ゲスト
(ka0000)
奪還! 恋人たちの聖地
マスター:青木川舟

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/12/27 07:30
- 完成日
- 2015/01/06 06:57
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ヒトの恋路を邪魔するモノは
宵闇に覆われた深い森の中。月光差し込む開けた空間。その中心にそびえるのは、民家ほどの高さがある巨石。それははまるで巨人が落としていった扇子のような形状をしていた。
明かりを手に、巨石の許へ小走りでやってきた少女は、扇子の下で待つ1人の青年の姿を確認し、ホッと頬を緩めた。同じく安心したような笑みを浮かべた青年は、少女が近寄ってくるにつれて、その表情に緊張の色を濃くしていく。
この場所には特別な意味があった。少女は、青年にここへ呼び出された時点で、その意味を理解していた。それでも彼女は、敢えて何も知らない風を装って青年に尋ねる。
「どうしたのユルバン、こんな時間に呼び出して」
「ぇあー……うん、その……俺、えっと……君に伝えたいことが――」
「うん。なに?」
青年は、己を落ち着かせようと目を閉じ、胸を押さえて大きく息を吐いた。少女は両腕を後ろ手に組んで、その様子を微笑ましげに眺めている。2人の視線が交差した。紅に染まる両者の頬が、青年が言わんとする言葉と、少女の返すであろう答えを、如実に語っていた。
青年が、意を決して前を向き、大きく息を吸う。
「俺、ずっと前から君のことが――」
彼の一世一代の言葉を遮ったのは、暗い森に俄かに響いた、がちゃがちゃという怖気の走るような気味の悪い音と、鼻の粘膜を焼け爛れさせるような抗い難い刺激臭だった――
●村最寄りのハンターズソサエティ支部
「このままじゃ僕、あの子にフラれちゃいますよ! 助けてください!」
情けなく泣き崩れる若者を、受付職員は宥めながら要件を尋ねる。
「化け物ですよ化け物! うちの村の近くに! なんとかしてください!」
若者はヨアンと名乗った。15、6歳くらいの癖っ毛の男子である。どうやら雑魔被害か何かのようだが、それがフラれることと何の関係があるのだろうか。職員は落ち着いたトーンを心がけつつ、順を追って話すようヨアンに頼んだ。
「うぅ……えっとですね……、うちの村の裏の森に『扇岩』って呼ばれてる大きな岩があるんです。謂れは分からないんですけど、なんか神聖なものだとかなんとかで昔から大切にされてました。そこが最近、男女の告白スポットになってるんですよ。村の若者は、異性に愛の告白をするとき必ず扇岩に相手を呼び出すんです。相手もそれは分かってますから、約束の時間に相手が扇岩のところへ来てくれたら告白はほぼ成功。そして自分の気持ちを告げて、承諾されれば晴れて正式に恋人同士に、という流れです」
なるほど、ここまではどこでもありそうな話だ。職員は相槌を打って続きを促す。
「それでですね、僕は遂に、昔から好きだった幼馴染のリュシーを扇岩に呼び出したんですよ。明後日の満月の晩に。もう今から心臓バクバクで死にそうなんですけど、それどころじゃないマズイことが起こったんです。僕の友達のユルバンが、昨日の夜、一足先に自分の想い人のフルールを扇岩に呼び出して、告白しようとしたんです。そしたらそこに扇岩よりも大きな化け物が現れて、2人に襲い掛かったらしいんですよ! 2人ともなんとか村まで逃げおおせたんですが、怪我もしていたし、何より告白を邪魔されたせいで、なんか微妙な雰囲気になっちゃってて……」
話が甘酸っぱい方向に傾きかけたので、職員はその『化け物』について詳しく尋ねた。
「えぇっと……2人は逃げるのに必死で、姿ははっきりと見ていないらしいんですが、とにかく『たくさんの足ががちゃがちゃ動いていた』とか『ものすごく臭かった』って言ってました。その後昼間に様子を見に行った村の大人たちによると、姿は確認できなかったけど臭い液体が残ってて『あの臭いはムカデだ』と……」
自身も田舎出身の職員はふむふむと頷いた。ムカデの放つ強烈な悪臭は独特で、敏感な人間なら臭いだけで周囲にムカデが居ることに気が付く程なのだ。
「でもそんなに大きなムカデなんて聞いたことないし、間違いなく化け物だって村は恐慌状態なんです! このままじゃ僕の告白はどうなっちゃうっていうんですか! せっかく勇気を出したのに……これが失敗したらもう立ち直れませんよぉ……!」
再びおいおいと泣き出す若者。職員は黙って彼の背をポンと叩いた。
宵闇に覆われた深い森の中。月光差し込む開けた空間。その中心にそびえるのは、民家ほどの高さがある巨石。それははまるで巨人が落としていった扇子のような形状をしていた。
明かりを手に、巨石の許へ小走りでやってきた少女は、扇子の下で待つ1人の青年の姿を確認し、ホッと頬を緩めた。同じく安心したような笑みを浮かべた青年は、少女が近寄ってくるにつれて、その表情に緊張の色を濃くしていく。
この場所には特別な意味があった。少女は、青年にここへ呼び出された時点で、その意味を理解していた。それでも彼女は、敢えて何も知らない風を装って青年に尋ねる。
「どうしたのユルバン、こんな時間に呼び出して」
「ぇあー……うん、その……俺、えっと……君に伝えたいことが――」
「うん。なに?」
青年は、己を落ち着かせようと目を閉じ、胸を押さえて大きく息を吐いた。少女は両腕を後ろ手に組んで、その様子を微笑ましげに眺めている。2人の視線が交差した。紅に染まる両者の頬が、青年が言わんとする言葉と、少女の返すであろう答えを、如実に語っていた。
青年が、意を決して前を向き、大きく息を吸う。
「俺、ずっと前から君のことが――」
彼の一世一代の言葉を遮ったのは、暗い森に俄かに響いた、がちゃがちゃという怖気の走るような気味の悪い音と、鼻の粘膜を焼け爛れさせるような抗い難い刺激臭だった――
●村最寄りのハンターズソサエティ支部
「このままじゃ僕、あの子にフラれちゃいますよ! 助けてください!」
情けなく泣き崩れる若者を、受付職員は宥めながら要件を尋ねる。
「化け物ですよ化け物! うちの村の近くに! なんとかしてください!」
若者はヨアンと名乗った。15、6歳くらいの癖っ毛の男子である。どうやら雑魔被害か何かのようだが、それがフラれることと何の関係があるのだろうか。職員は落ち着いたトーンを心がけつつ、順を追って話すようヨアンに頼んだ。
「うぅ……えっとですね……、うちの村の裏の森に『扇岩』って呼ばれてる大きな岩があるんです。謂れは分からないんですけど、なんか神聖なものだとかなんとかで昔から大切にされてました。そこが最近、男女の告白スポットになってるんですよ。村の若者は、異性に愛の告白をするとき必ず扇岩に相手を呼び出すんです。相手もそれは分かってますから、約束の時間に相手が扇岩のところへ来てくれたら告白はほぼ成功。そして自分の気持ちを告げて、承諾されれば晴れて正式に恋人同士に、という流れです」
なるほど、ここまではどこでもありそうな話だ。職員は相槌を打って続きを促す。
「それでですね、僕は遂に、昔から好きだった幼馴染のリュシーを扇岩に呼び出したんですよ。明後日の満月の晩に。もう今から心臓バクバクで死にそうなんですけど、それどころじゃないマズイことが起こったんです。僕の友達のユルバンが、昨日の夜、一足先に自分の想い人のフルールを扇岩に呼び出して、告白しようとしたんです。そしたらそこに扇岩よりも大きな化け物が現れて、2人に襲い掛かったらしいんですよ! 2人ともなんとか村まで逃げおおせたんですが、怪我もしていたし、何より告白を邪魔されたせいで、なんか微妙な雰囲気になっちゃってて……」
話が甘酸っぱい方向に傾きかけたので、職員はその『化け物』について詳しく尋ねた。
「えぇっと……2人は逃げるのに必死で、姿ははっきりと見ていないらしいんですが、とにかく『たくさんの足ががちゃがちゃ動いていた』とか『ものすごく臭かった』って言ってました。その後昼間に様子を見に行った村の大人たちによると、姿は確認できなかったけど臭い液体が残ってて『あの臭いはムカデだ』と……」
自身も田舎出身の職員はふむふむと頷いた。ムカデの放つ強烈な悪臭は独特で、敏感な人間なら臭いだけで周囲にムカデが居ることに気が付く程なのだ。
「でもそんなに大きなムカデなんて聞いたことないし、間違いなく化け物だって村は恐慌状態なんです! このままじゃ僕の告白はどうなっちゃうっていうんですか! せっかく勇気を出したのに……これが失敗したらもう立ち直れませんよぉ……!」
再びおいおいと泣き出す若者。職員は黙って彼の背をポンと叩いた。
リプレイ本文
●森の一本道
「なーんにも無いしぃ。ってかタダの森のお散歩ってカンジぃ?」
はるな(ka3307)がぼやく。昼間でも薄暗い森の探索を開始してから約10分、ハンター達は未だ敵の痕跡を発見できていない。ガブリエル=VIII(ka1198)が周囲を観察しながら言った。
「敵はいつどこから襲い掛かってくるのか分からない。気を抜いてはいけないよ」
「その通り、だぞ、はるな。そんな、に、油断しているから、背中に、ムカデ、が、付いても、気づか、ない、んだ」
ネヴェ・アヴァランシェ(ka3331)が、はるなの背にくっついていた普通のムカデをぽいっと掃った。
「ひぃい!? もっと早く言ってほしかったんだけど!」
「……あ、ちょっと静かに! どうやら近いようだよ」
時音 ざくろ(ka1250)が声を上げた。彼の飼い犬たちが低い唸り声を上げている。
「なんだか向こうの方からツンとくる過激なニオイがするかも……」
モカ・プルーム(ka3411)は涙目になって鼻を塞ぎ、道の向かう先を指さした。天竜寺 舞(ka0377)が様子をうかがう。
「道の向こうが明るくなってるね。木立の切れ間――あそこが扇岩ってことかな。よーし、他人の恋路を邪魔する雑魔なんか、ちゃっちゃと片付けてあげないとね」
ハンター達は舞の言葉に頷き、悪臭の根源へ接近を開始した。
●扇岩の間
幾節も連なった身体を扇岩の根元に巻き付け、その名を体現するかのような百本以上の鉤爪のような脚を、落ち葉や枯れ草の下に埋めるようにして、ソレは眠っていた。寝息を立てるように、一定のリズムで節と節が波打つように擦れ合い、ぎちぎちという耳障りな音と、鼻腔に焼けた鉄棒をねじ込むような悪臭を放つ。
ムカデである。しかし先程はるなの背にくっついていたものとはワケが違う。全長5メートル以上。体幅は大人の男の胴よりも幅広い。黒々と滑らかな殻は頑丈でありながら軽く、安物の鎧などよりも余程有能そうである。
ふと、何者かが接近する気配を感じ取り、大ムカデはおもむろに頭をもたげた。囮役を買って出た2人、ざくろとモカである。2人は森の際から1歩1歩、大ムカデと視線を合わせるように進んでくる。
大ムカデは、ギロチンの刃ほども厚さい大あごをガチガチと打ち鳴らす。威嚇のサインであろう。2人はそこで一旦立ち止まり、ざくろは盾を構えて、モカはいつでも攻撃を避けられるように身構えて、相手の出方を疑う。しばらく睨み合いが続くも、一向に大ムカデが岩を離れる様子は無い。
「もう少し刺激しないとダメかな……」
ざくろはゆっくりと3メートルほどのところまで接近すると、足元の小石を蹴り上げた。小石は大ムカデの頭に命中。敵は遂に怒ったのか、波打つ足をがちゃがちゃと鳴らして接近してきた。
「さぁこい、お前の相手はざくろだ!」
「ボクもいるよ~!」
ざくろと、鼻を塞いでいるので鼻声のモカは、大ムカデの攻撃をいなしつつ、敵が向かって来れば逃げ、止まればちょっかいを出しの繰り返しで、大ムカデを扇岩から引き離すことに成功した。
「……ん~、今んトコはイイカンジ? じゃあこのままいっちゃおっかな」
こっそり岩の反対側から敵の背後に忍び寄っていたはるなも、敵がすんなり予定通りの道筋を辿っているのを確認し、そのまま手を出さずに距離を詰めていく。
そして、大ムカデの長い身体が完全に木立に隠れた瞬間――木の上に潜んでいたネヴェの奇襲で乱戦の幕が開く。ネヴェは樹上からナックルを構えたまま飛び降り、落下の衝撃を乗せた一撃を食らわす。
「胴体、は、外した、か……だが――まずは、100分の1本、戴い、た」
彼女の拳撃は、敵の脚を1本へし折っていた。
「次はあたしだ!」
木陰に潜んでいた舞が姿を現し、目にもとまらぬ速さで剣撃を繰り出す。
「後ろががら空きなんですケド!」
さらに背後からはるなが風の刃を放つ。
2人の攻撃で敵の胴は深く切り裂かれ刺激臭のする体液を垂れ流す。しかしそれでもなお、大ムカデは前へ――囮として動き回り、少し乱れた息を整えるざくろ・モカの2人へと進む。
「2本、3本……」
「あたしを無視するとはいい度胸してるね!」
「こっからだと首遠いカンジだしぃ、攻撃しながらだんだん前行こうかな」
大ムカデの側面や背後から休みなく攻撃を加えるネヴェ・舞・はるな。一見ハンター達が圧しているようだが、ムカデは大して堪えていないかのように眼前の2人へ大あごを振るい、胴体を振り回して群がるハンター達を弾き飛ばそうとする。
「はぁはぁ……もう結構斬りまくってると思うんだけど、なんかまだまだ元気だね……どう思う、ガブリエル」
額の汗を拭いながら、舞が尋ねた。味方の回復の為に潜みつつ、死角から敵を観察していたガブリエルは、少し考えて言った。
「これ程攻撃しても弱る様子が無い……胴体への攻撃は効果が薄いのだろうか――」
その間にも戦いは続く。
「流れろ電流…恋の衝撃の様に」
ざくろの反撃と共に放たれた雷撃により、大ムカデの全身にショックが走る。節々がけたたましく軋み、動きが鈍くなる。続けざまにモカが、敵の頭を狙って剣を振るった。傷は付けたが、破壊するには至らない。
すると、今まで攻撃を意にも介していなかった大ムカデが、体を震わせ、はっきりとモカを睨んで激昂したのが分かった。そして攻撃直後で無防備になっていたモカを狙って、大あごの奥の口から毒液を吐き出した。
「ああっ!」
モカは咄嗟に顔を背けたが、着ていたマントと、マントからむき出しになっていた腕に悪臭を放つ液体を浴びてしまった。そのまま地面に尻もちをついたモカへ、トドメとばかりに再び敵が口を向ける。
「そうはさせない!」
側面から放たれたガブリエルの鞭を頭に受け、敵は不意を突かれたのか怯む。その隙にガブリエルは、モカを抱き上げて敵の正面から移動させる。
「すまない……反応が遅れた。今すぐ治療しよう」
「うう……ありがとうガブリエルさん」
「エルで構わない。礼を言いたいのはこちらだモカ嬢――皆、聞いてくれ!」
ガブリエルは全員に聞こえる声で叫んだ。
「敵は脚や胴体をどんなに攻撃されても、頭を狙ってくる2人を集中して噛み殺そうとし、頭に一撃入れたモカ嬢を最優先で排除しようとした! つまり頭を狙われることを極度に恐れている! 敵の弱点は頭かもしれない!」
それを聞いたモカ、ガブリエル以外の4人は攻撃を頭に集中させる。すると、大ムカデは露骨に体を捩って嫌がる素振りを見せた。必死に大あごを振るって4人の猛攻を迎え撃つ。
「ホントにここが弱いカンジなの? っていうかぁ、なんか増々反撃が強力になってるっぽいんだけど~」
「必死、に、なっているの、が、その、証拠、だ。このまま、攻める、ぞ」
普通サイズでもなかなか退治に苦労するムカデである。この巨大サイズ、さすがの装甲と体力で猛攻を耐えきり、やがて麻痺が幾分弱まったのか、長い体を翻して、扇岩へと逃げ始めた。
「逃げ切れる、と、思って、いる、の、か?」
ネヴェは余裕そうな表情で後を追う。
「お前、が、目の前ばかり、気にして、いる、間、に、戴いて、おいた、ぞ――100分の50本、ほど、な」
今や脚の半数近くは折れ、長い身体の後ろ3分の1は節ごとに切り刻まれ外殻のみで繋がっているような状態。これでは全速力を出せるわけがなかった。
「いい加減、止ま、れ」
ネヴェは胴体の中ほどに重たい一撃を叩き込んだ。大ムカデの胴体は潰れ、脚が止まる。
「やぁ~っと狙ってたとこ見えたー。ってコトでいただきぃ~」
はるなの風の刃が、動きの止まった敵の頭部の根元を切断。頭が大きく跳ね上がった。その落下地点に快足を飛ばしたのは舞だった。
「うげっ……まだ口動いてる。さすが虫の生命力だね。可愛くない……!」
舞の剣が頭部を貫き、扇岩の主はその動きを止めた。
●数日後のオフィス
「ヨアンさんから手紙がきたよ!」
舞が手にしていたのは、お世辞にも綺麗とは言えない字で書かれた便箋だった。ガブリエルが安心したように、しかし拍子抜けといった様子で肩を竦めた。
「私達を突然集めるのだから、何かと思えば……」
「ね、ね、それでさぁ~、ヨアンちゃんはなんだって?」
はるなに急かされて、舞が手紙を広げて音読を始めた。
『ハンターの皆さん、今回の化け物退治、本当にありがとうございました! しかも化け物を倒すだけじゃなくて、扇岩の掃除までしてもらったみたいで……臭いも全く残っていなくてびっくりしました!』
「はいは~い、はるなとぉ、ネヴェちゃんでガチ頑張ったンだよね~」
「そうだったの? ごめんね手伝えなくって……!」
モカが申し訳なさそうな顔をしたので、ネヴェがいやいや、と手を振った。
「モカ、は、怪我を、して、いたんだ、から……それ、に、ネヴェ、が、やりたかった、から、やった、だけ、だ」
「で~、たまたまそれを見っけたはるながヘルプしただけってカンジぃ」
皆で2人を労って、再び舞が続きを読み上げた。
『ところで、僕とリュシーの件ですが――無事、扇岩での告白が成功しました! 本当に皆さんのアドバイスと後押しのおかげです! なんとお礼を申し上げたらいいか!』
「やったー!」
ハンター達は手を叩いたり、万歳をしたり、やれやれと言わんばかりに首を振ったり、思い思いの動作で若い2人組を祝福した。ガブリエルがどこからか蕾の赤薔薇を取り出し、その香りを嗅ぎながらぽつりと言った。
「まあ、あれほど背を押してやったのだ。上手くいってもらわなければ困るさ」
●がんばれヨアン
扇岩での告白予定日の前日。ガブリエルに唆され、デレデレしながら小一時間ほどリュシーのことを語ったヨアン。そんな彼に、ガブリエルが1本の蕾の赤薔薇を差し出し、面白そうに告げた。
「男なら贈り物の一つでも持って、ドンと告白するがいいよ。聞く限りじゃ、きっと引く手数多だろう。あっという間に他の男にとられてしまうものさ」
「ど、ドンと……で、でも確かにリュシーって可愛いし気立ても良くて人気があって……本当に僕なんかで大丈夫なんでしょうか……」
ここにきてヘタレるヨアン。今更である。そんな彼を今度ははるなが励ました。
「ん~……オンナノコの気持ちとしてはー、仲良いヒトから告られて嬉しくないワケないんだし、もっと自信持つこと。あんまり自身無さ気だと、逆にガチしょんぼり沈殿丸な結果しか帰って来ないかもー」
「ガチションボリチンデンマル……? うーん、自信……自信……」
「難しく、考える、必要、は、無い」
ネヴェがいつもの調子で淡々と言った。
「男なら、小細工、など、せず、其の侭、言えば、良いのでは、ない、か?」
「ええっ!? 僕の考えてることそのまま言ったりなんかしたら、リュシーに変態だと罵られてしまう!」
「キミは一体何を考えているんだ……」
ガブリエルが呆れてそう呟いた時だった。足音が耳に入り、全員がそちらを見ると、肩で息をしたリュシーだった。
「リュ、リュシー……!?」
「あ、あのねヨアン……」
リュシーは何か言いかけ、顔を真っ赤にして俯いてしまった。しかし数秒で意を決したように顔を上げる。
「わっ、私――明日の夜……た……楽しみに、してるから……!」
リュシーは絞り出すようにそれだけ言って、どこかへ駆けていってしまった。
「えっ……い、今のって……えっ、ちょっ、ええっ!?」
1人狼狽しまくるヨアン。そんな彼に、モカが明るい笑顔で微笑んだ。
「えーっと――頑張ってね!」
「――う、うん! 頑張ります!」
●再びオフィス
高いテンションのまま、舞が続きを読む。
『それとユルバンとフルールも、改めて告白し直してカップルになったみたいです! あの2人にも色々手助けしていただいたんですね。ハンターの皆さんの親切心に頭が下がる思いです』
「あー、こっちも上手くいったんだ! こっちも大変だったよね♪」
舞は悪戯っぽくざくろを見た。ざくろは頬を紅潮させる。
「い、いいじゃないかその時のことは!」
●まけるなユルバン
「告白のやり直し、してみたらどうかな? 雑魔に邪魔されちゃった事も、きっと後には2人の思い出になると思うんだ」
「絶対、フルールちゃんはもう一度、ちゃんと告られたいって思ってると思うよー」
「お互い、想い合って、いる、なら、お互い、怪我、も、している。見舞い、に、花束でも、持って、行って、改めて、想い、を、伝えれば、良いのでは、ない、か?」
「そうそう! むしろ、こんな思い出に残る告白中々ないよね!」
道端で突然、ざくろ、はるな、ネヴェ、モカの4人に囲まれて熱心に励まされるという事態に、ユルバンはやや気圧されながら肩を落とした。
「分かってはいるんだけど……フルールは化け物の毒を顔に受けてしまったらしくて、あれ以来俺に会ってくれないんだ。幸い酷い怪我じゃないみたいなんだけど、きっとショックなんだと思う」
傷ついた顔を想い人に見せたくない――そんな乙女心が絡んだ問題が発覚し、どうしたものかと考え込んでしまうハンター一同。そこへ、何者かの怒号が響き渡った。
「ちょっとユルバン! あなた私がいない隙に女4人と何楽しそうにお話ししてるワケ!?」
「フルール!?」
なんとフルール当人の登場だった。頬に湿布をした彼女は、怒り心頭といった様子でユルバンに怒鳴りかかる。
「せっかく勇気出して、今度は私から――って思って来たのに……もう知らない!」
絶句して何も言えないユルバンを置いて、彼女は大股で行ってしまった。
「あちゃー……タイミング悪かった……」
そこへ、舞が駆け足でやって来た。はるなが尋ねる。
「舞ちゃん、フルールちゃん何かあったカンジぃ?」
「えっとね、彼女も一歩が踏み出せないような雰囲気だったから『あたしがユルバンさんにアタックしてみようかな。結構タイプかも♪』って煽ってみたんだ。そしたら『そんなのダメっ!』って一目散に彼の許へ走り出して、作戦成功っ♪ ――って思ったんだけど……とりあえず急いで誤解解いてくるね!」
「ちょっと待ってよ! 『女4人』ってなにさ! ざくろ、男、男だから!」
「落ち着け、ざくろ、もう、フルール、は、居ない」
あーだこーだ騒ぐハンター達の中で、頭を抱えてうな垂れるユルバンに、モカが優しく微笑んだ。
「えーっと――頑張ってね!」
「――う、うん……頑張ります……」
●またまたオフィス
未だ顔の赤みが取れないざくろが、咳払いをして言った。
「まあ、でも2組とも上手くいって良かったよ」
「きっととっても頑張ったんだね!」
モカが明るくその場をまとめ、ハンター達は再び、ヨアンからの無駄に長い手紙に目を通し、笑い合うのだった。
「なーんにも無いしぃ。ってかタダの森のお散歩ってカンジぃ?」
はるな(ka3307)がぼやく。昼間でも薄暗い森の探索を開始してから約10分、ハンター達は未だ敵の痕跡を発見できていない。ガブリエル=VIII(ka1198)が周囲を観察しながら言った。
「敵はいつどこから襲い掛かってくるのか分からない。気を抜いてはいけないよ」
「その通り、だぞ、はるな。そんな、に、油断しているから、背中に、ムカデ、が、付いても、気づか、ない、んだ」
ネヴェ・アヴァランシェ(ka3331)が、はるなの背にくっついていた普通のムカデをぽいっと掃った。
「ひぃい!? もっと早く言ってほしかったんだけど!」
「……あ、ちょっと静かに! どうやら近いようだよ」
時音 ざくろ(ka1250)が声を上げた。彼の飼い犬たちが低い唸り声を上げている。
「なんだか向こうの方からツンとくる過激なニオイがするかも……」
モカ・プルーム(ka3411)は涙目になって鼻を塞ぎ、道の向かう先を指さした。天竜寺 舞(ka0377)が様子をうかがう。
「道の向こうが明るくなってるね。木立の切れ間――あそこが扇岩ってことかな。よーし、他人の恋路を邪魔する雑魔なんか、ちゃっちゃと片付けてあげないとね」
ハンター達は舞の言葉に頷き、悪臭の根源へ接近を開始した。
●扇岩の間
幾節も連なった身体を扇岩の根元に巻き付け、その名を体現するかのような百本以上の鉤爪のような脚を、落ち葉や枯れ草の下に埋めるようにして、ソレは眠っていた。寝息を立てるように、一定のリズムで節と節が波打つように擦れ合い、ぎちぎちという耳障りな音と、鼻腔に焼けた鉄棒をねじ込むような悪臭を放つ。
ムカデである。しかし先程はるなの背にくっついていたものとはワケが違う。全長5メートル以上。体幅は大人の男の胴よりも幅広い。黒々と滑らかな殻は頑丈でありながら軽く、安物の鎧などよりも余程有能そうである。
ふと、何者かが接近する気配を感じ取り、大ムカデはおもむろに頭をもたげた。囮役を買って出た2人、ざくろとモカである。2人は森の際から1歩1歩、大ムカデと視線を合わせるように進んでくる。
大ムカデは、ギロチンの刃ほども厚さい大あごをガチガチと打ち鳴らす。威嚇のサインであろう。2人はそこで一旦立ち止まり、ざくろは盾を構えて、モカはいつでも攻撃を避けられるように身構えて、相手の出方を疑う。しばらく睨み合いが続くも、一向に大ムカデが岩を離れる様子は無い。
「もう少し刺激しないとダメかな……」
ざくろはゆっくりと3メートルほどのところまで接近すると、足元の小石を蹴り上げた。小石は大ムカデの頭に命中。敵は遂に怒ったのか、波打つ足をがちゃがちゃと鳴らして接近してきた。
「さぁこい、お前の相手はざくろだ!」
「ボクもいるよ~!」
ざくろと、鼻を塞いでいるので鼻声のモカは、大ムカデの攻撃をいなしつつ、敵が向かって来れば逃げ、止まればちょっかいを出しの繰り返しで、大ムカデを扇岩から引き離すことに成功した。
「……ん~、今んトコはイイカンジ? じゃあこのままいっちゃおっかな」
こっそり岩の反対側から敵の背後に忍び寄っていたはるなも、敵がすんなり予定通りの道筋を辿っているのを確認し、そのまま手を出さずに距離を詰めていく。
そして、大ムカデの長い身体が完全に木立に隠れた瞬間――木の上に潜んでいたネヴェの奇襲で乱戦の幕が開く。ネヴェは樹上からナックルを構えたまま飛び降り、落下の衝撃を乗せた一撃を食らわす。
「胴体、は、外した、か……だが――まずは、100分の1本、戴い、た」
彼女の拳撃は、敵の脚を1本へし折っていた。
「次はあたしだ!」
木陰に潜んでいた舞が姿を現し、目にもとまらぬ速さで剣撃を繰り出す。
「後ろががら空きなんですケド!」
さらに背後からはるなが風の刃を放つ。
2人の攻撃で敵の胴は深く切り裂かれ刺激臭のする体液を垂れ流す。しかしそれでもなお、大ムカデは前へ――囮として動き回り、少し乱れた息を整えるざくろ・モカの2人へと進む。
「2本、3本……」
「あたしを無視するとはいい度胸してるね!」
「こっからだと首遠いカンジだしぃ、攻撃しながらだんだん前行こうかな」
大ムカデの側面や背後から休みなく攻撃を加えるネヴェ・舞・はるな。一見ハンター達が圧しているようだが、ムカデは大して堪えていないかのように眼前の2人へ大あごを振るい、胴体を振り回して群がるハンター達を弾き飛ばそうとする。
「はぁはぁ……もう結構斬りまくってると思うんだけど、なんかまだまだ元気だね……どう思う、ガブリエル」
額の汗を拭いながら、舞が尋ねた。味方の回復の為に潜みつつ、死角から敵を観察していたガブリエルは、少し考えて言った。
「これ程攻撃しても弱る様子が無い……胴体への攻撃は効果が薄いのだろうか――」
その間にも戦いは続く。
「流れろ電流…恋の衝撃の様に」
ざくろの反撃と共に放たれた雷撃により、大ムカデの全身にショックが走る。節々がけたたましく軋み、動きが鈍くなる。続けざまにモカが、敵の頭を狙って剣を振るった。傷は付けたが、破壊するには至らない。
すると、今まで攻撃を意にも介していなかった大ムカデが、体を震わせ、はっきりとモカを睨んで激昂したのが分かった。そして攻撃直後で無防備になっていたモカを狙って、大あごの奥の口から毒液を吐き出した。
「ああっ!」
モカは咄嗟に顔を背けたが、着ていたマントと、マントからむき出しになっていた腕に悪臭を放つ液体を浴びてしまった。そのまま地面に尻もちをついたモカへ、トドメとばかりに再び敵が口を向ける。
「そうはさせない!」
側面から放たれたガブリエルの鞭を頭に受け、敵は不意を突かれたのか怯む。その隙にガブリエルは、モカを抱き上げて敵の正面から移動させる。
「すまない……反応が遅れた。今すぐ治療しよう」
「うう……ありがとうガブリエルさん」
「エルで構わない。礼を言いたいのはこちらだモカ嬢――皆、聞いてくれ!」
ガブリエルは全員に聞こえる声で叫んだ。
「敵は脚や胴体をどんなに攻撃されても、頭を狙ってくる2人を集中して噛み殺そうとし、頭に一撃入れたモカ嬢を最優先で排除しようとした! つまり頭を狙われることを極度に恐れている! 敵の弱点は頭かもしれない!」
それを聞いたモカ、ガブリエル以外の4人は攻撃を頭に集中させる。すると、大ムカデは露骨に体を捩って嫌がる素振りを見せた。必死に大あごを振るって4人の猛攻を迎え撃つ。
「ホントにここが弱いカンジなの? っていうかぁ、なんか増々反撃が強力になってるっぽいんだけど~」
「必死、に、なっているの、が、その、証拠、だ。このまま、攻める、ぞ」
普通サイズでもなかなか退治に苦労するムカデである。この巨大サイズ、さすがの装甲と体力で猛攻を耐えきり、やがて麻痺が幾分弱まったのか、長い体を翻して、扇岩へと逃げ始めた。
「逃げ切れる、と、思って、いる、の、か?」
ネヴェは余裕そうな表情で後を追う。
「お前、が、目の前ばかり、気にして、いる、間、に、戴いて、おいた、ぞ――100分の50本、ほど、な」
今や脚の半数近くは折れ、長い身体の後ろ3分の1は節ごとに切り刻まれ外殻のみで繋がっているような状態。これでは全速力を出せるわけがなかった。
「いい加減、止ま、れ」
ネヴェは胴体の中ほどに重たい一撃を叩き込んだ。大ムカデの胴体は潰れ、脚が止まる。
「やぁ~っと狙ってたとこ見えたー。ってコトでいただきぃ~」
はるなの風の刃が、動きの止まった敵の頭部の根元を切断。頭が大きく跳ね上がった。その落下地点に快足を飛ばしたのは舞だった。
「うげっ……まだ口動いてる。さすが虫の生命力だね。可愛くない……!」
舞の剣が頭部を貫き、扇岩の主はその動きを止めた。
●数日後のオフィス
「ヨアンさんから手紙がきたよ!」
舞が手にしていたのは、お世辞にも綺麗とは言えない字で書かれた便箋だった。ガブリエルが安心したように、しかし拍子抜けといった様子で肩を竦めた。
「私達を突然集めるのだから、何かと思えば……」
「ね、ね、それでさぁ~、ヨアンちゃんはなんだって?」
はるなに急かされて、舞が手紙を広げて音読を始めた。
『ハンターの皆さん、今回の化け物退治、本当にありがとうございました! しかも化け物を倒すだけじゃなくて、扇岩の掃除までしてもらったみたいで……臭いも全く残っていなくてびっくりしました!』
「はいは~い、はるなとぉ、ネヴェちゃんでガチ頑張ったンだよね~」
「そうだったの? ごめんね手伝えなくって……!」
モカが申し訳なさそうな顔をしたので、ネヴェがいやいや、と手を振った。
「モカ、は、怪我を、して、いたんだ、から……それ、に、ネヴェ、が、やりたかった、から、やった、だけ、だ」
「で~、たまたまそれを見っけたはるながヘルプしただけってカンジぃ」
皆で2人を労って、再び舞が続きを読み上げた。
『ところで、僕とリュシーの件ですが――無事、扇岩での告白が成功しました! 本当に皆さんのアドバイスと後押しのおかげです! なんとお礼を申し上げたらいいか!』
「やったー!」
ハンター達は手を叩いたり、万歳をしたり、やれやれと言わんばかりに首を振ったり、思い思いの動作で若い2人組を祝福した。ガブリエルがどこからか蕾の赤薔薇を取り出し、その香りを嗅ぎながらぽつりと言った。
「まあ、あれほど背を押してやったのだ。上手くいってもらわなければ困るさ」
●がんばれヨアン
扇岩での告白予定日の前日。ガブリエルに唆され、デレデレしながら小一時間ほどリュシーのことを語ったヨアン。そんな彼に、ガブリエルが1本の蕾の赤薔薇を差し出し、面白そうに告げた。
「男なら贈り物の一つでも持って、ドンと告白するがいいよ。聞く限りじゃ、きっと引く手数多だろう。あっという間に他の男にとられてしまうものさ」
「ど、ドンと……で、でも確かにリュシーって可愛いし気立ても良くて人気があって……本当に僕なんかで大丈夫なんでしょうか……」
ここにきてヘタレるヨアン。今更である。そんな彼を今度ははるなが励ました。
「ん~……オンナノコの気持ちとしてはー、仲良いヒトから告られて嬉しくないワケないんだし、もっと自信持つこと。あんまり自身無さ気だと、逆にガチしょんぼり沈殿丸な結果しか帰って来ないかもー」
「ガチションボリチンデンマル……? うーん、自信……自信……」
「難しく、考える、必要、は、無い」
ネヴェがいつもの調子で淡々と言った。
「男なら、小細工、など、せず、其の侭、言えば、良いのでは、ない、か?」
「ええっ!? 僕の考えてることそのまま言ったりなんかしたら、リュシーに変態だと罵られてしまう!」
「キミは一体何を考えているんだ……」
ガブリエルが呆れてそう呟いた時だった。足音が耳に入り、全員がそちらを見ると、肩で息をしたリュシーだった。
「リュ、リュシー……!?」
「あ、あのねヨアン……」
リュシーは何か言いかけ、顔を真っ赤にして俯いてしまった。しかし数秒で意を決したように顔を上げる。
「わっ、私――明日の夜……た……楽しみに、してるから……!」
リュシーは絞り出すようにそれだけ言って、どこかへ駆けていってしまった。
「えっ……い、今のって……えっ、ちょっ、ええっ!?」
1人狼狽しまくるヨアン。そんな彼に、モカが明るい笑顔で微笑んだ。
「えーっと――頑張ってね!」
「――う、うん! 頑張ります!」
●再びオフィス
高いテンションのまま、舞が続きを読む。
『それとユルバンとフルールも、改めて告白し直してカップルになったみたいです! あの2人にも色々手助けしていただいたんですね。ハンターの皆さんの親切心に頭が下がる思いです』
「あー、こっちも上手くいったんだ! こっちも大変だったよね♪」
舞は悪戯っぽくざくろを見た。ざくろは頬を紅潮させる。
「い、いいじゃないかその時のことは!」
●まけるなユルバン
「告白のやり直し、してみたらどうかな? 雑魔に邪魔されちゃった事も、きっと後には2人の思い出になると思うんだ」
「絶対、フルールちゃんはもう一度、ちゃんと告られたいって思ってると思うよー」
「お互い、想い合って、いる、なら、お互い、怪我、も、している。見舞い、に、花束でも、持って、行って、改めて、想い、を、伝えれば、良いのでは、ない、か?」
「そうそう! むしろ、こんな思い出に残る告白中々ないよね!」
道端で突然、ざくろ、はるな、ネヴェ、モカの4人に囲まれて熱心に励まされるという事態に、ユルバンはやや気圧されながら肩を落とした。
「分かってはいるんだけど……フルールは化け物の毒を顔に受けてしまったらしくて、あれ以来俺に会ってくれないんだ。幸い酷い怪我じゃないみたいなんだけど、きっとショックなんだと思う」
傷ついた顔を想い人に見せたくない――そんな乙女心が絡んだ問題が発覚し、どうしたものかと考え込んでしまうハンター一同。そこへ、何者かの怒号が響き渡った。
「ちょっとユルバン! あなた私がいない隙に女4人と何楽しそうにお話ししてるワケ!?」
「フルール!?」
なんとフルール当人の登場だった。頬に湿布をした彼女は、怒り心頭といった様子でユルバンに怒鳴りかかる。
「せっかく勇気出して、今度は私から――って思って来たのに……もう知らない!」
絶句して何も言えないユルバンを置いて、彼女は大股で行ってしまった。
「あちゃー……タイミング悪かった……」
そこへ、舞が駆け足でやって来た。はるなが尋ねる。
「舞ちゃん、フルールちゃん何かあったカンジぃ?」
「えっとね、彼女も一歩が踏み出せないような雰囲気だったから『あたしがユルバンさんにアタックしてみようかな。結構タイプかも♪』って煽ってみたんだ。そしたら『そんなのダメっ!』って一目散に彼の許へ走り出して、作戦成功っ♪ ――って思ったんだけど……とりあえず急いで誤解解いてくるね!」
「ちょっと待ってよ! 『女4人』ってなにさ! ざくろ、男、男だから!」
「落ち着け、ざくろ、もう、フルール、は、居ない」
あーだこーだ騒ぐハンター達の中で、頭を抱えてうな垂れるユルバンに、モカが優しく微笑んだ。
「えーっと――頑張ってね!」
「――う、うん……頑張ります……」
●またまたオフィス
未だ顔の赤みが取れないざくろが、咳払いをして言った。
「まあ、でも2組とも上手くいって良かったよ」
「きっととっても頑張ったんだね!」
モカが明るくその場をまとめ、ハンター達は再び、ヨアンからの無駄に長い手紙に目を通し、笑い合うのだった。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/23 12:16:27 |
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相談卓だよ 天竜寺 舞(ka0377) 人間(リアルブルー)|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/12/27 01:29:56 |