ゲスト
(ka0000)
ユニットってなんだろう?
マスター:四月朔日さくら

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~9人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/07/16 19:00
- 完成日
- 2018/07/28 05:43
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
辺境ユニオン「ガーディナ」には、様々な人が訪れる。
いや、ヒトだけではない。
幻獣王やら、ドワーフやらも、やってくる。
最近はとうとう六大龍の幼体までも現れ、珍しい存在がてんこ盛りだ。
しかしその龍の幼体――ヘレは、いまだ幼く、これから様々な知識を吸収していく年のころ。
リムネラとしても、ヘレの豊富な知識欲を満たすことが出来ればと思うのだが、さてどうやったものか……
●
「それなら、ヘレのための勉強会を開きませんか、リムネラさん」
リアルブルー出身の補佐であるジーク・真田はそう言ってにこっと笑って見せた。
「勉強会……?」
リムネラもその言葉に興味を抱いたようで、言葉の続きを暗に促す。
「ええ。ある程度定期的に、いえ無論不定期でもまったく問題ないんですが、ヘレが興味を持ちそうなことをテーマにみんなで話し合ったり、お互いの知らないことを教え合ったりすれば、一石二鳥じゃ無いかと思いまして」
ヘレの知識欲も満たせるし、ハンターたちからの近況を知ることもできる、と言うことらしい。
「とくに最近は情勢が、あっという間に変わってしまったりもしていて、僕らでも把握し切れていないことも多いですからね。そういう意味でも、知というのは財産です」
「確か二、ワタシがいない間にもタクサン事件が起きていたミタイですし……イイかも知れません、ネ」
リムネラはうん、と優しく頷いて、ヘレの鼻面に指を近づける。
「ヘレ、ナニか興味のあるコトはありませんか?」
するとヘレは、
「……ちゅ、だ!」
と舌足らずな声で言い、そして翼を動かした。
「チューダさんのこと、みたいですね……それなら、最近は人間に信頼を置いてくれている幻獣の発見例も多いことですし、ユニットの話題をお願いしませんか? きっと話したいことが多くてうずうずしている人もいると思いますから」
ジークがそういいながら、さらさらとペンを走らせる。
そして、ざっくりとしたたたき台ができあがった。
『一日勉強会の開催。ユニットにまつわる座談会を通じて、お互いのユニットに対する理解を深めるのがコンセプトです』
そのチラシは、翌日にはハンターオフィスに掲載されることとなる――。
辺境ユニオン「ガーディナ」には、様々な人が訪れる。
いや、ヒトだけではない。
幻獣王やら、ドワーフやらも、やってくる。
最近はとうとう六大龍の幼体までも現れ、珍しい存在がてんこ盛りだ。
しかしその龍の幼体――ヘレは、いまだ幼く、これから様々な知識を吸収していく年のころ。
リムネラとしても、ヘレの豊富な知識欲を満たすことが出来ればと思うのだが、さてどうやったものか……
●
「それなら、ヘレのための勉強会を開きませんか、リムネラさん」
リアルブルー出身の補佐であるジーク・真田はそう言ってにこっと笑って見せた。
「勉強会……?」
リムネラもその言葉に興味を抱いたようで、言葉の続きを暗に促す。
「ええ。ある程度定期的に、いえ無論不定期でもまったく問題ないんですが、ヘレが興味を持ちそうなことをテーマにみんなで話し合ったり、お互いの知らないことを教え合ったりすれば、一石二鳥じゃ無いかと思いまして」
ヘレの知識欲も満たせるし、ハンターたちからの近況を知ることもできる、と言うことらしい。
「とくに最近は情勢が、あっという間に変わってしまったりもしていて、僕らでも把握し切れていないことも多いですからね。そういう意味でも、知というのは財産です」
「確か二、ワタシがいない間にもタクサン事件が起きていたミタイですし……イイかも知れません、ネ」
リムネラはうん、と優しく頷いて、ヘレの鼻面に指を近づける。
「ヘレ、ナニか興味のあるコトはありませんか?」
するとヘレは、
「……ちゅ、だ!」
と舌足らずな声で言い、そして翼を動かした。
「チューダさんのこと、みたいですね……それなら、最近は人間に信頼を置いてくれている幻獣の発見例も多いことですし、ユニットの話題をお願いしませんか? きっと話したいことが多くてうずうずしている人もいると思いますから」
ジークがそういいながら、さらさらとペンを走らせる。
そして、ざっくりとしたたたき台ができあがった。
『一日勉強会の開催。ユニットにまつわる座談会を通じて、お互いのユニットに対する理解を深めるのがコンセプトです』
そのチラシは、翌日にはハンターオフィスに掲載されることとなる――。
リプレイ本文
●
リゼリオにも熱い日差しが照りつけるようになって来た、今日この頃。
辺境ユニオン『ガーディナ』は、いつになくざわざわとしていた。
無理もない。
様々なハンターたちの相棒とも言えるユニットが数多く、そこに集結したのだから――。
今日のお茶は、この暑さを踏まえてなのだろうか、アイスグリーンティ。
添えた茶菓子も、目に涼やかな、いわゆる水まんじゅうの類だ。
「ジークが、故郷の夏はコウイウお菓子デスって、教えてくれたんデス」
今日の座談会の主催者である『ガーディナ』リーダーのリムネラはそう言ってにっこり微笑む。
そのリムネラの横には、この春に彼女が龍園まで赴いて来た理由である幼い白龍――ヘレの姿があった。
ヘレがこうやってハンターたちのまえに姿を現すのは、別にこれが初めてというわけではない。それでもハンターたちの視線が何処かわくわくしたものを孕んでいるように感じるのは、ヘレが以前に比べて成長をはたし、そして今回の依頼もヘレのためのものであるから――だ。
『ヘレにもっと知識を与えたい』――
僅かながらも言葉を理解するようになったヘレに、更なる知識を与えるのはリムネラの仕事である。それに共感した、或いは今回のテーマである『ユニットへの相互理解』に理解を示したハンターたちの助力が無論必要なわけだが。リムネラもどちらかといえば世間ずれしていない部分があるため、ハンターたちに手伝っ手もらおうと考えるのは必定というものである。
以前よりも確かに、少しずつ成長をしているヘレ。
このヘレを見て、龍崎・カズマ(ka0178)は思う。
(これが、六大龍ねえ……)
幼い白龍に六大龍らしき威厳は、まだ無い。見た感じ、未就学児童くらいの幼さに見えるが、知識欲は旺盛なのだとリムネラも説明してくれた。
しかしこの幼龍が成長すればいつか青龍のようにりっぱな六大龍としてこの世界の守護者となるのであろう。そう考えると、
(色んな意味で生命の神秘だろ、これ)
そう思うのも無理はなかった。
その横で、ヘレを嬉しそうに見つめているのは辺境巫女の修行経験のある、Uisca Amhran(ka0754)。
ついでに言うとその彼女の横にいるのは、先頃ハンターズソサエティが『ハンターに友好的でユニットとして力を貸してくれることになった』と認めた幻獣・もふらがいる。
もとは東方に棲まっていた稀少な幻獣で、様々な状況でハンターたちが手を尽くしたことが彼らの心を動かしたらしい。
また同時期にソサエティがパートナーユニットとして認定した幻獣にポロウがいる。突然変異で大型化した、モフロウの亜種とも呼べる存在だ。カズマが連れてきているのは、このポロウのラウクである。
ポロウももふらも、まだユニットとして側に置いている人はそれほど多くはない。だから、二人のユニットもまた、ヘレと同じように注目の的であったりするが、本人(及びそのユニット)達はあまり気付いていないようだ。
「そうだよなぁ。オレも自分やそれ以外には詳しくないから、勉強させて貰うつもりで来てるし。今日はよろしくな」
魔導アーマーに渡り鳥の騎士と名付け、今回参加しているのは少女と見まごう見た目をした少年発明家・レオーネ・インヴェトーレ(ka1441)が嬉しそうに周りに挨拶をする。
「嗚呼、見聞を広げるのはいいことだな。白龍への説明だけでなく、自分も学ぶことの出来る良い機会だし。紙に書かれた資料だけでは判らないことも多くあるしな」
ゴシックスーツ「オトラント」をクールに着込んだドワーフのジーナ(ka1643)が、うんうんと頷く。
ただ、むすっと頬を膨らませているのが約一名、もとい約一匹。
言わずと知れた幻獣王(自称)のチューダである。
珍しい幻獣やロボットを目の当たりにして目を輝かせているハンターたちを、チューダは不満そうに見つめている。特にポロウももふらもふかふかのもふもふで、言ってみればチューダの『ライバル』である。そのライバル達に喜んでいるハンターたちを見るのは、正直面白くない。
チューダには何のかんので味方が多いが、それなりに敵(?)もいるのだ。たとえば、
「リムネラ、久しぶりだな! いや……そうでもないのか? まあどちらでもいい、前にも言ったが困ったことがあればいつでも頼ってくれ」
そう言ってうんうんと頷くレイア・アローネ(ka4082)。そしてヘレのほうにも向き直り、わしゃわしゃと撫でてやる。
「おおー、ヘレも大きくなったな! なんだかこういう場で成長を確かめられるのも嬉しいことだ!」
ヘレも撫でられて照れくさそうに頷く。レイアのヘレに対するノリは、まるで会うたびに大きくなったねえと言うおばあちゃんのそれであり、眼差しも優しいが、ひとたびチューダという名前を聞くとレイアの顔が胡乱なものになる。
「ヘレ、チューダはいかんぞ。あんなげっ歯類から得られるものなどなにもない! 幻獣のことを更に知りたいのなら私のワイバーンも紹介するから、な?」
そう言ってリムネラにもうんうんと頷いて見せた。
「――さて、談話はこのくらいにして。そろそろ、本題に入ろうか」
カズマが声を上げると、一同もこくっと頷いた。
●
九人のハンターに、九体のユニット。
九体、と言っても全てが同じような姿をしているわけではない。
幻獣、搭乗して戦うタイプの兵器、移動や輸送を中心としたトラックや馬車といった類の兵器、刻令ゴーレム……
今回は馬車などを連れてきた人はいなかったが、戦闘兵器を連れてきたものも決して少なくない。
学者肌の天央 観智(ka0896)も、同行として連れてきたのはリアルブルーで開発された人型機動兵器『CAM』の一種で自分向けにカスタマイズした魔導型デュミナス射撃戦仕様である。
魔導型、と付いているのは、このCAMの動力源がクリムゾンウェストで開発された魔導エンジンだからである。リアルブルーとクリムゾンウェストの技術の良いところを使ったマシンは、むろん他にも存在する。
(とはいえ、ユニットの勉強会……蛇足と言えば蛇足ですけれど、生身だけで問題の無い幻獣たちとは違い、CAMとかは……武器も、ある程度込みの総体、と考えられますしね)
そんなことをしみじみと思っている。
ちなみにこの勉強会、すべてのユニットが屋内に入れる大きさというわけに行かないので、その多くはユニオンに隣接した庭に置かれている。或いは、そこで待機をしている。
「とりあえず、種類のことを言っていかないとね!」
そう言ってにこっと笑うのは、青い大きな瞳が特徴的な夢路 まよい(ka1328)。小柄な彼女のすぐそばには青紫に白混じりの毛並みと金色の瞳の猫によく似た幻獣ユグディラのトラオムがちょこんと控えている。まよい曰く、まよい自身よりも慎重派の部類らしい。
「ヘレとトラオムは、初対面だったっけ? トラオムはユグディラって言う、最近グラズヘイムでよく見掛けられるようになった猫みたいな幻獣でね。あ、グラズヘイムの説明もした方がいいのかな……って考えていくと、きりが無いね……」
とりあえずは種類がどれくらいあるかを、Uiscaが簡単に説明していく。
「騎乗、搭乗、自律の三種類があって、ユニット全体でも生き物と無機物に分かれるんです。騎乗はハンターを背に乗せて戦い、搭乗はハンターが乗り込むことで一体になり、自律型はハンターと一緒に戦うのが特徴となっています。自律型は支援中心なことが多いですね」
加えて、どの種類が今どのくらい使われているのか。
彼らが調べてきた時点では、
魔導型CAM七種。
魔導アーマー三種。
馬車やトラックといった移動兵器三種。
刻令ゴーレムが二種。
幻獣が八種。
そして今後も新機種の開発や幻獣の発見などがあれば、増える可能性も高いのだという。実際、いままで登場してきたユニットだって、ハンターたちの働きかけが功を奏してきたのだ。
「でもそう考えると随分増えたよなぁ……俺のパートナーはハンターと一番最初に共闘したイェジドだから、みんなもよく知ってるとは思うけどさ」
そういいながら隣に座る大型の狼のような幻獣イェジドの背を優しく撫でているのはボルディア・コンフラムス(ka0796)。イェジドの名前はヴァーミリオン、燃えさかる炎のように真っ赤な毛並みをもつのが特徴だ。
もともとイェジドはかの大幻獣フェンリルの眷属といわれ、フェンリルよりも小型ではあるが人を背に乗せて走ることができる。そしてまた小回りのきく機動力を兼ね備え、鋭い爪と牙はまさに肉食獣のそれを思わせる。
「あと、幻獣は大幻獣と違って、人語を解することがないな。もっとも、意思の疎通は不可能ではないから、言葉が通じないことはたいした問題ではないのかも知れないが」
持参したパイをつまみ、周りにもすすめながら、カズマがそう独りごちた。
「うん。人の言葉は喋れなくても、トラオムは幻術でイメージを相手に伝えたりは出来るんだよ」
まよいもそう言ってにっこりと笑って見せた。
「あと、多くの幻獣さんたちはとても大事な特徴を持っていますよ!」
Uiscaは嬉しそうにそう言ってみせる。そして脇にいるもふらを撫でながら、
「ユニットにももふれるものともふれないものが存在するのです!」
そう強調して言ってみせる。
「なっ、我輩だってもふれる存在でありますよ!?」
チューダのぷりぷりした雰囲気の言葉に、Uiscaは一瞬目を丸くさせた。なによりチューダの目が妙にすわっている。そもそもチューダはもふもふと可愛がられるのは自分最優先なタイプでもあるから、その反応は推して知るべし、だったのだが。
「あ、つまり……ユニットとして登録されるには、新たな機体を開発するか、新たな幻獣さんを保護するか、しないといけないのですけれど」
そう言って、先日のもふらの発見とそのユニット登録に至るまでの過程を語りはじめる。むろんそれは彼女だけの手柄ではないのだが、どうしても欲目というものが出てしまうのだろう。
「こうして仲良くなってユニットになったのがもふ様なのです」
そう言うと、自分のもふらをもふもふ。
「まだ戦闘には連れて行きませんけれどね、こんな可愛いもふ様に戦闘だなんて……でもいつか成長して強くなったらいっしょに戦うのです。絆を強めるためにも、もふっているんですよ」
絆を結んだハンターが世話をしたり整備をしたりすることで、ユニットは成長できるのだと添えた。
と、ふむ、と頷いたものがいる。
「そうですね……無論それはユニットというものを知るのに大切ですけれど……少し脱線しますが、リアルブルーのCAMを紹介ついでに、こちらとあちらの、武器などの発展史の違いみたいなものにも……少し目を向けてみましょうか」
観智がにこっと微笑んだ。
●
テルルさんならこういう話題も喜んだのでしょうけど、と添えつつ、観智が説明をはじめる。
「最近はより新型も出てきて……すっかり旧式化してしまいましたけれど、これもかつては主力機だったんですよ」
デュミナスを見つめる観智の目は、やさしい。
「クリムゾンウェストとリアルブルーの歴史の違い……それは歪虚の脅威と、魔法の有無です。リアルブルーでは魔法は伝承に過ぎず、歪虚の脅威が表舞台に現れたのもつい最近。リアルブルーは人類共通の脅威たる歪虚がいなかったせいでしょうか、獣の脅威を退けた後は人同士で覇権を争うようになり、武装もそれに合わせて進化していきました」
結果として進化したのは索敵能力や射程距離の優位性など。
「その一方で、クリムゾンウェストは歪虚や雑魔という脅威から身を守ることを最優先に考えました。人は群れるより、個として強くなる方向性へ進み、武器もそう言うものが扱う前提で、怪物と戦うという方向性で進化しました。だから近距離戦に強いのはこちらの武器です」
けれどリアルブルーでトマーゾ博士が影響力を持つようになってからは、エバーグリーンでの歪虚やオートマトンといった存在の件もあり、誘導兵器、或いは武器の自立性などについての制限が発生し――
「リアルブルーの武器も少しずつ変化していきました。射程距離の減衰など、ですね」
噛み砕いての説明ではあったがリムネラにはまだちんぷんかんぷんの部分も多く、傍で同じく聞いていたジークにあとで詳しく聞く必要がありそうだった。
逆に眼をきらきらと輝かせていたのはレオーネで、ふむふむと嬉しそうに聞いた話をメモしていく。技術肌と言うだけあって、こういう話題は観智とも共通言語になりやすいのだろう。
「そういえば、魔導アーマーに関してはオレも一家言あるんだぜ」
プラヴァータイプの共同開発者兼名付け親であり、ビルドムーバー/ビルドアーマータイプの共同開発者でもあるレオーネは、魔導アーマー遣いのなかでは比較的名の知れた存在である。そんな彼が今回参加しているのも僥倖と言えた。
「今回は帝国ユニオンから失礼するぜ。お察しの通り、オレの説明は主に魔導アーマーについてだ」
そういいながら、魔導カメラでの写真を持ってきてみせる。それには三種類の魔導アーマーが写っていた。
「辺境のユニット事件についても聞いているし、助けになればと思う。まず魔導アーマーの長所とも短所とも言えるのは、一言で言って『人間の能力拡張』だ」
非覚醒者向けの量産型にそれはとくに顕著なのだという。
「だけど、覚醒者専用のヘイムダルやプラヴァーも、基本理念は変わらないんだ。だから、純戦闘力では劣るけれど、人間と近いサイズと感覚で扱うことが出来る……リアルブルーで言う、パワードスーツのような手軽さは、ほかには無い利点だと思うぜ」
そう言うと自分のことのように嬉しそうに笑う。
「とくにプラヴァーについては不整地でも幻獣に随伴できるだけの機動性や、広範囲で生物を探知するマテリアルレーダーなんてものもある。自分が関わったってのもあるけど……辺境では戦闘以外でも役立つはずだ」
確かに辺境は、いわゆるインフラの整備が他の地域に比べても遅れている。
プラヴァーも乗りこなすジーナにとっては随分興味深い話に聞こえているようだ。もっとも、今回同行しているユニットはプラヴァータイプではない。魔導型デュミナスのバレルである。すっと立ち上がると、外へと皆を案内した。
バレルは全身に追加フレームとマント型シールドを纏い、背中にレーダーを装備している。更に両手にはプラズマライフルとハンドガンを持ち、いかにも重武装という様子だ。
「識別名称はバレル。個人用に改装しているが、今回は一番良く使う仕様で持ってきた」
そう言うと、ジーナはそっと目を細める。『デュミナス』についてを語るなら素体に近い方が良いだろうが、今回は自分のユニットを、と言うことで『愛機』のフル装備、ベストコンディションで持ってきた、と言うわけだ。その装備はドワーフながら冷静な性格だったりと言うジーナの特徴に相応しいとも言える。
「先に言っておくが、やることが明確なら派生機や他の新型を私は勧めるぞ。私がバレルに求めているのは柔軟な射撃と対応、そして戦場からの帰還だからな」
依頼や戦闘状況に応じて武装の切り替えをしたり、生存率を上げるためにシールドの併用をしたりと、らしい対策が数多くある。
そしてそれらの条件を満たすには、武器や装備なら三種類を同時に装備できる環境、そして状況に対応する射撃攻撃スキルが必要だろうと付け加えた。
「ふむ。ジーナさんのデュミナスはよくメンテナンスも行き届いていて、使い勝手も良さそうだ。ちゃんといろんな状況での対応パターンも考えられているみたいだしね」
レオーネも感心しきり。
「褒めていただいてありがとう。あとは全身の追加フレームやマント状に展開可能なシールド、それに魔導レーダーなども大事だな」
基本的にユニットが投入されるような戦場は、通常の戦場よりも過酷であることが多い。そこで無事に生還できるようにするには、防御手段や情報収集手段も欠かすことはできない。
「この期待は私の主義だ。機体の長所を伸ばしつつ、『頑丈で扱いやすく、信頼性の高いものを重視する』という一点張りだ」
そう言いつつも、ジーナの顔はほんのり自慢げに綻んでいた。
●
「にしても、ユニット、ですか……私の仲間は刻令ゴーレム「Gnome」とユグディラとR7エクスシアですけれど……私にとってのユニットという存在は、あと一手、なにか必要な時にそのなにかを埋めてくれるもの、とでも言えばいいでしょうか」
そう言ってむむむ、と眉根を寄せるのは穂積 智里(ka6819)、今回唯一刻令ゴーレムを連れてきている。
「ユグディラはかわいくて癒しですけれど、大型ユニットを持ち込めない場所での回復や立て直しを図る手番の欲しい時にそれをしてくれます。エクスシアは宇宙空間や多少の空中、生身でいくには困難な場所で精神汚染されずに戦うために力を貸してくれますし。Gnomeは整地をしたりはね飛ばしたり、陣地構築に特化しています。……そのなかでも特に思い入れのあるのは……このGnomeですね」
そう言って智里はゴーレムさんと名付けた刻令ゴーレムをそっと見上げる。
「その頃、いつかR7を借りようと思っていたので魔導アーマーは借りたいとは思わなくて。そして借りてから騎乗できないことに気が付いて、砲弾の嵐の中コントローラー片手に走ってついて行ったり、適切な武器防具があまりなくて困惑したりと、正しい運用方法が分からなくて一番苦労しましたから」
そう言いつつ懐かしそうな顔を浮かべている。苦労はあったが今は思い出となっているのだろう。
「無論、必要に迫られて他のユニット……幻獣などを借りたこともありましたけど、一回借りたきりで育てもせず返却してしまいました。ユグディラは猫過ぎて癒しの別格過ぎて外せませんけれど……多分私は機械系ユニットの方が相性がいい人間なんじゃないかと思います……ユニットに【使う】という意識を持ってるので」
そう、ユニットに対する認識は人それぞれだ。仲間意識を持っている人もいればペットに近い認識を持っている人もいるだろうし、智里のように使役に近い認識を抱いている人もいる。
ふむふむ、と全員が納得するように頷けば、智里も微笑んで頷いた。
「そして結局このGnomeが一番なのは、戦闘にもですけど、それ以外に使える技能が多いからじゃないかと思います。壁を立て整地をし、邪魔なものを押しのけごはんの提供もする……戦闘だけに使おうとしたら、これほど使いにくい構成のユニットもそう無いんじゃ無いかと思います。有効活用で消え入るとは言いがたいですけれど、私は多分、この面倒くささが好きなんです」
それは言ってみれば、手のかかる子ほど可愛いというものなのかもしれない。
「そう言えば幻獣の話はまだそれほど出ていなかったな。もしヘレが知りたいのなら、私のワイバーンとかはどうだ? こいつとはまだ短い付き合いだが、ともに死線をくぐり抜けている相棒だ」
レイアが笑顔を浮かべながら、自分のワイバーンを嬉しそうに紹介する。
「正直、背に乗っての空中戦は安定しなくて苦労も多いのだが、そこもやり甲斐があるというか……文字通り、背中を預けてくれる相手なのでな。こいつもヘレみたいになりたいと言っているようだし」
ワイバーンは青龍の眷属で、間違いなく龍として扱われる幻獣だ。ヘレは次代の白龍とされているから、立場のようなものに差異はあろうが、同じ龍と呼ばれる存在なのは確かである。
「ソウ言えば、このワイバーンに名前はあるのデスカ?」
ふと気になったリムネラが尋ねる。するとレイアは「あ」と小さく声を上げ、
「名前……名前、か……」
と小さく唸った。どうやら名付けが苦手でこれまでつけていなかったらしい。必要であるとは思いつつ、ここまでなあなあにしてしまったと言うことのようだった。
「なあリムネラはどう思う? なにかいい名前はないだろうか?」
「そうデスね……でも、ワタシがつけるヨリ、主に名前をモラウのが、キットワイバーンも喜ぶと思いマスよ?」
「……そうか、そうかも知れないな……」
「ふふん、我輩が考えてやっても良いのでありますよ?」
リムネラの言葉に納得しかけたレイアに、茶々を入れるチューダ。勿論冷ややかな眼差しでスルーされてしまったが。
(ううー、やはり、最近我輩、マスコットの座が危ういのでありましょうか……!?)
チューダ的にはそこがネックらしい。最近の、とくにもふらの妙な人気がチューダ的には非常に気になるのだ。Uiscaのもふらをきっと睨み付け、頬袋を膨らませている。
「トラオムはね、ちょっと臆病だけど、お歌がとっても上手なんだ! 実際にやって、ヘレに聞かせてあげて貰おうかな?」
まよいも嬉しそうに幻獣談義に加わり、後ろからはトラオムが少し照れくさそうに、でも伸びやかな声でリュートを奏で歌い始める。ヘレもその歌を聞き入りながら、身体を少しゆらして楽しそうだ。
ボルディアも、幻獣の話題とみて割って入ってくる。
「かっこよさならイェジドも負けちゃいないぜ。これだけたくさんのユニットが配備されても、四足歩行はイェジドだけだからな! ……もふらは確かに四足歩行だが、ちょっと違わねえかと思うし」
確かに四足歩行の騎乗ユニットはいまだにイェジドだけであることを考えれば、凄いことなのだろう。もふらには基本、騎乗しないのだから。
「ま、とにかく。四足ってのは二本足より安定性が抜群、つまり足場の悪いところでも存分に戦えるってことだ!」
ヴァーミリオンの毛を優しく撫でながら、ボルディアは胸を張った。
「あとはなにより毛がもふもふってことだ。いや、別にもふらに喧嘩を売ってるわけじゃなくて……もふらももふもふなのは俺のところにもいるから分かってる、抱きごこちの良さとか。だがイェジドの場合、抱くんじゃなく、逆に毛皮に包まれることができる! 悪いことは言わないから、イェジドに寄りかかって昼寝してみろ。もう、最高だぜ?」
どうやらイェジドともふらの間にあるのは深い溝のようだ。
「うちのラウクはまだそこまで長い付き合いじゃないが……ファーストコンタクトが結構特徴的だったんだ……」
そんな話題の新種の一つ・ポロウを連れてきたカズマは遠い目をする。
(まさかイェジドが朝起きたらなにか捕まえてきていた、なんて言うのは、なあ……)
いろんな意味でショッキングなそのファーストコンタクトは敢えて秘め。
「でも、ラウクについては、いまは割と風呂好きだな。どうも土埃とかを落とすのが好きなようでな……日向ぼっこも好きらしいが、この時期はむしろ室内にいることも多い」
まだ登録されて間もないポロウの話を聞けるとあって皆興味津々。
「最近は水浴びもしょっちゅうだな。暑さ対策も兼ねているかも知れないが……食事については、結構自由にさせてるんだが、たまに「これくれ」みたいなかんじで肉をもらいに来る。肉食なんだろうな、多分」
まだまだ生態の明らかでない幻獣の生態を知るのは面白いものだ。メモを取っている者もいる。
「寝る時は帽子かけとか、屋内にある木製の枝状のものに捉まって寝たり……修正っぽいな。同種と思っているのか、フクロウやモフロウには挨拶とかを積極的にしているみたいだし、仲間意識も強そうだ。たまに伝えるホーで、お土産についての要望があったりな? あとは悪戯をすると隠れるホーで隠れてる。まあ見つけるが……」
カズマが説明をすると、周囲からはクスクスと笑いがこみあがる。しかし、そう言う経験も大切な知識に違いないのだ。
●
あらかた話し終わると、あとはちょっとしたティパーティのような様相を呈していた。ユニットに料理を作らせたり、もともと持ってきていた菓子を提供したり。
相変わらずチューダはぷりぷりしながら菓子をもぐもぐしているが、頬袋をぷくぷくさせているのはいつものことなので分かりにくいようだ。
「ヘレ、今日の勉強会はドウでしたか?」
リムネラがそっと尋ねると、ヘレは翼をはためかせながら、んー、となにやら考えていた。それから、
「ゆでぃら、ごー、む、ぽろ、みなす……」
と、小さな指でそれぞれを差しながら発声して見せた。
「うん、少しずつ覚えてるみたいですね」
Uiscaが嬉しそうに頷く。
「デモ、マダこれからです。もっとタクサンのことを、覚えないと、ネ」
「うー!」
リムネラが言えば、ヘレも相槌のように唸る。
そう、一歩ずつ。
それが、成長への道なのだから。
リゼリオにも熱い日差しが照りつけるようになって来た、今日この頃。
辺境ユニオン『ガーディナ』は、いつになくざわざわとしていた。
無理もない。
様々なハンターたちの相棒とも言えるユニットが数多く、そこに集結したのだから――。
今日のお茶は、この暑さを踏まえてなのだろうか、アイスグリーンティ。
添えた茶菓子も、目に涼やかな、いわゆる水まんじゅうの類だ。
「ジークが、故郷の夏はコウイウお菓子デスって、教えてくれたんデス」
今日の座談会の主催者である『ガーディナ』リーダーのリムネラはそう言ってにっこり微笑む。
そのリムネラの横には、この春に彼女が龍園まで赴いて来た理由である幼い白龍――ヘレの姿があった。
ヘレがこうやってハンターたちのまえに姿を現すのは、別にこれが初めてというわけではない。それでもハンターたちの視線が何処かわくわくしたものを孕んでいるように感じるのは、ヘレが以前に比べて成長をはたし、そして今回の依頼もヘレのためのものであるから――だ。
『ヘレにもっと知識を与えたい』――
僅かながらも言葉を理解するようになったヘレに、更なる知識を与えるのはリムネラの仕事である。それに共感した、或いは今回のテーマである『ユニットへの相互理解』に理解を示したハンターたちの助力が無論必要なわけだが。リムネラもどちらかといえば世間ずれしていない部分があるため、ハンターたちに手伝っ手もらおうと考えるのは必定というものである。
以前よりも確かに、少しずつ成長をしているヘレ。
このヘレを見て、龍崎・カズマ(ka0178)は思う。
(これが、六大龍ねえ……)
幼い白龍に六大龍らしき威厳は、まだ無い。見た感じ、未就学児童くらいの幼さに見えるが、知識欲は旺盛なのだとリムネラも説明してくれた。
しかしこの幼龍が成長すればいつか青龍のようにりっぱな六大龍としてこの世界の守護者となるのであろう。そう考えると、
(色んな意味で生命の神秘だろ、これ)
そう思うのも無理はなかった。
その横で、ヘレを嬉しそうに見つめているのは辺境巫女の修行経験のある、Uisca Amhran(ka0754)。
ついでに言うとその彼女の横にいるのは、先頃ハンターズソサエティが『ハンターに友好的でユニットとして力を貸してくれることになった』と認めた幻獣・もふらがいる。
もとは東方に棲まっていた稀少な幻獣で、様々な状況でハンターたちが手を尽くしたことが彼らの心を動かしたらしい。
また同時期にソサエティがパートナーユニットとして認定した幻獣にポロウがいる。突然変異で大型化した、モフロウの亜種とも呼べる存在だ。カズマが連れてきているのは、このポロウのラウクである。
ポロウももふらも、まだユニットとして側に置いている人はそれほど多くはない。だから、二人のユニットもまた、ヘレと同じように注目の的であったりするが、本人(及びそのユニット)達はあまり気付いていないようだ。
「そうだよなぁ。オレも自分やそれ以外には詳しくないから、勉強させて貰うつもりで来てるし。今日はよろしくな」
魔導アーマーに渡り鳥の騎士と名付け、今回参加しているのは少女と見まごう見た目をした少年発明家・レオーネ・インヴェトーレ(ka1441)が嬉しそうに周りに挨拶をする。
「嗚呼、見聞を広げるのはいいことだな。白龍への説明だけでなく、自分も学ぶことの出来る良い機会だし。紙に書かれた資料だけでは判らないことも多くあるしな」
ゴシックスーツ「オトラント」をクールに着込んだドワーフのジーナ(ka1643)が、うんうんと頷く。
ただ、むすっと頬を膨らませているのが約一名、もとい約一匹。
言わずと知れた幻獣王(自称)のチューダである。
珍しい幻獣やロボットを目の当たりにして目を輝かせているハンターたちを、チューダは不満そうに見つめている。特にポロウももふらもふかふかのもふもふで、言ってみればチューダの『ライバル』である。そのライバル達に喜んでいるハンターたちを見るのは、正直面白くない。
チューダには何のかんので味方が多いが、それなりに敵(?)もいるのだ。たとえば、
「リムネラ、久しぶりだな! いや……そうでもないのか? まあどちらでもいい、前にも言ったが困ったことがあればいつでも頼ってくれ」
そう言ってうんうんと頷くレイア・アローネ(ka4082)。そしてヘレのほうにも向き直り、わしゃわしゃと撫でてやる。
「おおー、ヘレも大きくなったな! なんだかこういう場で成長を確かめられるのも嬉しいことだ!」
ヘレも撫でられて照れくさそうに頷く。レイアのヘレに対するノリは、まるで会うたびに大きくなったねえと言うおばあちゃんのそれであり、眼差しも優しいが、ひとたびチューダという名前を聞くとレイアの顔が胡乱なものになる。
「ヘレ、チューダはいかんぞ。あんなげっ歯類から得られるものなどなにもない! 幻獣のことを更に知りたいのなら私のワイバーンも紹介するから、な?」
そう言ってリムネラにもうんうんと頷いて見せた。
「――さて、談話はこのくらいにして。そろそろ、本題に入ろうか」
カズマが声を上げると、一同もこくっと頷いた。
●
九人のハンターに、九体のユニット。
九体、と言っても全てが同じような姿をしているわけではない。
幻獣、搭乗して戦うタイプの兵器、移動や輸送を中心としたトラックや馬車といった類の兵器、刻令ゴーレム……
今回は馬車などを連れてきた人はいなかったが、戦闘兵器を連れてきたものも決して少なくない。
学者肌の天央 観智(ka0896)も、同行として連れてきたのはリアルブルーで開発された人型機動兵器『CAM』の一種で自分向けにカスタマイズした魔導型デュミナス射撃戦仕様である。
魔導型、と付いているのは、このCAMの動力源がクリムゾンウェストで開発された魔導エンジンだからである。リアルブルーとクリムゾンウェストの技術の良いところを使ったマシンは、むろん他にも存在する。
(とはいえ、ユニットの勉強会……蛇足と言えば蛇足ですけれど、生身だけで問題の無い幻獣たちとは違い、CAMとかは……武器も、ある程度込みの総体、と考えられますしね)
そんなことをしみじみと思っている。
ちなみにこの勉強会、すべてのユニットが屋内に入れる大きさというわけに行かないので、その多くはユニオンに隣接した庭に置かれている。或いは、そこで待機をしている。
「とりあえず、種類のことを言っていかないとね!」
そう言ってにこっと笑うのは、青い大きな瞳が特徴的な夢路 まよい(ka1328)。小柄な彼女のすぐそばには青紫に白混じりの毛並みと金色の瞳の猫によく似た幻獣ユグディラのトラオムがちょこんと控えている。まよい曰く、まよい自身よりも慎重派の部類らしい。
「ヘレとトラオムは、初対面だったっけ? トラオムはユグディラって言う、最近グラズヘイムでよく見掛けられるようになった猫みたいな幻獣でね。あ、グラズヘイムの説明もした方がいいのかな……って考えていくと、きりが無いね……」
とりあえずは種類がどれくらいあるかを、Uiscaが簡単に説明していく。
「騎乗、搭乗、自律の三種類があって、ユニット全体でも生き物と無機物に分かれるんです。騎乗はハンターを背に乗せて戦い、搭乗はハンターが乗り込むことで一体になり、自律型はハンターと一緒に戦うのが特徴となっています。自律型は支援中心なことが多いですね」
加えて、どの種類が今どのくらい使われているのか。
彼らが調べてきた時点では、
魔導型CAM七種。
魔導アーマー三種。
馬車やトラックといった移動兵器三種。
刻令ゴーレムが二種。
幻獣が八種。
そして今後も新機種の開発や幻獣の発見などがあれば、増える可能性も高いのだという。実際、いままで登場してきたユニットだって、ハンターたちの働きかけが功を奏してきたのだ。
「でもそう考えると随分増えたよなぁ……俺のパートナーはハンターと一番最初に共闘したイェジドだから、みんなもよく知ってるとは思うけどさ」
そういいながら隣に座る大型の狼のような幻獣イェジドの背を優しく撫でているのはボルディア・コンフラムス(ka0796)。イェジドの名前はヴァーミリオン、燃えさかる炎のように真っ赤な毛並みをもつのが特徴だ。
もともとイェジドはかの大幻獣フェンリルの眷属といわれ、フェンリルよりも小型ではあるが人を背に乗せて走ることができる。そしてまた小回りのきく機動力を兼ね備え、鋭い爪と牙はまさに肉食獣のそれを思わせる。
「あと、幻獣は大幻獣と違って、人語を解することがないな。もっとも、意思の疎通は不可能ではないから、言葉が通じないことはたいした問題ではないのかも知れないが」
持参したパイをつまみ、周りにもすすめながら、カズマがそう独りごちた。
「うん。人の言葉は喋れなくても、トラオムは幻術でイメージを相手に伝えたりは出来るんだよ」
まよいもそう言ってにっこりと笑って見せた。
「あと、多くの幻獣さんたちはとても大事な特徴を持っていますよ!」
Uiscaは嬉しそうにそう言ってみせる。そして脇にいるもふらを撫でながら、
「ユニットにももふれるものともふれないものが存在するのです!」
そう強調して言ってみせる。
「なっ、我輩だってもふれる存在でありますよ!?」
チューダのぷりぷりした雰囲気の言葉に、Uiscaは一瞬目を丸くさせた。なによりチューダの目が妙にすわっている。そもそもチューダはもふもふと可愛がられるのは自分最優先なタイプでもあるから、その反応は推して知るべし、だったのだが。
「あ、つまり……ユニットとして登録されるには、新たな機体を開発するか、新たな幻獣さんを保護するか、しないといけないのですけれど」
そう言って、先日のもふらの発見とそのユニット登録に至るまでの過程を語りはじめる。むろんそれは彼女だけの手柄ではないのだが、どうしても欲目というものが出てしまうのだろう。
「こうして仲良くなってユニットになったのがもふ様なのです」
そう言うと、自分のもふらをもふもふ。
「まだ戦闘には連れて行きませんけれどね、こんな可愛いもふ様に戦闘だなんて……でもいつか成長して強くなったらいっしょに戦うのです。絆を強めるためにも、もふっているんですよ」
絆を結んだハンターが世話をしたり整備をしたりすることで、ユニットは成長できるのだと添えた。
と、ふむ、と頷いたものがいる。
「そうですね……無論それはユニットというものを知るのに大切ですけれど……少し脱線しますが、リアルブルーのCAMを紹介ついでに、こちらとあちらの、武器などの発展史の違いみたいなものにも……少し目を向けてみましょうか」
観智がにこっと微笑んだ。
●
テルルさんならこういう話題も喜んだのでしょうけど、と添えつつ、観智が説明をはじめる。
「最近はより新型も出てきて……すっかり旧式化してしまいましたけれど、これもかつては主力機だったんですよ」
デュミナスを見つめる観智の目は、やさしい。
「クリムゾンウェストとリアルブルーの歴史の違い……それは歪虚の脅威と、魔法の有無です。リアルブルーでは魔法は伝承に過ぎず、歪虚の脅威が表舞台に現れたのもつい最近。リアルブルーは人類共通の脅威たる歪虚がいなかったせいでしょうか、獣の脅威を退けた後は人同士で覇権を争うようになり、武装もそれに合わせて進化していきました」
結果として進化したのは索敵能力や射程距離の優位性など。
「その一方で、クリムゾンウェストは歪虚や雑魔という脅威から身を守ることを最優先に考えました。人は群れるより、個として強くなる方向性へ進み、武器もそう言うものが扱う前提で、怪物と戦うという方向性で進化しました。だから近距離戦に強いのはこちらの武器です」
けれどリアルブルーでトマーゾ博士が影響力を持つようになってからは、エバーグリーンでの歪虚やオートマトンといった存在の件もあり、誘導兵器、或いは武器の自立性などについての制限が発生し――
「リアルブルーの武器も少しずつ変化していきました。射程距離の減衰など、ですね」
噛み砕いての説明ではあったがリムネラにはまだちんぷんかんぷんの部分も多く、傍で同じく聞いていたジークにあとで詳しく聞く必要がありそうだった。
逆に眼をきらきらと輝かせていたのはレオーネで、ふむふむと嬉しそうに聞いた話をメモしていく。技術肌と言うだけあって、こういう話題は観智とも共通言語になりやすいのだろう。
「そういえば、魔導アーマーに関してはオレも一家言あるんだぜ」
プラヴァータイプの共同開発者兼名付け親であり、ビルドムーバー/ビルドアーマータイプの共同開発者でもあるレオーネは、魔導アーマー遣いのなかでは比較的名の知れた存在である。そんな彼が今回参加しているのも僥倖と言えた。
「今回は帝国ユニオンから失礼するぜ。お察しの通り、オレの説明は主に魔導アーマーについてだ」
そういいながら、魔導カメラでの写真を持ってきてみせる。それには三種類の魔導アーマーが写っていた。
「辺境のユニット事件についても聞いているし、助けになればと思う。まず魔導アーマーの長所とも短所とも言えるのは、一言で言って『人間の能力拡張』だ」
非覚醒者向けの量産型にそれはとくに顕著なのだという。
「だけど、覚醒者専用のヘイムダルやプラヴァーも、基本理念は変わらないんだ。だから、純戦闘力では劣るけれど、人間と近いサイズと感覚で扱うことが出来る……リアルブルーで言う、パワードスーツのような手軽さは、ほかには無い利点だと思うぜ」
そう言うと自分のことのように嬉しそうに笑う。
「とくにプラヴァーについては不整地でも幻獣に随伴できるだけの機動性や、広範囲で生物を探知するマテリアルレーダーなんてものもある。自分が関わったってのもあるけど……辺境では戦闘以外でも役立つはずだ」
確かに辺境は、いわゆるインフラの整備が他の地域に比べても遅れている。
プラヴァーも乗りこなすジーナにとっては随分興味深い話に聞こえているようだ。もっとも、今回同行しているユニットはプラヴァータイプではない。魔導型デュミナスのバレルである。すっと立ち上がると、外へと皆を案内した。
バレルは全身に追加フレームとマント型シールドを纏い、背中にレーダーを装備している。更に両手にはプラズマライフルとハンドガンを持ち、いかにも重武装という様子だ。
「識別名称はバレル。個人用に改装しているが、今回は一番良く使う仕様で持ってきた」
そう言うと、ジーナはそっと目を細める。『デュミナス』についてを語るなら素体に近い方が良いだろうが、今回は自分のユニットを、と言うことで『愛機』のフル装備、ベストコンディションで持ってきた、と言うわけだ。その装備はドワーフながら冷静な性格だったりと言うジーナの特徴に相応しいとも言える。
「先に言っておくが、やることが明確なら派生機や他の新型を私は勧めるぞ。私がバレルに求めているのは柔軟な射撃と対応、そして戦場からの帰還だからな」
依頼や戦闘状況に応じて武装の切り替えをしたり、生存率を上げるためにシールドの併用をしたりと、らしい対策が数多くある。
そしてそれらの条件を満たすには、武器や装備なら三種類を同時に装備できる環境、そして状況に対応する射撃攻撃スキルが必要だろうと付け加えた。
「ふむ。ジーナさんのデュミナスはよくメンテナンスも行き届いていて、使い勝手も良さそうだ。ちゃんといろんな状況での対応パターンも考えられているみたいだしね」
レオーネも感心しきり。
「褒めていただいてありがとう。あとは全身の追加フレームやマント状に展開可能なシールド、それに魔導レーダーなども大事だな」
基本的にユニットが投入されるような戦場は、通常の戦場よりも過酷であることが多い。そこで無事に生還できるようにするには、防御手段や情報収集手段も欠かすことはできない。
「この期待は私の主義だ。機体の長所を伸ばしつつ、『頑丈で扱いやすく、信頼性の高いものを重視する』という一点張りだ」
そう言いつつも、ジーナの顔はほんのり自慢げに綻んでいた。
●
「にしても、ユニット、ですか……私の仲間は刻令ゴーレム「Gnome」とユグディラとR7エクスシアですけれど……私にとってのユニットという存在は、あと一手、なにか必要な時にそのなにかを埋めてくれるもの、とでも言えばいいでしょうか」
そう言ってむむむ、と眉根を寄せるのは穂積 智里(ka6819)、今回唯一刻令ゴーレムを連れてきている。
「ユグディラはかわいくて癒しですけれど、大型ユニットを持ち込めない場所での回復や立て直しを図る手番の欲しい時にそれをしてくれます。エクスシアは宇宙空間や多少の空中、生身でいくには困難な場所で精神汚染されずに戦うために力を貸してくれますし。Gnomeは整地をしたりはね飛ばしたり、陣地構築に特化しています。……そのなかでも特に思い入れのあるのは……このGnomeですね」
そう言って智里はゴーレムさんと名付けた刻令ゴーレムをそっと見上げる。
「その頃、いつかR7を借りようと思っていたので魔導アーマーは借りたいとは思わなくて。そして借りてから騎乗できないことに気が付いて、砲弾の嵐の中コントローラー片手に走ってついて行ったり、適切な武器防具があまりなくて困惑したりと、正しい運用方法が分からなくて一番苦労しましたから」
そう言いつつ懐かしそうな顔を浮かべている。苦労はあったが今は思い出となっているのだろう。
「無論、必要に迫られて他のユニット……幻獣などを借りたこともありましたけど、一回借りたきりで育てもせず返却してしまいました。ユグディラは猫過ぎて癒しの別格過ぎて外せませんけれど……多分私は機械系ユニットの方が相性がいい人間なんじゃないかと思います……ユニットに【使う】という意識を持ってるので」
そう、ユニットに対する認識は人それぞれだ。仲間意識を持っている人もいればペットに近い認識を持っている人もいるだろうし、智里のように使役に近い認識を抱いている人もいる。
ふむふむ、と全員が納得するように頷けば、智里も微笑んで頷いた。
「そして結局このGnomeが一番なのは、戦闘にもですけど、それ以外に使える技能が多いからじゃないかと思います。壁を立て整地をし、邪魔なものを押しのけごはんの提供もする……戦闘だけに使おうとしたら、これほど使いにくい構成のユニットもそう無いんじゃ無いかと思います。有効活用で消え入るとは言いがたいですけれど、私は多分、この面倒くささが好きなんです」
それは言ってみれば、手のかかる子ほど可愛いというものなのかもしれない。
「そう言えば幻獣の話はまだそれほど出ていなかったな。もしヘレが知りたいのなら、私のワイバーンとかはどうだ? こいつとはまだ短い付き合いだが、ともに死線をくぐり抜けている相棒だ」
レイアが笑顔を浮かべながら、自分のワイバーンを嬉しそうに紹介する。
「正直、背に乗っての空中戦は安定しなくて苦労も多いのだが、そこもやり甲斐があるというか……文字通り、背中を預けてくれる相手なのでな。こいつもヘレみたいになりたいと言っているようだし」
ワイバーンは青龍の眷属で、間違いなく龍として扱われる幻獣だ。ヘレは次代の白龍とされているから、立場のようなものに差異はあろうが、同じ龍と呼ばれる存在なのは確かである。
「ソウ言えば、このワイバーンに名前はあるのデスカ?」
ふと気になったリムネラが尋ねる。するとレイアは「あ」と小さく声を上げ、
「名前……名前、か……」
と小さく唸った。どうやら名付けが苦手でこれまでつけていなかったらしい。必要であるとは思いつつ、ここまでなあなあにしてしまったと言うことのようだった。
「なあリムネラはどう思う? なにかいい名前はないだろうか?」
「そうデスね……でも、ワタシがつけるヨリ、主に名前をモラウのが、キットワイバーンも喜ぶと思いマスよ?」
「……そうか、そうかも知れないな……」
「ふふん、我輩が考えてやっても良いのでありますよ?」
リムネラの言葉に納得しかけたレイアに、茶々を入れるチューダ。勿論冷ややかな眼差しでスルーされてしまったが。
(ううー、やはり、最近我輩、マスコットの座が危ういのでありましょうか……!?)
チューダ的にはそこがネックらしい。最近の、とくにもふらの妙な人気がチューダ的には非常に気になるのだ。Uiscaのもふらをきっと睨み付け、頬袋を膨らませている。
「トラオムはね、ちょっと臆病だけど、お歌がとっても上手なんだ! 実際にやって、ヘレに聞かせてあげて貰おうかな?」
まよいも嬉しそうに幻獣談義に加わり、後ろからはトラオムが少し照れくさそうに、でも伸びやかな声でリュートを奏で歌い始める。ヘレもその歌を聞き入りながら、身体を少しゆらして楽しそうだ。
ボルディアも、幻獣の話題とみて割って入ってくる。
「かっこよさならイェジドも負けちゃいないぜ。これだけたくさんのユニットが配備されても、四足歩行はイェジドだけだからな! ……もふらは確かに四足歩行だが、ちょっと違わねえかと思うし」
確かに四足歩行の騎乗ユニットはいまだにイェジドだけであることを考えれば、凄いことなのだろう。もふらには基本、騎乗しないのだから。
「ま、とにかく。四足ってのは二本足より安定性が抜群、つまり足場の悪いところでも存分に戦えるってことだ!」
ヴァーミリオンの毛を優しく撫でながら、ボルディアは胸を張った。
「あとはなにより毛がもふもふってことだ。いや、別にもふらに喧嘩を売ってるわけじゃなくて……もふらももふもふなのは俺のところにもいるから分かってる、抱きごこちの良さとか。だがイェジドの場合、抱くんじゃなく、逆に毛皮に包まれることができる! 悪いことは言わないから、イェジドに寄りかかって昼寝してみろ。もう、最高だぜ?」
どうやらイェジドともふらの間にあるのは深い溝のようだ。
「うちのラウクはまだそこまで長い付き合いじゃないが……ファーストコンタクトが結構特徴的だったんだ……」
そんな話題の新種の一つ・ポロウを連れてきたカズマは遠い目をする。
(まさかイェジドが朝起きたらなにか捕まえてきていた、なんて言うのは、なあ……)
いろんな意味でショッキングなそのファーストコンタクトは敢えて秘め。
「でも、ラウクについては、いまは割と風呂好きだな。どうも土埃とかを落とすのが好きなようでな……日向ぼっこも好きらしいが、この時期はむしろ室内にいることも多い」
まだ登録されて間もないポロウの話を聞けるとあって皆興味津々。
「最近は水浴びもしょっちゅうだな。暑さ対策も兼ねているかも知れないが……食事については、結構自由にさせてるんだが、たまに「これくれ」みたいなかんじで肉をもらいに来る。肉食なんだろうな、多分」
まだまだ生態の明らかでない幻獣の生態を知るのは面白いものだ。メモを取っている者もいる。
「寝る時は帽子かけとか、屋内にある木製の枝状のものに捉まって寝たり……修正っぽいな。同種と思っているのか、フクロウやモフロウには挨拶とかを積極的にしているみたいだし、仲間意識も強そうだ。たまに伝えるホーで、お土産についての要望があったりな? あとは悪戯をすると隠れるホーで隠れてる。まあ見つけるが……」
カズマが説明をすると、周囲からはクスクスと笑いがこみあがる。しかし、そう言う経験も大切な知識に違いないのだ。
●
あらかた話し終わると、あとはちょっとしたティパーティのような様相を呈していた。ユニットに料理を作らせたり、もともと持ってきていた菓子を提供したり。
相変わらずチューダはぷりぷりしながら菓子をもぐもぐしているが、頬袋をぷくぷくさせているのはいつものことなので分かりにくいようだ。
「ヘレ、今日の勉強会はドウでしたか?」
リムネラがそっと尋ねると、ヘレは翼をはためかせながら、んー、となにやら考えていた。それから、
「ゆでぃら、ごー、む、ぽろ、みなす……」
と、小さな指でそれぞれを差しながら発声して見せた。
「うん、少しずつ覚えてるみたいですね」
Uiscaが嬉しそうに頷く。
「デモ、マダこれからです。もっとタクサンのことを、覚えないと、ネ」
「うー!」
リムネラが言えば、ヘレも相槌のように唸る。
そう、一歩ずつ。
それが、成長への道なのだから。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/07/16 14:09:58 |
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【相談卓】ユニット勉強会 Uisca=S=Amhran(ka0754) エルフ|17才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2018/07/16 12:12:19 |