ゲスト
(ka0000)
死に至る病
マスター:きりん

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/07/20 09:00
- 完成日
- 2018/07/23 14:39
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●一の病
初期症状はほとんど無い。
身体に不調はなく、いたって健康そのものな患者が多い。
しかし、この病に罹患した者は、皆口を揃えてこういう。
「知らない女が遠くからずっと自分を見つめている」
「近付こうとすると同じ距離だけ離れていく」
「そのくせ日が経つごとに少しずつ近付いてくる」
「薄ら寒い笑顔を浮かべている」
「白装束を着た、汚れた裸足でボサボサな長髪の、青白い肌をした不健康そうな女」
「そいつは近付いてきて、最後に顔を覗きこんでくる」
そしてそうなった時、初めて自覚症状が現れるのだという。
●二の病
ある医者は困惑していた。
体調不良を訴える患者たちを診察しても、原因が分からない。
対処療法的に薬を処方しても、具合が全く改善しない。
主な症状は咳や発熱、悪寒、頭痛といった、風邪によく似た症状に過ぎないが、日に日にそれらが悪化していって、最後には昏倒してしまうのだ。
昏倒する前、患者たちは医者に口々にこういっていた。
「女が側から離れない」
「どこにいても追ってくる」
「まいたと思っても気付いたら近くにいる」
「身体を触れられ、その度に気分が悪くなる」
「ケタケタ笑っている声が耳にこびり付いて離れない」
「そこにいるのに、誰も信じてくれない」
必死な訴えにも、医者は混乱するしかない。
そんな女の姿など医者には見えないし、気配も感じられない。当然、声など聞こえるわけもない。
彼らの訴えは日に日に体調が悪くなっていくに比例して必死さを増し、ある時を境にぷっつり来なくなる。
心配になって医者が尋ねてみれば、全員が昏倒して意識不明になっている。
医者は頭を抱えるしかなかった。
●三の病
昏倒した患者を診て医者はようやく彼らの訴えが真実だと知った。
床に伏す患者の上に、みすぼらしい女が馬乗りになっている姿が見えるのだ。
女の姿は半透明で、汚れた素足に白装束、ぼさぼさの長髪、不健康そうな青白い肌をしていた。
患者たちが訴えていた姿通りだった。
医者が触ろうとしてもすり抜けてしまう。
だが、確かな質量があるかのように女が馬乗りになっている部分の布団が僅かに凹んでいる。
不気味な笑い声を上げながら、女は時折患者に頬擦りし、何事か囁き、その首筋に顔を埋める。
一体何をしているのか、何がしたいのか、医者には全く分からなかった。
そもそも、目の前の女が実際に存在しているのかどうかさえ。
どうしても、自分の妄想、幻覚の類ではないのかという疑念が拭えない。
回診のために患者を見舞えば、必ず女もそこにいる。
どの患者でも、先回りしているかのように絶対に。
しかし、いつまでも変わらぬ現実などない。
終わりは、唐突に訪れた。
●死の病
患者が死んだ。
それも、全員が一度に、同じ時刻で。
連絡を受けて一人一人その死を確認した医者は、女の姿が見えないことに少しホッとしていた。
自分が診ていた患者の死については忸怩たる思いであることに間違いはないが、それよりもおかしな現象からこれで開放されるのだと思って安心していた。
しかし、全ての患者の死を確認し終えて診療所に戻る帰り道、医者は見てしまった。
汚れた素足で、白装束を着た女が、俯いて立っている。
ぼさぼさの長髪に、青白い肌の不健康そうな女が。
患者たちが昏倒する前にその存在を訴え、昏倒した後は患者たちに馬乗りになっていた、あの女が。
思わず医者が後退ると、その女はそれだけ間合いを詰めた。
女の足は、動いていない。
他人に尋ねても、そんなものは見えないと皆口を揃える。
医者は悟った。悟らざるを得なかった。
次は、自分の番なのだと。
●ハンターズ・ソサエティ
謎の奇病の噂で、ハンターズソサエティは持ちきりだった。
依頼を手に、受付嬢ジェーン・ドゥがやってくる。
ジェーンは深刻そうな表情を崩さず、ハンターたちに説明を始める。
「現在、街で亡霊型歪虚を見かけたという報告が相次いでいます。特徴は若い女、汚れた素足に白装束を着た不気味な姿で、青白く不健康そうな顔をしているそうです。最近流行りの奇病にかかった患者たちが遺した証言と一致することから、同一存在だと思われます。亡霊型歪虚としては異常に弱く、駆け出しのハンターでも倒せる程度の強さしかないようですが、『同じ場所』で『同時に』倒さない限り倒されてもその場で復活することが確認されています。また、近くに取り付く対象がいないと消滅するようです。不幸中の幸いと言っていいべきかは分かりませんが、一度患者が大量に死んだために亡霊型歪虚の個体数も減っています。現在残っている患者は四名のみで、この亡霊型歪虚を倒す絶好の機会でもあります。取り付かれている一人である医者が協力を表明しておりますので、診察所に病人たちを集め、更なる死者が出る前に討伐してください。皆様のご無事をお祈りしております」
最後にジェーンは深く頭を下げた。
初期症状はほとんど無い。
身体に不調はなく、いたって健康そのものな患者が多い。
しかし、この病に罹患した者は、皆口を揃えてこういう。
「知らない女が遠くからずっと自分を見つめている」
「近付こうとすると同じ距離だけ離れていく」
「そのくせ日が経つごとに少しずつ近付いてくる」
「薄ら寒い笑顔を浮かべている」
「白装束を着た、汚れた裸足でボサボサな長髪の、青白い肌をした不健康そうな女」
「そいつは近付いてきて、最後に顔を覗きこんでくる」
そしてそうなった時、初めて自覚症状が現れるのだという。
●二の病
ある医者は困惑していた。
体調不良を訴える患者たちを診察しても、原因が分からない。
対処療法的に薬を処方しても、具合が全く改善しない。
主な症状は咳や発熱、悪寒、頭痛といった、風邪によく似た症状に過ぎないが、日に日にそれらが悪化していって、最後には昏倒してしまうのだ。
昏倒する前、患者たちは医者に口々にこういっていた。
「女が側から離れない」
「どこにいても追ってくる」
「まいたと思っても気付いたら近くにいる」
「身体を触れられ、その度に気分が悪くなる」
「ケタケタ笑っている声が耳にこびり付いて離れない」
「そこにいるのに、誰も信じてくれない」
必死な訴えにも、医者は混乱するしかない。
そんな女の姿など医者には見えないし、気配も感じられない。当然、声など聞こえるわけもない。
彼らの訴えは日に日に体調が悪くなっていくに比例して必死さを増し、ある時を境にぷっつり来なくなる。
心配になって医者が尋ねてみれば、全員が昏倒して意識不明になっている。
医者は頭を抱えるしかなかった。
●三の病
昏倒した患者を診て医者はようやく彼らの訴えが真実だと知った。
床に伏す患者の上に、みすぼらしい女が馬乗りになっている姿が見えるのだ。
女の姿は半透明で、汚れた素足に白装束、ぼさぼさの長髪、不健康そうな青白い肌をしていた。
患者たちが訴えていた姿通りだった。
医者が触ろうとしてもすり抜けてしまう。
だが、確かな質量があるかのように女が馬乗りになっている部分の布団が僅かに凹んでいる。
不気味な笑い声を上げながら、女は時折患者に頬擦りし、何事か囁き、その首筋に顔を埋める。
一体何をしているのか、何がしたいのか、医者には全く分からなかった。
そもそも、目の前の女が実際に存在しているのかどうかさえ。
どうしても、自分の妄想、幻覚の類ではないのかという疑念が拭えない。
回診のために患者を見舞えば、必ず女もそこにいる。
どの患者でも、先回りしているかのように絶対に。
しかし、いつまでも変わらぬ現実などない。
終わりは、唐突に訪れた。
●死の病
患者が死んだ。
それも、全員が一度に、同じ時刻で。
連絡を受けて一人一人その死を確認した医者は、女の姿が見えないことに少しホッとしていた。
自分が診ていた患者の死については忸怩たる思いであることに間違いはないが、それよりもおかしな現象からこれで開放されるのだと思って安心していた。
しかし、全ての患者の死を確認し終えて診療所に戻る帰り道、医者は見てしまった。
汚れた素足で、白装束を着た女が、俯いて立っている。
ぼさぼさの長髪に、青白い肌の不健康そうな女が。
患者たちが昏倒する前にその存在を訴え、昏倒した後は患者たちに馬乗りになっていた、あの女が。
思わず医者が後退ると、その女はそれだけ間合いを詰めた。
女の足は、動いていない。
他人に尋ねても、そんなものは見えないと皆口を揃える。
医者は悟った。悟らざるを得なかった。
次は、自分の番なのだと。
●ハンターズ・ソサエティ
謎の奇病の噂で、ハンターズソサエティは持ちきりだった。
依頼を手に、受付嬢ジェーン・ドゥがやってくる。
ジェーンは深刻そうな表情を崩さず、ハンターたちに説明を始める。
「現在、街で亡霊型歪虚を見かけたという報告が相次いでいます。特徴は若い女、汚れた素足に白装束を着た不気味な姿で、青白く不健康そうな顔をしているそうです。最近流行りの奇病にかかった患者たちが遺した証言と一致することから、同一存在だと思われます。亡霊型歪虚としては異常に弱く、駆け出しのハンターでも倒せる程度の強さしかないようですが、『同じ場所』で『同時に』倒さない限り倒されてもその場で復活することが確認されています。また、近くに取り付く対象がいないと消滅するようです。不幸中の幸いと言っていいべきかは分かりませんが、一度患者が大量に死んだために亡霊型歪虚の個体数も減っています。現在残っている患者は四名のみで、この亡霊型歪虚を倒す絶好の機会でもあります。取り付かれている一人である医者が協力を表明しておりますので、診察所に病人たちを集め、更なる死者が出る前に討伐してください。皆様のご無事をお祈りしております」
最後にジェーンは深く頭を下げた。
リプレイ本文
●集まる場所は?
ハンターズソサエティで依頼を受けたハンターたちは、打ち合わせをした結果推奨されていた診療所ではなく、老人宅に患者たちを集めることにした。
意識のない老人を動かすのが難しいと判断したためだ。また、地図で確認したところ診療所よりも老人宅の方が都合がいいことが分かった。
当然、医者にも理由を説明して老人宅に移動してもらうことになる。
「私は真っ先に老人宅に向かうよ! 他の人も近くにいたら、老人宅に集まって貰うよう呼びかけるね!」
普段の元気一杯無邪気な態度とは少し違う真剣な表情で、夢路 まよい(ka1328)が一番に飛び出していった。
真剣なのは当然だ。何せ時間がない。
「なら、私は先に学校に行ってご老人のお宅へと女の子を伴い向かいましょう。依頼を受けた証明書になるものを持っていきますね」
授業中なのでまず教師に話を通す必要があると感じたセレスティア(ka2691)は、ハンターズソサエティに一筆したためてもらう。
「まよいと共に老人宅へ向かおう。そこで皆を待っている。万が一間に合わないようなら私が老人をおぶって合流しよう」
手早く準備を済ませたレイア・アローネ(ka4082)が、まよいに負けない慌しさで足早に去っていく。
時間がないのは彼女も同じだ。急がなければならない。
老人宅に向かう二人は歩夢(ka5975)が作成した符を所持している。もしもの時の連絡用だ。
「診療所に行って医者を迎えに行こう。予定変更の説明が必要だろうが、老人宅に向かいながらすれば問題ないだろう」
クールな態度を崩さず、コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)は歩き出す。
特に急いでいない様子だが、それは同行者の足に当てがあるからだった。
「妊婦さんを拾ったら、エクウスに乗ってもらって老人宅に向かいますねぇ。その間に事情説明もしちゃいますぅ」
星野 ハナ(ka5852)がぶりっ子な態度でにこやかに愛想を振り撒きながら出ていく。
本来の行き先を変更させることになるので、事情説明は必須だろう。
「俺も診療所に行く。もちろんあんたも同行するよな? ……よし、決まりだ。じゃあサイドカーに乗ってくれ」
トライクというサイドカーつきの魔導バイクを移動手段にしている歩夢が、コーネリアを伴いけたたましくバイクの音を立てて出発した。
「面白い歪虚が出てきたもんだねぇ。学校にいる少女の所に向かうとするよ。その後はセレスティアと一緒に老人宅に行く」
期待に満ちた表情を隠そうともせずに、龍宮 アキノ(ka6831)がセレスティアと二人で目的地へ向かった。
その後ろ姿には、件の歪虚をとことんモルモットにしてやろうという企みが透けて見える。
「診療所に向かう途中の妊婦さんを迎えに行って、道中の護衛をしながら作戦を説明して老人宅に向かってもらうよ」
今回の依頼がハンターとしての初仕事である樅(ka7252)は、自分には難しい依頼かもしれないけれど、心強い仲間がいるからとハナの後を追いかけて足取り軽く出発した。
さあ、依頼の始まりだ!
●敵を一箇所に集める
医者を迎えに診療所に向かったのは、コーネリアと歩夢のペアだ。
二人乗りの魔導バイクであるトライクに乗って診療所に到着した二人は、診療所の扉を開けて中に入る。
まず目に入ったのは受付で、看護婦らしき女性がカウンターの向こうに座っていた。
患者であり依頼人でもある医者に取り次いでもらい、診察室にいるそうなので案内してもらう。
「依頼を受けて来たハンターの歩夢、こっちはコーネリアだ。予定が変わった。別の場所に集合することになったんだが、今から移動できるか?」
「道中については心配しなくていい。たとえ天災だろうと病気だろうと、底に歪虚が絡んでいるのであれば徹底的に炙り出し、息の根を止めてみせよう」
丁寧に事情を説明する歩夢と、頼もしい態度を見せるコーネリアに安堵の表情を見せながらも、医者の視線は二人からちらちらとそれて別の場所に注がれている。
その姿にそこに歪虚がいるとピンと来た二人は、渋る医者を説得にかかった。
「……見えるんだな? そこにいるのか? 詳しい事はまだ言えないがキッと話すから信じてくれ」
「移動しながらで構わないから、ついでに歪虚の特徴を教えてもらえると助かる」
最終的に、医者の方が折れ歩夢がサイドカーに医者を乗せて歪虚の見た目について情報を探り、コーネリアは歩夢から空を飛べる魔箒を借りて向かうことになった。
女の子を迎えに学校に訪れたのは、セレスティアとアキノのペアだ。
まず部外者として学校に入る手続きを取り、自分たちがハンターであり、依頼を受けてやってきたことを伝え学校側に教室に向かう許可を貰う。
アキノが教室の扉をノックすると、授業を中断されて少し不機嫌そうな顔の教師が現れた。
「街の診療所で奇病にかかっていると診断されていた少女がいるな? 原因が歪虚の疑いがあるので引き取りに来た」
単刀直入に用件を告げるアキノの説明に補足する形で、セレスティアは教師に事情を説明する。
「安全は私達が責任もって守ります。連れていく事を許可願えませんか?」
二人の努力の甲斐あって教師は少女と接触する許可を出し、それどころか少女を廊下に呼び出してくれた。
奇病にかかっていることは間違いない少女だが、見た目には健康そうな少女だ。
だが、視線がちらちらと教室の方を向いていて、何かを気にしているように見える。
「はじめまして。ハンターのセレスティアというの。よろしくね。私のお仕事に協力して欲しいの。この街を救う為に。勿論貴女の事は守ってみせるわ。私、こう見えても強いんですよ」
「まあ、あたしの目的はどちらかというと歪虚とそいつがばらまく奇病の方なんだがねぇ。どこにいるんだい? さあ、教えておくれ。早く腑分けしたいんだ」
セレスティアとアキノを驚いた表情で見比べていた少女だったが、やがて、少女は街が平和になるならと、同行を承諾した。
診療所に向かう途中だった妊婦を発見するのはハナと樅のペアの役目だったが、移動中の人物をピンポイントで見つけるのは中々に難しい。
「見えないってかなりのハンデですぅ。コマちゃん、犯人捜し是非お願いしますよぅ?」
ハナは己のペットである狛犬を連れてきていた。
戦闘には危なくて直接参加させられないが、こうして探し人を捜索する際には犬の鼻が役に立つ……かもしれない。
実際には期待していたようには役に立たなかったが、運良く妊婦を発見することはできた。
「見えないのは面倒だけど、斬れるなら問題ない、かな」
事前情報として物理攻撃が効くという情報を手に入れているので、樅は亡霊型歪虚が相手であっても悲観していない。
事情を説明し、無事妊婦の承諾を得れたので、彼女をハナのエクウスに乗せて老人宅へ向かう。
「移動中にちょっかい出されるのは業腹ですぅ。軽く倒しちゃいますぅ?」
「亡霊が鬱陶しかったら言ってね。適当に斬りつけるから」
樅はいつでも歪虚を斬れるよう、鞘に納めた刀を肩に担ぐ。
見えないがついてくるらしい歪虚から妊婦を護衛し、時には復活することを承知で倒して一時的に妊婦の視界から追い払いながら、二人は妊婦を老人宅まで連れていった。
老人宅に着いたまよいとレイアは、扉を叩いて返事がないことを確認するとすぐさま家の中に上がり込んだ。
相手は意識不明の病人だ。しかもいつ死んでもおかしくないという危篤状態なので、事は一刻を争う。
老人を発見すると、まよいとレイアは倒れた老人に跨っている歪虚を目撃した。
(う~ん、なんというか話に聞く幽霊そっくりの敵だね。夏場だからっていって、怪談話はゴメンだよ)
(なんかこれ、似たようなのリアルブルーの友人から聞いたことあるような気がする)
首を絞めるという行為が直接の病の原因になっているかはともかく、このまま放置しておくわけにもいかないので、レイアがすぐ自身の生体マテリアルを魔導剣に纏わせ斬り付けて邪魔をし、老人から引き剥がす。
一瞬姿を揺らめかせ消えたように見えた歪虚だったが、すぐに元に戻り老人のところに移動しようとする。
「こちらを見向きもせず、老人の下へ一直線か。厄介な」
苦い表情のレイアの横で、皆が集まるまでの間、一度倒すことで病気を遅らせられないか、まよいは試してみることにした。
ついでなので、電光楽器を用いて味方のマテリアルを活性化させる歌と踊りを踊り、効果がないかこれも試してみることにした。
「穢れし魂 もたらす災禍 精霊の加護にて 幻のものとせん」
澄んだ歌声が老人宅に響く。
いつかは目覚めるかもしれないが、見た目には効いているかどうか分からない。
また、魔法の矢を撃ち込んで倒してみても、復活するまでの間老人から引き剥がすことはできたが、それが病気の進行を遅らせることに繋がったのかはよく分からなかった。
●合流、そして戦闘
ハンターと患者が全員集まり、建物の中ではさすがに狭いだろうということで、庭に移動することになった。
見えている歪虚は老人のもののみで、そいつは老人に馬乗りになって首を絞めるので、放っておくわけにもいかず何度もまよいとレイアが引き剥がしているのだが、倒しても復活するしすぐにまた老人に馬乗りになって首を絞め出すため埒があかなかった。
他の個体は他の個体で、対象の患者以外姿が見えないうえに絶妙に患者からつかず離れずの位置に佇んでいるそうで、医者も妊婦も女の子も不安そうな表情を浮かべている。
「……歌と踊りで抵抗力自体は上げられたと思いたいけど。効果があるのかないのか分からないよ。首絞めようとするのも放っておけないし」
もう何度目かの復活を見届けて、まよいがため息をつく。
よく見れば老人の首元には痣などもないし、首を絞めるという行為は見た目だけで意味はないのかもしれないが、無視もできないのが実情だ。
他の三体は佇んでいるだけなのだが、老人に取り付いている歪虚がいくら引き剥がしても老人に執着して戻っていくので面倒くさい。
老人以外目に入っていないような態度なのも、また腹立たしい。
「これ以上、時間をかけると他の患者さんにも負担が大きそうです」
セレスティアは自分たちが連れてきた女の子を気にしている。
不安そうな表情の女の子を笑顔で慰めていた。
「だが四体に減っている今が絶好のチャンスだ。今を逃せばまた増えてしまうし、何よりこれ以上犠牲者は増やせない」
隙あらば老人に馬乗りになろうとする歪虚を牽制しつつ、レイアが守りを意識して身構える。
タイミングを合わせるまで時間を稼ぐのに、レイアの技術はちょうど良い。
「何、これしきりの術で私たちを止められると思ったら大間違いだということを思い知らせればいい。覚醒者を舐めると痛い目を見る。そう教えてやろう」
元軍人として凄みのある眼光で歪虚たちを睨み、コーネリアが表情を笑みの形に歪める。
その様は、獲物を前にした肉食獣の表情に酷似している。
「誰かそいつを押さえておいてくれますぅ? ぶっとばしますぅ。ざけんじゃねーですぅ」
そもそも完全に自分たちハンターに無関心なため、自分に病になる呪いをかけてもらえず呪詛返しすらできないハナは笑顔で額に青筋を浮かべており、修羅の国の住民である片鱗が透けて見えた。
他にもハナは符による浄化術を使って抑えようとしたものの、どうも病に効いているようには見えない。
「こっちも駄目か。もしかしたら、マテリアル汚染に由来する浄化術じゃ駄目なのかもな。回りの環境が浄化が必要なほど汚染されてる様子もないし、予想が外れたか」
「そのようだね。あたしやハナが準備してきたのも用途は同じものだ。まあ、私はあの歪虚で人体実験ができればそれでいいが」
まよいが歌と踊りで老人の抵抗力を高め続けても、間に合うかどうかは分からない。
ハナと同じく場の浄化による病からの回復を試していた歩夢とアキノは潔く諦め、一斉攻撃の準備を始めた。
これが本来の亡霊型歪虚のように通用する攻撃手段が限られるというのなら困っていただろうが、今回の敵はそんなことはないので、二人は冷静だ。
もっとも、あくまで対応が普通の歩夢に比べ、アキノの言葉はちょっと、いやかなりマッドサイエンティストらしさが入っているが。
「霊は斬れないって聞いたことあるけど、案外そうでもないのかな」
復活するので効果があるかは不明だが、老人の首を絞めさせ続けるわけにもいかないので、レイアと一緒に適度に斬り捨てつつ、樅もタイミングを窺う。
準備が整い、ついに反撃のチャンスが来た。
一箇所に集まった四体の同じ姿の歪虚に、範囲攻撃の雨が降る。
老人の下へ行きたがる個体も、符の結界で歩夢が上手く捕まえた。
姿が見えない個体も、取り付かれている患者が見えているのならば教えてもらえばそこにいると認識できるので問題ない。
その事実をハンターたちは証明してみせた。
まよいの一直線に伸びる雷撃が、セレスティアの光の衝撃が、コーネリアが降らせる弾丸の雨が、ハナと歩夢の符の結界から溢れる光が、歪虚たちを纏めて巻き込んでいく。
患者たちがその光景を目を丸くして見つめている。
そこへレイア、アキノ、樅が突っ込み、それらの一斉攻撃で消滅しなかった個体に、生体マテリアルで強化した魔導剣による一撃、機導術で生み出した光の剣の一閃、そして精神統一し呼吸を整え、大きく息を吸い込んだ上で一気に間合いを詰めて放った斬撃でそれぞれ止めを刺した。
●それから……
ハンターズソサエティでいつものように依頼を見繕っていたら、いつかのメンバーが偶然顔を合わせた。
まよい、セレスティア、レイア、コーネリア、ハナ、歩夢、アキノ、樅の八人は、亡霊型歪虚を退治し患者を救った依頼の話で盛り上がる。
たまたまその話を聞いていた受付嬢ジェーン・ドゥが、何やら手紙を手にやってきた。
「その依頼の患者さんたちから、お手紙がハンターズソサエティを通じてあなたたち宛てに届いてましたよ。医者からは自分の代わりに別の医者を手配をしてくれたことの礼が、妊婦からは無事赤ん坊が生まれたとの報告が、老人からは意識が戻ったとの連絡が、女の子からは今でも元気に学校に通っているとの近況が、それぞれ添えられています。皆、あなた方が街を守り、人々を救った結果ですよ。良かったですね」
微笑んだジェーンが、手紙をハンターたちに手渡した。
手紙には、医者の几帳面な字で、妊婦の綺麗な字で、老人の達筆すぎる字で、女の子の学生らしい丸文字で、病気が完治したことと、街が平和になったこと、そしてそれらに対する全員への感謝の言葉が綴られていた。
ハンターズソサエティで依頼を受けたハンターたちは、打ち合わせをした結果推奨されていた診療所ではなく、老人宅に患者たちを集めることにした。
意識のない老人を動かすのが難しいと判断したためだ。また、地図で確認したところ診療所よりも老人宅の方が都合がいいことが分かった。
当然、医者にも理由を説明して老人宅に移動してもらうことになる。
「私は真っ先に老人宅に向かうよ! 他の人も近くにいたら、老人宅に集まって貰うよう呼びかけるね!」
普段の元気一杯無邪気な態度とは少し違う真剣な表情で、夢路 まよい(ka1328)が一番に飛び出していった。
真剣なのは当然だ。何せ時間がない。
「なら、私は先に学校に行ってご老人のお宅へと女の子を伴い向かいましょう。依頼を受けた証明書になるものを持っていきますね」
授業中なのでまず教師に話を通す必要があると感じたセレスティア(ka2691)は、ハンターズソサエティに一筆したためてもらう。
「まよいと共に老人宅へ向かおう。そこで皆を待っている。万が一間に合わないようなら私が老人をおぶって合流しよう」
手早く準備を済ませたレイア・アローネ(ka4082)が、まよいに負けない慌しさで足早に去っていく。
時間がないのは彼女も同じだ。急がなければならない。
老人宅に向かう二人は歩夢(ka5975)が作成した符を所持している。もしもの時の連絡用だ。
「診療所に行って医者を迎えに行こう。予定変更の説明が必要だろうが、老人宅に向かいながらすれば問題ないだろう」
クールな態度を崩さず、コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)は歩き出す。
特に急いでいない様子だが、それは同行者の足に当てがあるからだった。
「妊婦さんを拾ったら、エクウスに乗ってもらって老人宅に向かいますねぇ。その間に事情説明もしちゃいますぅ」
星野 ハナ(ka5852)がぶりっ子な態度でにこやかに愛想を振り撒きながら出ていく。
本来の行き先を変更させることになるので、事情説明は必須だろう。
「俺も診療所に行く。もちろんあんたも同行するよな? ……よし、決まりだ。じゃあサイドカーに乗ってくれ」
トライクというサイドカーつきの魔導バイクを移動手段にしている歩夢が、コーネリアを伴いけたたましくバイクの音を立てて出発した。
「面白い歪虚が出てきたもんだねぇ。学校にいる少女の所に向かうとするよ。その後はセレスティアと一緒に老人宅に行く」
期待に満ちた表情を隠そうともせずに、龍宮 アキノ(ka6831)がセレスティアと二人で目的地へ向かった。
その後ろ姿には、件の歪虚をとことんモルモットにしてやろうという企みが透けて見える。
「診療所に向かう途中の妊婦さんを迎えに行って、道中の護衛をしながら作戦を説明して老人宅に向かってもらうよ」
今回の依頼がハンターとしての初仕事である樅(ka7252)は、自分には難しい依頼かもしれないけれど、心強い仲間がいるからとハナの後を追いかけて足取り軽く出発した。
さあ、依頼の始まりだ!
●敵を一箇所に集める
医者を迎えに診療所に向かったのは、コーネリアと歩夢のペアだ。
二人乗りの魔導バイクであるトライクに乗って診療所に到着した二人は、診療所の扉を開けて中に入る。
まず目に入ったのは受付で、看護婦らしき女性がカウンターの向こうに座っていた。
患者であり依頼人でもある医者に取り次いでもらい、診察室にいるそうなので案内してもらう。
「依頼を受けて来たハンターの歩夢、こっちはコーネリアだ。予定が変わった。別の場所に集合することになったんだが、今から移動できるか?」
「道中については心配しなくていい。たとえ天災だろうと病気だろうと、底に歪虚が絡んでいるのであれば徹底的に炙り出し、息の根を止めてみせよう」
丁寧に事情を説明する歩夢と、頼もしい態度を見せるコーネリアに安堵の表情を見せながらも、医者の視線は二人からちらちらとそれて別の場所に注がれている。
その姿にそこに歪虚がいるとピンと来た二人は、渋る医者を説得にかかった。
「……見えるんだな? そこにいるのか? 詳しい事はまだ言えないがキッと話すから信じてくれ」
「移動しながらで構わないから、ついでに歪虚の特徴を教えてもらえると助かる」
最終的に、医者の方が折れ歩夢がサイドカーに医者を乗せて歪虚の見た目について情報を探り、コーネリアは歩夢から空を飛べる魔箒を借りて向かうことになった。
女の子を迎えに学校に訪れたのは、セレスティアとアキノのペアだ。
まず部外者として学校に入る手続きを取り、自分たちがハンターであり、依頼を受けてやってきたことを伝え学校側に教室に向かう許可を貰う。
アキノが教室の扉をノックすると、授業を中断されて少し不機嫌そうな顔の教師が現れた。
「街の診療所で奇病にかかっていると診断されていた少女がいるな? 原因が歪虚の疑いがあるので引き取りに来た」
単刀直入に用件を告げるアキノの説明に補足する形で、セレスティアは教師に事情を説明する。
「安全は私達が責任もって守ります。連れていく事を許可願えませんか?」
二人の努力の甲斐あって教師は少女と接触する許可を出し、それどころか少女を廊下に呼び出してくれた。
奇病にかかっていることは間違いない少女だが、見た目には健康そうな少女だ。
だが、視線がちらちらと教室の方を向いていて、何かを気にしているように見える。
「はじめまして。ハンターのセレスティアというの。よろしくね。私のお仕事に協力して欲しいの。この街を救う為に。勿論貴女の事は守ってみせるわ。私、こう見えても強いんですよ」
「まあ、あたしの目的はどちらかというと歪虚とそいつがばらまく奇病の方なんだがねぇ。どこにいるんだい? さあ、教えておくれ。早く腑分けしたいんだ」
セレスティアとアキノを驚いた表情で見比べていた少女だったが、やがて、少女は街が平和になるならと、同行を承諾した。
診療所に向かう途中だった妊婦を発見するのはハナと樅のペアの役目だったが、移動中の人物をピンポイントで見つけるのは中々に難しい。
「見えないってかなりのハンデですぅ。コマちゃん、犯人捜し是非お願いしますよぅ?」
ハナは己のペットである狛犬を連れてきていた。
戦闘には危なくて直接参加させられないが、こうして探し人を捜索する際には犬の鼻が役に立つ……かもしれない。
実際には期待していたようには役に立たなかったが、運良く妊婦を発見することはできた。
「見えないのは面倒だけど、斬れるなら問題ない、かな」
事前情報として物理攻撃が効くという情報を手に入れているので、樅は亡霊型歪虚が相手であっても悲観していない。
事情を説明し、無事妊婦の承諾を得れたので、彼女をハナのエクウスに乗せて老人宅へ向かう。
「移動中にちょっかい出されるのは業腹ですぅ。軽く倒しちゃいますぅ?」
「亡霊が鬱陶しかったら言ってね。適当に斬りつけるから」
樅はいつでも歪虚を斬れるよう、鞘に納めた刀を肩に担ぐ。
見えないがついてくるらしい歪虚から妊婦を護衛し、時には復活することを承知で倒して一時的に妊婦の視界から追い払いながら、二人は妊婦を老人宅まで連れていった。
老人宅に着いたまよいとレイアは、扉を叩いて返事がないことを確認するとすぐさま家の中に上がり込んだ。
相手は意識不明の病人だ。しかもいつ死んでもおかしくないという危篤状態なので、事は一刻を争う。
老人を発見すると、まよいとレイアは倒れた老人に跨っている歪虚を目撃した。
(う~ん、なんというか話に聞く幽霊そっくりの敵だね。夏場だからっていって、怪談話はゴメンだよ)
(なんかこれ、似たようなのリアルブルーの友人から聞いたことあるような気がする)
首を絞めるという行為が直接の病の原因になっているかはともかく、このまま放置しておくわけにもいかないので、レイアがすぐ自身の生体マテリアルを魔導剣に纏わせ斬り付けて邪魔をし、老人から引き剥がす。
一瞬姿を揺らめかせ消えたように見えた歪虚だったが、すぐに元に戻り老人のところに移動しようとする。
「こちらを見向きもせず、老人の下へ一直線か。厄介な」
苦い表情のレイアの横で、皆が集まるまでの間、一度倒すことで病気を遅らせられないか、まよいは試してみることにした。
ついでなので、電光楽器を用いて味方のマテリアルを活性化させる歌と踊りを踊り、効果がないかこれも試してみることにした。
「穢れし魂 もたらす災禍 精霊の加護にて 幻のものとせん」
澄んだ歌声が老人宅に響く。
いつかは目覚めるかもしれないが、見た目には効いているかどうか分からない。
また、魔法の矢を撃ち込んで倒してみても、復活するまでの間老人から引き剥がすことはできたが、それが病気の進行を遅らせることに繋がったのかはよく分からなかった。
●合流、そして戦闘
ハンターと患者が全員集まり、建物の中ではさすがに狭いだろうということで、庭に移動することになった。
見えている歪虚は老人のもののみで、そいつは老人に馬乗りになって首を絞めるので、放っておくわけにもいかず何度もまよいとレイアが引き剥がしているのだが、倒しても復活するしすぐにまた老人に馬乗りになって首を絞め出すため埒があかなかった。
他の個体は他の個体で、対象の患者以外姿が見えないうえに絶妙に患者からつかず離れずの位置に佇んでいるそうで、医者も妊婦も女の子も不安そうな表情を浮かべている。
「……歌と踊りで抵抗力自体は上げられたと思いたいけど。効果があるのかないのか分からないよ。首絞めようとするのも放っておけないし」
もう何度目かの復活を見届けて、まよいがため息をつく。
よく見れば老人の首元には痣などもないし、首を絞めるという行為は見た目だけで意味はないのかもしれないが、無視もできないのが実情だ。
他の三体は佇んでいるだけなのだが、老人に取り付いている歪虚がいくら引き剥がしても老人に執着して戻っていくので面倒くさい。
老人以外目に入っていないような態度なのも、また腹立たしい。
「これ以上、時間をかけると他の患者さんにも負担が大きそうです」
セレスティアは自分たちが連れてきた女の子を気にしている。
不安そうな表情の女の子を笑顔で慰めていた。
「だが四体に減っている今が絶好のチャンスだ。今を逃せばまた増えてしまうし、何よりこれ以上犠牲者は増やせない」
隙あらば老人に馬乗りになろうとする歪虚を牽制しつつ、レイアが守りを意識して身構える。
タイミングを合わせるまで時間を稼ぐのに、レイアの技術はちょうど良い。
「何、これしきりの術で私たちを止められると思ったら大間違いだということを思い知らせればいい。覚醒者を舐めると痛い目を見る。そう教えてやろう」
元軍人として凄みのある眼光で歪虚たちを睨み、コーネリアが表情を笑みの形に歪める。
その様は、獲物を前にした肉食獣の表情に酷似している。
「誰かそいつを押さえておいてくれますぅ? ぶっとばしますぅ。ざけんじゃねーですぅ」
そもそも完全に自分たちハンターに無関心なため、自分に病になる呪いをかけてもらえず呪詛返しすらできないハナは笑顔で額に青筋を浮かべており、修羅の国の住民である片鱗が透けて見えた。
他にもハナは符による浄化術を使って抑えようとしたものの、どうも病に効いているようには見えない。
「こっちも駄目か。もしかしたら、マテリアル汚染に由来する浄化術じゃ駄目なのかもな。回りの環境が浄化が必要なほど汚染されてる様子もないし、予想が外れたか」
「そのようだね。あたしやハナが準備してきたのも用途は同じものだ。まあ、私はあの歪虚で人体実験ができればそれでいいが」
まよいが歌と踊りで老人の抵抗力を高め続けても、間に合うかどうかは分からない。
ハナと同じく場の浄化による病からの回復を試していた歩夢とアキノは潔く諦め、一斉攻撃の準備を始めた。
これが本来の亡霊型歪虚のように通用する攻撃手段が限られるというのなら困っていただろうが、今回の敵はそんなことはないので、二人は冷静だ。
もっとも、あくまで対応が普通の歩夢に比べ、アキノの言葉はちょっと、いやかなりマッドサイエンティストらしさが入っているが。
「霊は斬れないって聞いたことあるけど、案外そうでもないのかな」
復活するので効果があるかは不明だが、老人の首を絞めさせ続けるわけにもいかないので、レイアと一緒に適度に斬り捨てつつ、樅もタイミングを窺う。
準備が整い、ついに反撃のチャンスが来た。
一箇所に集まった四体の同じ姿の歪虚に、範囲攻撃の雨が降る。
老人の下へ行きたがる個体も、符の結界で歩夢が上手く捕まえた。
姿が見えない個体も、取り付かれている患者が見えているのならば教えてもらえばそこにいると認識できるので問題ない。
その事実をハンターたちは証明してみせた。
まよいの一直線に伸びる雷撃が、セレスティアの光の衝撃が、コーネリアが降らせる弾丸の雨が、ハナと歩夢の符の結界から溢れる光が、歪虚たちを纏めて巻き込んでいく。
患者たちがその光景を目を丸くして見つめている。
そこへレイア、アキノ、樅が突っ込み、それらの一斉攻撃で消滅しなかった個体に、生体マテリアルで強化した魔導剣による一撃、機導術で生み出した光の剣の一閃、そして精神統一し呼吸を整え、大きく息を吸い込んだ上で一気に間合いを詰めて放った斬撃でそれぞれ止めを刺した。
●それから……
ハンターズソサエティでいつものように依頼を見繕っていたら、いつかのメンバーが偶然顔を合わせた。
まよい、セレスティア、レイア、コーネリア、ハナ、歩夢、アキノ、樅の八人は、亡霊型歪虚を退治し患者を救った依頼の話で盛り上がる。
たまたまその話を聞いていた受付嬢ジェーン・ドゥが、何やら手紙を手にやってきた。
「その依頼の患者さんたちから、お手紙がハンターズソサエティを通じてあなたたち宛てに届いてましたよ。医者からは自分の代わりに別の医者を手配をしてくれたことの礼が、妊婦からは無事赤ん坊が生まれたとの報告が、老人からは意識が戻ったとの連絡が、女の子からは今でも元気に学校に通っているとの近況が、それぞれ添えられています。皆、あなた方が街を守り、人々を救った結果ですよ。良かったですね」
微笑んだジェーンが、手紙をハンターたちに手渡した。
手紙には、医者の几帳面な字で、妊婦の綺麗な字で、老人の達筆すぎる字で、女の子の学生らしい丸文字で、病気が完治したことと、街が平和になったこと、そしてそれらに対する全員への感謝の言葉が綴られていた。
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術式開始! 龍宮 アキノ(ka6831) 人間(リアルブルー)|26才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2018/07/20 08:22:42 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/07/19 18:49:15 |