない程度にけがを負っている。
「すまない。空から来た雑魔に襲われて、反撃したおかげで去ったのだが……」
馬に乗るのが辛いけが人が出てしまった。そのため、一人が付き添い残るのか、どうにかして戻るのかと言った行動を決めかねていた。
「美人な女医でなくて悪いが、傷を癒すから文句は言わないでくれよ」
レイオスはステラから変わり、腕輪にある力を借り【ヒール】のスキルを使う。
「ありがとう……」
「これで港に戻るくらいは問題ないだろう」
「ああ、痛みが消えた。これなら馬に乗せてもらえば何とか行ける」
「それと、念のためにこれかけておくか……【アンチボディ】」
兵たちは心身ともに安堵した表情になる。
この間、他のハンターは周囲を見張っていた。銃や弓、魔法が使えるように、近づく敵がいれば攻撃できるように。兵は空から襲われ倒したとは言っていない上、視界が遮られる地上に敵がいない保証もない。
「あれは……雑魔ですね」
ミオレスカは大火弓を構えると、雑魔を見事に貫いた。
「まだいるかもしれません……皆さんは今のうちに急いで退去してください。ただ、その前にこの先には何があるのか教えてください」
ミオレスカの丁寧な頼みに、兵は「もともと人が住む場所はあったが、今は何もないはず」と告げる。
「見てくるのが必要ならあとはこちらでやるから」
レイアの助言に、兵たちは馬に乗り、立ち去る。
レイオスとレイアは【ソウルトーチ】を使ってみる。兵を狙うより、こちらが良いと意識させる狙いだ。感知できるところにいるかわからないが、試すほうがよい。
「で、放っておくのわけにはいかないか。護衛の範囲から外れることになるが行ってきてもいいか?」
「せめて、住処などわかれば知っていたほうがいいな」
レイオスとレイアが紅葉に確認を取る。
「はい、行きましょう」
「……ああ……え?」
二人は言葉が続かなかった。紅葉は待つか戻るかという行動を考えてはいた。
「でも、こうなるような気はしましたね」
「話を聞く限りで、そうでしょ」
エルバッハはため息を漏らし、まよいは笑う。
「何かあったら守るだけですね」
「そうそう。だけど、危険そうだったら逃げるのも必要だよね」
二人は紅葉の側に位置取り、ちらりと彼女を見上げた。
人が住んでいた跡があるとなると、雑魔が隠れやすいあとになっているのかもしれない。
●雑魔について
他にも雑魔がいたというが、特に襲われない。一体倒されたことで警戒されている可能性もある。しかし、その警戒も持たないだろうと考えはする。
ステラは記録を取ることより警戒に意識を変えた。必要なことは記憶しておく。
「本当に老公の世直しみたいな気持ちがします」
ミオレスカは安全な限り、紅葉の行動は見守ることとしていた。人が多い道の安全配慮からこの行動が完全に外れるわけでもない。だから、静観し、できる限りのことをすると考える。
「この格好だと、木が多いとなんというか……」
エルバッハは虫に刺されるような気がするが、自然が戻っているわけでもないため現在のところ問題はない。
「……虫ってどのタイミングで戻ってくるかな? ほら、歪虚支配地域だったということは、ただの虫はいなかったということだよね」
まよいの素朴な疑問により、紅葉が口を開いた。
「船に乗ってきたり、私たちにくっついていたりしたのが、適応して増えていくのではないでしょうか」
「そっか。飛んでくるのは遠いもんね」
「でも、海を渡る蝶がいると聞いたことあります」
「それは、すごいよね」
まよいと紅葉はにこにこ笑う。
ガサガサと何か音がしたため、一行の足が止まる。
レイアとレイオスが剣を構える。
ミオレスカと一緒になって、紅葉も弓を持っている。一瞬、射させるのはどうなか考えるが、徐々にうまくはなっているだろうしと誰も止めない。
エルバッハとまよいは魔法を使うため、意識を集中させる。
ステラは耳を澄ませ、銃を手にする。
「あちらに……」
ステラはしぐさで示す。レイアとレイオスが慎重に前に出る。エルバッハとまよいが紅葉から離れすぎない程度に距離をおき、前の二人を援護できる位置を計る。ステラは紅葉を守るためにそばにおり、ミオレスカは射程もあるため、動かないで周囲を見渡す。見ることで異変があれば前衛二人に指示を出せる。
獣型の雑魔が現れた。二体であり、レイオスとレイアはあっさりと片付ける。
それらが出てきた方向を意識して、前に進む。距離が開いてくるため、紅葉たちも前に出る。
陣形を崩さないように進んだ。
木々の隙間からレイアが見て「退くか、倒しておくか」という質問を紅葉に出す。
「倒せるだろう……これなら」
レイオスが助言をする。もちろん、これ以上危険な存在がいた場合は別だが、現在の状況ならば何とかなると経験から読んだ。
「おとなしくしていますので、よろしくお願いします」
紅葉が自分の行動を宣言した。
範囲攻撃ができるエルバッハが状況を確認後、先ず攻撃を叩き込む。
それらは何かいると気づいたが、叩き込まれた【ファイアボール】で雑魔の大半は吹き飛ぶ。空を舞っていたものが主に逃れていた。
その逃れたモノもミオレスカの【ハウンドバレット】でかなり数を減らす。そこにステラの銃弾とまよいの【ダブルキャスト】の上の【マジックアロー】が飛ぶ。
地面を来るモノに対して、レイオスとレイアが的確に攻撃をして倒す。【ソウルトーチ】を二人はここでも使用する。それに引き付けられるのか、雑魔が逃げずに場にとどまったり、向かってくる。
そのため、ハンターたちは雑魔を的確に倒すことができた。
安全か様子見る間に場所を観察すると、家や倉庫だったらしい建物がある。形はあるが、家具等はない状態のように見える。
「森での作業をするような場所だったのでしょうか?」
ミオレスカはなんとなく家屋の大きさから推測する。教会や大きな建物もないため、大人数で暮らしていたわけではないだろう。
「港に近いところから少しずつ……といっても、あの道から離れるからな」
レイオスがここを拠点として整備する利点が現状見えないと感じた。
「このあたり、何か変なところはあるでしょうか? 見て行ったほうがいいですね。必要ならウィリアムさんに言わないといけませんわ」
「独りで行くな。私も行くぞ」
ステラを守るようにレイアがついていく。紅葉は別の者が付いているため、ひとまず離れてもよさそうだとレイアは感じた。
「念のため、浄化しておいた方がいいですね」
紅葉が自主的に動いた。
「何か役割を紅葉さんに持ってもらうと暴走しなかったのでしょうか」
「あ、なんとなくわかるかも。やることがあると集中するから余計なところに行かない感じかな」
エルバッハにまよいが納得したと告げる。
「しかし、その頼んだことに集中して、危険なところにつっこむこともありうるぞ」
レイオスの指摘に二人は黙った。
「紅葉さん、休憩しておきましょう。さ、水を飲んでくださいね」
一通り作業が終わった紅葉にミオレスカが世話を焼いている。動けなくなることを回避する作戦のようだった。
紅葉の動きを他の者が見守っている間、ステラとレイアはこの近辺に不安に感じるものは特にないと観察し終わった。
●無事終了
紅葉をソリに載せることなくエルバッハは帰ってきた。
「意外でした」
紅葉は疑問符を頭の上に浮かべる。
「いえ、いいのです。何事もなく終わりよかったです。洋服を着ていただくということもなく、残念かもしれませんね」
エルバッハに紅葉は震えながらうなずいて、「洋服、似合わないのですよ」と冷や汗をかいている。
ステラはホッと息を吐く。
「これでひとまずは安心ですね。それと、メモを取った道の危険な個所などですわ。これでウィリアムさんにも役に立てましたでしょうか?」
ステラはメモをウィリアムに手渡した。
「それは助かる、ありがとう」
ウィリアムは微笑んだ。
「紅葉さんもそうですが、イノアさんの結婚話は……あ、そっとしておいた方がいいでしょうか」
ミオレスカはふとつぶやいた。
「え?」
ウィリアムが複雑そうな表情を一瞬浮かべた。
「いえいえ……何でもありません。それより、ある程度、雑魔の討伐もできて良かったです」
ミオレスカにレイアがうなずく。
「少しでも減ることが重要だな。港から戦いをせずにあちこちに行けることは重要だから」
レイアが無事に終わってよかったと、視線を紅葉に向けた。
「さてと……ウィリアム、神殿跡地の説明でもするか?」
「私も一緒するよ。知っているし、気になるし」
レイオスとまよいはウィリアムと彼の天幕に向かったのだった。
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)はこのようなところまで来たウィリアム・クリシスに内心同情する。薄茶色の髪に白いものが混じっているのを見ると、より一層大変さを感じた。
「そういえば、神殿跡地に行きたいとか思っていると聞いたぞ。さすがに今日はダメだぜ。行った本人が言うんだからな」
「さすがに無謀だと思っているからすぐにとは思っていないよ」
「代わりといったらなんだが、報告とかでいるとかあるなら、後で話すくらいはするから参考にしてくれ」
ウィリアムは礼を述べる。レイオスはどこか不安だった。それは彼の行動にあるが、彼の子絡みだったと気づけばひとまずは不安はぬぐえる。
夢路 まよい(ka1328)は港の状況を見て回ってきた。要人であるウィリアムに何かあっては困るだろうと配慮だ。必要ならばウィリアムの護衛をするつもりだ。
(プエル(kz0127)を討伐にかかわっちゃたし、そのお父さんであるウィリアムの動向や安全は気になるかなぁ)
まよいは人のよさそうな人物のウィリアムを眺める。港の安全は見回って問題なさそうなため、大江 紅葉(kz0163)についていくことにした。
エルバッハ・リオン(ka2434)は紅葉に対し、釘を刺す。
「この島もまだ危険は多いですから、十分気を付けてくださいね」
紅葉は神妙にうなずいているが、突然前のめりに行動することがないと言い切れないと考えられる。
「我を忘れて行動することがあるならば、後で何か罰を受けてもらいます」
エルバッハは実際にしなくとも脅しておく。
なお、紅葉の格好がこの場で浮くことを考え、エルバッハは念のため「ハンターの符術師は色々な格好をしている」というのをアピールする服装をしている。その上、露出度が高い。そのおかげで、紅葉の印象は薄まった。
ステラ・フォーク(ka0808)は優しく見守るお姉さんのように紅葉を見ている。
「相変わらず、大江さんは自由奔放ですわ♪ 連邦国の大使として視察する姿勢は素敵です」
挨拶後のステラの言葉に、紅葉と松永 光頼が激しく首を横に振った。そして、二人そろってステラにずずいと近付き、アップ状態で「勝手に来ているだけですので大仰ではありません」と異口同音に言った。
「王国関係者が多く動ている状態で、平役人とはいえ他国の者が混じっているのは知られたくないのです」
ステラは微妙な国のやり取りにうなずいた。
ミオレスカ(ka3496)はふとどこかで見た物語を思い出した。
「あの物語も隠居でしたね。つまり、クリシス領のご老公の、世直し道中ということでしょうか。お供の紅葉さん、松永さん頑張ってください……とか……」
光頼はともかく、紅葉は頼りなく思える。それでも知識に関してはそれなりに持っているのは知っている。
レイア・アローネ(ka4082)は紅葉に対し挨拶をしつつ、最近も会った記憶があると首をひねる。
「久しぶりだ……それと、ああ、最近、夢で見たような」
「それはさすがにわからないですね。私も夢の中で色々な人に会っていますから、そういことですね」
紅葉はにこにこと答える。なぜか手でハンマーをたたくしぐさをしている。
レイアは彼女が何を思い出しているのかと想像するしかなかった。
●港の外
光頼はウィリアムに護衛として残り、紅葉のみハンターに同行することとなった。光頼が異様に不安そうに紅葉を見ている。
ハンターたちも「紅葉が何かする危険性」を考えているため、知らないのは本人のみであった。
一行が出たのは舗装された街道ではなく、踏み固められた道である。
ステラは気づいたことがあるとメモを取っていく。荒地に近い場所だったり、道はないが何か通った跡などだろう。【超聴覚】を使い、紅葉の護衛という意識も忘れないし、聞こえることに重要なこともあるかもしれない。
「あちらは何があるのでしょうか」
ステラが聞いたものは人の発する声に近かった。
つぶやきが耳に届いたらしく、紅葉が脇道に足を向ける。それに気づいたハンターの緊張が高まる。必要ならば見てくることは構わないが、紅葉がダッシュで行くことが一番問題だ。
「紅葉さん、まず見てから行きましょう」
「そうだね。安全第一だよ」
エルバッハが軍用双眼鏡を手にして片手では紅葉のそでを持ち、まよいもがっちりと彼女のそでを握った。
「そうですね」
二人に紅葉はうなずいた。
「必要なら見に行くのは私たちだ」
レイアがさりげなく前に出て、紅葉の進路をふさぐ。
「脇道ですね……一応、確認していきますか?」
エルバッハが確認後、紅葉に行動指針を問う。
「島には人間が住んでいたんだし、集落跡があった可能性だってあるだろう?」
「そうよね。調査や発掘に来て懐かしいとか思っていく人もいるかもしれないし」
レイオスとまよいが同意した。
一行は向かうことにした。その脇道の入り口付近からは見通しが悪いため、警戒を強くした。
「獣道みたいですね。そもそも、歪虚支配地域だったわけですから、最近動物を離したということがない限り、雑魔ということですよね……あら? これは人の足跡……でしょうか?」
ミオレスカの指摘に、覗き込むレイア。
「確かに人間のように見えるが、人の姿をした雑魔や歪虚ということもあり得るな」
レイアは慎重さを忘れない。
ステラは【超聴覚】を再び用いる。人のうめき声と複数の声が近くなってくる。
「けが人がいるようです。それ以外、今は動くものは特にないようですわ」
「急ごう」
レイオスの言葉の後、一行は陣形は崩さないように急いだ。
道の途中に三頭の馬と倒れる人影が見える。ハンターが見えた瞬間、その馬の主たちほっと息を吐いた。
「どうかしたのですか」
ステラが倒れる人の横に膝をつく。傷があり出血をしている。他の者も応急手当で現状問題ない程度にけがを負っている。
「すまない。空から来た雑魔に襲われて、反撃したおかげで去ったのだが……」
馬に乗るのが辛いけが人が出てしまった。そのため、一人が付き添い残るのか、どうにかして戻るのかと言った行動を決めかねていた。
「美人な女医でなくて悪いが、傷を癒すから文句は言わないでくれよ」
レイオスはステラから変わり、腕輪にある力を借り【ヒール】のスキルを使う。
「ありがとう……」
「これで港に戻るくらいは問題ないだろう」
「ああ、痛みが消えた。これなら馬に乗せてもらえば何とか行ける」
「それと、念のためにこれかけておくか……【アンチボディ】」
兵たちは心身ともに安堵した表情になる。
この間、他のハンターは周囲を見張っていた。銃や弓、魔法が使えるように、近づく敵がいれば攻撃できるように。兵は空から襲われ倒したとは言っていない上、視界が遮られる地上に敵がいない保証もない。
「あれは……雑魔ですね」
ミオレスカは大火弓を構えると、雑魔を見事に貫いた。
「まだいるかもしれません……皆さんは今のうちに急いで退去してください。ただ、その前にこの先には何があるのか教えてください」
ミオレスカの丁寧な頼みに、兵は「もともと人が住む場所はあったが、今は何もないはず」と告げる。
「見てくるのが必要ならあとはこちらでやるから」
レイアの助言に、兵たちは馬に乗り、立ち去る。
レイオスとレイアは【ソウルトーチ】を使ってみる。兵を狙うより、こちらが良いと意識させる狙いだ。感知できるところにいるかわからないが、試すほうがよい。
「で、放っておくのわけにはいかないか。護衛の範囲から外れることになるが行ってきてもいいか?」
「せめて、住処などわかれば知っていたほうがいいな」
レイオスとレイアが紅葉に確認を取る。
「はい、行きましょう」
「……ああ……え?」
二人は言葉が続かなかった。紅葉は待つか戻るかという行動を考えてはいた。
「でも、こうなるような気はしましたね」
「話を聞く限りで、そうでしょ」
エルバッハはため息を漏らし、まよいは笑う。
「何かあったら守るだけですね」
「そうそう。だけど、危険そうだったら逃げるのも必要だよね」
二人は紅葉の側に位置取り、ちらりと彼女を見上げた。
人が住んでいた跡があるとなると、雑魔が隠れやすいあとになっているのかもしれない。
●雑魔について
他にも雑魔がいたというが、特に襲われない。一体倒されたことで警戒されている可能性もある。しかし、その警戒も持たないだろうと考えはする。
ステラは記録を取ることより警戒に意識を変えた。必要なことは記憶しておく。
「本当に老公の世直しみたいな気持ちがします」
ミオレスカは安全な限り、紅葉の行動は見守ることとしていた。人が多い道の安全配慮からこの行動が完全に外れるわけでもない。だから、静観し、できる限りのことをすると考える。
「この格好だと、木が多いとなんというか……」
エルバッハは虫に刺されるような気がするが、自然が戻っているわけでもないため現在のところ問題はない。
「……虫ってどのタイミングで戻ってくるかな? ほら、歪虚支配地域だったということは、ただの虫はいなかったということだよね」
まよいの素朴な疑問により、紅葉が口を開いた。
「船に乗ってきたり、私たちにくっついていたりしたのが、適応して増えていくのではないでしょうか」
「そっか。飛んでくるのは遠いもんね」
「でも、海を渡る蝶がいると聞いたことあります」
「それは、すごいよね」
まよいと紅葉はにこにこ笑う。
ガサガサと何か音がしたため、一行の足が止まる。
レイアとレイオスが剣を構える。
ミオレスカと一緒になって、紅葉も弓を持っている。一瞬、射させるのはどうなか考えるが、徐々にうまくはなっているだろうしと誰も止めない。
エルバッハとまよいは魔法を使うため、意識を集中させる。
ステラは耳を澄ませ、銃を手にする。
「あちらに……」
ステラはしぐさで示す。レイアとレイオスが慎重に前に出る。エルバッハとまよいが紅葉から離れすぎない程度に距離をおき、前の二人を援護できる位置を計る。ステラは紅葉を守るためにそばにおり、ミオレスカは射程もあるため、動かないで周囲を見渡す。見ることで異変があれば前衛二人に指示を出せる。
獣型の雑魔が現れた。二体であり、レイオスとレイアはあっさりと片付ける。
それらが出てきた方向を意識して、前に進む。距離が開いてくるため、紅葉たちも前に出る。
陣形を崩さないように進んだ。
木々の隙間からレイアが見て「退くか、倒しておくか」という質問を紅葉に出す。
「倒せるだろう……これなら」
レイオスが助言をする。もちろん、これ以上危険な存在がいた場合は別だが、現在の状況ならば何とかなると経験から読んだ。
「おとなしくしていますので、よろしくお願いします」
紅葉が自分の行動を宣言した。
範囲攻撃ができるエルバッハが状況を確認後、先ず攻撃を叩き込む。
それらは何かいると気づいたが、叩き込まれた【ファイアボール】で雑魔の大半は吹き飛ぶ。空を舞っていたものが主に逃れていた。
その逃れたモノもミオレスカの【ハウンドバレット】でかなり数を減らす。そこにステラの銃弾とまよいの【ダブルキャスト】の上の【マジックアロー】が飛ぶ。
地面を来るモノに対して、レイオスとレイアが的確に攻撃をして倒す。【ソウルトーチ】を二人はここでも使用する。それに引き付けられるのか、雑魔が逃げずに場にとどまったり、向かってくる。
そのため、ハンターたちは雑魔を的確に倒すことができた。
安全か様子見る間に場所を観察すると、家や倉庫だったらしい建物がある。形はあるが、家具等はない状態のように見える。
「森での作業をするような場所だったのでしょうか?」
ミオレスカはなんとなく家屋の大きさから推測する。教会や大きな建物もないため、大人数で暮らしていたわけではないだろう。
「港に近いところから少しずつ……といっても、あの道から離れるからな」
レイオスがここを拠点として整備する利点が現状見えないと感じた。
「このあたり、何か変なところはあるでしょうか? 見て行ったほうがいいですね。必要ならウィリアムさんに言わないといけませんわ」
「独りで行くな。私も行くぞ」
ステラを守るようにレイアがついていく。紅葉は別の者が付いているため、ひとまず離れてもよさそうだとレイアは感じた。
「念のため、浄化しておいた方がいいですね」
紅葉が自主的に動いた。
「何か役割を紅葉さんに持ってもらうと暴走しなかったのでしょうか」
「あ、なんとなくわかるかも。やることがあると集中するから余計なところに行かない感じかな」
エルバッハにまよいが納得したと告げる。
「しかし、その頼んだことに集中して、危険なところにつっこむこともありうるぞ」
レイオスの指摘に二人は黙った。
「紅葉さん、休憩しておきましょう。さ、水を飲んでくださいね」
一通り作業が終わった紅葉にミオレスカが世話を焼いている。動けなくなることを回避する作戦のようだった。
紅葉の動きを他の者が見守っている間、ステラとレイアはこの近辺に不安に感じるものは特にないと観察し終わった。
●無事終了
紅葉をソリに載せることなくエルバッハは帰ってきた。
「意外でした」
紅葉は疑問符を頭の上に浮かべる。
「いえ、いいのです。何事もなく終わりよかったです。洋服を着ていただくということもなく、残念かもしれませんね」
エルバッハに紅葉は震えながらうなずいて、「洋服、似合わないのですよ」と冷や汗をかいている。
ステラはホッと息を吐く。
「これでひとまずは安心ですね。それと、メモを取った道の危険な個所などですわ。これでウィリアムさんにも役に立てましたでしょうか?」
ステラはメモをウィリアムに手渡した。
「それは助かる、ありがとう」
ウィリアムは微笑んだ。
「紅葉さんもそうですが、イノアさんの結婚話は……あ、そっとしておいた方がいいでしょうか」
ミオレスカはふとつぶやいた。
「え?」
ウィリアムが複雑そうな表情を一瞬浮かべた。
「いえいえ……何でもありません。それより、ある程度、雑魔の討伐もできて良かったです」
ミオレスカにレイアがうなずく。
「少しでも減ることが重要だな。港から戦いをせずにあちこちに行けることは重要だから」
レイアが無事に終わってよかったと、視線を紅葉に向けた。
「さてと……ウィリアム、神殿跡地の説明でもするか?」
「私も一緒するよ。知っているし、気になるし」
レイオスとまよいはウィリアムと彼の天幕に向かったのだった。
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相談 ステラ・フォーク(ka0808) 人間(リアルブルー)|12才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2018/05/22 21:31:15 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/05/22 18:30:33 |