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【CF】ダウンタウンのクリスマスinPH

マスター:STANZA

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
寸志
相談期間
5日
締切
2014/12/24 19:00
完成日
2015/01/03 10:32

このシナリオは2日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 12月、リアルブルーでは多くの街がどこもかしこもクリスマスに染まるこの時期、クリムゾンウェストでもまた同じようにクリスマスムードに包まれる。
 それはここ、崖上都市「ピースホライズン」でも変わらない。
 むしろどこもかしこも華やかに、賑やかにクリスマス準備が進められていて。

 リアルブルーの街に輝くという電飾の代わりに、ピースホライズンを彩るのは魔導仕掛けのクリスマス・イルミネーション。
 立ち並ぶ家や街の飾りつけも、あちらこちらが少しずつクリスマスの色に染まっていく。
 特に今年は、去年の秋に漂着したサルヴァトーレ・ロッソによって今までになく大量に訪れたリアルブルーからの転移者たちが、落ち着いて迎えられる初めてのクリスマス。
 ハンターとして活躍している者も多い彼らを目当てにしてるのか、少しばかり変わった趣向を凝らす人々もいるようで。

 果たして今年はどんなクリスマスになるのか、楽しみにしている人々も多いようだった。

 ――――

 港町ポルトワールに隣接する下町、ダウンタウン。
 その一角に、身寄りのない子供達や、親はいても様々な事情で同居が出来ない子供達が暮らす施設がある。
 その施設でも、毎年この季節にはクリスマスパーティが行われていた。
 皆でツリーを飾ったり、ご馳走を食べたり、プレゼント交換をしたり――年によってはサンタクロースがプレゼントを届けてくれる事もあった。

 勿論、今年もそうした「いつもと同じクリスマス」になる予定だったのだが——

 始まりは町の一角に貼られていた一枚のポスターだった。
 普通、ダウンタウンの住民は観光旅行には縁が無い——と言うか、そんな金も暇もない。
 他の者もそれは知っているし、こんな物騒な場所に足を踏み入れなくても宣伝する場所は他にいくらでもある。
 その為、どんなに大々的なキャンペーンが張られる時でも、このダウンタウンは華麗にスルーされるのが常だった。
 しかし、何故か貼ってあったのだ……一枚だけ取り残された様に、ぽつんと。
 キラキラと輝くイルミネーションが描かれたそれは、殆ど色のないダウンタウンの町にあっては嫌でも目立つ。
 すぐさま子供達が集まり、そして「行きたい!」と声が上がったのは自然な流れだった。

「行きたいって言ってもなぁ……」
 自らも施設で暮らし、子供達を束ねるリーダーであるアルド・サンテは、ポスターの前で腕を組む。
「お前ら、ピースホライズンがどこにあるか知ってんのか?」
「しらなーい!」
「ずっと遠いんだぞ? 馬車に乗って、何日も何日もかかるんだぞ?」
「ばしゃ、のりたい!」
「途中でモンスターとか歪虚とか、出るかもしれないんだぞ?」
「だいじょぶだよ、アルにーちゃんがやっつけてくれるもん!」
「にーちゃんハンターだもんね! つおいもんね!」
 子供達のキラキラした目が眩しい。
 そこまで頼りにされたら……もう、連れて行くしかない、か。

 とは言え、アルドも自分ひとりで護衛が務まるとは考えていない。
「他のハンターに手を借りるしかないけど……」
 生憎、金はない。
「……ボランティアで、来てくれるかな……」
 ピースホライズンでは好きな様に楽しんで良いと言えば、来てくれるだろうか。
 とは言え、そこでも子供達の引率やお守りなどで振り回されるのは確実なのだけれど。
「ま、ダメモトで頼んでみるかな」
 アルドとしても、ピースホライズンのクリスマスは是非とも体験したい所ではあるし。

 かくして、一癖も二癖もある子供達を連れた小旅行が始まる。
 連れて行くのは施設の子と、彼等と仲の良い近所の子供達、総勢30人ほど。
 全員、町の外に出るのはこれが初めてだ。
 道中は馬車に乗せておけばそう面倒をかける事もないだろうが……問題はピースホライズンに着いてからだ。

 さて、どんなトラブルが待っている事やら……?

リプレイ本文

 ダウンタウンから一歩も外に出た事がない子供達にとって、そこはまさに別世界だった。
 キラキラと輝く大きなツリーやイルミネーション、賑やかな音楽、屋台から漂う甘い匂い、綺麗に着飾った人々――どれも普段は触れる事のないものばかり。
 浮かれてはしゃぐなと言うのが無理な注文だった。


「くりすます? たべものでしょうか?」
 辺境の人里離れた山奥で育った藍那 翠龍(ka1848)は、クリスマスを知らなかった。
 しかし、それを知った今のワクワク感は、きっと子供達にも負けないだろう。
 元気少女デュオと気弱少年シフレを連れて、目を輝かせながら歩き始める。
「照明がきれいですねー」
『ピッ』
 シフレの返事はいつでも笛の音だ。
「もう、シフレってばちゃんと喋りなよ!」
「きっとシャイなんですねぇ」
 不服そうに頬を膨らませるデュオに、翠龍はにこにこと実に前向きな答えを返す。
「……おや?」
 光溢れる表通りの切れ目、暗さが際立つ路地裏に何かが動く気配を感じ、翠龍はふと足を止めた。
 そこには頭陀袋を担ぎ、窓から忍び込もうとしている人物の姿が。
「あれが噂のサンタさんでしょうか? 何だか聞いた話と印象が違うような」
「あれじゃまるで泥棒ね……」
 まるで? いや、あれは……どろ……泥棒だ!!?
『ピイィィーーッ』
 悲鳴代わりの笛の音に驚いた泥棒は、路地の奥へと一目散。
 足に自信のあるデュオがそれを追いかけるが――
「それ以上近付いてみろ、小娘の命はねぇぞ!」
 追い詰められた泥棒は、羽交い締めしたデュオに刃物を突き付けた。
 しかしハンター志望の元気少女が大人しく捕まっている筈もなく、ガブリと男の腕に噛み付いた。
 慌てた男が刃物を振り上げた瞬間。
 耳を聾さんばかりの絶叫が路地を貫き、その隙にデュオが男の手から刃物を叩き落とす。
「ナイスです」
 二人に声をかけ、翠龍は無事に犯人確保。
「お手柄でしたね」
 泥棒を自警団に突き出し、貰ったお礼で少し豪華な食事でもしようと歩き出す。
「なるほど、シフレは小声すら大きくなるのが恥ずかしくて……」
 ひとり声が大きいのが悩みなら、みんなでクリスマスソングでも歌って歩こう。
 ここなら声が大きく、元気なほど歓迎される筈だから。


「あたしもサムのやつがよかった……そっちがいい!」
「ねーちゃんのはそっちだろ、これ俺の!」
 リズとサムの姉弟は、寄ると触ると仲良く喧嘩。
「ああ、もう、二人とも出発前の約束を忘r」
「シグは黙っててよ!」
「これは俺たちの問題なんだ!」
 そう言われても、保護者としては引き下がるわけにもいかない。
 シグリッド=リンドベリ(ka0248)は、出来るだけ毅然とした態度を取ろうと頑張ってみる。
「約束しましたよね?」
 三人手を繋いで行動する、万が一迷子になった時の為に宿の場所をちゃんと言えるようにする。
 そして何より、喧嘩をしない事。
 いや、無理だとは思ったけれど、特に三番目。
 そして実際に無理でした。
 おやつを選んでも食事の時も、お土産選びでも、喧嘩、喧嘩、喧嘩。
(クリスマス……この世界での神様の扱いはどうなってるのでしょう)
 などと、つい現実逃避してみたくもなる。
 いつも頭の上にいる白猫シェーラさんは、既に物理的に逃避していた。
「俺そっちのが良い!」
「なによ、これはあたしの!」
 ああ、また始まった。
 何故この二人を一緒に担当してしまったのか……仕方ないね、姉弟だもの。


「は~い、おたくらはおっさんとですよーん。はぐれないよう手を繋ぐか白衣の裾でも握ってなぁ?」
 けらけらと笑う鵤(ka3319)は、言動は怪しいが、怪しい人ではない、筈だ。
 引き連れているのはウランとバートル、三歳の双子の姉弟。
「さーて、イルミ見物がメインかねぇ。ガキってこういうの好きそうだしぃ……ってもう疲れたのかおぃ」
 流石は三歳児、体力不足が半端ない。
「なんかあったかいもんでも買って来るから、そこで待ってなぁ?」
 しかしホットミルクを買って戻ってみると案の定、二人の姿はない。
「あーあー、どこ行ったんだかなーもう」
 やっとの思いで探し出し、今度はしっかり手を握って、屋台の人に聞いたお勧めスポットへ――しかし人混みで何も見えない。
「これでよく見えるだろ」
 まずはウランを肩車。
「……あーあー分かってるから裾引っ張るなってぇ。かわりばんこでやってやるよぉ」
 まったく、子守も楽じゃない。
 二人に渡した小遣いは、皆に配られた千Gと合わせて三千Gずつの大盤振る舞いだ。
「なに、あれが欲しい?」
 小遣いで買いなさい、小遣いで。
 だが三歳児に金銭感覚はない。片っ端からあるだけ使ってしまい――
「おたくが使える金はあと百Gで、アレの値段は三百Gです。さあ買えるでしょうかぁ~? 無理ですねーぇ? 諦めな」
 しかし三歳児には計算も出来ないのだ。
 声を揃えて買って買っての大合唱。
 仕方ない、理屈はわからなくても、我慢できたらご褒美に買ってやろう。
 さあ我慢できるかな?
 なに、出来ない――って、おしっこ?
 そこは我慢、ああ、無理だね。
 プルプル震えるチビ達を両脇に抱え、人混みの中を猛ダッシュ。
「おっさんを、走らすんじゃ、ねぇって……っ」


「え、自由行動、ですか。それ、聞いてなかったです」
 護衛の仕事と聞いていたフランシスカ(ka3590)は、少し戸惑った様子で馬車を降りた。
 行きたい場所は特にないが、クリスマスに染まった街並みは眺めているだけで楽しい。
 表情には出ていないが、楽しんでいるのだ。
 と、道端で泣いている子がいる。
(見覚えがあります。馬車の中で覚えた顔です。間違いありません。泣いているのはエディですね)
 栗毛で背の低い男の子。
 その隣で怒っているのに何故か泣きそうな顔をしているのが、黒い髪に黒い目の女の子リーズ。
 もう一人、綺麗な長い金髪はレーシャだ。
「どうしたの、ですか」
 その問いかけに、成り行きをぼんやり見守っていたレーシャが答える。
 無口で大人しくて一番年下だが、彼女が最も落ち着いていた。
「……なるほど。アルドたちから、はぐれたのですね」
 エディがツリーに見惚れていて、リーズがそれを注意して。レーシャはリーズにくっついてきた、と。
「わかりました。フランも、アルドたちを探します。ついでに街も見て回りましょう」
 三人がこれ以上迷子にならないように手を繋いで、人混みを避けつつ楽しいお話をしながら。
 エディもどうやら泣き止んだ様だし、リーズは機嫌が直れば話し好き。
 レーシャはフランシスカと共に専ら聞き役だ。
「いつもの、クリスマスは。どんな風に過ごしているのでしょう」
「あのね、ツリー飾ってね、サンタさんがね――」
 エディが楽しそうに答える。
 リーズもここは空気を読んで、あれは職員の誰かが変装しているんだ――などと、夢を壊す様な事は言わなかった。


「エルモはもう大丈夫?」
 最後まで馬車に残っていたリアリュール(ka2003)は、エルフの男の子に声をかける。
 慣れない馬車旅で酔ってしまった様だが、もう大丈夫。
「じゃ、行こうか。すっごい冒険になるね、いっぱい楽しもうね」
 一番小さなエルモと生意気盛りのおしゃまなルチアの手を引いて、年上のセレーナは反対側からエルモの手をとって。
「私は、きらきらのイルミネーションを、ちょっと高いところから見られると嬉しいわね」
 皆は何がしたいのだろう。
「おかし、いっぱいたべる!」
「ぐるぐるのりたい!」
 ルチアの言うぐるぐるとは、特設のメリーゴーランドの事だろう。
「あたしは、皆の行きたいところで良い」
 セレーナは控えめで遠慮がちだ。
「遠慮しなくて良いのよ? せっかくだし、ぜんぶ、やりたいことはやろうね」
 だからエルモとルチアは喧嘩しないの。
 連絡用の伝話も持った、応急手当用に布と水も用意してある。
 何も起こらないのが一番だけど、備えあれば何とやら。
「今日はとことん付き合うよ。いっぱいお話もしたいし、エルモは疲れたら抱っこしてあげるわね」
「あたしはお姉ちゃんだから、抱っこなんかいらないわ!」
 ルチアが胸を張るが、さてさて。


「こどもはまもらなきゃいけない、だいじにしなきゃ、って、おししょーさまはいいました」
 ぽわわなエルレーン(ka1020)は、ぽわわんと頷く。
「だから……くりすますは、ぼらんてぃあするの」
 その担当はヴァイスとブラン、双子でも姉弟でもない様だが、どちらも「白」を意味する名前であり、その名の通りに白い肌と白い髪、そして頭がぽわわという共通点。
 この二人が常に行動を共にしているのも頷けるというものだ。
 そこに更にもう一人、ぽわわなエルレーンが加われば……ぽわわ同士で波長はぴったり、トリプルぽわわ、もう怖いものはない。
 きれいなイルミネーションに見とれる三人。
「「「きれいねぇー」」」
 屋台でお菓子を買って、幸せそうに頬張る三人。
「「「おいしいねぇー」」」」
 ぽわわトリオはぽわわんしたまま屋台を巡る。
「「「これいいねえー」」」
 しかし手に取ったガラス細工のツリーは、子供達に渡された小遣いでは買えそうもない。
 諦めて、そっと台の上に戻そうとしたが。
 ぽろり、がっしゃーん!
 はい、弁償ですね、わかりました。
「「ごめんなさぁい」」
「うん、だいじょうぶー」
 ぽわわトリオは、失敗してもぽわわだった。
 三人はそのまま、ぼけーっと綺麗な街のふいんきを楽しみながら、ぽわわんと見物を続ける。
 えっ、雰囲気って「ふいんき」って読むんじゃないの?


 チョココ(ka2449)と双子の姉妹ロザリーとシシルは共に10歳。
 同い年の女の子同士という事もあって、三人は馬車に乗り合わせてすぐに意気投合……というわけにもいかなかった。
 姉のロザリーは誰とでもすぐに仲良くなれるが、妹のシシルは大人しく、ちょっと人見知りなところがある。
 それでも、きっかけさえ作ってしまえば――
「この子はパルムのパルパルですわ」
 頭上の所定位置に乗っかったパルムに、二人とも興味津々。
 共通の興味や話題さえ見付かれば、後はもう放っておいても仲良くなれる。
 旅の間にすっかり意気投合、今では当然の様に一緒に行動する間柄になっていた。
(同い年くらいの子達大勢と一緒って、なかなか機会がないですの)
 他の子供達とも仲良くなったけれど、この二人は特別だ。
 綺麗にラッピングした星形の手作りクッキーを皆に手渡し、三人はわくわくしながらイルミネーションの下に踊り出した。


「……おかしいな、子供苦手のはずなんだけど」
 どうしてこうなったと頭を抱えながら、滝川雅華(ka0416)は子供達の後について歩く。
 まぁ、何はともあれ仕事として受けたからには全力を尽くしていこうとは思うけれど。
 先に立って歩くレニィーは、しっかりとしたお姉さんで年少の子にも頼られる理知的且つ冷静なレディ。
 その後ろにくっついているイリアスは、歳に似合わない冷静さと実務処理能力を持ちあわせている。
 この二人なら、そうそう問題を起こす事もないだろう。
「そう言えば、あそこのツリーには追加で飾り付けもOKって言ってたわね」
 その為に、手先の器用さと機械修理や日曜大工を生かした飾りを作って来たのだ。
「ほら、二人も手伝ってよ」
 そう言われて二つ返事で引き受けるが実際は持て余して弟分に全て押し付けるレニィーと、面倒臭そうに文句を言いながらも実は嬉々として作業に没頭するイリアス。
 二人の、いや、実際にはイリアスの手伝いによって、ツリーには機械仕掛けの人形や光り輝く星飾りが加わった。
 ネジを回すと人形達はクルクルと踊り出し、それに連動する様に星がキラキラと輝く。
「へぇ、わりと良い感じじゃない」
 内心ではすごいすごいと喜びながら、背伸びがしたいお年頃のレニィーちゃんは自分も負けじと暴走を始めた。
「あたし、もっとすごいの買って来てあげるわ!」
 人通りの少ない裏通りには、知る人ぞ知るマニア御用達の秘密の店があるに違いない。
 が、当然そんな場所は治安も悪いわけで――ほら、チンピラに絡まれた。
「まったく、だから言ったのに……」
 いや、言ってなかったかな?
「行儀の悪い人達には、少し怖い目を見て貰いましょうかね」
 痛い目でも良いけれど、どちらがお好み?


 馬車から降りる前に言い渡された注意事項や約束事を聞いて、鬼百合(ka3667)は不満そうに眉を寄せた。
「ええと、迷子になっちゃいけねえ、人のもんとっちゃいけねえ……なんだかいけねえことばっかですねぃ」
 それでも仕事は仕事、鬼百合はマシロとミオ、年下の双子兄妹の手を引いて歩き出す。
「ガキのおもりはたいへんでさぁ!」
 などと大人ぶった口をきいてはいるが、そこは10歳の子供。
 この時期をクリスマスらしく過ごすのは初めてでもあるし、何もかもが珍しいものばかり。
 同い年の悪ガキ二人組、ルカとテオと共に、興味津々の様子で先に立って歩いて行く。

 その後からは甘えん坊の三歳児、オーレンを背負った春咲=桜蓮・紫苑(ka3668)がゆっくりと。
「去年はてんやわんやしてやしたからねぇ」
 今日は少しのんびりと楽しむ事が出来そうだ……多分。
 だが、気が付けば紫苑はひとり取り残されていた。
 子供の移動力を舐めてはいけないと悟った時にはもう遅い。

「シオンねーさん! ねーさん! なぁんかキラキラ綺麗ですねぃ!」
 そこに居る筈の紫苑に向かって、鬼百合が笑いかける、が。
「……あっれ、ねーさんいねえ」
 大人のくせに、迷子になったのだろうか。
「案外どんくせぇんですから、まったくどこ行っちまったんですかねぃ」
 皆で探しているうちに、悪ガキ二人が良からぬ事を思い付いた。
「なあ、誰が一番稼げるか競争しようぜ?」
 言うが早いか、ルカが通行人の懐に手を伸ばす。
「ちょ、それはしちゃいけねえやつで……って、あーあー、手つきぜんぜんなってねぇ」
 今でこそ控えてはいるが、手癖の悪さにかけては二人に負けない自信がある。
 目の前で下手くそな技を見せられては、つい手本を示したくなるのが人情というもの。
「いいかみてなせぇ」
 目にも留まらぬ早業で、鬼百合は財布を抜き取った。
「ってぇなぐあいで、狙うのもああいう怖い人よりは……あー! あー!」
 まずい、バレた!
 しかも相手は仲間を呼んで、悪ガキどもはあっという間に囲まれる。
「怖いけど、オニの子なめんじゃねえですぜ、面倒見るって言ったんでさ!」
 睨み付けて威嚇しつつ、チビ達だけでも逃がさなければと隙を伺うが――

「てめぇら、俺の可愛い弟分に何してやンでぃっ!?」
 探し回って駆けつけた姐さん、激おこスティックファイナリアリティプンプンドリームである。
 原因が弟分達の方にあると知れば、その怒りは当然の如く彼等に向けられ、眉間には深い深い皺。
 人相の悪さと柄の悪さとキレやすさでは誰にも負けない姐さんだった。
「そいつは確かに、こいつらに非があらぁね」
 だが謝罪を受け入れないと言うなら、拳で語ろうじゃないか、え?
 喧嘩上等、かかって来いや!

「でも、でもだって」
 拳での交渉が成立し、決着が付いたところで、悪ガキどもはまず正座。
 言い訳しようとした鬼百合は、拳を振り上げた紫苑の青ざめ苦しそうな表情を見て、素直に頭を垂れた。
「……ごめんな、さい」
 震える手を引っ込めて、紫苑はガキどもと目線を合わせる。
「……お前らがしたことは『悪いこと』でさ。お前らが盗んだのはただの金じゃなくて、回り回って誰かの幸せだったんですぜ?」
 他人の幸せを盗んじゃいけない。遊びでも、本気でも。
 そこに理由なんて無い、悪い事はただ悪い。
 シンプルに、それだけだ。
「わかったら、ほら。早くしねぇと祭が終わっちまいやすぜ?」
 スパッと頭を切り換える姐さんは、実にオトコマエだった。


「はわわ……ど、どーしよぅ」
 涙目のエルレーンさん、三人一緒に迷子であります。
 人に尋ねてもさっぱりわからない。
 でもきっと誰かが探しに来てくれるって信じてる!

 落とした財布を探しているうちに、すっかり迷子になったチョココ達。
「た、大変ですわ!」
 しかし何やら美味しそうな匂いは漂って来るし、綺麗な細工品の露店には目を奪われるし――迷子の自覚、なし。
 自覚がないなら迷子ではない。
 うん、問題ないね。


 やがて辺りは暗くなり、全員で合流した後は観覧車で夜景を楽しむ事に。
 しかしアルドと乗り合わせたシグリッドは、とても楽しむ余裕などない様子。
「アルドさん……ぼく、討伐依頼の方が楽だったって思いました……」
 姉弟には同じものを選ぶのが正解、それぞれ違うの渡すと喧嘩するって、ぼく学んだ。

 ムード満点の車内で、鬼百合は小遣いで買ったマフラーを紫苑にプレゼント。
 お返しはちょっと高めのお菓子――勿論全員の分あるから、そこ喧嘩しない!

「綺麗な灯りね。夜空の星が地上に落ちてきたみたいね」
 疲れて眠ってしまったルチアを膝に、リアリュールは目を細める。
 ところで、この旅費はどこから出たのだろう。
(話をとりつけるのは大変だったのじゃないかと思うけど……)
 そこにどんな苦労があったとしても。
 今日の事はきっと皆にとって、楽しかった以上のものになるだろう。

 メリークリスマス。
 そして、良いお年を――!

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重体一覧

参加者一覧

  • 優しさと懐かしさの揺籠
    シグリッド=リンドベリ(ka0248
    人間(蒼)|15才|男性|疾影士
  • 哀しみのまな板
    滝川雅華(ka0416
    人間(蒼)|24才|女性|機導師
  • ぽわわんはわわん
    エルレーン(ka1020
    人間(紅)|14才|女性|疾影士
  • 後ろの守護龍
    藍那 翠龍(ka1848
    人間(紅)|21才|男性|霊闘士
  • よき羊飼い
    リアリュール(ka2003
    エルフ|17才|女性|猟撃士
  • 光森の太陽
    チョココ(ka2449
    エルフ|10才|女性|魔術師
  • は た ら け
    鵤(ka3319
    人間(蒼)|44才|男性|機導師
  • 幸福な日々を願う
    フローラ・ソーウェル(ka3590
    人間(紅)|20才|女性|聖導士
  • 瑞鬼「白澤」
    鬼百合(ka3667
    エルフ|12才|男性|魔術師
  • 任侠姐さん
    春咲=桜蓮・紫苑(ka3668
    人間(蒼)|22才|女性|闘狩人

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/12/22 20:22:20