愉快な盗賊団から取り返せ

マスター:菊ノ小唄

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/12/26 22:00
完成日
2015/01/09 08:39

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●アモレア盗賊団
「団長、こないだそこの魚屋で掃除してたんスけど」
「ねぇ団長、本屋の在庫運びの報酬が……」
「団長ってばー」

 同盟領、ヴァリオスの大衆商店区。そこはヴァリオスの中でも魔術師が特に多く行き交う、雑多で賑やかな区域。
 大衆商店区の小さな家で、数名の男女が、何か考え事をしている男をつっついていた。団長、と呼ばれたその男は名をビブリオ・ボッコという。今年30歳、独身。そんな彼が率いているのは十数名からなる『アモレア盗賊団』、身寄りの無い者を拾い集めた家族のような組織だ。
突然立ち上がり、その場の面々をぐるりと見回すと、よーしお前らよく聞けよと口を開いた。

「いいか、明日からこのアモレア盗賊団、本来の目的のため行動開始だ!」

 小さな部屋に響く声。そして数秒間の静寂。
「本来の目的ってなんスか」
「なんかすごそうですね!」
 細身の男が、少々呆れ顔で部屋に入ってきた。彼はビブリオの弟にして唯一の肉親、ジュール・ボッコ。副団長であり、団の頭脳。ジュールは忘れん坊な団員たちに、
「今は便利屋をしてるけど、それはとある人の大嵐によって壊滅した組織を立て直すための基盤作り、って話したでしょう」
 そう説明し、思い出させてやる。
「俺としては、もうあの人が起こす大嵐は御免なんだけどね……」
「嵐程度ではこのビブリオの愛は止められん!! 改めて言うぞ。お前らもう忘れんなよ。絶対だぞ。アモレア盗賊団の真の目的は」
 再度ぐるりと面々を見回し、宣言する。
「魔術師協会本部を壊滅せしめ、会長職に縛られた我が愛しのジルダ・アマートを救出することである!」

 かくして、お馬鹿団長率いる盗賊団が、無謀に元気良く動き出した。

●昔話
「お疲れ様です」
 自由都市同盟、ヴァリオスの魔術師協会本部、会長室にて、会長ジルダ・アマート(kz0006)と広報部長ドメニコ・カファロ(kz0017)は打ち合わせを終え、書類を揃えて片付ける。
 茶を飲みながら、ジルダが思い出して言った。
「そういえば先日ジェオルジまで出向きました」
「村長祭かね」
「ご明察。美味しいお茶を見つけまして、ここでも飲めるよう注文しました。お楽しみに」
「ほうほう。ラウロにも教えてやるか。いつ頃届くのかね」
「それが、少し遅れると店から連絡を受けていて……気長にお待ちくださいな」
 それを聞いて、ハッハッハ、とドメニコが笑い出した。何事かと怪訝な顔をするジルダ。
「誘拐された先のアジトで気付くや否や、嵐を起こしめちゃくちゃにした怒りん坊が、こんなふうに話す日が来るとは。感慨深い!」
 ドメニコはジルダを会長に推した人物であり、ジルダに魔術を教え、鍛えた師でもある。そんな人物なのでドメニコはジルダの思い出話には事欠かない。
「ちょっと、先生、その話はやめてください」
 思い出したくもない! と珍しく顰めっ面になったのを見て、すまんすまんと謝るドメニコ。

 ジルダは昔、彼女に懸想をした少年とその一味によって誘拐されたことがあるのだ。気絶させられ、誘拐された先で目を覚ましたジルダは、怒り心頭で大嵐を巻き起こした。その嵐はヴァリオス全体にまで広がってアジトだけでなく街中をも荒らす。『魔術師協会の会長を怒らせると同盟中に嵐が起こる』という魔術師の間では有名な話も、この出来事に由来するものだ。
「あの少年たちももう良い大人だろうが、どこで何をしているのやら」
「知りたくもありません」
 忘れていたかったのに、とツンケンし始めたジルダ。
 話を変えよう、と広報室で作られたクッキーを勧めるドメニコ。内心、ヴァリオスを冬の嵐から守るためにも、彼らから挑戦状が届いたことはもうしばらく内緒にしておこうと嘆息するのであった。


●商人の矜持
 自由都市同盟、極彩色の街ヴァリオス。この街には、大きく分けて三種類の商店街がある。
 歴史あるブランド物を探すなら「高級商店街」。
 最新最先端の流行に触れるなら「新興商店街」。
 財布に優しく長居をしたいなら「大衆商店街」。

 開店の声が響き始めた、新興商店街のとある運送屋から話は始まる。
 職員控え室では、店長と店員が机を挟み、腕を組んで唸っていた。
 魔術師協会本部の会長室へ届ける予定の荷が、中継地点であるこの店舗に届く途中で盗まれてしまったらしいのだ。それが昨夜遅くの話で、店長たちはついさっき開店早々にそれを知ったのだった。
「協会本部の会長様直々にご注文頂いた品がいつお届けできるかわかりません、なんてお伝えできませんよね……」
「その通りなんだよねぇ。遅れている時点でお叱りを頂いても仕方ないくらいだ」
 店員と店長はため息をつく。
「そうだねぇ……こちらで何とかしようか」
「ど、どうやって」
「そりゃぁ、ほら、機動力抜群のハンターに動いてもらうんだよ」
「ああ、なるほど」
 両手を打つ新人。店長が微笑む。
「ハンターは仕事が出来る。私は信用を得なおす。時は金なり。そうだろう?」
 商人らしい物言いに、新人も笑って頷いた。店長は頷き返し、言う。
「互いに益があるならやっておこう」
 これはひとえに、店長がハンターたちの能力を認めているからこその判断だ。それに、と店長は続けた。
「手堅く仕事をしてくれるのは軍だけどね。どうしても時間がかかるからねぇ。この件はハンターに頼もう」
 そこまで言って、あ、と店長は外出の支度をする手を止めた。
「商工会側の情報なら私でも調べられるねぇ。こっちで動きがあるかどうかは確認しておこう」
 手帳へ用事を書き留める店長に、頷く新人。
「わかりました。それじゃ私は、ハンターオフィスへ依頼する支度をできるだけ済ませておきますね」
「うん、頼むねぇ。私は商工会へ顔を出してくるよ」
「はい。お気をつけて」

リプレイ本文

●聞き込み調査

 ~in高級商店街~
 同盟最高級品……ひいては西方世界トップクラスの品々がひしめく場所、ヴァリオス高級商店街。
 カレン・ラングフォード(ka3622)と白藤(ka3768)は品の良い外装の店が並ぶ、広い商店街を歩く。ふわり、と紅茶の芳しい香りが彼女たちの鼻をくすぐった。
「良い香りね」
 白藤が手を打つ。
「せや、このへんで『ジェオルジの風』扱っとる店あらへんやろか」
「それであれば、茶葉のお店か……飲食店?」
「人の出入りがあるのんはやっぱ後者やろか。あと、盗難がほんまに盗賊団の仕業なんかどうかも確認せぇへんと」
「それもそうね」

 品良い佇まいの建物に入ったカレンと白藤。店内は格式高い調度品が鎮座し、尚且つ居心地良い空間。店員が静かに一礼し客を迎える。
「いらっしゃいませ」
 二人はカウンター席に着き、白藤が近くの店員に何気ない口調で話しかけた。
「なぁ、『ジェオルジの風』置いてはる?」
「ああ、秋の試作品でございますね。誠に申し訳ございませんが、当店では取り扱っておりません」
 すまなそうに一礼した店員が説明する。
「新興商店街の紅茶店では仕入れを検討中とのことです。まだ商品として、流通が確立していないものですから」
「会長さん、ほんまに新しいもん好きやねんなぁ……」
 商品にもなってへんお茶取り寄せよるんか、と白藤は感心を通り越して呆れすら感じた。

 店員から受け取った紅茶一覧を眺め、こういうブランド物は何処の世界にもあるものねと独りごちるのはカレン。一覧から顔を上げた彼女が、話は変わるんだけど、と店員に尋ねた。
「この辺りで最近、不審な連中を見かけてないかしら? あとは、変な噂や異変とか」
 不審人物ですか、と店員は首を傾げて顎に手をやり、視線が少し上を見るものの心当たりは無いようだった。しかし、異変といえばと店員が少し声を低くして答えた。
「魔術師協会本部宛の商品ばかり狙う賊がいるらしいです」
 賊は『アモレア盗賊団』と名乗ったそうですよ、と。

 ~in新興商店街~
「うっわー、ここが流行の最先端が集まってるとこ? マジでちょー感動!」
「すごいねー!」
「にゃぁー」
 ここは流行の最先端を突っ走る店が軒を連ねる新興商店街。その入り口に立って、眼を輝かせている少女二人と、猫一匹。
「ステラん、やっぱここ来たかったんだ?」
 好きそうだもんねとペットの猫・タイガーを抱えながら話す鮫島 寝子(ka1658)に、海野 星(ka3735)は謎の訳知り顔で話す。
「だってだってぇ、あたし的にここは外せないしー? 聞き込みしまくって流行りもチェックして一石二鳥的な!」
「あ、僕も服の流行は気になるな!」
 海の家のユニフォームに取り入れようかなって思って、と話す寝子。
「いいじゃんいいじゃん、一石三鳥っ! それじゃ、こーりつてきに聞き込み開始ってやつ?」
「そうだね!」
 寝子と星は元気良く走り出した。

「あっちどう?」
「行こ行こ、目指せ全制覇だし!」
「みゃー」
 スイーツショップに突撃、新作のパンナコッタを試食しながら盗難に遭った木箱の目撃情報が無いか店員と話す二人。

「この紅茶サイコーっしょ! 星型クッキー付いてるし!」
「ねぇねぇステラん、そこに入荷予告の一覧がある」
「『ジェオルジの風』ってあれじゃん、盗まれちゃったやつじゃん」
「うにゃぁ?」
 店員に確認したところ、茶葉がまだ流通もしておらず、これから茶葉の問屋がジェオルジの領主に掛け合うことになっているらしいと教わった。

「ここやばいって、合同店舗ってやつだし!」
「服のアレンジもたくさんあるよっ」
「にゃん」
 アクセサリーの店と服の店の合同店舗を見つけ、マネキンをチェックして回りつつ、店員をつかまえ盗賊団の名を出してみたりして。

「木箱の目撃情報は、今のところ無しだよね?」
「無いっぽいー。盗賊団の名前は知ってる人もいたからぁ、そこを調べてく系?」
「そうだねぇ。……あれ? ステラん、流行チェックのほうがメモ多くない?」
 次の店を目指しながらメモを整理していた二人。星の手元を見た寝子が気付く。星は思わず目をそらした。
「あ、あたし的にちょー重要事項ってやつだし……」
「にゃぁん」
 何はともあれ、星と寝子とタイガーは忙しく走り回り、飛ぶように時間が過ぎていくのだった。

 ~in大衆商店街~
 がやがやと賑やかな声が響き、財布に優しく様々な買い物ができる大衆商店街に来たのはドワーフの二人組。
「にゃうぅ……おなか空いたんじゃもん……ご飯食べたいんじゃもん」
 腹ペ娘ドワーフの泉(ka3737)を連れた少年ドワーフのラプ・ラムピリカ(ka3369)が、大衆商店街を練り歩く。
「ああ、ほんなら食堂みたいなとこ行ってみるかんな。噂好きのおばちゃんとか居るかもなぁ」
「ボク、お話聞きながらご飯するんじゃもん♪」
 到着した食堂に入り、ラプは飲み物を、泉はがっつりと食事を注文。二人は老夫婦の客を見つけ、並びの席に着いた。
 もぐもぐごくごく美味しそうに食べる泉を見て、隣の老夫婦のほうから話しかけてくる。白髪の老人が自分の食事から小皿をひとつ取った。
「ドワーフのお嬢ちゃん、この炒り卵も、食べるかのう? 余ってしまってのう」
「もらうんじゃもん、ありがとうじゃもん!」
 もぐもぐもぐ。
「良かったなぁ泉」
「ドワーフのお兄ちゃんはどうかね」
「いんや、おいらは腹減ってねぇから大丈夫だぁ。じいちゃんたち、この辺の人かぁ?」
 ここよく来るんけ、とラプが尋ねると老人は頷く。
「ああ。安くて旨いからのう」
 そんな話を聞いて泉が顔を上げる。
「にゃ、爺ちゃたち、最近、夜中のケンカって聞いたんじゃもん?」
「喧嘩……ああ、ついこの間、うちの前であったのう」
 酔っ払いが喧嘩を始め、久方ぶりに雷を落としてやったと語る老人。その酔っ払いは、老人の知らない中年の大人だったそうだ。
「誰なんかねぇ。この辺でやんちゃしそうな人たち、って誰か知らんかぁ?」
「悪さはせんが、騒ぎの種といえば、アモレアの子たちかのう」
「アモレアの子? 酔っ払いとも違うんけ?」
「違ったのう。便利屋をやっとる良い子たちじゃ。身寄りの無い子の世話もしておるよ」
「へえぇ。おいら住む場所も寝るとこもねぇしなぁ……会ってみるかぁ」
「便利屋さん、ボクも会ってみたいんじゃもん」
 どこで会えるんじゃもん?

 こうして、あっさりのほほんと『アモレア盗賊団』のアジトの場所が判明したのだった。

●情報共有、そして潜入
 集合時刻となり、ハンターたちはちょっとした広場に集まった。

 白藤とカレンは、高級商店街で得た茶葉の流通の情報などを伝える。
 寝子と星は、新興商店街で聞いた茶葉の話を白藤らの情報と突き合わせて確認。
 泉は、ラプと二人で紙にまとめた、大衆商店街の老夫婦から教わった盗賊団の情報を提供。

 その頃、ラプは泉に情報共有を任せて先行し、盗賊団の家の戸を叩いていた。
「どーもー。入団希望のモンだぁー。誰かおらんけー?」
 すると奥から声がした。ガチャ、とドアが開く。青年が顔を出した。
「やあ、入団希望だって?」
「家とか寝床とかねぇんだぁ。ここなら拾ってくれるかもって教わったんよ」
 それを聞いた青年はにっかーと笑い、そういうことならとりあえず入んなよ、とあっさりラプを受け入れる。
「なぁ、盗賊団って、何を盗むんだぁ?」
「おもに、人々の心だな! これは団長の受け売りだけどな!」
「へえぇ、団長さんかっけぇなぁ」
「おう、団長はかっけぇぞ!」
 そこから始まる団長自慢。ラプに分かったのは、団長は全団員から好かれていること、今は団長と副団長が不在であること、盗賊団は大衆商店街の人々に愛されるお人よしであること。その三点だった。

●煙と罠とアイドルと
 ラプはお手洗いを借りる振りをして盗賊団の家を抜け出し、近くで待機していたハンターたちと合流。
 一同は、事前に打ち合わせておいた火事騒ぎ作戦の支度を始める。白藤とカレンが監視に残り、ラプ、泉、星、寝子は出入り口の確認と封鎖に向かった。ラプが案内役だ。
 裏口の戸の窓からそっと中を覗き込む面々。泉がすぐそこの窓と観葉植物の鉢植えを見て、
「あれ動かして窓ふさぎたいんじゃもん。でもここ開かないんじゃもん……」
「っていうかぁ、今こそこれの出番っしょ?」
 そう言って星が取り出したのは、シーブスツール。鍵開けに挑戦だ。数十秒、カチ、カリと格闘した末、遂に、カチン!と良い音がした。
「なんか今、あたしってば、ちょーかっこいいかも」
 にやりん、と笑う星。無邪気な笑顔でそろりと泉が戸を開ける。大きな鉢をそろそろと動かし通せんぼ。そんな調子で四人は窓辺に障害物を置いたり、ドアに板を引っ掛けて開かなくしたりして、逃げ道を塞いで回った。

 封鎖が完了し、ひとつ残した玄関扉の前で煙を焚く準備をする一同。メモ用紙の残りと、ラプが提供した紙巻煙草一箱を合わせて使う。
 そして、持ち寄ったロープの数と捕縛の手筈を確認。
「出口んとこにロープ張って、転ばせたったらどうやろ」
 誰か二人でロープ持ってやっても楽しいかもしれへんで、と白藤が笑みを浮かべていた。

 そして遂に火事騒ぎの振りが始まる。もくもくと煙が出て、盗賊団の家の中へ。
 何事かと集まってきた街の人々に寝子が事情を話すと皆笑って協力を申し出てくれる。そうした後、寝子が口に手を当てて叫んだ。
「火事だー!! 早く外に逃げろー!!」
 それを聞いて人々も口々に
「どうしたどうした?」
「おい火事だよ、水の準備しな!」
 と騒ぎだす振り。

 同時に、カレンが裏口から家の中へ突入した。鉢合わせた団員に銃口を向け、
「火に巻かれるか、私に撃たれるか、二つに一つよ」
 と言い放って混乱の渦に叩き込み、追い立てるように銃を背中に突きつける。カレンは残る団員が居ないか確認しつつ入念にクリアリングしていった。

「う、うわぁああ助けて!!」
 炙り出され、追い立てられ、玄関扉から飛び出してきた団員。……が、
「「せーの」」
 で、ピンと張られたロープに引っかかり、きれいにゴロン。
 すると、
「かっ、かじだーー!」
「出口どこだ! あっ玄関のほう明るいぞ!」
 もう一人、そしてもう一人と走ってくる。
 結果、わーっ!うわー!と一人目の上に二人が次々と積み重なり、団員たちは目を白黒させた。これは火事っぽくないぞと気が付いて、なんとか起き上がろうとする三人。
 しかし、次の瞬間。
 目の前にシュタッと立った少女が、輝き弾ける星の光に包まれた。
「ステラちゃんに注目ー! ここからは、ちょーサプライズなあたしのスペシャルステージだし!」
 言い放った少女、星の頬には重なるスター模様がペイントされ、服はきらきら光を放ち、フリルがぽわんと揺れてスターの形が連なるアクセサリーがシャランと鳴った。
 明るい蛍光色の光線がグリーンにピンクにイエローに、星の周囲を切り裂き走る。そして星はびしっとポーズ。
「人の物を盗む悪者のみんな、覚悟は出来てるっしょ? あたしの魔法で魅了してやるんだからね!」
「わ、悪者では……っ」
「問答無用ってやつだし! くらえっステラロッド!」
「うわああぁ!!」
 後ずさる別の団員。
「何アレやっべぇ……って、うお?!」
「ちっちゃいからってバカにするなよ!」
 どこからともなく現れた鮫(?)とアイドル(?)によってこてんぱんにされ、再び積み重なる団員たち。最後に、ででんとタイガー(猫)が団員の上に重石代わりとして着地した。ちなみに、この時点で街のエキストラの皆さんは既に騒ぎの振りをやめ、ただの通りすがりの通行人然とした顔で様子をうかがっている。

「ほな、始めよか♪」
 大人しくしていれば痛いことはしないと約束するラプにより、ロープでぐるぐる巻きにされた団員たち。そこへやってきたのは、裏口で待機・監視していた白藤だ。
「うちら、木箱に入っとるお茶っ葉捜しとんのや。今持ってへんみたいやけども、どこ置いてきよったん?」
「隠さずちゃんと教えてね、悪い人は捕食しちゃうよ!」
 寝子が、がおーと噛み付くまねをする。しかし団員には効かなかった!
「きっ、きばこなんて知ら」
 言い返しかけた団員の口を、白藤が人差し指の先でちょんと押さえて黙らせる。
「なぁ知っとる? 足の小指の上に、うちが泉肩車して、ほんで片足立ちしたら……きっとめっちゃイタイねんで?」
 にっこり。
 かくして、恐れをなした団員たちは迅速に事細かに話し始めたのだった。
「木箱は偶然酔っ払いの喧嘩の後に転がってるのを見つけて手に入れたんです……」
「そしたら魔術師協会宛で」
「しかも会長さん宛になってたんで、団長が預かって直接会長さんに渡すってことになって」
「今は団長の部屋に……」

 と、そこまで話したところで、カレンが戻ってきた。小脇に木箱を抱えている。
「案の定、だったわ。団長の部屋にあったわよ」

「やん、カレンてば流石。仕事早過ぎやわぁ、脅し損やー」
 白藤が笑い、団員たちは涙し立ち上がろうとした。
「「「俺たち脅され損ーーー!!」」」
「やかましいで♪」
 すなわち、泉を肩車した白藤のつま先が団員たちの小指の上をほっぷ・すてっぷ・じゃんぷ。団員たちは悶絶、後ろでラプが、約束したのに大人しくしねぇんだぁもんなぁ……とため息をついていた。

●後始末とご褒美
 ハンターたちは盗賊団の家の中を捜索し、盗難品を片っ端から発見。
 見張りに残ったのは泉と寝子、そしてカレン。今は泉が、捕縛されている団員たちの前にどーんと座ってお説教をたれていた。
「団長は悪い人じゃないんすよ、それは確かっす」
「でも、団長のおっちゃん、自分のお話ばっかりなんじゃもん。ジルダの心を忘れてるんじゃもん」
「あー確かに……でも、団長、止まらないしなぁ」
「それでもっ人にメーワクかけちゃ、メッ、なんじゃもん! わるいことしたら止めるのが、仲間なんじゃもんっ!」
「止めるのが、仲間……。うー、言い返す言葉も、無いです……」
 小さなドワーフの前で反省する団員たちだった。

 カレンが監視する中、見つかった荷物と反省しきりの団員たちは一旦依頼人が預かることに。木箱も無事、依頼人の元に戻った。
「『ジェオルジの風』って美味しいのかなー」
 と木箱を渡した寝子が言う。ぐぅ、と鳴るお腹がご褒美のおやつを所望しているようだ。
「ケーキと一緒に飲んでみたいなー!」
「私はただの運送屋ですのでお力になれませんが、商店街で近々飲めるそうですよ」
 ふふ、と笑った依頼人の店長は、木箱を抱いてハンターたちに頭を下げた。
「日もこんなに高いうちに取り戻してくださり、本当にありがとうございました」

 お礼に大衆商店街の一日優待券を渡されたハンターたち。仕事の後ののんびりとしたひとときを、暫し楽しむのであった。

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MVP一覧


  • カレン・ラングフォードka3622

重体一覧

参加者一覧

  • 爛漫なる猫鮫
    鮫島 寝子(ka1658
    人間(蒼)|16才|女性|霊闘士
  • 一夜の灯り
    ラプ・ラムピリカ(ka3369
    ドワーフ|14才|男性|魔術師

  • カレン・ラングフォード(ka3622
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • キラキラ☆アイドル?
    海野 星(ka3735
    エルフ|10才|女性|聖導士
  • もぐもぐ少女
    泉(ka3737
    ドワーフ|10才|女性|霊闘士
  • 天鵞絨ノ空木
    白藤(ka3768
    人間(蒼)|28才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/12/23 01:16:42
アイコン 相談卓
カレン・ラングフォード(ka3622
人間(リアルブルー)|18才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/12/25 23:55:14