愉快な盗賊団をどうにかしよう

マスター:笹村工事

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/12/22 19:00
完成日
2014/12/26 10:09

みんなの思い出

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オープニング

●アモレア盗賊団
「団長、こないだそこの魚屋で掃除してたんスけど」
「ねぇ団長、本屋の在庫運びの報酬が……」
「団長ってばー」

 同盟領、ヴァリオスの大衆商店区。そこはヴァリオスの中でも魔術師が特に多く行き交う、雑多で賑やかな区域。
 大衆商店区の小さな家で、数名の男女が、何か考え事をしている男をつっついていた。
 団長、と呼ばれたその男は名をビブリオ・ボッコという。今年30歳、独身。
 そんな彼が率いているのは十数名からなる『アモレア盗賊団』
 身寄りの無い者を拾い集めた家族のような組織だ。
 突然立ち上がり、その場の面々をぐるりと見回すと、よーしお前らよく聞けよと口を開いた。

「いいか、明日からこのアモレア盗賊団、本来の目的のため行動開始だ!」

 小さな部屋に響く声。そして数秒間の静寂。
「本来の目的ってなんスか」
「なんかすごそうですね!」
 細身の男が、少々呆れ顔で部屋に入ってきた。彼はビブリオの弟にして唯一の肉親、ジュール・ボッコ。
 副団長であり、団の頭脳。ジュールは忘れん坊な団員たちに、
「今は便利屋をしてるけど、それはとある人の大嵐によって壊滅した組織を立て直すための基盤作り、って話したでしょう」
 そう説明し、思い出させてやる。
「俺としては、もうあの人が起こす大嵐は御免なんだけどね……」
「嵐程度ではこのビブリオの愛は止められん!! 改めて言うぞ。お前らもう忘れんなよ。絶対だぞ。アモレア盗賊団の真の目的は」
 再度ぐるりと面々を見回し、宣言する。
「魔術師協会本部を壊滅せしめ、会長職に縛られた我が愛しのジルダ・アマートを救出することである!」

 かくして、お馬鹿団長率いる盗賊団が、無謀に元気良く動き出した。

●昔話
「お疲れ様です」
 自由都市同盟、ヴァリオスの魔術師協会本部、会長室にて、会長ジルダ・アマート(kz0006)と広報部長ドメニコ・カファロ(kz0017)は打ち合わせを終え、書類を揃えて片付ける。
 茶を飲みながら、ジルダが思い出して言った。
「そういえば先日ジェオルジまで出向きました」
「村長祭かね」
「ご明察。美味しいお茶を見つけまして、ここでも飲めるよう注文しました。お楽しみに」
「ほうほう。ラウロにも教えてやるか。いつ頃届くのかね」
「それが、少し遅れると店から連絡を受けていて……気長にお待ちくださいな」
 それを聞いて、ハッハッハ、とドメニコが笑い出した。何事かと怪訝な顔をするジルダ。
「誘拐された先のアジトで気付くや否や、嵐を起こしめちゃくちゃにした怒りん坊が、こんなふうに話す日が来るとは。感慨深い!」
 ドメニコはジルダを会長に推した人物であり、ジルダに魔術を教え、鍛えた師でもある。そんな人物なのでドメニコはジルダの思い出話には事欠かない。
「ちょっと、先生、その話はやめてください」
 思い出したくもない! と珍しく顰めっ面になったのを見て、すまんすまんと謝るドメニコ。

 ジルダは昔、彼女に懸想をした少年とその一味によって誘拐されたことがあるのだ。
 気絶させられ、誘拐された先で目を覚ましたジルダは、怒り心頭で大嵐を巻き起こした。
 その嵐はヴァリオス全体にまで広がってアジトだけでなく街中をも荒らす。
 『魔術師協会の会長を怒らせると同盟中に嵐が起こる』という魔術師の間では有名な話も、この出来事に由来するものだ。
「あの少年たちももう良い大人だろうが、どこで何をしているのやら」
「知りたくもありません」
 忘れていたかったのに、とツンケンし始めたジルダ。
 話を変えよう、と広報室で作られたクッキーを勧めるドメニコ。
 内心、ヴァリオスを冬の嵐から守るためにも、彼らから挑戦状が届いたことはもうしばらく内緒にしておこうと嘆息するのであった。

●盗賊団を捕まえよう
 魔術師協会本部会長職に縛られたジルダ・アマートを救出する!
 そんな、あさっての方向に闘志を燃やすアモレア盗賊団は、その野望を実現すべく動いていた。
 大胆かつ微妙にひっそりと。
 その活動は既に実を結び、未遂も含め、幾度か協会へと卸される物資の強奪に成功している。
 お茶の葉っぱやら羽ペンやら糊や封筒などなど、日常雑貨をこもごもと。
 そして今日もまた、彼らは恐るべき強奪を実行しようとしていた。
 
「来たっすよ。この通りを進んでるんだから間違いないっす」
「我らに見つかったのが運の尽き。少女二人とはいえ容赦はせぬのだ」
「でも怪我しちゃうと危ないから気を付けて襲うぞ」

 魔術師協会本部へと続く、とある路地。建物の陰に隠れたアモレア盗賊団三人組は、協会本部へと向かう馬車を見つけ気合を入れる。
 ヴァリオス内のとある店が協会本部へ定期的に商品を卸している事を、偶々偶然運良く、便利屋をしている最中に耳にした彼らはここで待ち伏せをしていたのだ。

 もちろん罠である。意図的に様々な場所で流された話に、アモレア盗賊団三人組は引っかかっていた。

 何度か繰り返されるアモレア盗賊団襲撃の中、被害その物はしょっぱかったものの、そのまま放置することはヴァリオス商人の矜持に懸け出来ない。
 それ以上に気掛かりなのは、魔術師協会本部への品物を強奪された事だ。
 それを協会本部会長職である、かのジルダ・アマートに知られた時の反応を商人達は危惧していた。
 彼女が基本的には温厚な性格であることは商人達も知る所ではあったが、万が一にも今回の騒動が原因で怒りの拳を振り下ろしでもされては周囲が大迷惑である。
 ジルダアマート大嵐事件は、ヴァリオス商人達の脳裏に深く深く刻まれている。主に被害額という形で。
 だからこそ、それを防ぐべくアモレア盗賊団捕縛を周囲に求め、そしてそれに応じた人物や団体がハンターの助けも借り動いていた。
 そうとは知らない盗賊団三人組は意気揚々と馬車の前に立ちはだかると、御者をしていた双子の少女達に見得を切る。

「止まるっすよ! ふり~ず!」
「我らはジルダ・アマートを解放するアモレア盗賊団」
「大義の為に荷を襲う。とりあえず怪我をすると危ないから抵抗は止めろ」

 その呼び掛けは御者の双子少女達だけではなく、馬車の荷台に隠れていたアナタ達にも聞こえています。
 これに、アモレア盗賊団捕縛を頼まれたアナタ達は――?

リプレイ本文

●盗賊団をどうにかしよう
 積荷強奪の為に現れたアモーレ盗賊団は、荷馬車から現れたハンター達にあっさり囲まれていた。

「やれやれ、傍迷惑な人達ですね……盗賊討伐が出来ると気合を入れていましたのに。
 この滾る情熱はどこにぶつければ良いのでしょう」
「ひぃっ。このメイド、ノリノリで殺る気満々だよ」
 依頼人が用意した捕縛用ロープを握りしめながら背後で威圧感を漲らせるサフィラ(ka2521)に、盗賊団はガクブル。
 それにサフィラは続ける。
「お望みなら叶えましょうか?
 小便は済ませましたか? 神様にお祈りは? 部屋のスミでガタガタふるえて命ごいをする心の準備はOK?」 
「生き生きしてる!」
「お前ら逃げろ、ここは俺が!」
「短い一生だった!」
「いや、殺さへんって」
 脱力感を味わいながら、風花・メイフィールド(ka2848)はツッコミを入れる。
 隠れていた荷馬車から出る際、武器を掲げ颯爽と現れた彼女であったが、相手が相手だったので戦闘よりもツッコミスキルを発揮していた。
「抵抗して怪我するんはあんたらやで。せやから大人しくし」
 これに盗賊団達は言い返す。ぷるぷる震えながらではあったが。
「団長の為にそんな訳にはいかない!」 
「だから積荷を奪うのだ!」
「でも怪我は危ないから抵抗は止めろ! 序でに俺達も怪我のない方向で!」
 これに返したのは慈姑 ぽえむ(ka3243)である。
「まぁまぁ……怪我をさせたくないのは私たちも同じだから……お話ししましょ?」
 ルーエル・ゼクシディア(ka2473)は続けた。
「そうだね。貴方達は困った人達みたいだけど根っから悪い人という訳でもないみたいだし。
 今、団長と貴方達は言ったけれど、その人の命令で貴方達は動いているのかな?」
 これに盗賊団達は返す。
「命令じゃないぞ。ビブリオ団長の為に動いてるんだ」
「団長は良い人なんだぞ。一人ぼっちで身寄りのなかった俺達の面倒見てくれてんだ」
「なのに団長が好きなジルダ姐さんは魔術師協会に自由を奪われてんだ」
「「「だから俺達が助けないと!」」」
 一気に論理が飛躍する盗賊団。この辺りが原因のようである。
 これを静かに聞いていた天央 観智(ka0896)は、諭すように言う。
「自由を奪われている、ですか。自由は大事だと思いますから、僕もそれを束縛されている人が居るのなら尊重したいです。
 ですが、ジルダさんは本当に束縛されているのですか?」
 これにレシュ・フィラー(ka3600)は続ける。
「そもそもの話。お前達が団長と呼ぶビブリオの主な目的は盗みなのか? 違うだろう。
 彼が欲しいのはジルダの心の筈だ。なら、もっと別のやり方もあるだろう。
 どう思うんだ、お前達は?」
 話を振られた盗賊団は返した。
「団長が好きで泥棒なんかするもんか」
「団長を悪く言うな」
「それにジルダ姐さんも団長の事が好きなんだぞ」
 完全に勘違いした事を言う盗賊団。この思い込みと勘違いの激しさ……それが今回の事件の原因だと、盗賊団との話し合いの中でハンター達は理解する。
 だからこそ、彼らはそれを解きほぐすように説得を続けた。
 ルーエルはやわらかな口調で言う。
「君達が団長を慕って行動したのはよく分かったよ。でもね、君たちのやり方だと、この街道を使う人達が困ってしまう。
 事件が広まると、自然と街道の利用者は減っていくし、物資の流通がままならなくなる。
 そうすると君たちの知らない所で、物が届かなくて困る人達が出てくるんだ。商人さん達だって、生活が懸かってるしね」
 これに盗賊団達は返した。
「それなら心配無用!」
「そんな事もあろうかと」
「我らに強奪されて困った相手に渡す為のお金は持って来ている!」
「その為に団長も寝ずに働いて頑張ってるんだぞ」
「だから魔術師協会に卸す商品を渡すのだ」
「引き換えにこのお金を渡そう!」
「それ、盗賊やのうて押し買いやろ!」
 良いタイミングで突っ込みを入れる風花。そして続ける。
「ちょっとあんたらそこに座り! 正座! 説教したる!」
 これに盗賊団は返す。
「なぜ!」
「横暴だ!」
「足が痛くなる!」
 これに表情は変えず、しかしノリノリな口調で一気に返すサフィラ。
「そうですか仕方ありませんね。では力づくで地面とキスでもさせてあげましょう」
「怖い! このメイド!」
「ファーストキスが地面となんて嫌だ!」
「暴力では決して争いは無くならないんだぞ!」
 なおも何か言おうとする盗賊団に、風花はハッキリと言った。
「ええからごちゃごちゃ言わんと正座し!」
「「「はい!」」」
 涙目で街道に正座する盗賊団。それに風花は説教するように言った。
「あんたらの話は分かった。恩人のために働くのは悪うない。
 せやけど他人様に迷惑を掛けるのは人の義にあらずや!
 特に相手の事も大して知らんで勝手な思い込みで行動するんは迷惑極まりないやろ!」
 これにぽえむが続けた。
「そうですよ。さっきから聞いてましたけれど、肝心のジルダさんの気持ちを貴方達は知っているんですか?」
 しかし、盗賊団はこう返す。
「知らない」
「でも団長は言ってたぞ」
「一目見た瞬間から運命を感じたって」
 この答えに脱力感を感じながらも、ぽえむは根気良く諭そうとする。
「それはビブリオさんの気持ちであって、ジルダさんの気持ちじゃないでしょう?
 ジルダさんの気持ちを考えてあげないと。それとも、ジルダさんの気持ちはどうでも良いの?」
 これに盗賊団は即座に反論。
「そんな事ないぞ!」
「団長の大事な人なら俺達にとっても大事な人だ!」
「その為に俺達は動いてるんだ!」
 懸命に言う盗賊団に、ぽえむは苦笑するように息をつくとやわらかな声で言った。
「あなた達がジルダさんを大切に思っている気持ちは分かったわ……でも、彼女を解放してどうするの? 一緒に居て欲しいの?」
 これに盗賊団の一人は返す。
「団長と一緒にいて欲しいけど、その前に解放してあげるんだ」
「解放、ですか」
 観智は盗賊団の言葉に思慮深く考えると、問いを投げ掛ける。
「ジルダさんが魔術師協会の会長職に就いている、と言うのは事実です。
 ですが、それが縛られているという事なのでしょうか?
 ジルダさんは何をどう思って、会長職に就いているのでしょうね?
 貴方達は、その気持ちを、何処迄が本人の意思で、何処からが他人の押し付けであるか?
 それを考えられていますか?」
 ジルダの意思を尊重する問い掛け。
 この時、もし盗賊団がジルダの事を何とも思っていなかったのなら、彼らは思い悩まなかっただろう。
 けれど彼らは答えるべき言葉を口にしようと思い、悩む。
 そんな彼らに苦笑しながら、観智は続けた。
「何ものかに縛られちゃったら不自由ですよね? それが、どんな事であれ。
 けれどそれと同じように、誰かが何ものかを縛っちゃったら、それは……自由ではなく、自分勝手ですよね?
 貴方達のしている行為は、これではありませんか?」
 答えは返って来なかった。ぽえむは言葉を重ねる。
「ジルダさんは、自分の仕事を放りだす、そんな無責任な人なのかしら? 違うでしょ……?」
 ぽえむはしゃがみ、正座をさせられている盗賊団に目線を合わせながら続ける。
「貴方達が大好きなビブリオさんが、そんな人を好きになるとは思えないし。
 それに会長をしている人が急に居なくなったら、周りも困ると思うの。
 協会が壊滅したら多くの人が路頭に迷うことになるかもだし。再建も大変。そんなことしたくないでしょ?」
 ジルダ本人の意思と、周囲への迷惑。それを語り掛けるハンター達に、盗賊団は少しずつ俯き始める。
 そんな彼らに風花は言う。
「何か大切にしたいもんがあるなら、奪ったり争ったりせんで皆でそれを守る事を考えるべきや。
 それに今みたいに強盗や盗賊を続けてたら、いつかほんまに仲間が死ぬんや。
 分かっとるんか、その事」
 これに盗賊団は半泣きで返した。
「そんなのは嫌だ」
「一人ぼっちは嫌だ」
「団長も皆も居なくなって欲しくない」
 ハッキリとした口調で想いを告げる盗賊団。
 それにレシュは返す。
「自分以外の誰かの事も考えられるんだな。だったら、分かるだろう。
 大嵐事件を知っているだろう? あれと同じモノを引き起こしかねない様な行動を取っているという自覚はあるか? あれこそ、怪我人が大勢出るぞ。
 あれをしたのがジルダだというのなら、彼女にとってそれだけの理由があったという事だ。
 なのに愛する人の為に、愛する人が怒るような事をする。矛盾していると思わないか?
 そういうことを、お前たちはビブリオにさせたいのか?」
 この問い掛けに、盗賊団達はすぐには言葉を返せない。
 けれど、彼らにとって大好きで大事なビブリオのことを想って、最後にはこう答えた。
「団長は本当にジルダの姐さんの事が大好きなんだ」
「だから団長の想いが叶って欲しい」
「でも、俺達のしてる事で団長に迷惑が掛かるなら」
「もう、こんな事は俺達は止める」
「でも、これ俺達が勝手にやってる事なんだよう」
「だから団長関係ないんだ」
「「「何かするなら、俺達だけにしてくれよう!」」」
 ビブリオを庇うように言う盗賊団三人組。
 この場にビブリオが居たら泣きながら抱きしめそうなシーンであったが、この場に居たのはハンター達である。
 盗賊団達に思う所はあるものの、仕事として、そして盗賊団達の将来の為にもけじめをつけるように言う。
 ルーエルは厳しくも穏やかな声で盗賊団に言う。
「そこまで言えるのなら、僕達と一緒に来てくれないかな。
 大事な人の為だったとしても、盗賊行為は盗賊行為。
 問題を起こしたのだし、迷惑をかけた人には謝りに行くのが、筋を通すってことだもの。
 まずは迷惑をかけた商会の人達の元に行って貰うよ」
 これに続けるようにレシュも言う。
「そうだな。話を聞いて、こいつ等が根は悪くないのは分かる……むしろ良い方だろう。こいつ等を育てた奴もな。
 だが、しでかしたことの責任は取らせる必要があるだろう。
 問題は、その後だ。このまま商会や魔術師協会に引き渡すのは、少し考えものだな」
 これに、ぽえむは同意した。
「折角、これだけの事をする情熱と行動力はあるんですもの。
 だからそれを別のことに生かして欲しい。
 そんなにジルダさんの役に立ちたいのなら協会に関われる仕事をしてみる、とか。
 たとえば、下請けと言えど商人もその一つよね。
 勿論、その手伝いをしてあげる人が要るのだけれど」
 そう言うと依頼人である双子姉妹に視線を向ける。それを後押しするように、レシュや観智は言った。
「こいつ等は熱意や行動力はあるが、如何せん社会経験が不足している。視野を広げず、自分達の気持ちだけを優先するというのは良くない傾向だ。
 必要なのは社会経験。なら……そこの依頼人二人に引き渡して、その下で暫く働かせてみるというのはどうだ?」
「そうですね。それが筋という物だと思います」
 そうして全員の視線が依頼人に向く。それに双子は盗賊団の前に行くと、目線を合わせ同じように正座しながら語り掛けるように言った。
「ビブリオって人のこと、ほんまに大好きなんやね、三人とも」
「やったら、その人の為に、ほんとうにええことを頑張れる?」
 この問い掛けに、盗賊団はおずおずと返した。
「団長の、ためになる?」
「本当に?」
「団長の為になるなら、したい」
「もちろんなんよ」
「任して欲しいんよ」
 にっこりと笑い双子は盗賊団に応えると、立ち上がりハンター達に礼を言う。
「ありがとお。皆が説得してくれたお蔭で、この人らにウチらが関わることが出来たんよ」
「この人らの話聞いとって、他人事やないように思えたから、嬉しいんよ。ありがとうね」
 これにルーエルは、最後の懸念を口にする。
「どういたしまして。なら、これで商会の人達にこの人達を謝らせに行くのは任せても良いのかな?」
「うん、それは任せて欲しいんよ」
「損害も出てるやろうから、ウチらが一端立て替えて、その後働いて返して貰うんよ」
「そう。だったら、あとは魔術師協会になんて言うかだね。広報部長のドメニコさんには状況を伝えておいた方が良いと思うよ」
 これに、ぽえむは続ける。
「そうね、それが良いかも。でも、この人達を協会に直接連れて行くのは止めた方が良いと思う。色々片付くまでジルダさんの目に入らないようにした方が良いと思うし」
 これに双子は返す。
「うん、そやね。ウチらその時その場には居らんかったから知らんけど、話聞いたらえらいことやったらしいし、大嵐事件」
「この人らには、ウチらが協会行っとる間は、ウチらのトコで留守番して貰うんよ」
「留守番ですか。それだと見張りが居ませんからよろしければ私に任せて下さい」
 サフィラは手裏剣を取り出すと、真顔のまま熱の籠った声で言う。
「逃げようとしたら、それ相応の対応を力の限りサービスしますので。
 サービスですから頂いた依頼料以上に頑張ります。
 盗賊討伐に滾らせた意気込みはあり余っていますから」
「ひぃっ! やっぱりこのメイド怖い!」
「そんな頑張り要らない!」
「逃げずに頑張ります!」
 最後の止めのようなサフィラの言葉に、盗賊団は力いっぱい約束するのだった。

 こうして依頼は終わった。
 ハンター達が力ではなく言葉で、盗賊団達の事情や想いを聞いた上で説得したことが何よりも功を奏し、最善とも言える結果を出すことが出来た。
 依頼人の双子に連れられた盗賊団三人組は、双子達の懸命な説得と、彼女達の所属しているクルキャット商連合の伝手、そしてなによりも盗賊団三人組の人間性を見た商会員によって、双子が保証人になる代わりに賠償金の支払いだけで話が付いた。
 そして盗賊団三人組が双子の商売を手伝う中、双子は状況説明の為に魔術師協会広報部長ドメニコ・カファロの前に居た。

●次なる物語への序章
「なるほど。経緯は分かった」
 ドメニコは双子が提出した報告書と提案書を目に通しながら言葉を返す。
「こちらとしても、大事にはしたくは無いのでな。これに書かれている内容通りなら、そちらに任せよう」
 事件の経緯と関わった人間。そして保証人となる双子達自身の履歴書と、預かる盗賊団をどうするかについての計画書。
 詳細かつ具体的な内容である。まだ少女と言ってもよい目の前の双子が作ったのかを一瞬疑うほどの出来だ。
 それだけの物を出してきたからこそ、ドメニコは選択肢の一つとして双子の提案を受け入れる。
「ありがとうございます!」
「迷惑は掛けへんように頑張ります!」
 頭を下げ礼を言う双子を見ながらドメニコは内心安堵する。
 これでジルダ・アマートに盗賊団の事を知られなくて済んだ、と。

 しかしその安堵が儚い物だったと思い知らされるのは、もう少し先のお話。

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重体一覧

参加者一覧

  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • 掲げた穂先に尊厳を
    ルーエル・ゼクシディア(ka2473
    人間(紅)|17才|男性|聖導士

  • サフィラ(ka2521
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人

  • 風花・メイフィールド(ka2848
    人間(紅)|15才|女性|猟撃士
  • にゃーにゃーにゃー
    慈姑 ぽえむ(ka3243
    人間(蒼)|13才|女性|聖導士

  • レシュ・フィラー(ka3600
    人間(紅)|20才|男性|機導師

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マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓なんよ
カタリーナ(kz0071
エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2014/12/18 09:54:36
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/12/22 05:39:42
アイコン 相談卓
慈姑 ぽえむ(ka3243
人間(リアルブルー)|13才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/12/22 06:14:21