ゲスト
(ka0000)
赤の嵐の王
マスター:まれのぞみ

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/06/12 07:30
- 完成日
- 2018/06/21 01:21
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「ねぇ、じぃじ、あの話をしてくんろ」
「あの話?」
「ああ、海に出て行ったきり戻ってこれなくなって、そのまま死ぬこともできなかった王様のお話!?」
「ああ、赤の嵐の王のことじゃな。それはな――」
※
四方に雲もなく、波は穏やか。
吹く風は順風で帆に風を大きく受けながら、船の一団が海上をゆく。
すでに冬は遠く、夏にはまだ早い。
嵐のような風にも、日差しにも苦しむこともなく、まるで優雅なバカンスを過ごしているような時である。
手持ち無沙汰の船員たちが甲板の上で思いおもいの時間を過ごしている。
「まったく、気をぬきやがって」
船長が、そんな休憩にはいった船員たちを罵るように言いながらも、優しげな視線を送っている
「まあ、しかたないですよ」
交代の船員がやってきた。
「じきに目的地ですし、今回の旅はこともなく無事にすみそうじゃないですか」
「ああ、そうだがな――」
さて、この若造にどのような陳腐な説教をしてやらうとかと船長が考えていると、頭上にあるマストの監視台から悲鳴が聞こえた。
「せ、船長! ヘンな雲がこっちへ迫ってきます!? 見えるんじゃなくて、とてつもないスピードで迫ってきます!?」
「ヘンな雲だと?」
「どんな雲か、はっきりと言ってください!?」
「真っ昼間なのに、まるで夕暮れの雲のように、いやそれ以上に赤い雲なんです」
船長があわてて遠めがねで確認。
「ばっきゃろ、あれは――」
※
伝説がある。
まだ王国すら存在しなかった、遠い昔のことである。
半島に一人の王――といっても、現代の感覚でいえば近隣の村々を幾つか配下に収めた程度であったろうとは歴史家の弁である――がいた。
その土地を支配した男は迷った。
陸へゆくか、海に向かうかと――そこへ――伝説の類にはよくあることだが――どこからともなく顕れた女がささやいた。
海の果てに宝の島がある――と。
それが真実であったかはどこかわからない。
ただ、その言葉に突き動かされ王は、すべての兵を率いて海へと向かったという。
真紅の帆をあげた船は海洋へと旅だったのだ。
そして、それっきり王は陸地へとは戻ってこなかった。
ただ海の上では現在も生きているという。
赤い船は大気に溶け込み、亡国の王は、亡霊となって海をさまよっているという。
※
船員とは、えてして迷信を信じやすいものである。
普段、船という板一枚で生死の狭間を生きているのからだという。
それが、船員の全員にあてはまるものであるのかどうかはわからないが、この船長は確かに、それを信じていた。
いや、この話に限って言えば、
(知っている――)
のだ。
「船を旋回させろ!」
すぐに船団に命がとぶ。
そして、船員が耳を疑うようなことを命じた。
「行く手は、それぞれの船の長にまかす」
「えッ?」
「一隻でもいい、逃げ切れ!」
「どうしてですか!?」
「全滅するよりはましだ!」
「全滅?」
船員が、なにをいっているのだろうかという顔をしてる。
「そうか、お前は知らないか……」
若者を見つめる片目には憐憫を――ちっ、あいつはダメだったか
仲間たちの船にやっていた目には苦悩が浮かぶ。
一隻の船が巨大な手のように伸びた赤い雲に包まれた。
※
「おい、なんだありゃあ!?」
雲に捕まった船の甲板では悲鳴があがっていた。
雲間に浮かぶ、影、影、影――
赤い霧の間より浮かび上がってくるは、死の兵たち。
「ひぃ!?
骸骨の兵たちが次々と船へと乗り込んでくる。
船一番の怪力男が、それに立ちはだかるように仲間たちの壁になったが、死の兵たちが錆びた剣をふるっただけで、傷もないまま倒れてしまうと、もはや残った船員たちには逃げるより他に手はなかった。
甲板の上を逃げる者は、四方の雲間よりあらわれる兵たちの獲物となり、海に逃げた物は、その底に潜んでいた、なにやら得体の知れぬ影に襲われ、ただ海面に浮かんでくる血だけが、その末期を物語っていた。
掃討が終わった頃、雲間より、それが顕れた。
影のような騎士たちを引き連れ、王冠をかぶったマント姿の髑髏だ。
船に乗り込んでくると、事切れ、倒れた死体を軽々と持ち上げる。死体は、まるで灰のように崩れていき、ただ心臓だけが残った。
骨の手が心の臓をたかだかと掲げると、その口元はかたかたと動いて、声なき言葉を発していた。
「捧げよう――」
※
すでに赤い雲は、遠くの海上となった。
まるで動こうとしない雲は、やはり自然のものではない。
いや、あれは赤の嵐の王の狩猟の為の船団なのだ。
それに取り込まれたら最後、そこから逃れる手立ては自らの手で切り開くしかない。しかし、それができないのならば……――いま、あそこではどれほどの惨劇が起きているのだろうか――かつて、その噂を聞いて育ち、一度はその災疫を経験した――その時はたまたま、同じ船に乗っていたハンターたちの働きによって無事事なきを得た――男は仲間たちの冥福を祈らずにはいられなかった。
しかし、声は激しく、生き残った部下たちを激励する。
さて、何隻の仲間が生き残ったろうか――
「うん?」
急に空が黒い雲に覆われたと思うと雨がふってきた。
「えッ?」
その雨は血であった――
「あの話?」
「ああ、海に出て行ったきり戻ってこれなくなって、そのまま死ぬこともできなかった王様のお話!?」
「ああ、赤の嵐の王のことじゃな。それはな――」
※
四方に雲もなく、波は穏やか。
吹く風は順風で帆に風を大きく受けながら、船の一団が海上をゆく。
すでに冬は遠く、夏にはまだ早い。
嵐のような風にも、日差しにも苦しむこともなく、まるで優雅なバカンスを過ごしているような時である。
手持ち無沙汰の船員たちが甲板の上で思いおもいの時間を過ごしている。
「まったく、気をぬきやがって」
船長が、そんな休憩にはいった船員たちを罵るように言いながらも、優しげな視線を送っている
「まあ、しかたないですよ」
交代の船員がやってきた。
「じきに目的地ですし、今回の旅はこともなく無事にすみそうじゃないですか」
「ああ、そうだがな――」
さて、この若造にどのような陳腐な説教をしてやらうとかと船長が考えていると、頭上にあるマストの監視台から悲鳴が聞こえた。
「せ、船長! ヘンな雲がこっちへ迫ってきます!? 見えるんじゃなくて、とてつもないスピードで迫ってきます!?」
「ヘンな雲だと?」
「どんな雲か、はっきりと言ってください!?」
「真っ昼間なのに、まるで夕暮れの雲のように、いやそれ以上に赤い雲なんです」
船長があわてて遠めがねで確認。
「ばっきゃろ、あれは――」
※
伝説がある。
まだ王国すら存在しなかった、遠い昔のことである。
半島に一人の王――といっても、現代の感覚でいえば近隣の村々を幾つか配下に収めた程度であったろうとは歴史家の弁である――がいた。
その土地を支配した男は迷った。
陸へゆくか、海に向かうかと――そこへ――伝説の類にはよくあることだが――どこからともなく顕れた女がささやいた。
海の果てに宝の島がある――と。
それが真実であったかはどこかわからない。
ただ、その言葉に突き動かされ王は、すべての兵を率いて海へと向かったという。
真紅の帆をあげた船は海洋へと旅だったのだ。
そして、それっきり王は陸地へとは戻ってこなかった。
ただ海の上では現在も生きているという。
赤い船は大気に溶け込み、亡国の王は、亡霊となって海をさまよっているという。
※
船員とは、えてして迷信を信じやすいものである。
普段、船という板一枚で生死の狭間を生きているのからだという。
それが、船員の全員にあてはまるものであるのかどうかはわからないが、この船長は確かに、それを信じていた。
いや、この話に限って言えば、
(知っている――)
のだ。
「船を旋回させろ!」
すぐに船団に命がとぶ。
そして、船員が耳を疑うようなことを命じた。
「行く手は、それぞれの船の長にまかす」
「えッ?」
「一隻でもいい、逃げ切れ!」
「どうしてですか!?」
「全滅するよりはましだ!」
「全滅?」
船員が、なにをいっているのだろうかという顔をしてる。
「そうか、お前は知らないか……」
若者を見つめる片目には憐憫を――ちっ、あいつはダメだったか
仲間たちの船にやっていた目には苦悩が浮かぶ。
一隻の船が巨大な手のように伸びた赤い雲に包まれた。
※
「おい、なんだありゃあ!?」
雲に捕まった船の甲板では悲鳴があがっていた。
雲間に浮かぶ、影、影、影――
赤い霧の間より浮かび上がってくるは、死の兵たち。
「ひぃ!?
骸骨の兵たちが次々と船へと乗り込んでくる。
船一番の怪力男が、それに立ちはだかるように仲間たちの壁になったが、死の兵たちが錆びた剣をふるっただけで、傷もないまま倒れてしまうと、もはや残った船員たちには逃げるより他に手はなかった。
甲板の上を逃げる者は、四方の雲間よりあらわれる兵たちの獲物となり、海に逃げた物は、その底に潜んでいた、なにやら得体の知れぬ影に襲われ、ただ海面に浮かんでくる血だけが、その末期を物語っていた。
掃討が終わった頃、雲間より、それが顕れた。
影のような騎士たちを引き連れ、王冠をかぶったマント姿の髑髏だ。
船に乗り込んでくると、事切れ、倒れた死体を軽々と持ち上げる。死体は、まるで灰のように崩れていき、ただ心臓だけが残った。
骨の手が心の臓をたかだかと掲げると、その口元はかたかたと動いて、声なき言葉を発していた。
「捧げよう――」
※
すでに赤い雲は、遠くの海上となった。
まるで動こうとしない雲は、やはり自然のものではない。
いや、あれは赤の嵐の王の狩猟の為の船団なのだ。
それに取り込まれたら最後、そこから逃れる手立ては自らの手で切り開くしかない。しかし、それができないのならば……――いま、あそこではどれほどの惨劇が起きているのだろうか――かつて、その噂を聞いて育ち、一度はその災疫を経験した――その時はたまたま、同じ船に乗っていたハンターたちの働きによって無事事なきを得た――男は仲間たちの冥福を祈らずにはいられなかった。
しかし、声は激しく、生き残った部下たちを激励する。
さて、何隻の仲間が生き残ったろうか――
「うん?」
急に空が黒い雲に覆われたと思うと雨がふってきた。
「えッ?」
その雨は血であった――
リプレイ本文
「亡霊の王と、その軍勢ね……――」
リラックスしたように体を横たえる青い毛色の狼の姿をした幻獣――オリーヴェ――にユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)はもたれかかりながら、物思いにふけっていた。
空は青く、さんさんと降り注ぐ日差しは、これから迫っている戦いを想像させるには、あまりにも非現実的で、ついついバカンス気分になってしまう。
狼の姿をした幻獣もまた、大きくあくび。
「――伝わっている伝承とやらによれば、宝を求めて海へ出たって話みたいだけど、大方唆されて宝を求めて海へ出た結果、亡霊へと成り果てた……ってところかしら?」
「まさに伝説が歪虚になったか、ただ伝説を模しただけなのか……。どちらにせよ、今この場で討ち果たさねばなるまいな」
ロニ・カルディス(ka0551)が腕組みをしながら頷く。
「そうだね。ただ、いまは怪しい雲は見えないけど――まだ、気をぬけないね」
にょきっとワイバーンの顔があらわれた。
鞍馬 真(ka5819)のまたがったワインバーンを船に横付けさせたのだ。
(船の積載量に無理があるなら始めからカートゥルに乗って飛翔の翼で飛んで行く)
と船長に言ったところ、どうせならばと依頼されて船の周囲を監視している。
人を乗せるスペースは余っているが、船を操るには少なすぎるのだという。
「もっともな話か……」
レイア・アローネ(ka4082)は納得するしかないという表情を浮かべる。
聞いた話ではハンターでもない身が、赤い雲に突っ込むということは自殺にしに行くのと同義であるらしい。
それなのに、よくも少数ながらも志願者がいたものだと思う。
「あるいは、そんな話は迷信だとでも思っているのか?」
そもそも依頼の件を船長は船員たちに説明しているのだろうか。
龍宮 アキノ(ka6831)が肩をすくめる。
「迷信ねぇ、そいつもカラクリが分かっちまえば虚しいくらいスッキリするんだけどねぇ」
このひねくれた医師らしい物言いである。
「それでも信じたくなる人の性と言うのは面白くはあるがねぇ。しかし、王の亡霊が雲になって襲ってくるとは、またしても興味深い話じゃな――、な、なによ!?」
突然、強い風が吹き始めた。
船が上下に揺れ始める。
海上には白い波が見える。
そして、なにより青い空に不気味なほどに真っ赤な入道雲が見えた。
●
船の上は一転、臨戦態勢になる。
「リーリー、リーリーの癒しと脚力に期待するの。いざとなったら飛んで戦うの」
ディーナ・フェルミ(ka5843)が巨大な鳥の姿をした幻獣に騎乗した。
リーリーはスピードを出していないのに耳をつく風が騒がしい。
髪が激しく揺れる。
嵐が、すぐそこまで来ている。
目の前に赤い雲が山脈のごとく存在する。
「皆、なにかにつかまれ!? 突っ込むぞ!?」
船長が叫んだ。
「オリーヴェ! しがみつきなさい」
爪をたてた狼の眷属が身をふせる。ユーリは身を屈めてオリーヴェにしがみつく。
その時、突風がきた。
●
「おおぅつつととと」
船が大きく傾いた。
あたりに置いてあった整備道具が、右に左にと転がり始める。
事前の準備として機体はワイヤーで縛り付けてあったおかげで固定はされているが、コックピットの中は奇妙な揺れとなっている。
「まあ、たいしたことじゃないけどね」
手を枕にして狭い操縦席で待機する。
外の喧噪が無線機ごしに聞こえてくる
(さまよう亡霊船団かー……――。どこの世界もそういう話ってあるんだね)
記憶は失っても、不思議とこういう知識だけは頭に残っているものである。
(ま、姿もって襲ってくるんだから殺せるよね?)
コックピットに潜り込んだウーナ(ka1439)は時を待っていた。
本来の作戦だったら、いまごろは空から飛び出ているつもりであったが作戦は変わった。コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)が依頼主にCAMが乗せられるだけのサイズの船を用意できないか懇願した結果、一夜かけて、どこからともなく艦船を用意してきたのだ。
ただ、気になることがある。
(これは人型機動兵器の使用を前提としているな――)
もとは海兵隊である彼女には、それがなんとなくわかった。
用意されたのは特別な船だ――とだけ船長は説明したが、どうも彼女にとては訓練生時代も含めて、いやなほど見慣れた艦船を思い出させるのだ。
その顔を見ながら船長がニヤニヤと笑っていたことも気にかかる。
「どうも目的は、今回の依頼とは別にあるのだろうな」
無線機ごしに同僚には、コーネリアのため息が聞こえていることに、彼女は気がつかない。
前職での訓練なり実戦なりで、このようなタイプの揚陸艦には乗り慣れているが、それでも待っているだけというのはつらい。
運命を、まるで自分でない何かに委ねなくてはならないからだろうか。
荒れる海が船をもてあそぶ。
木々のきしむ音があたりでする。
ふたりは、ただ時を待っていた――
●
大きく揺れて、揺れて、揺れる。
意地の悪い老婆の嘲笑のような嵐のうなりを聞きながら、波という生命の母たる海の手に激しく揺らされながらも、どこかリアルブルーのタンカーを思い出させる背の低い船は、ただただ翻弄されている。
「うわぁぁ!!」
船よりも大きな波が爪を立てた獣の腕にように船に襲い、引き裂くように運の悪い船員たちをさらっていく。あるいは、あまりの船の傾きに、運悪く海へと放りだされたりする者もある。
海に慣れているはずの船乗りですら、こんなざまだ。
ハンターたちは、何かにつかまったり、バランスをとるようにしたりして、なんとかかんとか海へ落ちないように抵抗するのが精一杯であった。
「嵐の海に落ちたら戦う前に死んじゃうの、そんなことはさせられないの」
タスカービレ聖導士が幻獣にまたがって海へ落ちた者たちを救助する。
むろん嵐の中の飛行は至難の業だが、聖女は相棒を心から信じている。
嵐の中だが、空の幻獣たちも、それに協力する。
「次がくるぞ!」
赤い海を突っ切り、いくつか目の大波を超えると、操舵に紐で両手を縛り付け、握りつづける船長が叫ぶ。
彼は、これから起きることを知っている。
ハンターたちも船に、あるいはパートナーにしがみつきながら嵐がやむのを待ちながら、それに備えた。
周囲の赤い雲が集まってくるような錯覚。
波も幾分――それでも時化てはいるが――か落ち着いてきたかにも見える。
身構える。
蜃気楼のように周囲の空間が揺れ始めるような感覚。
しだいしだいに、なにかが姿をなしはじめる。
ひとつ、ふたつ――
雲からわき出てくる兵たちは、降りしきる血の雨、血のしたたり、その滴が集まり、ふくれながら生まれてくるもの、赤い雲間からしゃれこうべが湧く。
かたかたと笑いながら、武器をかまえた死者の軍団がいつの間には波に翻弄される船の周囲を取り囲んでいた。
「これは……なかなかの……」
降りしきる雨と頭からかぶった海水とに洗われ、すっかり水のしたたるいい女となった、レイアの目元が危険な色を浮かべる。
スリルを楽しむかのような視線だ。
(油断すれば亡者共の仲間入りか、あるいは供物となるか……)
レイアは魔道剣を抜いた。
「いいだろう……殺せるものなら殺してみるといい……!」
剣を振り下ろすと、その背中から咆吼がして、一体の影が顕れた。
雷光に、その姿が浮かび上がる。
ワイバーン!?
「やりなさい!」
再度、咆吼をあげると幻獣の放った炎が海上の敵に襲いかかる。
そして、それが合図としてハンターたちの矢が船上から海上の敵へ向かって放たれた。
鉄槌を偽りの生命を宿した骸たちにくだす。
そして、それが戦いの火ぶたとなった。
つぎつぎと倒れる歪虚の群れ。
だが、それでもひるまぬ。
無言の進行をつづける死者たちは歩きつづける。
そして、死者たちは、生者の領域への侵攻をはじめる。
倒れても、倒れても、その群れは船への歩みを止めない。
「ご苦労なことね」
アキノが杖をふるうと、術者の目の前に光かがやく三角の輝きがあらわれ、
「逝きな!」
海上に向かって、三本の閃光を放つ。
海上で爆発。
だが、それでも敵は同じスピードで――ついに船の縁へたどり着いた。
揚陸艦とも呼ぶべき船に乗り込んでくる。
「やらせるか!?」
太ももだけでカートゥルを乗りこなし、両手に二本の剣をかまえた真が空から突っ込んでくる。
「剣が通じるなら、何も怖くはないな」
主の声に応じるようにワイバーンは雄叫びをあげると、背中に背負った狼を模した筒から魔法の奔流があふれ、敵を襲う。
●
甲板では、ユーリの弓が死の旋律を奏で、そのひとつ、ひとつの音が死者を骸へと変えていく。
しかし、数が違う。
ちっ――
あらん限りの矢を放つと、ユーリは弓を投げ捨て、剣を抜こうとした。
そこが隙となった。
周囲から伸びたあまたの骸の手が彼女の腕や足をつかむ。
くっ――
まずいと思いかけた瞬間、敵の首が飛んだ。
「オリーヴェ!」
爪をふるって幻獣が彼女の敵を殲滅したのだ。
「ありがとう」
抜刀すると、こんどはユーリがオリーヴェの背後から近づいてきた化け物をを突き倒すと、龍奏の蒼姫はフェンリルの眷族に騎乗する。
「行くよ!」
幻獣がうなりをあげて甲板にあふれた敵に突っ込んでいった。
●
嵐はつづく。
揺れる船上での戦いはつづく。
ロニの歌声が響くと死者の動きが緩慢になる。
そこへレイアが踏み込みながら武器を突き出し、その軌道上にあるすべての敵を刺し貫く。
やはり、局地的な強さでは、この歪虚どもはハンターたちの敵ではない。
「いい的ばかりじゃないかい」
口さがない女にいわせれば、そのようなものだ。
矢を射り、剣をふり、魔法を放ち――そのひとつひとつの行為が、確実に虚の生命を無に帰していく。
だが、多勢に無勢。
周囲は、あふれるように出てくる骨の歪虚たちに埋め尽くされていく。
「くそ」
一瞬、真の目が金色に輝いた。
両手の剣を振りながら戦いつづけるが、すこし嫌気を感じ始めていた。
「数が多すぎる!?」
左右から迫ってきた二体の歪虚の首をはねながら、真は舌打ちをせずにはいられなかった。
いつしか船上は動く骨が我が物顔で歩く場所になったいた。
じりじりとハンターたちの居場所が狭められていく。
円陣を組みながら、やがてかれらと――すっかり怯えながらも生き残った船員たちは――船の中央部に追い詰められていた。
こうなれば、あとは時間の問題。
歪虚に意志などがあれば、悪党よろしく舌舐めずりなどしたかもしれない。
「さあて、どうかね?」
だが、ハンターたちには余裕があった。
歪虚に知能があれば、あるいは生前なら勘づいていたかもしれない。
これは罠!?――……だと
その時、ハンターたちを追い詰めるように迫っていた歪虚たちの前衛の姿がふいに消えた。床が開き、奈落に落ちたのだ。
そして、鉄のきしむような音とともに、開いた床から黒い影があらわる。
「おおぅ!?」」
船の底から二体の機体がのっそりと姿をあらわしたのだ。
エクスシア・TTTとカラミティ・ホーネット。
ウーナとコーネリアの機体だ。
「海の歪虚ならこの私が相手だ。この海を我が物顔で闊歩している身の程知らず共に人間の恐ろしさを存分に思い知らせてやる」
R7エクスシアが、かまえた巨大なふたつ砲弾が火をふくと船上で円陣を組むハンターたちをの周りが近づいてきた歪虚の群れを、文字どうり一掃する。
そして、二体は無言で――事前の打ち合わせどうりに――側面に機動しつつマテリアルライフルの範囲攻撃で減らせるだけ減らし、ミサイルランチャーで爆撃を加える。
「はっはっはははぁぁぁ」
覚醒したウーナがトリガーハッピーになっている。
船上で重量火器を使用するデメリットなど、まるで頭にない。
撃って、撃って、撃ち尽くすのみだ。
あるいはリロードがまにあわないと思うと、銃器を鈍器にして敵をなぎ払っている。
それでも敵はあきらめない。
数の暴力で襲いかかる。
コーネリアのエクスシアは足下から迫り、とりついてきた骸骨たちは、やがて菓子にたかる蟻のように機械人形を覆いつくす。
なんというパワー!?
エクスシアすら動くことができなくなってしまった。
「これまでか――」
コーネリアは操縦席の脇に置いてあった銃をとると、緊急脱出のボタンを押した。
そして、一息をつき、開口一番、斉射。入口にまとわりついていた歪虚のどてっぱらに穴を開けた。そして、そのまま自分に向かって倒れてきた死骸を足蹴りすると、操縦席を後にする。
外へ飛び出ると、骨を踏みつけながら相棒の頭部へと登ってマシンガンを乱射する。
「やらせない! やらせはしない!?」
近づいてくる歪虚どもに鉄槌をくだした。たとえ相手が幽霊の姿をしていようと、それが憎き歪虚ならば全力で抹殺するのだ。
彼女を突き動かすのは憎悪と執念。
もはや恐怖を感じる余裕などない。
「歪虚だろうと幽霊だろうと、私の邪魔をする者は全員地獄行きだ!」
●
静寂――
骸骨たちの動きが止まった。
嵐も凪いだ。
そして、沈黙――
ハンターたちも無言で、次を待った。
なにが起こるのかは想像がつく。
そして、起こるべき事はまだ、ことここに至ってないにも関わらず、心はざわめく。
「鳥肌がたつぜ」
自然と体に緊張が走る。
幻獣たちがうなり声をあげ、虚の空間を睨む。
「来るぞ!?」
恐怖のせいか、やや声がうわずった船長の声が船上に響くと、目の前の空間が歪む。
渦を巻くように、その虚空は姿を変じ、扉の形になったかと思うと、周囲の赤い霧が集い、これもまた赤の絨毯の形態へと転ず。
そして――やつが来訪した。
周囲にどす黒いローブにも似た影――近衛の騎士たちを従え――纏い、髑髏の王は、贄を求める。
額の王冠には、そこだけ生々しい生気を帯びた赤い宝石があった。
紅のきらめきに飛来する物体が映る。
爆発。
ウーナの放った、エクスシアの銃弾が飽和攻撃となって、王に降り注いだのだ。
そして、その一撃によって船が大きく傾くと、船に乗り込んでいた歪虚どもが海へと落下していった。
船上での大爆発は炎を呼ぶ。
「やったか!?」
言いかけ時、今度はウーナが虚を突かれた。
炎と煙に紛れて伸びてきた黒い影がエクスシアの足に絡みついたのだ。そして、横倒しになりかけた甲板を転がるようにして、エクスシアもまた海へたたき落とされた。
「だから、なんだ!?」
飛行機能。
「なんだ?」
同音異義の言葉がつづく。
「なんだ、こりゅあぁぁ!?」
海から伸びる、手、手、手――
あまたの骸骨の手がTTTにからみつき、海へ引きずり込もうとしているのだ。そして、そのパワーは全力状態のエクスシアの動力をもわずかに上回る。
「くそっ!?」
脱しきれぬまま、ウーナは状況のわからぬ甲板に目をやるしかなかった。
●
燃え上がる炎に、浮かび上がる影。
生前からの残りと思わしき衣はすっかり燃え尽きているが、孤独な王は、その護衛とともに、まだ健在。
「さすがに声帯もないと、何もしゃべれないみたいね」
これまでに累積されたダメージによって自分の足が笑っていることを隠すように、アキノは歪虚をあざ笑う。
むろん、王からの返答は無言。
しかして実行。
影が刃となってアキノを襲う。
すでに動けない体では回避もなにもない。
体は空を跳び、床へ叩きつけられた。
(……――!?)
激痛が背中を走る。
(まずい――)
背骨をやったか。医師の直感が恐怖を呼ぶ。
痛感のあまり、動けない。
(まずい――……)
きいた言葉など思いつくこともできない。
恐怖がくる。
(えっ――)
違う、これは……――魔法? 誰?
癒しの力を覚える。
混濁した頭に声が響く。
「やらせません」
女医を庇うように立つ者がいた。
骸骨の口が動いた。
声はない。
いや、言葉にしなくてもわかる。
問うているのだ。
ならば、応えるが義務か。
そう――
「最後まで盾となって立つのがエクラの聖導士なの、ここで落ちる訳にはいかないのっ」
ディーナだ。
その体がまばゆい輝きに包まれたかと思うと、その光は爆破するかのように周囲に衝撃となって拡がった。
その威力に、王も態勢を崩す。
だが、崩すだけ。
周囲の騎士が錆びた武器を手にハンターたちに挑み続かかる。
「やらせん」
真の二本の剣が敵を砕き、目に見えに三撃目を放つ。
狼と鳥の幻獣をしたがえたハンターたちが割り込んできて、さらにディーナとアキノの盾となる。
だが、まだ歪虚は一掃できていない。
周囲から圧倒するような数は掃討しきれてはいない。
(もって――)
あと何発、いけるか。
ディーナは、すべて撃ち尽くすつもりだ。
まだ王は居続ける。
再び海上から迫ってきた死者たちも押し寄せてくる。
周囲の仲間や相棒の姿も有象無象の群像にかき消される。
あまたの剣が迫る。
「ダメ!?」
つい目を閉じた――すさまじい轟音。
つぶったはずの目の前がまっしろになった。
「なに……きゃああ!?」
「あぶねぇ!?」
目を開くと、あったはずの甲板が消滅して、海原だけが拡がっている。
海上にはすでにエクスシアTTTの姿はなく、なかば骨に埋もれながらも雨に濡れながら白い煙をあげている試作電磁加速砲だけが見えた。
「あ……」
「あ、じゃない!?」
先に、特別と紹介したこの艦船はリアルブルーの艦船を参考に、船内の各所にも区間にくぎり沈みにくくするダメージコントロールを、この世界の技術レベルでほどこしてはある。
だが、それにも限度がある。
すくなくとも全力のレールガンの直撃を受けて無事でいられることなど――ある種の魔法でも使わない限り――木造の船では不可能なのである。
「沈むのか!?」
ワイバーンを駆るレイアが叫ぶ。
大きく傾いた船はだが、まだ海上に残っている。
幸い、船の底ではなく甲板を貫いたおかげで沈没だけはまぬがれたらしい。
だが、もはや航行は不能だろう。
●
赤の雨がふる――
しんしんとふりつづく、天から血の涙は、かつてこの嵐に捕らわれ、殺され、捧げられた者たちの苦しみの涙なのかもしれない。
そこに王はたたずむ。
数体の騎士を従え、ただ無言のまま、まるで生前、親しかった人物を墓標を見舞ったかのような雰囲気で、雨の中でたたずむ。
喧騒はかき消えている。
不思議なまでの赤の静粛。
突然、銃声が、それをかき消した。
騎士が一体、崩れる。
「勝った気かね?」
目には憎しみを浮かべ、歪虚に拳銃を向けた女がいた。
血で染まった脇腹を光る爪で押さえ、足もぐらぐらとなっている。
ただ、そのまなざしに宿る強い意志のみで体を維持しているかのようだ。
王は、不埒な女を罰した。
騎士たちが王の剣となってコーネリアに突き刺さったのだ。
顔がまっさおになり、体中から血があふれる。
そのまま、なにも言えず彼女は顔から甲板に倒れた。
まだ、息はある。
最後の一撃を――王は片腕を上げようとする――なにかおかしいのか、王は自分の片腕を確認するように見上げる。
なにもない――
こんどは近づこうとするが、王の歩みが、なにか見えないものを遮られた。
歌声がしていた。
「せめてもの手向けだ。聞いていくといい」
静かな鎮魂歌が響く。
炎と煙に包まれた船上が、再び左右に揺れる。
コーネリアは、そのままぬれた甲板を滑っていく。
ただ、すでにぼんやりとしか見えぬはずの双眸に、それでも尽きぬ憎しみを浮かべコーネリアの白い指が、最後の銃弾を放った。
――……
彼女の唇が、妹の名を刻んでいた。
銃声に応じ、騎士たちが、王の周囲に盾のように散らばった。
さきほどのことを考えれば180度の周囲に気を払うのは当然だ。
そして、当然であったからこそ、その行動が王にとって致命傷になった。
「仇をとるぞ、依頼主!」
仲間達を鼓舞するような声が船上に響いた。
どこからか――
王たちは、あたりを見まわすが見つからない。
その時、空に影。
海上の敵を殲滅した三体のワイバーンの内に一体から、ひとつの影が飛び降りてきた。
レイアがマストから駆け下りながら王に斬りつける。
頭上から、まるでがら空きであった王冠に向かって剣を振り下ろした。
「お前に殺された船乗り達の痛み、思い知れ──!?」
●
一撃が決まった。
王の王冠が崩れ、宝玉が甲板に落ちた。
王たちが、声なき悲鳴をあげる。
石に罅が入ると、そこから嵐が生まれた。
外に向かってではない。
宝石の中へ向かっての暴風だ。
あるいはブラックホールといっていいかもしれない。
周囲を吸い込みはじめた。
王を、騎士を、兵たちを、まるで選別するかのように死者たちだけを吸い込み、空の赤すら吸い込み、最後には己そのものを吸い込み、揺れる空間の中に、赤い奇跡は消えていった――
●
「きゃあ!?」
びっくりするような、かわいらしい悲鳴で目が覚めた。
狼が水を払うように、体をぶるぶると振るわせると、その飛び散った水がかかったらしい主人が、やめなさいと笑っている。
「気がつかれましたか?」
聖導師が笑いかけてくる。
「水没しかけたコックピットの中で、よくも溺死しなかったものだな」
包帯姿の女医があきれたように言う。
もう一人のパイロットは横になっているが無事であるらしい。
「じきに目を覚ますだろうけどね――」
やれやれと髪をかく。
空は夕焼け。
あたりは星のかがやきが、ひとつ、ふたつ――
「さて、どうしたものかね」
すっかりつぶれた船は沈みはしないだろうが、本来の役割はもはや果たすことはないであろう。
「こりゃあ修理するより、新しいやつを買った方が安いな」
「いいのか?」
髭のないドワーフが問う。
「これだけの被害で沈みだけはしないんだ。この船の依頼主には、いい船のテストができたって報告するさ」
船長もまた商人だ。
そして、仲間の仇がとれたことで、依頼人としても、すっかり満足している。
生き残った船員たちが歓声をあげている。
遠くに島影と、火が見えた。
灯台か、人家か――
そこへ救援を求めて向かって飛んでいく、ワイバーンと幻獣の姿が月のシルエットになった。
リラックスしたように体を横たえる青い毛色の狼の姿をした幻獣――オリーヴェ――にユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)はもたれかかりながら、物思いにふけっていた。
空は青く、さんさんと降り注ぐ日差しは、これから迫っている戦いを想像させるには、あまりにも非現実的で、ついついバカンス気分になってしまう。
狼の姿をした幻獣もまた、大きくあくび。
「――伝わっている伝承とやらによれば、宝を求めて海へ出たって話みたいだけど、大方唆されて宝を求めて海へ出た結果、亡霊へと成り果てた……ってところかしら?」
「まさに伝説が歪虚になったか、ただ伝説を模しただけなのか……。どちらにせよ、今この場で討ち果たさねばなるまいな」
ロニ・カルディス(ka0551)が腕組みをしながら頷く。
「そうだね。ただ、いまは怪しい雲は見えないけど――まだ、気をぬけないね」
にょきっとワイバーンの顔があらわれた。
鞍馬 真(ka5819)のまたがったワインバーンを船に横付けさせたのだ。
(船の積載量に無理があるなら始めからカートゥルに乗って飛翔の翼で飛んで行く)
と船長に言ったところ、どうせならばと依頼されて船の周囲を監視している。
人を乗せるスペースは余っているが、船を操るには少なすぎるのだという。
「もっともな話か……」
レイア・アローネ(ka4082)は納得するしかないという表情を浮かべる。
聞いた話ではハンターでもない身が、赤い雲に突っ込むということは自殺にしに行くのと同義であるらしい。
それなのに、よくも少数ながらも志願者がいたものだと思う。
「あるいは、そんな話は迷信だとでも思っているのか?」
そもそも依頼の件を船長は船員たちに説明しているのだろうか。
龍宮 アキノ(ka6831)が肩をすくめる。
「迷信ねぇ、そいつもカラクリが分かっちまえば虚しいくらいスッキリするんだけどねぇ」
このひねくれた医師らしい物言いである。
「それでも信じたくなる人の性と言うのは面白くはあるがねぇ。しかし、王の亡霊が雲になって襲ってくるとは、またしても興味深い話じゃな――、な、なによ!?」
突然、強い風が吹き始めた。
船が上下に揺れ始める。
海上には白い波が見える。
そして、なにより青い空に不気味なほどに真っ赤な入道雲が見えた。
●
船の上は一転、臨戦態勢になる。
「リーリー、リーリーの癒しと脚力に期待するの。いざとなったら飛んで戦うの」
ディーナ・フェルミ(ka5843)が巨大な鳥の姿をした幻獣に騎乗した。
リーリーはスピードを出していないのに耳をつく風が騒がしい。
髪が激しく揺れる。
嵐が、すぐそこまで来ている。
目の前に赤い雲が山脈のごとく存在する。
「皆、なにかにつかまれ!? 突っ込むぞ!?」
船長が叫んだ。
「オリーヴェ! しがみつきなさい」
爪をたてた狼の眷属が身をふせる。ユーリは身を屈めてオリーヴェにしがみつく。
その時、突風がきた。
●
「おおぅつつととと」
船が大きく傾いた。
あたりに置いてあった整備道具が、右に左にと転がり始める。
事前の準備として機体はワイヤーで縛り付けてあったおかげで固定はされているが、コックピットの中は奇妙な揺れとなっている。
「まあ、たいしたことじゃないけどね」
手を枕にして狭い操縦席で待機する。
外の喧噪が無線機ごしに聞こえてくる
(さまよう亡霊船団かー……――。どこの世界もそういう話ってあるんだね)
記憶は失っても、不思議とこういう知識だけは頭に残っているものである。
(ま、姿もって襲ってくるんだから殺せるよね?)
コックピットに潜り込んだウーナ(ka1439)は時を待っていた。
本来の作戦だったら、いまごろは空から飛び出ているつもりであったが作戦は変わった。コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)が依頼主にCAMが乗せられるだけのサイズの船を用意できないか懇願した結果、一夜かけて、どこからともなく艦船を用意してきたのだ。
ただ、気になることがある。
(これは人型機動兵器の使用を前提としているな――)
もとは海兵隊である彼女には、それがなんとなくわかった。
用意されたのは特別な船だ――とだけ船長は説明したが、どうも彼女にとては訓練生時代も含めて、いやなほど見慣れた艦船を思い出させるのだ。
その顔を見ながら船長がニヤニヤと笑っていたことも気にかかる。
「どうも目的は、今回の依頼とは別にあるのだろうな」
無線機ごしに同僚には、コーネリアのため息が聞こえていることに、彼女は気がつかない。
前職での訓練なり実戦なりで、このようなタイプの揚陸艦には乗り慣れているが、それでも待っているだけというのはつらい。
運命を、まるで自分でない何かに委ねなくてはならないからだろうか。
荒れる海が船をもてあそぶ。
木々のきしむ音があたりでする。
ふたりは、ただ時を待っていた――
●
大きく揺れて、揺れて、揺れる。
意地の悪い老婆の嘲笑のような嵐のうなりを聞きながら、波という生命の母たる海の手に激しく揺らされながらも、どこかリアルブルーのタンカーを思い出させる背の低い船は、ただただ翻弄されている。
「うわぁぁ!!」
船よりも大きな波が爪を立てた獣の腕にように船に襲い、引き裂くように運の悪い船員たちをさらっていく。あるいは、あまりの船の傾きに、運悪く海へと放りだされたりする者もある。
海に慣れているはずの船乗りですら、こんなざまだ。
ハンターたちは、何かにつかまったり、バランスをとるようにしたりして、なんとかかんとか海へ落ちないように抵抗するのが精一杯であった。
「嵐の海に落ちたら戦う前に死んじゃうの、そんなことはさせられないの」
タスカービレ聖導士が幻獣にまたがって海へ落ちた者たちを救助する。
むろん嵐の中の飛行は至難の業だが、聖女は相棒を心から信じている。
嵐の中だが、空の幻獣たちも、それに協力する。
「次がくるぞ!」
赤い海を突っ切り、いくつか目の大波を超えると、操舵に紐で両手を縛り付け、握りつづける船長が叫ぶ。
彼は、これから起きることを知っている。
ハンターたちも船に、あるいはパートナーにしがみつきながら嵐がやむのを待ちながら、それに備えた。
周囲の赤い雲が集まってくるような錯覚。
波も幾分――それでも時化てはいるが――か落ち着いてきたかにも見える。
身構える。
蜃気楼のように周囲の空間が揺れ始めるような感覚。
しだいしだいに、なにかが姿をなしはじめる。
ひとつ、ふたつ――
雲からわき出てくる兵たちは、降りしきる血の雨、血のしたたり、その滴が集まり、ふくれながら生まれてくるもの、赤い雲間からしゃれこうべが湧く。
かたかたと笑いながら、武器をかまえた死者の軍団がいつの間には波に翻弄される船の周囲を取り囲んでいた。
「これは……なかなかの……」
降りしきる雨と頭からかぶった海水とに洗われ、すっかり水のしたたるいい女となった、レイアの目元が危険な色を浮かべる。
スリルを楽しむかのような視線だ。
(油断すれば亡者共の仲間入りか、あるいは供物となるか……)
レイアは魔道剣を抜いた。
「いいだろう……殺せるものなら殺してみるといい……!」
剣を振り下ろすと、その背中から咆吼がして、一体の影が顕れた。
雷光に、その姿が浮かび上がる。
ワイバーン!?
「やりなさい!」
再度、咆吼をあげると幻獣の放った炎が海上の敵に襲いかかる。
そして、それが合図としてハンターたちの矢が船上から海上の敵へ向かって放たれた。
鉄槌を偽りの生命を宿した骸たちにくだす。
そして、それが戦いの火ぶたとなった。
つぎつぎと倒れる歪虚の群れ。
だが、それでもひるまぬ。
無言の進行をつづける死者たちは歩きつづける。
そして、死者たちは、生者の領域への侵攻をはじめる。
倒れても、倒れても、その群れは船への歩みを止めない。
「ご苦労なことね」
アキノが杖をふるうと、術者の目の前に光かがやく三角の輝きがあらわれ、
「逝きな!」
海上に向かって、三本の閃光を放つ。
海上で爆発。
だが、それでも敵は同じスピードで――ついに船の縁へたどり着いた。
揚陸艦とも呼ぶべき船に乗り込んでくる。
「やらせるか!?」
太ももだけでカートゥルを乗りこなし、両手に二本の剣をかまえた真が空から突っ込んでくる。
「剣が通じるなら、何も怖くはないな」
主の声に応じるようにワイバーンは雄叫びをあげると、背中に背負った狼を模した筒から魔法の奔流があふれ、敵を襲う。
●
甲板では、ユーリの弓が死の旋律を奏で、そのひとつ、ひとつの音が死者を骸へと変えていく。
しかし、数が違う。
ちっ――
あらん限りの矢を放つと、ユーリは弓を投げ捨て、剣を抜こうとした。
そこが隙となった。
周囲から伸びたあまたの骸の手が彼女の腕や足をつかむ。
くっ――
まずいと思いかけた瞬間、敵の首が飛んだ。
「オリーヴェ!」
爪をふるって幻獣が彼女の敵を殲滅したのだ。
「ありがとう」
抜刀すると、こんどはユーリがオリーヴェの背後から近づいてきた化け物をを突き倒すと、龍奏の蒼姫はフェンリルの眷族に騎乗する。
「行くよ!」
幻獣がうなりをあげて甲板にあふれた敵に突っ込んでいった。
●
嵐はつづく。
揺れる船上での戦いはつづく。
ロニの歌声が響くと死者の動きが緩慢になる。
そこへレイアが踏み込みながら武器を突き出し、その軌道上にあるすべての敵を刺し貫く。
やはり、局地的な強さでは、この歪虚どもはハンターたちの敵ではない。
「いい的ばかりじゃないかい」
口さがない女にいわせれば、そのようなものだ。
矢を射り、剣をふり、魔法を放ち――そのひとつひとつの行為が、確実に虚の生命を無に帰していく。
だが、多勢に無勢。
周囲は、あふれるように出てくる骨の歪虚たちに埋め尽くされていく。
「くそ」
一瞬、真の目が金色に輝いた。
両手の剣を振りながら戦いつづけるが、すこし嫌気を感じ始めていた。
「数が多すぎる!?」
左右から迫ってきた二体の歪虚の首をはねながら、真は舌打ちをせずにはいられなかった。
いつしか船上は動く骨が我が物顔で歩く場所になったいた。
じりじりとハンターたちの居場所が狭められていく。
円陣を組みながら、やがてかれらと――すっかり怯えながらも生き残った船員たちは――船の中央部に追い詰められていた。
こうなれば、あとは時間の問題。
歪虚に意志などがあれば、悪党よろしく舌舐めずりなどしたかもしれない。
「さあて、どうかね?」
だが、ハンターたちには余裕があった。
歪虚に知能があれば、あるいは生前なら勘づいていたかもしれない。
これは罠!?――……だと
その時、ハンターたちを追い詰めるように迫っていた歪虚たちの前衛の姿がふいに消えた。床が開き、奈落に落ちたのだ。
そして、鉄のきしむような音とともに、開いた床から黒い影があらわる。
「おおぅ!?」」
船の底から二体の機体がのっそりと姿をあらわしたのだ。
エクスシア・TTTとカラミティ・ホーネット。
ウーナとコーネリアの機体だ。
「海の歪虚ならこの私が相手だ。この海を我が物顔で闊歩している身の程知らず共に人間の恐ろしさを存分に思い知らせてやる」
R7エクスシアが、かまえた巨大なふたつ砲弾が火をふくと船上で円陣を組むハンターたちをの周りが近づいてきた歪虚の群れを、文字どうり一掃する。
そして、二体は無言で――事前の打ち合わせどうりに――側面に機動しつつマテリアルライフルの範囲攻撃で減らせるだけ減らし、ミサイルランチャーで爆撃を加える。
「はっはっはははぁぁぁ」
覚醒したウーナがトリガーハッピーになっている。
船上で重量火器を使用するデメリットなど、まるで頭にない。
撃って、撃って、撃ち尽くすのみだ。
あるいはリロードがまにあわないと思うと、銃器を鈍器にして敵をなぎ払っている。
それでも敵はあきらめない。
数の暴力で襲いかかる。
コーネリアのエクスシアは足下から迫り、とりついてきた骸骨たちは、やがて菓子にたかる蟻のように機械人形を覆いつくす。
なんというパワー!?
エクスシアすら動くことができなくなってしまった。
「これまでか――」
コーネリアは操縦席の脇に置いてあった銃をとると、緊急脱出のボタンを押した。
そして、一息をつき、開口一番、斉射。入口にまとわりついていた歪虚のどてっぱらに穴を開けた。そして、そのまま自分に向かって倒れてきた死骸を足蹴りすると、操縦席を後にする。
外へ飛び出ると、骨を踏みつけながら相棒の頭部へと登ってマシンガンを乱射する。
「やらせない! やらせはしない!?」
近づいてくる歪虚どもに鉄槌をくだした。たとえ相手が幽霊の姿をしていようと、それが憎き歪虚ならば全力で抹殺するのだ。
彼女を突き動かすのは憎悪と執念。
もはや恐怖を感じる余裕などない。
「歪虚だろうと幽霊だろうと、私の邪魔をする者は全員地獄行きだ!」
●
静寂――
骸骨たちの動きが止まった。
嵐も凪いだ。
そして、沈黙――
ハンターたちも無言で、次を待った。
なにが起こるのかは想像がつく。
そして、起こるべき事はまだ、ことここに至ってないにも関わらず、心はざわめく。
「鳥肌がたつぜ」
自然と体に緊張が走る。
幻獣たちがうなり声をあげ、虚の空間を睨む。
「来るぞ!?」
恐怖のせいか、やや声がうわずった船長の声が船上に響くと、目の前の空間が歪む。
渦を巻くように、その虚空は姿を変じ、扉の形になったかと思うと、周囲の赤い霧が集い、これもまた赤の絨毯の形態へと転ず。
そして――やつが来訪した。
周囲にどす黒いローブにも似た影――近衛の騎士たちを従え――纏い、髑髏の王は、贄を求める。
額の王冠には、そこだけ生々しい生気を帯びた赤い宝石があった。
紅のきらめきに飛来する物体が映る。
爆発。
ウーナの放った、エクスシアの銃弾が飽和攻撃となって、王に降り注いだのだ。
そして、その一撃によって船が大きく傾くと、船に乗り込んでいた歪虚どもが海へと落下していった。
船上での大爆発は炎を呼ぶ。
「やったか!?」
言いかけ時、今度はウーナが虚を突かれた。
炎と煙に紛れて伸びてきた黒い影がエクスシアの足に絡みついたのだ。そして、横倒しになりかけた甲板を転がるようにして、エクスシアもまた海へたたき落とされた。
「だから、なんだ!?」
飛行機能。
「なんだ?」
同音異義の言葉がつづく。
「なんだ、こりゅあぁぁ!?」
海から伸びる、手、手、手――
あまたの骸骨の手がTTTにからみつき、海へ引きずり込もうとしているのだ。そして、そのパワーは全力状態のエクスシアの動力をもわずかに上回る。
「くそっ!?」
脱しきれぬまま、ウーナは状況のわからぬ甲板に目をやるしかなかった。
●
燃え上がる炎に、浮かび上がる影。
生前からの残りと思わしき衣はすっかり燃え尽きているが、孤独な王は、その護衛とともに、まだ健在。
「さすがに声帯もないと、何もしゃべれないみたいね」
これまでに累積されたダメージによって自分の足が笑っていることを隠すように、アキノは歪虚をあざ笑う。
むろん、王からの返答は無言。
しかして実行。
影が刃となってアキノを襲う。
すでに動けない体では回避もなにもない。
体は空を跳び、床へ叩きつけられた。
(……――!?)
激痛が背中を走る。
(まずい――)
背骨をやったか。医師の直感が恐怖を呼ぶ。
痛感のあまり、動けない。
(まずい――……)
きいた言葉など思いつくこともできない。
恐怖がくる。
(えっ――)
違う、これは……――魔法? 誰?
癒しの力を覚える。
混濁した頭に声が響く。
「やらせません」
女医を庇うように立つ者がいた。
骸骨の口が動いた。
声はない。
いや、言葉にしなくてもわかる。
問うているのだ。
ならば、応えるが義務か。
そう――
「最後まで盾となって立つのがエクラの聖導士なの、ここで落ちる訳にはいかないのっ」
ディーナだ。
その体がまばゆい輝きに包まれたかと思うと、その光は爆破するかのように周囲に衝撃となって拡がった。
その威力に、王も態勢を崩す。
だが、崩すだけ。
周囲の騎士が錆びた武器を手にハンターたちに挑み続かかる。
「やらせん」
真の二本の剣が敵を砕き、目に見えに三撃目を放つ。
狼と鳥の幻獣をしたがえたハンターたちが割り込んできて、さらにディーナとアキノの盾となる。
だが、まだ歪虚は一掃できていない。
周囲から圧倒するような数は掃討しきれてはいない。
(もって――)
あと何発、いけるか。
ディーナは、すべて撃ち尽くすつもりだ。
まだ王は居続ける。
再び海上から迫ってきた死者たちも押し寄せてくる。
周囲の仲間や相棒の姿も有象無象の群像にかき消される。
あまたの剣が迫る。
「ダメ!?」
つい目を閉じた――すさまじい轟音。
つぶったはずの目の前がまっしろになった。
「なに……きゃああ!?」
「あぶねぇ!?」
目を開くと、あったはずの甲板が消滅して、海原だけが拡がっている。
海上にはすでにエクスシアTTTの姿はなく、なかば骨に埋もれながらも雨に濡れながら白い煙をあげている試作電磁加速砲だけが見えた。
「あ……」
「あ、じゃない!?」
先に、特別と紹介したこの艦船はリアルブルーの艦船を参考に、船内の各所にも区間にくぎり沈みにくくするダメージコントロールを、この世界の技術レベルでほどこしてはある。
だが、それにも限度がある。
すくなくとも全力のレールガンの直撃を受けて無事でいられることなど――ある種の魔法でも使わない限り――木造の船では不可能なのである。
「沈むのか!?」
ワイバーンを駆るレイアが叫ぶ。
大きく傾いた船はだが、まだ海上に残っている。
幸い、船の底ではなく甲板を貫いたおかげで沈没だけはまぬがれたらしい。
だが、もはや航行は不能だろう。
●
赤の雨がふる――
しんしんとふりつづく、天から血の涙は、かつてこの嵐に捕らわれ、殺され、捧げられた者たちの苦しみの涙なのかもしれない。
そこに王はたたずむ。
数体の騎士を従え、ただ無言のまま、まるで生前、親しかった人物を墓標を見舞ったかのような雰囲気で、雨の中でたたずむ。
喧騒はかき消えている。
不思議なまでの赤の静粛。
突然、銃声が、それをかき消した。
騎士が一体、崩れる。
「勝った気かね?」
目には憎しみを浮かべ、歪虚に拳銃を向けた女がいた。
血で染まった脇腹を光る爪で押さえ、足もぐらぐらとなっている。
ただ、そのまなざしに宿る強い意志のみで体を維持しているかのようだ。
王は、不埒な女を罰した。
騎士たちが王の剣となってコーネリアに突き刺さったのだ。
顔がまっさおになり、体中から血があふれる。
そのまま、なにも言えず彼女は顔から甲板に倒れた。
まだ、息はある。
最後の一撃を――王は片腕を上げようとする――なにかおかしいのか、王は自分の片腕を確認するように見上げる。
なにもない――
こんどは近づこうとするが、王の歩みが、なにか見えないものを遮られた。
歌声がしていた。
「せめてもの手向けだ。聞いていくといい」
静かな鎮魂歌が響く。
炎と煙に包まれた船上が、再び左右に揺れる。
コーネリアは、そのままぬれた甲板を滑っていく。
ただ、すでにぼんやりとしか見えぬはずの双眸に、それでも尽きぬ憎しみを浮かべコーネリアの白い指が、最後の銃弾を放った。
――……
彼女の唇が、妹の名を刻んでいた。
銃声に応じ、騎士たちが、王の周囲に盾のように散らばった。
さきほどのことを考えれば180度の周囲に気を払うのは当然だ。
そして、当然であったからこそ、その行動が王にとって致命傷になった。
「仇をとるぞ、依頼主!」
仲間達を鼓舞するような声が船上に響いた。
どこからか――
王たちは、あたりを見まわすが見つからない。
その時、空に影。
海上の敵を殲滅した三体のワイバーンの内に一体から、ひとつの影が飛び降りてきた。
レイアがマストから駆け下りながら王に斬りつける。
頭上から、まるでがら空きであった王冠に向かって剣を振り下ろした。
「お前に殺された船乗り達の痛み、思い知れ──!?」
●
一撃が決まった。
王の王冠が崩れ、宝玉が甲板に落ちた。
王たちが、声なき悲鳴をあげる。
石に罅が入ると、そこから嵐が生まれた。
外に向かってではない。
宝石の中へ向かっての暴風だ。
あるいはブラックホールといっていいかもしれない。
周囲を吸い込みはじめた。
王を、騎士を、兵たちを、まるで選別するかのように死者たちだけを吸い込み、空の赤すら吸い込み、最後には己そのものを吸い込み、揺れる空間の中に、赤い奇跡は消えていった――
●
「きゃあ!?」
びっくりするような、かわいらしい悲鳴で目が覚めた。
狼が水を払うように、体をぶるぶると振るわせると、その飛び散った水がかかったらしい主人が、やめなさいと笑っている。
「気がつかれましたか?」
聖導師が笑いかけてくる。
「水没しかけたコックピットの中で、よくも溺死しなかったものだな」
包帯姿の女医があきれたように言う。
もう一人のパイロットは横になっているが無事であるらしい。
「じきに目を覚ますだろうけどね――」
やれやれと髪をかく。
空は夕焼け。
あたりは星のかがやきが、ひとつ、ふたつ――
「さて、どうしたものかね」
すっかりつぶれた船は沈みはしないだろうが、本来の役割はもはや果たすことはないであろう。
「こりゃあ修理するより、新しいやつを買った方が安いな」
「いいのか?」
髭のないドワーフが問う。
「これだけの被害で沈みだけはしないんだ。この船の依頼主には、いい船のテストができたって報告するさ」
船長もまた商人だ。
そして、仲間の仇がとれたことで、依頼人としても、すっかり満足している。
生き残った船員たちが歓声をあげている。
遠くに島影と、火が見えた。
灯台か、人家か――
そこへ救援を求めて向かって飛んでいく、ワイバーンと幻獣の姿が月のシルエットになった。
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最終発言 2018/06/11 23:15:00 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/06/10 10:59:17 |