• 東幕
  • 羽冠

【東幕】【羽冠】風薫る刻に

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
イベント
難易度
不明
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
無し
相談期間
4日
締切
2018/05/27 22:00
完成日
2018/06/04 01:22

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●東方―龍尾城
 立花院 紫草(kz0126)は微笑を浮かべながら、その日最後の業務を終えた。
 時を知らせる鐘が響く。謁見の間に並んでいた武家や公家らが順に退席していく。
「翌日の件は……各自に知らせてありますか?」
 紫草が小声で側近に尋ねた。
 エトファリカ征夷大将軍である紫草は基本的に多忙である。
 スケジュールはほぼ埋まっているのだが、紫草の希望により、翌日の約束は全て延期、あるいは代役が行く事になった。
「問題ありませぬ」
 側近の答えも小声であった。
 将軍が不在でも国が回るのは、優秀な配下が多い為でもある。エトファリカ武家四十八家門の第一位である立花院家はそれだけ有力な武家という事だ。
「この後の予定は、確か、上位武家の会合がありましたね」
「ご出席されますか? 代わりの者を手配しておりますが」
「……それは、助かります」
 さすがに小さい頃から紫草を見ているだけあって、側近にはお見通しのようだった。
 喉をこみ上げてくる咳を、紫草は強引に押さえつけ、咳払いに変えた。
「この大事な時に風邪とは、私も弱くなったものです」
「紫草様も人であったという事かと」
 側近の冗談に紫草は口元を緩める。
 東方最強と謳われた侍も、病気には掛かる。
 特に、最近は憤怒残党との戦いだけではなく、政争の駆け引きも加わり、落ち着かない日々だ。
「一日ゆっくりさせて貰います」
「表向きにはハンターとの意見交換という事にしてあります」
 流石に国のトップがこの時期に風邪で寝込んだと公表する事は出来ない。
 側近なりの気の遣い方だったのだろう。
「紫草様の体調を気遣う奥方がいらっしゃればいいんですがね」
「スメラギ様より先に私が妻を娶る訳にはいきませんから」
「それだけが理由ではないのに、将軍様はよく言います」
 苦笑を浮かべて言った側近の台詞に紫草は微笑で返したのであった。

●王国―寂れた街道
 紡伎 希(kz0174)が、人通りの少ない森の中の街道を歩いていた。
 目的地は王都だ。これまでの依頼の結果を受付嬢として、王国騎士団本部に直接伝える為だ。
「もう少しで、大きめの街道に着くでしょうか」
 そんな独り言を呟く。王国北部のとある廃館から出発したので、なるべく人の目につかないようにと、わざと人通りが少ない道を選んだのだった。
 遠回りにはなるが、これは仕方ない。
 主との決着が着くまでは――。
「……あれは?」
 視界の先に辛うじて見える影。
 希は考えるよりも早く駆け出した。それに気が付き、影が振り返る。
「ねぇねぇ、人に見つかりにくいようにって選んだのに見つかってるよ、ミュール」
「ふむ。しかも、見知った人間のようだな」
 そこに居たのは、甲虫歪虚と幼い少女だった。
 希を追い掛けていた事件の首謀者と思われる傲慢歪虚だ。
「足を早める。どうせ、追いつけまい」
「ま、待ってください!」
 踵を返そうとした甲虫歪虚に希が叫んだ。
 面倒な様子の甲虫歪虚の頭を無理矢理掴む幼い少女。
「ほら、折角だから待ってあげようよ」
「お二人は、ミュール様ですよね。私は希と申します」
 呼吸を落ち着かせながら希は名乗る。
 どうやら、戦闘の意志はないようだと歪虚には伝わったらしい。歪虚もここで戦うつもりはなさそうだった。
「何か用? お姉さん」
 幼い少女が首を傾げた。
「立札を渡した……理由を、知りたくて……」
「そんなものどうでもいいだろう」
「ミュール冷たい! 走って来たんだから、教えてあげなよ」
 フンと息をつき、甲虫歪虚はそっぽ向いた。
 仕方ないな~といった様子で、幼い少女が希と視線を合わせる。
「酷い事されて、絶望していたからだよ」
「どんなに絶望していても、人は……」
 言い返そうとした希の台詞を遮り、幼い少女が言い放った。
「人って残酷。そうやって、何度も何度も絶望に叩き落すんだから。でも、イヴ様は違う。イヴ様は、皆を正しく導いてくれるんだから!」
 ニッコリと笑った幼い少女――が甲虫歪虚にむんずと掴まれた。
「余計な道草を食っている場合ではない。行くぞ」
「もう、ミュールのケチィ! あ。お姉さん、王都には来ない方が良いからね~」
 幼い少女はそう言い残し、甲虫歪虚と共に唐突に消え去ったのであった。

●日本―都心
 鳴月 牡丹(kz0180)が嬉しそうな表情を湛えて、所用を終えた星加 籃奈(kz0247)を大手を振って出迎えた。
 籃奈は複雑な顔をしながら、牡丹の迎えに手を挙げて応える。
「どうしたの? 籃奈」
「いや……ちょっと、気になる事があってね」
 籃奈が勤務している強化人間用の装備を開発する研究所の所長と連絡が取れないのだ。
 それも、軍と軍需産業企業との不正事実を籃奈が知らせた後からだ。
 後の事は任せなさいと胸を張った所長の笑顔が今でも脳裏に焼き付いている。何事も無ければいいのだが……。
「それで、牡丹の方は、なんで、そんなに嬉しそうなの?」
「へへーん! 孝純君に勝ったよ!」
 突き出したのは携帯ゲーム機器だった。
 どうやら、籃奈が仕事の関係で離れていた間、孝純と牡丹の二人は携帯ゲームで対戦していたようだ。
「ゲーム下手な牡丹に負けるなんて信じられないな」
「ト、トイレに行きたくて、もう、行ってきて良い?」
 やたらモジモジとしている孝純。これはゲームに負けても仕方ない。
 牡丹の事だ。勝つまではゲームをやめようとしなかっただろう。
「持久戦も戦術の一つだよ!」
「何、ドヤっているのよ。子供相手に大人気ない」
 お手洗いに向かって走る孝純の背を見守る籃奈。
「孝純が帰ってくるまで待ってるわ」
「それじゃ、僕が車のエンジンを付けておくよ。大丈夫、運転しないからさ!」
 牡丹はリアルブルーの文化に慣れつつあるようだ。
 車を運転した日には大惨事間違いないだろうが。
「絶対に運転しないでね」
 冷たい視線を牡丹に向けながら、キーを渡した。
 公道ではない研究所の敷地内だし、エンジンを掛けるぐらいは問題ないだろう。
「大丈夫だって、エアコンに当たりたいだけだから!」
 キー片手に颯爽と走る牡丹。
 一刻も早く、涼しい風を浴びたい。それも全身に浴びたい!
 そんな一心で扉を開けて運転席に飛び乗ると、キーを差し込んだ。籃奈によると年代物の車らしいが、そんな事は牡丹には分からない。
「エンジン始動!」
 キュっと回した直後の事だった。
 大音響と共に爆発、炎上する車。
「ぼ、牡丹!」
 玄関付近で待っていた籃奈が叫んだ。
 轟々と音を発しながら爆発を繰り返す車――どうみても時限爆弾の類を付けられたのだろう。生身の人間なら……即死だ。
 その時、車の扉が吹き飛んだ。炎の中から出てきたのは爆発で衣服がボロ切れになった牡丹。
「……ごめんね、籃奈。なんか、知らないけど、車が爆発しちゃった」
「あ……あぁ……」
 これが覚醒者かと籃奈は改めて思うのであった。

リプレイ本文


 爆発現場周囲は“即座に”規制線が張られた。
 ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)はカード(符)を片手に街路樹の幹から、顔と大きな胸を出して辺りを見渡す。
「ルンルン忍法を駆使して、爆発事件について調べちゃいます!」
 見る限り、不審者は見当たらない。
 どうしたものかと思った矢先、視界の中に見知ったハンターが映った。確か、団長のお友達の――。
「エニアさん!」
 こんな場所で名前を呼ばれたので驚いたのか、十色 エニア(ka0370)が振り返った。
 傍には初めて見る男の子が居た。ルンルンは首を傾げる。
「ショタ趣味?」
「いや、そうじゃなくて、孝純君のお母さんが、現場検証で離れて。たまたま、通り掛かったからさ」
 少年はルンルンの大きな胸に戸惑いながらも丁寧に頭を下げた。
 そんなウブな少年の反応に頷いているルンルンにエニアが告げる。
「車が突然、爆発したみたい」
「これは事件の予感なのです」
 そういって符を取り出すと術を唱える。
 式神を出現させると現場をそれで調べ始めるが……。
 怪しい紙がフワフワと浮いている所を警察官に見つかって、あっという間に握り潰されてしまった。
 これは調べるのは、孝純君のお母さんが帰って来てからでもいいかもしれない。
「ルンルンさん、何か時間を潰せるもの持ってますか?」
 エニアの問い掛けに、目を抑えてのたうち回っていたルンルンがビシッと立ち上がった。
 反動で胸が盛大に揺れる。
「ルンルン忍法! 時間あっという間に過ぎるの術!」
 堂々と掲げたのは携帯ゲーム機だった。
「ルンルン忍法?」
「う……ん。そこは、あまり触れないであげて」
 驚いている孝純にエニアがそっと耳元で囁いた。
 渡されたゲーム機の電源を入れると、それは格闘ゲームらしかった。どうやら通信対戦できるらしい。
「ルンルン忍法の極意、お見せします!」
 無駄に胸を揺らしながら前のめりになって迫るルンルンに孝純の視線は完全に宙を彷徨っていた。
 これでは戦う前から勝負にならない。助けを求めるようにエニアに視線を向ける孝純。
 まずは注意力が散漫にならなさそうな人から練習してみたいようだ。
「うん……そ、そうだね。わたしは少なくとも“平ら”だから……」
 エニアはそう小さな声で呟き返すと、事態が理解できていないルンルンからゲーム機を手にするのであった。



 フェリア(ka2870)とヘルヴェル(ka4784)の二人は爆発現場の検証もそこそこに星加 籃奈(kz0247)の家に帰って来た。
 現場を調べようにも、規制線が張られ、捜査権の無いハンターは歯痒い思いをしなければならなかった。
「郷に入っては郷に従えと言いますし、仕方ありません」
 穏やかな口調でフェリアは言った。
 口元に手を当てながら考え事をしていたヘルヴェルが籃奈に尋ねる。
「軍人である籃奈さんにバレずに爆弾を仕掛ける……やはり、要因は不正の証拠ですか?」
「そうとしか思えないわ」
 長い取り締まりから解放された籃奈の表情は疲労感に満ちていた。
 心当たりがあるとすれば、不正の証拠しかない。直接、“消し”に来たのだろうか。
 確認するようにフェリアも訊く。
「車を降りる時に怪しい人物が居なかったのですよね」
 静かに頷く籃奈。
 もし、牡丹がエンジンを回していなかったら、籃奈も孝純も無事では無かっただろう。
 その孝純は隣部屋で今でも別のハンターと対戦ゲームをしている。
「息子さんへの警護、もしくは暫く安全な場所があるのなら護衛とともに移動ですね」
「残念ながら頼れる親族はいなくてね……」
 ヘルヴェルの忠告に籃奈は苦笑を浮かべた。
 それに頼れる親族が居たとしても、命を狙われてますといって預けるのも気が引ける。
「そういえば、不正の証拠は大丈夫なのですか?」
「籃奈さん、コピーの作成は可能ですか? 可能なら複数作成、複数保管をです」
 心配する二人のハンターの台詞に籃奈は頷く。
「その辺りは大丈夫。もみ消されても何度も訴えられるぐらいには」
 頼もしい限りだが、そうでもないと、戦死した籃奈の夫は浮かばれないだろう。
 それに、籃奈は一人ではない。ハンター達を頼れるし、牡丹だっている。
「……爆発に巻き込まれた牡丹さんは大丈夫でしょうか?」
 首を傾げながらヘルヴェルは続ける。
「カズマさんが行っているはずですが、襲ってませんかねぇ……」
「牡丹ではなく、カズマさんが?」
 意外だったらしく籃奈が驚きの声を上げた。
 どう考えても肉食系――いや、肉食そのものは牡丹の方だろう。
 フェリアが人差し指を立てた。
「まあ。男はみんな狼、なんて言葉もありますが……最近では草食の狼も多いみたいですし、大丈夫じゃないですか?」
 襲われるのか襲うのか、どう大丈夫なのか分からないフェリアの澄ました台詞にヘルヴェルと籃奈は頷いたのだった。



「いやー。まさか、着替え中に入ってくると思わなかったよ」
 ニヤニヤとした表情で鳴月 牡丹(kz0180)が言った。
「入っていいと言ったのは、そっちだろうに……」
 龍崎・カズマ(ka0178)は悪くないだろう。
 いいよと言われて部屋に入ったらこの言い掛かりだ。
 薄着のまま牡丹がカズマの横に座る。
「それにしても驚いたね。車が爆発するなんて」
「爆発…ねぇ? いやいや、ちょっと待て。何があったんだ」
「うんとね……」
 思い出すように牡丹が事の顛末を告げる。
 結局は牡丹のせいで車が爆発した訳ではなく仕掛けられた爆弾が爆発したという事だ。
 話を聞き終えたカズマが牡丹の身体を確かめるように手で触れながら確認する。
「ちょっと、くすぐったいよ!」
 逃げようとする牡丹を強引に掴まえるカズマ。
 これは狼が本性を現したかと思ったが、残っている傷にヒールを掛ける。
「爆発に巻き込まれたんだろ。覚醒者とはいえ、破片とか怖いからな」
「心配性だな~。ボクなら大丈夫だよ」
「牡丹も人間で、女の子、だろ」
 カズマのその台詞を聞き、急に恥ずかしくなったのか、牡丹は身体をモジモジと微動させながら、カズマのヒールを受けるのであった。



 王都内のとある酒場に、その男達――クローディオ・シャール(ka0030)×ジャック・J・グリーヴ(ka1305)――は居た。
 ジャックのお気に入りの店だとかなんとか、そこそこに、腹ごしらえを終えると、二人の話題は自然と王国事情となる。
「近頃、どうにも気に掛かる事件が多発しているようなのだが知っているか?」
 柑橘系の果汁で味付けされた水を口にしてから、クローディオが尋ねた。
「イスルダ島の事……じゃねぇみてぇだな」
「同じ姿形をした歪虚が王国内に現れるという事件なのだが……どうやら、リアルブルー産のボードゲームになぞらえた歪虚が発生しているらしい」
 ポケットから取り出したのはチェスの駒。
 クローディオが言うボードゲームはチェスの事ではない。『駒』の説明をする為だ。
 一つ一つ、駒の解説と調べてきた内容を伝えながら熱心に説明するクローディオに対し、ジャックは――。

 負けじと鞄の中から、可愛い女の子の人形を取り出し、『駒』の中央に、丁寧に置く。

「どんな敵が出てこようが、ぶっ潰せばいい」
「そうだな。問題は、『駒』に何か意味があるのだろうか……絶望している人間にゲーム感覚で災いを届けているのか」
 こればっかりは事件の発端となった傲慢歪虚から直接聞くしかないだろう。
 勿論、そんな事は難しい。世の中は完璧ではない。絶望する人間は、きっと、どこにでもいるのだろうから。
「……絶望抱えてる奴ん所に、歪虚が現れて事件を起こすってか……そんだけ、この国に絶望抱えてる奴がいるって事かもしんねぇな」
 グッとジャックはグラスを持つ手に力を込める。
 頭に過ったのは薄暗い路地だった。直後、ドンっと激しく机を叩く。人形と駒が飛び跳ねた。
「クソッタレ! 国で派閥云々やってる場合じゃねぇ、もっと足元見ろって話だ!」
「そうだな」
 倒れた女の子の人形をソッと直すクローディオ。
 ジャックの熱弁は続いた……人形を大事に仕舞いながら。
「やっぱこの国は変わらなきゃいけねぇ。いや、変えていかなきゃいけねぇんだ!」
 テーブルを叩いたグラスをジャックは親友に勢いよく向けた。
「いざって時は力貸せよ、クローディオ。俺達でこの国に光を取り戻そうぜ」
「いざという時に限らず、お前ならいつでも私の力を貸すさ」
 爽やかな微笑を浮かべてクローディオはグラスを掲げた。
 二人が鳴らす乾杯の音色が、照明の光と共に響いた。この国が、いつか輝く日の為に――。



 フューリト・クローバー(ka7146)はその日、ハンターオフィスで報告書を確認していた。
 特に今回は王国について記されているものをメインとする。
「ながーい歴史があるみたいだから、大変そうだよね」
 現在、王国歴1018年である。グラズヘイム王国が地方都市国家として成立したのが、王国歴元年。
 その後、紆余曲折を経て、同盟領、帝国領、辺境と現在の形に形成されるのだが、やはり、その歴史の節目には、人同士のしがらみがあった事は想像に容易い。
「人同士のしがらみが鎖みたいになってそうで動けないとかありそうだよねー」
 ウトウトとフューリトは眠くなってきた。
 幾つか大事な報告書とか推測の書類とかあるが、もはや、太陽の温かい光に耐えるのは困難になってきた。
「暖かいと、つい眠くなるー」
 スーと机に突っ伏して寝息を立て始めるフューリト。
 彼女が寝落ちした為に広げられたままのある書類には、こう記されていた。

『閉鎖的な地方によっては、混血の子や取り換え児の存在も迫害の対象になる場合もあり、雄のロバと雌のウマの混血になぞらえて、ミュールと呼ぶ地方もあるらしい』
 ――と。



 王都のハンターズソサエティ支部は第三街区にある。
 オフィスでハンター達と合流した紡伎 希(kz0174) は、報告資料一式を文字通り抱え、同じ街区にある騎士団本部へと向かった。
「……という事が王都に来る前にありまして」
 希はミュールとの遭遇した話をそう締めくくった。
 少女が言うには、人は幾度も絶望させる残酷な存在。だから、傲慢王の導きが必要だとミュールは言い放った。
 話を聞いてUisca Amhran(ka0754)が強い決意を瞳に宿らせて宣言する。
「絶望を乗り越えるため、今出来る限りのことをしよう!」
「はい!」
 瞳を輝かせて返事をする希の表情を星輝 Amhran(ka0724)は見て心の中で呟いた。
(思うにアヤツ、希が別の道を進んだ結果の果てなのかも知れんとも感じるところがあるが……)
 流石は年の功と言った所だろうか、希の話を聞き、星輝はそう思った。
 深き絶望の環の中に希は居た。彼女が角折の歪虚と行動を共にしていたのは、人と世界に絶望していたからだろう。
 星輝も含め、多くのハンター達とのふれあいで希の心境は大きく変わった。だが、もし、どこかですれ違いがあったら――希もミュールのようになっていたかもしれない。
(……それを自身でも分かっているからこそ、首を突っ込むのじゃろうな)
 思案しながら一人頷く星輝の横でアレイダ・リイン(ka6437)が疑問を口にする。
「何故、その歪虚は紡伎君に敵意を向けなかったのか?」
「甲虫歪虚の様子を見るに、急いでいる雰囲気でした」
「ふむ……忙しいので相手をしている場合では無かったという事か……歪虚と一緒にいた幼い少女は何者なのだろうか?」
 一連の事件の報告書を確認すると、幼い少女も甲虫歪虚も傲慢歪虚であるのは分かっている。
 だが、それ以上の情報は無い。『我らはミュール』と答えた話から、色々と推測はできそうではあるが……。
「歪虚の行先と目的が気になるな」
 深く考えるアレイダに星輝が思い出したように手を叩いた。
「そういえば、童女が、例の号外に多大な興味を持っておったでな……」
「政略結婚の話か。あの号外に書かれた内容に、行先と目的のヒントがあるかもしれない……か」
「キナ臭くなるじゃろうな……」
 あの号外はかなり配られたらしいが、生憎、星輝の手元には無かった。
 ハンターの中には持っている者もいるかもしれないが。
 Uiscaが胸に手をあてて深刻そうに呟く。
「歪虚が突然発生する事件が、王都でも起こる可能性高い事を騎士団本部にも伝えないと」
 王国西部一帯を中心として同様の事件が複数回発生しているのだ。
 王都で起こらないという保証はない。
「それに、今、王都は人々が押し寄せ、混乱の中で絶望を感じる人も多く出てくるはずです」
「是非とも、騎士団本部でイスカさんからも仰っていただければ」
 そんな二人のやり取りを微笑ましく眺めながら、星輝はピョンと前に進み出て振り返った。
 アレイダもスタスタと先に進む。
「わしは、王都内にミュールや怪しい立札が無いか探して回ってくるのじゃ」
「それでは、私は市民に聞き取りをしてくるよ」
 上手く見つかるという保証はないが、何もしないよりかは意味はあるだろう。
 特に立札に関しては、その全容は分からない。油断できないだろう。
 混み合う通りの中に消えていった二人のハンターを見届け、Uiscaと希は騎士団本部へと向けて歩き出したのであった。



 紫草私邸の質素な作りである戸が叩かれた。
 床に伏せていた立花院 紫草(kz0126)が立ち上がろうとするのを台所に立つ天竜寺 詩(ka0396)が止めた。
「立場上、公に出来ないのは解るけど、少なくとも今日はしっかり休まないと駄目だよ!」
 包丁片手に立つ詩の台詞に紫草は微笑で返す。
 大丈夫ですよと言う前よりも早く、庭掃除をしていた鳳城 錬介(ka6053)が戸へと向かった。
「詩さんの言う通りですよ。来客は俺の方で上手く対応しておきますので」
 ガラガラと戸を開くとそこにはニャンゴ・ニャンゴ(ka1590)が包み物を手に立っていた。
「お見舞いの品をお持ちしました。お受け取り下さい」
「ニャンゴさんから直接、渡したらどうでしょうか」
 苦笑を浮かべて応える錬介にニャンゴが申し訳なさそうに呟く。
「私のような者と、直接顔を会わせてしまっては具合も悪化するというもの」
 いつものネガティブ根性が全開のようだ。
 だが、そんな事は錬介は分からない。彼は首を傾げ――結局、ニャンゴの背中に回り、彼女を押し入れるのであった。
「大丈夫ですよ。もう快復に向かっているようですから」
「いえ、私は……」
 そんな押し問答の二人の背後からアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が声を掛けた。
「中に入っていいだろうか」
 ただでさえ、戸は狭いのだ。
 押しのけて無理にでも通ったら、戸が外れてしまうだろう。
「皆さん、どうぞ、お入りください」
 奥から紫草の声が響き、なし崩し的にニャンゴも私邸に入る事となったのだった。

 紫草を囲むように詩とニャンゴとアルトが座る。
 面々の前には、詩が持ってきた琵琶。ニャンゴが持参した薬代わりのはちみつ大根。錬介の土産であるうなぎの茶漬けが並んだ。
「今が旬の琵琶だよ。琵琶は栄養価が高くて風邪にも良いんだよ。あと、琵琶のコンポートも作ったから。毎日少しずつ食べてね」
 トンと壺を置いた詩。
 そして、皮をはいだ琵琶の一つを紫草に勧める。
「琵琶の葉を乾燥させたお茶は体にいいし、タチバナさんもお庭に琵琶を植えてみたら?」
 詩の言葉に庭の雑草を引っこ抜いていた錬介が同意する。
「それはいいですね。この様子だと畑の手入れは難しいでしょうから」
「では、私が琵琶の苗木を調達してきます」
 これ幸いと立ち上がろうとするニャンゴだったが、タイミング悪く、新たな来客がやって来た。
「ここでいいのかな? 始めまして。ハンターの七夜・真夕と言い……」
 戸を開けた七夜・真夕(ka3977)の言葉が途中で切れる。
 将軍って偉い人だから逢ってくれるのだろうかという心配をしていた程だったので、私邸の中の状況を見て驚いたのだ。
 敷いている布団に座っている紫草と、将軍を囲む女性が3人。
「あの、私にはそんなつもりはないので……」
「何の話なんだ?」
 遠慮気味に言った真夕にアルトが返す。
「側近の方が『奥方になられるような女性がいれば』と呟いていたから……」
 その台詞に白湯を口につけた紫草が噴き出しそうになり、咽込む。
 紫草が病で療養するという事で心配する女性ハンターが来たら、その中から良い人がいないか観察する。それが側近の狙いだったようだ。さすが、立花院家の側近だ。ずる賢い。
「大事な体なんだから無理はしないでね」
 詩が心配そうに背中を摩り、アルトがからかうように言った。
「体調管理も戦士としても上に立つものとしても大切だよ? 理由があるんだろうけど、部下の人の言うようにお嫁さんもらったら?」
 結婚を頑なに拒否するスメラギの逃げ道を塞ぐにもいいかもしれない。
「解答次第では牡丹君のおかゆを習って食べさせるよ?」
「台詞だけ聞くと、アルトさんが、紫草さんの為におかゆを作ると言っているようにも聞こえますね」
 庭から錬介の声が響いた。
 これは、紫草の奥様探しも色々と大変そうだ――。

「単刀直入に拷陀ってやつについて心当たりはあるかい?」
 状況が落ち着いた(?)所で、アルトが尋ねた。
 ハンターオフィスからの資料を並べるが、紫草の事だ。その内容は十分に知っているだろう。
「紫草さんが将軍になる前にいい勝負をした相手は?」
 真夕もそう訊く。
 友人が拷陀と戦った時に紫草の事を話したのだ。
「これは憶測だけど、公の場で恨みのある人になるんじゃないかしら?」
 拷陀は紫草に対して強い恨みがあるような言い草だった。
 もし、相手の正体が分かれば、今後の戦いで活かせるだろう。アルトも真夕もそれを確認する為に、今日、紫草に逢いに来たのだ。
「……幾つかの武家に心当たりがありますね」
「それは?」
 深く尋ねようとしたニャンゴに対して紫草は首を横に振った。
「残念ながら、憤怒歪虚との戦いでいずれも滅んでいます。恐らく、その中から堕落者となったパターンでしょう……一番可能性が高いのは、箕南家の鈴峯でしょうか」
「……それが拷陀の正体?」
「強大な憤怒勢力に成す術もなく……当時の幕府の判断により、城ごと見捨てる形となったので、相当な恨みを持たれているのかもしれません」
 西方世界と繋がる前の東方では珍しい事では無かったかもしれない。
「かなりの刀の腕ですが、それ以上に、武具を作る才能に恵まれた人物だったと覚えています」
「なるほどね。将軍が認める程の腕前なら、強い訳なんだ」
 真夕が感心する。
 どうやら、強敵であるのは確かなようだ。
「武具は何を作っていたの?」
「確かに、気になりますね」
 詩の質問に錬介が同意する。
「有名なのは甲冑ですね。装飾などは好まない、実戦を追及するスタイルだったかと」
「……それで配下が、甲冑歪虚、なのですか」
 ニャンゴがボソっと呟いた。
 スッとアルトが立ち上がる。彼女が求めていた情報は得られたのだろう。
「もし会う機会があれば、仕留めておくよ」
 頼もしい台詞をアルトは告げたのであった。



 十鳥城の城下町。その一角の居酒屋の扉が、バーン! と勢いよく開かれる。
「たーのもー!」
「正秋殿と瞬殿はこちらか?」
 入って来たのはミィリア(ka2689)と銀 真白(ka4128)の二人だった。
 片や和洋折衷な戦用メイド服甲冑、片や具足で武装した両女子の唐突な登場に居酒屋内は静まり返る。
「入店が騒がしいんだよ! その平らな扉はお前らのお友達()なんだから、大事にしてっつーの」
 徳利を持った瞬が二人を出迎える。
 その視線は扉と、ミィリアと真白の胸に向けられていた。
 瞬を無視し、ずんずんと入って来たミィリアは仁々木 正秋(kz0241)の隣に瞬を押しのけて、さっと座る。
「正秋さん達、元気かな? 季節の変わり目だから」
「ええ――」
「元気そうだね! あの失礼極まりない瞬さんも!」
「隣、お邪魔する」
 真白も正秋の隣に座る。
 これで、正秋は女子力の凄い侍に囲まれた事になった。
 返事をしようとした所を遮られた正秋は気を取り直し、二人を交互に見る。
「ミィリア殿も真白殿もお元気そうで、なによりです」
「ここに来るまでに十鳥城の復興の様子、見させて貰った」
 十鳥城下町の復興・発展は順調だ。
 特に、カカオ豆の栽培と加工、流通に関する事業は多くの人の流れを生み、好循環となっている。
 憤怒歪虚により街道が危険だが、それも、先の戦いで幾分とマシになったようだ。
「おかげで多忙です」
「お仕事忙しそうだけどちゃんと休めてる? たまには息抜きとかしないとでござるよ」
 妙に前屈みな姿勢で上目気味にミィリアが正秋に迫る。
 オドオドとする正秋の後ろで瞬がボソっと呟いた。
「何、年上っぽい事言ってるんだよ」
「これでも、年上でござるから! というか、瞬さんも、正秋さんを見習って、ちょん髷にしないと!」
 もしかして、瞬も凛々しく見えるからもしれない。
 真面目な表情で真白が瞬に向かって告げる。
「正秋殿を見習って十鳥城の侍達も多かった気がするが、瞬殿も中々に似合うのではないかと思う」
「ば、ばか言え。似合う訳ねーし」
 頭を必死に抑える瞬。
「ふむ、十鳥城の侍、皆に髷を広めると瞬殿も従わざる得ないだろうか」
 此奴――真白――が本気だと、瞬は思ったのであった。
 これは、十鳥城の侍全員がちょん髷になるのも時間の問題なのかも……しれない。



「イーター、どうして貴方がここにいるのかしら?」
 エリザベタ=III(ka4404)が不満を隠しもせずに言う。
 折角、愛しい娘――シャーロット=アルカナ(ka4877)――とのお出掛け、それも、シャルからのお誘いというのに、今、出来れば逢いたくない人物と鉢合わせしたからだ。
「シャルからのお誘いを受けたのは、リザだけではないという事だ」
 澄まして応えたのはイーター=XI(ka4402)だった。
 嘘ではない。シャルが夏服が欲しいという事で誘われたのだから。
「ほら、男性からの意見も大事でしょ」
「シャルがそう言うなら……邪魔しないでよ」
 ジト目で告げるエリザベタ。
 対してイーターは揶揄うように返した。
「俺は、一緒にデートができてうれしいが、な?」
「な、何、言ってるのよ! ほら、お店入るわよ」
 さっさと店に入っていく母の背中に含みのある笑みを浮かべてシャーロットが続いた。
 この時期は、やはり夏の新作が気になる所。
 メインを飾る衣服のデザインに目を輝かせながら、手に取る親子二人。
「これも可愛いですわ!」
 ドット柄やチェック柄を取り入れたアイテムや様々なタイプのワンピースが流行りの傾向らしい。
 タイプの違う二種のワンピースを手に笑顔でシャルは振り返った。
「お母さま、イーターさま! どちらが良いと思いますか?」
 イーターはやや離れた装飾品の所で何やら熱心に商品を見ていたが、シャーロットの問い掛けに顔を向けた。
「さて、こちらだろうか? ……ふむ、これも合わせるといいだろう」
 選択したワンピースと合うバレッタを手にして告げる。
 その言葉に即答するようにエリザベタが割って入った。
「どう考えても愛しいシャルにはこちらでしょう」
 本心では否定している訳ではない。本当を言うと両方良いと思ったが、素直になるのは癪に障るというか、そんな気持ちだ――なんだ、ツンデレか。
「では、こちらはお母さまと過ごす時に、こちらはイーターさまとのお出かけの時に着ますわね!」
 両方の意見を取り入れ、両方ゲットしたのだった。

 買い物を終えてスイーツが美味しいと評判の店で、甘いものを堪能する。
 優しくとろけそうな甘味の中、エリザベタの心中は穏やかでなかった。
 あの男は買い物が終わった後も一緒だったからだ。
「言っておくけれどイーター。貴方が私を揶揄わなければ、私だって強くは出ないのよ」
 キツイ視線でフォークの先をイーターに向けて少し不貞腐れ気味に言ってやった。
 その台詞にシャーロットが噴き出しそうになる。
(口元にポイップが付いてますわ……)
 その事は――黙っておこうと思った。
 キリっと言った台詞なのに、口元ホイップのおかげで台無しだ。むしろ、可愛い。
「それほど揶揄っているつもりは無いのだが、な?」
 笑いを耐える様子もなくスマートに応えるイーター。
 スッと袋に包まれたネックレスをエリザベタの前に置いた。
「まぁ、娘との大事な時間を邪魔した詫びだ」
「そんなもの要ら――」
 包みを開ける前に返そうするが、言葉を遮ってシャーロットが包みを開く。
「わぁ! 私のバレッタとお揃いのデザインですわ!」
 完全に返すタイミングを逃すエリザベタ。
 ネックレスには指輪も通っていた。
(こ、これ、え、でも、なんで……)
 カッと顔が熱くなるのを自身でも感じた。
 先ほどの店で手に取ろうとしていた指輪。買いそびれてしまっただけに心残りだった。
 思い返せば、彼は熱心に装飾品のコーナーに居たと思う。これの事だったのだろうか。
「べ、べ、別に、け、喧嘩をしたいわけでは、ないのよ」
 顔を真っ赤に染めながら虚勢を張ったエリザベタの様子に、ニヤニヤと表情を緩めるシャーロットであった。



 淡い銀色の光が二人――志鷹 都(ka1140)と志鷹 恭一(ka2487)――だけの世界を照らす。
 冷え込む初夏の夜でも、漆黒の中で煌めく星々と、互いに触れる身体が温もりを感じさせた。

 交わす言葉の中で、いつものように微笑んで見せる都には、何処か影があるようにも思える。
 月の光が強い程、影が強くなるように、幾度の会話もどことなく、雰囲気を留めた。だから、恭一は、優しく抱き締めた。

「大丈夫――」

 耳元で静かに、ゆっくりと告げた言葉。
 その言葉の意味は深く、大きく、そして、暖かい。
 徐々に二人の世界が滲む。心の奥底に沈め、仕舞っていた感情、ずっと、誰かに聞いてほしくて、でも、誰にも言えなかった想い。
 それが、愛する人の言葉と温もりに触れ、言葉ではなく、涙となって世界に零れる。

 溢れ出した涙で沈んでしまわないように、愛する妻を頬に寄せる。
 辛抱強い彼女の事だ。苦しい事を独りで抱え込み今日まで過ごして来たのだろう。
 そして、彼女は漸く見つけたこの世界から旅立つ。別れを告げる時が来たのだ。ここからは独り歩むのだと。

「大丈夫」

 だから、もう一度告げる。
 どんなに孤独になっても、どんなに離れても、大丈夫だから。
 世界を照らす月光は、いつでも、二人を繋ぐ。
 都の華奢な指を彩る指飾りが月の光を反射して煌めいた。暗闇を照らす世界にたった一つの光。

(この温もりと愛を胸に……)

 都は瞳をソッと閉じた。
 暗闇に閉ざされるはずなのが、月の光と温かさに、涙が止まらない。
 見上げればいつもそこに月はあるように、この温もりはいつも、傍に居る。

「……それだけはどうか……忘れないで欲しい……」
「はい」

 恭一の願いに都は深い重みのある気持ちを込めて答える。
 いつでも、どこでも、繋がる事が出来る。遥か遠く、幾億の距離を越えても光が届くように、想いもまた、どこまでも、いずこでも、繋がるのだから。

 その夜、いつまでも銀光は二人を包み続けた――。



「何も考えずにはいたんじゃん……」
 自然豊かな王国南部のとある街道をジェスター・ルース=レイス(ka7050)が歩いていた。
 ドラグーンである彼にとって王国の田舎は、それだけで見に来る価値はあるというものだろう。
「というか、暑いじゃん」
 まだ真夏では無いというのに、この暑さだ。
 日差しを避ける為にちょっとした林の中に踏み入る。とりあえず、ここで休憩だ。
「なんだこれ?」
 負のマテリアルを感じたと思ったら、林の奥に立札が立っているのが見えた。
 林の中に立札。どう見ても怪しい。というか、林の中に立札は必要ないだろう。
 確認する為に近付こうとした時だった。
 立札が唐突に消え、代わりに漆黒のフリルドレスを着た幼い少女が現れた。
「あれー。ここじゃ、見つかっちゃう。もっと別の場所にしなきゃ」
「へ? 女の子?」
 驚くジェスターは目を丸くする。さっきまで、確かに立札があったのに、少女が現れたからだ。
 一方、少女はそんなジェスターを見て、ニコっと爛漫な笑顔を浮かべた。
「カッコいいお兄ちゃん。この辺りには居ない方が良いよ~」
 ヒラヒラと手を振りながら立ち去った幼女を、ジェスターはただ、見送るしかできなかったのだった。



「紡伎さん、お久しぶりです」
 王都のオフィスの一室、ソフィア =リリィホルム(ka2383)は希に会いに来ていた。
 ソフィアの背には巨大な箱……明らかに何かが入っている。
「こちらこそ、お久しぶりです。ソフィア様」
「ご依頼の品、試作になりますがお持ちしましたっ」
 それこそ、彼女が背負っていた箱の中身だった。
 希から特殊な鞘の作成を頼まれていたのだ。【魔装】である主を納めるに相応しい鞘を。
「も、もう出来たのですか!?」
「試作ですから……最終調整に至るまでは骨が折れるかもしれないです」
 スキルの能力を応用する技術はさすがに設備が不足していた。
 こればっかりは希が自身の立場を使って『上手に』解決してもらうしかない。
「こちらの機導術を仕込んだ機械鞘なら……いけそうです」
 要は負のマテリアル汚染を浄化できれば良いのだ。
 アルケミストならではのソフィアのナイスなアイデアだ。
「後は、使用感とデータを送って貰って今後も改良予定ですね」
「ありがとうございます、ソフィア様」
 希の嬉しそうな表情を見て、鍛冶師として良い仕事をしたと深く頷くソフィアであった。

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参加者一覧

  • フューネラルナイト
    クローディオ・シャール(ka0030
    人間(紅)|30才|男性|聖導士
  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 【ⅩⅧ】また"あした"へ
    十色・T・ エニア(ka0370
    人間(蒼)|15才|男性|魔術師
  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhran(ka0724
    エルフ|10才|女性|疾影士
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • 母のように
    都(ka1140
    人間(紅)|24才|女性|聖導士
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • Monotone Jem
    ニャンゴ・ニャンゴ(ka1590
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 大工房
    ソフィア =リリィホルム(ka2383
    ドワーフ|14才|女性|機導師
  • 天壌無窮
    恭一(ka2487
    人間(紅)|34才|男性|闘狩人
  • 春霞桜花
    ミィリア(ka2689
    ドワーフ|12才|女性|闘狩人
  • 【Ⅲ】命と愛の重みを知る
    フェリア(ka2870
    人間(紅)|21才|女性|魔術師
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • 轟雷の巫女
    七夜・真夕(ka3977
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • 正秋隊(雪侍)
    銀 真白(ka4128
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • 《力》を潜ませる影纏い
    イーター=XI(ka4402
    人間(紅)|44才|男性|機導師
  • 分け合う微笑み
    エリザベタ=アルカナ(ka4404
    人間(紅)|26才|女性|聖導士
  • 絆を繋ぐ
    ヘルヴェル(ka4784
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 分け合う微笑み
    シャーロット=III(ka4877
    ドワーフ|15才|女性|機導師
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師
  • 流浪の聖人
    鳳城 錬介(ka6053
    鬼|19才|男性|聖導士
  • 赤き霊闘士
    アレイダ・リイン(ka6437
    人間(紅)|21才|女性|霊闘士
  • Braveheart
    ジェスター・ルース=レイス(ka7050
    ドラグーン|14才|男性|舞刀士
  • 寝る子は育つ!
    フューリト・クローバー(ka7146
    人間(紅)|16才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/05/27 15:42:55
アイコン 質問・確認用
龍崎・カズマ(ka0178
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2018/05/27 20:02:03