ゲスト
(ka0000)
街道復旧お願いします
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2018/06/26 19:00
- 完成日
- 2018/07/02 01:14
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●新型トラック、誕生
ここは工場都市の一角にある中小工場。
顔中を髭に覆われたドワーフの工場長は、バシリア刑務所からやってきた出向服役者――オレンジ色の上下を着た中年男に言った。
「やー、よく来てくれたブルーチャーさん。じゃあ、早速仕事に取り掛かってくれ。機械工作の心得はあるんだろう?」
「ありますとも。自慢じゃねえですけど、娑婆ではそれで食って来たようなもんで」
「そうか、そりゃ頼もしい」
からから笑って工場長は、ブルーチャーを工場の中へと案内した。
工員たちはわき目も振らず、それぞれの工作機械にかまけている。
古ぼけた換気扇が回る、荷を載せたカートが行ったり来たりする、合間をぬぐって怒鳴るような話し声。
グラインダーでの削り出し作業に勤しんでいるのは、体格のよい少年。赤い髪を短く刈り上げ耳にホチキスの針みたいなピアスを何重にもつけ――その、なんか悪そうな感じだ。
「ベロム、この前言っていた手伝いが来たぞ、教えてやってくれ」
「なんだ、もう来たのかよ。あのム所も仕事が早えな」
ベロムと呼ばれた少年は顔を上げた。腰も上げた。
ほとんどない眉を寄せブルーチャーを見下ろす。
「な、なんですかい?」
もしや因縁つけられるのではないだろうかとおののくブルーチャーに彼は、低い声で言った。
「……なあおっさん、もしかしてフマーレに来たことねえか? 猫の顔したのと一緒によ」
確かに来たことがある。が、この場合それを誤魔化した方がよいのかよくないのか。
ブルーチャーが判断する前に、工場長が先に言ってしまった。
「ああ、そうだ。いつぞや子供たちが公園で占拠騒ぎ起こしたことがあったろ。あのときの犯人の片割れだ。このブルーチャーさんは」
それを聞いて少年は、ブルーチャーの肩を叩いた。相手がよろめくほどの勢いで。それから、大笑いする。
「そうかあ、やっぱりな。いや、あの時あんたらに公園分捕ってくれーって頼みに行ったガキどもいたろ? そん中に、俺の弟がいてなあ。あんたらがあの後どうなったのか、随分気にしてたんだぜ?」
世間とは意外に狭いもののようだ。
「まあ、とりあえず作業手伝ってくんな。グラインダーの使い方は分かるんだろ? そこに道具用意してるから、使ってくんな」
「おお」
ブルーチャーはベロム同様分厚い手袋を手に、作業を始める。その合間合間に、言葉を交わす。
「ところでこりゃあ……何を作ってるんだ?」
「あー、これな。この間フマーレに歪虚が改造したCAMが送られてきてよ。それをもとに工場長が試験開発したもんなんだ。CAMに変形するトラック――略してCAMトラ」
●新型トラック、試験
この度フマーレで新しく開発された新型トラック、CAMトラ。
ベースがトラックなので通常CAM程の戦闘力は望めないが、そこは大きな問題点とはならないだろう。災害救助派遣や土木工事に使うことを念頭に開発されたものであるのだから。
ハンターたちはその試作機1号を依頼に使い、データを取ってきてくれるようにと頼まれた。
彼らが向かったのは、ポルトワールに通じる海沿いの街道。最近の大雨で崖滑りが置き、塞がったままになっている場所。
現在通行者は致し方なく遠回りな旧道を使っている。早急な復旧が求められる、とのこと。
「おー、見事に崩れちゃってるな」
現場に着いたハンターたちは、まずトラックの仕様書を読んだ。
「えーと、変形の際は運転席以外人が乗らないようにしてください、か」
というわけなので運転席にいた1人だけが残り、そのまま操作を行う。
「――ハンドルの真ん中にあるダイヤルを指定の位置まで回し――カチッという音がしたらそのまま中に押し込み――更にもう一度反対側に回す、と……」
運転席がいきなり下から押し上がった。
「おぉ!?」
危うく天井に頭をぶつけかけるところ、今度は席が90度横に急回転する。
「うわっぷ!」
ハンドルが結構な勢いで引っ込んだ。操作バーが顎すれすれまで競り上がり――適度な位置まで引っ込んだ。
その後激しく揺すぶられ続けること1分。変形は無事終了。
周囲を取り巻き様子を見守っていたハンターたちは、運転席にいるハンターに呼びかけた。
「乗り心地はどうだー?」
細々とした声が返ってくる。
「……シートベルト着用は必須。じゃないと変形中に怪我する、これ」
とにかく作業に取り掛かろう。
そう思った矢先、海から黒い塊が姿を現した。それは巨大なカニ――いや、厳密にはカニとは呼べない。何故なら頭の部分がエビなのだ。エビの尻尾もついているのだ。
そいつはハンターたちの姿を見るなり、金切り声を上げた。泡を噴き襲いかかってきた。カニだから横歩きかと思いきや、そうではなかった。真っすぐ歩いてきた。
これはハンターとして、対処しなければなるまい。
●服役者の抱負
工場の昼休み。ブルーチャーは作業台の上に紙を広げ、何かを書いている。
昼食を済ませたベロムは、彼の手元を覗き込んだ。
「おっさん、なに書いてるんだ?」
「設計図だ。あのCAMトラックをもとにした新しいおもちゃが作れないかと思ってな」
「へー、おっさんおもちゃなんて作るのか」
「ああ。わしはこれでも昔、工場を持ってたことがあるんだぞ。社長だったんだぞ」
「へー、今その工場どうなってんの?」
「……色々あって潰れた。けどな。刑務所を出たらまた作るつもりだ」
ここは工場都市の一角にある中小工場。
顔中を髭に覆われたドワーフの工場長は、バシリア刑務所からやってきた出向服役者――オレンジ色の上下を着た中年男に言った。
「やー、よく来てくれたブルーチャーさん。じゃあ、早速仕事に取り掛かってくれ。機械工作の心得はあるんだろう?」
「ありますとも。自慢じゃねえですけど、娑婆ではそれで食って来たようなもんで」
「そうか、そりゃ頼もしい」
からから笑って工場長は、ブルーチャーを工場の中へと案内した。
工員たちはわき目も振らず、それぞれの工作機械にかまけている。
古ぼけた換気扇が回る、荷を載せたカートが行ったり来たりする、合間をぬぐって怒鳴るような話し声。
グラインダーでの削り出し作業に勤しんでいるのは、体格のよい少年。赤い髪を短く刈り上げ耳にホチキスの針みたいなピアスを何重にもつけ――その、なんか悪そうな感じだ。
「ベロム、この前言っていた手伝いが来たぞ、教えてやってくれ」
「なんだ、もう来たのかよ。あのム所も仕事が早えな」
ベロムと呼ばれた少年は顔を上げた。腰も上げた。
ほとんどない眉を寄せブルーチャーを見下ろす。
「な、なんですかい?」
もしや因縁つけられるのではないだろうかとおののくブルーチャーに彼は、低い声で言った。
「……なあおっさん、もしかしてフマーレに来たことねえか? 猫の顔したのと一緒によ」
確かに来たことがある。が、この場合それを誤魔化した方がよいのかよくないのか。
ブルーチャーが判断する前に、工場長が先に言ってしまった。
「ああ、そうだ。いつぞや子供たちが公園で占拠騒ぎ起こしたことがあったろ。あのときの犯人の片割れだ。このブルーチャーさんは」
それを聞いて少年は、ブルーチャーの肩を叩いた。相手がよろめくほどの勢いで。それから、大笑いする。
「そうかあ、やっぱりな。いや、あの時あんたらに公園分捕ってくれーって頼みに行ったガキどもいたろ? そん中に、俺の弟がいてなあ。あんたらがあの後どうなったのか、随分気にしてたんだぜ?」
世間とは意外に狭いもののようだ。
「まあ、とりあえず作業手伝ってくんな。グラインダーの使い方は分かるんだろ? そこに道具用意してるから、使ってくんな」
「おお」
ブルーチャーはベロム同様分厚い手袋を手に、作業を始める。その合間合間に、言葉を交わす。
「ところでこりゃあ……何を作ってるんだ?」
「あー、これな。この間フマーレに歪虚が改造したCAMが送られてきてよ。それをもとに工場長が試験開発したもんなんだ。CAMに変形するトラック――略してCAMトラ」
●新型トラック、試験
この度フマーレで新しく開発された新型トラック、CAMトラ。
ベースがトラックなので通常CAM程の戦闘力は望めないが、そこは大きな問題点とはならないだろう。災害救助派遣や土木工事に使うことを念頭に開発されたものであるのだから。
ハンターたちはその試作機1号を依頼に使い、データを取ってきてくれるようにと頼まれた。
彼らが向かったのは、ポルトワールに通じる海沿いの街道。最近の大雨で崖滑りが置き、塞がったままになっている場所。
現在通行者は致し方なく遠回りな旧道を使っている。早急な復旧が求められる、とのこと。
「おー、見事に崩れちゃってるな」
現場に着いたハンターたちは、まずトラックの仕様書を読んだ。
「えーと、変形の際は運転席以外人が乗らないようにしてください、か」
というわけなので運転席にいた1人だけが残り、そのまま操作を行う。
「――ハンドルの真ん中にあるダイヤルを指定の位置まで回し――カチッという音がしたらそのまま中に押し込み――更にもう一度反対側に回す、と……」
運転席がいきなり下から押し上がった。
「おぉ!?」
危うく天井に頭をぶつけかけるところ、今度は席が90度横に急回転する。
「うわっぷ!」
ハンドルが結構な勢いで引っ込んだ。操作バーが顎すれすれまで競り上がり――適度な位置まで引っ込んだ。
その後激しく揺すぶられ続けること1分。変形は無事終了。
周囲を取り巻き様子を見守っていたハンターたちは、運転席にいるハンターに呼びかけた。
「乗り心地はどうだー?」
細々とした声が返ってくる。
「……シートベルト着用は必須。じゃないと変形中に怪我する、これ」
とにかく作業に取り掛かろう。
そう思った矢先、海から黒い塊が姿を現した。それは巨大なカニ――いや、厳密にはカニとは呼べない。何故なら頭の部分がエビなのだ。エビの尻尾もついているのだ。
そいつはハンターたちの姿を見るなり、金切り声を上げた。泡を噴き襲いかかってきた。カニだから横歩きかと思いきや、そうではなかった。真っすぐ歩いてきた。
これはハンターとして、対処しなければなるまい。
●服役者の抱負
工場の昼休み。ブルーチャーは作業台の上に紙を広げ、何かを書いている。
昼食を済ませたベロムは、彼の手元を覗き込んだ。
「おっさん、なに書いてるんだ?」
「設計図だ。あのCAMトラックをもとにした新しいおもちゃが作れないかと思ってな」
「へー、おっさんおもちゃなんて作るのか」
「ああ。わしはこれでも昔、工場を持ってたことがあるんだぞ。社長だったんだぞ」
「へー、今その工場どうなってんの?」
「……色々あって潰れた。けどな。刑務所を出たらまた作るつもりだ」
リプレイ本文
トランスフォームしていくCAMトラを前に、天竜寺 舞(ka0377)、天竜寺 詩(ka0396)、ルベーノ・バルバライン(ka6752)は言葉を交わす。
「へー、じゃあこれ、お姉ちゃんが言ってたモンキチのCAMを元に作ってあるんだね」
「あたしも驚いたよ。何時に間にかこんなのが作られてるなんてさ。フマーレの連中逞しいというかなんというか」
「でも、こうして人の役に立つ物に設計し直されてよかったよ。乗り心地は今一つっぽいけど」
「フッ。分かっとらんな。浪漫武器は効率やを安全性を度外視するからこそ浪漫なのだ」
「……浪漫武器?」
「変形するトラックなら、浪漫武器だろう? ならば変形・合体・自爆までワンセットでなければな、ハッハッハ」
一方レイア・アローネ(ka4082)は悩んでいる。他でもない、CAMトラの存在意義について。
(……何故CAMに変形を? 普通のCAMと魔導トラックで問題なくないか……?)
実は彼女、依頼内容の説明を受ける際、素直にその疑問を口にしてみたのである。ドワーフの工場長に対して。
そうしたらえらく憤慨され、延々30分に渡り力説されてしまった。今ルベーノが話しているようなことを。
(男のロマンとかいうのは私にはわからん……)
そうこうしている間にトランスフォームが完了した。
空蝉(ka6951)は常に変わらぬ微笑を浮かべ、CAMトラに近づく。軽く肩を叩くように触れる。目の前にあるものがオートパラディンではないかどうか確かめるためだ。
もちろんそうではないという説明は、事前に依頼主から受けている。だが彼は規定の行動プログラムを逸脱する行動をとらない。試行→反応確認という手間を省けない。
「応答を願います」
ルベーノも聞いた。
「乗り心地はどうだー?」
それらに応えたのは、当然CAMトラ自身ではない。操縦手であるメイム(ka2290)だ。
「……シートベルト着用は必須。じゃないと変形中に怪我する、これ」
細々した声で言いながら彼女は、はたと顔を上げる。
外部モニタへ妙なものが映りこんできた。エビとカニを掛け合わせたみたいな――歪虚だ。
ルベーノが声を上げる。
「メイム、退け! 見るからに雑魚だが、一つしかない試作機に損害を与えるわけにはいかん!」
メイムは、一旦CAMトラを後退させた。
●闖入者排除
「エビカニなのかカニエビなのかは知らんが。甲殻類擬きに依頼の邪魔をされるのは業腹だ。鍋にして食ってやるからそこへ直れ、歪虚擬き」
「海老と蟹の合いの子? どっちかにしなよ節操ないなぁ」
エビカニはルベーノと舞の言葉を解するほどの頭を持っていない。
だが何を言われているかわからずとも、自分が馬鹿にされているということだけはきちんと感じ取った。
ふぉおおおおおおお!!
泡を噴き散らし鋏を振り回し、見境なくハンターたちに襲い来るエビカニ。
「なんだか知らないけどえらく怒ってるね。CAMを壊されないようにしないと!」
詩が間髪入れずのジャッジメントを放つ。
それはエビカニの動きを止めた。時間にしてわずか10秒程度。
「よくやった、詩!」
舞は地を蹴った。エビカニの鋏を経由し、目と目の間に降り立つ。ベノムエッジをかけたヒートソードを関節の継ぎ目めがけてたたき込む――ところでジャッジメントの効果が切れた。
エビカニが動いた。拍子に舞の刃が目標である急所から逸れた。
「ちぇ!」
口を尖らせ軽業師のごとく身をひるがえし、左右からの鋏攻撃を避ける舞。
彼女がそうしている間詩は仲間たちに、茨の祈りをかけ終えていた。
『検知照合。脅威と認定します』
CAMトラを「守るべきもの」とみなし、空蝉が動く。オートMURAMASAと鉄輪による二段攻撃で、舞同様、関節を狙う。比較的防御の薄そうな脚を重点的に。
レイアがソウルトーチを発動させた。燃え上がるマテリアルのオーラは、エビカニの目を引き、より一層興奮させる。
びぎゃああああ!
ルベーノはわざとらしく肩をすくめ放言する。
「ハッハッハ。もはや何を言ってるのかさっぱりわからんな。いやそもそも喋れるわけなどないな。脳がないのだから。無理を言ってすまなかった許してくれブイヤベースのダシ」
言葉が分からなくても馬鹿にされているということは伝わる。
エビカニはルベーノ目がけ尻アタックをかけてきた。
ルベーノはあえてそれを避けなかった。仲間に対する攻撃の拡散を防ぐという意味において、自分だけに敵意が集中するのは願ったりなことだったのだ。
金剛不壊で身を固め両足を踏ん張り――持ちこたえた。口の中が切れたのかペッと血混じりの唾を吐く。
「全然足りんな、エビカニ擬き! その甲羅ごと焼いて食ってやるわ」
エビカニは攻撃したにもかかわらずルベーノがピンピンしていることに腹を立てた。
レイアがこれ見よがしに発しているマテリアルの気配にむかついた。
腕関節に熱いヒートソードを打ち込んでくる舞に苛ついた。
剣と手刀の二段攻撃で脚部を切り離しにかかる空蝉にキレた。
とにかく何もかもが気に入らない。
むぎぃいいいいい!
ハンターを狙うのみならず、手当たり次第周囲のものを破壊し始めるエビカニ。
だが詩が慈愛の祈りを発動したことで、動きが鈍り始める。
加えて舞の仕掛けた毒が回り始め、更に動きが鈍る。ルベーノの拳が鋏をへし折り、空蝉が側脚をもいでいく。
万事戦況は有利だ。
CAMトラの安全を考慮し後方に控えていたメイムは、再度仕様書を開いた。
「このトラック装備とかついてなかったかな……一応CAMって銘打ってるんだから、多分何かはあるはずだけど……」
そこでレイアは、エビカニの目玉が赤く点滅し始めたのに気づいた。
(……何だ?)
と訝しむところにトラCAMからの呼びかけ。
「みんなー、トラCAM装備の実験するから注意してー」
見れば側面に回ってきたトラCAMが、30ミリ機関銃を構えている。
「守ったら負けだ、攻めろーみたいな♪」
雨あられと飛び出してくる銃弾を浴びたエビカニのストレス値が加速的に上昇する。
ふごおおおおお!
目玉の点滅が激しくなってきた。
空蝉もそれに気づき、その現象が何を意味するか解析し始めた。
『……【ヴォイド】タイプ【憤怒】ニオケル破壊衝動値ノ急激ナ上昇ハ……他罰的崩壊現象ノ前兆カト推察……』
そこでルベーノの拳がエビの頭頂部に入った。
次の瞬間エビカニは
塵も残さず爆発した。
憤怒一族には自爆傾向を持つものが多いが、このエビカニもその1匹であったようだ。
漂う黒煙を手で払いのけ、ルベーノは渋い顔。
「……歪虚ごときに自爆浪漫は求めておらんのだがな」
もし形が少しでも残ったら食べてやろうかと思っていただけに、この結果は彼にとって、残念なものであった。
●補修作業
邪魔物を首尾よく退治したハンターたちは、本題に取り掛かった。
崩落現場の処理、並びに復旧方法については、空蝉並びにルベーノが前以て依頼主に確かめている。『崩れてきた土砂は、そのまま盛り土として利用してほしい』ということであった。
メイムは一旦CAMトラから降りた。乗り続けるのがきつくなってきたのだ。通常のCAMは戦闘の際パイロットへかかる負担がなるべく小さくなるよう、様々工夫をこらしているものなのだが、ことこの機体に至ってはその辺の心遣いが足りない。
そんなわけで機械操縦に慣れていそうな空蝉へバトンタッチ。
「空蝉さん、一旦これをトラックに戻してくれない? そのほうが土砂を運ぶのも早く終わるだろうし……」
詩と共にもくもくスコップを動かしていた空蝉は手を止め、快く要請を引き受けた。
「知道了。遂行致します」
空蝉はCAMトラ操縦席に乗り込んだ。トラックへのぎこちない変形が始まる。
しかしオートマトンである彼は顔色ひとつ変えない。自身をダミー人形として、人体にかかるだろう衝撃や負担を内部プログラムで逐一数値化し、記録して行く。
CAMがトラックに戻った。
レイアと詩は早速、トラックの荷台へ土砂を積み込んで行く。ルベーノもそこいらに転がった落石を拾い、積んで行く。
空蝉は倒木に持ち込んできたロープを縛りつけ、トラックで引き、撤去にかかる。
トラックに詰めなかった分の土砂は詩が土のうに詰め、軍馬に乗せた。
そこに修復資材の調達に行っていた舞が戻ってくる。軍馬に荷車をひかせて。
「お姉ちゃんお帰りー。その荷車は?」
「ああ、この界隈の人が貸してくれたんだ。修復作業のこと話したらさ、周辺の工房に掛け合って色々見繕ってもくれて。自分たちも使う道だからって。それでえーと、どこまで作業進んでる?」
「ひとまずこれから土を戻すところだ。あの通り斜面が剥き出しになってしまっているからな。修復のための資材はどのくらいある?」
ルベーノの言葉に舞は、よしきたとばかり荷車にかかっていた布をはぐ。
そこには山積みの杭、板。そしてたくさんの土のう袋があった。
「海側はともかく崩れちゃった山側は、念を入れて直さないとね。まず土のうで固めて――その後板壁で押さえよ」
メイムは荷台の隅でとぐろを巻いていた鎖を引き出し、舞にたずねる。
「舞さん、これは?」
「それは海側の手摺りに使って欲しいって。助かったよ。あたしたちの持ってきたロープじゃ、足りなさそうだったから」
トラックに乗せられた土砂は一旦道路脇に戻され、改めて土のうに詰め込まれた。
まず崩落箇所である斜面にそれを積んでいく。
その前面にCAMトラが、がっちり木杭を打ち込んでいく。
ついでその間に板を差し渡し、太クギを打ち付け固定して行く。
「ルベーノさん、そっち押さえてー」
「よし――これでいいか詩?」
「多分。ねえメイムさん、そっちから見て真っすぐになってるー?」
「なってるよー。レイアさんの側からはどうなってる?」
「問題ないぞ。打ってくれ空蝉」
「了解いたしました」
念を入れて崩れた箇所の一番下には、空蝉が集めた倒木を丸太積み。
それらの作業が終わった頃合いに、修復工事を聞き付けたのか、通行者や馬車が続々やってき始めた。
「すいませーん、もう通れますかー?」
「あっ、ちょっと待って。まだ海側の整備が終わってないんで、片道通行お願いしますー」
舞が急遽交通整理を始める。
ほかのハンターたちは、急いで手摺りの作成にかかった。
土留め作成のときと同じ要領で、トラCAMが杭を打ち込んで行く。
それが出来上がった端から皆で協力し、鎖を通していく。
ほどなくして転落防止の柵が出来上がった。
それら全部の工程が終わったのを見届けた舞は交通整理を止め、往来の邪魔にならぬよう端に寄る。
右手に海、左手に山。真新しい防護柵が出来たおかげか、なんだか道まで新品になったように見える。
「うん、いいじゃん」
と満足げに呟く彼女に詩が声をかける。
「お姉ちゃん、荷車にまだ何か残ってるよ」
「え? あ、そうだ。ついでにそれも立てといてくれって頼まれてたんだった。ごめんみんな、後一仕事」
と言いながら彼女は、仲間たちに標識を配った。そこには以下のように書かれてあった。
『この先落石に注意』
●報告しよう
ハンターたちは仕事を終え、CAMトラと共に再び工場へ戻ってきた。
空蝉はまず真っ先に工場長へ、体を張って収集しまとめた機体のデータを渡す。
「工場長様、これがCAMトラックにおける試運転データでございます。どうぞお受取を……」
職人気質のドワーフ工場長は、彼のいい仕事ぶりを惜しみ無く称えた。
「おお、こんなに細かく数字が取れたのか! ありがとうよ。こいつはとても参考になりそうだ!」
舞は工場のあちこちを見回す。
そして、作業机を前にしている禿げ頭のおっさんに気づく。一人だけ服が違う。他はくすんだ色のツナギなのに、彼のみけばけばしいオレンジ色の、ジャージっぽい作業服。
(……見たことある奴のような……ていうかあの服バシリア刑務所の……)
額にしわを寄せること数秒、記憶を呼び覚ます。
「あれ? 前にスペットと一緒にミラーボール歪虚と踊ってたおっさんじゃない?」
詩は姉と違いおっさんの名前も覚えていた。
「あれ、ブルーチャー?」
おっさんが振り向く。
「ん? あれ、お前さんたちゃ、見たことがある奴だな。マイと……ウタだったか?」
「そうだよ。おっさんこんなとこで何してんの?」
「スペットの旦那と一緒で、社会奉仕活動してんだ」
「ブルーチャーも頑張ってるんだね。早く出所出来るといいね」
早速打ち解け、ブルーチャーと話し始める天竜姉妹。
メイムはCAMトラ改善のための提案を、早速工場長に行う。
「えっと、あたし思うに、魔導トラックが二足歩行の人型になる事によって得られるメリットよりもさー、積載スペースを確保して外のユニット搭載するメリットの方が大きいと思うんだよね」
レイアはメイムの見解に全面賛成であった。
ついでだから「変形も物凄く大変そうだし尚更やる意味がわからんのだが……」と言ってみようかなという気を起こしかける。
だがその時ルベーノがすごい勢いで割って入ってきたので、その機会を失った。
「変形すれば素材的にも機構的にも元より脆弱になって当たり前、つまり浪漫武装ということだ。浪漫武装ならとことん夢を積まんでどうする! 変形・合体・自爆はワンセットだろうが!」
「うーん、まあ、そういう色物路線を目指すなら目指すでいいんだけどー。実用的な武器としてスキルを調整するならGnomeのレヴェリングモードを変形時のみ使用できるとするとか。怪力無双みたいのだろうねー。空蝉さんはどう思う?」
「わたくしは特に意見はございません」
レイアはそれ以上話題に深入りするのを止めた。
(やはり私には分からん……)
舞と詩が知り合いらしき工員と話しているので、そっちへ行く。
「へー、昔おもちゃ作ってたの。結構意外だなー。フカシじゃないよね?」
「フカシなわけなかろうが」
「この人腕はいいんだよ、お姉ちゃん」
「ふーん。あ、そうそう、あのCAMね。変形中とか結構揺れるからバネで座席に免震装置とかつけれないかな?」
「やれるとは思うが、そうするとコストが高くなるからなあ。わしゃ外から変形させることが出来るようにしたほうがいいと思うね」
「あ、こういうのはどう?」
詩が設計図の横に絵を描いた。
「下半身はキャタピラにしたら安定するかもしれないよ」
「……待て。そうしたら……ほぼほぼ刻令ゴーレム「Gnome」と変わらないデザインになるんじゃねえか?」
レイアが覗き確かめればそれは、腕を持つ上半身に車状の下半身がついたCAM、というもの。
(これをおもちゃに……? そ、そうか……こういうのが売れるの……か……?)
さあ、それはやってみなくちゃ分からない。
「へー、じゃあこれ、お姉ちゃんが言ってたモンキチのCAMを元に作ってあるんだね」
「あたしも驚いたよ。何時に間にかこんなのが作られてるなんてさ。フマーレの連中逞しいというかなんというか」
「でも、こうして人の役に立つ物に設計し直されてよかったよ。乗り心地は今一つっぽいけど」
「フッ。分かっとらんな。浪漫武器は効率やを安全性を度外視するからこそ浪漫なのだ」
「……浪漫武器?」
「変形するトラックなら、浪漫武器だろう? ならば変形・合体・自爆までワンセットでなければな、ハッハッハ」
一方レイア・アローネ(ka4082)は悩んでいる。他でもない、CAMトラの存在意義について。
(……何故CAMに変形を? 普通のCAMと魔導トラックで問題なくないか……?)
実は彼女、依頼内容の説明を受ける際、素直にその疑問を口にしてみたのである。ドワーフの工場長に対して。
そうしたらえらく憤慨され、延々30分に渡り力説されてしまった。今ルベーノが話しているようなことを。
(男のロマンとかいうのは私にはわからん……)
そうこうしている間にトランスフォームが完了した。
空蝉(ka6951)は常に変わらぬ微笑を浮かべ、CAMトラに近づく。軽く肩を叩くように触れる。目の前にあるものがオートパラディンではないかどうか確かめるためだ。
もちろんそうではないという説明は、事前に依頼主から受けている。だが彼は規定の行動プログラムを逸脱する行動をとらない。試行→反応確認という手間を省けない。
「応答を願います」
ルベーノも聞いた。
「乗り心地はどうだー?」
それらに応えたのは、当然CAMトラ自身ではない。操縦手であるメイム(ka2290)だ。
「……シートベルト着用は必須。じゃないと変形中に怪我する、これ」
細々した声で言いながら彼女は、はたと顔を上げる。
外部モニタへ妙なものが映りこんできた。エビとカニを掛け合わせたみたいな――歪虚だ。
ルベーノが声を上げる。
「メイム、退け! 見るからに雑魚だが、一つしかない試作機に損害を与えるわけにはいかん!」
メイムは、一旦CAMトラを後退させた。
●闖入者排除
「エビカニなのかカニエビなのかは知らんが。甲殻類擬きに依頼の邪魔をされるのは業腹だ。鍋にして食ってやるからそこへ直れ、歪虚擬き」
「海老と蟹の合いの子? どっちかにしなよ節操ないなぁ」
エビカニはルベーノと舞の言葉を解するほどの頭を持っていない。
だが何を言われているかわからずとも、自分が馬鹿にされているということだけはきちんと感じ取った。
ふぉおおおおおおお!!
泡を噴き散らし鋏を振り回し、見境なくハンターたちに襲い来るエビカニ。
「なんだか知らないけどえらく怒ってるね。CAMを壊されないようにしないと!」
詩が間髪入れずのジャッジメントを放つ。
それはエビカニの動きを止めた。時間にしてわずか10秒程度。
「よくやった、詩!」
舞は地を蹴った。エビカニの鋏を経由し、目と目の間に降り立つ。ベノムエッジをかけたヒートソードを関節の継ぎ目めがけてたたき込む――ところでジャッジメントの効果が切れた。
エビカニが動いた。拍子に舞の刃が目標である急所から逸れた。
「ちぇ!」
口を尖らせ軽業師のごとく身をひるがえし、左右からの鋏攻撃を避ける舞。
彼女がそうしている間詩は仲間たちに、茨の祈りをかけ終えていた。
『検知照合。脅威と認定します』
CAMトラを「守るべきもの」とみなし、空蝉が動く。オートMURAMASAと鉄輪による二段攻撃で、舞同様、関節を狙う。比較的防御の薄そうな脚を重点的に。
レイアがソウルトーチを発動させた。燃え上がるマテリアルのオーラは、エビカニの目を引き、より一層興奮させる。
びぎゃああああ!
ルベーノはわざとらしく肩をすくめ放言する。
「ハッハッハ。もはや何を言ってるのかさっぱりわからんな。いやそもそも喋れるわけなどないな。脳がないのだから。無理を言ってすまなかった許してくれブイヤベースのダシ」
言葉が分からなくても馬鹿にされているということは伝わる。
エビカニはルベーノ目がけ尻アタックをかけてきた。
ルベーノはあえてそれを避けなかった。仲間に対する攻撃の拡散を防ぐという意味において、自分だけに敵意が集中するのは願ったりなことだったのだ。
金剛不壊で身を固め両足を踏ん張り――持ちこたえた。口の中が切れたのかペッと血混じりの唾を吐く。
「全然足りんな、エビカニ擬き! その甲羅ごと焼いて食ってやるわ」
エビカニは攻撃したにもかかわらずルベーノがピンピンしていることに腹を立てた。
レイアがこれ見よがしに発しているマテリアルの気配にむかついた。
腕関節に熱いヒートソードを打ち込んでくる舞に苛ついた。
剣と手刀の二段攻撃で脚部を切り離しにかかる空蝉にキレた。
とにかく何もかもが気に入らない。
むぎぃいいいいい!
ハンターを狙うのみならず、手当たり次第周囲のものを破壊し始めるエビカニ。
だが詩が慈愛の祈りを発動したことで、動きが鈍り始める。
加えて舞の仕掛けた毒が回り始め、更に動きが鈍る。ルベーノの拳が鋏をへし折り、空蝉が側脚をもいでいく。
万事戦況は有利だ。
CAMトラの安全を考慮し後方に控えていたメイムは、再度仕様書を開いた。
「このトラック装備とかついてなかったかな……一応CAMって銘打ってるんだから、多分何かはあるはずだけど……」
そこでレイアは、エビカニの目玉が赤く点滅し始めたのに気づいた。
(……何だ?)
と訝しむところにトラCAMからの呼びかけ。
「みんなー、トラCAM装備の実験するから注意してー」
見れば側面に回ってきたトラCAMが、30ミリ機関銃を構えている。
「守ったら負けだ、攻めろーみたいな♪」
雨あられと飛び出してくる銃弾を浴びたエビカニのストレス値が加速的に上昇する。
ふごおおおおお!
目玉の点滅が激しくなってきた。
空蝉もそれに気づき、その現象が何を意味するか解析し始めた。
『……【ヴォイド】タイプ【憤怒】ニオケル破壊衝動値ノ急激ナ上昇ハ……他罰的崩壊現象ノ前兆カト推察……』
そこでルベーノの拳がエビの頭頂部に入った。
次の瞬間エビカニは
塵も残さず爆発した。
憤怒一族には自爆傾向を持つものが多いが、このエビカニもその1匹であったようだ。
漂う黒煙を手で払いのけ、ルベーノは渋い顔。
「……歪虚ごときに自爆浪漫は求めておらんのだがな」
もし形が少しでも残ったら食べてやろうかと思っていただけに、この結果は彼にとって、残念なものであった。
●補修作業
邪魔物を首尾よく退治したハンターたちは、本題に取り掛かった。
崩落現場の処理、並びに復旧方法については、空蝉並びにルベーノが前以て依頼主に確かめている。『崩れてきた土砂は、そのまま盛り土として利用してほしい』ということであった。
メイムは一旦CAMトラから降りた。乗り続けるのがきつくなってきたのだ。通常のCAMは戦闘の際パイロットへかかる負担がなるべく小さくなるよう、様々工夫をこらしているものなのだが、ことこの機体に至ってはその辺の心遣いが足りない。
そんなわけで機械操縦に慣れていそうな空蝉へバトンタッチ。
「空蝉さん、一旦これをトラックに戻してくれない? そのほうが土砂を運ぶのも早く終わるだろうし……」
詩と共にもくもくスコップを動かしていた空蝉は手を止め、快く要請を引き受けた。
「知道了。遂行致します」
空蝉はCAMトラ操縦席に乗り込んだ。トラックへのぎこちない変形が始まる。
しかしオートマトンである彼は顔色ひとつ変えない。自身をダミー人形として、人体にかかるだろう衝撃や負担を内部プログラムで逐一数値化し、記録して行く。
CAMがトラックに戻った。
レイアと詩は早速、トラックの荷台へ土砂を積み込んで行く。ルベーノもそこいらに転がった落石を拾い、積んで行く。
空蝉は倒木に持ち込んできたロープを縛りつけ、トラックで引き、撤去にかかる。
トラックに詰めなかった分の土砂は詩が土のうに詰め、軍馬に乗せた。
そこに修復資材の調達に行っていた舞が戻ってくる。軍馬に荷車をひかせて。
「お姉ちゃんお帰りー。その荷車は?」
「ああ、この界隈の人が貸してくれたんだ。修復作業のこと話したらさ、周辺の工房に掛け合って色々見繕ってもくれて。自分たちも使う道だからって。それでえーと、どこまで作業進んでる?」
「ひとまずこれから土を戻すところだ。あの通り斜面が剥き出しになってしまっているからな。修復のための資材はどのくらいある?」
ルベーノの言葉に舞は、よしきたとばかり荷車にかかっていた布をはぐ。
そこには山積みの杭、板。そしてたくさんの土のう袋があった。
「海側はともかく崩れちゃった山側は、念を入れて直さないとね。まず土のうで固めて――その後板壁で押さえよ」
メイムは荷台の隅でとぐろを巻いていた鎖を引き出し、舞にたずねる。
「舞さん、これは?」
「それは海側の手摺りに使って欲しいって。助かったよ。あたしたちの持ってきたロープじゃ、足りなさそうだったから」
トラックに乗せられた土砂は一旦道路脇に戻され、改めて土のうに詰め込まれた。
まず崩落箇所である斜面にそれを積んでいく。
その前面にCAMトラが、がっちり木杭を打ち込んでいく。
ついでその間に板を差し渡し、太クギを打ち付け固定して行く。
「ルベーノさん、そっち押さえてー」
「よし――これでいいか詩?」
「多分。ねえメイムさん、そっちから見て真っすぐになってるー?」
「なってるよー。レイアさんの側からはどうなってる?」
「問題ないぞ。打ってくれ空蝉」
「了解いたしました」
念を入れて崩れた箇所の一番下には、空蝉が集めた倒木を丸太積み。
それらの作業が終わった頃合いに、修復工事を聞き付けたのか、通行者や馬車が続々やってき始めた。
「すいませーん、もう通れますかー?」
「あっ、ちょっと待って。まだ海側の整備が終わってないんで、片道通行お願いしますー」
舞が急遽交通整理を始める。
ほかのハンターたちは、急いで手摺りの作成にかかった。
土留め作成のときと同じ要領で、トラCAMが杭を打ち込んで行く。
それが出来上がった端から皆で協力し、鎖を通していく。
ほどなくして転落防止の柵が出来上がった。
それら全部の工程が終わったのを見届けた舞は交通整理を止め、往来の邪魔にならぬよう端に寄る。
右手に海、左手に山。真新しい防護柵が出来たおかげか、なんだか道まで新品になったように見える。
「うん、いいじゃん」
と満足げに呟く彼女に詩が声をかける。
「お姉ちゃん、荷車にまだ何か残ってるよ」
「え? あ、そうだ。ついでにそれも立てといてくれって頼まれてたんだった。ごめんみんな、後一仕事」
と言いながら彼女は、仲間たちに標識を配った。そこには以下のように書かれてあった。
『この先落石に注意』
●報告しよう
ハンターたちは仕事を終え、CAMトラと共に再び工場へ戻ってきた。
空蝉はまず真っ先に工場長へ、体を張って収集しまとめた機体のデータを渡す。
「工場長様、これがCAMトラックにおける試運転データでございます。どうぞお受取を……」
職人気質のドワーフ工場長は、彼のいい仕事ぶりを惜しみ無く称えた。
「おお、こんなに細かく数字が取れたのか! ありがとうよ。こいつはとても参考になりそうだ!」
舞は工場のあちこちを見回す。
そして、作業机を前にしている禿げ頭のおっさんに気づく。一人だけ服が違う。他はくすんだ色のツナギなのに、彼のみけばけばしいオレンジ色の、ジャージっぽい作業服。
(……見たことある奴のような……ていうかあの服バシリア刑務所の……)
額にしわを寄せること数秒、記憶を呼び覚ます。
「あれ? 前にスペットと一緒にミラーボール歪虚と踊ってたおっさんじゃない?」
詩は姉と違いおっさんの名前も覚えていた。
「あれ、ブルーチャー?」
おっさんが振り向く。
「ん? あれ、お前さんたちゃ、見たことがある奴だな。マイと……ウタだったか?」
「そうだよ。おっさんこんなとこで何してんの?」
「スペットの旦那と一緒で、社会奉仕活動してんだ」
「ブルーチャーも頑張ってるんだね。早く出所出来るといいね」
早速打ち解け、ブルーチャーと話し始める天竜姉妹。
メイムはCAMトラ改善のための提案を、早速工場長に行う。
「えっと、あたし思うに、魔導トラックが二足歩行の人型になる事によって得られるメリットよりもさー、積載スペースを確保して外のユニット搭載するメリットの方が大きいと思うんだよね」
レイアはメイムの見解に全面賛成であった。
ついでだから「変形も物凄く大変そうだし尚更やる意味がわからんのだが……」と言ってみようかなという気を起こしかける。
だがその時ルベーノがすごい勢いで割って入ってきたので、その機会を失った。
「変形すれば素材的にも機構的にも元より脆弱になって当たり前、つまり浪漫武装ということだ。浪漫武装ならとことん夢を積まんでどうする! 変形・合体・自爆はワンセットだろうが!」
「うーん、まあ、そういう色物路線を目指すなら目指すでいいんだけどー。実用的な武器としてスキルを調整するならGnomeのレヴェリングモードを変形時のみ使用できるとするとか。怪力無双みたいのだろうねー。空蝉さんはどう思う?」
「わたくしは特に意見はございません」
レイアはそれ以上話題に深入りするのを止めた。
(やはり私には分からん……)
舞と詩が知り合いらしき工員と話しているので、そっちへ行く。
「へー、昔おもちゃ作ってたの。結構意外だなー。フカシじゃないよね?」
「フカシなわけなかろうが」
「この人腕はいいんだよ、お姉ちゃん」
「ふーん。あ、そうそう、あのCAMね。変形中とか結構揺れるからバネで座席に免震装置とかつけれないかな?」
「やれるとは思うが、そうするとコストが高くなるからなあ。わしゃ外から変形させることが出来るようにしたほうがいいと思うね」
「あ、こういうのはどう?」
詩が設計図の横に絵を描いた。
「下半身はキャタピラにしたら安定するかもしれないよ」
「……待て。そうしたら……ほぼほぼ刻令ゴーレム「Gnome」と変わらないデザインになるんじゃねえか?」
レイアが覗き確かめればそれは、腕を持つ上半身に車状の下半身がついたCAM、というもの。
(これをおもちゃに……? そ、そうか……こういうのが売れるの……か……?)
さあ、それはやってみなくちゃ分からない。
依頼結果
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/06/26 15:01:33 |
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相談卓だよ 天竜寺 舞(ka0377) 人間(リアルブルー)|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2018/06/26 15:09:04 |