ゲスト
(ka0000)
或る少女と自動人形と街道の歪虚、〆
マスター:佐倉眸

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/05/22 19:00
- 完成日
- 2018/06/04 02:27
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
その帰還報告を受けて、受付嬢は地図を辿る。
新しく書き込まれた歪虚の進路と速度、今は森の奥へ向かっているそれは、いずれヴァリオスを目指して進み始めるだろう。
極彩色の街の、否、この同盟を騒がせる歪虚の事件は幾つも挙がっている。
そこにこの歪虚を巻き込むわけには行かない。街への被害は元より、街を騒がせる様々な歪虚との接触は避けたい。
「……今は、ただ大きくて頑丈なだけ。……街に着いたら危険ですが、森の中にいる間に撃退出来れば、混乱には繋がりません。最も、いるだけで大した汚染源です。何度も街道をこの歪虚が作った汚染源から発生した雑魔に塞がれています」
受付嬢は呟いて溜息を零す。
雑魔の方は、新しく発生していなければ全て撃退されているはず。
もたらされた情報を纏めると、受付嬢はすぐに新しい依頼を掲示した。
『蛞蝓形の黒い歪虚の撃退をお願いします』
簡素な見出しに添えられた黒い絵。描かれた蛞蝓は、簡単ながら大凡の特徴を捉えていた。
長い触覚が伸びて、比較らしい木は踏み付けられて倒れている。
書き加えられたメモには、防御に関して恐らく土の属性を持っていること。しかし、攻撃手段としては不明。
全く無属性の物理的な攻撃のみかも知れ無いが、毒を使ったり、攻撃ごとに異なる属性を発揮することさえ考えられる。
近付きすぎは危険。形状も不定形。大きさ自体が脅威となる。
物理的な攻撃の効きが良くなかったらしいことと、移動はとても遅かったこと。
掲示された依頼を見ているマーガレットとアクレイギア。
参加を迷っているらしい。前回は役に立てなかったから、そう言ってマーガレットことメグは首を竦めた。
それなら手伝って欲しいことがある。
ミズキはトランシーバーを差し出して、2人の手を取った。
●
通信を担ってメグも同行を決めた。
歪虚の動きは先行したミズキが監視し、ミズキの周囲はギアことアクレイギアが警戒し、状況を伝えてくれる。
街道を進むが、トランシーバーには未だ雑音が多く混ざっていた。
聞こえる、聞こえる、と急かす様なギアの声をやっと拾った時には、遠目に黒い影が覗える程近付いていた。
「――聞こえます。ここからでも対象の目視が可能です。距離は……」
道の先で身を潜めているらしい2人の姿は未だ見えない。
「――分かりました、通信の限界より、森の中へ、直進70メートル。はい、こちらの移動は……」
メグは自身がここまで乗って来た馬を見る。
次いでその目を回りへも向けた。
馬に乗ったままでも茂みの中を少しは進める。しかし、敵までの距離の半分程度が限界らしい。
移動手段を同じくするハンター達にもそれを伝える。
「――30メートルの射程が有る攻撃なら届きますか?……はい、伝えます」
敵は森の中、70メートルの所にいる。40メートルまでは足元が悪いが問題なく進めるらしい。
しかし、その先は馬やバイクには困難だ。単純に真っ直ぐ歩く事も難しく、接近には時間を要するだろう。
「攻撃手段は分かりますか?……そうですか。――え? ギアちゃんが? 止めた方が良いよ、もうすぐ着くから、ね? もうすぐ着くから待って!」
触覚を振り回していた、と、ミズキが観察し、ギアがメグに伝えた。
気になるから撃ってみる、と、提案したギアを止めるメグの声が焦っている。
ギアを宥めている内に、また歪虚に動きがあったようだ。今まで留まっていたそれが少しヴァリオス方面へ身体を蠢かせた。
「……ええと、それから……」
今日の仕事は通信、戦いには足手纏いになってしまうだろうから、せめて必要な情報は落とさないように。
「――移動の速度は、……変わらず。――今の音は? 木? はい。分かりました。……木がなぎ倒されているのが見えたとのことです」
その動きはゆっくりだが、少しずつヴァリオスへ向かっている。
重そうな身体をじっとりと這わせて。
その後も数度、ギアからの通信が入るが新しい情報は無く、やがて、緑色の襤褸を被った2人の姿が見えた。
その帰還報告を受けて、受付嬢は地図を辿る。
新しく書き込まれた歪虚の進路と速度、今は森の奥へ向かっているそれは、いずれヴァリオスを目指して進み始めるだろう。
極彩色の街の、否、この同盟を騒がせる歪虚の事件は幾つも挙がっている。
そこにこの歪虚を巻き込むわけには行かない。街への被害は元より、街を騒がせる様々な歪虚との接触は避けたい。
「……今は、ただ大きくて頑丈なだけ。……街に着いたら危険ですが、森の中にいる間に撃退出来れば、混乱には繋がりません。最も、いるだけで大した汚染源です。何度も街道をこの歪虚が作った汚染源から発生した雑魔に塞がれています」
受付嬢は呟いて溜息を零す。
雑魔の方は、新しく発生していなければ全て撃退されているはず。
もたらされた情報を纏めると、受付嬢はすぐに新しい依頼を掲示した。
『蛞蝓形の黒い歪虚の撃退をお願いします』
簡素な見出しに添えられた黒い絵。描かれた蛞蝓は、簡単ながら大凡の特徴を捉えていた。
長い触覚が伸びて、比較らしい木は踏み付けられて倒れている。
書き加えられたメモには、防御に関して恐らく土の属性を持っていること。しかし、攻撃手段としては不明。
全く無属性の物理的な攻撃のみかも知れ無いが、毒を使ったり、攻撃ごとに異なる属性を発揮することさえ考えられる。
近付きすぎは危険。形状も不定形。大きさ自体が脅威となる。
物理的な攻撃の効きが良くなかったらしいことと、移動はとても遅かったこと。
掲示された依頼を見ているマーガレットとアクレイギア。
参加を迷っているらしい。前回は役に立てなかったから、そう言ってマーガレットことメグは首を竦めた。
それなら手伝って欲しいことがある。
ミズキはトランシーバーを差し出して、2人の手を取った。
●
通信を担ってメグも同行を決めた。
歪虚の動きは先行したミズキが監視し、ミズキの周囲はギアことアクレイギアが警戒し、状況を伝えてくれる。
街道を進むが、トランシーバーには未だ雑音が多く混ざっていた。
聞こえる、聞こえる、と急かす様なギアの声をやっと拾った時には、遠目に黒い影が覗える程近付いていた。
「――聞こえます。ここからでも対象の目視が可能です。距離は……」
道の先で身を潜めているらしい2人の姿は未だ見えない。
「――分かりました、通信の限界より、森の中へ、直進70メートル。はい、こちらの移動は……」
メグは自身がここまで乗って来た馬を見る。
次いでその目を回りへも向けた。
馬に乗ったままでも茂みの中を少しは進める。しかし、敵までの距離の半分程度が限界らしい。
移動手段を同じくするハンター達にもそれを伝える。
「――30メートルの射程が有る攻撃なら届きますか?……はい、伝えます」
敵は森の中、70メートルの所にいる。40メートルまでは足元が悪いが問題なく進めるらしい。
しかし、その先は馬やバイクには困難だ。単純に真っ直ぐ歩く事も難しく、接近には時間を要するだろう。
「攻撃手段は分かりますか?……そうですか。――え? ギアちゃんが? 止めた方が良いよ、もうすぐ着くから、ね? もうすぐ着くから待って!」
触覚を振り回していた、と、ミズキが観察し、ギアがメグに伝えた。
気になるから撃ってみる、と、提案したギアを止めるメグの声が焦っている。
ギアを宥めている内に、また歪虚に動きがあったようだ。今まで留まっていたそれが少しヴァリオス方面へ身体を蠢かせた。
「……ええと、それから……」
今日の仕事は通信、戦いには足手纏いになってしまうだろうから、せめて必要な情報は落とさないように。
「――移動の速度は、……変わらず。――今の音は? 木? はい。分かりました。……木がなぎ倒されているのが見えたとのことです」
その動きはゆっくりだが、少しずつヴァリオスへ向かっている。
重そうな身体をじっとりと這わせて。
その後も数度、ギアからの通信が入るが新しい情報は無く、やがて、緑色の襤褸を被った2人の姿が見えた。
リプレイ本文
●
前に出るからと、ヴァイス(ka0364)は無線機の設定を、クオン・サガラ(ka0018)は遠目に眺めた蛞蝓の影に溜息を吐く。
「もう、掃除はコリゴリですので、ここできっちり片付けましょう」
気持ち悪い、と、歪虚の蠢いた触覚に眉を顰めてカリアナ・ノート(ka3733)は何度も頷いている。
ハンター達の到着に、茂みに紛れる色のフードを解いたミズキが安堵の表情を向けた。
「こんにちは、ミズキ。今日もよろしくね。さあて、今日こそあのナメクジを退治しなきゃね」
マリィア・バルデス(ka5848)が掛ける言葉に、ボウガンを構えて、溌剌とした声が答えた。
「メグ、頼めるかな」
鞍馬 真(ka5819)がメグを呼ぶ。ミズキと、特にギアが前に出過ぎないように、気を付けていて欲しいと、2人の様子を覗いながら。
杖を握り締めて頷く様子を見て、弓を深く撓らせ矢を番える。
「えーと、それじゃあ私は引き寄せと待ち構えでしょうか?」
魔導装置の覆う杖を構え、穂積 智里(ka6819)が茂みの向こうへと進む。クオンとヴァイス、鞍馬が番えた矢の切っ先を向けて射程を量り、調整するように数歩進む。
マリィアは大型の魔導バイクに、彼女の丈を超えた長大な銃を据えてその照準器を覗く。
恥も後悔も、そのままに心を縛られるのは嫌、と、アリア・セリウス(ka6424)が弓を握って茂みへ踏み込む。
「さあ、前回の雪辱を果たしにいきましょうか」
凜と声を響かせ、纏うマテリアルを白く、淡く煌めかせる。
雪の舞うように煌めく幻影の揺れ踊る中、駅を射竦める青い双眸の中心は蛇のように細くなった。
照準器の十字は悍ましく震えた黒い塊の中心に重なる。
慎重な手でそれを少しずつ上にずらし、呼吸を沈める。緑の瞳に映るそれが大きく撓り、こちらに気付いたように振り向けられた瞬間に引鉄を引いた。
マリィアの射撃に重ねて、クオンも弦を離して矢を放つ。
人の手には余る程巨大な、ユニット用の補助装置を取り外した後の生々しいその弓から放たれた白木の矢が緑の中を走り敵の表皮を裂く。
鳴弦の音。
幾重にも重ねた弦を用いた厳かな作りの弓は、番える矢の羽にその弦を重ね、いる瞬間に奏でさせる。
炎の幻影を纏うヴァイスの弓を握り伸ばす指の先へ、清廉な音と青い炎の幻影を靡かせて白い矢が飛んでいく。
敵を覗った金の瞳が爛と光る。
ヴァイスの動きに合わせ、数歩前進しながら鞍馬とアリアも弓を構えた。
艶やかな赤褐色の曲線、風の神を思わせる金の装飾。心を落ち付かせて、番えた白い矢を引き絞る。
敵を睨む双眸が、その間際に金に煌めいた。マテリアルを纏わせた弓が撓り、放たれた矢の切っ先は一直線に敵を指す。
アリアの手首で揺れる腕輪が微かに色を変えた。マテリアルの燐光を纏わせた純白の弓。
光りを零す銀の弦を引き、緑の光りを纏った弓が放たれた。
杖を構え、穂積は茂みを分け入って進む。
「……ごめんなさい」
大きく振り翳して放つマテリアルの強い光。
その音と衝撃は、敵との間に茂る木々をざわめかせる。こちらへ誘う蛞蝓が通れば薙ぎ倒されてしまう場所だ。
躊躇いを捨てて、再び杖を振り向ける。後方の仲間の動きを推し測りながら、敵との距離を保って、ぎりぎりまで近付いていく。
同じくカリアナも敵を自身の射程に捉えるまで前進し、仲間の方へ追い込むように機を合わせて斜から得物を向ける。
黄金の装飾を施された長柄を握る。青銀に輝く穂先は磨かれ、振り翳すと茂る草の先を払う。
敵へ稲光の走る瞬間に、その長柄はカリアナの手の中で黄金の光りに包まれた。
ハンター達の攻撃に黒い蛞蝓はその身を震わせて這うように近付いてくる。動きこそ遅いが、木を折り絡んだ蔦を引き千切るように迫り、伸縮する触覚の射程は未だ知れない。
ハンター達はこの敵を木々の合間から引きずり出そうと、次の矢を番え、それぞれの得物を構え直した。
●
弾丸に誘われ矢に追われ、光りと稲妻に指向させられて、ハンター達に向かう蛞蝓は長い触角を振り回し、辺りの木をなぎ倒し、地面へ叩き付ける様に蠢かせる。折られた木の幹の太さや、千切れた蔦に絡んできた長さ、その膂力の強さを思わせるそれらを一瞥し、弓を握っていたクオン、鞍馬とアリアはそれぞれ鞭と剣に持ち替えた。
敵への攻撃は幾度もその身体に突き刺さっているが、傷は残っていないように見える。
回復しているのか、或いは。
マリィアは銃のスコープから離した目を擦る。そして再度スコープを覗き込んだ。
「……これも試したいわよね」
雷の精霊の力を付与した弾丸を指の間に挟む。4発全てを手早く装填して撃鉄を起こす。
紫の電光を帯びて不規則な射線を描いた弾丸が敵を貫く。
それは狙い続けた通りに触角の根元を貫き、爆ぜたような傷を残した。
続けて放たれる矢の傷も、その瞬間は大小様々に浮かんでいる。
しかし、次の攻撃を加えるまでの僅かな間に、傷は全て塞がっていた。
目にマテリアルを込めて敵を観察する。尚も接近を続けるその姿が、僅かにぶれたように見えてマリィアは再び目を擦った。
触覚はカリアナの脇を掠め、隣の木をたたき折る。
咄嗟に槍を向けたが、触れていれば防ぐことは叶わなかっただろう衝撃に背筋が冷える。
もう一方の触覚は穂積の眼前に迫ったが僅かに届かず、苛立ったように辺りの草を擂り潰して下がっていった。
真っ先に飛び出した鞍馬が剣の柄を握る。
透き通る宝石が煌めいて、現れるのはよく研がれた諸刃の直剣。マテリアルを纏わせて、脚にマテリアルを込める。
敵へ接近し、踏み込む勢いで突き出す剣の、直線の軌跡はその蛞蝓を真っ直ぐに裂く。
一閃を終えると敵の攻撃を誘いながら後退、仲間の攻撃に遭わせて前を空ける。剣は未だその刃を冴え冴えと、纏ったマテリアルを揺蕩わせている。
マテリアルを伝達しやすい素材の長い鞭を解き、下ろす。
這わせて撓らせたそれを扱いやすく手繰り、クオンはマテリアルの鎧を纏うと、地面を蹴り敵へ接近、振り向けて地面を打ち据える鞭を介し、炎を放つ。
扇状に伸びる炎、炎の色と姿を持つ破壊のマテリアルは広がった先で蛞蝓の半身を包み込んだ。
纏わり付く炎に身を捩ったかに見えた蛞蝓は長い触覚で地面を打ち据えてそれを振り払った。
鞍馬に合わせ、アリアも敵へ迫る。
「風のように、透明に――なんて無理だけれど」
歌うように、弓を掻き鳴らすその祈りの詩が敵の動きを絡め取った。
騎士剣のトリガーに指を掛け、マテリアルの燐光をその刀身へ、翻す流線に赤い光りが靡く。その赤は刀身に刻まれた鮮血の彼岸花。
もう一振りは、その拵えに花をあしらう優美な刀。
月の様に細い軌跡を描き、2つの刃で敵を斬る。
舞い踊るような斬撃に黒い巨体が裂けるその瞬間に、もう一閃。
絡み付いた歪虚の血、血と呼べるのかさえ定かでは無いその滴りが霧散するまでの僅かな時間、鞍馬の剣はその刀身に荒ぶ風を描いた縞を浮かび上がらせる。
その柄を確りと握り締め、近くの幹に足を掛ける。
そして、次の木へ跳び、留まること無くその次へと渡る。敵の後方へ回り混むように渡って、深く斬り付けた。
その傷はすぐに塞がっていく。
クオンの追撃に藻掻いた触覚が叩き付ける様に2人を薙いで、もう1本がアリアに向いた。
マリィアが、スコープから目を離す。
マテリアルを纏う蛞蝓に、目をしばたたき、眉を寄せる。
僅かにだが、違和感を感じている。感じ続けている。
「奴の行動に大きく変化があるかもしれない。油断せずに行動しよう」
引き付けて街道と街から離すのみに留めた前回と異なり、攻撃を重ねていく中で敵の動きも変わってきている。
敵が浅からぬ攻撃を行っていること、魔力を介した攻撃が傷を与えているが、その傷がふさがり続けていること。
ヴァイスも強い力で弓を引き、出来ることに集中する。
打ち上げる矢は放物線を描き、敵を真上から射止めた。
動きながら撃ち続け、前に出て戦う仲間を支える。次の矢を番えて敵を睨んだ。
距離は取った方が良いとカリアナは感じ、ここまでは届かないと穂積は知る。
しかし、向けられた攻撃に特殊な物は無い。重く、鋭いが、遅い。
カリアナは魔導書の厚い表紙を開き微風に靡かせるように頁を捲る。
秘儀を綴った魔導書の力を乗せて、長柄を古い雷を放つ。
穂積は敵との距離を射程以上に詰めすぎないように後退しながら杖を振るう。
その動きはもう十分、自分に、仲間のハンター達に向かっていた。
配置を見ながら杖を伸ばす。マテリアルに寄り描かれる術式の陣が連なり、一瞬後に氷の柱を出現させた。
捉えられた蛞蝓が縁から凍て付いては、砕けるように傷を拡げている。
その様子に穂積は首を傾がせた。
やっぱり、と、マリィアも確信を得る。同じく後衛に残っているヴァイスに伝える。
小さくなっているようだと。
大きさ、攻撃力共に。
カリアナを攻撃した時の触覚は、隣の木を折る程の力が有った。
前で戦う3人は、攻撃を受けてはいるが、問題なく戦っている。
彼等の力を鑑みてもその攻撃には違和感がある。
回復が届かないと不安そうなメグに大丈夫だと声を掛け、ミズキとギアにも攻撃を継続するように伝える。
長くなりそうだと、蛞蝓の大きさを見てヴァイスは片眉を上げ、次の矢を放った。
そうだったんですか、と穂積は伝えられた情報にブリッジを上げて敵を覗う。
凍て付いた傷を塞いだ時に変な感じがしたから、と。
そういうことなら攻撃を続ければ良い。杖を握り直して、氷柱を喚ぶ陣を描く。
カリアナも片手で長柄を取り回して雷を撃ち続ける。
「色といいなんだか改めて見ると……なんか気持ち悪いわ」
顔を顰めて、溜息交じりに辟易と呟いた。
縮んでいても近付きすぎないように気を付けながら、時に鋭く狙いを据えて。
雷撃が尽きても氷の矢を放って攻撃を続けた。
クオンに2度目に迫った触覚は、腕を掠った衝撃が響いた程度。
最初に受けた時には、次は下がろうかと考える程だったが、確かに軽くなってきているようだ。
鞍馬も、避けようと取った姿勢で受けた触覚は重く、姿勢を崩して傷を得ていたが、2度目に振り下ろされた触覚は木を伝って躱しきった。
2人の後方からギアが続けざまに光りを放ち、ミズキも息を上げながら矢を放っている。
近くでは判然としなかった大きさの変化が、次第に顕著になっていく。
刀身で触覚を抑え、弾くように払うアリアの腕に伝わった衝撃波軽く、その剣に刻まれた花の彫り物が透け見える程、蛞蝓の色も薄れている。
●
長く続くようにも思えた攻防だが、日の高い内には決着を見た。
ある程度縮んだ後、次第に色を薄れさせた蛞蝓は最後の一撃で爆ぜるように、黒い灰と靄となって暫く辺りで吹き溜まりを作りながら、やがてどこかへ流されて消えて無くなった。
終わった、と疲れにギアとミズキはぐったりと座り込み、メグは前に出て戦っていたハンター達の怪我の回復に勤しんでいたが、全ては治しきれずに何度も謝ってギアと並んで座り込んだ。
メグが目を向けたギアの手は、握り続けていた銃の跡を付けて、凝り固まったように指を丸めていた。
そんな3人に、以前よりも頼りになったと鞍馬が労い、お疲れさまと穂積が声を掛ける。
「せっかく歪虚を倒したことですし、これからみんなで打ち上げするのはいかがでしょう?」
これからの発展を祈念して、騒ぐのも悪くない。
お祭りは好きとギアが座ったまま両手を挙げて応じる。
「これで少しでもこの街道が安全になってくれるといいけれどね……」
戦いの跡を見回って戻ったマリィアが森を眺めて呟いた。
あの歪虚の発生地点を確認に行けないだろうか。何かが残っているかも知れない。
確かにどこから出てきたのか分からない、と、クオンも振り返り、街道が平和になると良い、と、鞍馬も不安げに街の方へと視線を向けた。
追っていたのだったかしらと、マリィアがメグに尋ねる。
メグは頷くが、関わった時はジェオルジの方だったからと、薄らとその輪郭が覗える程に近付いたヴァリオスの街を眺めて口を噤んだ。
マリィアは街道を見渡して、魔導バイクに跨がる。ジェオルジまで行ってみるらしい。
「自分の在りたいように。振り返った時、後悔に縛られないように」
街道を眺めてアリアが告げる。
街道は護れたけれど、同時に守り続けたい明日があるから。
ハンター達はそれぞれ帰途にあるいは調査に向かったが、消耗の大きかった駆け出しのハンター達は、ヴァリオスに戻って休むことに。
背を見て戦ったハンター達への憧憬と羨望の言葉を零しながら、ゆっくりと歩いて行った。
3人確りと手を繋いで。
前に出るからと、ヴァイス(ka0364)は無線機の設定を、クオン・サガラ(ka0018)は遠目に眺めた蛞蝓の影に溜息を吐く。
「もう、掃除はコリゴリですので、ここできっちり片付けましょう」
気持ち悪い、と、歪虚の蠢いた触覚に眉を顰めてカリアナ・ノート(ka3733)は何度も頷いている。
ハンター達の到着に、茂みに紛れる色のフードを解いたミズキが安堵の表情を向けた。
「こんにちは、ミズキ。今日もよろしくね。さあて、今日こそあのナメクジを退治しなきゃね」
マリィア・バルデス(ka5848)が掛ける言葉に、ボウガンを構えて、溌剌とした声が答えた。
「メグ、頼めるかな」
鞍馬 真(ka5819)がメグを呼ぶ。ミズキと、特にギアが前に出過ぎないように、気を付けていて欲しいと、2人の様子を覗いながら。
杖を握り締めて頷く様子を見て、弓を深く撓らせ矢を番える。
「えーと、それじゃあ私は引き寄せと待ち構えでしょうか?」
魔導装置の覆う杖を構え、穂積 智里(ka6819)が茂みの向こうへと進む。クオンとヴァイス、鞍馬が番えた矢の切っ先を向けて射程を量り、調整するように数歩進む。
マリィアは大型の魔導バイクに、彼女の丈を超えた長大な銃を据えてその照準器を覗く。
恥も後悔も、そのままに心を縛られるのは嫌、と、アリア・セリウス(ka6424)が弓を握って茂みへ踏み込む。
「さあ、前回の雪辱を果たしにいきましょうか」
凜と声を響かせ、纏うマテリアルを白く、淡く煌めかせる。
雪の舞うように煌めく幻影の揺れ踊る中、駅を射竦める青い双眸の中心は蛇のように細くなった。
照準器の十字は悍ましく震えた黒い塊の中心に重なる。
慎重な手でそれを少しずつ上にずらし、呼吸を沈める。緑の瞳に映るそれが大きく撓り、こちらに気付いたように振り向けられた瞬間に引鉄を引いた。
マリィアの射撃に重ねて、クオンも弦を離して矢を放つ。
人の手には余る程巨大な、ユニット用の補助装置を取り外した後の生々しいその弓から放たれた白木の矢が緑の中を走り敵の表皮を裂く。
鳴弦の音。
幾重にも重ねた弦を用いた厳かな作りの弓は、番える矢の羽にその弦を重ね、いる瞬間に奏でさせる。
炎の幻影を纏うヴァイスの弓を握り伸ばす指の先へ、清廉な音と青い炎の幻影を靡かせて白い矢が飛んでいく。
敵を覗った金の瞳が爛と光る。
ヴァイスの動きに合わせ、数歩前進しながら鞍馬とアリアも弓を構えた。
艶やかな赤褐色の曲線、風の神を思わせる金の装飾。心を落ち付かせて、番えた白い矢を引き絞る。
敵を睨む双眸が、その間際に金に煌めいた。マテリアルを纏わせた弓が撓り、放たれた矢の切っ先は一直線に敵を指す。
アリアの手首で揺れる腕輪が微かに色を変えた。マテリアルの燐光を纏わせた純白の弓。
光りを零す銀の弦を引き、緑の光りを纏った弓が放たれた。
杖を構え、穂積は茂みを分け入って進む。
「……ごめんなさい」
大きく振り翳して放つマテリアルの強い光。
その音と衝撃は、敵との間に茂る木々をざわめかせる。こちらへ誘う蛞蝓が通れば薙ぎ倒されてしまう場所だ。
躊躇いを捨てて、再び杖を振り向ける。後方の仲間の動きを推し測りながら、敵との距離を保って、ぎりぎりまで近付いていく。
同じくカリアナも敵を自身の射程に捉えるまで前進し、仲間の方へ追い込むように機を合わせて斜から得物を向ける。
黄金の装飾を施された長柄を握る。青銀に輝く穂先は磨かれ、振り翳すと茂る草の先を払う。
敵へ稲光の走る瞬間に、その長柄はカリアナの手の中で黄金の光りに包まれた。
ハンター達の攻撃に黒い蛞蝓はその身を震わせて這うように近付いてくる。動きこそ遅いが、木を折り絡んだ蔦を引き千切るように迫り、伸縮する触覚の射程は未だ知れない。
ハンター達はこの敵を木々の合間から引きずり出そうと、次の矢を番え、それぞれの得物を構え直した。
●
弾丸に誘われ矢に追われ、光りと稲妻に指向させられて、ハンター達に向かう蛞蝓は長い触角を振り回し、辺りの木をなぎ倒し、地面へ叩き付ける様に蠢かせる。折られた木の幹の太さや、千切れた蔦に絡んできた長さ、その膂力の強さを思わせるそれらを一瞥し、弓を握っていたクオン、鞍馬とアリアはそれぞれ鞭と剣に持ち替えた。
敵への攻撃は幾度もその身体に突き刺さっているが、傷は残っていないように見える。
回復しているのか、或いは。
マリィアは銃のスコープから離した目を擦る。そして再度スコープを覗き込んだ。
「……これも試したいわよね」
雷の精霊の力を付与した弾丸を指の間に挟む。4発全てを手早く装填して撃鉄を起こす。
紫の電光を帯びて不規則な射線を描いた弾丸が敵を貫く。
それは狙い続けた通りに触角の根元を貫き、爆ぜたような傷を残した。
続けて放たれる矢の傷も、その瞬間は大小様々に浮かんでいる。
しかし、次の攻撃を加えるまでの僅かな間に、傷は全て塞がっていた。
目にマテリアルを込めて敵を観察する。尚も接近を続けるその姿が、僅かにぶれたように見えてマリィアは再び目を擦った。
触覚はカリアナの脇を掠め、隣の木をたたき折る。
咄嗟に槍を向けたが、触れていれば防ぐことは叶わなかっただろう衝撃に背筋が冷える。
もう一方の触覚は穂積の眼前に迫ったが僅かに届かず、苛立ったように辺りの草を擂り潰して下がっていった。
真っ先に飛び出した鞍馬が剣の柄を握る。
透き通る宝石が煌めいて、現れるのはよく研がれた諸刃の直剣。マテリアルを纏わせて、脚にマテリアルを込める。
敵へ接近し、踏み込む勢いで突き出す剣の、直線の軌跡はその蛞蝓を真っ直ぐに裂く。
一閃を終えると敵の攻撃を誘いながら後退、仲間の攻撃に遭わせて前を空ける。剣は未だその刃を冴え冴えと、纏ったマテリアルを揺蕩わせている。
マテリアルを伝達しやすい素材の長い鞭を解き、下ろす。
這わせて撓らせたそれを扱いやすく手繰り、クオンはマテリアルの鎧を纏うと、地面を蹴り敵へ接近、振り向けて地面を打ち据える鞭を介し、炎を放つ。
扇状に伸びる炎、炎の色と姿を持つ破壊のマテリアルは広がった先で蛞蝓の半身を包み込んだ。
纏わり付く炎に身を捩ったかに見えた蛞蝓は長い触覚で地面を打ち据えてそれを振り払った。
鞍馬に合わせ、アリアも敵へ迫る。
「風のように、透明に――なんて無理だけれど」
歌うように、弓を掻き鳴らすその祈りの詩が敵の動きを絡め取った。
騎士剣のトリガーに指を掛け、マテリアルの燐光をその刀身へ、翻す流線に赤い光りが靡く。その赤は刀身に刻まれた鮮血の彼岸花。
もう一振りは、その拵えに花をあしらう優美な刀。
月の様に細い軌跡を描き、2つの刃で敵を斬る。
舞い踊るような斬撃に黒い巨体が裂けるその瞬間に、もう一閃。
絡み付いた歪虚の血、血と呼べるのかさえ定かでは無いその滴りが霧散するまでの僅かな時間、鞍馬の剣はその刀身に荒ぶ風を描いた縞を浮かび上がらせる。
その柄を確りと握り締め、近くの幹に足を掛ける。
そして、次の木へ跳び、留まること無くその次へと渡る。敵の後方へ回り混むように渡って、深く斬り付けた。
その傷はすぐに塞がっていく。
クオンの追撃に藻掻いた触覚が叩き付ける様に2人を薙いで、もう1本がアリアに向いた。
マリィアが、スコープから目を離す。
マテリアルを纏う蛞蝓に、目をしばたたき、眉を寄せる。
僅かにだが、違和感を感じている。感じ続けている。
「奴の行動に大きく変化があるかもしれない。油断せずに行動しよう」
引き付けて街道と街から離すのみに留めた前回と異なり、攻撃を重ねていく中で敵の動きも変わってきている。
敵が浅からぬ攻撃を行っていること、魔力を介した攻撃が傷を与えているが、その傷がふさがり続けていること。
ヴァイスも強い力で弓を引き、出来ることに集中する。
打ち上げる矢は放物線を描き、敵を真上から射止めた。
動きながら撃ち続け、前に出て戦う仲間を支える。次の矢を番えて敵を睨んだ。
距離は取った方が良いとカリアナは感じ、ここまでは届かないと穂積は知る。
しかし、向けられた攻撃に特殊な物は無い。重く、鋭いが、遅い。
カリアナは魔導書の厚い表紙を開き微風に靡かせるように頁を捲る。
秘儀を綴った魔導書の力を乗せて、長柄を古い雷を放つ。
穂積は敵との距離を射程以上に詰めすぎないように後退しながら杖を振るう。
その動きはもう十分、自分に、仲間のハンター達に向かっていた。
配置を見ながら杖を伸ばす。マテリアルに寄り描かれる術式の陣が連なり、一瞬後に氷の柱を出現させた。
捉えられた蛞蝓が縁から凍て付いては、砕けるように傷を拡げている。
その様子に穂積は首を傾がせた。
やっぱり、と、マリィアも確信を得る。同じく後衛に残っているヴァイスに伝える。
小さくなっているようだと。
大きさ、攻撃力共に。
カリアナを攻撃した時の触覚は、隣の木を折る程の力が有った。
前で戦う3人は、攻撃を受けてはいるが、問題なく戦っている。
彼等の力を鑑みてもその攻撃には違和感がある。
回復が届かないと不安そうなメグに大丈夫だと声を掛け、ミズキとギアにも攻撃を継続するように伝える。
長くなりそうだと、蛞蝓の大きさを見てヴァイスは片眉を上げ、次の矢を放った。
そうだったんですか、と穂積は伝えられた情報にブリッジを上げて敵を覗う。
凍て付いた傷を塞いだ時に変な感じがしたから、と。
そういうことなら攻撃を続ければ良い。杖を握り直して、氷柱を喚ぶ陣を描く。
カリアナも片手で長柄を取り回して雷を撃ち続ける。
「色といいなんだか改めて見ると……なんか気持ち悪いわ」
顔を顰めて、溜息交じりに辟易と呟いた。
縮んでいても近付きすぎないように気を付けながら、時に鋭く狙いを据えて。
雷撃が尽きても氷の矢を放って攻撃を続けた。
クオンに2度目に迫った触覚は、腕を掠った衝撃が響いた程度。
最初に受けた時には、次は下がろうかと考える程だったが、確かに軽くなってきているようだ。
鞍馬も、避けようと取った姿勢で受けた触覚は重く、姿勢を崩して傷を得ていたが、2度目に振り下ろされた触覚は木を伝って躱しきった。
2人の後方からギアが続けざまに光りを放ち、ミズキも息を上げながら矢を放っている。
近くでは判然としなかった大きさの変化が、次第に顕著になっていく。
刀身で触覚を抑え、弾くように払うアリアの腕に伝わった衝撃波軽く、その剣に刻まれた花の彫り物が透け見える程、蛞蝓の色も薄れている。
●
長く続くようにも思えた攻防だが、日の高い内には決着を見た。
ある程度縮んだ後、次第に色を薄れさせた蛞蝓は最後の一撃で爆ぜるように、黒い灰と靄となって暫く辺りで吹き溜まりを作りながら、やがてどこかへ流されて消えて無くなった。
終わった、と疲れにギアとミズキはぐったりと座り込み、メグは前に出て戦っていたハンター達の怪我の回復に勤しんでいたが、全ては治しきれずに何度も謝ってギアと並んで座り込んだ。
メグが目を向けたギアの手は、握り続けていた銃の跡を付けて、凝り固まったように指を丸めていた。
そんな3人に、以前よりも頼りになったと鞍馬が労い、お疲れさまと穂積が声を掛ける。
「せっかく歪虚を倒したことですし、これからみんなで打ち上げするのはいかがでしょう?」
これからの発展を祈念して、騒ぐのも悪くない。
お祭りは好きとギアが座ったまま両手を挙げて応じる。
「これで少しでもこの街道が安全になってくれるといいけれどね……」
戦いの跡を見回って戻ったマリィアが森を眺めて呟いた。
あの歪虚の発生地点を確認に行けないだろうか。何かが残っているかも知れない。
確かにどこから出てきたのか分からない、と、クオンも振り返り、街道が平和になると良い、と、鞍馬も不安げに街の方へと視線を向けた。
追っていたのだったかしらと、マリィアがメグに尋ねる。
メグは頷くが、関わった時はジェオルジの方だったからと、薄らとその輪郭が覗える程に近付いたヴァリオスの街を眺めて口を噤んだ。
マリィアは街道を見渡して、魔導バイクに跨がる。ジェオルジまで行ってみるらしい。
「自分の在りたいように。振り返った時、後悔に縛られないように」
街道を眺めてアリアが告げる。
街道は護れたけれど、同時に守り続けたい明日があるから。
ハンター達はそれぞれ帰途にあるいは調査に向かったが、消耗の大きかった駆け出しのハンター達は、ヴァリオスに戻って休むことに。
背を見て戦ったハンター達への憧憬と羨望の言葉を零しながら、ゆっくりと歩いて行った。
3人確りと手を繋いで。
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相談卓 アリア・セリウス(ka6424) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/05/22 02:02:35 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/05/21 20:11:34 |