ゲスト
(ka0000)
【羽冠】初めての王都、探検気分はゼロ
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/06/06 22:00
- 完成日
- 2018/06/13 01:02
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●べリンガー家の思い
シャールズ・べリンガーは動かないという選択を取った。
領内も騒がしくなってきていることもわかっている。幸いなことに、かつてのハンター仲間のエクラ教の司祭が穏やかに民衆を受け止めている。
イスルダ島に出向いた友人のところも不安だったが、彼の仲間だった魔術師が訪れたと聞いた。結婚話も出ていたというから、揚げ足を取られないようにするには良い選択だ。
「穏やかな地域だからいいが……」
状況を速やかに的確に把握して、国のために動くとともに民衆を守りたいと願う。
「が、私が動いたところでできることは限られる。そうなると動かずより情報を得たいが……」
ヘクス・シャルシェレット(kz0015)がどうなったのか、ヘルメス情報局号外新聞やそれ以降の状況はどうなったのかなど多くある。
「マーロウ大公からの働きかけ……しがらみばかり……国とはなんだ、領主とはなんだ」
シャールズはため息を漏らした。
扉がノックされる。入室を許可するとエトファリカ連邦国から帰ってきた息子のリシャール・べリンガーがいた。
「父上、ただいま戻りました」
どこかすっきりした顔をしている息子に、シャールズはほっとする。
「紅葉殿は元気そうだったか?」
思考を休憩させるために、飲み物を用意させる。リシャールの話を聞く態勢に入った。
「紅葉さん、引っ越していたんです」
そこから、あちらで面倒を見てくれるはずの大江 紅葉(kz0163)の一族が元の土地に戻ったことや修行の状況を話したのだった。
「その紅葉殿、今、イスルダ島にいる」
「え? なんでそんなことになっているんですか」
シャールズもかくしかじかと話す。ウィリアム・クリシスが色々考えイスルダ島を見に行ったこと。非覚醒者である彼を心配して、娘が紅葉に相談した。結果、紅葉がついていくことになった。一応、浄化に関しては専門家に当たるはずだから問題ないはずだ。
「それより、街が騒がしいとか王都に何かがあったとか聞きましたが」
リシャールにシャールズは包み隠さず現状を示した。
「王都の民はさぞかし不安でしょうね……」
「そうなんだ……で、どうするかで頭を悩ましている」
システィーナ・グラハム(kz0020)を守るために民を攻撃できない。しかし、王女にあだなすものは攻撃しないとならない。
ただ、聞こえてくる情報から国内で歪虚が動いている様子もうかがえる。結局、中央にいないシャールズには情報が不足している。
「父上、私がいって様子を見てくるのはどうでしょうか」
「何を言っているんだ!」
シャールズはそれを望んではいた。しかし、実際息子に言われると不安だ。
「私なら顔を知られていないです……まあ、貴族で知っている人もいなくはないですが、現場に来ている人はおおむね知っている人はいないですよね」
田舎に住んでいるためあまり社交界には出ない。貴族同士の交流がないわけではないが、もっぱら、父親が連れて行くのは長女と次男だ。今でこそリシャールは体調に問題はないが、体が弱かった頃があるためだ。
「私、小柄ですし目立たないです」
「……いや、伸びたぞ……うん」
二年ほど前はさすがに小さかったが、現在は百六十は超えた。それで小さいとは言わないだろう。シャールズ自身が小柄な方ではある。
「父上、迷っていますよね」
シャールズはリシャールが心を読んだような言葉を発したことに苦笑した。
「そうだな。おまえは独りで龍園の方に行ったり、エトファリカに行ったり……したな」
リシャールの顔が真っ赤になった。子供じみた行動だと思えるためだ。
シャールズは息子の成長が頼もしかった。
「では、頼もう、ハンターに」
「……どこを回ってこいとは言わないが、民のため見回りをしてくるんだ」
「え?」
リシャールはうなずいた。つまり、積極的にかかわらなくてもいいが、状況は把握して来いというもの。都の状況を知ることが重要。
「そういえば、行ったことないよな……」
「ないですね」
「ルゥルちゃんが住んでいたことあるとは言うが……」
「貴族の坊ちゃんに耳引っ張られた話ですよね……」
「……地理を知っているとはいいがたいな」
リシャールを見ているとハンターがいるとは言え、単独行動はさせたくはない。ルゥルがいれば立ち止まって考える可能性は高い。エトファリカ行きにルゥルを付けておくと、適度な行動になる。
姉がいるとはいえ弟妹を見ることがあるからだろうか。
「聞いてみる」
結局、ルゥルと一緒に行くことになった。
●見回り隊
リシャールとルゥルはハンターとともにこっそり町の中にいる。
「少しでも平静さがみられるようにお願いします」
「何があるかわかりませんです。リシャールさんにくっついていくのです。耳だけは引っ張られたくないのです」
ルゥルはきっちり着ぐるみを着ている。
幼いころ異母兄や近所(かわからないけれど)の貴族に耳を引っ張られてからかわれたことがあった。現在はハンターのおかげで克服し、それはないと知っているが、嫌なものは嫌だ。
「……ルゥルさん、王都に住んでいたのは何歳ですか」
「四歳です」
「そのあと、その問題の人には会ったのですか?」
「……いいえ」
リシャールは気づいた。相手はたぶん、ルゥルを認識しないだろう。それに、もし、耳を引っ張っていたとしても、ある程度の年齢になった今やっていないだろう。
それでも、エルフと見たら耳を引っ張るようでは、人間としてどうだろうという気持ちでいっぱいだ。
「では、皆さんよろしくお願いします」
どこをどのように見回るか、ハンターと打ち合わせをする。
シャールズ・べリンガーは動かないという選択を取った。
領内も騒がしくなってきていることもわかっている。幸いなことに、かつてのハンター仲間のエクラ教の司祭が穏やかに民衆を受け止めている。
イスルダ島に出向いた友人のところも不安だったが、彼の仲間だった魔術師が訪れたと聞いた。結婚話も出ていたというから、揚げ足を取られないようにするには良い選択だ。
「穏やかな地域だからいいが……」
状況を速やかに的確に把握して、国のために動くとともに民衆を守りたいと願う。
「が、私が動いたところでできることは限られる。そうなると動かずより情報を得たいが……」
ヘクス・シャルシェレット(kz0015)がどうなったのか、ヘルメス情報局号外新聞やそれ以降の状況はどうなったのかなど多くある。
「マーロウ大公からの働きかけ……しがらみばかり……国とはなんだ、領主とはなんだ」
シャールズはため息を漏らした。
扉がノックされる。入室を許可するとエトファリカ連邦国から帰ってきた息子のリシャール・べリンガーがいた。
「父上、ただいま戻りました」
どこかすっきりした顔をしている息子に、シャールズはほっとする。
「紅葉殿は元気そうだったか?」
思考を休憩させるために、飲み物を用意させる。リシャールの話を聞く態勢に入った。
「紅葉さん、引っ越していたんです」
そこから、あちらで面倒を見てくれるはずの大江 紅葉(kz0163)の一族が元の土地に戻ったことや修行の状況を話したのだった。
「その紅葉殿、今、イスルダ島にいる」
「え? なんでそんなことになっているんですか」
シャールズもかくしかじかと話す。ウィリアム・クリシスが色々考えイスルダ島を見に行ったこと。非覚醒者である彼を心配して、娘が紅葉に相談した。結果、紅葉がついていくことになった。一応、浄化に関しては専門家に当たるはずだから問題ないはずだ。
「それより、街が騒がしいとか王都に何かがあったとか聞きましたが」
リシャールにシャールズは包み隠さず現状を示した。
「王都の民はさぞかし不安でしょうね……」
「そうなんだ……で、どうするかで頭を悩ましている」
システィーナ・グラハム(kz0020)を守るために民を攻撃できない。しかし、王女にあだなすものは攻撃しないとならない。
ただ、聞こえてくる情報から国内で歪虚が動いている様子もうかがえる。結局、中央にいないシャールズには情報が不足している。
「父上、私がいって様子を見てくるのはどうでしょうか」
「何を言っているんだ!」
シャールズはそれを望んではいた。しかし、実際息子に言われると不安だ。
「私なら顔を知られていないです……まあ、貴族で知っている人もいなくはないですが、現場に来ている人はおおむね知っている人はいないですよね」
田舎に住んでいるためあまり社交界には出ない。貴族同士の交流がないわけではないが、もっぱら、父親が連れて行くのは長女と次男だ。今でこそリシャールは体調に問題はないが、体が弱かった頃があるためだ。
「私、小柄ですし目立たないです」
「……いや、伸びたぞ……うん」
二年ほど前はさすがに小さかったが、現在は百六十は超えた。それで小さいとは言わないだろう。シャールズ自身が小柄な方ではある。
「父上、迷っていますよね」
シャールズはリシャールが心を読んだような言葉を発したことに苦笑した。
「そうだな。おまえは独りで龍園の方に行ったり、エトファリカに行ったり……したな」
リシャールの顔が真っ赤になった。子供じみた行動だと思えるためだ。
シャールズは息子の成長が頼もしかった。
「では、頼もう、ハンターに」
「……どこを回ってこいとは言わないが、民のため見回りをしてくるんだ」
「え?」
リシャールはうなずいた。つまり、積極的にかかわらなくてもいいが、状況は把握して来いというもの。都の状況を知ることが重要。
「そういえば、行ったことないよな……」
「ないですね」
「ルゥルちゃんが住んでいたことあるとは言うが……」
「貴族の坊ちゃんに耳引っ張られた話ですよね……」
「……地理を知っているとはいいがたいな」
リシャールを見ているとハンターがいるとは言え、単独行動はさせたくはない。ルゥルがいれば立ち止まって考える可能性は高い。エトファリカ行きにルゥルを付けておくと、適度な行動になる。
姉がいるとはいえ弟妹を見ることがあるからだろうか。
「聞いてみる」
結局、ルゥルと一緒に行くことになった。
●見回り隊
リシャールとルゥルはハンターとともにこっそり町の中にいる。
「少しでも平静さがみられるようにお願いします」
「何があるかわかりませんです。リシャールさんにくっついていくのです。耳だけは引っ張られたくないのです」
ルゥルはきっちり着ぐるみを着ている。
幼いころ異母兄や近所(かわからないけれど)の貴族に耳を引っ張られてからかわれたことがあった。現在はハンターのおかげで克服し、それはないと知っているが、嫌なものは嫌だ。
「……ルゥルさん、王都に住んでいたのは何歳ですか」
「四歳です」
「そのあと、その問題の人には会ったのですか?」
「……いいえ」
リシャールは気づいた。相手はたぶん、ルゥルを認識しないだろう。それに、もし、耳を引っ張っていたとしても、ある程度の年齢になった今やっていないだろう。
それでも、エルフと見たら耳を引っ張るようでは、人間としてどうだろうという気持ちでいっぱいだ。
「では、皆さんよろしくお願いします」
どこをどのように見回るか、ハンターと打ち合わせをする。
リプレイ本文
●挨拶
メイム(ka2290)は行動はできるだけ効率よく回りたいと考えていた。
「ルゥル(kz0210)とリシャールなら、転移門で近くまでは行けるんだよね」
どういうルートがいいか脳裏に浮かべる。
天央 観智(ka0896)は前もって情報にある王都の地図をマッピングセットに書き込んでおいた。突然、建物が変わるわけではないし、何かあったときに下調べしたことは重要になる。
「リシャールさん、ルゥルさん、お久しぶりです。今日は極力目立たないように努力しましょう」
リシャール・べリンガーがうなずいた。
エステル・ソル(ka3983)は初めての場所で気になるとともに、雰囲気の良くないこと等で状況は知っていても不安にもなる。
「わたくしも王都は初めてなのです。どうしてこんな騒動が起こっているのですか……」
ルゥルがそれを聞いて知っている情報を伝える。
エルバッハ・リオン(ka2434)はルゥルとリシャールにあいさつをする。
「ルゥルさん、王都は混乱しているようですから、絶対に勝手な行動しないでくださいね。下手をすれば大変なことになりますから」
ルゥルはこくこくとうなずく。
マリィア・バルデス(ka5848)はルゥルが耳を隠していた事情を知っているため、できれば安全そうなところを選びたかった。
「ということで、できる限り貴族を避け、なるべく穏便そうなところがいいと思うわ!」
しかし、リシャールが現状を知ることの重要とい意見でまとまる。
ルゥルは「貴族のお屋敷が見られる機会なのです」とわくわくと答える。
フィリテ・ノート(ka0810)は出発を促す。
「ルゥルさん、リシャールさん、さあ行こう。不穏な空気が充満しているし、状況は一刻一刻と変わるから」
フィリテは緊張する二人を見て笑顔を見せた。
●貴族の住むところ
「……さあ、ルゥル、これを食べて気を紛らわせるのよ」
マリィアがポイとマカロンをルゥルの口に放り込む。その頭を撫で、事情を話そうとしたが、ルゥルはキョトンとした後、道の隅っこに寄りしゃがみ込む。そして、ルゥルは咀嚼して飲み込んだ。
「ごちそうさまでした」
「……行儀がいいのね」
マリィアは彼女の様子を見て守ることに意識することにした。
「ルゥルさん、攻撃魔法は歪虚だけです。人相手の時は土壁で押しとどめるようにしてください」
エステルが注意を促す。
「ルゥルさんに一番重要なのは立ち位置です。前衛さんを補助できる場所かつ安全な場所、自分がどこにいて、周りに何があるかを意識しておくのが大事です」
ルゥルが激しくうなずく中、リシャールが「あっ」と小さく言う。
「一般論ですし、町の中だからまた違いますよ」
「そうそう、あたしもいるから安心しなよ」
観智とメイムが察して告げた。
「リシャールさんは独りじゃありません。何があっても私たちがきちんと守りますから、私たちも意識してくださればよいのです。熱くなりそうならひと呼吸と周囲を見る事を忘れないでください」
エステルに説明を受けて、リシャールは照れながらうなずいた。
「この辺りはまだ騒ぎはそれほど起こっていないみたいだけど……初めてだとそうなるよね」
フィリテが周囲を見渡すと同時に、ルゥルとリシャールも興味深そうに周囲を見ていたのだ。そのため、フィリテに言われるとそれぞれうなずく。
「目的は王都を見て回ることですよ……状況変化には気を付けましょう」
観智が周囲を見ながら注意を促す。
「あれは?」
エルバッハが細い路地に目を向ける。
一行がそちらに目を向けると、市民が貴族の人にカツアゲでもしているように見える。
「これはいけないことです!」
「止めて話を聞いたほうがいい、かもね」
メイムとエステルが先陣を切って進み、リシャールが続く。
追いかけるルゥルの側をエルバッハ、背後をマリィアが守る。フィリテと観智はそれ以外を注意しつつ向かう。
「ちょっとー」
メイムが声をかけると市民風の人が逃げた。
「駄目です!」
エステルが止めるが相手は止まらない。
同時に全力でリシャールが逃げる人を追いかけ、あっさり捕まえた。
「ほほー、神は正しい私に味方した!」
貴族ぽい人は瞬時に状況を理解したらしく、相手を見下すように言った。
「……離せよ! なんだよ、俺が何したってんだー」
リシャールが手を掴んだままその人を連れてくる。
「で、何がどうしてこうなっていたの?」
メイムが説明を促した。
「こいつは使用人で、家の物を盗んで逃げたのだ! それを指摘すると、『この屋敷がひどい扱いをすると吹聴する』と脅してきたのだ。その上『黙ってほしければカネを出せ』と」
「違う! 俺はやっていないのに、あんたが罪をかぶせて追い出すから『路頭に迷わない程度に上乗せして給金くれ』とは言った」
「盗人猛々しいとはこのことだ」
「俺はしていない。大体、あんたは使用人をなんだと思ってんだ! 二十四時間、休みもなく、衣食住は最低限保証されているけれど、出て行――」
「寛大な雇い主に何を言うのか! 衣食住を十分与えられ、給金も与え――」
説明どころか言い争いになり、ハンターたちはそれを静かに聞く。
「王都で暮らすのにどのくらいかかりましたっけ」
「田舎だと、自給自足もありますけれど」
観智とエルバッハが言い争いで話題になった点を考えている。
「衣食住と給金はここでわからないけど、不満をこれだけぶちまけるってことはどうなんだろう」
実家が商売をやっているフィリテは眉を寄せる。
メイムがリシャールをちらりと見ると、元使用人の手を離し、真剣な顔で考えているようだ。
ルゥルは双方の話を聞きながら、きぐるみの耳をなぜかつかんでいる。
「ルゥル、何をしているのかしら……」
マリィアがそちらに気を取られる。
「お前たちはハンターだな? こいつを捕まえて、詰め所に――」
「なんでだ! 大体、俺は何もしていないし、ブローチの時、同じ状況で追い出しただろう! 俺たちは違うといったのに」
過去にも同じ手順で使用人をクビにしたということらしい。
「仕方がない、これで何もなかったことにしてやる」
元雇い主は重そうな杖を振り上げると、素早く打ち据えようとした。
それより早くリシャールは前に出ると元使用人をかばってその杖を篭手で受けた。ハンターは様子を見つつも行動に移せる体勢になった。
「手をあげてはいけません! 双方の言い分で判断するとあなたに非があります。その上、打ち据えれば、あなたの名を下げます」
「子供はひっこめ。まともな教育を受けないとこうなるんだな」
「私は……あなたと同じ階級にいる人間だと思われたくはありません!」
リシャールは怒気を押し殺した声で告げた。
「教育とか関係ありません! 貴族の方は称号に胡坐をかいてはいけません。貴族だから尊敬されるのではありません。善い行いをするから尊敬されるのです。貴族の称号を貶める行為は慎むのです、名を落とします」
エステルが援護をする。
「そうですね、こういうときの仲裁とか調査ってグラズヘイムだとどこに出せばいいんでしたっけ」
観智が尋ねるとメイムが知識から引っ張り出し答える。
「だいたいさ、盗みをしたって因縁付けてクビにしても自分に返ってくるだけだよ?」
「そうよね。誰も雇われたいと思わなくなるし、貴族同士でも付き合いを嫌がる人出てくるんじゃないの?」
メイムとマリィアが元雇い主に疑問形ではあるが真理を突く言葉を述べる。
「今聞いた話だと、この人悪くないよ?」
「そうですね。これは元使用人が訴える場所に訴えていい案件でしょう」
フィリテとエルバッハの言葉に、元使用人がほっとした顔をしている。
「かばったことはいいけど……リシャールならどう答えを出しす? 暴力振ったということで、問題にもできるんじゃないの?」
メイムに問われ、リシャールは他のハンターの視線も受け目を見開く。
「現在のことを水に流し雇い直すか、突然のことへの慰謝料を含め給金を出すの二択だと思います。信用のおける第三者……教会とかソサエティの人とか、仲裁に入れる方がいいと思います」
リシャールの答えに元雇い主は怒りに満ちた顔をし、元使用人は涙をこぼしそうなほどだ。
「ルゥルも耳を抑えていないでって……ぷっ」
メイムは声をかけた後、後ろを向いて肩を震わせた。しぐさがおかしいのは気づいていたが、まさかのウサギ耳抑え。
「ルゥル、耳どうしたのかしら」
「なんとなくなのです」
「そう……お兄ちゃんも反省したのだからルゥルをいじめた子たちも反省できる年頃になっている気がするけれど……」
マリィアはルゥルのしぐさに萌えつつも、現実をつぶやく。
●城壁を越えたい人
現在、集まった民衆の足止めがあるのは第六城壁である。状況を見る為、外に一行は向かう。
ここも王都の一部とはいえ、整っている城壁の中と比べると違う世界に見える。
「人がいる方を見てきた方がいいのですよね」
「実際、それは必要かもしれません。しかし、状況も知らず行くことは愚行でもありますよ?」
エルバッハが淡々とリシャールに告げる。
「必要なら【式符】で偵察もできます」
「……いえ。それでも、こちらを見ることも意義があると思います」
「そうですね」
リシャールの判断をエルバッハは受け入れる。何か所かで、一触即発の雰囲気が漂っている。
「町は城を中心にエクラ教の総本山、貴族の住まい、一般の人たちが住んでいるところと抜けてきて、この辺りは本来は城壁の外。何らかの理由で集まった人たちの住む場所……よって雑多だよ」
メイムが解説をした。建物一つ見てもわかるバラバラだということが。
「情報では知っていても、実際見るとよくわかりますね」
観智が町の様子を見つめる。
フィリテは城門がある方向を見つめた。大きな音が響く。最初は歓声だったが、悲鳴や怒声も聞こえる
「……何かあったみたいよね」
ここからは分からないが、大きなうねりが起こっていた。
ルゥルがまたきぐるみの耳をつまんでいる。
「大丈夫よ、私たちがすることをしましょうね」
マリィアがルゥルの頭を撫でる。
「リシャールさん、行きましょう。色々と知るために」
エステルが移動を促した。
城壁に殺到する人と止める人のけんかに見える。
「み、みぎゃあああああああ」
ルゥルが声をあげる。マリィアが彼女をかばうように拳銃を抜く。人に向かって撃つというより抑止力としてだ。
「ふりぃぃず!」
メイムがスキルの【響】を使う。城壁に向かう側にいる先端の人物に向かって放つ。しかし、鋭い声に全体が止まる。
「駄目だよ、何でもめているかわからないけれど!」
フィリテは杖を振り上げて、集団に訴える。必要があれば突撃をかける。
「けんかはいけません!」
エステルはいつでもスキルを使える状況にし、双方に割って入る。
エルバッハと観智はルゥルとリシャールに何かあったら動ける位置にとどまり状況を見届ける。
「こんな横暴は許されないだろ」
「力づくでしてどうすんだよ」
人々は声を上げ、手も上がりそうだ。
「殴り合いでは困っていることは伝わりません。伝わらなければ変わりません。望みがあるなら言葉を交わすべきです」
エステルが双方を見る。
「中の奴らも王女をないがしろにする貴族と同類だ」
「暴力は何も変えない」
エステルが魔法を使おうしたとき「違います!」とリシャールの声が響いた。
その背にルゥルがくっついている。
「私など何も力があるわけではありません! でも、少しでも、領内が良くなるよう、父のように……国が良くなるように王女様の下で努力していて行きたいのです」
リシャールはルゥルのぬくもりを感じ、力を出す。
「それはそうと! 話し合うのはいいけれど、物理で訴えるのは駄目よ。ああっ、怪我している、手当てするよ。誰か、お医者さん呼んできて!」
フィリテができるだけ大きな声で、そして、平常の明るい声音で告げる。
けんかしていた人たちではなく、どうしていいかわからず見ていた人の中に動きがみられた。
「腹立つのはわかるよー。でもね、ケガしたり、ケガさせたら、結局困るの自分たちなのよ? それに、こんなことしても王女様だって喜ばないわよ」
フィリテはため息を漏らした。
「そうですね、けんかしていても前に進む訳ではありません。王女様のために地域を少しでも印象も良いでしょう。それに貴族に腹を立てるなら、皆さんの地元からどうにかすると言うのがいいでしょう」
観智がさりげなく現状を諭す。そういわれると静かになる人たち。
「王女のことは国にかかわることだからもめるのはわかります。ここで騒ぐと逆に足を引っ張ることになるのですよ」
「そうね。大公様の印象で不信だけで色々怒りを募らせるのも問題ね」
「町の人たちも色々な考えがあるでしょうし、どうにかしたいとは思っているでしょう」
「それを外からこうするとね……。そもそも、貴族だっていろいろだし」
エルバッハとマリィアが語りかけた。
「守りたいなら、まず見守る。それでも難しかったら声は上げる。手は上げちゃだめだよ」
メイムがきっぱり言った。
荒れていた人たちは争うことはやめた。表情は憮然としたままだが、それぞれ胸に怒りは納めたようだった。
●学んだこと
リシャールは怪我した人に応急手当をしつつ、表情をなくす。
「リシャールさん、代わりましょうか」
観智が声をかけると首を横に振った。
「私はもっと色々学ばないといけないということはわかりました」
「すごくいいことがわかりましたね。僕だって日々知ることがありますよ。だから、その学ぶべきと気づいたことは重要です」
観智の言葉にリシャールがうなずいた。
「材料はある? 何か作る? 炊き出しというか、みんなで温かいもの食べたら、少し気分も落ち着くよね?」
手当をしつつ、フィリテは声をかける。争うなら、話し合いで。おなかを満たしつつ話せば穏やかに話せるかもしれない。
「そうなのです。おいしいご飯と一緒に話すのもいいことです」
エステルはフィリテの話を聞き、落ち着いた人たちを見渡す。おなかが減ると人はいらいらする。
「ルゥルも頑張ったわね」
「……リシャールさんはいい人です!」
「……そうね。リシャールもルゥルの気持ちがわかったから立ち向かえたのよ」
マリィアは気づいていた、民衆の前に出たときのリシャールが震えていることに。ルゥルが背中にひっついたことは、味方がいると彼を奮い立たせるのに十分だったのだ。
メイムは【ファミリアアイズ】で、エルバッハは【式符】で周囲を監視する。
「この辺りは大丈夫そうだね」
「ただ、あちらから人が流れてきています」
「……けが人いるぽい?」
「……そうですね」
何かが起こっているが、このあたりは問題なさそうだ。
リシャールとルゥルを送り届けるまで、気が抜けないのは事実だった。
メイム(ka2290)は行動はできるだけ効率よく回りたいと考えていた。
「ルゥル(kz0210)とリシャールなら、転移門で近くまでは行けるんだよね」
どういうルートがいいか脳裏に浮かべる。
天央 観智(ka0896)は前もって情報にある王都の地図をマッピングセットに書き込んでおいた。突然、建物が変わるわけではないし、何かあったときに下調べしたことは重要になる。
「リシャールさん、ルゥルさん、お久しぶりです。今日は極力目立たないように努力しましょう」
リシャール・べリンガーがうなずいた。
エステル・ソル(ka3983)は初めての場所で気になるとともに、雰囲気の良くないこと等で状況は知っていても不安にもなる。
「わたくしも王都は初めてなのです。どうしてこんな騒動が起こっているのですか……」
ルゥルがそれを聞いて知っている情報を伝える。
エルバッハ・リオン(ka2434)はルゥルとリシャールにあいさつをする。
「ルゥルさん、王都は混乱しているようですから、絶対に勝手な行動しないでくださいね。下手をすれば大変なことになりますから」
ルゥルはこくこくとうなずく。
マリィア・バルデス(ka5848)はルゥルが耳を隠していた事情を知っているため、できれば安全そうなところを選びたかった。
「ということで、できる限り貴族を避け、なるべく穏便そうなところがいいと思うわ!」
しかし、リシャールが現状を知ることの重要とい意見でまとまる。
ルゥルは「貴族のお屋敷が見られる機会なのです」とわくわくと答える。
フィリテ・ノート(ka0810)は出発を促す。
「ルゥルさん、リシャールさん、さあ行こう。不穏な空気が充満しているし、状況は一刻一刻と変わるから」
フィリテは緊張する二人を見て笑顔を見せた。
●貴族の住むところ
「……さあ、ルゥル、これを食べて気を紛らわせるのよ」
マリィアがポイとマカロンをルゥルの口に放り込む。その頭を撫で、事情を話そうとしたが、ルゥルはキョトンとした後、道の隅っこに寄りしゃがみ込む。そして、ルゥルは咀嚼して飲み込んだ。
「ごちそうさまでした」
「……行儀がいいのね」
マリィアは彼女の様子を見て守ることに意識することにした。
「ルゥルさん、攻撃魔法は歪虚だけです。人相手の時は土壁で押しとどめるようにしてください」
エステルが注意を促す。
「ルゥルさんに一番重要なのは立ち位置です。前衛さんを補助できる場所かつ安全な場所、自分がどこにいて、周りに何があるかを意識しておくのが大事です」
ルゥルが激しくうなずく中、リシャールが「あっ」と小さく言う。
「一般論ですし、町の中だからまた違いますよ」
「そうそう、あたしもいるから安心しなよ」
観智とメイムが察して告げた。
「リシャールさんは独りじゃありません。何があっても私たちがきちんと守りますから、私たちも意識してくださればよいのです。熱くなりそうならひと呼吸と周囲を見る事を忘れないでください」
エステルに説明を受けて、リシャールは照れながらうなずいた。
「この辺りはまだ騒ぎはそれほど起こっていないみたいだけど……初めてだとそうなるよね」
フィリテが周囲を見渡すと同時に、ルゥルとリシャールも興味深そうに周囲を見ていたのだ。そのため、フィリテに言われるとそれぞれうなずく。
「目的は王都を見て回ることですよ……状況変化には気を付けましょう」
観智が周囲を見ながら注意を促す。
「あれは?」
エルバッハが細い路地に目を向ける。
一行がそちらに目を向けると、市民が貴族の人にカツアゲでもしているように見える。
「これはいけないことです!」
「止めて話を聞いたほうがいい、かもね」
メイムとエステルが先陣を切って進み、リシャールが続く。
追いかけるルゥルの側をエルバッハ、背後をマリィアが守る。フィリテと観智はそれ以外を注意しつつ向かう。
「ちょっとー」
メイムが声をかけると市民風の人が逃げた。
「駄目です!」
エステルが止めるが相手は止まらない。
同時に全力でリシャールが逃げる人を追いかけ、あっさり捕まえた。
「ほほー、神は正しい私に味方した!」
貴族ぽい人は瞬時に状況を理解したらしく、相手を見下すように言った。
「……離せよ! なんだよ、俺が何したってんだー」
リシャールが手を掴んだままその人を連れてくる。
「で、何がどうしてこうなっていたの?」
メイムが説明を促した。
「こいつは使用人で、家の物を盗んで逃げたのだ! それを指摘すると、『この屋敷がひどい扱いをすると吹聴する』と脅してきたのだ。その上『黙ってほしければカネを出せ』と」
「違う! 俺はやっていないのに、あんたが罪をかぶせて追い出すから『路頭に迷わない程度に上乗せして給金くれ』とは言った」
「盗人猛々しいとはこのことだ」
「俺はしていない。大体、あんたは使用人をなんだと思ってんだ! 二十四時間、休みもなく、衣食住は最低限保証されているけれど、出て行――」
「寛大な雇い主に何を言うのか! 衣食住を十分与えられ、給金も与え――」
説明どころか言い争いになり、ハンターたちはそれを静かに聞く。
「王都で暮らすのにどのくらいかかりましたっけ」
「田舎だと、自給自足もありますけれど」
観智とエルバッハが言い争いで話題になった点を考えている。
「衣食住と給金はここでわからないけど、不満をこれだけぶちまけるってことはどうなんだろう」
実家が商売をやっているフィリテは眉を寄せる。
メイムがリシャールをちらりと見ると、元使用人の手を離し、真剣な顔で考えているようだ。
ルゥルは双方の話を聞きながら、きぐるみの耳をなぜかつかんでいる。
「ルゥル、何をしているのかしら……」
マリィアがそちらに気を取られる。
「お前たちはハンターだな? こいつを捕まえて、詰め所に――」
「なんでだ! 大体、俺は何もしていないし、ブローチの時、同じ状況で追い出しただろう! 俺たちは違うといったのに」
過去にも同じ手順で使用人をクビにしたということらしい。
「仕方がない、これで何もなかったことにしてやる」
元雇い主は重そうな杖を振り上げると、素早く打ち据えようとした。
それより早くリシャールは前に出ると元使用人をかばってその杖を篭手で受けた。ハンターは様子を見つつも行動に移せる体勢になった。
「手をあげてはいけません! 双方の言い分で判断するとあなたに非があります。その上、打ち据えれば、あなたの名を下げます」
「子供はひっこめ。まともな教育を受けないとこうなるんだな」
「私は……あなたと同じ階級にいる人間だと思われたくはありません!」
リシャールは怒気を押し殺した声で告げた。
「教育とか関係ありません! 貴族の方は称号に胡坐をかいてはいけません。貴族だから尊敬されるのではありません。善い行いをするから尊敬されるのです。貴族の称号を貶める行為は慎むのです、名を落とします」
エステルが援護をする。
「そうですね、こういうときの仲裁とか調査ってグラズヘイムだとどこに出せばいいんでしたっけ」
観智が尋ねるとメイムが知識から引っ張り出し答える。
「だいたいさ、盗みをしたって因縁付けてクビにしても自分に返ってくるだけだよ?」
「そうよね。誰も雇われたいと思わなくなるし、貴族同士でも付き合いを嫌がる人出てくるんじゃないの?」
メイムとマリィアが元雇い主に疑問形ではあるが真理を突く言葉を述べる。
「今聞いた話だと、この人悪くないよ?」
「そうですね。これは元使用人が訴える場所に訴えていい案件でしょう」
フィリテとエルバッハの言葉に、元使用人がほっとした顔をしている。
「かばったことはいいけど……リシャールならどう答えを出しす? 暴力振ったということで、問題にもできるんじゃないの?」
メイムに問われ、リシャールは他のハンターの視線も受け目を見開く。
「現在のことを水に流し雇い直すか、突然のことへの慰謝料を含め給金を出すの二択だと思います。信用のおける第三者……教会とかソサエティの人とか、仲裁に入れる方がいいと思います」
リシャールの答えに元雇い主は怒りに満ちた顔をし、元使用人は涙をこぼしそうなほどだ。
「ルゥルも耳を抑えていないでって……ぷっ」
メイムは声をかけた後、後ろを向いて肩を震わせた。しぐさがおかしいのは気づいていたが、まさかのウサギ耳抑え。
「ルゥル、耳どうしたのかしら」
「なんとなくなのです」
「そう……お兄ちゃんも反省したのだからルゥルをいじめた子たちも反省できる年頃になっている気がするけれど……」
マリィアはルゥルのしぐさに萌えつつも、現実をつぶやく。
●城壁を越えたい人
現在、集まった民衆の足止めがあるのは第六城壁である。状況を見る為、外に一行は向かう。
ここも王都の一部とはいえ、整っている城壁の中と比べると違う世界に見える。
「人がいる方を見てきた方がいいのですよね」
「実際、それは必要かもしれません。しかし、状況も知らず行くことは愚行でもありますよ?」
エルバッハが淡々とリシャールに告げる。
「必要なら【式符】で偵察もできます」
「……いえ。それでも、こちらを見ることも意義があると思います」
「そうですね」
リシャールの判断をエルバッハは受け入れる。何か所かで、一触即発の雰囲気が漂っている。
「町は城を中心にエクラ教の総本山、貴族の住まい、一般の人たちが住んでいるところと抜けてきて、この辺りは本来は城壁の外。何らかの理由で集まった人たちの住む場所……よって雑多だよ」
メイムが解説をした。建物一つ見てもわかるバラバラだということが。
「情報では知っていても、実際見るとよくわかりますね」
観智が町の様子を見つめる。
フィリテは城門がある方向を見つめた。大きな音が響く。最初は歓声だったが、悲鳴や怒声も聞こえる
「……何かあったみたいよね」
ここからは分からないが、大きなうねりが起こっていた。
ルゥルがまたきぐるみの耳をつまんでいる。
「大丈夫よ、私たちがすることをしましょうね」
マリィアがルゥルの頭を撫でる。
「リシャールさん、行きましょう。色々と知るために」
エステルが移動を促した。
城壁に殺到する人と止める人のけんかに見える。
「み、みぎゃあああああああ」
ルゥルが声をあげる。マリィアが彼女をかばうように拳銃を抜く。人に向かって撃つというより抑止力としてだ。
「ふりぃぃず!」
メイムがスキルの【響】を使う。城壁に向かう側にいる先端の人物に向かって放つ。しかし、鋭い声に全体が止まる。
「駄目だよ、何でもめているかわからないけれど!」
フィリテは杖を振り上げて、集団に訴える。必要があれば突撃をかける。
「けんかはいけません!」
エステルはいつでもスキルを使える状況にし、双方に割って入る。
エルバッハと観智はルゥルとリシャールに何かあったら動ける位置にとどまり状況を見届ける。
「こんな横暴は許されないだろ」
「力づくでしてどうすんだよ」
人々は声を上げ、手も上がりそうだ。
「殴り合いでは困っていることは伝わりません。伝わらなければ変わりません。望みがあるなら言葉を交わすべきです」
エステルが双方を見る。
「中の奴らも王女をないがしろにする貴族と同類だ」
「暴力は何も変えない」
エステルが魔法を使おうしたとき「違います!」とリシャールの声が響いた。
その背にルゥルがくっついている。
「私など何も力があるわけではありません! でも、少しでも、領内が良くなるよう、父のように……国が良くなるように王女様の下で努力していて行きたいのです」
リシャールはルゥルのぬくもりを感じ、力を出す。
「それはそうと! 話し合うのはいいけれど、物理で訴えるのは駄目よ。ああっ、怪我している、手当てするよ。誰か、お医者さん呼んできて!」
フィリテができるだけ大きな声で、そして、平常の明るい声音で告げる。
けんかしていた人たちではなく、どうしていいかわからず見ていた人の中に動きがみられた。
「腹立つのはわかるよー。でもね、ケガしたり、ケガさせたら、結局困るの自分たちなのよ? それに、こんなことしても王女様だって喜ばないわよ」
フィリテはため息を漏らした。
「そうですね、けんかしていても前に進む訳ではありません。王女様のために地域を少しでも印象も良いでしょう。それに貴族に腹を立てるなら、皆さんの地元からどうにかすると言うのがいいでしょう」
観智がさりげなく現状を諭す。そういわれると静かになる人たち。
「王女のことは国にかかわることだからもめるのはわかります。ここで騒ぐと逆に足を引っ張ることになるのですよ」
「そうね。大公様の印象で不信だけで色々怒りを募らせるのも問題ね」
「町の人たちも色々な考えがあるでしょうし、どうにかしたいとは思っているでしょう」
「それを外からこうするとね……。そもそも、貴族だっていろいろだし」
エルバッハとマリィアが語りかけた。
「守りたいなら、まず見守る。それでも難しかったら声は上げる。手は上げちゃだめだよ」
メイムがきっぱり言った。
荒れていた人たちは争うことはやめた。表情は憮然としたままだが、それぞれ胸に怒りは納めたようだった。
●学んだこと
リシャールは怪我した人に応急手当をしつつ、表情をなくす。
「リシャールさん、代わりましょうか」
観智が声をかけると首を横に振った。
「私はもっと色々学ばないといけないということはわかりました」
「すごくいいことがわかりましたね。僕だって日々知ることがありますよ。だから、その学ぶべきと気づいたことは重要です」
観智の言葉にリシャールがうなずいた。
「材料はある? 何か作る? 炊き出しというか、みんなで温かいもの食べたら、少し気分も落ち着くよね?」
手当をしつつ、フィリテは声をかける。争うなら、話し合いで。おなかを満たしつつ話せば穏やかに話せるかもしれない。
「そうなのです。おいしいご飯と一緒に話すのもいいことです」
エステルはフィリテの話を聞き、落ち着いた人たちを見渡す。おなかが減ると人はいらいらする。
「ルゥルも頑張ったわね」
「……リシャールさんはいい人です!」
「……そうね。リシャールもルゥルの気持ちがわかったから立ち向かえたのよ」
マリィアは気づいていた、民衆の前に出たときのリシャールが震えていることに。ルゥルが背中にひっついたことは、味方がいると彼を奮い立たせるのに十分だったのだ。
メイムは【ファミリアアイズ】で、エルバッハは【式符】で周囲を監視する。
「この辺りは大丈夫そうだね」
「ただ、あちらから人が流れてきています」
「……けが人いるぽい?」
「……そうですね」
何かが起こっているが、このあたりは問題なさそうだ。
リシャールとルゥルを送り届けるまで、気が抜けないのは事実だった。
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【相談】どこに、いつ行く? エステル・ソル(ka3983) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2018/06/06 21:44:50 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/06/04 02:20:13 |