ゲスト
(ka0000)
【CF】ワルサー総帥、サンタになる
マスター:御影堂

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/12/25 09:00
- 完成日
- 2015/01/03 16:01
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
12月、リアルブルーでは多くの街がどこもかしこもクリスマスに染まるこの時期、クリムゾンウェストでもまた同じようにクリスマスムードに包まれる。
それはここ、崖上都市「ピースホライズン」でも変わらない。
むしろどこもかしこも華やかに、賑やかにクリスマス準備が進められていて。
リアルブルーの街に輝くという電飾の代わりに、ピースホライズンを彩るのは魔導仕掛けのクリスマス・イルミネーション。
立ち並ぶ家や街の飾りつけも、あちらこちらが少しずつクリスマスの色に染まっていく。
特に今年は、去年の秋に漂着したサルヴァトーレ・ロッソによって今までになく大量に訪れたリアルブルーからの転移者たちが、落ち着いて迎えられる初めてのクリスマス。
ハンターとして活躍している者も多い彼らを目当てにしてるのか、少しばかり変わった趣向を凝らす人々もいるようで。
果たして今年はどんなクリスマスになるのか、楽しみにしている人々も多いようだった。
●
そんなピースホライズンの熱気は、王国北部にあるルサスール領まで届いていた。
領主カフェ・w・ルサスールは、屋敷の飾り付けを使用人達が終えたのを見届け、ため息を漏らす。
「カフェ様、僭越ながら如何なされました?」
執事長の言葉に背を向けて、カフェは告げる。
「サチコは、帰ってこないのだろうな」
「あぁ……」
カフェの娘、サチコ・w・ルサスールは絶賛家出中なのである。
ピースホライズンで賑やかなクリスマスという行事を、彼女も耳にしているのだろうと思いつつ、飾り付けをしていたのだ。
「息子たちはいるのだ。チキンが冷めないうちに、食事にしようじゃないか」
「はい」
気持ちを切り替えて、カフェは執事長にいう。
窓の外は雪がちらついていた。
サチコは今、何をしているのだろうか。そんなことを考えながら、カフェは食堂へと向かうのであった。
「ハーッハッハッハ!! わるわるさー! わた、俺様がワルサー総帥サチコなのです、だぜ!」
同じく窓の外を見ながら、一人の少女が頭の悪い自己紹介を誰に向けてか告げていた。
しなやかな銀髪を腰まで伸ばし、勝ち気な笑顔を作るこの少女こそ、ルサスール家の息女サチコであった。非常に残念であるが、本当のことである。
「ワルサー総帥、食事の用意ができましたよ」
「やっとですわね。お腹すきましたわ……のだぜ」
お腹を押さえながら、サチコはテーブルに付く。
鶏肉のトマト煮込みに、干し肉で和えたパスタ。それとチーズが少々。ぶどうジュースを飲みながら、サチコは従者ジロの作った料理に舌鼓を打つ。
「今日は少し豪華ですね」
「なんでも、クリスマスという行事がこの時期にはあるらしいですよ。ピースホライズンの方は盛り上がっているらしいです」
行商人から聞いた知識を、ジロがつくつくと述べる。どういった行事なのかとサチコは聞くが、華やかに騒いでチキンやケーキを食べるらしいとか、モミの木を飾り立てて楽しむらしいとか今ひとつわかりにくい。
タロがそういえば、と立ち上がって書斎から本を引っ張り出してくる。
「リアルブルーに関する書籍に、そんな話が載っていましたね」
「タロ、今は食事中ですわ。後でゆっくり読みますから……だぜ」
行儀が悪いと窘められ、タロは頭を下げる。こういったところは、やはりお嬢様なのだなぁとタロは改めて思うのである。
温かい食事でカラダも温め、暖炉の側でハーブティーを飲む。
「クリスマス……クリスマス……っと」
サチコは興味深げに、タロが引っ張り出してきた本に目を通す。探していた項目は思ったよりもあっさり見つかった。
「これですわね」
じっくりと読み進めていくうちに、サチコの表情が明るくなる。好奇心が満たされているのだろうと、ジロは思った。そして、タロはなにか嫌な予感がすると庭で育てていた胃にやさしいハーブを煎じて飲むのだった。
夜も更けていき、就寝したサチコは「サンタ……ふふふ」と呟くのだった。
●
その出来事から、2日経った日のことだ。
「タロ、ジロ! サンタになるのだぜ!」
いきなり、サチコがそんなことを言い出したのだ。
サンタとはなにかとジロが問いかければ、サチコは鼻を鳴らして意気揚々と答える。
「とっても、悪いやつですわ!」
「……えー……」
同じ本を読んでいたタロが、如実にどうしてこうなったという言葉を顔に表していた。
だが、サチコは気づかずに自分の思うところを述べる。
「血に染まったような赤い服を着て、見知らぬ子供の家に入ってプレゼントを配るのです。きっと、プレゼントの出処は悪徳貴族や悪徳商人に違いありませんわ!」
拳を握って豪語するサチコに、タロが小さく、違うと思うとつぶやいた。
そんなタロのつぶやきにはやはり気づかず、サチコは続ける。
「義賊を目指すワルワル団としては、是非とも見習いませんと、だぜ!」
こうなっては止めることは出来ない。
誤解を解こうと、タロがアレコレいってみるが全て無下にされた。哀れ、タロ。
「さぁ、準備をしませんといけませんわだぜ。早速、贈り物を手に入れないと……」
このままでは、盗みに手をつけかねないサチコにジロが進言する。
「サチコ様、私によき考えがあります……」
翌日、カフェのもとをジロが訪れていた。
「サチコが帰ってくるのか!」
「一応、はぁ、まぁ、そうですね」
ジロが伝えたのは、サチコがこの屋敷(実家)に盗みに入るということだった。
何故かカフェが子供が喜ぶようなおもちゃを買い集めているという嘘をサチコに述べたのだ。もちろん、これからきちんと買い付ける予定であるが。
「どんなのを喜ぶかなぁ、サチコは……どう思う?」
「どう思うと言われましても、サチコ様はお配りになるものを盗みにくるのですが」
この人の話を聞いちゃいないあたり、サチコにそっくりだよなとジロはしみじみ思う。
なんとかかんとか、カフェが状況を把握して準備を任されることとなった。
「ひとりで配るのは大変だろう。いつものごとく使いをやらねばな!」
意気揚々とハンターオフィスへ使いを出す姿は、まさに親ばか。
クリスマスの陽気は偉大な領主の頭をこうも緩めるのかと戦慄するジロなのであった……。
12月、リアルブルーでは多くの街がどこもかしこもクリスマスに染まるこの時期、クリムゾンウェストでもまた同じようにクリスマスムードに包まれる。
それはここ、崖上都市「ピースホライズン」でも変わらない。
むしろどこもかしこも華やかに、賑やかにクリスマス準備が進められていて。
リアルブルーの街に輝くという電飾の代わりに、ピースホライズンを彩るのは魔導仕掛けのクリスマス・イルミネーション。
立ち並ぶ家や街の飾りつけも、あちらこちらが少しずつクリスマスの色に染まっていく。
特に今年は、去年の秋に漂着したサルヴァトーレ・ロッソによって今までになく大量に訪れたリアルブルーからの転移者たちが、落ち着いて迎えられる初めてのクリスマス。
ハンターとして活躍している者も多い彼らを目当てにしてるのか、少しばかり変わった趣向を凝らす人々もいるようで。
果たして今年はどんなクリスマスになるのか、楽しみにしている人々も多いようだった。
●
そんなピースホライズンの熱気は、王国北部にあるルサスール領まで届いていた。
領主カフェ・w・ルサスールは、屋敷の飾り付けを使用人達が終えたのを見届け、ため息を漏らす。
「カフェ様、僭越ながら如何なされました?」
執事長の言葉に背を向けて、カフェは告げる。
「サチコは、帰ってこないのだろうな」
「あぁ……」
カフェの娘、サチコ・w・ルサスールは絶賛家出中なのである。
ピースホライズンで賑やかなクリスマスという行事を、彼女も耳にしているのだろうと思いつつ、飾り付けをしていたのだ。
「息子たちはいるのだ。チキンが冷めないうちに、食事にしようじゃないか」
「はい」
気持ちを切り替えて、カフェは執事長にいう。
窓の外は雪がちらついていた。
サチコは今、何をしているのだろうか。そんなことを考えながら、カフェは食堂へと向かうのであった。
「ハーッハッハッハ!! わるわるさー! わた、俺様がワルサー総帥サチコなのです、だぜ!」
同じく窓の外を見ながら、一人の少女が頭の悪い自己紹介を誰に向けてか告げていた。
しなやかな銀髪を腰まで伸ばし、勝ち気な笑顔を作るこの少女こそ、ルサスール家の息女サチコであった。非常に残念であるが、本当のことである。
「ワルサー総帥、食事の用意ができましたよ」
「やっとですわね。お腹すきましたわ……のだぜ」
お腹を押さえながら、サチコはテーブルに付く。
鶏肉のトマト煮込みに、干し肉で和えたパスタ。それとチーズが少々。ぶどうジュースを飲みながら、サチコは従者ジロの作った料理に舌鼓を打つ。
「今日は少し豪華ですね」
「なんでも、クリスマスという行事がこの時期にはあるらしいですよ。ピースホライズンの方は盛り上がっているらしいです」
行商人から聞いた知識を、ジロがつくつくと述べる。どういった行事なのかとサチコは聞くが、華やかに騒いでチキンやケーキを食べるらしいとか、モミの木を飾り立てて楽しむらしいとか今ひとつわかりにくい。
タロがそういえば、と立ち上がって書斎から本を引っ張り出してくる。
「リアルブルーに関する書籍に、そんな話が載っていましたね」
「タロ、今は食事中ですわ。後でゆっくり読みますから……だぜ」
行儀が悪いと窘められ、タロは頭を下げる。こういったところは、やはりお嬢様なのだなぁとタロは改めて思うのである。
温かい食事でカラダも温め、暖炉の側でハーブティーを飲む。
「クリスマス……クリスマス……っと」
サチコは興味深げに、タロが引っ張り出してきた本に目を通す。探していた項目は思ったよりもあっさり見つかった。
「これですわね」
じっくりと読み進めていくうちに、サチコの表情が明るくなる。好奇心が満たされているのだろうと、ジロは思った。そして、タロはなにか嫌な予感がすると庭で育てていた胃にやさしいハーブを煎じて飲むのだった。
夜も更けていき、就寝したサチコは「サンタ……ふふふ」と呟くのだった。
●
その出来事から、2日経った日のことだ。
「タロ、ジロ! サンタになるのだぜ!」
いきなり、サチコがそんなことを言い出したのだ。
サンタとはなにかとジロが問いかければ、サチコは鼻を鳴らして意気揚々と答える。
「とっても、悪いやつですわ!」
「……えー……」
同じ本を読んでいたタロが、如実にどうしてこうなったという言葉を顔に表していた。
だが、サチコは気づかずに自分の思うところを述べる。
「血に染まったような赤い服を着て、見知らぬ子供の家に入ってプレゼントを配るのです。きっと、プレゼントの出処は悪徳貴族や悪徳商人に違いありませんわ!」
拳を握って豪語するサチコに、タロが小さく、違うと思うとつぶやいた。
そんなタロのつぶやきにはやはり気づかず、サチコは続ける。
「義賊を目指すワルワル団としては、是非とも見習いませんと、だぜ!」
こうなっては止めることは出来ない。
誤解を解こうと、タロがアレコレいってみるが全て無下にされた。哀れ、タロ。
「さぁ、準備をしませんといけませんわだぜ。早速、贈り物を手に入れないと……」
このままでは、盗みに手をつけかねないサチコにジロが進言する。
「サチコ様、私によき考えがあります……」
翌日、カフェのもとをジロが訪れていた。
「サチコが帰ってくるのか!」
「一応、はぁ、まぁ、そうですね」
ジロが伝えたのは、サチコがこの屋敷(実家)に盗みに入るということだった。
何故かカフェが子供が喜ぶようなおもちゃを買い集めているという嘘をサチコに述べたのだ。もちろん、これからきちんと買い付ける予定であるが。
「どんなのを喜ぶかなぁ、サチコは……どう思う?」
「どう思うと言われましても、サチコ様はお配りになるものを盗みにくるのですが」
この人の話を聞いちゃいないあたり、サチコにそっくりだよなとジロはしみじみ思う。
なんとかかんとか、カフェが状況を把握して準備を任されることとなった。
「ひとりで配るのは大変だろう。いつものごとく使いをやらねばな!」
意気揚々とハンターオフィスへ使いを出す姿は、まさに親ばか。
クリスマスの陽気は偉大な領主の頭をこうも緩めるのかと戦慄するジロなのであった……。
リプレイ本文
●
王国北部、ルサスール領。
雪が舞い、領の先に見える山々も白く染まり行く。山の裾野にひっそりと建つコテージのような小屋があった。
表看板には、堂々とワルワル団と掲げられているのをユーリィ・リッチウェイ(ka3557)は眺めていた。
「ここ、だよね」
扉近くまで行き、白い息を吐く。
ワルサー総帥ことサチコの仲間に先になるべく、ここまで来たのだ。
「わるわるさー、だよね」
「おや、どなたですかな」
伝え聞いた挨拶を思い出していると、後ろから声をかけられた。
振り返るとそこには、農家のような格好をした男が立っていた。
「わ、わるわるさー! ボクはユーリィといいます。ワルサー総帥の仲間になりたくて来ました」
「あぁ、ハンターの方ですね。お入りください」
男がタロであった。
サチコは起きてはいたものの、
「わた、俺様が途中で寝るわけにはいかないので昼間に寝ておくのですわ、だぜ!」
と挨拶もそこそこに告げる。
とはいえ、眠気が出てくるまでの間、
「ワルサー総帥の助けになりたくて、来たのであります」とユーリィはハーブティを飲みながら語らうのであった。
●
一方、平地にドンと立てられたルサスール家の屋敷では……。
「初めまして! 自分は玉彫というものです。領主様達にもサチコ様にも、楽しいクリスマスになるように、精一杯勤めさせて頂きます!」
玉彫(ka1418)を始め、ヴァイス(ka0364)、最上 風(ka0891)、スヴィトラーナ=ヴァジム(ka1376)、メンター・ハート(ka1966)が先んじて訪問をしていた。
すでに感涙気味のカフェを宥めつつ、
「ふふ、素敵なパーティにしたいじゃない? もちろん、主役は彼女よね」
スヴィトラーナが作戦会議の口火を切る。
そうだ、と言葉を継いだのはメンターだ。
「サチコの願いは、悪党からプレゼントを奪って配ること」
隣でヴァイスも頷く。続くメンターの、
「ならば、領主様にはとっておきの悪役になってほしい」という提案には驚きの表情を浮かべた。
パーティのサプライズイベントと出席者に伝え、余興にすればいいというのだ。
台本を見せ、セリフは考えてあると告げる。
「衣装も完璧なんだぞ」と意気込むメンターは、まるごとうさぎの着ぐるみ姿である。
不安な顔を見せるカフェに、
「俺たちがアポートするから大丈夫だ」とヴァイスが声をかけた。
「ふむ」
「私も補佐するわ。大きな問題には、しないようにするわ」
スヴィトラーナも重ね、カフェは了承した。
了承を得たことで、具体的な話し合いに入る。
「子供たちに配るプレゼントはどれぐらいあるのですか?」
風が具体的な配布量と配布可能な家々について問う。
カフェがジロに作らせていたリストを受け取り、サッと目を通す。
「助かります」
たまたま来ていたジロから、簡易な地図も預かることが出来た。
仲介役としてジロも同行し、風が先んじて屋敷を後にした。
残った中で、玉彫がまず会場について切り出す。
「もしよろしければ、彼女が楽しんで家に入ってこられるように、少しだけ工夫をこらす事をお許し頂けないでしょうか?」
玉彫の案では、会場の奥に別室を設け、プレゼントを用意するというものだった。
一方でスヴィトラーナが、大きなツリーを目印にプレゼントを置くことを提案した。
下に網を仕掛けておき、そのまま持ちされるようにするというのだ。
折衷案として、プレゼント会場から扉を開け放しツリーを置くことになった。
「サチコが、ドジをしちゃわないように、逃走する場所はしっかり開けておきましょ」
「屋敷の人と、安全でスリリングなルートを考えてくるじゃん」
玉彫は意気揚々とルート考案に動く。
一方のスヴィトラーナは、カフェからサチコ宛のプレゼントを受け取ることにした。
「華美なものはダメよ? 彼女の為になるものを選んであげてね」
「さて、親父さん。一番重要なことを決めていなかったな」
ここでヴァイスがずいっと前に出る。
「ワルサー総帥もといアンタの娘が義賊サンタとして活動する衣装だ!」
「なるほど!」
何がなるほどなのだろうと、スヴィトラーナは思ったという。
意気揚々とミニスカや短パン、仮面舞踏会ならドレス風もありだと語るヴァイス。
「……やはり、ここは親父さんの好みを優先すべきだと思っている」
きりっとした顔で、ヴァイスとカフェは真剣に話し始めるのだった。
●
サンタとして訪れる予定の村に、4つの人影があった。
一つはジロ、もうひとつは屋敷から一緒に来た風だ。
「待ってたよ、風ちゃん。大まかな子供たちのリスト作っておいたよ」
「そちらのジロさんに確認してもらって、根回しといこうか」
エティ・メルヴィル(ka3732)はリストをひらひらさせ、鳴神 真吾(ka2626)は風から地図を預かる。
ジロに子供の在籍調査として、橋渡しをしてもらう。
その上で、真吾と風がワルサー総帥の余興にちついて説明をしていく。
「と、いうわけなんですよ」
これも治世の賜物か、領民はあっさりと受け入れてくれた。
交渉してみると、夜に裏口を開けておいてくれるとまで行ってくれた。
「お子さんに合ったものをお渡ししますね」
「後日、メッセージをいただけると喜びますよ」
風の提案で、後日メッセージを回収することにした。
子供にはサプライズ感を出したいという真吾の思いを優先した形だ。
「男の子で、運動好き……と」
聞いた話をエティがリストと地図に書き入れていく。
詳細になればなるほど、実際の配布時間は短くなるはずだ。
「これだけ慕われている領主様は、今日、悪役ですか」
風はふと立ち止まって、屋敷の方向を見やる。
きっと、仮装パーティの準備で追われていることだろう。
こちらも、今のうちにできるだけのことをしなければ。
「女の子にはこのプレゼントかな?」
「そうだな。こっちは俺が行くぜ」
真吾たちも着実に、詳細な地図を作りつつあるのであった。
●
夕方、カフェの屋敷は仮装パーティの客で賑わっていた。
仮面を付け執事服を着た男が、そっと会場を抜けても気づかれないぐらいである。
その男、ヴァイスは裏で待機しているメンターのところへ向かっていた。
「そろそろ時間だが、大丈夫か?」
「大丈夫だ。問題ない」
変わらず、まるごとうさぎを着込んだメンターが飄々と答える。
その格好で本当にいいのかは重ねて聞けなかった。
会場ではスヴィトラーナが、招待客に紛れていた。
浮足立つ領主が、余計なことを言い出したりやりだしたりしないよう、見守る。
「領主様は、彼女の為にちょっと静かにしておきましょうね?」
挨拶をするフリをして領主に近づき、釘を刺す。
ふふっと笑いかけ、
「娘の雄姿見たいでしょう?」と問いかけた時だ。
「ハーハッハッハ」という笑い声が響いた。
声に聞き覚えのあるカフェが、興奮で下手なことを口走らないよう、スヴィトラーナがそっと押さえる。パルムっぽい帽子をかぶった給仕風の玉彫が、そっと他の招待客を移動させていく。
姿を表したのは、ズボン型のサンタ服を纏い、マントを羽織ったサチコだった。
義賊を目指すのであれば、義賊っぽいのがいいのではないかという結論で作られた衣装だった。
「わるわるさー。わた……俺様は義賊サンタクロースなのだぜ!」
今宵はワルワル団ではなく、サンタクロースとして活動するサチコが名乗りを上げる。
カフェを悪の領主と断じ、サチコは盗ませてもらうと叫ぶ。
同時に「そう簡単にいきませんよ」と仰々しい口調で、メンターが姿を表した。
「またお会いしましたね、ワルサー総帥」と告げるが、
「うさぎの知り合いなんて知りませ……だぜ」
覚醒状態でやや悪っぽいヴィジュアルを演出し、メンターは役を続ける。
「今のわたくしは、悪の教祖。この血の領主は我が忠実な下僕」
その娘がどのような相手か、確かめに来ていたのだとゆったりとした動作で語る。
だが、見た目がアレなのでどこか締まらない。
ぽかんとして何か言い出しそうな人たちには、ヴァイスや玉彫が余興のサプライズイベントと告げて回る。
「のこのこ出てくるとはいい度胸です。さあ、あそこにあるプレゼントが奪えるものなら奪ってみなさい!」
ご丁寧にもどこにあるのかを説明し、メンターは立ち向かっていく。
サチコは、こんなことになっていたとは、と純朴だった。
意を決してハリセンを繰り出せば、一撃でメンターは崩れる。
「くっ、さすがです。イートインに栄……あれ!」と負けゼリフを告げるのだった。
工夫通り、網でくくったプレゼントを奪いサチコは踵を返す。
同時にライトを落とし、庭の装飾に光を灯させた。
「義賊サンタからの贈り物だ」とカフェが告げ、招待客の注意が向く。
「お帰りはこちらです」と玉彫が先導し、あらかじめ用意した道へ誘導した。
去っていくサチコを見届けて数分後、何やら悲鳴が聞こえた気がした。きっと誘導用に設置した障害物にでも引っかかったのだろうと、玉彫は思うのであった。
スヴィトラーナが先んじて、
「中々趣きのある余興でしたわ」と招待客っぽい口調で告げたことで場は氷解した。
「サチコ様が参加されたいというので、そのようにしたのだ」
起き上がったメンターが、流れの劇団による小劇場だと説明する。
その上で、いきなりイートイン教は……と語り始めたので、
「メンターさん、ありがとうございました」とヴァイスに両脇に抱えられた。
「うおおお、ヴァイスなにをするんだ、何処へ連れて行く―!?」
叫びを上げながらフェードアウトさせられた。
「邪魔にならないよう先に、片付けてくるじゃん」
玉彫が障害物の撤去に出かけていると、裏口から去っていくサチコと荷物をわけて持つユーリィの後ろ姿が見えたのだった。
●
配布先の村に辿り着いた時には、すっかり日が落ちていた。
村の入口で荷物をおろし、一息ついたのもつかの間、
「それじゃあ、配るのだぜ」
意気揚々と構えるサチコと控えるユーリィに、三つの人影が近づいてくる。
「わるわるさー。ワルサー総帥っ! ジロちゃんとタロちゃんから聞いたの。エティも総帥のお手伝いがしたいな!」
「風も手伝いに来ました」
先に合流していたユーリィが仲間がやってくると説明してくれていたおかげで、サチコはすんなりと二人を受け入れた。
そのときである四人の前に、もう一人サンタが現れたのである。
「おや、俺の他にもサンタがいたようだ」
挑発的な口調で、サチコを見るのは真吾だった。
ペーペーサンタのサチコを説き伏せるように、真吾は滔々と口上を述べる。
「もしも、だ。一人でもそれを届けられなかった子供がいればどんな寂しい思いをすると思う?」
その発言に、サチコはびくっとする。
「そうサンタとはたった一夜で子供たち是認にプレゼントを配りきらねばならない。そんなタフでクールな仕事だ」
「うぬ」
「フッ、眠そうなサチコちゃんは自分がサンタを待ったほうがいいんじゃないか?」
「ハッハッハ。わた、俺様にかかれば問題ないのですわ、だぜ!」
真吾の挑発に、きりっとした顔でサチコは答える。
良い返事だと告げ、真吾は自分の分担へと去っていった。
「安心して、サチコちゃん。ボクたちが導くからね」
「それは心強いですわ。任せるのだぜ」
サチコはうんと頷くと、村の中を見定める。さて、どこから行くべきかと迷っているようだった。
「こんな事もあろうかと、配布先のルートを調べてきました」
風は地図を取り出し、ユーリィに手渡す。
直接渡し、準備していたことがわかると依頼されていたところまで、感付かれるのではないか。
という思惑があったかどうかはともかく、ユーリィの配慮でそれとなく導くことになっていた。
「さ、総帥さんは配ることに集中してください」
「あっちに子供の気配がするであります、わるわるさー」
早速、ユーリィが指差しサチコを子供のいる家に誘う。
家まで辿り着けば、風が裏口に導く。
「これが良いと思うのであります」
エティが、リストから選んだプレゼントをサチコに手渡す。
そろりそろりと仕事を終えて、次の家へ。
「鈴を慣らせば、雰囲気がでるよ」
エティの提案で、しゃんしゃんと音を鳴らす。
「ボクの読んだ文献には、HOHOHOと笑うとあります、わるわるさー!」
ユーリィの提案も素直に引き入れ、ホホホと笑うサチコである。
途中、風が屋敷から頂戴してきた温かい食べ物と飲み物で小休止を取る。
うつらうつらとするサチコのため、
「次の家に行きましょう、わるわるさー」
ユーリィとエティ、それに風も速度を上げていく。
時折、真吾がやってきては、
「やっぱり、君には荷が重いかな?」
と挑発して、奮起させる。
そのおかげで、予想以上に早く配り切ることが出来た。
「ホホホ、義賊サンタクロース終了なのだぜ」
「よく頑張ったな。こう言えば怒るだろうが、やはり君はいい子だよ」
真吾の褒め言葉に、
「そ、そんなこと言われても、嬉しくないのですわ!」
テンパりながらアジトへと帰っていくサチコなのであった。
●
「これから、寒くなるから……ね? お疲れ様」
プレゼントを配り終わり、眠っているサチコのもとへスヴィトラーナが訪れた。
疲れきって眠っているサチコの枕元に、マフラーを置く。
他にも一緒にやってきたエティたちも、プレゼントを添えていた。
あくる日、起きたサチコはびくっと身体を震わせた。
枕元にマフラーが置かれ、ベッド横にはシルクハットに悪の首領なりきりセット。
安眠グッズにアクセサリー、それからカフェから贈られたドレス……。
「サンタクロース……実在しますのね」
階段を降りると、タロとジロが神妙な面持ちをしていた。
サチコ同様プレゼントをもらったらしいのだが……。
カップ・ソーサーやマフラー、栞等に混じって栄養ドリンクが混ざっていた。
「ナイススメル……」
蓋の空いた瓶から漂う臭いは、日常へ引き戻す威力を持っていたという……。
悪の教主の役は伊達ではなかったという。
悪がこの世にあるかぎり、来年もまた義賊サンタクロースは現れることだろう。
王国北部、ルサスール領。
雪が舞い、領の先に見える山々も白く染まり行く。山の裾野にひっそりと建つコテージのような小屋があった。
表看板には、堂々とワルワル団と掲げられているのをユーリィ・リッチウェイ(ka3557)は眺めていた。
「ここ、だよね」
扉近くまで行き、白い息を吐く。
ワルサー総帥ことサチコの仲間に先になるべく、ここまで来たのだ。
「わるわるさー、だよね」
「おや、どなたですかな」
伝え聞いた挨拶を思い出していると、後ろから声をかけられた。
振り返るとそこには、農家のような格好をした男が立っていた。
「わ、わるわるさー! ボクはユーリィといいます。ワルサー総帥の仲間になりたくて来ました」
「あぁ、ハンターの方ですね。お入りください」
男がタロであった。
サチコは起きてはいたものの、
「わた、俺様が途中で寝るわけにはいかないので昼間に寝ておくのですわ、だぜ!」
と挨拶もそこそこに告げる。
とはいえ、眠気が出てくるまでの間、
「ワルサー総帥の助けになりたくて、来たのであります」とユーリィはハーブティを飲みながら語らうのであった。
●
一方、平地にドンと立てられたルサスール家の屋敷では……。
「初めまして! 自分は玉彫というものです。領主様達にもサチコ様にも、楽しいクリスマスになるように、精一杯勤めさせて頂きます!」
玉彫(ka1418)を始め、ヴァイス(ka0364)、最上 風(ka0891)、スヴィトラーナ=ヴァジム(ka1376)、メンター・ハート(ka1966)が先んじて訪問をしていた。
すでに感涙気味のカフェを宥めつつ、
「ふふ、素敵なパーティにしたいじゃない? もちろん、主役は彼女よね」
スヴィトラーナが作戦会議の口火を切る。
そうだ、と言葉を継いだのはメンターだ。
「サチコの願いは、悪党からプレゼントを奪って配ること」
隣でヴァイスも頷く。続くメンターの、
「ならば、領主様にはとっておきの悪役になってほしい」という提案には驚きの表情を浮かべた。
パーティのサプライズイベントと出席者に伝え、余興にすればいいというのだ。
台本を見せ、セリフは考えてあると告げる。
「衣装も完璧なんだぞ」と意気込むメンターは、まるごとうさぎの着ぐるみ姿である。
不安な顔を見せるカフェに、
「俺たちがアポートするから大丈夫だ」とヴァイスが声をかけた。
「ふむ」
「私も補佐するわ。大きな問題には、しないようにするわ」
スヴィトラーナも重ね、カフェは了承した。
了承を得たことで、具体的な話し合いに入る。
「子供たちに配るプレゼントはどれぐらいあるのですか?」
風が具体的な配布量と配布可能な家々について問う。
カフェがジロに作らせていたリストを受け取り、サッと目を通す。
「助かります」
たまたま来ていたジロから、簡易な地図も預かることが出来た。
仲介役としてジロも同行し、風が先んじて屋敷を後にした。
残った中で、玉彫がまず会場について切り出す。
「もしよろしければ、彼女が楽しんで家に入ってこられるように、少しだけ工夫をこらす事をお許し頂けないでしょうか?」
玉彫の案では、会場の奥に別室を設け、プレゼントを用意するというものだった。
一方でスヴィトラーナが、大きなツリーを目印にプレゼントを置くことを提案した。
下に網を仕掛けておき、そのまま持ちされるようにするというのだ。
折衷案として、プレゼント会場から扉を開け放しツリーを置くことになった。
「サチコが、ドジをしちゃわないように、逃走する場所はしっかり開けておきましょ」
「屋敷の人と、安全でスリリングなルートを考えてくるじゃん」
玉彫は意気揚々とルート考案に動く。
一方のスヴィトラーナは、カフェからサチコ宛のプレゼントを受け取ることにした。
「華美なものはダメよ? 彼女の為になるものを選んであげてね」
「さて、親父さん。一番重要なことを決めていなかったな」
ここでヴァイスがずいっと前に出る。
「ワルサー総帥もといアンタの娘が義賊サンタとして活動する衣装だ!」
「なるほど!」
何がなるほどなのだろうと、スヴィトラーナは思ったという。
意気揚々とミニスカや短パン、仮面舞踏会ならドレス風もありだと語るヴァイス。
「……やはり、ここは親父さんの好みを優先すべきだと思っている」
きりっとした顔で、ヴァイスとカフェは真剣に話し始めるのだった。
●
サンタとして訪れる予定の村に、4つの人影があった。
一つはジロ、もうひとつは屋敷から一緒に来た風だ。
「待ってたよ、風ちゃん。大まかな子供たちのリスト作っておいたよ」
「そちらのジロさんに確認してもらって、根回しといこうか」
エティ・メルヴィル(ka3732)はリストをひらひらさせ、鳴神 真吾(ka2626)は風から地図を預かる。
ジロに子供の在籍調査として、橋渡しをしてもらう。
その上で、真吾と風がワルサー総帥の余興にちついて説明をしていく。
「と、いうわけなんですよ」
これも治世の賜物か、領民はあっさりと受け入れてくれた。
交渉してみると、夜に裏口を開けておいてくれるとまで行ってくれた。
「お子さんに合ったものをお渡ししますね」
「後日、メッセージをいただけると喜びますよ」
風の提案で、後日メッセージを回収することにした。
子供にはサプライズ感を出したいという真吾の思いを優先した形だ。
「男の子で、運動好き……と」
聞いた話をエティがリストと地図に書き入れていく。
詳細になればなるほど、実際の配布時間は短くなるはずだ。
「これだけ慕われている領主様は、今日、悪役ですか」
風はふと立ち止まって、屋敷の方向を見やる。
きっと、仮装パーティの準備で追われていることだろう。
こちらも、今のうちにできるだけのことをしなければ。
「女の子にはこのプレゼントかな?」
「そうだな。こっちは俺が行くぜ」
真吾たちも着実に、詳細な地図を作りつつあるのであった。
●
夕方、カフェの屋敷は仮装パーティの客で賑わっていた。
仮面を付け執事服を着た男が、そっと会場を抜けても気づかれないぐらいである。
その男、ヴァイスは裏で待機しているメンターのところへ向かっていた。
「そろそろ時間だが、大丈夫か?」
「大丈夫だ。問題ない」
変わらず、まるごとうさぎを着込んだメンターが飄々と答える。
その格好で本当にいいのかは重ねて聞けなかった。
会場ではスヴィトラーナが、招待客に紛れていた。
浮足立つ領主が、余計なことを言い出したりやりだしたりしないよう、見守る。
「領主様は、彼女の為にちょっと静かにしておきましょうね?」
挨拶をするフリをして領主に近づき、釘を刺す。
ふふっと笑いかけ、
「娘の雄姿見たいでしょう?」と問いかけた時だ。
「ハーハッハッハ」という笑い声が響いた。
声に聞き覚えのあるカフェが、興奮で下手なことを口走らないよう、スヴィトラーナがそっと押さえる。パルムっぽい帽子をかぶった給仕風の玉彫が、そっと他の招待客を移動させていく。
姿を表したのは、ズボン型のサンタ服を纏い、マントを羽織ったサチコだった。
義賊を目指すのであれば、義賊っぽいのがいいのではないかという結論で作られた衣装だった。
「わるわるさー。わた……俺様は義賊サンタクロースなのだぜ!」
今宵はワルワル団ではなく、サンタクロースとして活動するサチコが名乗りを上げる。
カフェを悪の領主と断じ、サチコは盗ませてもらうと叫ぶ。
同時に「そう簡単にいきませんよ」と仰々しい口調で、メンターが姿を表した。
「またお会いしましたね、ワルサー総帥」と告げるが、
「うさぎの知り合いなんて知りませ……だぜ」
覚醒状態でやや悪っぽいヴィジュアルを演出し、メンターは役を続ける。
「今のわたくしは、悪の教祖。この血の領主は我が忠実な下僕」
その娘がどのような相手か、確かめに来ていたのだとゆったりとした動作で語る。
だが、見た目がアレなのでどこか締まらない。
ぽかんとして何か言い出しそうな人たちには、ヴァイスや玉彫が余興のサプライズイベントと告げて回る。
「のこのこ出てくるとはいい度胸です。さあ、あそこにあるプレゼントが奪えるものなら奪ってみなさい!」
ご丁寧にもどこにあるのかを説明し、メンターは立ち向かっていく。
サチコは、こんなことになっていたとは、と純朴だった。
意を決してハリセンを繰り出せば、一撃でメンターは崩れる。
「くっ、さすがです。イートインに栄……あれ!」と負けゼリフを告げるのだった。
工夫通り、網でくくったプレゼントを奪いサチコは踵を返す。
同時にライトを落とし、庭の装飾に光を灯させた。
「義賊サンタからの贈り物だ」とカフェが告げ、招待客の注意が向く。
「お帰りはこちらです」と玉彫が先導し、あらかじめ用意した道へ誘導した。
去っていくサチコを見届けて数分後、何やら悲鳴が聞こえた気がした。きっと誘導用に設置した障害物にでも引っかかったのだろうと、玉彫は思うのであった。
スヴィトラーナが先んじて、
「中々趣きのある余興でしたわ」と招待客っぽい口調で告げたことで場は氷解した。
「サチコ様が参加されたいというので、そのようにしたのだ」
起き上がったメンターが、流れの劇団による小劇場だと説明する。
その上で、いきなりイートイン教は……と語り始めたので、
「メンターさん、ありがとうございました」とヴァイスに両脇に抱えられた。
「うおおお、ヴァイスなにをするんだ、何処へ連れて行く―!?」
叫びを上げながらフェードアウトさせられた。
「邪魔にならないよう先に、片付けてくるじゃん」
玉彫が障害物の撤去に出かけていると、裏口から去っていくサチコと荷物をわけて持つユーリィの後ろ姿が見えたのだった。
●
配布先の村に辿り着いた時には、すっかり日が落ちていた。
村の入口で荷物をおろし、一息ついたのもつかの間、
「それじゃあ、配るのだぜ」
意気揚々と構えるサチコと控えるユーリィに、三つの人影が近づいてくる。
「わるわるさー。ワルサー総帥っ! ジロちゃんとタロちゃんから聞いたの。エティも総帥のお手伝いがしたいな!」
「風も手伝いに来ました」
先に合流していたユーリィが仲間がやってくると説明してくれていたおかげで、サチコはすんなりと二人を受け入れた。
そのときである四人の前に、もう一人サンタが現れたのである。
「おや、俺の他にもサンタがいたようだ」
挑発的な口調で、サチコを見るのは真吾だった。
ペーペーサンタのサチコを説き伏せるように、真吾は滔々と口上を述べる。
「もしも、だ。一人でもそれを届けられなかった子供がいればどんな寂しい思いをすると思う?」
その発言に、サチコはびくっとする。
「そうサンタとはたった一夜で子供たち是認にプレゼントを配りきらねばならない。そんなタフでクールな仕事だ」
「うぬ」
「フッ、眠そうなサチコちゃんは自分がサンタを待ったほうがいいんじゃないか?」
「ハッハッハ。わた、俺様にかかれば問題ないのですわ、だぜ!」
真吾の挑発に、きりっとした顔でサチコは答える。
良い返事だと告げ、真吾は自分の分担へと去っていった。
「安心して、サチコちゃん。ボクたちが導くからね」
「それは心強いですわ。任せるのだぜ」
サチコはうんと頷くと、村の中を見定める。さて、どこから行くべきかと迷っているようだった。
「こんな事もあろうかと、配布先のルートを調べてきました」
風は地図を取り出し、ユーリィに手渡す。
直接渡し、準備していたことがわかると依頼されていたところまで、感付かれるのではないか。
という思惑があったかどうかはともかく、ユーリィの配慮でそれとなく導くことになっていた。
「さ、総帥さんは配ることに集中してください」
「あっちに子供の気配がするであります、わるわるさー」
早速、ユーリィが指差しサチコを子供のいる家に誘う。
家まで辿り着けば、風が裏口に導く。
「これが良いと思うのであります」
エティが、リストから選んだプレゼントをサチコに手渡す。
そろりそろりと仕事を終えて、次の家へ。
「鈴を慣らせば、雰囲気がでるよ」
エティの提案で、しゃんしゃんと音を鳴らす。
「ボクの読んだ文献には、HOHOHOと笑うとあります、わるわるさー!」
ユーリィの提案も素直に引き入れ、ホホホと笑うサチコである。
途中、風が屋敷から頂戴してきた温かい食べ物と飲み物で小休止を取る。
うつらうつらとするサチコのため、
「次の家に行きましょう、わるわるさー」
ユーリィとエティ、それに風も速度を上げていく。
時折、真吾がやってきては、
「やっぱり、君には荷が重いかな?」
と挑発して、奮起させる。
そのおかげで、予想以上に早く配り切ることが出来た。
「ホホホ、義賊サンタクロース終了なのだぜ」
「よく頑張ったな。こう言えば怒るだろうが、やはり君はいい子だよ」
真吾の褒め言葉に、
「そ、そんなこと言われても、嬉しくないのですわ!」
テンパりながらアジトへと帰っていくサチコなのであった。
●
「これから、寒くなるから……ね? お疲れ様」
プレゼントを配り終わり、眠っているサチコのもとへスヴィトラーナが訪れた。
疲れきって眠っているサチコの枕元に、マフラーを置く。
他にも一緒にやってきたエティたちも、プレゼントを添えていた。
あくる日、起きたサチコはびくっと身体を震わせた。
枕元にマフラーが置かれ、ベッド横にはシルクハットに悪の首領なりきりセット。
安眠グッズにアクセサリー、それからカフェから贈られたドレス……。
「サンタクロース……実在しますのね」
階段を降りると、タロとジロが神妙な面持ちをしていた。
サチコ同様プレゼントをもらったらしいのだが……。
カップ・ソーサーやマフラー、栞等に混じって栄養ドリンクが混ざっていた。
「ナイススメル……」
蓋の空いた瓶から漂う臭いは、日常へ引き戻す威力を持っていたという……。
悪の教主の役は伊達ではなかったという。
悪がこの世にあるかぎり、来年もまた義賊サンタクロースは現れることだろう。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/21 19:09:45 |
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相談卓 最上 風(ka0891) 人間(リアルブルー)|10才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2014/12/25 00:27:00 |