ゲスト
(ka0000)
宝石を飲み込んだのはどのネズミ?
マスター:ザント

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~4人
- サポート
- 0~20人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 7日
- 締切
- 2018/06/25 09:00
- 完成日
- 2018/06/29 23:54
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「ようこそおいで下さいました、キャシー様」
高級店の従業員風の男性はキャシーと呼んだ派手な服装をした四十代ほどのザ・マダムといった感じの女性を丁寧に迎えた。
「前にお願いしたのが入ってきたと聞いたざます。早く見せるざます」
だが、キャシーはそれを当然と思っているのか、反応すらせず、すぐに用件を告げた。
此処は港湾都市ポルトワールにある高級宝石店だ。
都市の性質上珍しい宝石等が集まりやすく、ポルトワールの中でも様々な宝石を取り揃えてあることでかなり有名な店だ。
「はい。ご用意してあります。どうぞこちらに」
男性従業員はそれをおくびにも出さず、完璧な営業スマイルでキャシーを案内する。
それを当然とばかりに胸を張って案内される最中、キャシーの目にある宝石が映った。
それは、高級店には少々場違い感があるまだ若い男女が見ていた宝石だ。
キャシーは店内に入ってすぐに男女が居ることに気づいたが、大方背伸びして高級店に入ってきた平民だろうと思って気にしていなかった。
しかし、今は違う。
男女が見ている宝石は、ビー玉ほどの大きさだが桃色と橙色の中間色の美しい宝石で、キャシーはその宝石について男性従業員に尋ねた。
「ちょっと」
「はい、なんでしょうか。キャシー様」
「あの宝石はなんていうざます?」
若い男女が見ている宝石を指差すと、男性従業員はその宝石を見て小さく納得の言葉を漏らすと、営業スマイルを浮かべた。
「あれはパパラチアサファイアという幻の宝石とも呼ばれる大変珍しい宝石でございます」
「そう。じゃあ、あちらの宝石もいただくざます」
キャシーがそう言うと、男性従業員は困ったように笑った。
「申し訳ございません。当店には在庫が無く、あちらのパパラチアサファイアはあちらのお客様が持ち込んで来たものなので売り物ではございません。当店で加工などは致しましたが……」
「じゃあ、いつになったら手に入るんざます?」
「申し訳ございません。何分、パパラチアサファイアは大変珍しい物ですので分かりかねます。入荷しましたらキャシー様にもお伝え致しますので……」
対応として問題ないどころか最適な対応をした男性従業員だが、キャシーは納得できずに金切り声を上げた。
「もういいざます!」
「あ、キャシー様!」
ズンズンと男女の下へ歩いていき、キャシーに気づいた男女は呆けた表情でキャシーを見る。
「そちらの宝石を売って下さらないざます?」
「え」
「いや、それは……」
「キャシー様。是非ともキャシー様におすすめしたい宝石がございます!」
男女は顔を見合わせて困惑し、対応していた従業員が即座に間に入った。
「こちらの宝石はいかがでしょう。大粒のサファイアで、これほどの大きさの物は中々見つかりませんよ!」
「そんな物はいらないざます! 私が欲しいのはその宝石ざます!」
「キャシー様、そちらの宝石はそちらのお客様たちの物ですのでっ」
男性従業員も加わり、何とかして治めようとするがキャシーは止まらない。
「言い値で買うざます!」
「あの、私たちは帰りますっ」
「お客様方、ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。次のご来店時にはサービスをさせて頂きますので……」
箱に入れ、宝石を持って帰ろうとする男女に向かって店主まで出てきて頭を下げて謝ると、男女たちは逆に恐縮してしまったのか頭を下げ返す。
キャシーの金切り声と説得する従業員たちの声が店内に響く中、男女は店を出た。
「離すざます!」
「あっ!」
従業員たちの制止を振り切ったキャシーは男女を追って店を出ると、宝石を持つ女性へと掴みかかった。
「それは私にこそ似合うざます!」
「きゃっ」
「おい!」
女性に掴みかかるのを見て、我慢の限界が来たのか。
それとも店内で揉め事はしないように我慢していたからなのか。
どちらだろうと、男性は声を荒あげてキャシーを引き剥がしにかかった。
「離すざますっ!」
キャシーが男性の掴む手を振り払った時、女性の手も払われ、手に持っていた宝石が入った箱が宙を舞った。
箱は地面に落ち、宝石が飛び出して地面を転がり、そしてそこにあった排水口へと落ちていった。
「ああああああ!」
キャシーは声を上げながら、女性は慌てて穴を覗き込む。
すると、そこには岩のような見た目の大きなネズミたちがおり、落ちてきた宝石に向かって鼻を鳴らしていた。
「あっ!」
そして、口を開くと一口に飲み込んでしまった。
「この、ネズミ!」
キャシーが怒鳴ると、ネズミたちはその声に驚いてバラバラに散っていき、そして下水道の闇へとその姿を消していった。
「その後、騒ぎを聞きつけた海軍により事情聴取。男女が宝石を見つけて欲しいと主張した為、経費はマダム負担で宝石捜索の依頼がされました……全く、我儘なマダムの所為で仕事が増えてしまいましたよ」
ハンターオフィスの女性職員は、ハンター時代に同じようなことを経験したことでもあるのか心底うんざり様子でため息つき、場所とネズミについてを教えてくれた。
「起こった場所は街の中でも下水道が整った区域で、運悪く店と街道の間にあった排水口に宝石が落ちてしまったようです。宝石が落ちた先は雨水用の下水道で、汚水は流れていません。つい先日雨が降りましたので、下水道にも水が残っていると思いますが、多少濁っていてもせいぜいが泥水程度かと。そして宝石を飲み込んだと思われるネズミは、ロックラットと呼ばれる雑魔だと思われます。鉱石類を好んで飲み込み、飲み込んだ鉱石の色が岩のように硬い表皮に現れるという大型のネズミです。それ以外は通常のドブネズミと同じなので、すばしっこいことと表皮が硬い以外に注意は必要ないでしょう」
職員はそこまで言い、気合を入れ直す為に自分の顔を軽く叩くと依頼内容を伝えてきた。
「今回の依頼主は件のマダムから。理由はお聞きにならないでください。実際に下水道に降りて、宝石を飲み込んだロックラットを見つけ、宝石を取り戻してください。尚、下水道は非常に入り組んでいる上に灯りがありませんので、灯り……湿気が多いので松明以外の灯りを持っていくことをおすすめします。後、これはついでなのですが、ロックラットは口に入らない大きさの鉱石を見つけると、それを削って食べてしまうのですが……どうやらロックラットによって下水道の柱が傷つけられているそうなので、可能な範囲で件のロックラット以外の駆除もお願いしたいと海軍から依頼がありました。ですので、可能であればこちらもお願いします」
説明を終えた職員はふと思い出したように。
「そうそう、件のマダムは海軍にこっぴどく叱られたらしいですよ。いい気味です」
と、スカッとした表情で笑った。
高級店の従業員風の男性はキャシーと呼んだ派手な服装をした四十代ほどのザ・マダムといった感じの女性を丁寧に迎えた。
「前にお願いしたのが入ってきたと聞いたざます。早く見せるざます」
だが、キャシーはそれを当然と思っているのか、反応すらせず、すぐに用件を告げた。
此処は港湾都市ポルトワールにある高級宝石店だ。
都市の性質上珍しい宝石等が集まりやすく、ポルトワールの中でも様々な宝石を取り揃えてあることでかなり有名な店だ。
「はい。ご用意してあります。どうぞこちらに」
男性従業員はそれをおくびにも出さず、完璧な営業スマイルでキャシーを案内する。
それを当然とばかりに胸を張って案内される最中、キャシーの目にある宝石が映った。
それは、高級店には少々場違い感があるまだ若い男女が見ていた宝石だ。
キャシーは店内に入ってすぐに男女が居ることに気づいたが、大方背伸びして高級店に入ってきた平民だろうと思って気にしていなかった。
しかし、今は違う。
男女が見ている宝石は、ビー玉ほどの大きさだが桃色と橙色の中間色の美しい宝石で、キャシーはその宝石について男性従業員に尋ねた。
「ちょっと」
「はい、なんでしょうか。キャシー様」
「あの宝石はなんていうざます?」
若い男女が見ている宝石を指差すと、男性従業員はその宝石を見て小さく納得の言葉を漏らすと、営業スマイルを浮かべた。
「あれはパパラチアサファイアという幻の宝石とも呼ばれる大変珍しい宝石でございます」
「そう。じゃあ、あちらの宝石もいただくざます」
キャシーがそう言うと、男性従業員は困ったように笑った。
「申し訳ございません。当店には在庫が無く、あちらのパパラチアサファイアはあちらのお客様が持ち込んで来たものなので売り物ではございません。当店で加工などは致しましたが……」
「じゃあ、いつになったら手に入るんざます?」
「申し訳ございません。何分、パパラチアサファイアは大変珍しい物ですので分かりかねます。入荷しましたらキャシー様にもお伝え致しますので……」
対応として問題ないどころか最適な対応をした男性従業員だが、キャシーは納得できずに金切り声を上げた。
「もういいざます!」
「あ、キャシー様!」
ズンズンと男女の下へ歩いていき、キャシーに気づいた男女は呆けた表情でキャシーを見る。
「そちらの宝石を売って下さらないざます?」
「え」
「いや、それは……」
「キャシー様。是非ともキャシー様におすすめしたい宝石がございます!」
男女は顔を見合わせて困惑し、対応していた従業員が即座に間に入った。
「こちらの宝石はいかがでしょう。大粒のサファイアで、これほどの大きさの物は中々見つかりませんよ!」
「そんな物はいらないざます! 私が欲しいのはその宝石ざます!」
「キャシー様、そちらの宝石はそちらのお客様たちの物ですのでっ」
男性従業員も加わり、何とかして治めようとするがキャシーは止まらない。
「言い値で買うざます!」
「あの、私たちは帰りますっ」
「お客様方、ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。次のご来店時にはサービスをさせて頂きますので……」
箱に入れ、宝石を持って帰ろうとする男女に向かって店主まで出てきて頭を下げて謝ると、男女たちは逆に恐縮してしまったのか頭を下げ返す。
キャシーの金切り声と説得する従業員たちの声が店内に響く中、男女は店を出た。
「離すざます!」
「あっ!」
従業員たちの制止を振り切ったキャシーは男女を追って店を出ると、宝石を持つ女性へと掴みかかった。
「それは私にこそ似合うざます!」
「きゃっ」
「おい!」
女性に掴みかかるのを見て、我慢の限界が来たのか。
それとも店内で揉め事はしないように我慢していたからなのか。
どちらだろうと、男性は声を荒あげてキャシーを引き剥がしにかかった。
「離すざますっ!」
キャシーが男性の掴む手を振り払った時、女性の手も払われ、手に持っていた宝石が入った箱が宙を舞った。
箱は地面に落ち、宝石が飛び出して地面を転がり、そしてそこにあった排水口へと落ちていった。
「ああああああ!」
キャシーは声を上げながら、女性は慌てて穴を覗き込む。
すると、そこには岩のような見た目の大きなネズミたちがおり、落ちてきた宝石に向かって鼻を鳴らしていた。
「あっ!」
そして、口を開くと一口に飲み込んでしまった。
「この、ネズミ!」
キャシーが怒鳴ると、ネズミたちはその声に驚いてバラバラに散っていき、そして下水道の闇へとその姿を消していった。
「その後、騒ぎを聞きつけた海軍により事情聴取。男女が宝石を見つけて欲しいと主張した為、経費はマダム負担で宝石捜索の依頼がされました……全く、我儘なマダムの所為で仕事が増えてしまいましたよ」
ハンターオフィスの女性職員は、ハンター時代に同じようなことを経験したことでもあるのか心底うんざり様子でため息つき、場所とネズミについてを教えてくれた。
「起こった場所は街の中でも下水道が整った区域で、運悪く店と街道の間にあった排水口に宝石が落ちてしまったようです。宝石が落ちた先は雨水用の下水道で、汚水は流れていません。つい先日雨が降りましたので、下水道にも水が残っていると思いますが、多少濁っていてもせいぜいが泥水程度かと。そして宝石を飲み込んだと思われるネズミは、ロックラットと呼ばれる雑魔だと思われます。鉱石類を好んで飲み込み、飲み込んだ鉱石の色が岩のように硬い表皮に現れるという大型のネズミです。それ以外は通常のドブネズミと同じなので、すばしっこいことと表皮が硬い以外に注意は必要ないでしょう」
職員はそこまで言い、気合を入れ直す為に自分の顔を軽く叩くと依頼内容を伝えてきた。
「今回の依頼主は件のマダムから。理由はお聞きにならないでください。実際に下水道に降りて、宝石を飲み込んだロックラットを見つけ、宝石を取り戻してください。尚、下水道は非常に入り組んでいる上に灯りがありませんので、灯り……湿気が多いので松明以外の灯りを持っていくことをおすすめします。後、これはついでなのですが、ロックラットは口に入らない大きさの鉱石を見つけると、それを削って食べてしまうのですが……どうやらロックラットによって下水道の柱が傷つけられているそうなので、可能な範囲で件のロックラット以外の駆除もお願いしたいと海軍から依頼がありました。ですので、可能であればこちらもお願いします」
説明を終えた職員はふと思い出したように。
「そうそう、件のマダムは海軍にこっぴどく叱られたらしいですよ。いい気味です」
と、スカッとした表情で笑った。
リプレイ本文
●
港湾都市ポルトワールの中でも下水道が整った地域。
その地下にある下水道には普段はあまり人は足を踏み入れない場所だ。
そんな場所を四人の女性たちは入口から覗き込んでいた。
「まだ少し雨水が残っているな……」
「雨水だから、そんなにばっちくないよね……?」
「ヘドロからメタンなどは雨によって流されているので、この雨水はさほど汚くはないと思いますよ」
レイア・アローネ(ka4082)が懸念していることと夢路 まよい(ka1328)の呟きに対してフィロ(ka6966)が答えるが、それでも二人の顔は晴れない。
「下水での仕事はノリノリとは行きませんが、大事な宝石の為です……。頑張りましょうか……。……ついでにできるだけ鼠も倒しておきましょう……」
サクラ・エルフリード(ka2598)の呟きに三人は頷いた。
「下水道は広さが広さなので分離行動をしましょう」
「そうだな。分かれて行動した方が早く終わる」
フィロとレイアが分かれて行動することを提案する。
「内訳はどうするの?」
まよいの言葉に応じ、四人で話し合った結果、まよいとフィロ、サクラとレイアに分かれることが決まった。
そして灯りとしてまよいとフィロは魔法がかけられた水晶球を、レイアはハンディライトに光を灯すと順に下水道へと降りていく。
最後にサクラも下水道へと降りると、光の精霊を自身の武器へと宿して灯りを得る。
「確かロックラットに飲み込まれた宝石はビー玉ほどの大きさで、色は桃色と橙色の中間色だったよね」
「はい……。その通りです……」
まよいの確認にサクラが頷きながら答えると、まよいはお礼を言うと質問をした。
「それじゃあ、ウォーターウォークが欲しい人はいるかしら?」
まよいの質問にレイアとサクラが手を挙げる。
「私は欲しいな」
「私もお願いします……」
「フィロは?」
「どちらでも構いません」
「じゃあ、ついでにかけちゃうね」
全員にウォーターウォークをかけ終わると、少し考え込むまよい。
「私の勘がこっちだって言ってるよ!」
そして声を上げるや否や歩きだした。
「レイア様、サクラ様、ご武運を」
「あぁ、そちらもな」
「お互い、頑張りましょう……」
最後に一礼すると、フィロは直進するまよいを追いかけていく。
「私たちはこちらに行きましょう……」
「あぁ」
まよいとフィロが直進していくのを見送り、サクラとレイアも下水道の奥へと向かっていった。
●
サクラたちと分かれたまよいたちは、まずは一番奥までまっすぐ行くことにした。
フィロの入り口方面へと戻る進路を取りたいという意見に、まよいも賛成したからだ。
奥を目指して歩いていた二人は、一匹の岩のような表皮を持つ大きなネズミを見つけると、二人は目配せをして、すぐさま戦闘態勢へと入った。
まずはフィロが飛び出してロックラットを叩き潰さんとしたが、やはりそこはネズミ。
持ち前の素早さを発揮されて寸前で避けられ、まよいの追撃である光る矢をも華麗に避けきってみせた。
「キィッ」
甲高い声を上げながら襲い掛かるロックラットの攻撃をフィロは避ける中、まよいは呟く。
「あなたは違うわね」
勘なのか、そう呟いたまよいの目の前でフィロが振り下ろした拳でロックラットは叩き潰された。
雑魔だからかロックラットの死骸が消え、その代わりに石の山が姿を現す。
その山を崩し、フィロはその中に宝石がないかを探す。
宝石は桃色と橙色の中間色をしているので、灯りがあれば他の物とはすぐに見分けがつくのだが……。
「違った?」
「はい」
別の個体だったようで、宝石は見つからなかった。
「このまま調べながら進みましょう」
「そうね」
フィロは脳裏で撤退路を確認しながら、まよいの前を歩いてロックラットを探す。
灯りが届く範囲しか見えないため、突如現れると言うこともありえるので二人は僅かな音にも耳を傾けていた。
周囲に気を配りながら歩き続け、ようやく一番奥までたどり着くといった所で、いち早くまよいは気づき声を上げた。
「来るよ!」
それとほぼ同時に、前後から灯りの下へロックラットたちが躍り出てくる。
フィロは手近なロックラットを蹴りつけたようとしたが、直前で避けられて空を蹴る。
「やはり素早いですね」
まよいが十にも及ぶ光の矢を蹴りを避けたロックラットも含めた十体へ向かって放ち、二体に直撃して他には避けられてしまう。
「まだ頑張るんだね」
まよいが不満そうに呟く中、多くのロックラットが灯りの下でひしめき合っている。
二人はその様子を見て、軽く体を震わせた。
「ギキィッ!」
「ギィ!」
それを隙と見たのか、一斉に襲い掛かってくるロックラットたち。
幾つかのロックラットの攻撃は避けたが、その多さから全てを避けきれず、まよいは腕に、フィロは脚にロックラットの牙が突き立った。
「全然痛くないよっ」
「この程度では傷つきませんよ」
だが、そこに装備していた装備のおかげでロックラットの牙は通らず、二人はロックラットを振り払う。
そしてフィロは振り払ったロックラットを踏み潰し、まよいは十本の光の矢を放ち、その内の七本がロックラットたちを貫いた。
仲間がやられたからか、単に近かったからか噛み付こうとするロックラットたちを避ける二人。
「キリがありませんね」
「ほんとにね!」
そう呟きながらフィロはロックラットを叩き潰し、まよいは五匹のロックラットを光の矢で仕留める。
だが、理由はわからないが穴を埋めるかのように次々とロックラットたちが光の下へ集まってくる。
表皮の色と消えた死骸の内容物から、ここには宝石を飲み込んだ個体が居ないと判断したフィロはまよいに提案をする。
「消耗した後に四方八方からかじられてはいけません。戦いながら入口方面へ撤退しましょう」
「そ、それは嫌!」
まよいはかじられるのを想像したのか、軽く体を震わせるとすぐさまフィロの提案に乗り、襲い来るロックラットを避けながら入口方面へと向かい始めた。
●
「見当たらないな」
「そうですね……」
まよいたちと分かれて下水道を進んでいるサクラとレイア。
すぐにロックラットに出会うかと思えば、そうではなかった。
まるで何処かに集まっているかのようにロックラットは一匹も見当たらなかった。
耳を澄ますが、下水道内に二人の足音だけが反響していて、それ以外の音は何も聞こえない。
「とりあえず、広い場所まで行こう」
「分かりました……」
サクラはレイアの提案に頷き、そのまま進み、二人は中央を走る水路にたどり着いた。
レイアは持っているライトで奥を照らし、見える限りだが何匹かいるロックラットを発見する。
とはいえ、遠すぎて近寄ったら逃げられる可能性もある。
そう考えたレイアは軽く息を吐くとサクラに向かって口を開いた。
「仕方ない。誘い出すとするか……ソウルトーチを使うが、いいか?」
「ソウルトーチですか……。分かりました……」
サクラからも了承を得たレイアは、炎のようなをオーラを体に纏う。
「これで歩いていればロックラットは私に向かって……」
レイアが言葉の途中で口を閉じると、それはサクラの耳にも届いてきた。
大量の四足歩行の足音。
それはまっすぐにサクラとレイアの方へと向かってきている。
「早速ですね……」
「あぁ。思った以上に数が多いがな」
ロックラットが灯りの下へ現れるのと同時に、レイアは武器で全面に来た三匹のロックラットを薙ぎ払った。
サクラも輝く光の弾を放ち、当たったロックラットは衝撃を受けたかのように吹き飛び、壁にぶつかって花を咲かせる。
「キーッ!」
「ギキィ!」
ロックラットたちがレイアに飛びかかろうとするが、届く前に地面へと落ちた。
「ふっ!」
レイアはそれを気にすることなく、再度三匹のロックラットを薙ぎ払いながら斬り捨てると、サクラが放った影が固まったかのような黒い塊がレイアの後ろからロックラットを吹き飛ばす。
「キーッ!」
「ん?」
消える死骸を乗り越えて来たロックラットの攻撃を避け、レイアはそのロックラットの表皮に違和感を感じた。
続けてくるロックラットの攻撃も避けながら、他のロックラットとは違う感じのする個体をじっと見つめる。
極僅かではあるが、一か所が桃色のような、橙色のような色をして……。
「見つけたぞ!」
それに気づいたレイアは誰に言うのでもなく叫び、宝石を飲み込んだと思われるロックラットへと剣を突き立てた。
「ギッ」
短い悲鳴を上げて息絶えるロックラット。
レイアが死骸となったロックラットの上に立つ中、サクラは光る矢を放ち、レイアに近寄ろうとするロックラットを吹き飛ばす。
せっかく見つけたのかもしれないのに、また宝石をロックラットに飲み込まれてはたまらないからだ。
二人は消えていくロックラットの死骸に注意を向けながら、ロックラットの攻撃を避けていく。
完全に消えた死骸の後には、小さな石の山だけが残る。
すかさずレイアがその山を蹴り崩すとそれは現れた。
ビー玉ほどの桃色と橙色の中間色に光る宝石。
これが目的の宝石だと確信したレイアは、ロックラットに飲み込まれる前に素早く回収した。
「当たりですか……?」
「恐らくな」
レイアは手の中の宝石を見やり、再度聞いた通りの特徴であることを確認して頷く。
「では、後は駆除をするだけですね……」
「あぁ、そうだなっ!」
宝石を見つけた二人は次から次へと現れるロックラットを見やり、海軍からの依頼であるロックラットの駆除に目的を移行した。
●
ロックラットを粗方駆除し終えた四人は、下水道から出ると揃って息を吐いたをついた。
「はぁ~、やっと出れたよ~」
「場所が場所だった分、空気が綺麗に感じるな」
「確かにそう感じますね」
「まずは匂いを取って身体、綺麗にしたいですね……。このままでは流石に色々とアレです……」
大きく息を吐いて呟くまよいに息苦しさから解放された表情のレイア、レイアの言葉に頷くフィロ、色々と気になっているサクラ。
閉鎖空間で大きなネズミを駆除するというのは男性でも苦痛だというのに、女性である彼女たちにとってはそれ以上だろう。
全員は自分が思っている以上に疲労を感じており、その証拠に全員が疲労が表情に出ているが、それを隠そうともしていない。
「あ、そうだ。宝石を見つけたんだよね。見せて見せてっ」
「あぁ、これだ」
レイアが回収した宝石を出すと、三人がその宝石に目を向ける。
「とても美しい宝石ですね」
「わぁ~、綺麗だね~」
「何となく儚さを感じる宝石ですね……」
「例のマダムが欲しがるのも無理はないな」
レイアの言葉に三人は頷く。
「宝石をハンターオフィスに提出した後、お風呂に行きませんか……?」
「あ、それいいね!」
「そうだな。そうしよう」
「では、私もご一緒させていただきます」
サクラの提案に全員が乗り、四人はハンターオフィスに向けて歩みを進めた。
その後、ハンターオフィスに宝石を提出した後に四人はお風呂へと向かっていった。
港湾都市ポルトワールの中でも下水道が整った地域。
その地下にある下水道には普段はあまり人は足を踏み入れない場所だ。
そんな場所を四人の女性たちは入口から覗き込んでいた。
「まだ少し雨水が残っているな……」
「雨水だから、そんなにばっちくないよね……?」
「ヘドロからメタンなどは雨によって流されているので、この雨水はさほど汚くはないと思いますよ」
レイア・アローネ(ka4082)が懸念していることと夢路 まよい(ka1328)の呟きに対してフィロ(ka6966)が答えるが、それでも二人の顔は晴れない。
「下水での仕事はノリノリとは行きませんが、大事な宝石の為です……。頑張りましょうか……。……ついでにできるだけ鼠も倒しておきましょう……」
サクラ・エルフリード(ka2598)の呟きに三人は頷いた。
「下水道は広さが広さなので分離行動をしましょう」
「そうだな。分かれて行動した方が早く終わる」
フィロとレイアが分かれて行動することを提案する。
「内訳はどうするの?」
まよいの言葉に応じ、四人で話し合った結果、まよいとフィロ、サクラとレイアに分かれることが決まった。
そして灯りとしてまよいとフィロは魔法がかけられた水晶球を、レイアはハンディライトに光を灯すと順に下水道へと降りていく。
最後にサクラも下水道へと降りると、光の精霊を自身の武器へと宿して灯りを得る。
「確かロックラットに飲み込まれた宝石はビー玉ほどの大きさで、色は桃色と橙色の中間色だったよね」
「はい……。その通りです……」
まよいの確認にサクラが頷きながら答えると、まよいはお礼を言うと質問をした。
「それじゃあ、ウォーターウォークが欲しい人はいるかしら?」
まよいの質問にレイアとサクラが手を挙げる。
「私は欲しいな」
「私もお願いします……」
「フィロは?」
「どちらでも構いません」
「じゃあ、ついでにかけちゃうね」
全員にウォーターウォークをかけ終わると、少し考え込むまよい。
「私の勘がこっちだって言ってるよ!」
そして声を上げるや否や歩きだした。
「レイア様、サクラ様、ご武運を」
「あぁ、そちらもな」
「お互い、頑張りましょう……」
最後に一礼すると、フィロは直進するまよいを追いかけていく。
「私たちはこちらに行きましょう……」
「あぁ」
まよいとフィロが直進していくのを見送り、サクラとレイアも下水道の奥へと向かっていった。
●
サクラたちと分かれたまよいたちは、まずは一番奥までまっすぐ行くことにした。
フィロの入り口方面へと戻る進路を取りたいという意見に、まよいも賛成したからだ。
奥を目指して歩いていた二人は、一匹の岩のような表皮を持つ大きなネズミを見つけると、二人は目配せをして、すぐさま戦闘態勢へと入った。
まずはフィロが飛び出してロックラットを叩き潰さんとしたが、やはりそこはネズミ。
持ち前の素早さを発揮されて寸前で避けられ、まよいの追撃である光る矢をも華麗に避けきってみせた。
「キィッ」
甲高い声を上げながら襲い掛かるロックラットの攻撃をフィロは避ける中、まよいは呟く。
「あなたは違うわね」
勘なのか、そう呟いたまよいの目の前でフィロが振り下ろした拳でロックラットは叩き潰された。
雑魔だからかロックラットの死骸が消え、その代わりに石の山が姿を現す。
その山を崩し、フィロはその中に宝石がないかを探す。
宝石は桃色と橙色の中間色をしているので、灯りがあれば他の物とはすぐに見分けがつくのだが……。
「違った?」
「はい」
別の個体だったようで、宝石は見つからなかった。
「このまま調べながら進みましょう」
「そうね」
フィロは脳裏で撤退路を確認しながら、まよいの前を歩いてロックラットを探す。
灯りが届く範囲しか見えないため、突如現れると言うこともありえるので二人は僅かな音にも耳を傾けていた。
周囲に気を配りながら歩き続け、ようやく一番奥までたどり着くといった所で、いち早くまよいは気づき声を上げた。
「来るよ!」
それとほぼ同時に、前後から灯りの下へロックラットたちが躍り出てくる。
フィロは手近なロックラットを蹴りつけたようとしたが、直前で避けられて空を蹴る。
「やはり素早いですね」
まよいが十にも及ぶ光の矢を蹴りを避けたロックラットも含めた十体へ向かって放ち、二体に直撃して他には避けられてしまう。
「まだ頑張るんだね」
まよいが不満そうに呟く中、多くのロックラットが灯りの下でひしめき合っている。
二人はその様子を見て、軽く体を震わせた。
「ギキィッ!」
「ギィ!」
それを隙と見たのか、一斉に襲い掛かってくるロックラットたち。
幾つかのロックラットの攻撃は避けたが、その多さから全てを避けきれず、まよいは腕に、フィロは脚にロックラットの牙が突き立った。
「全然痛くないよっ」
「この程度では傷つきませんよ」
だが、そこに装備していた装備のおかげでロックラットの牙は通らず、二人はロックラットを振り払う。
そしてフィロは振り払ったロックラットを踏み潰し、まよいは十本の光の矢を放ち、その内の七本がロックラットたちを貫いた。
仲間がやられたからか、単に近かったからか噛み付こうとするロックラットたちを避ける二人。
「キリがありませんね」
「ほんとにね!」
そう呟きながらフィロはロックラットを叩き潰し、まよいは五匹のロックラットを光の矢で仕留める。
だが、理由はわからないが穴を埋めるかのように次々とロックラットたちが光の下へ集まってくる。
表皮の色と消えた死骸の内容物から、ここには宝石を飲み込んだ個体が居ないと判断したフィロはまよいに提案をする。
「消耗した後に四方八方からかじられてはいけません。戦いながら入口方面へ撤退しましょう」
「そ、それは嫌!」
まよいはかじられるのを想像したのか、軽く体を震わせるとすぐさまフィロの提案に乗り、襲い来るロックラットを避けながら入口方面へと向かい始めた。
●
「見当たらないな」
「そうですね……」
まよいたちと分かれて下水道を進んでいるサクラとレイア。
すぐにロックラットに出会うかと思えば、そうではなかった。
まるで何処かに集まっているかのようにロックラットは一匹も見当たらなかった。
耳を澄ますが、下水道内に二人の足音だけが反響していて、それ以外の音は何も聞こえない。
「とりあえず、広い場所まで行こう」
「分かりました……」
サクラはレイアの提案に頷き、そのまま進み、二人は中央を走る水路にたどり着いた。
レイアは持っているライトで奥を照らし、見える限りだが何匹かいるロックラットを発見する。
とはいえ、遠すぎて近寄ったら逃げられる可能性もある。
そう考えたレイアは軽く息を吐くとサクラに向かって口を開いた。
「仕方ない。誘い出すとするか……ソウルトーチを使うが、いいか?」
「ソウルトーチですか……。分かりました……」
サクラからも了承を得たレイアは、炎のようなをオーラを体に纏う。
「これで歩いていればロックラットは私に向かって……」
レイアが言葉の途中で口を閉じると、それはサクラの耳にも届いてきた。
大量の四足歩行の足音。
それはまっすぐにサクラとレイアの方へと向かってきている。
「早速ですね……」
「あぁ。思った以上に数が多いがな」
ロックラットが灯りの下へ現れるのと同時に、レイアは武器で全面に来た三匹のロックラットを薙ぎ払った。
サクラも輝く光の弾を放ち、当たったロックラットは衝撃を受けたかのように吹き飛び、壁にぶつかって花を咲かせる。
「キーッ!」
「ギキィ!」
ロックラットたちがレイアに飛びかかろうとするが、届く前に地面へと落ちた。
「ふっ!」
レイアはそれを気にすることなく、再度三匹のロックラットを薙ぎ払いながら斬り捨てると、サクラが放った影が固まったかのような黒い塊がレイアの後ろからロックラットを吹き飛ばす。
「キーッ!」
「ん?」
消える死骸を乗り越えて来たロックラットの攻撃を避け、レイアはそのロックラットの表皮に違和感を感じた。
続けてくるロックラットの攻撃も避けながら、他のロックラットとは違う感じのする個体をじっと見つめる。
極僅かではあるが、一か所が桃色のような、橙色のような色をして……。
「見つけたぞ!」
それに気づいたレイアは誰に言うのでもなく叫び、宝石を飲み込んだと思われるロックラットへと剣を突き立てた。
「ギッ」
短い悲鳴を上げて息絶えるロックラット。
レイアが死骸となったロックラットの上に立つ中、サクラは光る矢を放ち、レイアに近寄ろうとするロックラットを吹き飛ばす。
せっかく見つけたのかもしれないのに、また宝石をロックラットに飲み込まれてはたまらないからだ。
二人は消えていくロックラットの死骸に注意を向けながら、ロックラットの攻撃を避けていく。
完全に消えた死骸の後には、小さな石の山だけが残る。
すかさずレイアがその山を蹴り崩すとそれは現れた。
ビー玉ほどの桃色と橙色の中間色に光る宝石。
これが目的の宝石だと確信したレイアは、ロックラットに飲み込まれる前に素早く回収した。
「当たりですか……?」
「恐らくな」
レイアは手の中の宝石を見やり、再度聞いた通りの特徴であることを確認して頷く。
「では、後は駆除をするだけですね……」
「あぁ、そうだなっ!」
宝石を見つけた二人は次から次へと現れるロックラットを見やり、海軍からの依頼であるロックラットの駆除に目的を移行した。
●
ロックラットを粗方駆除し終えた四人は、下水道から出ると揃って息を吐いたをついた。
「はぁ~、やっと出れたよ~」
「場所が場所だった分、空気が綺麗に感じるな」
「確かにそう感じますね」
「まずは匂いを取って身体、綺麗にしたいですね……。このままでは流石に色々とアレです……」
大きく息を吐いて呟くまよいに息苦しさから解放された表情のレイア、レイアの言葉に頷くフィロ、色々と気になっているサクラ。
閉鎖空間で大きなネズミを駆除するというのは男性でも苦痛だというのに、女性である彼女たちにとってはそれ以上だろう。
全員は自分が思っている以上に疲労を感じており、その証拠に全員が疲労が表情に出ているが、それを隠そうともしていない。
「あ、そうだ。宝石を見つけたんだよね。見せて見せてっ」
「あぁ、これだ」
レイアが回収した宝石を出すと、三人がその宝石に目を向ける。
「とても美しい宝石ですね」
「わぁ~、綺麗だね~」
「何となく儚さを感じる宝石ですね……」
「例のマダムが欲しがるのも無理はないな」
レイアの言葉に三人は頷く。
「宝石をハンターオフィスに提出した後、お風呂に行きませんか……?」
「あ、それいいね!」
「そうだな。そうしよう」
「では、私もご一緒させていただきます」
サクラの提案に全員が乗り、四人はハンターオフィスに向けて歩みを進めた。
その後、ハンターオフィスに宝石を提出した後に四人はお風呂へと向かっていった。
依頼結果
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- 乙女の護り
レイア・アローネ(ka4082)
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下水道探索 レイア・アローネ(ka4082) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/06/24 22:56:09 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/06/24 17:46:33 |