ゲスト
(ka0000)
【羽冠】知追う者、島で最後の発掘
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/07/01 19:00
- 完成日
- 2018/07/08 19:51
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●そろそろお暇
グラズヘイム王国の王都であったことも輸送隊から情報をぽつぽつ得ていた。
大江 紅葉はまじめな顔――頭には熱中症対策の麦わら帽子が載っている――で松永 光頼に向き合う。
「ウィリアムさんには報告書を出しましたし、そろそろ私たちもお暇したほうがいいですよね」
「十中八九、そうですね」
ただ、二人は護衛としているためもあり、負のマテリアルが濃く危険な地域もある島の浄化に携わってきているわけではなかった。港にいれば紅葉の出番は基本的にないようである。
「ウィリアムさん、プエル(kz0127)くんの荷物があったと言ったら、そわそわしていました」
「仕方がないですよ……残るもんですね……」
「その上、負のマテリアルで雑魔化……なかなかの根性です」
光頼は何か言いかけたが飲み込んだ。
「突撃しそうで怖いのです。きっと心配なのですよね、領主もやっていただけあって責任感もあって、今後どうすべきかと意見を出したいところでしょう」
「いや、あなたが言うべきことでない気がしますが……」
光頼は思わずつぶやいてしまった。
「え? 私は思慮深く行動していますよ? 宗主も巫子って役割も考えてきちんと行動しています」
心外だという顔で紅葉は言う。
光頼は硬直した。それ以上反論するのは不毛だと思ったので黙っておくことにした。
「少しでも負のマテリアルの脅威を減らしていくことは重要ですね。少しだけ、お手伝いしていきましょう」
「巫子でしたね……そうなると、龍脈をってここはできるんですか?」
「何を言っているんですか! 私が、スメラギ様みたいなことができると思っているんですか?」
紅葉がうふふと明るく笑いながらいう。
「だから、効率よく『一番怪しいところ』を浄化していくのです。少しでも安全なところが増えるように」
光頼は納得した。
●貴族への警戒
ライル・サヴィスとシールは故郷をどうにかしたいと思って行動している。そのため保護者が集めたお金でどうにか行動している。
報告はしていたが、その出資者の一人であるという貴族がこちらまで来たというのだ。警戒心をあらわにしない訳がない。お金をもらっているのだから何か利益を出そうと考えることは考えるが、大きく口を挟まれるのは嫌だった。
現在も誰かしらの私兵を借りていることもあり、口出しはされるのはあり得た。
対面したとき、ウィリアム・クリシスは二人を前に目頭を押さえた。
まさかの反応に二人がぎょっとする。
「すまないな。息子が君より小さいくらいだったり、守役につけた青年が君よりちょっと若かったこともあって……思い出してしまったよ」
「え?」
「その上、生きていたら、あの子は君くらいの年齢なんだと思うと余計に」
「えっと」
二人はひとまず「いい人そう」という認識は持った。
「紅葉殿の報告で本当にこの島にいたんだと思うと、しんみりしていたところだったんだ、驚かせてしまったならすまないね」
「ん?」
島にいたと言ったところと死亡しているような口調から、歪虚化していたということだろうと二人は推測した。戦場に立つには幼そうな気がするため、ここにいた状況はわからない。
「で、君たちが開拓していきたい旨は了承している。状況を聞きたいと思ったのだよ?」
「はい……開拓できたとしてもすぐに戻ってこられるわけではないのがわかりました」
負のマテリアルのことを告げる。村のあったところはどうにかなるが、雑魔の出没もあるため、負のマテリアルが濃いところもありそうだと考えていた。
「別のところを先に進めるとしても、誰も行かなくなると、雑魔たちが集まっていく可能性はあります」
「定期的に排除は必要ということだな……紅葉殿たちも空き家に巣くう雑魔がいたといっていたからな」
「私たちの気持ちとしては、村を復興……いえ、村を再び興したいです」
どれだけの村人が死に、戻ってこられるのかということを考えると作ることになるだろう。できるだけ的確にしゃべろうとライルは考えた。
「神殿跡地の浄化の手伝いをしてもらえないだろうか?」
ライルもシールもそれは想定していた。そうなると村に関しては後手になる。
「あそこが一番の難所。そこで雑魔が生まれれば、君たちの望みも遠のく」
真理だ。
「紅葉殿たちが先日行ったあたりは浄化したというのだよ。そこに息子……だった歪虚がいたらしいという痕跡があってね……まさかの羊のぬいぐるみ雑魔……」
「え? ちょ、待ってください。羊のぬいぐるみ?」
シールが思わず声をあげたがウィリアムは普通に答える。
「君たちの報告とは違うから。こちらはニコラス……違うな、プエルが持ち込んだぬいぐるみが勝手に雑魔化したらしいからな」
「プエル!?」
二人が声をあげたため、知っているらしい声にウィリアムは驚く。
「あ、いえ、以前、私の姉……歪虚となっていて、その情報をもらったのがその歪虚でした」
ライルの説明にウィリアムは目を丸くした。そのあと、笑う。
「まさか、そのようなつながりがあるとはな!」
ライルとシールも笑うしかない。
「二人とも、意にそわない内容かもしれないが……」
「いえ、クリシス様を信じます。縁を感じたからこそ協力していければと思います」
貴族にどうのこうの思うよりも、ウィリアムという人物を信じたいと考えたのだった。
●人間関係
神殿跡地では先日浄化したあたりを拠点に行動することになる。
ライルとシールは紅葉に対してまず「なぜこの人、その厚着なのに麦わら帽子なんだ」と思った。麦わら帽子はリボンもついて花も飾られ、ツバが広く無駄に可愛らしく実用性たっぷりだ。
その上、大きな肩掛け鞄をしっかりもっている。現場についた瞬間、小ぶりの熊手を取り出したのも疑問の湧くところだ。
「紅葉殿……落ち着きましょう」
「落ち着いています!」
鼻息荒い。
「だって、掘ると何か出てくるのは面白いですよ! うちのほうも歪虚の砦があったあたりを掘れば何か出てくるのでしょうか」
「いやいやいや……」
光頼が激しく首を横に振る。
「都にも来ていましたし」
「だから、やめてください! 大体、あなたは――」
説教が始まったところで、ライルとシールはハンターに状況の説明を受けた。
いつものことだし、紅葉には気を付けるようにと告げる。
なお、発掘しつつ、怪しいところを探すことになる。拠点は大きめのテントだった。
グラズヘイム王国の王都であったことも輸送隊から情報をぽつぽつ得ていた。
大江 紅葉はまじめな顔――頭には熱中症対策の麦わら帽子が載っている――で松永 光頼に向き合う。
「ウィリアムさんには報告書を出しましたし、そろそろ私たちもお暇したほうがいいですよね」
「十中八九、そうですね」
ただ、二人は護衛としているためもあり、負のマテリアルが濃く危険な地域もある島の浄化に携わってきているわけではなかった。港にいれば紅葉の出番は基本的にないようである。
「ウィリアムさん、プエル(kz0127)くんの荷物があったと言ったら、そわそわしていました」
「仕方がないですよ……残るもんですね……」
「その上、負のマテリアルで雑魔化……なかなかの根性です」
光頼は何か言いかけたが飲み込んだ。
「突撃しそうで怖いのです。きっと心配なのですよね、領主もやっていただけあって責任感もあって、今後どうすべきかと意見を出したいところでしょう」
「いや、あなたが言うべきことでない気がしますが……」
光頼は思わずつぶやいてしまった。
「え? 私は思慮深く行動していますよ? 宗主も巫子って役割も考えてきちんと行動しています」
心外だという顔で紅葉は言う。
光頼は硬直した。それ以上反論するのは不毛だと思ったので黙っておくことにした。
「少しでも負のマテリアルの脅威を減らしていくことは重要ですね。少しだけ、お手伝いしていきましょう」
「巫子でしたね……そうなると、龍脈をってここはできるんですか?」
「何を言っているんですか! 私が、スメラギ様みたいなことができると思っているんですか?」
紅葉がうふふと明るく笑いながらいう。
「だから、効率よく『一番怪しいところ』を浄化していくのです。少しでも安全なところが増えるように」
光頼は納得した。
●貴族への警戒
ライル・サヴィスとシールは故郷をどうにかしたいと思って行動している。そのため保護者が集めたお金でどうにか行動している。
報告はしていたが、その出資者の一人であるという貴族がこちらまで来たというのだ。警戒心をあらわにしない訳がない。お金をもらっているのだから何か利益を出そうと考えることは考えるが、大きく口を挟まれるのは嫌だった。
現在も誰かしらの私兵を借りていることもあり、口出しはされるのはあり得た。
対面したとき、ウィリアム・クリシスは二人を前に目頭を押さえた。
まさかの反応に二人がぎょっとする。
「すまないな。息子が君より小さいくらいだったり、守役につけた青年が君よりちょっと若かったこともあって……思い出してしまったよ」
「え?」
「その上、生きていたら、あの子は君くらいの年齢なんだと思うと余計に」
「えっと」
二人はひとまず「いい人そう」という認識は持った。
「紅葉殿の報告で本当にこの島にいたんだと思うと、しんみりしていたところだったんだ、驚かせてしまったならすまないね」
「ん?」
島にいたと言ったところと死亡しているような口調から、歪虚化していたということだろうと二人は推測した。戦場に立つには幼そうな気がするため、ここにいた状況はわからない。
「で、君たちが開拓していきたい旨は了承している。状況を聞きたいと思ったのだよ?」
「はい……開拓できたとしてもすぐに戻ってこられるわけではないのがわかりました」
負のマテリアルのことを告げる。村のあったところはどうにかなるが、雑魔の出没もあるため、負のマテリアルが濃いところもありそうだと考えていた。
「別のところを先に進めるとしても、誰も行かなくなると、雑魔たちが集まっていく可能性はあります」
「定期的に排除は必要ということだな……紅葉殿たちも空き家に巣くう雑魔がいたといっていたからな」
「私たちの気持ちとしては、村を復興……いえ、村を再び興したいです」
どれだけの村人が死に、戻ってこられるのかということを考えると作ることになるだろう。できるだけ的確にしゃべろうとライルは考えた。
「神殿跡地の浄化の手伝いをしてもらえないだろうか?」
ライルもシールもそれは想定していた。そうなると村に関しては後手になる。
「あそこが一番の難所。そこで雑魔が生まれれば、君たちの望みも遠のく」
真理だ。
「紅葉殿たちが先日行ったあたりは浄化したというのだよ。そこに息子……だった歪虚がいたらしいという痕跡があってね……まさかの羊のぬいぐるみ雑魔……」
「え? ちょ、待ってください。羊のぬいぐるみ?」
シールが思わず声をあげたがウィリアムは普通に答える。
「君たちの報告とは違うから。こちらはニコラス……違うな、プエルが持ち込んだぬいぐるみが勝手に雑魔化したらしいからな」
「プエル!?」
二人が声をあげたため、知っているらしい声にウィリアムは驚く。
「あ、いえ、以前、私の姉……歪虚となっていて、その情報をもらったのがその歪虚でした」
ライルの説明にウィリアムは目を丸くした。そのあと、笑う。
「まさか、そのようなつながりがあるとはな!」
ライルとシールも笑うしかない。
「二人とも、意にそわない内容かもしれないが……」
「いえ、クリシス様を信じます。縁を感じたからこそ協力していければと思います」
貴族にどうのこうの思うよりも、ウィリアムという人物を信じたいと考えたのだった。
●人間関係
神殿跡地では先日浄化したあたりを拠点に行動することになる。
ライルとシールは紅葉に対してまず「なぜこの人、その厚着なのに麦わら帽子なんだ」と思った。麦わら帽子はリボンもついて花も飾られ、ツバが広く無駄に可愛らしく実用性たっぷりだ。
その上、大きな肩掛け鞄をしっかりもっている。現場についた瞬間、小ぶりの熊手を取り出したのも疑問の湧くところだ。
「紅葉殿……落ち着きましょう」
「落ち着いています!」
鼻息荒い。
「だって、掘ると何か出てくるのは面白いですよ! うちのほうも歪虚の砦があったあたりを掘れば何か出てくるのでしょうか」
「いやいやいや……」
光頼が激しく首を横に振る。
「都にも来ていましたし」
「だから、やめてください! 大体、あなたは――」
説教が始まったところで、ライルとシールはハンターに状況の説明を受けた。
いつものことだし、紅葉には気を付けるようにと告げる。
なお、発掘しつつ、怪しいところを探すことになる。拠点は大きめのテントだった。
リプレイ本文
●開始
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は拠点から周囲を見渡し、溜息を漏らした。
「前に見つけた地下はプエルに関係してたとか。なんか、許可無く勝手に使ってたんだろうな」
プエル(kz0127)が別荘や空き家に入り込んでいた過去がある。その上、浄化するポイントの手がかりも薄い。
夢路 まよい(ka1328)はそれを聞いて笑う。一方で、イスルダ島での大江 紅葉(kz0163)の探索付き合いが終わりだと思うと名残惜しい。
「探検気分で楽しかったよ」
まだ終わってはいないのだから、今回、たっぷり楽しめるなら楽しむ。
ミオレスカ(ka3496)は紅葉の守りに松永 光頼がいるのと、仲間がちらちら紅葉の動きに視線をやっているのを見てほっとする。
「今回は松永さんがしっかり見てくれていると思いますし、皆さんも気にしています。それに、大人のハンターですし、大丈夫ですよね。それはそうと、発掘に必要な道具はお借りしますね」
荷物からスコップやバケツを取り出す。
レイア・アローネ(ka4082)は紅葉と光頼を見て苦笑する。
「浄化をする目的なら、彼女は鍵となるだろう……守りもあるというが、一抹の不安に駆られるのは何故だろうな?」
視線が合ったミオレスカが「気のせいではありませんが、気のせいです」と訴えたような気がした。
「エステルとも一緒に戦うのも久しぶりだ」
レイアは友人のエステル・ソル(ka3983)に声をかける。
「はい! よろしくお願いします! そうなのです、わたくし、十五歳になりました! レディの実力を見せるのです。準備も万端です」
エステルはまぶしい笑顔を見せ、帽子をかぶり、水筒を持っていることも示した。
紅葉がまじめな顔で彼女を見つめる。光頼がその視線の意味を察して黙った。
マリィア・バルデス(ka5848)は周囲を見渡すが、がれきがあっても特に目立つものはない。
「雑魔が潜んでいてもおかしくはないし、歪虚もいないとは限らない。それらがいるならば、負のマテリアルをまき散らすもの。浄化するなら全討伐しなきゃならないわよね」
それに対して、ライル・サヴィスとシールは同意を示す。彼らの故郷の村のためにも、一番の負のマテリアル汚染地域をどうにかしておきたい。
ステラ・フォーク(ka0808)はトランシーバーを取り出す。
「出発するならば荷物のチェックですわね。三班に分かれて行動するということですわね? 連絡はトランシーバーでこまめにとりますわ」
ステラの確認に、仲間は表情を引き締めうなずいた。
●発見
一行は三班になり、負のマテリアルが自然に消えにくそうなところを探す。歪虚がいた場合は全員で当たることを決めてある。
まず、A班。ステラとまよい、マリィアが組んでいる。
主にステラが地面にある足跡など何かの痕跡を見つつ進む。マリィアとまよいは周囲を見る。いずれも、異変があれば対応できるように。
「がれきは残っているから、不意打ちされることもあるかな」
まよいは移動して、陰を見る。
「そうね、そういうところは注意してしかるべきよ」
マリィアは時々がれきをひっくり返しす。何かいないか、何もないか確認する。
「足跡が付きにくいみたいですわ。でも、動物ぽい足跡は多くあります」
ステラが見た結果を告げる。
「要注意だね」
「雑魔の類は出やすいでしょうしね」
まよいとマリィアがうなずいた。
ステラは一旦連絡を入れた。
B班はミオレスカとレイアに加え、紅葉を連れている光頼である。
「紅葉を守るようにしないといけないな」
「そうですね。そして、紅葉さん、突然動くときがあります」
レイアはミオレスカの答えを聞き、紅葉を視界に入れる。紅葉はおとなしく、熊手で地面を掘っている。その横に光頼がいる。
「敵がいればひきつければいいな、こちらに」
レイアは戦い方を考える。
「浄化のために負のマテリアルが濃いところがわかるといいのですが」
ミオレスカは借りていたスコップで、土をどけることにした。少しでも手がかりがみつかるように。
その間、レイアと光頼が見張りを強化する。紅葉が嬉しそうに鞄に何か仕舞っているが平和である。
C班はレイオスとエステル、それとライルとシールである。
「手がかりがないからな……地面を突きつつ移動するのがいいのか」
「先ほどお借りしました」
エステルが紅葉が持っている道具から、地面つつき棒を借りていた。そして、突く。
「地道ですねぇ」
「ライルがライルになってる!? 僕も突く方をするよ」
ライルが珍しく嫌味の口調でしゃべり、シールが同じく地面を棒で突く。
コンコンという音が響く。
「広いな……」
レイオスは溜息が漏れそうになるが、エステルとシールが生真面目に突いているのを見て、気を引き締めた。
【超聴覚】で音を聞いていたステラは近づく何かに気づいた。それは複数あるが、ステラたちがいる方に来ているのは一組だ。それ以外は近づくかもしれないし、逃げるかもしれない。遮蔽物を取り、トランシーバーで仲間に連絡を入れる。
「状況としては、ここでどうにかなるとは思うけれどね」
「油断は大敵だね」
マリィアは魔導銃を構え、まよいは錬金杖を握る。
「来ましたわ」
ステラも銃剣付き自動拳銃を構えており、射撃もしくは近接攻撃の準備をしている。
「数は二、羊ね……」
マリィアは呟くとともに冷静に引き金を絞る。
「本当、ここは羊がたくさんだよね【マジックアロー】」
まよいからは二本の矢が敵に放たれ、それらは命中し敵は消える。
「まあ……私の見せ場、ありませんわ」
「索敵も十分見せ場よ」
「そうだよ」
互いに少し笑みが浮かぶ。しかし、何かがいるということで気は抜けない。
敵がいるということは織り込み済みであるため、気を付けるだけだ。
発掘は紅葉に任せ、ミオレスカも周囲を見る方に注力する。
「この辺りはないかもしれませんね……先日見つけたのがこのような形ですし……行き止まりがこうで……」
紅葉がマッピングセットに線を描き始めた。
「……これは集中するとまずいパターンだな」
レイアの指摘の通り、紅葉は帽子で影を作った中で、周囲の地形をと前回の状況を合わせて何か書いている。
「あちらが交戦していますね……マテリアルの動きに気づいたのでしょうか」
ミオレスカは視界の端に動く何かを見つけた。狼のような雑魔たちがこちらに向かってくる。
「紅葉、じっとしていてくれ」
レイアが慌てた。紅葉はメモを取りながら、歩数で距離を測り始めている。
「すまない。紅葉殿! 駄目だ……」
ミオレスカとレイアに光頼が二人に謝罪し、刀を抜き、紅葉の側に立つ。
「仕方がありません。松永さん、紅葉さんを見ていてください。速やかに倒します」
「それしかないな」
レイアがうなずき、ミオレスカが先手を切って行動を開始した。敵の数や距離から一体ずつ狙う。倒せるのだが、運よく回避するモノもなくはない。
接敵した敵に対し、レイアが当たる。初手でひっかかれもしたが、敵は倒しきった。
エステルとシールは何かないか突く。
「シールさん、この辺り音が違うようです」
「……本当だ。空洞なのかな?」
シールがスコップで砂をどける。すると床が出てきた。ただ、石材はぴったりはまり取れそうにはない。
「地下に空間があるなら、空洞のところも多いはずだよな? そこだけ空洞だったら、後で考えよう」
レイオスが言いながら少し離れたところを突いた。
「石がどけられそうなところなどあればいいんだが」
一行は敵に注意しつつ、適度なところがないか探した。すると、がれきが折り重なっている部分の下に空間を見つけたのだった。
エステルとシールが他のメンバーに連絡を取りつつ見張っている間、レイオスとライルががれきをどけたのだった。
●歪虚
見つけた地下に用心しつつ下りようとしたが、明かりを差し入れたときに、人影があるのに気づいた。
どこかにつながっていればこの辺りで作業している別のハンターグループだともとらえられる。用心して見る限り、そのような痕跡はない。
「傲慢の騎士がなんでこんなところに閉じ込められているんだよ」
レイオスが状況を確認するために上から声をかける。カマかけもあり、あえてあざけるような口調である。
そもそも、攻撃するには下りるか上から打ち込むかである。
「たまたまそこにいたときに、爆発で建物が吹き飛んで埋まっちゃのですよ」
紅葉が真顔でズケリと言った。
「何を言うかと思えば」
「あ、冷や汗が見える!」
まよいが雰囲気から告げると、推定傲慢の歪虚が硬直した。
「本当に冷や汗をかいているのですね」
ステラが何とも言えない顔になった。
「プエルの見張りで奴が閉じ込めたとか?」
「それだったら、偉かったわね、とりあえず、敵は減らしたわけでしょ」
レイオスの推測にマリィアが苦笑する。
「俺の有能さを見て、おそれをなした羊ツノの愚かなモノが愚劣な罠で――」
「関係ない歪虚のようですね」
推定傲慢の歪虚がレイオスの言葉に乗って言い始めたのをミオレスカが遮った。これまでの経緯を知っているハンターはミオレスカに同意を示しす。
「何を根拠に」
「ツノって言ったよな?」
怒る歪虚にレイオスが指摘すると鷹揚にうなずかれた。
プエルに関連していようが実際は関係ないし、会話中に相手に様子を窺ったり、下りる手段を考えている時間に過ぎない。
中の広さは全員下りて戦えそうだが、下りる時間がかかる。それに、傲慢である場合、固有のスキルが危険だ。
「で、どうやって戦うのです?」
紅葉が告げる。
「……飛び降りていくか、縄梯子で順番に?」
レイアがつぶやく。順番をどうするかなど手短に決めないとならない。
「ふ、私が、恐ろしく下りてこられないんだろう」
歪虚が告げると無言で紅葉が矢をつがえて射った。止める間もなかったが、その矢は中で変なところに飛んでいった。
「……あら?」
「そもそも、その体勢で射るのが問題だわ」
マリィアが指摘した。
「本当は私が近接で【懲罰】あるなら引き出したいけれど、場所が不安定よね」
「暗いですし、広さが十分と言い難いですね」
「なら、援護の射撃に徹するかしら」
マリィアとミオレスカが武器を構える。入口から狙うには難しいかもしれないが、味方に当てず敵を威嚇するには十分。
「自力で安全に下りるのでしたら……」
「【マジックフライト】だよ」
エステルとまよいが言う。
「早くお休みさんさせてあげるのです、彼が悲しみを作り出さないように。歪虚になると生前の人柄とは全く変わってしまいますし、きっと……」
エステルは遺族を考えると、悲しくなる。
「そうだな、エステル……で、私とレイオスが下りるのが先か?」
レイアの言葉にレイオスがうなずく。
「わたしも下りたほうがいいかな。歌えるから」
まよいは灯火の水晶球を取り出し、下りる準備もする。
「数にも限りがありますわね。縄梯子の用意をしておきます。そして、次に援護に入ります」
ステラが荷物から縄梯子を取り出し、ここに残ることになる光頼とライルと準備した。
【マジックフライト】をかけてもらったレイオスとレイアが下りると、即刻歪虚の攻撃がある。食らうことになったが、ひどい影響はない。
ハンター側は敵が【懲罰】や【強制】など特有の技能に対しては警戒している。
全力の攻撃は控えるとともにレイオスは【ガウスジェイル】を使う。
「外に出る前に、剣の錆にしてやろう」
歪虚は余裕を持って行動した。そのため、レイオスとレイアを巻き込むような攻撃をしただけで終わる。
その直後にまよいが下りてきて「穢れし魂、もたらす災禍――」と【幻葬歌】を電光楽器を弾き歌う。
ミオレスカとマリィアはスキルは使わないで、敵に攻撃をする。特に攻撃が反射されてはこない。
「わたくしは、下りるべきでしょうか。ここから届くと言えば届きますが」
「様子を見たほうがいい。【懲罰】で反射されたとき、耐えられないと困る」
悩んでいたエステルにマリィアが告げる。
「【懲罰】を所有していないのか、距離なのか、私たちよりも前衛の人を注意しているのかがわかりませんね」
ミオレスカがつぶやく。
「そうですわね……私もここから援護するのがいいいですわね」
ステラは【野生の瞳】を使った後、銃で狙った。
慎重な攻撃だとは言え、敵にダメージを積み重ねているのは事実である。ただし、前衛にダメージもたまっていく。
レイアは一瞬、敵と目が合った。
「お前は何のために戦うのだ? それに、俺はお前の敵ではないのに?」
自信ありげに歪虚の口角が上がる。
「……っ! あ、断る」
レイアは意識が書き換えられるような感覚があったが、まよいの歌声が救う。
捜索がまだ続くことを考えると危険は冒せない中、じわじわと倒し切った。
安全確保後、紅葉が浄化してここは終了する。
時間に余裕はあるため、紅葉の予想地点の捜索を行うこととなった。その近くに埋まった地下はあった。
そこにも歪虚はいた。こちらは用心深い性格だったのか、ハンターたちが下りてくるまで隠れていた上、縄梯子で出て行く。
雑魔などもいるし、ハンターは上と下に分かれて行動していたこともあり、歪虚を逃がさないで対応はできた。
【天罰】を持っていたため、ダメージは食らうが、余力を持って倒し切った。
そして、浄化を行い、一行の任務は終わりだった。
●道
「浄化について勉強になりました。魔術師としてまずがんばるのです」
エステルがやる気を見せると、シールもうなずく。
「僕も頑張らないと」
寂しい景色を眺める。
紅葉は名残惜しそうに地面をひっかく。
「紅葉さん、実家の方も開拓中ですわよね? そちらを掘ればよろしいのですわ」
ステラの提案に紅葉は「本が出てくるでしょうか」と謎の応対をする。
「まだ時間に余裕はあるんだよね? 私も掘るよ!」
まよいが紅葉に並んで熊手を手にした。
「特に何かが残っていることはなかったわね」
マリィアの言葉にライルは首を振る。
「無理に見つからないのはそれでいいですよ」
ライルが気にしてくれるマリィアに頭を下げる。
「皆無事とはいえ……結構怪我はしたな」
レイオスが一番ダメージは食らっている。シールが治せても間に合ってはいない。
「このくらいならどうにでもなる。それより……なんで紅葉が移動していくのかと聞いていいか」
レイアが見ていると、紅葉が滑らかに移動していくように見える。
「着ている物が足元を隠してしまうのです」
ミオレスカがよく見ていると、紅葉の足は動いているが服で全体が見てていない。
「紅葉殿……」
光頼が溜息を洩らした。帰路につくまで、いくつの石をこの人は拾うのだろうかと思っていた。
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は拠点から周囲を見渡し、溜息を漏らした。
「前に見つけた地下はプエルに関係してたとか。なんか、許可無く勝手に使ってたんだろうな」
プエル(kz0127)が別荘や空き家に入り込んでいた過去がある。その上、浄化するポイントの手がかりも薄い。
夢路 まよい(ka1328)はそれを聞いて笑う。一方で、イスルダ島での大江 紅葉(kz0163)の探索付き合いが終わりだと思うと名残惜しい。
「探検気分で楽しかったよ」
まだ終わってはいないのだから、今回、たっぷり楽しめるなら楽しむ。
ミオレスカ(ka3496)は紅葉の守りに松永 光頼がいるのと、仲間がちらちら紅葉の動きに視線をやっているのを見てほっとする。
「今回は松永さんがしっかり見てくれていると思いますし、皆さんも気にしています。それに、大人のハンターですし、大丈夫ですよね。それはそうと、発掘に必要な道具はお借りしますね」
荷物からスコップやバケツを取り出す。
レイア・アローネ(ka4082)は紅葉と光頼を見て苦笑する。
「浄化をする目的なら、彼女は鍵となるだろう……守りもあるというが、一抹の不安に駆られるのは何故だろうな?」
視線が合ったミオレスカが「気のせいではありませんが、気のせいです」と訴えたような気がした。
「エステルとも一緒に戦うのも久しぶりだ」
レイアは友人のエステル・ソル(ka3983)に声をかける。
「はい! よろしくお願いします! そうなのです、わたくし、十五歳になりました! レディの実力を見せるのです。準備も万端です」
エステルはまぶしい笑顔を見せ、帽子をかぶり、水筒を持っていることも示した。
紅葉がまじめな顔で彼女を見つめる。光頼がその視線の意味を察して黙った。
マリィア・バルデス(ka5848)は周囲を見渡すが、がれきがあっても特に目立つものはない。
「雑魔が潜んでいてもおかしくはないし、歪虚もいないとは限らない。それらがいるならば、負のマテリアルをまき散らすもの。浄化するなら全討伐しなきゃならないわよね」
それに対して、ライル・サヴィスとシールは同意を示す。彼らの故郷の村のためにも、一番の負のマテリアル汚染地域をどうにかしておきたい。
ステラ・フォーク(ka0808)はトランシーバーを取り出す。
「出発するならば荷物のチェックですわね。三班に分かれて行動するということですわね? 連絡はトランシーバーでこまめにとりますわ」
ステラの確認に、仲間は表情を引き締めうなずいた。
●発見
一行は三班になり、負のマテリアルが自然に消えにくそうなところを探す。歪虚がいた場合は全員で当たることを決めてある。
まず、A班。ステラとまよい、マリィアが組んでいる。
主にステラが地面にある足跡など何かの痕跡を見つつ進む。マリィアとまよいは周囲を見る。いずれも、異変があれば対応できるように。
「がれきは残っているから、不意打ちされることもあるかな」
まよいは移動して、陰を見る。
「そうね、そういうところは注意してしかるべきよ」
マリィアは時々がれきをひっくり返しす。何かいないか、何もないか確認する。
「足跡が付きにくいみたいですわ。でも、動物ぽい足跡は多くあります」
ステラが見た結果を告げる。
「要注意だね」
「雑魔の類は出やすいでしょうしね」
まよいとマリィアがうなずいた。
ステラは一旦連絡を入れた。
B班はミオレスカとレイアに加え、紅葉を連れている光頼である。
「紅葉を守るようにしないといけないな」
「そうですね。そして、紅葉さん、突然動くときがあります」
レイアはミオレスカの答えを聞き、紅葉を視界に入れる。紅葉はおとなしく、熊手で地面を掘っている。その横に光頼がいる。
「敵がいればひきつければいいな、こちらに」
レイアは戦い方を考える。
「浄化のために負のマテリアルが濃いところがわかるといいのですが」
ミオレスカは借りていたスコップで、土をどけることにした。少しでも手がかりがみつかるように。
その間、レイアと光頼が見張りを強化する。紅葉が嬉しそうに鞄に何か仕舞っているが平和である。
C班はレイオスとエステル、それとライルとシールである。
「手がかりがないからな……地面を突きつつ移動するのがいいのか」
「先ほどお借りしました」
エステルが紅葉が持っている道具から、地面つつき棒を借りていた。そして、突く。
「地道ですねぇ」
「ライルがライルになってる!? 僕も突く方をするよ」
ライルが珍しく嫌味の口調でしゃべり、シールが同じく地面を棒で突く。
コンコンという音が響く。
「広いな……」
レイオスは溜息が漏れそうになるが、エステルとシールが生真面目に突いているのを見て、気を引き締めた。
【超聴覚】で音を聞いていたステラは近づく何かに気づいた。それは複数あるが、ステラたちがいる方に来ているのは一組だ。それ以外は近づくかもしれないし、逃げるかもしれない。遮蔽物を取り、トランシーバーで仲間に連絡を入れる。
「状況としては、ここでどうにかなるとは思うけれどね」
「油断は大敵だね」
マリィアは魔導銃を構え、まよいは錬金杖を握る。
「来ましたわ」
ステラも銃剣付き自動拳銃を構えており、射撃もしくは近接攻撃の準備をしている。
「数は二、羊ね……」
マリィアは呟くとともに冷静に引き金を絞る。
「本当、ここは羊がたくさんだよね【マジックアロー】」
まよいからは二本の矢が敵に放たれ、それらは命中し敵は消える。
「まあ……私の見せ場、ありませんわ」
「索敵も十分見せ場よ」
「そうだよ」
互いに少し笑みが浮かぶ。しかし、何かがいるということで気は抜けない。
敵がいるということは織り込み済みであるため、気を付けるだけだ。
発掘は紅葉に任せ、ミオレスカも周囲を見る方に注力する。
「この辺りはないかもしれませんね……先日見つけたのがこのような形ですし……行き止まりがこうで……」
紅葉がマッピングセットに線を描き始めた。
「……これは集中するとまずいパターンだな」
レイアの指摘の通り、紅葉は帽子で影を作った中で、周囲の地形をと前回の状況を合わせて何か書いている。
「あちらが交戦していますね……マテリアルの動きに気づいたのでしょうか」
ミオレスカは視界の端に動く何かを見つけた。狼のような雑魔たちがこちらに向かってくる。
「紅葉、じっとしていてくれ」
レイアが慌てた。紅葉はメモを取りながら、歩数で距離を測り始めている。
「すまない。紅葉殿! 駄目だ……」
ミオレスカとレイアに光頼が二人に謝罪し、刀を抜き、紅葉の側に立つ。
「仕方がありません。松永さん、紅葉さんを見ていてください。速やかに倒します」
「それしかないな」
レイアがうなずき、ミオレスカが先手を切って行動を開始した。敵の数や距離から一体ずつ狙う。倒せるのだが、運よく回避するモノもなくはない。
接敵した敵に対し、レイアが当たる。初手でひっかかれもしたが、敵は倒しきった。
エステルとシールは何かないか突く。
「シールさん、この辺り音が違うようです」
「……本当だ。空洞なのかな?」
シールがスコップで砂をどける。すると床が出てきた。ただ、石材はぴったりはまり取れそうにはない。
「地下に空間があるなら、空洞のところも多いはずだよな? そこだけ空洞だったら、後で考えよう」
レイオスが言いながら少し離れたところを突いた。
「石がどけられそうなところなどあればいいんだが」
一行は敵に注意しつつ、適度なところがないか探した。すると、がれきが折り重なっている部分の下に空間を見つけたのだった。
エステルとシールが他のメンバーに連絡を取りつつ見張っている間、レイオスとライルががれきをどけたのだった。
●歪虚
見つけた地下に用心しつつ下りようとしたが、明かりを差し入れたときに、人影があるのに気づいた。
どこかにつながっていればこの辺りで作業している別のハンターグループだともとらえられる。用心して見る限り、そのような痕跡はない。
「傲慢の騎士がなんでこんなところに閉じ込められているんだよ」
レイオスが状況を確認するために上から声をかける。カマかけもあり、あえてあざけるような口調である。
そもそも、攻撃するには下りるか上から打ち込むかである。
「たまたまそこにいたときに、爆発で建物が吹き飛んで埋まっちゃのですよ」
紅葉が真顔でズケリと言った。
「何を言うかと思えば」
「あ、冷や汗が見える!」
まよいが雰囲気から告げると、推定傲慢の歪虚が硬直した。
「本当に冷や汗をかいているのですね」
ステラが何とも言えない顔になった。
「プエルの見張りで奴が閉じ込めたとか?」
「それだったら、偉かったわね、とりあえず、敵は減らしたわけでしょ」
レイオスの推測にマリィアが苦笑する。
「俺の有能さを見て、おそれをなした羊ツノの愚かなモノが愚劣な罠で――」
「関係ない歪虚のようですね」
推定傲慢の歪虚がレイオスの言葉に乗って言い始めたのをミオレスカが遮った。これまでの経緯を知っているハンターはミオレスカに同意を示しす。
「何を根拠に」
「ツノって言ったよな?」
怒る歪虚にレイオスが指摘すると鷹揚にうなずかれた。
プエルに関連していようが実際は関係ないし、会話中に相手に様子を窺ったり、下りる手段を考えている時間に過ぎない。
中の広さは全員下りて戦えそうだが、下りる時間がかかる。それに、傲慢である場合、固有のスキルが危険だ。
「で、どうやって戦うのです?」
紅葉が告げる。
「……飛び降りていくか、縄梯子で順番に?」
レイアがつぶやく。順番をどうするかなど手短に決めないとならない。
「ふ、私が、恐ろしく下りてこられないんだろう」
歪虚が告げると無言で紅葉が矢をつがえて射った。止める間もなかったが、その矢は中で変なところに飛んでいった。
「……あら?」
「そもそも、その体勢で射るのが問題だわ」
マリィアが指摘した。
「本当は私が近接で【懲罰】あるなら引き出したいけれど、場所が不安定よね」
「暗いですし、広さが十分と言い難いですね」
「なら、援護の射撃に徹するかしら」
マリィアとミオレスカが武器を構える。入口から狙うには難しいかもしれないが、味方に当てず敵を威嚇するには十分。
「自力で安全に下りるのでしたら……」
「【マジックフライト】だよ」
エステルとまよいが言う。
「早くお休みさんさせてあげるのです、彼が悲しみを作り出さないように。歪虚になると生前の人柄とは全く変わってしまいますし、きっと……」
エステルは遺族を考えると、悲しくなる。
「そうだな、エステル……で、私とレイオスが下りるのが先か?」
レイアの言葉にレイオスがうなずく。
「わたしも下りたほうがいいかな。歌えるから」
まよいは灯火の水晶球を取り出し、下りる準備もする。
「数にも限りがありますわね。縄梯子の用意をしておきます。そして、次に援護に入ります」
ステラが荷物から縄梯子を取り出し、ここに残ることになる光頼とライルと準備した。
【マジックフライト】をかけてもらったレイオスとレイアが下りると、即刻歪虚の攻撃がある。食らうことになったが、ひどい影響はない。
ハンター側は敵が【懲罰】や【強制】など特有の技能に対しては警戒している。
全力の攻撃は控えるとともにレイオスは【ガウスジェイル】を使う。
「外に出る前に、剣の錆にしてやろう」
歪虚は余裕を持って行動した。そのため、レイオスとレイアを巻き込むような攻撃をしただけで終わる。
その直後にまよいが下りてきて「穢れし魂、もたらす災禍――」と【幻葬歌】を電光楽器を弾き歌う。
ミオレスカとマリィアはスキルは使わないで、敵に攻撃をする。特に攻撃が反射されてはこない。
「わたくしは、下りるべきでしょうか。ここから届くと言えば届きますが」
「様子を見たほうがいい。【懲罰】で反射されたとき、耐えられないと困る」
悩んでいたエステルにマリィアが告げる。
「【懲罰】を所有していないのか、距離なのか、私たちよりも前衛の人を注意しているのかがわかりませんね」
ミオレスカがつぶやく。
「そうですわね……私もここから援護するのがいいいですわね」
ステラは【野生の瞳】を使った後、銃で狙った。
慎重な攻撃だとは言え、敵にダメージを積み重ねているのは事実である。ただし、前衛にダメージもたまっていく。
レイアは一瞬、敵と目が合った。
「お前は何のために戦うのだ? それに、俺はお前の敵ではないのに?」
自信ありげに歪虚の口角が上がる。
「……っ! あ、断る」
レイアは意識が書き換えられるような感覚があったが、まよいの歌声が救う。
捜索がまだ続くことを考えると危険は冒せない中、じわじわと倒し切った。
安全確保後、紅葉が浄化してここは終了する。
時間に余裕はあるため、紅葉の予想地点の捜索を行うこととなった。その近くに埋まった地下はあった。
そこにも歪虚はいた。こちらは用心深い性格だったのか、ハンターたちが下りてくるまで隠れていた上、縄梯子で出て行く。
雑魔などもいるし、ハンターは上と下に分かれて行動していたこともあり、歪虚を逃がさないで対応はできた。
【天罰】を持っていたため、ダメージは食らうが、余力を持って倒し切った。
そして、浄化を行い、一行の任務は終わりだった。
●道
「浄化について勉強になりました。魔術師としてまずがんばるのです」
エステルがやる気を見せると、シールもうなずく。
「僕も頑張らないと」
寂しい景色を眺める。
紅葉は名残惜しそうに地面をひっかく。
「紅葉さん、実家の方も開拓中ですわよね? そちらを掘ればよろしいのですわ」
ステラの提案に紅葉は「本が出てくるでしょうか」と謎の応対をする。
「まだ時間に余裕はあるんだよね? 私も掘るよ!」
まよいが紅葉に並んで熊手を手にした。
「特に何かが残っていることはなかったわね」
マリィアの言葉にライルは首を振る。
「無理に見つからないのはそれでいいですよ」
ライルが気にしてくれるマリィアに頭を下げる。
「皆無事とはいえ……結構怪我はしたな」
レイオスが一番ダメージは食らっている。シールが治せても間に合ってはいない。
「このくらいならどうにでもなる。それより……なんで紅葉が移動していくのかと聞いていいか」
レイアが見ていると、紅葉が滑らかに移動していくように見える。
「着ている物が足元を隠してしまうのです」
ミオレスカがよく見ていると、紅葉の足は動いているが服で全体が見てていない。
「紅葉殿……」
光頼が溜息を洩らした。帰路につくまで、いくつの石をこの人は拾うのだろうかと思っていた。
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依頼相談掲示板 | |||
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相談 ステラ・フォーク(ka0808) 人間(リアルブルー)|12才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2018/07/01 17:44:47 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/07/01 15:06:32 |