ゲスト
(ka0000)
【虚動】無機なる光明
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/12/20 19:00
- 完成日
- 2014/12/25 06:24
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
リアルブルー産の対歪虚用戦闘装甲機、通称「CAM」。それがマギア砦の南方に集められ、今まさに稼動実験を始まる。
帝国が辺境に土地を借り、王国と同盟の協力を得て行われる一大プロジェクトだ。ある者はCAMの有効性を願い、ある者は眼前の利益のために動く。多くの人が関われば、思惑が交錯するのは当然だ。
何もなかったこの地も、次第に人で賑わい始める。今ではちょっとした町に見えなくもない。同盟軍によって運ばれたCAMも勢揃いし、静かに実験の時を待った。
そんな最中、見張り役の男が叫ぶ。
「北東から雑魔の群れが出現! その数100を越えます!」
それを聞いた首脳陣の顔色が変わった。
「バタルトゥ殿、この数の襲撃は自然な数と言えますかな?」
「……群れを成して行動するのは見かけるが……、この数は……異様だ」
予想された答えとはいえ、こうもハッキリ言われると辛い。
しかし、二の句は早かった。
「CAMは……投入できないのか……?」
敵の襲来で張り詰めた空気が、期待と不安の入り混じったものに変化した。
「今回の肝は改修したエンジンの稼動実験だ。実戦でのデータを取る予定はない」
「とはいえ、いずれは敵を相手にするのだ。道理を語っている場合ではないぞ」
雑魔退治にCAM投入を希望するのは推進派の面々だが、彼らは慎重派を押し切るだけの決定的な材料を持っていた。
実はCAMのデモンストレーション用として、これまでの作戦に投入された際の挙動を披露するべく、貴重な特殊燃料をサルヴァトーレ・ロッソから少量ながら預かっていた。短時間の運用であれば、雑魔退治に差し向けても問題ないというのが彼らの主張である。
「だが、できればCAMに負担を与えたくないし、雑魔も近づけたくはないというのも本音だ」
「ならば……ハンターの手を借りるしかない、だろうな……」
結局、ハンターとCAMの共同作戦として、雑魔の群れを撃破することになった。
●
ドワーフ工房【ド・ウェルク】にカペラがいなくなった後は皆で色々と相談しあいながら押し付けあいながら仕事を進めていく。
大体は何故か工房担当官であるアルフェッカがカペラの代わりをさせられている。
「お疲れ様」
半ば屍と化しているアルフェッカにフォニケが差し入れを渡す。
「……ありがとう」
「CAMって、誰でも動かせるのかしら」
アルフェッカの広い机に腰掛けたフォニケが問いかける。
「俺も良く知らんが、あれの動力が分かれば試してもいいんじゃないかなと思うが、今じゃ憶測を越えられてない」
肩をすくめるアルフェッカはフォニケを見上げると彼女は「ふぅん」と生返事でお茶を啜っている。
「興味、あるんだ。門外漢でしょうに?」
「それなりにね」
にこりと微笑むフォニケはどことなく楽しそうだ。
「悪い、急ぎだ」
急いだノックをして入ってきたのはシェダルだ。
「何かあったの?」
普段から仕事場に籠もるシェダルが急ぎ早に入って来たので二人は血相を変える。
「うちの族長からCAMのことで連絡が来た」
「おじいちゃまから?」
シェダルが持っていた手紙には辺境におけるCAMの件だ。シェダルの部族は親帝国派であったのにどういう経緯か知りたくフォニケが手紙を読む。
部族がCAMの実験に反対というわけではなく、親交がある部族から親交が途絶えてしまった部族までいろいろと意思を窺う手紙が行きかい、顔を見にいく者も少なくないそうだ。
「……不安なのね……」
ため息混じりに呟くフォニケは手紙をシェダルに戻す。
「それを含めてヴェルナーに会いたいんだが」
シェダルの言葉にアルフェッカが要塞管理官ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)の不在の旨を伝える。
「あの人はそれも見通しててな、状況次第では見学会を行ってもいいと言っていた」
「それはいいわね。私もいきたい!」
「お前はダメ」
アルフェッカの言付けにフォニケが即座に挙手をするなり二人が声を揃えた。
フェルツのリーダー格の一人であるので今の現状では話す事はできない。それはクレムトのリーダー格のシェダルも同じだ。
「なによー! いいじゃなーい!」
ぶぅぶぅ文句を言うフォニケを無視してアルフェッカとシェダルが打ち合わせを始める。
「オイマトの族長にも声かけておけよ」
「分かってる。つか、キュジィ今どこにいんの?」
「キュジィくんにあいたーい!」
ドワーフ工房の女性陣では一部アイドルらしいキュジィの名前を聞き、フォニケが適当に叫んでも二人は無視。
取り急ぎ、キュジィの居所を探すところから始めなくてはならない。
あのドワーフ王ヨアキムの介護……もとい、側近なのだから、どこにいるのかさっぱり分からなくなる。
アルフェッカが捕まえたときにはいつのまにかヨアキムが「GAM」とかいうショッキングピンクの鎧で暴れまわったという話を聞き、三人が頭を抱えてキュジィとカペラ、同行したハンター達に心底同情する。
その後、アルフェッカがキュジィに説明会の仕事を押し付けようとしたらキュジィが爽やかに「あ、僕でよかったらいいですよ!」とヨアキムから離れられるので快く承諾してくれた。
だがしかし、ヨアキムからGAMマークII(アイアイ)にするので貸せないといわれた。
現場にいるカペラが無理やりキュジィを現場に来ても、ヨアキムがショッキングピンクの鎧しかも改装済みを着て出てこられたら、纏まりそうな部族達も一気に瓦解するから私が説明役をやると言い出した。
バタルトゥの働きもあり、反帝国派や親帝国派問わず部族達が集まった。
その見学会の中に王国や同盟の姿もあったりする。
「なんだか、大事になったわねー」
キュウジィよりヨアキムが変態と一戦交えた話に頭を痛めていたカペラがため息混じりに呟く。
CAMが届き、ここでは見られない機材にカペラは目を輝かせてはリアルブルーの技術者から色々と話を聞いたりしていた。
クリムゾンウェストではありえないオーバーテクノロジーの数々は時折カペラの思考回路をパンクさせてしまうが、それでも楽しい。
敵もまたこちらへと動いている。CAM実機を動かし、討伐するという。
「不安材料にならなければいいんだけど……」
「動かないよりはマシだけど。辺境も変われるかしら」
ドワーフは早い段階で親帝国派だ。辺境はしがらみが少ないとといえ、部族達の誇りは高く、守り続けた伝統やしきたりを曲げるというのは生死の紙一重。下手すれば部族が瓦解する事もある。
ぽつりと呟いたカペラが見据えるのはオイマト族の若き族長の姿。
リアルブルー産の対歪虚用戦闘装甲機、通称「CAM」。それがマギア砦の南方に集められ、今まさに稼動実験を始まる。
帝国が辺境に土地を借り、王国と同盟の協力を得て行われる一大プロジェクトだ。ある者はCAMの有効性を願い、ある者は眼前の利益のために動く。多くの人が関われば、思惑が交錯するのは当然だ。
何もなかったこの地も、次第に人で賑わい始める。今ではちょっとした町に見えなくもない。同盟軍によって運ばれたCAMも勢揃いし、静かに実験の時を待った。
そんな最中、見張り役の男が叫ぶ。
「北東から雑魔の群れが出現! その数100を越えます!」
それを聞いた首脳陣の顔色が変わった。
「バタルトゥ殿、この数の襲撃は自然な数と言えますかな?」
「……群れを成して行動するのは見かけるが……、この数は……異様だ」
予想された答えとはいえ、こうもハッキリ言われると辛い。
しかし、二の句は早かった。
「CAMは……投入できないのか……?」
敵の襲来で張り詰めた空気が、期待と不安の入り混じったものに変化した。
「今回の肝は改修したエンジンの稼動実験だ。実戦でのデータを取る予定はない」
「とはいえ、いずれは敵を相手にするのだ。道理を語っている場合ではないぞ」
雑魔退治にCAM投入を希望するのは推進派の面々だが、彼らは慎重派を押し切るだけの決定的な材料を持っていた。
実はCAMのデモンストレーション用として、これまでの作戦に投入された際の挙動を披露するべく、貴重な特殊燃料をサルヴァトーレ・ロッソから少量ながら預かっていた。短時間の運用であれば、雑魔退治に差し向けても問題ないというのが彼らの主張である。
「だが、できればCAMに負担を与えたくないし、雑魔も近づけたくはないというのも本音だ」
「ならば……ハンターの手を借りるしかない、だろうな……」
結局、ハンターとCAMの共同作戦として、雑魔の群れを撃破することになった。
●
ドワーフ工房【ド・ウェルク】にカペラがいなくなった後は皆で色々と相談しあいながら押し付けあいながら仕事を進めていく。
大体は何故か工房担当官であるアルフェッカがカペラの代わりをさせられている。
「お疲れ様」
半ば屍と化しているアルフェッカにフォニケが差し入れを渡す。
「……ありがとう」
「CAMって、誰でも動かせるのかしら」
アルフェッカの広い机に腰掛けたフォニケが問いかける。
「俺も良く知らんが、あれの動力が分かれば試してもいいんじゃないかなと思うが、今じゃ憶測を越えられてない」
肩をすくめるアルフェッカはフォニケを見上げると彼女は「ふぅん」と生返事でお茶を啜っている。
「興味、あるんだ。門外漢でしょうに?」
「それなりにね」
にこりと微笑むフォニケはどことなく楽しそうだ。
「悪い、急ぎだ」
急いだノックをして入ってきたのはシェダルだ。
「何かあったの?」
普段から仕事場に籠もるシェダルが急ぎ早に入って来たので二人は血相を変える。
「うちの族長からCAMのことで連絡が来た」
「おじいちゃまから?」
シェダルが持っていた手紙には辺境におけるCAMの件だ。シェダルの部族は親帝国派であったのにどういう経緯か知りたくフォニケが手紙を読む。
部族がCAMの実験に反対というわけではなく、親交がある部族から親交が途絶えてしまった部族までいろいろと意思を窺う手紙が行きかい、顔を見にいく者も少なくないそうだ。
「……不安なのね……」
ため息混じりに呟くフォニケは手紙をシェダルに戻す。
「それを含めてヴェルナーに会いたいんだが」
シェダルの言葉にアルフェッカが要塞管理官ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)の不在の旨を伝える。
「あの人はそれも見通しててな、状況次第では見学会を行ってもいいと言っていた」
「それはいいわね。私もいきたい!」
「お前はダメ」
アルフェッカの言付けにフォニケが即座に挙手をするなり二人が声を揃えた。
フェルツのリーダー格の一人であるので今の現状では話す事はできない。それはクレムトのリーダー格のシェダルも同じだ。
「なによー! いいじゃなーい!」
ぶぅぶぅ文句を言うフォニケを無視してアルフェッカとシェダルが打ち合わせを始める。
「オイマトの族長にも声かけておけよ」
「分かってる。つか、キュジィ今どこにいんの?」
「キュジィくんにあいたーい!」
ドワーフ工房の女性陣では一部アイドルらしいキュジィの名前を聞き、フォニケが適当に叫んでも二人は無視。
取り急ぎ、キュジィの居所を探すところから始めなくてはならない。
あのドワーフ王ヨアキムの介護……もとい、側近なのだから、どこにいるのかさっぱり分からなくなる。
アルフェッカが捕まえたときにはいつのまにかヨアキムが「GAM」とかいうショッキングピンクの鎧で暴れまわったという話を聞き、三人が頭を抱えてキュジィとカペラ、同行したハンター達に心底同情する。
その後、アルフェッカがキュジィに説明会の仕事を押し付けようとしたらキュジィが爽やかに「あ、僕でよかったらいいですよ!」とヨアキムから離れられるので快く承諾してくれた。
だがしかし、ヨアキムからGAMマークII(アイアイ)にするので貸せないといわれた。
現場にいるカペラが無理やりキュジィを現場に来ても、ヨアキムがショッキングピンクの鎧しかも改装済みを着て出てこられたら、纏まりそうな部族達も一気に瓦解するから私が説明役をやると言い出した。
バタルトゥの働きもあり、反帝国派や親帝国派問わず部族達が集まった。
その見学会の中に王国や同盟の姿もあったりする。
「なんだか、大事になったわねー」
キュウジィよりヨアキムが変態と一戦交えた話に頭を痛めていたカペラがため息混じりに呟く。
CAMが届き、ここでは見られない機材にカペラは目を輝かせてはリアルブルーの技術者から色々と話を聞いたりしていた。
クリムゾンウェストではありえないオーバーテクノロジーの数々は時折カペラの思考回路をパンクさせてしまうが、それでも楽しい。
敵もまたこちらへと動いている。CAM実機を動かし、討伐するという。
「不安材料にならなければいいんだけど……」
「動かないよりはマシだけど。辺境も変われるかしら」
ドワーフは早い段階で親帝国派だ。辺境はしがらみが少ないとといえ、部族達の誇りは高く、守り続けた伝統やしきたりを曲げるというのは生死の紙一重。下手すれば部族が瓦解する事もある。
ぽつりと呟いたカペラが見据えるのはオイマト族の若き族長の姿。
リプレイ本文
辺境には少ない回数であるが、定期的に帝国、同盟からの定期便がある。
要塞【ノアーラ・クンタウ】物資の流通が主となるのだが、それでもルート上にある部族には不安と期待が入り混じっている。
それ以上に今回のCAMの実験は部族達の心をかき乱していた。
辺境部族の心を一つにしなくては辺境に巣食う歪虚を倒すことは出来ない。
他国に蹂躙されるか、そのまま潰されるか……
「姫、ハンターが到着しました」
「今行くわ」
臣下の知らせを受けてカペラは待機しているハンターの元へ向かう。
現場に着いたハンターは格納庫を経由してからカペラと待ち合わせる部屋へと向かう。
「おーーーーー!」
感嘆の雄叫びを上げたのは神楽(ka2032)だ。
「すっげー!」
リアルブルーにいた頃、マスメディアで見たことはあったものの、実機を見るのは初めて。トレーラーに横たわるCAMを何とか触ろうと思い、きょろきょろと入り口を探している。
「はぐれるぞ」
はしゃぐ神楽を呆れたように窘めたのはシン・コウガ(ka0344)だ。
「いやいや、こういう機会滅多にないっすよー!」
諦める様子がない神楽はまだ探している。
「浮かない顔だな」
シンに声をかけたのは弥勒 明影(ka0189)だった。
「CAMの知識は新兵レベルなんだよな……って」
「向こうが欲するのは安寧だ。自身が持つ知識をもって安心を与えるのが最優先される」
「……安心できるようにしなくては……」
ネージュ(ka0049)がCAMを見上げて呟いた。
「めんどくさい。ボク、ここで寝てていい?」
格納庫内の隅にある暖房に気づき、暖気に誘われて暖房へとふらふらと歩いていくのはアジュール・L=ローズレ(ka1121)だ。
「お前は……」
先に現地入りしていたリアルブルーの整備士達と会話をしていた岩動 巧真(ka1115)が呆れてアジュールの方を向いた。
「ここに揚げ菓子があるぞ」
いろんな意味で巧真の甘い言葉にアジュールは暖房へと歩いていた足を止め、爪先立ちのままくるりと巧真の方へと体を向ける。
「……食べていい?」
「おう」
先ほどの働きたくないオーラ満載でござるのアジュールからやる気が出てくるように足取りがしっかりとしてくる。
「依頼頑張ったら、もっと美味いもん食わせてやるよ」
紙包みをアジュールに手渡した巧真が口元に笑みを浮かべる。紙包みを開けたら、リアルブルーでいうところのドーナツを半分に切り、断面にクロデットクリームに似たクリームが中に塗られていた。
「なら、頑張る」
こくりと頷いてアジュールは揚げ菓子を食んだ。
「もしかして、見学会のハンター達かしら!」
お付のドワーフを後ろに従えて走ってきたのはカペラだ。
「おぉ! 可愛いっす!」
真っ先に反応したのは神楽だ。
「そお? ありがとう。今日は来てくれてありがとう! 私はカペラ、よろしくね」
「神楽っす! 何とか口説き落とせないっすかね。そしたら逆玉で王になってハーレムつくってヒャッハーできるんすけど」
「父を口説き落とすの?」
首を傾げるカペラに「無理」と全員の心の声が揃う。
「あのドワーフ王の娘か」
ポツリと呟く巧真は何だか疲れたようだった。
「会った事あるのね」
「GAMを装備していた」
「本当にお疲れ様……」
その様子はカペラも聞いているので、心の底から巧真を労わった。
●
ハンター達は部族が来る間、CAMの知識をおさらいしていた。
オイマト族の若き族長バタルトゥがハンター達とカペラの姿を見かけ、声をかけた。
「宜しく頼む」
「任せてくださいっすよー! 俺が説明するわけじゃないんすけど」
目を伏せてハンターとカペラに声をかけるバタルトゥに明るい調子で返したのは神楽だ。因みに彼は丸ごとウサギを被っており、カペラはどういう縫製なのか着になっているようだ。
「じゃぁ、いくよ……」
アジュールが立ち上がり向かう。しっかりとした足取りは依頼達成よりは甘味の為。
集まった部族の他に各国の使者達の目がちらほらあった。
「じゃぁじゃぁ見学会始めるっすよー」
まるごとうさぎ姿の神楽に驚く者が出ていた。
「め、面妖な!」
「可愛いうさぎさんっすよー」
こっちこっちと人員整備を行う神楽は手際がよかった。
「ドワーフ王の娘か」
高慢そうな老人がカペラの姿を見て眉を顰める。
「悪いけど、今回の説明は私とハンター達よりさせてもらうわ」
親帝国派の先駆けたドワーフ王国に対し、一部敵意に近い印象を持つ者もいるようだ。
「帝国の連中はこんなところで何をしようというのだ」
提案を言い出したのは帝国の者であり、辺境の領域を使われる事に反帝国派はイラつきを隠す事はせずにカペラに敵意を向ける。
「ここ寒いし、寒い所にいると腹減りやすくなっていらつくんすよ~」
宥めすかしてくれたのは神楽だ。低い腰でどこか憎めない彼に免じ、老人は一度引き下がる。
「まずは腹ごしらえといこう」
シンが声をかけると、ネージュが紙に包んだクロケットを配っていく。
「美味しいよ」
何故か一緒に食べているのはアジュール。説明前の腹ごしらえのようだった。
一人が食べ始めると熱い、美味いとハフハフしながら一気に食べきる。
マッシュポテトや刻んだ野菜と身体を温めるスパイスが効いたひき肉を揚げたクロケットは冷えた身体にありがたいものだ。
それが皮切りで皆が食べていけば好評のようで、文句言いながらもぺろりと完食してしまっている者もいるほど。
「はじめようか」
ネージュが食べ終わった包み紙を回収しつつ、巧真が声をかける。
格納庫に入り、大型トレーラーに横たわる『それ』を見た部族たちは困惑した。
そこにあったのは件のCAMだが、今の状態ではどういうものなのかわからないだろう。
「これがCAMと言ったところで分らないだろうから、ちょっと待っていろ」
巧真は待機していた整備士に声をかける。
「オッケーです!」
整備士より了解が出ると、巧真は手馴れた様子でトレーラーへ上がりこむ。
その間を取り持つのはカペラとアジュール。
「CAMの殆どはこれと同じくらいの大きさよ。個体によっては大きかったり小さかったりするみたいだけど、これは平均的と聞いているわ」
「か、かなり大きいぞ……」
「奥にも何機かあるよ。今回動かせるのはこれだけだけど」
重低音を響いてきた事に部族達が警戒をする。
「起動するぞ」
シンの言葉に応えるようにその重低音は回転を上げ、トレーラーの荷台が上がる。
どよめきがしっかり声に出て、未知なる不安と希望への歓声がしっかりとリアルブルーの者達、クリムゾンウェストのハンター達に聞こえてきた。
鋼の機体の全貌が部族達の前に晒される。沢山のリアルブルーの人々が乗ってきた戦艦「サルヴァトーレ・ロッソ」に格納されていた戦闘装甲機「CAM」……。
「こ、これが……きゃむ……」
杖を突いていた老人が慄く。
「大丈夫です。ゆっくり、深呼吸をしてください」
ネージュが老人に優しく声をかけると老人は何度も頷き、CAMを見上げる。
「やっぱ、かっこいーっすねー」
神楽が見上げつつ呟く。
「こ、これはどういうものなんだ」
壮年の部族長が言えば、アジュールは真直ぐ部族達を見つめる。
「君達、馬に乗ったり、鎧を付けた事は有る……?」
「勿論だ、我らにとって馬は必需品、狩猟部族であれば鎧を着る事もある」
一段階クリアを確認するかのようにアジュールが頷く。
「それとあんまり変わらないよ……」
「なんだと……?」
驚く部族達の反応を確認しつつ、アジュールは手にしていたアルケミストタクトの切っ先をCAMの足元へ向けた。
「乗れば速く走れる。乗っている間は、この頑丈な装甲が鎧変わり」
装甲を軽く叩けば、それが頑丈なものである事はすぐにわかることだ。
「は、走るのか?」
CAMとアジュールを交互に見やっている壮年の男が尋ねる。
「勿論、移動できるよ。その代わり餌がいる」
意外にも驚いたリアクションがあり、アジュールは更に説明を続ける。
「燃料っていう餌が必要なんだ、馬だってご飯無しには走れないよね……?」
「ああ……」
先ほど、アジュールは馬になぞらえていたのはそれを伝えるのも目的だ。
「燃料って、薪とかじゃないのか?」
その質問にアジュールは「違う」とはっきり答えた。
「餌は何でも良い訳じゃない……僕らも土石は食べれない、この子が食べれる餌が必要」
「食べられる餌が現時点であるか分らないんですね」
ネージュが合いの手を入れると、アジュールが頷く。
「そう、これが今回辺境の地を使って行う実験……魔導アーマーの動力が、この子の餌足るのか……」
「帝国の力か……」
苦しそうに吐き捨てられた部族の言葉はその場にいた者達の動きを止めた。
帝国は辺境に対し、帰順を求めている。
親帝国派、中立、反対派といるが、その言葉は重い。
「しかし、現状我々に残された道はないのだぞ……」
親帝国派だろう部族が肯定する。
辺境の無力さに絶望して帝国の帰順を決めた部族も存在する。
「我々は、帝国の力を借りずとも、必ずや、敵を倒してみせるのだ。なぜ、あんな輩の手先になり得ようとする!」
反帝国派だろう老部族長が叫ぶ。
「貴様にはわからんのだ! あの強大な力を……!」
「なんだとう!」
親帝国派と反帝国派がもみ合いはじめた。
「ああ、もう、今はそんな話をするところじゃねーっすよ!」
神楽が慌てて仲裁に入り、ネージュも続けて止めに入る。
「だまれ、よそものども! 貴様達にはわからぬのだ!」
「あっ!」
止めに入ったネージュを振り払った部族が声を荒げる。
「あぶないな!」
シンが倒れそうになるネージュを受け止めて警告を促した。
「皆さん、落ち着いてください」
揉め事を止めようと尚もネージュがシンに一度礼を言い、仲裁へと向かう。
ここで揉めて部族間の対立が深まったら元も子もないのだ。
「落ち着いて!」
少しでも部族間のわだかまりをなくさないとならない。そう思ってカペラも輪の中に入っていく。
「まずは知り、不安を払拭する事を優先するべきではないか」
騒然としている場に凛とした言葉が響いた。
大まかな説明を後ろで聞いていた明影は真直ぐに部族達、ハンター達を見据えていた。
「事実を受け入れるのは容易ではない。しかし、不安を超えれば、後は興味か怖れか、或いは無関心しかない」
後ろの方で説明を聞いていた明影は部族達の合間をすり抜け、前へと出る。
「単純に言えば、武器の延長であり、単なる道具でしかない。道具はただ道具。力と言うそれ自体に善悪がない様に。
最初に否定有りきではなく、まずは認め、そして如何扱うか。それが肝要ではないか」
明影の言葉にその場で彼の声を聞いた者達は静まり、思案する。
「み、見せてくれ……きゃむの力を……」
恐る恐る声を上げたのはバタルトゥより若い部族長。
「わかった。動いてくれ!」
シンががCAMへ身体を向けて声をかけると、腕が動き出した。
「あれは中であの若者が動かしているのか? ちゃんと見えるのか?」
一人が尋ねれば、シンが頷く。あの若者とは先ほど姿が見えなくなっていた巧真の事だ。
「頭の部分に色がついて透明なプレートがあるだろう。あれの中に目となる装置がある。運転席でそれが見えるようになっている」
「ワシらの姿も見えているのか。高いところからいるのに」
「確認は出来る」
シンが答えていくと、部族達がいちいち驚く。
「どうやって戦うんだ? 魔力が必要なのか?」
『魔力的なものは一切使っていない』
スピーカーを使って巧真が説明に参加し始める。
『よって魔法なんか使えやしねぇが、投石器やバリスタなんか目じゃねぇ威力の武器を携帯、使用する事ができる』
「会話も出来るのか……」
部族の呟きに「そこそこね……」とアジュールが答える。
神楽が台車を押して何かを持ってきた。載せられた物に部族達が驚いていた。
「CAMの武器、デリンジャーだよ……」
大きな大きなその武器は人が到底扱えるものではない事を知らされる。
「勿論キミらが普段使う様な刃物も装備できるよ……使えるように大きいけどね」
「威力は……?」
「普通なら船や馬車は穴だらけか爆散するかの二択だな、それくらいの威力はあると考えた方がいい」
恐る恐る問いかける部族にシンが返す。
「……雑魔ならひとたまりもないな」
「万能ではない。さっき弥勒が言っていただろう、どうか使うかって……ここでの戦いが今まで俺達がいたところと同じでいいか模索しているようなものだ」
「だから、実験が必要なのか……」
ぽつりと老人が呟けば、ネージュが椅子を進める。
「座った方がいいですよ……」
息巻いていた老人はゆっくり椅子に座る。「ありがとう、お嬢ちゃん」とネージュに礼を言って。
『扱う奴が上手ければ大戦果を挙げられる。下手であればその逆……死ぬ事もある』
「あんなに強靭な鋼なのにか……」
呆然と呟く部族にリアルブルーの人間達が頷いた。
「少しでも勝てるように知ることが必要だと思います。まずは燃料を見つける為に実験が……だから、辺境の皆さんにCAMを知ってもらおうと見学会を行いました」
クリムゾンウェストの同じ民たるネージュの言葉を部族達はゆっくり受け止めた。
使い方次第では歪虚に勝てる。
それには調べなくてはならない。
「馬に乗るとき、訓練した覚えは……?」
静まった場にアジュールの声が響く。
「そりゃ、はじめてから上手くいったやつなんかそうそういない」
「速度上げようとしたら落ちた事だってある」
幼い頃を思い出して部族達がそれぞれに声を上げる。
「だから……乗れるよ」
そう、クリムゾンウェストの者でも……。
「乗るための訓練は必要だけどね?」
馬を乗る時の様にと、アジュールは部族の者達に視線をしっかり向けて付け足した。
若いリアルブルーの女性の言葉に、視線に部族達が目を丸くしてしまう。
彼女が示す意味を捉えながら、CAMという存在の可能性を改めて知らされる。
衝撃と新たな課題を持つ事になった部族達は思い思いの考えを胸に秘める事になった。
「未来は如何動くか分らないな」
ぽつりと明影が呟く。
「そうですね」
彼の呟きに気づいたネージュが答えた。
アジュールが言っていた事に衝撃を受けなかったものはいないようにも思えた。
辺境部族より未知なる兵器、CAMのパイロットになれるかもしれないという可能性を。
要塞【ノアーラ・クンタウ】物資の流通が主となるのだが、それでもルート上にある部族には不安と期待が入り混じっている。
それ以上に今回のCAMの実験は部族達の心をかき乱していた。
辺境部族の心を一つにしなくては辺境に巣食う歪虚を倒すことは出来ない。
他国に蹂躙されるか、そのまま潰されるか……
「姫、ハンターが到着しました」
「今行くわ」
臣下の知らせを受けてカペラは待機しているハンターの元へ向かう。
現場に着いたハンターは格納庫を経由してからカペラと待ち合わせる部屋へと向かう。
「おーーーーー!」
感嘆の雄叫びを上げたのは神楽(ka2032)だ。
「すっげー!」
リアルブルーにいた頃、マスメディアで見たことはあったものの、実機を見るのは初めて。トレーラーに横たわるCAMを何とか触ろうと思い、きょろきょろと入り口を探している。
「はぐれるぞ」
はしゃぐ神楽を呆れたように窘めたのはシン・コウガ(ka0344)だ。
「いやいや、こういう機会滅多にないっすよー!」
諦める様子がない神楽はまだ探している。
「浮かない顔だな」
シンに声をかけたのは弥勒 明影(ka0189)だった。
「CAMの知識は新兵レベルなんだよな……って」
「向こうが欲するのは安寧だ。自身が持つ知識をもって安心を与えるのが最優先される」
「……安心できるようにしなくては……」
ネージュ(ka0049)がCAMを見上げて呟いた。
「めんどくさい。ボク、ここで寝てていい?」
格納庫内の隅にある暖房に気づき、暖気に誘われて暖房へとふらふらと歩いていくのはアジュール・L=ローズレ(ka1121)だ。
「お前は……」
先に現地入りしていたリアルブルーの整備士達と会話をしていた岩動 巧真(ka1115)が呆れてアジュールの方を向いた。
「ここに揚げ菓子があるぞ」
いろんな意味で巧真の甘い言葉にアジュールは暖房へと歩いていた足を止め、爪先立ちのままくるりと巧真の方へと体を向ける。
「……食べていい?」
「おう」
先ほどの働きたくないオーラ満載でござるのアジュールからやる気が出てくるように足取りがしっかりとしてくる。
「依頼頑張ったら、もっと美味いもん食わせてやるよ」
紙包みをアジュールに手渡した巧真が口元に笑みを浮かべる。紙包みを開けたら、リアルブルーでいうところのドーナツを半分に切り、断面にクロデットクリームに似たクリームが中に塗られていた。
「なら、頑張る」
こくりと頷いてアジュールは揚げ菓子を食んだ。
「もしかして、見学会のハンター達かしら!」
お付のドワーフを後ろに従えて走ってきたのはカペラだ。
「おぉ! 可愛いっす!」
真っ先に反応したのは神楽だ。
「そお? ありがとう。今日は来てくれてありがとう! 私はカペラ、よろしくね」
「神楽っす! 何とか口説き落とせないっすかね。そしたら逆玉で王になってハーレムつくってヒャッハーできるんすけど」
「父を口説き落とすの?」
首を傾げるカペラに「無理」と全員の心の声が揃う。
「あのドワーフ王の娘か」
ポツリと呟く巧真は何だか疲れたようだった。
「会った事あるのね」
「GAMを装備していた」
「本当にお疲れ様……」
その様子はカペラも聞いているので、心の底から巧真を労わった。
●
ハンター達は部族が来る間、CAMの知識をおさらいしていた。
オイマト族の若き族長バタルトゥがハンター達とカペラの姿を見かけ、声をかけた。
「宜しく頼む」
「任せてくださいっすよー! 俺が説明するわけじゃないんすけど」
目を伏せてハンターとカペラに声をかけるバタルトゥに明るい調子で返したのは神楽だ。因みに彼は丸ごとウサギを被っており、カペラはどういう縫製なのか着になっているようだ。
「じゃぁ、いくよ……」
アジュールが立ち上がり向かう。しっかりとした足取りは依頼達成よりは甘味の為。
集まった部族の他に各国の使者達の目がちらほらあった。
「じゃぁじゃぁ見学会始めるっすよー」
まるごとうさぎ姿の神楽に驚く者が出ていた。
「め、面妖な!」
「可愛いうさぎさんっすよー」
こっちこっちと人員整備を行う神楽は手際がよかった。
「ドワーフ王の娘か」
高慢そうな老人がカペラの姿を見て眉を顰める。
「悪いけど、今回の説明は私とハンター達よりさせてもらうわ」
親帝国派の先駆けたドワーフ王国に対し、一部敵意に近い印象を持つ者もいるようだ。
「帝国の連中はこんなところで何をしようというのだ」
提案を言い出したのは帝国の者であり、辺境の領域を使われる事に反帝国派はイラつきを隠す事はせずにカペラに敵意を向ける。
「ここ寒いし、寒い所にいると腹減りやすくなっていらつくんすよ~」
宥めすかしてくれたのは神楽だ。低い腰でどこか憎めない彼に免じ、老人は一度引き下がる。
「まずは腹ごしらえといこう」
シンが声をかけると、ネージュが紙に包んだクロケットを配っていく。
「美味しいよ」
何故か一緒に食べているのはアジュール。説明前の腹ごしらえのようだった。
一人が食べ始めると熱い、美味いとハフハフしながら一気に食べきる。
マッシュポテトや刻んだ野菜と身体を温めるスパイスが効いたひき肉を揚げたクロケットは冷えた身体にありがたいものだ。
それが皮切りで皆が食べていけば好評のようで、文句言いながらもぺろりと完食してしまっている者もいるほど。
「はじめようか」
ネージュが食べ終わった包み紙を回収しつつ、巧真が声をかける。
格納庫に入り、大型トレーラーに横たわる『それ』を見た部族たちは困惑した。
そこにあったのは件のCAMだが、今の状態ではどういうものなのかわからないだろう。
「これがCAMと言ったところで分らないだろうから、ちょっと待っていろ」
巧真は待機していた整備士に声をかける。
「オッケーです!」
整備士より了解が出ると、巧真は手馴れた様子でトレーラーへ上がりこむ。
その間を取り持つのはカペラとアジュール。
「CAMの殆どはこれと同じくらいの大きさよ。個体によっては大きかったり小さかったりするみたいだけど、これは平均的と聞いているわ」
「か、かなり大きいぞ……」
「奥にも何機かあるよ。今回動かせるのはこれだけだけど」
重低音を響いてきた事に部族達が警戒をする。
「起動するぞ」
シンの言葉に応えるようにその重低音は回転を上げ、トレーラーの荷台が上がる。
どよめきがしっかり声に出て、未知なる不安と希望への歓声がしっかりとリアルブルーの者達、クリムゾンウェストのハンター達に聞こえてきた。
鋼の機体の全貌が部族達の前に晒される。沢山のリアルブルーの人々が乗ってきた戦艦「サルヴァトーレ・ロッソ」に格納されていた戦闘装甲機「CAM」……。
「こ、これが……きゃむ……」
杖を突いていた老人が慄く。
「大丈夫です。ゆっくり、深呼吸をしてください」
ネージュが老人に優しく声をかけると老人は何度も頷き、CAMを見上げる。
「やっぱ、かっこいーっすねー」
神楽が見上げつつ呟く。
「こ、これはどういうものなんだ」
壮年の部族長が言えば、アジュールは真直ぐ部族達を見つめる。
「君達、馬に乗ったり、鎧を付けた事は有る……?」
「勿論だ、我らにとって馬は必需品、狩猟部族であれば鎧を着る事もある」
一段階クリアを確認するかのようにアジュールが頷く。
「それとあんまり変わらないよ……」
「なんだと……?」
驚く部族達の反応を確認しつつ、アジュールは手にしていたアルケミストタクトの切っ先をCAMの足元へ向けた。
「乗れば速く走れる。乗っている間は、この頑丈な装甲が鎧変わり」
装甲を軽く叩けば、それが頑丈なものである事はすぐにわかることだ。
「は、走るのか?」
CAMとアジュールを交互に見やっている壮年の男が尋ねる。
「勿論、移動できるよ。その代わり餌がいる」
意外にも驚いたリアクションがあり、アジュールは更に説明を続ける。
「燃料っていう餌が必要なんだ、馬だってご飯無しには走れないよね……?」
「ああ……」
先ほど、アジュールは馬になぞらえていたのはそれを伝えるのも目的だ。
「燃料って、薪とかじゃないのか?」
その質問にアジュールは「違う」とはっきり答えた。
「餌は何でも良い訳じゃない……僕らも土石は食べれない、この子が食べれる餌が必要」
「食べられる餌が現時点であるか分らないんですね」
ネージュが合いの手を入れると、アジュールが頷く。
「そう、これが今回辺境の地を使って行う実験……魔導アーマーの動力が、この子の餌足るのか……」
「帝国の力か……」
苦しそうに吐き捨てられた部族の言葉はその場にいた者達の動きを止めた。
帝国は辺境に対し、帰順を求めている。
親帝国派、中立、反対派といるが、その言葉は重い。
「しかし、現状我々に残された道はないのだぞ……」
親帝国派だろう部族が肯定する。
辺境の無力さに絶望して帝国の帰順を決めた部族も存在する。
「我々は、帝国の力を借りずとも、必ずや、敵を倒してみせるのだ。なぜ、あんな輩の手先になり得ようとする!」
反帝国派だろう老部族長が叫ぶ。
「貴様にはわからんのだ! あの強大な力を……!」
「なんだとう!」
親帝国派と反帝国派がもみ合いはじめた。
「ああ、もう、今はそんな話をするところじゃねーっすよ!」
神楽が慌てて仲裁に入り、ネージュも続けて止めに入る。
「だまれ、よそものども! 貴様達にはわからぬのだ!」
「あっ!」
止めに入ったネージュを振り払った部族が声を荒げる。
「あぶないな!」
シンが倒れそうになるネージュを受け止めて警告を促した。
「皆さん、落ち着いてください」
揉め事を止めようと尚もネージュがシンに一度礼を言い、仲裁へと向かう。
ここで揉めて部族間の対立が深まったら元も子もないのだ。
「落ち着いて!」
少しでも部族間のわだかまりをなくさないとならない。そう思ってカペラも輪の中に入っていく。
「まずは知り、不安を払拭する事を優先するべきではないか」
騒然としている場に凛とした言葉が響いた。
大まかな説明を後ろで聞いていた明影は真直ぐに部族達、ハンター達を見据えていた。
「事実を受け入れるのは容易ではない。しかし、不安を超えれば、後は興味か怖れか、或いは無関心しかない」
後ろの方で説明を聞いていた明影は部族達の合間をすり抜け、前へと出る。
「単純に言えば、武器の延長であり、単なる道具でしかない。道具はただ道具。力と言うそれ自体に善悪がない様に。
最初に否定有りきではなく、まずは認め、そして如何扱うか。それが肝要ではないか」
明影の言葉にその場で彼の声を聞いた者達は静まり、思案する。
「み、見せてくれ……きゃむの力を……」
恐る恐る声を上げたのはバタルトゥより若い部族長。
「わかった。動いてくれ!」
シンががCAMへ身体を向けて声をかけると、腕が動き出した。
「あれは中であの若者が動かしているのか? ちゃんと見えるのか?」
一人が尋ねれば、シンが頷く。あの若者とは先ほど姿が見えなくなっていた巧真の事だ。
「頭の部分に色がついて透明なプレートがあるだろう。あれの中に目となる装置がある。運転席でそれが見えるようになっている」
「ワシらの姿も見えているのか。高いところからいるのに」
「確認は出来る」
シンが答えていくと、部族達がいちいち驚く。
「どうやって戦うんだ? 魔力が必要なのか?」
『魔力的なものは一切使っていない』
スピーカーを使って巧真が説明に参加し始める。
『よって魔法なんか使えやしねぇが、投石器やバリスタなんか目じゃねぇ威力の武器を携帯、使用する事ができる』
「会話も出来るのか……」
部族の呟きに「そこそこね……」とアジュールが答える。
神楽が台車を押して何かを持ってきた。載せられた物に部族達が驚いていた。
「CAMの武器、デリンジャーだよ……」
大きな大きなその武器は人が到底扱えるものではない事を知らされる。
「勿論キミらが普段使う様な刃物も装備できるよ……使えるように大きいけどね」
「威力は……?」
「普通なら船や馬車は穴だらけか爆散するかの二択だな、それくらいの威力はあると考えた方がいい」
恐る恐る問いかける部族にシンが返す。
「……雑魔ならひとたまりもないな」
「万能ではない。さっき弥勒が言っていただろう、どうか使うかって……ここでの戦いが今まで俺達がいたところと同じでいいか模索しているようなものだ」
「だから、実験が必要なのか……」
ぽつりと老人が呟けば、ネージュが椅子を進める。
「座った方がいいですよ……」
息巻いていた老人はゆっくり椅子に座る。「ありがとう、お嬢ちゃん」とネージュに礼を言って。
『扱う奴が上手ければ大戦果を挙げられる。下手であればその逆……死ぬ事もある』
「あんなに強靭な鋼なのにか……」
呆然と呟く部族にリアルブルーの人間達が頷いた。
「少しでも勝てるように知ることが必要だと思います。まずは燃料を見つける為に実験が……だから、辺境の皆さんにCAMを知ってもらおうと見学会を行いました」
クリムゾンウェストの同じ民たるネージュの言葉を部族達はゆっくり受け止めた。
使い方次第では歪虚に勝てる。
それには調べなくてはならない。
「馬に乗るとき、訓練した覚えは……?」
静まった場にアジュールの声が響く。
「そりゃ、はじめてから上手くいったやつなんかそうそういない」
「速度上げようとしたら落ちた事だってある」
幼い頃を思い出して部族達がそれぞれに声を上げる。
「だから……乗れるよ」
そう、クリムゾンウェストの者でも……。
「乗るための訓練は必要だけどね?」
馬を乗る時の様にと、アジュールは部族の者達に視線をしっかり向けて付け足した。
若いリアルブルーの女性の言葉に、視線に部族達が目を丸くしてしまう。
彼女が示す意味を捉えながら、CAMという存在の可能性を改めて知らされる。
衝撃と新たな課題を持つ事になった部族達は思い思いの考えを胸に秘める事になった。
「未来は如何動くか分らないな」
ぽつりと明影が呟く。
「そうですね」
彼の呟きに気づいたネージュが答えた。
アジュールが言っていた事に衝撃を受けなかったものはいないようにも思えた。
辺境部族より未知なる兵器、CAMのパイロットになれるかもしれないという可能性を。
依頼結果
参加者一覧
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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見学会相談卓 神楽(ka2032) 人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2014/12/14 20:26:52 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/17 10:04:11 |