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【CF】僕に恋を教えて!

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/12/23 22:00
完成日
2014/12/27 20:47

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 12月、リアルブルーでは多くの街がどこもかしこもクリスマスに染まるこの時期、クリムゾンウェストでもまた同じようにクリスマスムードに包まれる。
 それはここ、崖上都市「ピースホライズン」でも変わらない。
 むしろどこもかしこも華やかに、賑やかにクリスマス準備が進められていて。

 リアルブルーの街に輝くという電飾の代わりに、ピースホライズンを彩るのは魔導仕掛けのクリスマス・イルミネーション。
 立ち並ぶ家や街の飾りつけも、あちらこちらが少しずつクリスマスの色に染まっていく。
 特に今年は、去年の秋に漂着したサルヴァトーレ・ロッソによって今までになく大量に訪れたリアルブルーからの転移者たちが、落ち着いて迎えられる初めてのクリスマス。
 ハンターとして活躍している者も多い彼らを目当てにしてるのか、少しばかり変わった趣向を凝らす人々もいるようで。

 果たして今年はどんなクリスマスになるのか、楽しみにしている人々も多いようだった。


●ピースホライズンのとある衣装屋にて
 1人の新米脚本家が悩んでいた。
「みんな、持ち上げ過ぎなんだよぉ……」
 有名な脚本家の元に弟子入りしたまでは良かった。
 だが、修行だと言われて貰った仕事で彼は一躍有名になってしまい、そのせいで師弟関係も悪くなってしまった。
 いくつか仕事を行って無難には過ごしてきたが、次の仕事はヤバい。
 どの位ヤバいかと言えば、彼のデビュー作で出てきたゴキブリ雑魔並にヤバい。
「恋愛なんてした事ないのに……」
 彼の次の仕事……。
 それは、ピースホライズンの一角で行われる恋愛劇の脚本。
 クライアントからは、間に合えば、ぜひ、クリスマスでも! というオマケ付きでだ。
「それで、我を頼りに来たのか、親友よ」
 脚本家と向かい合うのは、衣装屋の主人。
「そうなんだよぉ」
「お前、結婚しているじゃないか」
「お見合いだったし……」
 そうだったと衣装屋は思い出した。
 昔から奥手な性格で、恋とは無縁だったんだと。
「恋人同士がどんな風にラブラブするのかわからないので、脚本に悩んでいるなら、自分で勉強するしかないだろ」
 衣装屋がもっともな事をアドバイスする。
 時間があれば、歓楽街にいくらでも連れて行ってあげたいものだが。
「べ、勉強はしましたよぉ」
 妻とと付け加える。
「だけど、違うんです。劇として必要な物は、もっと、こう……」
「……インパクトか」
「そう! それなんです! 大衆が、『おぉ!』とドキドキするような、そんな、シチュエーションが欲しいのです!」
 急に目をギラギラさせて熱弁する脚本家。
 顔が近い。衣装屋は彼の両肩を押しながら、落ち着かせる。
「確かに、お前の作った作品は、どこか、そういったものがあるよな」
「実際にあった出来事を脚色しているだけですけどね……」
 再び悩み始める脚本家。
 野郎2人で悩んでも出る答えでもないだろうと衣装屋は心の中で感じた時だ、ふと、ひらめく。
「そうだ。ハンターに頼めばいいんじゃないか?」
「デビュー作はハンターと雑魔の戦いを描いた物だったけど……」
 まだ、ピンと来ていないようだ。
「ハンターはなにも、常に戦っているわけじゃないだろう。お前が望む様なシチュエーションを依頼として出せば、やってくれるんじゃないか?」
「なるほど! でも、さすがに、ハンターに依頼を出すには費用が……」
 財布を取り出す。
 その財布の薄さに、諦める。
「そこで、我が出番だよ。親友よ」
 まるでステージの上で演じている様な大げさが身振り。
 二度三度くるくると回ったあげく、ビシっと脚本家を指差す。
「衣装展示会を行う予定でね。仮装したハンター達にデモンストレーションを行ってもらおうと思っていた所なのだよ」
「その依頼の中に、入れてくれるというの?」
「あぁ。なにしろ、大親友のお前の悩みじゃないか!」
 ギュッと抱きしめる。
 脚本家は感動のあまり涙を浮かべた。
「ありがとう! ありがとう!」
「うむ。まぁ、あれだ。その代わり、今回、お前が作った劇で使う衣装は我が衣装屋からよろしくな!」
「……その性格、昔から変わってないね……」
 脚本家は急に冷静になって、そんな事を呟いたのであった。

リプレイ本文

●組み分けた結果
「なんで俺が男と組まなきゃならないんだ」
 抗議の声をあげたのは、 トライフ・A・アルヴァイン(ka0657)だ。
 仮装して女性を口説くだけで報酬を貰える。
 ついでに衣装屋で来年の流行りを抑えておけば、一儲けできると思って依頼に来てみれば、組む相手は……。
「俺は、オンナゴコロとかいう未知の存在をもっと理解しろとかいう無茶振りを義妹から受け、やむなく依頼を受けただけだが」
 銀髪に紅い瞳の少年──ウィンス・デイランダール(ka0039)だった。
 初対面のトライフを値踏みする。
 背はあるが、細身だ。鍛えている様に見えない。これは、軟弱者だなと勝手に決めつける。
「他のハンターの方々は既に依頼を開始しています。トライフさんは結構、モテそうですし、ここは、素晴らしい演技をお願いします」
 依頼主が大げさな身振りでトライフに依頼を促す。
(あれで女にモテるのか。女は軟弱者が好きなのか。なるほど世の女と俺は気が合わねーわけだ)
 心の中でウィンスがそう思った。
「ったく、需要ないだろ」
 野郎同士で恋人を演じて、どうするんだとつけ加えた。
「……トライフっつったな。俺はオトメゴコロとかいう、人知を超えた概念を理解するた……」
 ウィンスの話の途中で、トライフが依頼人に詰め寄った。
「何が悲しくて男を口説かなくちゃならないんだ」
「依頼ですから」
 不敵な笑みを浮かべる依頼人。色々な意味でいい性格だ。
 トライフが、強い口調でなお、直談判を続けようとした所で、突如崩れ落ちる。
 仕事が進まないので、ウィンスが手刀を首筋に当て、KOさせたのだ。
 そのまま、更衣室へと向かって、トライフを引きずっていった。

 野郎2人組の険悪なムードとは一転、少女が嬉しそうな表情を浮かべている。
 その横には、ぶっきらぼうで無表情の青年。
 イルカ・シュヴァリエ(ka2708)とルイ・シュヴァリエ(ka1106)の二人だ。
「恋人役お願いできる?」
 上目使いで懇願するイルカ。
 その破壊力は、きっと、サルヴァトーレ・ロッソのマテリアル粒子砲すら凌いでいるだろう。
「そういう依頼だからな、構わん」
 ルイが快く承諾した。その反応はあくまでも事務的であった。
「じゃ、設定は、『兄に思慕を寄せる妹と、それに気付かず振り回され気味の兄のデート』でね」
 ルイは「わかった」とそっけないが、これもいつもの事だ。
 思わず、心の中でガッツポーズを取るイルカ。
(お兄ちゃんとデート♪)
 しかも、恋人同士の熱いシーンを演技するのだ。
 更に、設定上、兄と妹なら、役に入らずとも問題ない。
「……大体何時も通り、かな」
 最後は心の中だけで治まりきれずに、ぼそりと口から言葉がでてしまった。
 イルカの呟きに対し、ルイは至って真面目だった。
(妹の恋心に気付いていない兄という設定か……)
 演じられるか不安だが、依頼は依頼だと自分に言い聞かせた。

 燕尾服姿のジャック・J・グリーヴ(ka1305)が毅然とした態度で、屋敷の外の庭園を見つめていた。
 衣装展示会と聞いて参加してみれば、恋人同士を演技すると、来てから知った。
(冗談じゃねぇ! 女の顔もマトモに見られねぇのに恋人なんざ無理に決まってる!)
 その話を聞いた時、心の中でそんな事を叫んだ。
(……クソッタレ! 平民の依頼をんな理由で蹴るわけにもいかねぇか……)
 そう。俺様に不可能という依頼なんてものはない。
 やるだけの事はやってやると思った所で、ふと、気がついた。
「女は無理だが男なら問題ねぇ……それがガキならなお良しだ」
 恋人役の相手は、ちび助だ。大丈夫だ。ガキ相手なら、問題ないはずだ。
 これは依頼。決して、そんな趣味じゃないし、犯罪でもないとジャックは心の中で弁明する。
 その時、背後の更衣室の扉が開く音がした。振り返ると、少女が出てくる所だった。
「俺様おにーさん、待たせたね」
「……」
 アルテア・A・コートフィールド(ka2553)の変わり具合に、ジャックは固まった。
 肩が露出した青色のドレスに、同色の髪飾り。肩よりも長く伸びた輝かしい金色の髪。
 肘まで伸びる純白の手袋と銀色のハイヒールが、高貴なお姫様をより強く演出している。
「ち、ち、ちび助の、く、癖に、似合ってんじゃねぇか」
 動揺しながらも、ジャックは虚勢を張った。心の中で、落ち着け落ち着けと念じる。
 アルテアが得意気な顔をした。ジャックには、ずっと男の子だと思われていたみたいだから、女の子だって事をしっかりと教えてあげる良い機会に、今回の依頼はなるはずだ。
「よ、よし、行くぞ」
 アルテアの可愛い姿に正視できないのか、視線を明後日の方向に向けながら、ジャックが宣言するのであった。

●耽美な二人組
 他の組が、2階や庭園に行ったというのに、野郎二人組は、まだ1階の更衣室付近で、役決めをしていた所だ。
「わかった。俺が女役だな」
 ウィンスがそっけない様子で、答えた。
(その方がオトメゴコロとかいうのも理解しやすいだろ)
 と自分に言い聞かせる。
「お前は、見目は整ってるし、女装すりゃ……」
 ウィンスは中性的な綺麗な顔の作りをしていた。
 だが、ウィンスがキッと鋭い視線をトライフに向けた。
 女装する様な事になれば、世界を滅ぼしかねない……そんな、気迫を感じさせる。
「……解ったよ、そのままやりゃあ良いんだろ」
 トライフが妥協した。いや、この瞬間、彼がクリムゾンウェストを救ったのだ。そう間違いない。
(くそ、報酬に色を付けて貰わないと割に合わないぞ)
 心の中で呟く。トライフは衣装チェンジすべく、更衣室の中に入っていった。

 シックな雰囲気の服装に、辺境を思わせる様な小物を組み合わせた衣装で現れたトライフ。
 これは役に入ってる。場数を踏んでいるのは伊達ではないという事か。
 だが、ウィンスは仏頂面だ。依頼を怠けているわけではない。オトメゴコロというものが、よくわかっていないのだろう。
 二人は、1階ホールに入った。出店が並んでいる。
「これは、美味しそうだな」
 リンゴ飴を手に取る。が、ウィンスは表情一つ変えない。
(こいつは、いちいちムカつく餓鬼だな……)
 このノリの悪さは大真面目な騎士か貴族あたりの猪武者かと決めつける。これでは、演技するのも、疲れてしまう。
 ウィンスの方は、額からピキピキと変な音が出てきそうだった。
 オトメゴコロが分からぬゆえ、どう反応をしていいかわからない自分も悪いと思いつつ、トライフの一挙一動全てが気障で気にくわない。軟弱者の様にしか見えない。
「ウザイ」
 思わず、直球が出てしまった。
 一瞬、動きの止まるトライフ。冷たい空気が流れる。
「ここは、険悪な仲の相手に迫り口説き落とすっていうシチュエーションでやるさ」
 高い所から見下すようなトライフの口調。
「俺を口説こうって? 良い度胸だ。あんたに、このじゃじゃ馬を乗りこなせるか」
「じゃじゃ馬ならし上等だ」
 売り言葉に買い言葉。トライフは本気モードだ。
 お互いの距離を詰める二人。
「なら見せてくれ、その軽薄な言葉で。俺はハンターだ。それも、明日死んでるかも知れない類のな」
 距離が詰まった所で、トライフが、ウィンスを壁に押し付けた。
 壁のヒンヤリとした冷たさを背中で感じながら、ウィンスが目の前に迫ったトライフを見つめる。
「明日死ぬかもしれない。だから、その時その時が大切なんだ」
 トライフの甘い言葉。そんな台詞がサラッと出るあたり、さすがと言うべきか。
「後腐れのない、都合の良い相手かも知れない、それとも、違うとでも言うのか?」
 ウィンスも度胸が据わっている。
 オトメゴコロはわからずとも、真剣に依頼には、向き合う事はできる。
「都合の良い相手、ね。ああ、そうだぜ。お前は大勢の中の一人でしかない。それとも、それじゃあ不満か」
 トライフがウィンスの顎を軽く持ち上げて、顔を寄せた。
 角度によっては、色々危なく見えたのだろう。周囲のスタッフの何人かが「ワァ」と声をあげ、手で顔を塞ぐ。指は大きく開いているが。
 周囲がそんな状態になっているとも知らず、耳元でトライフは小声で言ったのであった。
「依頼だぞ。少しは協力しろ」
 ──と。

●ドンカン兄貴
 ルイとイルカは、2階の衣装展示室を腕組みして歩いている。イルカが一方的に引きずっている様にも見えるが。
「ぉ、おい。そんなに引っ張るな」
 そんな設定なのだが、あまりの勢いに慌てるルイ。一方、イルカは十分にデートを満喫しているようだ。
 展示されている衣装を、手に取り「これは?」とルイの反応を確認するイルカ。
「ん、可愛いじゃないか」
 ルイの良い評価を受けた衣装を選んでいく。
 下手に演技するよりかは、本音の方が自然と判断し、展示スペースをまわっていった。
「お兄ちゃん、アレとかはどう?」
 手に取ったのは、スリットが深めのチャイナドレス。
「あぁ。いいと思う」
 その台詞に笑みを浮かべるイルカ。
「じゃ、これもどうかな?」
 ミニスカートのサンタ服や、バニーガールを手に取る。
 方向性がコスプレになってきたが、楽しそうなイルカを見て、そこは暖かく見守ろうとルイは思った。
 これでは、普段とあまり変わらないから、演技ではなくなってきた気もするが。
「じゃあ着替えてくるね……見ちゃだめよ?」
 試着する衣装を何着か、抱え、試着室に入るイルカ。
 瞬時に最初に着ていたセーター服を脱ぎ、ゴスロリ服に着替える。
「可愛いが……あまり、普段と変わらなくないか?」
「そう……ですね」
 すぐさま、試着室に戻り、カーテンを閉じた。
「ま、まだ、次です!」
 グッと独り言を呟くと、ハロウィンっぽい、魔女っ娘の服を掴んだ。
「どうでしょう?」
 今度はカーテンをゆっくりと開けて、魔女姿を見せた。
「さっきのより似合っているぞ」
「ほんと? ……なら、これにしようかな?」
 そう言いながらも、上機嫌で再び試着室に戻る。
 次はチャイナ服に着替えてみる。
「露出が多すぎないか? いや、嫌いではないが……」
 そう言って、顔を少し背けるが、視線はどうしても衣装の方へ向いてしまう。
 それに気が付いたのか、イルカがスリットを指で怪しく揺らす。
 ハッとなって、完全に視線を外すルイ。ここに至り、イルカの悪戯心に火がついてしまった。
 ミニスカートのサンタ服に着替える。
「目のやり場に困る……好みでは、あるのだが」
「んー……こういうは、余り好きじゃないの?」
 悪戯っぽく微笑みながら、ゆっくり近づくイルカ。
 次の瞬間、なにもないところで躓き、バランスを崩し、思いっきりルイに抱きつくイルカ。
「あ、危ないぞ」
 二重の意味で。
 そこへ依頼主の一人である脚本家がやってきた。
「怪我は……ないようですね。それにしても、こういう服を着て恥ずかしくないのですか?」
「……それは、相手の好み次第ですね」
 イルカは首を傾げながら、返答した。
「好きな相手の色に染まりたい、といえば良いのか……勿論、逆に相手を自分色に染めたい、と言う人も居ますけどね」
 私は前者です、と満足そうに笑い、着替え直す為に、試着室へ戻っていった。
 さんざん振り回された形となったルイは、演技を振り返って、苦笑を浮かべる。
「……いつも通り、だよな」 
「僕には、その、いつも通りが『演技』なのか『本音』なのかわかりません」
 首をすくめる脚本家。そして、彼はルイに一礼してから立ち去っていった。
 脚本家の言葉と今日の出来事から、イルカの気持ちが少し見えた……様な気がしたルイだった。

●ツンデレ兄貴
 一面に広がるイルミネーションの幻想的な光。その中をジャックとアルテアが歩いていた。
 危なげに歩くアルテアをジャックがエスコートする。
 女の子らしい姿が嫌いなアルテアは心の中でイライラしつつも、演技の為、表情には出さない。
 だが、ジャックの方は、顔が強張っていた。
 彼はこれから、『告白場面』を演じなければならないのだ。
(人生初の告白をこんな依頼で……しかも、相手がちび助たぁな)
 おまけに、案外可愛いじゃねぇか……。
 チラリと横を向いて盗み見る。
 落ち着け、ちび助はガキだ。なにを俺様は緊張しているんだと自分に言い聞かせるジャック。
 ジャックの視線に気がついたのか、アルテアと視線が合った。
 彼の堅い表情に、思わず笑いそうになる。危うく、素が出る所だった。慣れてないから仕方ないと言い訳する。
 二人は、ベンチのある芝生の辿り着き、アルテアがベンチに座った。
 エスコートした手を離さず、ジャックは、正面に回って、膝をついて、アルテアを見上げて、見つめあった。
「星々の輝きも君の美しさには敵わない。どうか、その美しさを私にだけ向けてくれないだろうか?」
 用意していた決め台詞をキメた。
 ジャックが、考えに考えた、彼女ができたら使おうとした渾身の台詞。
 だが……。
「やだよ」
 とジャックに目を合わせず、上を向いたまま、アルテアは言った。
 それは拒絶という意味の言葉ではなかった。照れたような、笑顔を向ける。
「もっとロマンチックじゃないと、やだ」
 いぢわるな演技。
 あの台詞で落ちない女はいねぇと思っていたのに、もっとロマンチックにだぁ!? と、ジャックは頭が真っ白になる。
(これ以上ロマンチックな言葉なんざ思い付かねぇし……あぁもう!)
 もうどうにでもなれとばかり、立ち上がると、アルテアの両肩を掴む。
「こ、この世で一番好きなんだよ! 愛してんだよ!」
 ロマンチックの欠片すらないド直球なジャックの言葉。
 その真剣な眼差しに、アルテアも動揺する。
 だが、動揺具合はジャックの方が数段上だったようだ。
「……あんまそういう恥ずかしい事直接言わせんじゃねぇよ、バカ」
 そっぽ向くジャック。
「イラッとしたから素に戻っちまったじゃねぇか! ちび助のバカ野郎が!」
「な……俺様おにーさんが勝手に暴走しただけじゃん!」
 立ち上がろうとし、バランスを崩し、ジャックを巻き込んで倒れ込む。
 芝生の上に重なり合う二人。
「おめぇよ! ちびす……」
 ジャックがアルテアの胸を手で押して退かせようとした所で台詞が止まる。
 急いで立ち上がるアルテア。慌てた様子で、ドレスの乱れを直す。
 一方、ジャックはまだ茫然としたままだ。
(胸って、あんなに柔らかいのか? いや、あれは、きっと、服だ! そうだ、服だ!)
 無理矢理、自分に言い聞かせる。
「ほ、ほら、俺様おにーさん、依頼人が向かってくるよ」
 アルテアの言葉に、何事もなかったかの様に立ち上がるジャックだった。


 こうして、ハンター達の演技は終わった。
 脚本家は大いに喜び、演技を基にして作られた恋劇は、大成功を収める事になったのであった。
 特に壁に恋人を追い詰めて顔を寄せるシーンが大人気だったそうな。


 おしまい。

依頼結果

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MVP一覧

  • 魂の反逆
    ウィンス・デイランダールka0039
  • 大口叩きの《役立たず》
    トライフ・A・アルヴァインka0657

重体一覧

参加者一覧

  • 魂の反逆
    ウィンス・デイランダール(ka0039
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 大口叩きの《役立たず》
    トライフ・A・アルヴァイン(ka0657
    人間(紅)|23才|男性|機導師

  • ルイ・シュヴァリエ(ka1106
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 絵師目指す者
    アルテア・A・コートフィールド(ka2553
    人間(紅)|12才|女性|機導師

  • イルカ・シュヴァリエ(ka2708
    人間(蒼)|18才|女性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
アルテア・A・コートフィールド(ka2553
人間(クリムゾンウェスト)|12才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/12/21 19:57:07
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/12/21 22:50:24