ゲスト
(ka0000)
ファッション・パッション
マスター:DoLLer

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/06/27 15:00
- 完成日
- 2018/07/09 16:31
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「とりあえず、悪行三昧な商人たちを一網打尽にしたのは褒めるけどね。このままいけば君の方が罪人扱いだよ。旧帝国の姫がカジノ運営で人を嵌めたなんて三流ゴシップでもやらないネタだ」
第一師団副師団長室でシグルドはクリームヒルトにそう言った。
「幸せを願うなら、もう少し手段は選んだ方がいい」
「手段を選んでたら、いくら時間があっても足りないわ。帝国は法の目が届かなければ不平等が周り通る場所でいいの?」
睨むような眼をするクリームヒルトに対して、副師団長は品よくハハハと輝く歯を見せて笑った。
「朱に交われば赤くなるとはよく言ったものだ。もう少ししたら、君のその顔もそこらの悪党と同じような陰険になるのだろうね。アミィはちょっと危険だからしばらく、君の保護下から離させてもらうよ」
「へぇ、じゃあ麗しの副師団長であるお兄様には、アミィに勝る妙案があるってことね?」
シグルドはその言葉に答えず、執務机の上にある呼び鈴を軽く鳴らした。
しばらくして入ってきたのは、灰色の髪の毛を短く刈り込んだ男だった。
「紹介しよう。うちの首都警備隊長の一人、ギュントだ。周辺地域のちょっとした治安向上イベントなんかもしててね。君と方向性が似通っているチームのリーダーさんだ」
「お会いできまして恐悦至極にございます。クリームヒルト殿下」
ギュント?
クリームヒルトはどこかで聞いた名前だとしばらく頭を巡らせていた。
「立案した件の説明をしてやってくれ」
「はっ。シングスピラは本来闘技場として設計されており、今もその目的で主に使用されております。周辺には鍛冶屋などが軒を連ね、その興業を支えておりますが、歪虚との闘いにより、四国、東方、竜園、南方、リアルブルーやエバーグリーンなど大陸以外からの連携もあり、鍛冶業は地盤を大きく揺るがせております。シングスピラ単体で鍛冶業の職人全てを支えるのは将来的には大変厳しいと予想され、いずれ帝国内でも再編が進むことが予想されます」
「つまり別の産業を興す必要があるわけね」
「御明察さすがでごさいます。シングスピラは闘技場と申しましたが、今は演劇の舞台やコンサートなど芸能活動も多くみられます。そこで紡績関係をこちらに集約したいと考えます」
ギュントの堅苦しい説明に、クリームヒルトはさっそく頭が痛くなってきたが、紡績関係というキーワードもどこかでひっかかっていた。
確か帝国のどこかで……紡績関係で混迷を極めていたような。
「紡績業は地盤と深く関係し、利権と強く関係する業界でございます。場所によってはそれで血で血を争う場所ができており、治安の低下、人口の空洞化なども問題になっています」
「つまり帝国主導でそうした関係を一掃しようってわけね。利権絡み団体の力を低下させて、ついでに紡績業者を集めて土地の再編と、産業の入れ替え……か」
唸るしかなかった。
堅苦しいギュントの顔に時折浮かぶ、冷徹なガラスのような雰囲気は、その知能にそう思わせるのかもしれない。
「君が干した悪徳商人もその関係だった。この事業の一端を担ってもらえると仕事は早くて済むんだけどな」
シグルドはニコニコと語り掛けたのが腹立たしかった。
要するにクリームヒルトが悪徳商人を締めた業績を。体よく帝国がその後釜に乗っかろうというのだ。
もちろん断れもしない。
「その功績はクリームヒルト、君のものとしてもいいよ。僕としては帝国民の方が大切だしね」
お株を奪われた形となったクリームヒルトは一瞬苛立った顔をしたが、すぐに息を吐き出して冷静な顔に戻った。
「いいわ。やらせてもらうわ」
●
「さて、紡績業者にこの街で仕事することが、光栄で、チャンスに満ち溢れていることを知らしめなければなりません。私は各地の業者に呼びかけを行います。殿下におかれまして」
「殿下は止めて。権力があるわけじゃないんだから。こっちで何かイベントをやればいいわけね」
街を歩きながら説明を続けるギュントは、ひたすらに背筋がまっすぐで、どうにもやりにくい感じがした。
「クリームヒルト様のおっしゃる通りです。お願いできますでしょうか」
そこで二人は足を止めて、街を見回した。
シングスピラの大きな壁の手前にいくつも石造りの建物が並んでいる。人通りは極めて多い物の、それを全て受け入れてもまだ余裕のある大きな通りは壮観さを感じさせた。
「シングスピラ内だけで舞台をするのも勿体ない感じ。この街の雰囲気自体はとても活気があるし……街全体で盛り上げるとよさそうね。服とかの用意はある?」
「帝国のデザイナーに声をかけておりますので、希望に応じて、様々な衣装を誤用できるかと」
「じゃあ簡単ね。街の人にその衣装を着てもらうだけで、効果は十分あると思うわ。それにハンターにも来てもらって花形にもなってもらいましょう」
「え……街、全員、ですか」
ギュントが一瞬凍り付いたが、すかさずクリームヒルトはにっこり笑った。
「見える範囲の人間で十分だけど、それとも帝国からそんなにお金降りないの?」
「……あ、いや、努力します」
とんでもない跳ねっかえりだぞ。とギュントが思っているのはクリームヒルトには容易に想像がついたが、それでいいのだ。
やりたいことはどんな立場でも崩さない。
「さぁ、盛大なファッションショーやってやろうじゃないの」
「とりあえず、悪行三昧な商人たちを一網打尽にしたのは褒めるけどね。このままいけば君の方が罪人扱いだよ。旧帝国の姫がカジノ運営で人を嵌めたなんて三流ゴシップでもやらないネタだ」
第一師団副師団長室でシグルドはクリームヒルトにそう言った。
「幸せを願うなら、もう少し手段は選んだ方がいい」
「手段を選んでたら、いくら時間があっても足りないわ。帝国は法の目が届かなければ不平等が周り通る場所でいいの?」
睨むような眼をするクリームヒルトに対して、副師団長は品よくハハハと輝く歯を見せて笑った。
「朱に交われば赤くなるとはよく言ったものだ。もう少ししたら、君のその顔もそこらの悪党と同じような陰険になるのだろうね。アミィはちょっと危険だからしばらく、君の保護下から離させてもらうよ」
「へぇ、じゃあ麗しの副師団長であるお兄様には、アミィに勝る妙案があるってことね?」
シグルドはその言葉に答えず、執務机の上にある呼び鈴を軽く鳴らした。
しばらくして入ってきたのは、灰色の髪の毛を短く刈り込んだ男だった。
「紹介しよう。うちの首都警備隊長の一人、ギュントだ。周辺地域のちょっとした治安向上イベントなんかもしててね。君と方向性が似通っているチームのリーダーさんだ」
「お会いできまして恐悦至極にございます。クリームヒルト殿下」
ギュント?
クリームヒルトはどこかで聞いた名前だとしばらく頭を巡らせていた。
「立案した件の説明をしてやってくれ」
「はっ。シングスピラは本来闘技場として設計されており、今もその目的で主に使用されております。周辺には鍛冶屋などが軒を連ね、その興業を支えておりますが、歪虚との闘いにより、四国、東方、竜園、南方、リアルブルーやエバーグリーンなど大陸以外からの連携もあり、鍛冶業は地盤を大きく揺るがせております。シングスピラ単体で鍛冶業の職人全てを支えるのは将来的には大変厳しいと予想され、いずれ帝国内でも再編が進むことが予想されます」
「つまり別の産業を興す必要があるわけね」
「御明察さすがでごさいます。シングスピラは闘技場と申しましたが、今は演劇の舞台やコンサートなど芸能活動も多くみられます。そこで紡績関係をこちらに集約したいと考えます」
ギュントの堅苦しい説明に、クリームヒルトはさっそく頭が痛くなってきたが、紡績関係というキーワードもどこかでひっかかっていた。
確か帝国のどこかで……紡績関係で混迷を極めていたような。
「紡績業は地盤と深く関係し、利権と強く関係する業界でございます。場所によってはそれで血で血を争う場所ができており、治安の低下、人口の空洞化なども問題になっています」
「つまり帝国主導でそうした関係を一掃しようってわけね。利権絡み団体の力を低下させて、ついでに紡績業者を集めて土地の再編と、産業の入れ替え……か」
唸るしかなかった。
堅苦しいギュントの顔に時折浮かぶ、冷徹なガラスのような雰囲気は、その知能にそう思わせるのかもしれない。
「君が干した悪徳商人もその関係だった。この事業の一端を担ってもらえると仕事は早くて済むんだけどな」
シグルドはニコニコと語り掛けたのが腹立たしかった。
要するにクリームヒルトが悪徳商人を締めた業績を。体よく帝国がその後釜に乗っかろうというのだ。
もちろん断れもしない。
「その功績はクリームヒルト、君のものとしてもいいよ。僕としては帝国民の方が大切だしね」
お株を奪われた形となったクリームヒルトは一瞬苛立った顔をしたが、すぐに息を吐き出して冷静な顔に戻った。
「いいわ。やらせてもらうわ」
●
「さて、紡績業者にこの街で仕事することが、光栄で、チャンスに満ち溢れていることを知らしめなければなりません。私は各地の業者に呼びかけを行います。殿下におかれまして」
「殿下は止めて。権力があるわけじゃないんだから。こっちで何かイベントをやればいいわけね」
街を歩きながら説明を続けるギュントは、ひたすらに背筋がまっすぐで、どうにもやりにくい感じがした。
「クリームヒルト様のおっしゃる通りです。お願いできますでしょうか」
そこで二人は足を止めて、街を見回した。
シングスピラの大きな壁の手前にいくつも石造りの建物が並んでいる。人通りは極めて多い物の、それを全て受け入れてもまだ余裕のある大きな通りは壮観さを感じさせた。
「シングスピラ内だけで舞台をするのも勿体ない感じ。この街の雰囲気自体はとても活気があるし……街全体で盛り上げるとよさそうね。服とかの用意はある?」
「帝国のデザイナーに声をかけておりますので、希望に応じて、様々な衣装を誤用できるかと」
「じゃあ簡単ね。街の人にその衣装を着てもらうだけで、効果は十分あると思うわ。それにハンターにも来てもらって花形にもなってもらいましょう」
「え……街、全員、ですか」
ギュントが一瞬凍り付いたが、すかさずクリームヒルトはにっこり笑った。
「見える範囲の人間で十分だけど、それとも帝国からそんなにお金降りないの?」
「……あ、いや、努力します」
とんでもない跳ねっかえりだぞ。とギュントが思っているのはクリームヒルトには容易に想像がついたが、それでいいのだ。
やりたいことはどんな立場でも崩さない。
「さぁ、盛大なファッションショーやってやろうじゃないの」
リプレイ本文
花びらと喝采が飛び交う街。
闘技場の入り口の広場で、並んだ12のトランペットがショーの開幕を告げると、そわそわとしていた街人たちは一斉にレインコートを空へと放り投げた。
赤や緑や、黄色や白。服という名の色が咲き乱れ、人という名の花が乱舞する。
今日はファッションショー。
●夏憐なモデル
「さぁ、みんな張り切っていこー♪」
真っ赤なレンガ通りには、大通りに花びらの代わりにトランプカードが舞い、その嵐の中を黒いエプロンドレスを着たシエル・ユークレース(ka6648)が軽く回ったり跳ねたりして、道行く人に愛想と投げキッスを飛ばして歩く。
「ひゅー、シエルちゃーん。今日は一段と輝いてるね!」
「街を輝かせるため、メイド服のシエルちゃんは今日も頑張るよっ」
どこからともなく投げてよこされたデッキブラシを掴んで軽く振り回して、決めポーズをすると、掃除夫姿の子供たちが一斉に落ちたトランプをデッキブラシで道路端に押し寄せるように走っていく。
「街に輝きー」
「心にシャインっ」
シエルが声をかけると、みすぼらしい子供たちもばっと服を脱いで、中から夏の極彩色のエプロンドレスが現れる。
「キレーな人は好きですかーっ?」
「花があればもっと好きっ」
子供たちがシエルを中心に踊りながら、シエルの問いかけに一斉に答えて胸元のアマリリスを一斉に捧げた。
花言葉は輝くような美しさ、シエルはますます気を良くすると、じゃあ特別だよ。と言わんばかりに、茫然とする客にウィンク一つこぼすと、ひざ丈のスカートを一気に払いのけた。
「わわ、あれはいいのか」
「なんか期待しちゃった? ざーんねーんでーしたっ」
真っ赤になる男に、シエルは間近で笑った。遠目では全然気づかせることもなかっただろうが、わずかにとがった喉元がシエルの性別を明かし、それと同時に、脱いだスカートの下にもっと短いスカートが用意されていることも明かした。
「え、あれ……」
「はい、お客さんにも花がありますようにっ。それとも華はこっちがお好みかな?」
メイド服姿の子供たちが今度は花かごからダリアの花弁をばぁっとまき散らし、シエルの姿を隠し通すと、あっという間に早着替え。シエルは目も冴えるような真っ青なフリルドレスに着替えていた。
「どんな服でもこの街では鮮やかに輝くんだよっ」
ぽん、ぽんっと子供たちは色鮮やかなドレスをまとった若い娘たちにタッチ交代して、踊り出す。
「さあ、見ていってね♪」
夢の中にいるような、そんな来訪客の瞳に魔法をかけることに成功したシエルはもう一度にっこり笑って、次の季節へと続く道を開いて見せた。
●カメラ小僧がとらえたものは
「おほーっ、いいっすね!」
神楽(ka2032)はシエルの姿をバシバシと三下魔導カメラに収めながら歓喜の声を上げた。
「へへーっ、ばっちり撮れてる?」
「もちろんっす」
シエルの写真を渡しながら、ついでに撮ったローアングルからの若い娘の写真はポケットに収めた神楽はにっと笑って……リュー・グランフェスト(ka2419)にため息をつかれた。
「相変わらずだな……」
「何言ってるんすか。これはクリームヒルトちゃんのプロデュースを成功へと導くためっす!」
「じゃあ懐に入れたほうのは必要ないだろ」
「こういうのも需要あるっすよ。リューさんだって好きっすよね?」
「俺まで巻き込むなっ」
脇腹をつつくとリューは邪険に払いのけたが、神楽は口をとがらしつつ、口元は笑顔を崩さなかった。
「じゃあ、俺がクリームヒルトちゃんにせっかく用意した衣装も意味なかったっすかねー。なかなか見ることのできないセクシーなの選んだのに、相談が足りなかったっす」
「な、な……」
クリームヒルトのセクシー衣装!? しかも神楽セレクト!?
それは色々やばい気がする。
「クリームヒルトっ」
いてもたってもいられず、リューは脱兎のごとく町の中を走り始めた。
「けけけ。わかりやすいっすねー」
あのくらい分かりやすいなら世の中は楽なもんだが……神楽はそうしてちらりと横で直立不動の姿勢で立つギュントの姿を見た。
「ギュントさんは興味あるっすか」
「ない。大切なのは中身だ。外見のいいものなら他所にたくさんいる」
その一言に神楽は薄暗い狡猾さを感じた。
中身というのは才能ではなく、血筋を求めている方か……。
「シグルドの方はどうっす? 身辺調査から進展はあるっすか」
「あれで終わりだよ。洞察力鋭いハンター相手にもヴルツァライヒであることを悟られないなら、調べようもない事だ。それならそれで十分だ」
尻尾がないか、掴めないか、踏む虎の尾がなければ事を進めるだけだ。
だからこうして町おこしをしたってことっすか。これが成功すれば、第二、第三のシャーフブルート村が発生するかもしれない。
「さあ、それじゃ写真いっぱい撮ってばらまくっす」
危険は、知らせないと、いけない。
●秋麗なる傾き者
「さあ、暑い季節はこれでおしまい」
シエルがウィンク一つ投げて、ドレスをまたチェンジした。さらに大人びたドレスは夏の終わりを感じさせる真っ赤な夕焼け色の赤。シエルはドレスにつけたダリアを一輪、客人たる商人に手渡して艶やかに微笑んだ。
「とても綺麗だったよ」
「ありがとう、これは街のみんなの熱意でできてるの」
シエルは胸に残ったもう一輪のダリアを花をともに歩いた人々に投げ、皆がその花の行く末を名残惜しそうに見つめた。
しかしそれは地につかず、天空に向けて鋭く突きあげられたレイピアの切っ先に収まった。
精巧なオリーブの樹が紋様化されたブレードを伝って、鍔にしたリアルブルーで勝利の女神と名高い天使ニケの伸ばした手にダリアの花はピタリと収まると、その剣の持ち主イルム=ローレ・エーレ(ka5113)は剣を胸元に戻して微笑んだ。
「その想い、ボクが受け止めたっ」
「ほう、これはすごい……服飾の世界だけでは見られないレイピアだね」
「もちろんさ、ここはシングスピラ。戦い抜く戦士を守るための鍛冶も盛んだからね。服飾と共に栄えるべき技術だと思わないかい?」
イルムは白い歯を見せて軽く笑うと、紡績商人たちよりも先に周りにいたサクラたちが黄色い悲鳴を上げた。
「きゃー、イルム様すてきーっ」
「ははは、ありがとう、君たちの衣装も素敵だよ。可愛い顔にぴったりだ」
イルムは惜しげもなくサクラたちに笑顔を振りまいてみせる最中、商人の目線が胸元にいくのを感じていた。それはイルムが男性か女性かなどと下世話な確認をするためではなく、胸元についた勲章に注がれている。
うまく効果があったようだね♪
「ハンターの中でも一部の活躍した人間しか授与されない賞じゃないか。すごいね、この街は」
そんな高名なハンターを呼んでいるとなれば、もちろん商人の目の色も変わるはずだ。
「そうさ、この街は夢中にさせる何かがあるんだ。夢を見る街さ」
イルムはそう言って手を上げると、成り行きを見守っていた楽隊が音楽を奏で始め、イルムはそれにとって軽やかにステップを踏んだ。
「こんな街だからね、衣装に必要な布はどこに行っても必要だ。君たちはどんな衣装をボクにくれるのかな、今からとっても楽しみだよ」
舞い上がるスーツの端から、ふわりとしたブラウスをのぞかせながら、イルムは笑った。
「こりゃあいいなぁ。楽隊にもイルムさんと揃いの青いスーツがいいかもしれない」
「銀細工が眩しいね。この衣装は確かに細工屋ともっと連携したいところだ」
舞い踊るイルムは紡績業だけではまかなえないものが各所に光る。
商人たちの瞳も驚きの連続から、商機を窺う瞳へと変わっていくのがわかった。
「さあ、秋の印をここに持ちて、冬へと進んでもらおうかな」
今度は掲げたイルムの手からコスモスの花弁が風に流れて次の町の一角へと流れていく。
●銀冬のスター
流れたコスモスの花弁は白い雪を模した花吹雪に混ざる中、ジュード・エアハート(ka0410)が大きく回した軍帽の中に吸い込まてれていく。それを頭にかぶれば、白いコートに小さな彩を付け加える。
「厳しき冬のご時世を、覚悟を決めて進もうか」
軍帽から流れ落ちる髪の隙間からきらりと光る瞳を輝かせた後、ジュードはばっと衣装を脱ぎはなった。コートの下は雪月花を刺繍した範銀の軍服ドレス。フリルが怜悧な雰囲気に柔らかさをもたらす。
「ここは軍服のコーナーか。これもまたすごい」
ジュードはその言葉にしたりと目線を一つ贈ると、「客人に対して、敬意を表す!」と天に向かってリボルバーを一発放つと、残りの兵士風の衣装をしていた人たちも一斉にコートを脱ぎ捨て、マスケット片手に色彩豊かな軍服ドレスを披露する。
「帝国は戦闘がもっとも華。戦闘用の衣装もこの通り、需要を多くしているからね。どんな織布も大歓迎、デザイナーと職人がどれにも応じた服にしたててくれるし、その服はの魅力は最大限僕達が引き出してみせるよ」
あえて全部を見せないように、帯風コルセットに脱ぎ捨てたコートを半分引っ掛けて片腕片足だけ隠して見せる。そのコートだって最高級の羊毛から作られた一品で、職人の丁寧さがうかがえる。
「これだけ大きな商機がまだ眠っていたとは信じられんな」
「と言っても、無茶苦茶されたら困るけどね。血を流すのは兵士だけで十分。他に流してもらうものは汗と涙のみ」
コートについたコスモスの花弁のぐっと手に握り込んで、商人の前でゆっくりと開いて見せると、色のあるものはすべて消え去っており、パニエにつけていたクリスタルビーズがキラキラと手の中で光っていた。
ジュードの宝石のような瞳、コロコロ鈴の成るような魅惑的な声と、手の中で光るビーズの輝き。全部が商人をひきつけてやまない。
「血を流すことなんてないだろう。秋の舞台で鍛冶や細工師の仕事も十分に見てきた。これは是非連携すべきと感じたよ」
「絶対だよー? 身内で争いとか、もう今どきやってらんないからね」
「ちゃんとこの町おこしに関わらせてくれるならね」
「もちろん、損はさせないよ」
耳元で囁くようにして甘く囁くジュードの声の殺傷力たるや。商人の身体の力が抜けてふるふると震えるのが分かる。
「あんた、モデルをしないか、スターになれる要素は十分にあるっ」
「ははは、嬉しい」
伸ばす手から逃げるようにしてくるりと舞って離れると、ジュードは人指し指を口元に当てて艶然と微笑んだ。
「それじゃ最後の契約のために。みんなの春へ向かおう」
●一春の交舞
「クリームヒルトっ」
リューは真っ青になったあと、今度は真っ赤になった。クリームヒルトはミニのアオザイ、クワンも履いていないのについている脚のスリットや胸元が切れ込みの入った大胆アレンジ品。
「神楽さんが用意してくれたアオザイっていう衣装なんだけど……リアルブルーの女性って大胆なのね」
「いや、それは神楽の趣味だ。しかもそれはもうアオザイじゃねーぞ」
とりあえず何か着せようと近づいた時、ふっとリューは気を感じて、素早くクリームヒルトを庇った。
「うひょー、ナイスっす!」
カメラ小僧神楽、現る。そのレンズから覆い隠すべくリューの派手な騎士装束は役に立ったようだ。
「ああもう隠れちゃったじゃないっすか」
「撮らせるかっ」
「いいじゃないっすか、減るもんでなし」
「お前が撮ったら減るんだよ!!!」
周り込みにはマントをひらめかせ、スライディング撮影には剣を地面に突き刺し、とにかく被写体としてクリームヒルトを撮らせない。
「ふふん、じゃあ上から撮っちゃうっす」
パルムに魔導カメラを渡し、神楽本体は魔導スマートフォンのカメラ機能で引き続き狙っていく作戦。こりにはさすがのリューも対応できず歯がみをした。抱きしめて隠すしかないか。
「きゅー♪」
かしゃっ。という合成的なカメラ音が連続して響いた。
「あら、ありがとうですわ」
カメラに収まったのはクリームヒルトではなく、着物の袖をなびかせ跳躍した音羽 美沙樹(ka4757)の姿であった。流れる金髪、光を浴びて輝く鶴の刺繍の銀糸、そして手にした機織りの針の白、鍛冶の鏝が作る黒。そんな様々な色が流れる姿にパルムはすっかり虜になって夢中になってシャッターボタンを連打していた。
「さあ、皆さま、四季を楽しんでいただきましたかしら。住民、もちろん職人も含めての協力があっての事ですわ」
「ぐーぬぬぬ」
舞い踊りながらパルムを惹きつける美沙樹の演舞にパルムも商人たちも首ったけ状態である。神楽もさすがにこれでは裏の方のベストショットを目指すのは難しい。
「踊りは一人でも大変美しいものですが、参加することで踊りの喜びを分かち合うことができますわ。また誰かと一緒に踊ることで一体感も」
美沙樹は情熱的な踊りの合間に加えたセリフに合わせて、鍛冶屋の男たちが集まってくる。和服を大胆アレンジした姿で、彼らが共に踊り出すことで、美沙樹の女性らしさが一層華やかに映り込む。
そして神楽の写真はことごとく男らしい筋肉と汗臭い肢体で埋め尽くされていく。
「もう諦めるんだな。悪い事はできねぇぜ。むしろちゃんと評価してくれるってんなら、手を取り合うこともできるかもしれないぞ」
半分は神楽に向けて言ったものだが、残りの半分は商人たちに向けての言葉だった。
「もちろんだ。ここに工場を立てさせてくれ、そして君たちの技術をうならせよう。そして全員が幸せになるように」
クリームヒルトはじっと商人の顔を見ると、笑顔で握手を交わした。
「大丈夫なのか?」
「もっぱら人を使い捨ての道具にする人間はこの前のギャンブルで身動きとれなくしたもの。それにわたし、見る目はそんなに悪くないはずだけど」
クリームヒルトの笑顔にため息をつくリュー。
「それじゃみんなでお祝いに踊りましょうか。みーんなー」
クリームヒルトが呼びかけると四季折々の街角から、全員が集合してくる。もうここは春も夏も秋も冬もごっちゃの世界だ。
「さぁ踊りますわっ」
機織りの針と鍛冶の鏝を交差させた美沙樹が音頭を上げた。
「素晴らしい手腕でございます」
すっかり打ち解けた商人と街人たちの光景を見たギュントはそう言い、クリームヒルトは嬉しそうに鼻をならした。
「みんなが手を取り合う事はずっとやってきたもの」
と、自信たっぷりに胸を張って言えたのはそこまでだった。
「では私ともこれから手を取り合っていただきたく」
膝をついたギュントが差し出したのは赤いバラ一輪。
それは求婚のメッセージであることはさすがのクリームヒルトも理解できたが、それを対応するには頭が真っ白になってできそうになかった。
「えーと……」
「このギュント。クリームヒルト様を娶りたく」
「はぁぁぁぁぁ!!????」
リューと美沙樹が叫んだのは言うまでもない。
闘技場の入り口の広場で、並んだ12のトランペットがショーの開幕を告げると、そわそわとしていた街人たちは一斉にレインコートを空へと放り投げた。
赤や緑や、黄色や白。服という名の色が咲き乱れ、人という名の花が乱舞する。
今日はファッションショー。
●夏憐なモデル
「さぁ、みんな張り切っていこー♪」
真っ赤なレンガ通りには、大通りに花びらの代わりにトランプカードが舞い、その嵐の中を黒いエプロンドレスを着たシエル・ユークレース(ka6648)が軽く回ったり跳ねたりして、道行く人に愛想と投げキッスを飛ばして歩く。
「ひゅー、シエルちゃーん。今日は一段と輝いてるね!」
「街を輝かせるため、メイド服のシエルちゃんは今日も頑張るよっ」
どこからともなく投げてよこされたデッキブラシを掴んで軽く振り回して、決めポーズをすると、掃除夫姿の子供たちが一斉に落ちたトランプをデッキブラシで道路端に押し寄せるように走っていく。
「街に輝きー」
「心にシャインっ」
シエルが声をかけると、みすぼらしい子供たちもばっと服を脱いで、中から夏の極彩色のエプロンドレスが現れる。
「キレーな人は好きですかーっ?」
「花があればもっと好きっ」
子供たちがシエルを中心に踊りながら、シエルの問いかけに一斉に答えて胸元のアマリリスを一斉に捧げた。
花言葉は輝くような美しさ、シエルはますます気を良くすると、じゃあ特別だよ。と言わんばかりに、茫然とする客にウィンク一つこぼすと、ひざ丈のスカートを一気に払いのけた。
「わわ、あれはいいのか」
「なんか期待しちゃった? ざーんねーんでーしたっ」
真っ赤になる男に、シエルは間近で笑った。遠目では全然気づかせることもなかっただろうが、わずかにとがった喉元がシエルの性別を明かし、それと同時に、脱いだスカートの下にもっと短いスカートが用意されていることも明かした。
「え、あれ……」
「はい、お客さんにも花がありますようにっ。それとも華はこっちがお好みかな?」
メイド服姿の子供たちが今度は花かごからダリアの花弁をばぁっとまき散らし、シエルの姿を隠し通すと、あっという間に早着替え。シエルは目も冴えるような真っ青なフリルドレスに着替えていた。
「どんな服でもこの街では鮮やかに輝くんだよっ」
ぽん、ぽんっと子供たちは色鮮やかなドレスをまとった若い娘たちにタッチ交代して、踊り出す。
「さあ、見ていってね♪」
夢の中にいるような、そんな来訪客の瞳に魔法をかけることに成功したシエルはもう一度にっこり笑って、次の季節へと続く道を開いて見せた。
●カメラ小僧がとらえたものは
「おほーっ、いいっすね!」
神楽(ka2032)はシエルの姿をバシバシと三下魔導カメラに収めながら歓喜の声を上げた。
「へへーっ、ばっちり撮れてる?」
「もちろんっす」
シエルの写真を渡しながら、ついでに撮ったローアングルからの若い娘の写真はポケットに収めた神楽はにっと笑って……リュー・グランフェスト(ka2419)にため息をつかれた。
「相変わらずだな……」
「何言ってるんすか。これはクリームヒルトちゃんのプロデュースを成功へと導くためっす!」
「じゃあ懐に入れたほうのは必要ないだろ」
「こういうのも需要あるっすよ。リューさんだって好きっすよね?」
「俺まで巻き込むなっ」
脇腹をつつくとリューは邪険に払いのけたが、神楽は口をとがらしつつ、口元は笑顔を崩さなかった。
「じゃあ、俺がクリームヒルトちゃんにせっかく用意した衣装も意味なかったっすかねー。なかなか見ることのできないセクシーなの選んだのに、相談が足りなかったっす」
「な、な……」
クリームヒルトのセクシー衣装!? しかも神楽セレクト!?
それは色々やばい気がする。
「クリームヒルトっ」
いてもたってもいられず、リューは脱兎のごとく町の中を走り始めた。
「けけけ。わかりやすいっすねー」
あのくらい分かりやすいなら世の中は楽なもんだが……神楽はそうしてちらりと横で直立不動の姿勢で立つギュントの姿を見た。
「ギュントさんは興味あるっすか」
「ない。大切なのは中身だ。外見のいいものなら他所にたくさんいる」
その一言に神楽は薄暗い狡猾さを感じた。
中身というのは才能ではなく、血筋を求めている方か……。
「シグルドの方はどうっす? 身辺調査から進展はあるっすか」
「あれで終わりだよ。洞察力鋭いハンター相手にもヴルツァライヒであることを悟られないなら、調べようもない事だ。それならそれで十分だ」
尻尾がないか、掴めないか、踏む虎の尾がなければ事を進めるだけだ。
だからこうして町おこしをしたってことっすか。これが成功すれば、第二、第三のシャーフブルート村が発生するかもしれない。
「さあ、それじゃ写真いっぱい撮ってばらまくっす」
危険は、知らせないと、いけない。
●秋麗なる傾き者
「さあ、暑い季節はこれでおしまい」
シエルがウィンク一つ投げて、ドレスをまたチェンジした。さらに大人びたドレスは夏の終わりを感じさせる真っ赤な夕焼け色の赤。シエルはドレスにつけたダリアを一輪、客人たる商人に手渡して艶やかに微笑んだ。
「とても綺麗だったよ」
「ありがとう、これは街のみんなの熱意でできてるの」
シエルは胸に残ったもう一輪のダリアを花をともに歩いた人々に投げ、皆がその花の行く末を名残惜しそうに見つめた。
しかしそれは地につかず、天空に向けて鋭く突きあげられたレイピアの切っ先に収まった。
精巧なオリーブの樹が紋様化されたブレードを伝って、鍔にしたリアルブルーで勝利の女神と名高い天使ニケの伸ばした手にダリアの花はピタリと収まると、その剣の持ち主イルム=ローレ・エーレ(ka5113)は剣を胸元に戻して微笑んだ。
「その想い、ボクが受け止めたっ」
「ほう、これはすごい……服飾の世界だけでは見られないレイピアだね」
「もちろんさ、ここはシングスピラ。戦い抜く戦士を守るための鍛冶も盛んだからね。服飾と共に栄えるべき技術だと思わないかい?」
イルムは白い歯を見せて軽く笑うと、紡績商人たちよりも先に周りにいたサクラたちが黄色い悲鳴を上げた。
「きゃー、イルム様すてきーっ」
「ははは、ありがとう、君たちの衣装も素敵だよ。可愛い顔にぴったりだ」
イルムは惜しげもなくサクラたちに笑顔を振りまいてみせる最中、商人の目線が胸元にいくのを感じていた。それはイルムが男性か女性かなどと下世話な確認をするためではなく、胸元についた勲章に注がれている。
うまく効果があったようだね♪
「ハンターの中でも一部の活躍した人間しか授与されない賞じゃないか。すごいね、この街は」
そんな高名なハンターを呼んでいるとなれば、もちろん商人の目の色も変わるはずだ。
「そうさ、この街は夢中にさせる何かがあるんだ。夢を見る街さ」
イルムはそう言って手を上げると、成り行きを見守っていた楽隊が音楽を奏で始め、イルムはそれにとって軽やかにステップを踏んだ。
「こんな街だからね、衣装に必要な布はどこに行っても必要だ。君たちはどんな衣装をボクにくれるのかな、今からとっても楽しみだよ」
舞い上がるスーツの端から、ふわりとしたブラウスをのぞかせながら、イルムは笑った。
「こりゃあいいなぁ。楽隊にもイルムさんと揃いの青いスーツがいいかもしれない」
「銀細工が眩しいね。この衣装は確かに細工屋ともっと連携したいところだ」
舞い踊るイルムは紡績業だけではまかなえないものが各所に光る。
商人たちの瞳も驚きの連続から、商機を窺う瞳へと変わっていくのがわかった。
「さあ、秋の印をここに持ちて、冬へと進んでもらおうかな」
今度は掲げたイルムの手からコスモスの花弁が風に流れて次の町の一角へと流れていく。
●銀冬のスター
流れたコスモスの花弁は白い雪を模した花吹雪に混ざる中、ジュード・エアハート(ka0410)が大きく回した軍帽の中に吸い込まてれていく。それを頭にかぶれば、白いコートに小さな彩を付け加える。
「厳しき冬のご時世を、覚悟を決めて進もうか」
軍帽から流れ落ちる髪の隙間からきらりと光る瞳を輝かせた後、ジュードはばっと衣装を脱ぎはなった。コートの下は雪月花を刺繍した範銀の軍服ドレス。フリルが怜悧な雰囲気に柔らかさをもたらす。
「ここは軍服のコーナーか。これもまたすごい」
ジュードはその言葉にしたりと目線を一つ贈ると、「客人に対して、敬意を表す!」と天に向かってリボルバーを一発放つと、残りの兵士風の衣装をしていた人たちも一斉にコートを脱ぎ捨て、マスケット片手に色彩豊かな軍服ドレスを披露する。
「帝国は戦闘がもっとも華。戦闘用の衣装もこの通り、需要を多くしているからね。どんな織布も大歓迎、デザイナーと職人がどれにも応じた服にしたててくれるし、その服はの魅力は最大限僕達が引き出してみせるよ」
あえて全部を見せないように、帯風コルセットに脱ぎ捨てたコートを半分引っ掛けて片腕片足だけ隠して見せる。そのコートだって最高級の羊毛から作られた一品で、職人の丁寧さがうかがえる。
「これだけ大きな商機がまだ眠っていたとは信じられんな」
「と言っても、無茶苦茶されたら困るけどね。血を流すのは兵士だけで十分。他に流してもらうものは汗と涙のみ」
コートについたコスモスの花弁のぐっと手に握り込んで、商人の前でゆっくりと開いて見せると、色のあるものはすべて消え去っており、パニエにつけていたクリスタルビーズがキラキラと手の中で光っていた。
ジュードの宝石のような瞳、コロコロ鈴の成るような魅惑的な声と、手の中で光るビーズの輝き。全部が商人をひきつけてやまない。
「血を流すことなんてないだろう。秋の舞台で鍛冶や細工師の仕事も十分に見てきた。これは是非連携すべきと感じたよ」
「絶対だよー? 身内で争いとか、もう今どきやってらんないからね」
「ちゃんとこの町おこしに関わらせてくれるならね」
「もちろん、損はさせないよ」
耳元で囁くようにして甘く囁くジュードの声の殺傷力たるや。商人の身体の力が抜けてふるふると震えるのが分かる。
「あんた、モデルをしないか、スターになれる要素は十分にあるっ」
「ははは、嬉しい」
伸ばす手から逃げるようにしてくるりと舞って離れると、ジュードは人指し指を口元に当てて艶然と微笑んだ。
「それじゃ最後の契約のために。みんなの春へ向かおう」
●一春の交舞
「クリームヒルトっ」
リューは真っ青になったあと、今度は真っ赤になった。クリームヒルトはミニのアオザイ、クワンも履いていないのについている脚のスリットや胸元が切れ込みの入った大胆アレンジ品。
「神楽さんが用意してくれたアオザイっていう衣装なんだけど……リアルブルーの女性って大胆なのね」
「いや、それは神楽の趣味だ。しかもそれはもうアオザイじゃねーぞ」
とりあえず何か着せようと近づいた時、ふっとリューは気を感じて、素早くクリームヒルトを庇った。
「うひょー、ナイスっす!」
カメラ小僧神楽、現る。そのレンズから覆い隠すべくリューの派手な騎士装束は役に立ったようだ。
「ああもう隠れちゃったじゃないっすか」
「撮らせるかっ」
「いいじゃないっすか、減るもんでなし」
「お前が撮ったら減るんだよ!!!」
周り込みにはマントをひらめかせ、スライディング撮影には剣を地面に突き刺し、とにかく被写体としてクリームヒルトを撮らせない。
「ふふん、じゃあ上から撮っちゃうっす」
パルムに魔導カメラを渡し、神楽本体は魔導スマートフォンのカメラ機能で引き続き狙っていく作戦。こりにはさすがのリューも対応できず歯がみをした。抱きしめて隠すしかないか。
「きゅー♪」
かしゃっ。という合成的なカメラ音が連続して響いた。
「あら、ありがとうですわ」
カメラに収まったのはクリームヒルトではなく、着物の袖をなびかせ跳躍した音羽 美沙樹(ka4757)の姿であった。流れる金髪、光を浴びて輝く鶴の刺繍の銀糸、そして手にした機織りの針の白、鍛冶の鏝が作る黒。そんな様々な色が流れる姿にパルムはすっかり虜になって夢中になってシャッターボタンを連打していた。
「さあ、皆さま、四季を楽しんでいただきましたかしら。住民、もちろん職人も含めての協力があっての事ですわ」
「ぐーぬぬぬ」
舞い踊りながらパルムを惹きつける美沙樹の演舞にパルムも商人たちも首ったけ状態である。神楽もさすがにこれでは裏の方のベストショットを目指すのは難しい。
「踊りは一人でも大変美しいものですが、参加することで踊りの喜びを分かち合うことができますわ。また誰かと一緒に踊ることで一体感も」
美沙樹は情熱的な踊りの合間に加えたセリフに合わせて、鍛冶屋の男たちが集まってくる。和服を大胆アレンジした姿で、彼らが共に踊り出すことで、美沙樹の女性らしさが一層華やかに映り込む。
そして神楽の写真はことごとく男らしい筋肉と汗臭い肢体で埋め尽くされていく。
「もう諦めるんだな。悪い事はできねぇぜ。むしろちゃんと評価してくれるってんなら、手を取り合うこともできるかもしれないぞ」
半分は神楽に向けて言ったものだが、残りの半分は商人たちに向けての言葉だった。
「もちろんだ。ここに工場を立てさせてくれ、そして君たちの技術をうならせよう。そして全員が幸せになるように」
クリームヒルトはじっと商人の顔を見ると、笑顔で握手を交わした。
「大丈夫なのか?」
「もっぱら人を使い捨ての道具にする人間はこの前のギャンブルで身動きとれなくしたもの。それにわたし、見る目はそんなに悪くないはずだけど」
クリームヒルトの笑顔にため息をつくリュー。
「それじゃみんなでお祝いに踊りましょうか。みーんなー」
クリームヒルトが呼びかけると四季折々の街角から、全員が集合してくる。もうここは春も夏も秋も冬もごっちゃの世界だ。
「さぁ踊りますわっ」
機織りの針と鍛冶の鏝を交差させた美沙樹が音頭を上げた。
「素晴らしい手腕でございます」
すっかり打ち解けた商人と街人たちの光景を見たギュントはそう言い、クリームヒルトは嬉しそうに鼻をならした。
「みんなが手を取り合う事はずっとやってきたもの」
と、自信たっぷりに胸を張って言えたのはそこまでだった。
「では私ともこれから手を取り合っていただきたく」
膝をついたギュントが差し出したのは赤いバラ一輪。
それは求婚のメッセージであることはさすがのクリームヒルトも理解できたが、それを対応するには頭が真っ白になってできそうになかった。
「えーと……」
「このギュント。クリームヒルト様を娶りたく」
「はぁぁぁぁぁ!!????」
リューと美沙樹が叫んだのは言うまでもない。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 ジュード・エアハート(ka0410) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2018/06/27 04:55:35 |
|
![]() |
ファッションショー質問卓 神楽(ka2032) 人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2018/06/27 04:53:27 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/06/22 19:05:28 |