マギア砦――会議室。
「ようやく準備が整いました。『辺境北部敵兵器工廠破壊作戦』を発動します」
　そう切り出したのはマギア砦に駐留する、ＣＡＭ小隊を率いる相川・俊一少尉。砦の関係者は彼の話に耳を傾ける。
「……連合軍が抽出できた戦力はＣＡＭ一個中隊、及び補給部隊……。正直心許ないですが仕方ありません。例によって、ハンターに期待しましょう」
　連合軍も台所事情は厳しいらしい……。
「前回の敵の襲撃で、敵部隊を完全に殲滅出来たことにより、敵軍も相応に疲弊しているはずです。この機を逃す手はありません。戦力を回復される前に一気に叩きに行きます」
「まあ、私は砦の防衛が任務ですので遠征には参加しませんが……」と相川少尉は付け加える。
　流石にマギア砦を空っぽにするわけにはいかない。万が一、敵がその隙を狙って襲撃して来た場合、対処出来ないのでは本末転倒だ。
　――今回の作戦は、マギア砦に対する攻勢を強める歪虚の脅威を取り除くためにあるのだ。
　…………巨人用兵器工廠に存在する戦力が敵の全てではないのだが。工廠を破壊出来れば武装巨人の脅威を減らすことは可能だろう。
「今回の作戦は連合軍遠征部隊、ハンター遠征部隊の二手に分かれ、敵兵器工廠を挟撃します。こうすることにより敵指揮官を取り逃す可能性が減るでしょう」
　また相川少尉は「手を上げてくれるハンターが少ない場合は連合軍部隊に組み込む形になりますが……」と、付け加えた。
「ともあれ、です。ハンターの活躍が目覚ましいのは確か。当てにしてしまうのも仕方ありません。今回の作戦が成功すれば度重なるマギア砦への襲撃も減るでしょう」
「その上、巨人への近代兵器の拡散・供給を断つことが出来ます。むしろ、後者が今回の目的なのですが」と相川少尉は続けた。
　二度の襲撃と一度の交戦で武装巨人の厄介さは実際に交戦したハンターは元より、相川少尉や砦の関係者は痛感していた。
　近代兵器が全巨人に行き渡り、これまで以上の大規模攻勢を仕掛けてきた……などと想像すれば被害は前回の大規模攻勢よりも凄まじいことになるだろう。
　また人類は辺境の地で劣勢に立たされることとなってしまう……。辺境部族はまたしても故郷を追われることとなる……。それは絶対に阻止せねばならない。
　ゆえに、何としても辺境北部に存在する巨人用兵器工廠を破壊し、巨人達に訓練を施していると思しき敵の指揮官を叩く必要があるのだ。
「やっと故郷へ戻ることが出来、平穏を取り戻しつつある辺境部族の方々が、また故郷を追われることなどあってはなりません。我々が動かねばならないのです！」
　グッと拳を握り締め、胸に当てる相川少尉。
「辺境地域の平和は我々連合軍と、ハンターの双肩にかかっている……！　今回の作戦、絶対に成功させましょう！」
　そのように声を上げる相川少尉であった。

●
　マギア砦を出発したハンター達は連合軍部隊とは別ルートで敵兵器工廠を目指す――。

「んじゃ工廠ぶっ壊しにいくとするか。ぶっちゃけここさえ潰せば、しばらくは安泰だろうしな」
　デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)の機体はR7エクスシア『閻王の盃』。
「本来ならこのデスドクロ様の冥王雷撃億兆陣で一撃だが……」
　※彼の発言には一部『設定』が含まれています。
「今後を考えると俺様一人の力ですべてを解決しちまうのは好ましくねぇ。仲間に経験を積ませ、相川達にも花を持たせなくちゃあ、未来に繋がらねえからな」
　連合軍部隊にも経験を積ませて練度を上げるというのは正論だが……。ちなみに相川少尉はマギア砦でお留守番である。
「今回も全生物の頂に立つ者として、適切に人を導くことを誓うぜ。グーーーーハハハハハハ！！！！」
　などと高笑いをする（自称）完璧魔黒暗黒皇帝・デスドクロ。

　ロニ・カルディス(ka0551)の機体はR7エクスシア『清廉号』。
「これ以上近代化した手勢を揃えられてもまずいな。今叩けるときに叩いて、供給を断つとしよう」
　今回の作戦の基本方針は兵器工廠の破壊を優先しつつ、可能であれば敵勢力に関する情報を回収すること。
　ロニは予め通信機類を用意しておき、連合軍部隊を含めた味方同士で随時連絡を取り合えるように準備しておく。

　エーミ・エーテルクラフト(ka2225)の相棒はリーリー『アーテリー』。
「前回は途中でお料理が必要と聞いたけど、今回は目的地まで一直線？」
　彼女は戦いよりホスピタリティ（心配り、気配り。 優れたコミュニケーション）。思考や仲間の連携に意識を置くタイプらしい。
（工廠の偵察と発見、間を置かずに前回の攻勢。その後、こちらの反転攻勢を見越しているなら）
「相手に備えがない、というのは楽観にすぎるわね」
　当然ながら敵軍はこちらの攻勢を見越して防衛体制を整えていることが予測される。
「地雷・塹壕等、敵が防御力の高い地勢を作成した状態からスタートするのかしら？　砦を攻略する心構えね」
　攻者は防者の三倍の戦力を必要とするのが鉄則だが……果たして……。

　レイア・アローネ(ka4082)の相棒はワイバーン。
「巨人との戦闘か……相手にとって不足はない」
（巨人と聞いて何故かグラビティブーツを使い二刀流で後ろから首のあたりを狙いたくなってしまったが、何の根拠もないのでやめておこう）
　ビキニアーマー装備のセクシー且つ凛々しい彼女はそんなことを考えている。
「それとこっちは真面目な話、ＣＡＭが有効だと聞き用意する事も考えたが、乗り慣れないものに乗って強敵に挑むよりは慣れているものの方が良さそうだ」
　今回は敵の拠点を攻めるのであるからして、激しい抵抗・激戦が予想される。ゆえに有利だと言ってもＣＡＭなどの慣れぬ機体では逆に危険を招きかねない。
「なのでワイバーンを駆り作戦に臨む。空中戦はなかなか神経を使うのだがな」

　ゾファル・Ｇ・初火(ka4407)の機体はガルガリン『ガルちゃん』。
「あの武装化巨人どもとまたやれるってかー？　ヒューっそそるぜー」
　そのように愛機のコクピット内にて、チンピラめいた口調で盛り上がっているゾファル。
「今回もガルガリンのガルちゃんで暴れるぜ」
　機体の武装を斬艦刀『天翼』二振りの二刀流に変更し、近接格闘戦による巨人殺しメインで行く気満々だ。

　＊＊＊

　そうこうしながら最短距離で行軍していると……遠方に巨大建造物――敵巨人用兵器工廠が見えてきた。

「あれが兵器工場ですか。巨人が使うだけあって大きいですね」
　鳳城　錬介(ka6053)の相棒は刻令ゴーレム「Volcanius」『崩天丸』。
「防衛部隊も準備万端でしょうか。どれも狙い甲斐があっていいですね。精鋭でしょうから油断は禁物ですが……良い戦いになりそうです」
　錬介も相棒の『崩天丸』も、準備は万全のようである。

　ルネ(ka4202)の乗車する車両は魔導トラック『はうんど』。
　事前準備として車体には支給許可内の金額で迷彩塗装や小枝などのカモフラージュも忘れずに施しておいた。
「今回のおしごとの目標は施設破壊……。相手の数も多いしつよいから、正面突破はせずに今回も足をいかしたいねー」
　ふんす！　とルネは鼻息を荒くする。

「ようやく見えてきた目的地だけど、焦らず確実にー」
　葛音　水月(ka1895)の機体はR7エクスシア『フレイヤ』。
　今回の作戦目的は兵器工廠の破壊。水月は、理想は『敵排除→調査→工廠の完全破壊』とするも、工廠の破壊を最優先。
　さて、工廠目前まで来たところで、道中ほとんど戦闘は無かったものの、一応ハンターの機体全機はルネの魔導トラックから弾薬などを補充して準備を万全に整える。
　逐次補充では時間が掛かってしまうため幻獣にも手伝ってもらって一度に纏めて行う。
「準備はいいかな？　この戦力で押し切れないことは無いだろうけど、備えあれば憂いなしーだ」
　数では敵が上回るだろうが、練度と総合戦力ではハンターと連合軍部隊に分があるだろう。
　…………ほどなくして連合軍部隊から通信。あちらもすぐに攻撃を仕掛けられる距離へ到達したらしい。

「敵陣を長射程の攻撃魔法で叩くよ」
　夢路 まよい(ka1328)の相棒はグリフォン『イケロス』。
「やっほ～、城攻めだ～！　相手が立てこもる建物が奪われた重要施設で奪還、とかいうのは難しかったけど……今回は、壊しちゃっても、いいんだよね？　爆撃！」

　南護　炎(ka6651)の機体はコンフェッサー『GRAND SWORD』。
「サイクロプス共め、今度は兵器工場だと……徹底的に破壊してやる！！」
　今回の作戦内容を仲間と改めて打ち合わせ。ＣＡＭの整備状態も最終確認――ＯＫ。オールグリーン。
「行くぞ。みんな！　『GRAND SWORD』出撃する！！」

　＊＊＊

　マリィア・バルデス(ka5848)の機体はR7エクスシア『mercenario』。
「それじゃあ私は敵指揮官の自爆対策に関われない分、みんなの接敵前に頑張らないとね。いい高台があるといいけど」
　周囲をサーチしたところ高台は無かったが狙撃ポイントになり得る場所を発見。マリィア機『mercenario』はそこへ素早く移動する。
「ここまで来れる根性のある歪虚が居るなら、それはそれで歓迎してあげるわよ。せっかく射程の違う銃を三挺も持ってきたのは何のためだと思ってるの」
　今回彼女は可能な限り仲間をフォローしつつ、三種の銃器による砲撃に徹するつもりである。

　コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)の機体はR7エクスシア『カラミティ・ホーネット』。
「場所を掴んだ以上はこちらのものだ。全員で総攻撃を仕掛け、石器時代に戻してしまえ！」
　コーネリアはＣＡＭの扱いが不得意だと言いながらも数多くの戦場を経験し、段々と操縦技術が向上、機体特性などをモノにしてきた様子。
『災厄のスズメバチ』の異名を持つR7エクスシアを駆り、コーネリアは今日も憎き歪虚を撃ち抜くのである――。
　今回は敵の工廠を破壊・制圧することを主目的に行動するものの、余裕があれば情報収集も行うつもりだ。

「俺、近付かれると手も足も出なくなるんで前衛はヨロシク！」
　ロジャー=ウィステリアランド(ka2900)の機体はダインスレイブ『海帝』。
　後方からの砲撃に徹する彼の目的は敵兵器工廠の破壊と、その警備を担当する武装巨人の殲滅。
　そしてあわよくば巨人用装備やその部品などの出所や背後関係諸々、なんらかの情報を入手出来れば……と考える。

　サクラ・エルフリード(ka2598)の機体は魔導型デュミナス。
　彼女は愛機魔導型ＣＡＭに乗り込み前衛で戦闘行動を行う予定。
　待ち構える武装サイクロプスの対応に当たり、敵の意識を出来るだけ向けさせこちらに誘引することを狙う。
　兵器工廠破壊を主眼に置く味方への攻撃を少しでも逸らすことが出来れば……と、サクラは考える。
「さて、多少派手に行きましょうか……。どちらにせよ敵の数は減らす必要あるでしょうし……」

　ボルディア・コンフラムス(ka0796)の相棒はイェジド『ヴァーミリオン』。
「要は目につくもの全部ぶっ壊せばイイだけだろ！？　俺の道を邪魔すンじゃねぇぞウドの大木がぁ！！」
　彼女は相棒『ヴァン』の背に跨り敵陣へ突撃。

　こうして戦端が開かれた……。

●
　さて、ハンター達が動き出すと同時に、連合軍部隊方面からも最初の砲撃が始まった。
　連合軍部隊は事前の打ち合わせ通り、あまり無理はせず、遠距離からの砲撃を中心に戦闘を行うようである。

　ルネの魔導トラックも行動開始。前進する味方機に隠れつつ、伏せて移動。適当な場所を見つけてアンブッシュである。
「きょじん兵と味方が接敵するまで、大人しく観測と偵察に専念～」
　敵陣はやはり塹壕が掘られており、遮蔽物も多数設置され、防備が整えられていた。
　味方部隊へ、スナイパーライフル持ちの巨人による狙撃と、設置型の大型機関砲による弾幕が飛ぶ。

「まー流石にここに敵の指揮官がいねぇことは無いだろうが、前回の奴もそこそこ上手くサイクロプス連中を使ってたから油断は禁物だ」
　デスドクロはR7エクスシア『閻王の盃』を駆り、弾幕を掻い潜りながら敵の工廠へ向かう。
「武装サイクロはアタッカーとしても優秀だが、防衛に回したら更に厄介なんじゃねぇかって気もしてる。女巨人撃破の報は当然敵にも入っている筈だしな」
　ヘルメットにボディアーマーで身を固めた巨人が塹壕に隠れ、備え付けの大型機関砲やロケットランチャーなどを使って来ている現状を見るとかなり厄介だ。
「挟撃態勢が整ったからと言って、まったく楽観視できねぇ現状だと認識してるぜ」
　その通り、如何に早くハンターの前衛部隊がこの弾幕を突破し、敵塹壕に突入し、敵を蹴散らせるかにかかっている。
　連合軍部隊や味方ゴーレムの曲射による攻撃でダメージは与えているものの、まだ敵の陣容を崩す段階に至ってはいない。
「今回の肝は二方向からの攻撃をどれだけ継続できるかにかかっていると考えてるんで、とにかく初手から圧力をかけて、敵をなるたけハンター側に寄せられりゃベストだ」
　部隊としての練度は兎も角、ＣＡＭやゴーレムの機体性能はハンターのほうが上だろう。個々の練度も同じく。
「連合軍が弱ぇってワケじゃ無いが、あいつらは固まって戦ってナンボだからな。数を減らしたくねぇ」
　デスドクロはなるべく目立つように動き、２００ｍｍ４連カノン砲を撃ち込み、こちらへ注意を引き付ける。そして前進。
「俺様もバンバン撃ち込んでいくが、優先して狙うのは工廠の入口付近にいるやつからだな」
　……工廠の入り口付近は一層強固な守りが整えられていた。デスドクロはそこへ砲撃を集中させる。

　ロニ機は交戦開始後、各々の戦いやすい射程を考慮、お互いに邪魔にならないように位置取りを心がける。
　個人行動としては近～中距離での戦闘を中心に行うべく、味方と足並みを揃え、敵集団が密集している個所に向かって移動。
【アクティブスラスター】も噴かせて移動距離を稼ぐ。敵軍を有効射程に捉え次第、ビームライフル『ベウストロース』による射撃を開始。光条が飛ぶ。
　更に敵を複数巻き込める状況であれば【マテリアルライフル】やクイックライフル『ウッドペッカー』による【マテリアルビーム】の掃射を行い、纏めてダメージを与える。

　まよいはグリフォンの『イケロス』に騎乗して移動。
「イケロスはそこそこ大きいから目立つかもだけど、ＣＡＭなんかに比べればまだ小ぶりだから」
　敵陣から長射程の攻撃が飛んでくる間は、味方ＣＡＭの影に隠れさせてもらいつつ立ち回り、前進する。
「【飛翔の翼】を発動すれば空を飛ぶこともできるけど、空中だと回避も命中も下がるし……」
（遠距離攻撃持ちの敵が多く残ってる間はいい的になりかねないから、しばらくは地上で立ち回る必要があるかも）
　というわけで魔法の有効射程へ、隠れながら地上を移動する。

　水月機、作戦行動中はトランシーバーと魔導スマートフォンで相互連絡・連携を取る。
　道中の散発的な戦闘では温存していたMライフル『イースクラW』を解放。
　後方からの射撃を主に中距離～近距離での戦闘を行い、工廠破壊の邪魔になる敵戦力の撃破に当たる。
　Mライフル『イースクラW』の射程から砲撃し、敵へ確実にダメージを与えてゆく。
　また、塹壕へ味方が接近する際には２００ｍｍ４連カノン砲で弾幕を張り、支援を試みる。

　コーネリアは事前に、連合軍部隊とハンター部隊とのフレンドリーファイアを避けるため、十字砲火を組めるように連合軍部隊へ要請を行った。
　交戦が開始された現在は連合軍部隊が敵兵器工廠の側面から砲撃を行い、ハンター部隊は正面から攻撃を行っている状況である。
　工廠を射程に捕えた後、コーネリア機は外壁を破壊するべくミサイルランチャー『ガダブタフリール』を発射するが、まだ敵防衛線力が多く残っているため、迎撃されてしまった。
　コーネリア機は兵装をMハルバード『ウンヴェッター』に切り替え、【マジックエンハンサー】と併せた【マテリアルライフル】により掃射。
　前衛組が突入する前の早い段階から敵戦力に纏めてダメージを与える。

　R7エクスシア『mercenario』に搭乗するマリィア。
　狙撃ポイントに伏せ、ロングレンジライフル『ルギートゥスD5』により敵を狙撃。砲・狙撃可能ポイントに陣取り延々と狙撃。
　仲間とは通信機器で連絡を密に。仲間の接敵前、且つ仲間の前進を邪魔しないタイミングで射撃を開始した後にリロードを挟みつつひたすら狙撃を繰り返す。
　射線上に仲間を絶対入れないよう注意し、仲間に連絡し警告して、狙いを工廠に定めて【マテリアルライフル】による掃射も行う。
【マテリアルライフル】の最初の二射で仲間の居ない敵密集地帯を掃射し、残りの二射で工廠を狙い、撃ち放つ。

「さて。それでは全て薙ぎ払うとしようか……出番だよ、崩天丸」
　錬介は『崩天丸』を連れて工廠へ。作戦開始に合わせて前進を指示する。
　敵集団を射程内に収めれば、近接戦を仕掛ける仲間を巻き込まないよう注意し、【炸裂弾】による砲撃を開始。轟音と共に重砲による旺盛な砲火を敵陣に加える。
「気を付けながらどんどん削っていきましょう」
　着弾地点に味方が入りそうなときは拡声器か通信機で呼びかけしつつ、敵だけでなく柵等の防御設備も優先的に砲撃し、破壊していく。

　錬介自身はは『崩天丸』が砲撃を開始した直後は近くに位置し、【ガウスジェイル】を展開。『崩天丸』の護衛に当たり、敵の狙撃や砲撃から守る。
　……まだ狙撃や砲撃の標的となっていないと判断した戦闘序盤は、仲間を支援するために『崩天丸』から少し離れる。
　ゴースロンに騎乗し戦場を駆け、仲間の負傷を例え軽微でも【ファーストエイド】併用の【フルリカバリー】で回復していく。大規模戦闘では負傷の蓄積が致命傷になりかねない。
　手が空いた場合は【プルガトリオ】で足止めを兼ねた援護攻撃を行い、程々にしつつ、『崩天丸』の命令を変更する際には拡声機が届く距離まで戻り、指示を出す。

　エーミがまず行うのはスナイパーライフル持ちの武装巨人を隠す地勢――塹壕陣地の破壊、次にこちらの前衛突撃部隊の補助。
　マッピングセットを用い、味方が優位に戦えるよう敵の狙い、罠の看破をしたい……とエーミは考える。
　彼女の主な行動は【推理術】による思考と通信。タクティカルヘッドセットとイヤリング『エピキノニア』を用いて、部隊や連合軍部隊との通信、積極的に連携を調整を行う。
　戦闘では『アーテリー』の獣盾『コスタード』を掲げて守りを固め、突出は控えるように。
　敵との距離がかなりある段階では、『アーテリー』の幻獣ミサイル『シンティッラ』による【プラズマバースト】を使用し、敵陣地に攻撃を加えて敵地勢の防御力の低下を試みる。
　その後はそのまま部隊後方に位置し、通信役や連合軍部隊との相互連携の調整役に回る。
　射撃戦・砲撃戦を行うＣＡＭやゴーレムに追随、味方の回復も行い、届く範囲で敵地勢の破壊に注力する。

　ロジャー機は敵に【徹甲榴弾】による砲撃をお見舞いして味方の突撃を支援。まずはスナイパーライフル持ちの武装巨人を最優先で排除！
【精密砲撃姿勢】からの【徹甲榴弾】を最大射程で――発射。
「敵の狙撃砲が店売りの１０５ｍｍスナイパーライフルと同じならこれでアウトレンジできるはず」
　砲弾は敵に命中しダメージを与えるが…………反撃の砲撃がロジャー機の周囲に着弾。命中こそしなかったものの、敵の射程はこちらと同等であるらしい。
「なん……だと……？」

　＊＊＊

　ボルディアは相棒『ヴァン』に騎乗し、敵の兵器工廠へ向けて突撃。
　砲撃を行う味方のＣＡＭやゴーレムなどの射線を妨害しないように留意しつつ、素早く接近し敵の懐――塹壕内へ突入する。
『ヴァン』のＳＡを併用した【ウォークライ】、咆哮により周囲を威圧し、行動を阻害。可能な限り多くの敵を巻き込むようにして範囲攻撃を加える。
　敵――武装巨人の数が多かったため、【炎獣憑依の儀『紅狗』】を使用した【烽火連天】により周囲を薙ぎ払い、一網打尽……とまではいかないものの、敵群の生命力を一気に削った。

　サクラ機は武装サイクロプスの対応を主として行い、工廠を攻撃する味方を支援する。
　まずは砲撃の援護を受けつつ前へ出るサクラ機。敵密集地点へと向かい、ハンドガン『トリニティ』をロングバレルに変形させ、【プラズマグレネード】を投射。
「固まっているようならいい的ですよ……？　よし、サクラ機、突貫します……！」
　纏めてダメージを与えた後にそのまま突撃槍『ヘビーイグニッション』へ持ち替え敵陣へ突撃を敢行する。
　一度突撃し攻撃を加えた後、はFシールド『サマージダール』を自機と敵の間に置き、アサルトスラスター『パンティラス』による【スラスターダッシュ】と【アクティブスラスター】を併用し、離脱。
　機動力と突撃力を最大限に活用し、敵群を攪乱しながら交戦。敵との距離があり、敵が密集しているのを発見次第【プラズマグレネード】を撃ち込む。

　ワイバーンに騎乗するレイア。彼女は前衛として行動。
　空陸と違いはあるものの、サクラ機と同じように機動性、敏捷性を活かして敵の攪乱を試みる。
【ソウルトーチ】と【守りの構え】により敵を撃破することよりも敵の隊列を乱し、隙を作って味方の攻撃機会を作ることを重視。
「トドメは味方前衛のＣＡＭに刺してもらおう」

　ゾファル機は――
「施設破壊の方にはあんまり興味はないな。動くわけでもないし、立ち向かってくるわけでもなし」
（敷地内での戦闘に持ち込んでチャンチャンバラりしていれば自然と壊れていくものだと思っている。だからつまらん）
　ゆえに彼女は武装巨人群の排除を主として行動する。
「打ち合わせ通りボルディアちゃんは味方の射線を考えて突撃してんな。それなら合わせて俺様ちゃんも突撃！」
　折角前衛で大暴れするんだから、管理棟と思しき建物からは少しずつ遠ざける形で距離を取って、捜索関係をやり易くするくらいは配慮してやんゼ。
　とゾファルは考えていたが見回す限りではそのような建物は無かった。敵兵器工廠の機能は全て一つの建造物内に集約されているらしい。
「やあやあ、俺様ちゃんはゾファルちゃんだぜ！　機体はガルちゃんだぜ！　これからお前らを斬り刻むから、見とけよ見とけよー？」
　というわけで柄ではないが正々堂々名乗りを上げて（煽りつつ）大い武装巨人群の注目を集めた後に突撃を敢行。
　接敵するまでに飛んでくる狙撃やら砲撃やら弾幕やらは【リブート】と【マテリアルカーテン】で守りを固め、凌ぐ。

　南護機、前線に立つ。基本は斬機刀『轟劾』と大壁盾『庇護者の光翼』による近接戦。
　仲間とは【マテリアルライン】にて連絡を取り、連携を重視。
「俺は歪虚を断つ剣だ！」
　敵との距離に余裕があれば試作波動銃『アマテラス』による射撃を加える
「俺の『制御不能な覚悟』を見せてやるぜ」

　＊＊＊

　ルネが乗車する魔導トラック『はうんど』――。
　いざ、戦端が開かれ撃ち合いが始まれば以前潜入した際のように車高の低さと迷彩による視認性の低下、および機動力を活かし、可能な限り目立たぬ様に工廠へ接近。
（如何に敵が此方の動きを予測していようと、陽動の部隊、ハンターの部隊を無視する事は出来ない……つまり、兵数を割かれ、多少は防備が薄くなるはず……）
　その隙を突き、前回の偵察結果を元に割り出した――味方の砲撃で脆くなった――入口の壁面へミサイルランチャー『アフリクシオン』を一斉発射。壁面を破壊し突入孔を拓く。
　一時後退し敵の注意を逸らした後に、再度方向転換、工廠へと向きを変え、【スモークカーテン】の煙幕で車体を隠し、【人機一体】と【ターボブースト】を併用し塹壕を乗り越え、一気に工廠内へ突入！
　ルネの『どらいびんぐてくにっく』が炸裂した！　……工廠内部への突入を果たしたルネは『爆発のしそうな弾薬保管所』『工作機械を範囲攻撃』などを素早く見極める。
　そしてクイックライフル『ウッドペッカー』の【マテリアルビーム】を照射し、一撃を加えて破壊。奇襲の効果で敵の混乱・連携分断を狙う。

●
　工廠内部にて破壊活動を行ったルネ機、火の手が上がれば無理に破壊活動を続けず【スモークカーテン】を展開。
　敵の視界を遮り、魔導トラック一台による奇襲であることを悟らせない様にし、再度【人機一体】と【ターボブースト】を使用。工廠から脱出し、急速後退。
　砲撃戦を行うＣＡＭなどの味方陣地へと合流する。……合流後はそのままミサイルランチャー『アフリクシオン』による援護行動へ移る。
　被弾すれば適宜【ダメージコントロール】を使用。軽微な損傷でも油断せず、回復させておく。

　＊＊＊

　グリフォンに騎乗するまよい、敵陣奥に居る遠距離武器持ちを射程内に捉えれば【エクステンドキャスト】からの【メテオスォーム】にて爆撃を行う。
（これも空中からだと命中負荷がまだ大きいから、できれば地上から撃ち込みたいところ）
「視線が通ってない場所に対しても撃てるから、物陰や塹壕に隠れた敵スナイパーなんかを優先してこの魔法で狙っていきたいね」
【メテオスォーム】による爆撃を使い切れば……ＳＡによる補助を受け、攻撃対象を五体までに増やした【マジックアロー】にて敵を貫く。
「サイズの大きい敵に対しては、一体に対して複数回攻撃を狙っていってもいいね」

「チッ、敵も兵器を改良してやがるな」
　ロジャー機、敵が一直線に並んでおり、複数を巻き込めるようならば【貫通徹甲弾】を、散開しているなら【徹甲榴弾】にて一体ずつ、と砲弾を切り替えて砲撃。
　徹甲弾が切れれば【徹甲弾装填】を使用して給弾。【徹甲弾装填】の使用回数も切れれば【インジェクション】を使用し、【徹甲弾装填】を回復させて対応。
（とにかく装填時以外は出来るだけ絶え間無く徹甲弾で砲撃して敵を怯ませたい……）
　集中して砲撃を行い、確実に敵陣へダメージを与えるロジャー機であった。たまに突破してくる敵に対しては２００ｍｍ４連カノン砲を叩き込む。

　マリィア機、基本は【直感視】を使用しての射撃。リロードを欠かさず、工廠や射線に仲間を巻き込まず攻撃可能な敵を淡々と撃ち続ける。
　ただし【直感視】の使用した結果……。
　一部集団を行動不能にした方が良いと思った場合→【直感視】と【スキルリンカー】による【制圧射撃】。
　敵を逃がさないもしくは移動させない方が良いと思った場合→【直感視】と射撃、【威嚇射撃】。
　この攻撃が仲間に当たると重篤な怪我をする・または損傷を負うと思った場合→【直感視】と射撃、リロード、【妨害射撃】。
　……と、状況によってスキルの組み合わせを使い分けて対応。全ての組み合わせが必要と思われた場合は【妨害射撃】を優先して使用する。

　コーネリアは機体のスキル、およびマテリアル兵器の残弾が尽きれば、ＣＡＭのハッチを開けて身を乗り出し、手持ちの重機関銃『ラワーユリッヒNG5』にて弾幕を張り、応戦。
【コンバージェンス】と併せた【フローズンパニッシャー】や【ハウンドバレット】、または【キラースティンガー】も使用して攻撃を行う。
　武装巨人の装甲の隙間……生身の部分を狙うが、これがまた難しい。至近距離での戦闘なれば魔導拳銃『ネグラナーダ』に持ち替え。

　リーリーに騎乗するエーミは前衛突撃部隊に同行。
【推理術】により予測を立て。排除すべき敵地勢があるなら、【修祓陣】を展開しつつ同行。回復と敵陣地の破壊を行う。
【修祓陣】の継続にはＳＡによる【ドローアクション】を使用。移動しつつ、移動速度を調整し、ＣＡＭより後方に付き、【リーリーヒーリング】と周囲警戒を担当する、
　エーミ自身は【ファイヤーボール】や銃剣付き自動拳銃『DAGGER』にて前衛を射撃支援。

　サクラ機は敵と一対一で相対する場合、Fシールド『サマージダール』を敵の眼前に配置。
　視界を奪った隙に突撃槍『ヘビーイグニッション』の穂先を装甲に隙間に無理矢理ねじ込んで攻撃。
　強力な反撃――至近距離からの散弾砲などを避け切れなければFシールドの【マテリアルバリア】を使用してダメージを軽減。
「この盾、ただ浮いているだけではないのですよ……。色んな使い方が出来るんです……！」
　突撃槍で対応し難い距離では突撃槍を一瞬手放し【プラズマカッター】の斬撃を見舞う。
「槍が使いにくい距離だからと油断しない事ですね……。武器は他にもあるんです……」
　その後にFシールドをぶつけて相手を弾きつつ突撃槍を再び保持し、間合いを取り、反撃へ。

　塹壕内に突入したゾファル機。【スキルリンカー】による【バトルジャンキーの眼光】で武装巨人一体の行動を阻害する。
　斬艦刀『天翼』を一振りさせ、【薙ぎ払い】を使用。ボディアーマーの上から斬り裂く。
　太刀持ちの武装巨人と鍔迫り合いを演じながら何度も斬撃を加えて斬り倒し、次へ。次へ。相応にダメージを受けるが気にしない。
　懐に入り切り。撃破した巨人の身体を肉の盾代わりにして突き進んで更なる射撃を遮り～と考えるゾファルだったが。
　その上、突進し、ズタボロになった死骸を敵へ投げつけ、怯むか受け止めたところに【二刀流】で～とも考えるが。
　雑魔では無い歪虚の肉体は撃破すれば消滅する。ゆえにそれを盾代わりに使うことは出来なかった。
　そのため、通常通り斬艦刀を振るい、地道に敵を撃破していく。

　南護機は斬機刀『轟劾』による近接攻撃を行う。
【スキルトレース】により【人機一体】からの【マテリアルフィスト】および【気息充溢】を発動。強力な斬撃を武装巨人に見舞う。
　敵の遠距離攻撃には試作波動銃『アマテラス』で対処。防御する場合は大壁盾『庇護者の光翼』で受け止める。

　＊＊＊

　ハンターの前衛突撃部隊が塹壕内へ突入し、戦場は敵味方入り乱れて乱戦になりつつある。
　錬介……とその相棒ゴーレムは味方に誤射せぬように工廠の外壁を狙い、砲撃を続行。
　敵が【炸裂弾】の射程内側に入り込んで来ればライフル『エトランゼ』で射撃し、応戦。
　数が複数いる場合にはギリギリまで引き付け、【キャニスター弾】を放ち、纏めて攻撃する。
【崩天丸】は砲撃機であるため、敵の標的となり易い。ゆえに錬介は【ガウスジェイル】を使用し、盾になりながら【プルガトリオ】や聖盾剣『アレクサンダー』にて迎撃。

　水月機は【マテリアルライフル】を掃射し、工廠の外壁に穴が空いている部分へ撃ち込み、内部の機材を薙ぎ払うように。
　敵を取り逃がしたとしても追走よりは工廠破壊を第一に～と水月は考えるが、敵は逃走などせず、決死の抵抗を行っている。
　工廠の破壊を試みる敵がいれば情報破棄の可能性があるので不審な動きの敵は優先排除……とも彼は予測を立てていたがそのような敵は居なかった。

　＊＊＊

　…………戦闘開始から時間が経過し、大分敵防衛戦力が減じて来た。
　ハンター側も、特に前衛突撃部隊が相応の損傷やダメージを負っているが戦闘継続に問題は無い。

　ロニ機、敵戦力を排除して迎撃が弱まって来たため、兵器工廠への攻撃にも手を割き、内部の生産ラインに攻撃を加えて破壊活動。
　防衛に当たっている武装巨人自体も、可能であれば殲滅を試みる。
　接近戦の距離では【スキルリンカー】を使用。複数の敵を敵を巻き込めるように位置を取り、【レクイエム】により行動を阻害。
　その後にMハルバード『ウンヴェッター』によって近接格闘戦に持ち込みつつ、【セイクリッドフラッシュ】を放ち、周囲の敵へ纏めてダメージを与える。
　味方後衛へ攻撃を行おうとする敵に対しては【ジャッジメント】を使用して足止めを試みる。
　自分の周辺の戦況に余裕が出来れば、味方の応援に～とも考えていたが当初より圧は下がったものの未だ敵の抵抗は激しく、気は抜けない。
　武器の使用回数が切れれば【リロードキャスト】にてマテリアル兵器へエネルギーを充填。スキル回数が切れれば【インジェクション】を使用。

　ボルディアは派手に暴れ回り、自分の周囲の武装巨人を粗方片付けたので工廠内へ侵入。
（重要そうな施設……つっても俺は機械は全然ワカンねぇからなぁ）
「まあ、なんだ。いっぱい管が繋がってる機械とか、敵が守ろうとしてる機械を集中的に狙って行くか。そうすりゃなんか大事なモンぶっ壊せるだろ！」
　そんな感じであまり深く考えず破壊活動を行う。

●
　工廠内部で破壊活動を続けるボルディア。……すると奥のほうからこれまでの武装巨人とは明らかに違う女性型の巨人が出現。――指揮官だ。
　ボルディアは周りに仲間が少なかったため、一旦引いて誘引を試みる。
「ヘッ、ドジでノロマな巨人なんか相手にする価値もねぇな！　あばよ！」

　……敵指揮官と護衛を工廠外部へ誘引。仲間と合流したボルディアは反撃開始。足を集中的に攻撃する。

　レイアはＳＡの【ソウルエッジ】にて攻撃力を強化。【衝撃波】による遠距離攻撃を行う。

「こいつは絶対に叩いておく必要があるが、それなりの知能があるのは確実なんで不利を悟った場合、工廠ごと自爆する可能性も高ぇ」
　と、デスドクロは仲間に呼びかけた後に、
（予兆を察した場合は体当たりをかまして、工廠に被害が及ぶのを防ぎてぇところだ）
　そのように思案する。

「押している場合はいいけど、押されている場合は回復を中心に建て直さないと……」
　エーミは思案するが、既に趨勢はハンター部隊、および連合軍部隊に傾いている。
（目的は工廠の破壊……。敵指揮官を片方が引き付けている間に破壊ができればいい。でも巨人はその体躯で、自身が輸送手段となり得る）
　そこまで彼女は予測。物資を持ち、撤退する敵が『見えた』なら、連合軍部隊に連絡して横撃をかける心算。……だったが、そのような兆候は見られない。

　まよいは敵指揮官と護衛に対して【集中】とＳＡ込みの【ブリザード】を撃ち込む。
　彼女はグリフォン『イケロス』の【飛翔の翼】にてで空を飛んで近づくことも考えたが、敵の護衛は対空武装を所持していたため遠距離攻撃に徹する。

　ロジャー機は敵指揮官に対し【スキルリンカー】を発動。ライフルから【海魔の八腕】を放つが、これは護衛の武装巨人が盾となって防いだ。
「さっさと投降した方がいいよ～。アイツはキミを捨て駒としか思ってないぜ」
　そのように外部スピーカーで降伏勧告に見せかけてカマかけをするも敵は無反応。
（考えられる最悪のパティーンとしては工場ごと自爆されて証拠隠滅されることだな）
　工廠内に引き返す素振りを見せたら威嚇射撃で足止め……と思っていたが敵指揮官は護衛と共に、普通に交戦している。

　＊＊＊

　錬介は引き続き残存の武装巨人と交戦。それと共に隙があれば今回の主目的である工廠破壊も行う。
（余裕があれば情報を得られそうな場所にあたりをつけて狙いを外すようにしておきますか）

　マリィア機は相変わらず射撃に徹していたが、既に位置も露呈し、敵に接近されていたため、敵の攻撃は【マテリアルカーテン】によりダメージを軽減。
【アクティブスラスター】も噴かし回避行動も取る。防御や回避行動を取った際には射撃よりもリロードを優先する。

　＊＊＊

　魔導トラック『はうんど』の運転席に乗車中のルネ。
（以前のげんば指揮官は自爆したらしいけど……。敵の指揮官がもし、もっと偉い立場なら、大きな計画、今後の為に生存を計るかも……？）
　そう、思考を巡らす。
（もしかしたら、残党や何らかの物資を送るかも……深読みし過ぎ、かもだけど）
　だが様子を見ている限り、敵指揮官はそのような素振りは見せない。

　サクラ機――。
「自爆、するのでしたっけ……敵指揮官は……。手足を狙って無効化出来ればいいですが、簡単にはやらせてくれそうにないですね……」
　手足を狙い攻撃を行い、行動を阻害し捕縛を試みる……が、防備が硬い上に護衛の武装巨人が邪魔をする。
　ゆえにサクラはまず護衛の排除に当たった。

「図体だけは一級だが、戦略や戦術でどこまで我々を出し抜けるつもりだ？」
　コーネリア機。
　指揮官クラスの女性型巨人は自爆の可能性があるため、そちらの阻止を目的により優先的に対応。
　頭部に攻撃を集中し、脳天を破壊する……がヘルメットを装備しており中々致命傷となり得るダメージは与えられない。
「雑種の癖に人間並みの近代兵器を扱おうなど百万年早い。この工廠諸共灰になれ！」

　ゾファル機――護衛の武装巨人を排除し、敵指揮官が良い感じにダメージを負ったところで。
「女巨人に対しても容赦はしねぇ」
（尋問したい連中のためにも生かしておく必要があるが、前回だって相当自害対策には気をつかったにもかかわらず自爆されてしまった）
　……ので見込みは薄いと考える。
　彼女は以前交戦した敵指揮官の全身がきれいに吹き飛んでいたところから見ても爆弾は腹にあるだろう……と推測。
　一気に接近し、距離を詰め、巨人用太刀と斬艦刀による鍔迫り合いをした後、競り勝ち、敵指揮官の両腕を斬り飛ばす。
　ゾファルは腹も掻っ捌いて――と斬艦刀を振り上げさせる……が、敵指揮官は「にやり」と嗤った。
「――！？」
　本能的に危機を察したゾファルは機体を後退させる。……それとほぼ同時に、敵指揮官の身体が光に包まれ、大爆発を起こした。
　更にそれと連動するように、工廠内部からも連続で爆発が起こり、最後に同じく大爆発を起こし、黒煙を噴き上げる…………。

「…………」
　南護は敵指揮官の自爆装置を破壊し、捕らえ、黒幕そのものや資金・物資・武器の入手経路などを聴き出したかったがそれは叶わなかった……。

　＊＊＊

「場所的になんらかの情報、機密が残されているとは思うんで、戦闘後に探す余裕があれば見て回るか」
（最低でも兵器を製造するための施設を撮影して、どこの組織・国の技術が用いられているかは確認してぇな）
　事前にはそう口にし、思っていたデスドクロ。しかし工廠施設の大半が吹き飛んだ跡である。

　現在は連合軍部隊の調査班が入り、残骸から何か情報を得られないか調査中である……。

　水月は破壊した……というか敵指揮官の自爆に連動して同じく自爆した巨人用兵器工廠から情報が得られないか調べる。
「さて、と……なにか見つかるかな？」
　搬入されている資材、加工機械の規格、作業手順書、搬入出経路・手段、工廠の動力源etc……。
　どこから得た技術をもって作られているのか、資材はどこから運ばれ、武器防具はどこへ運ばれているのか、他にも工廠はあるのか。
　外部の協力者から得たものなら協力者を。でなければ加工機械や資材採取・搬入出機材を作る機械など技術系統を得ているのか。
　今まで無かったこれらの大元を明かしたいところではある……が、ほとんどは大爆発で消し炭である……。
　残骸でも、持ち帰れるものはルネの魔導トラックに積み込ませて貰って持ち帰り、出来ないものは魔導スマートフォンのカメラで記録。

　……それでも何か手掛かりは無いかと魔導スマホのカメラで撮影していると……黒焦げになっていたものの、まだ生きている端末を発見！
　水月はすぐに連合軍部隊の調査班に伝える。

　…………。
　解析の結果、重大な事実が判明した。

　１．この巨人用兵器工廠で生産された近代兵器は既に辺境地域全域の巨人に拡散済みであること
　２．この巨人用兵器工廠以外にも、同じような工廠は複数存在し、現在も稼働中であること
　３．生産されている巨人用近代兵器の大元となっているのは、コーリアスがＣＡＭ用装備を解析し、巨人用に再設計したデータであるということ

　――判明した衝撃の事実に、連合軍部隊は元より、ハンター達も愕然とした。
　この工廠を破壊すれば決着がつくという考えは、甘すぎたのだ……。

　＊＊＊

「なんだか大変なことになりそう……。でも、今は……毎回無茶させてごめんね。いつもありがとう」
　このような状況でも、錬介は相棒のゴーレムと愛馬を労うのだった。