麻袋の人質

マスター:三田村 薫

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/07/22 07:30
完成日
2018/07/26 00:44

みんなの思い出

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オープニング

●夢枕に立ってやる
 やあ、こんにちは。僕はハンターオフィスで受付と依頼の説明をしている職員さ。もしかしたら知ってる人もいるかな? 教会のスライム討伐とか、麦畑の依頼とか、学校の人形歪虚の依頼とか斡旋してたんだけど。
 僕だっていつもオフィスに缶詰めって訳じゃない。たまには休暇を取って旅行することもある。人間気分転換が大切だからさ。

 まあ旅先で突然拘束される可能性とかも考えないといけないんだけどさ。

 と言うか、目的地に着くまでにちょっと時間が掛かりそうだったからその途中の村に立ち寄った。何故か大歓迎されて、あれよあれよと言う間に何故か長老のお宅に呼ばれてお茶まで出された。僕が戸惑いながらお茶を飲んでいると、長老は話し始める。
「いやあ、よくここまでお越しになった」
「はぁ」
 僕はなんでこんなに喜ばれるのかがよくわかっていない。もしかして生け贄だったりする? これから祭壇に捧げられたりしてしまう? いやそんな馬鹿な。
「実はですね」
 長老は突然そう語り始めた。
「最近、向こうの山の山賊がこちらまで足を伸ばしましてね」
「山賊が? 見なかったけど」
「あなた様が来たのとは反対側でしたから」
「それで?」
 嫌な予感がしながらも、僕は先を促す。
「酒蔵の娘を無理に連れて行ったのです。この娘を返して欲しければ、三日以内に五百万ゴールド用意しろ、と」
「それで? ハンターオフィスに通報したんですか?」
「とんでもない! ハンターを呼んだら娘を殺すと言われているんですよ!」
「……それって」
 未解決ってことじゃない?
「ただ、もう一つ連中は条件を提示しました。金が用意できなければ、身代わりの娘を用意しろと」
「娘を?」
「ええ」
 いつの間にか、僕の周りを若い衆が囲んでいた。麻袋にロープ、斧まで持ってやがる。殺す気か?
「僕は娘って柄じゃないぜ」
「あなたには申し訳ないと思っているわ」
 長老の奥さんが言った。
「悪く思わないで……」
「思うに決まってるでしょ」
 僕は言った。彼女は目を伏せる。僕は吐き捨てるように告げた。
「せいぜい悔やめよ。僕がこれで死んだりしたら、毎夜夢枕に立ってあげる。悪く思ってないかも、なんて、夢にも思えないでしょ?」
 男たちに拘束された僕は、麻袋に詰められて、約束の時間まで屋根裏に放り込まれた。うとうとしたり目が覚めて悶々としたりして過ごしていたけれど、突然階下で声がした。一夜の宿を求める声だ。
 ……この声を僕は知っている。
 だってハンターオフィスで聞いたことがある。
 直接にしろ間接的にしろ。

●ハンドアウト
 あなたたちは一仕事終えたハンターです。帰り道、出発時刻が少し遅く、目的地にたどり着く前に日が暮れてしまったため、近くにあった村に一夜の宿を借りようと立ち寄りました。他にも何人か、同じような事情で立ち寄ったハンターたちが来ています。

 長老をはじめとした村の人たちの様子はどこかぎこちないように感じます。滅多に客が訪れないから、だけでは説明がつかない。そう、あなたたちは感じました。

 やがて深夜になると、長老の家から麻袋が担ぎ出されました。人間が一人入ってしまいそうなくらいのものです。もぞもぞと動いており、生き物が入っていることは間違いありません。
 あなたたち皆、あるいは誰かがそれを追い掛けると、その先には……どうみても「山賊」としか言いようのない柄の悪い男どもが、獰猛そうな犬を連れて待っているではありませんか! その一人は村の女性らしき人を引き立てています。
「おう、来たな。金か、娘か……どうやら娘のようだな」
「こ、これがそうです……お受け取りください。できればお帰りになってから開けてください」
「ほーん? そいつぁなんでだ?」
「なにぶん暴力娘で、ここで自由にしたら何をしでかすかわかりませんですじゃ。うちの村に報復に来られても困ります……お願いです……どうかお帰りになってから……」
 何故か必死な長老。
「まあ、しょうがねぇ。だったらアジトに連れて帰ってたっぷり可愛がってやらぁ。へっへっへ」
 山賊のボスは汚らしい笑い方で承諾しました。麻袋の中身は結構暴れていますが、どうやら縛られているようで飛び出すまでには至らないようです。本当に暴力娘が入っているかのようでした。
「や、約束通りその娘を帰してください……」
「ほらよ」
「きゃっ」
 山賊は女性を村人たちの方に突き飛ばしました。若い衆の一人がそれを抱き留めます。
「もう大丈夫だ」
「で、でも私の身代わりのあの子は……」
「それについては心配するな……」
 さあ、ここからが本番です。山賊たちと、差し出される暴力娘(実はオフィス職員)。あなたはどうしますか?

リプレイ本文

●聞き耳を立てて
 一夜の宿を求めたハンターたちは、村の様子がおかしいことに気付いている。穂積 智里(ka6819)の提案で不寝番を始めた一行は、夜中に麻袋が担ぎ出されたのを見た。全員でこっそりと後を追うと、どこからどう見ても山賊としか言いようのない、犬を連れた武装勢力が待ち構えているのを見た。
 やりとりそのものは全員に聞こえたが、超聴覚を使ったネムリア・ガウラ(ka4615)には、麻袋から聞こえる声がどうも女性のものでないように聞こえる。
「本当に、娘さんなのかな……?」
 人であることは間違いないようだ。と、言うのも、口をふさがれてはいるが、その下で明らかに言語のような音節の気配が感じられるからだ。だが、男性……それも成人の声にも聞こえる。
「麻袋回収しに行きます。ジェットブーツあるので」
 智里が言うと、一行は顔を見合わせる。マリエル(ka0116)が智里を見た。
「アンチボディ掛けておきますね。お気を付けて」
「待って、スリープクラウドを掛けるわ。突っ込む人は巻き込まれないように気をつけて」
「ああ、わかりました。注意して援護しますね」
 七夜・真夕(ka3977)が言うと、クレイ・ルカキス(ka7256)が剣を抜きながらそれに応じる。
「私はボスから狙う。山賊に容赦はしないつもりだから」
 アルコルの装填を確認しながらルナリリル・フェルフューズ(ka4108)が宣言する。仲間たちの行動指針を聞いたネムリアは、
「じゃあ、私は逃げそうな山賊の足止めに動くね。犬も脅かしたら大人しくなってくれるかな」

●取引現場から戦場へ
 さて、ハンターたちが打ち合わせをしている間に、山賊は麻袋を担いで引き返そうと村人たちに背を向けた。解放された娘はまだ不安そうにしている。
「ねえ、あの子は……」
「良いんだ。心配しなくて良い」
「そうね、心配はいらないわ」
 真夕が声を掛けた。村人たちが驚いて彼女を見る。真夕はヴァイザーを掲げた。
「私たちが助けるもの」
 スリープクラウドの雲が広がる。真っ先に異変を察知したのは犬だ。警戒を促すように吠えながら、雲の範囲から出て行く。
「な、何だ!?」
「うっ」
「ハンターか!? ジジィ、てめぇ……!」
「ひぃ! 誤解です! 誤解です!」
 長老がうずくまって頭を抱える。
「長老! 巻き込まれるぞ!」
 若い男の一人が言って、長老を立たせる。スリープクラウドが晴れたときに立っているのは四人だけだ。
「起きろ! 寝るな!」
「智里さん、気をつけて」
 マリエルが幻影の鍵盤を叩き、智里にアンチボディをかける。障壁に包まれた智里はジェットーブーツで飛び立った。
 クレイも瞬足で強化したランアウトを使って麻袋の所まで飛ぶように走って行く。
 麻袋を持っていた山賊は眠っていたが、助けが来たと見て、起きていた一人が投擲ナイフを智里に投げつける。アンチボディの障壁で、ナイフは叩き落とされる。クレイが追いついた。
「助けに来ました、お願いだから暴れないでっ」
 智里が麻袋に声を掛けると、中の人間はそれでぴたりと大人しくなる。まるで、智里の言うことだから聞いておこう、と言わんばかりだ。知らない人間にしては聞き分けが良い。しかし、疑問に思っている場合ではない。
「おい、せっかくの女だぞ。そいつごと捕まえろ!」
「そうはいかないんだよな」
 一度は寝入ったものの、部下に起こされたボスが、頭を振って起き上がりながら叫ぶ。少し離れたところから、アルコルで狙いを付けていたルナリリルが小さく呟くと、引き金を引いた。遠射の狙い澄ました一発は、手痛い一撃になった。頭が倒れたことによって、山賊たちの空気が凍り付く。
 智里と山賊の間に入っていたクレイは、相手の隙を見逃さなかった。スラッシュエッジで相手の腕を切りつける。
「智里さん、行ってください!」
「ありがとうクレイさん」
 智里はそのまま、麻袋を抱えてアルケミックフライトで引き返した。犬が吠えて追いついてくる。
「そのくらい想定済みですっ」
 食いつかれる覚悟はしていたが、その時別の方から狼の遠吠えがした。狼が降りてきたのか? 思わずそちらの方を見ると、ネムリアが天に向かって吠えている。ブロウビートだ。犬たちはその声に怯んだ。自分より強い者の雄叫びだ。野生は力の差をわきまえている。
「な、何びびってんだ! 声真似だぞ!」
「畜生! おいずらかるぞ!」
 サブリーダーなのか、年長なのか、残っていた一人が寝ている仲間を起こしながら怒鳴った。起きている内の一人は、まだ震えている長老を見据えて喚く。
「ジジイてめぇ殺してやる!」
「ひぃ!」
「そうはさせないわ」
 自らにウィンドガストを施した真夕が、村人たちをかばうように立つ。反重力脚で狙撃場所から駆けつけたルナリリルが、逃げようとする村人たちにアルコルを向けて一喝した。
「逃げるな! 話があるから待て」
「待ってルナリリル! 巻き込む可能性があるからここは行かせた方が良いと思うの。村しか行くところもないし」
「巻き込んでも構わないと思うけどなぁ? まあ、山賊の盾にされても厄介か」
「そういうこと。さ、早く逃げて。事情は後で聞かせて貰うわよ」
「ひぃ!」
「村で大人しく待ってなかったら容赦しないからな」
 村人たちはルナリリルに怯えながら、村への道を一目散に辿る。
「てめぇそこどけ!」
 一方、仲間を担いで離脱しようとする山賊の前には、ネムリアの赤柴・スズメが立ちはだかっている。
「あのね、ハンターって、怖いの」
 ネムリアが後ろから呼びかける。山賊は振り返った。少し離れたところに、うっすらと銀の光を放つヘラジカの角を生やした、エルフの少女がそこに立っている。
「スズメ、お願い!」
 スズメは一声吠えると山賊に食らいついた。ただの犬の噛みつきではない。ファミリアアタックだ。術者の力がこもっている。噛まれた方はたまったものではない。悲鳴を上げると、担がれていた山賊も目を覚ます。彼は自分を支えていた山賊が倒れたことによって下敷きになった。

●麻袋の人質
 一方、智里は持って戻ってきた麻袋を、マリエルのアースウォールの後ろに置いた。
「智里さん、お怪我はありませんか?」
「私は大丈夫です」
 気遣わしげなマリエルに返事をすると、智里は荷物の中からテルハールナイフとヒーリングポーションを取り出した。
「袋を破きます、動かないで下さい」
 やはり麻袋の中身は大人しい。智里は一気に袋を切り裂いた。
 身代わりの娘と言うからには、中には女性が入っているものだと思っていた。麻袋の中身の身長は、確かにクリムゾンウェストの成人男性の平均より少し背が高いとは思っていた。だがそれでも、背の高い女性が入っているものだと思った。知らない女性が。
「……え? 職員さん? え? 女の子って……」
 中身は智里も依頼を受けたことがある、ハンターオフィスの男性職員だった。
「この人が……? でも、確かにネムリアさんが本当に娘さんなのかって言ってました」
 マリエルも目を丸くする。二人で彼の拘束を解くと、彼は疲れ切った顔で二人を見る。
「死ぬかと思った。助かったよ……あいつら覚えてろよ……」
「とりあえずポーションは飲んで下さい?」
「ありがとう」
 智里のポーションを一気に飲むと、職員は混戦の様相を呈し始めた山賊の方を見て、怒鳴った。
「非覚醒者でろくに徳も積んでないお前らがハンターに勝てると思うなよバーカ! 悔い改めろ! 地獄に落ちろ!」
「思ったより元気そうで良かったわ」
 真夕がうんうんと首を縦に振る。

 一方、クレイは山賊の一人を追い詰めつつあった。いくら新人ハンターとは言え、身体能力は一般人のそれを凌駕する。
「く、くそこのガキ!」
「はっ!」
 スクエアシールドで相手の斧をしのぎながら、シグリルオーマで斬撃を加える。
 眠っていた山賊たちも全員が起き出した。既に数人戦闘不能状態に陥ってはいるが、元々諦めの悪い連中が揃っているようで、ハンターに囲まれてもなお、武器を落とさない。
「逃がさないよ!」
 ネムリアがアレスタシオンで強かに打ち据える。スズメもまた主人の指示を待って唸っていた。
「おとなしくして貰います」
 マリエルも、アースウォールから前に出て、菊理媛を鞘から抜いた。向かってくる山賊は峰打ちにする。見た目に油断したのだろう。思ったよりも重い一撃に、その山賊は膝を突いた。
「皆! もう一度スリープクラウドを掛けるわ! 下がって!」
「いや、スリープクラウドは必要ないよ」
 真夕が声を上げると、何かを探しているように駆け回っていたルナリリルが、立ち止まって言った。
「でも下がった方が良いのは本当だ」
「ルナリリルさん、何を……?」
 クレイも怪訝そうにするが、彼含めて戦場にいた全員が距離を置く。
「焼き払う」
 彼女がいるところから、扇状に火炎の破壊エネルギーが吹き出した。プラズマのような電光を纏って、山賊たちを包む。出来るだけ大人数を巻き込める位置を、彼女は探していたのだ。仲間たちが囲んでいたおかげで、ほとんどを巻き込める。
「うっわぁ」
 職員はそれだけ口にしてから顔を背けた。炎に包まれた山賊たちの悲鳴が、轟音に混ざってこちらまで響いてくる。
 やがて火が消えた。もう、逃げようとする山賊は誰もいなかった。

●夢枕には立たない
「戻ってから村が空っぽってことになってなきゃいいけどなぁ」
 ルナリリルが言うと、職員が首を横に振った。
「山賊にこんな頭の悪いやり方で対応するんだから、村を捨てるなんて発想はないよ」
「それもそうか」
「それにしても助かった。本当にありがとう」
 全員が村に戻ると、村は静まり返っていた。逃げられたか、と思ったがそうではない。大人全員が長老宅に集まっていたのだ。
「じゃあ何!? 私を引き取るために見ず知らずの人を麻袋に詰めたって言うの!? 信じられない!」
 囚われていた女性の怒鳴り声が、屋内から聞こえてきた。
「村全体がそう言うものの考えってわけじゃないんですね」
 クレイが感心したように言う。ルナリリルも頷いた。
「まっとうなのもいるんだな」
「あなたは、どうしたい?」
 ネムリアが職員に聞いた。
「どうって?」
「わたしは、村の人、というか、あなたを罠に嵌めた人たちは突き出すところに突き出せば良いんじゃないかなって思うんだけど」
 皆の気が収まらないみたいだから。そう言ってネムリアが見るのは智里とルナリリルだ。智里に関しては、職員が許しやすくするように敢えて過激に振る舞っているところもあるが、そんなこと職員は知らないのである。
 ルナリリルは、逃げる村人に銃を向けることも辞さないくらいだ。職員の意思は尊重するが、優しくする必要は感じていない。
 マリエル、真夕、ネムリア、クレイは、どちらかと言うと穏便に済ませる方が良いのではないかと思っている。とはいえ、そこは職員の意思を尊重するつもりでいるらしい。
「向こう次第だよ。彼女の声聞いちゃったら恨むに恨めなくなってきちゃった」
「優しくする必要ないよ」
「僕って小心者だからさ」
 職員が肩を竦めると、マリエルが長老宅のドアをノックした。
「ごめんください、先ほどのハンターです」
 屋内が静まり返る。やがて、若い衆の一人がドアを開けた。職員はにたりと嫌みっぽい笑顔を作る。
「夢枕に立つ必要はなさそうだよ」
「……長老、連中です」
「山賊みたいに言わないでくれる? 君たちは言うなれば彼らに助けられたんだ。あのまま僕が引き渡されてたら、約束を違えたってこの村ごと焼き払われてもおかしくなかったんだぜ」
「入りなさい」
 村の大人たちは、皆不安そうにハンターたちを見ている。ルナリリルが腕を組んで、屋内を見渡した。
「で? どう言うことだ?」
「私が攫われて、五百万ゴールドか身代わりの女の子って言われたから、身代わりで、知らない人を捕まえたのよ! 信じられない!」
 興奮気味に説明したのは、捕らえられていた彼女だ。
「こんな村、焼いたって構わないわよ!」
「落ち着きなさい」
「何で落ち着けるの!? 私のせいで人が死んだかもしれないのに!? 想像するだけでぞっとするわ!」
「お前は自分が死んでも良かったのかね!」
「良くないわよ! でもだったらハンターさんを呼べば良かったのよ! でもこのハンターさんたちは……」
「一晩泊めて頂こうと思って。偶然です」
 マリエルが言うと、女性は頭を抱えた。
「結局ハンターさんが来てくれて、こうやってどうにかなったじゃない! 山賊はどうなったの?」
「知らない方が良いと思うわ。少なくとも、報復できる状態じゃないから安心して」
 生き残りはこの後警察機関に突き出す予定だ。真夕が言うと、彼女は少し複雑そうな顔をしたが頷いた。それからまた村人たちに向く。
「大体、中身が彼だって知られたら、それこそ報復に来られたかも知れないじゃない!」
「そんなことまで考えていられるか! 身内が一人死ぬかもしれないのになりふりなんて構ってられん!」
「そうそう。身内が危なかったら、なりふりなんて構っていられませんよね」
「智里?」
 突然口を開いた智里を、職員は怪訝そうに見る。
「私達にとっては身内を殺されかけたわけで……うん、この人たち全員殺していいんじゃないでしょうか」
 にっこり。
「智里ォ!?」
「まあ、被害者次第だ。個人的には私刑も構わないと思う」
「ルナリリルさん」
 ルナリリルが機導剣に手を掛けた。その様子を見て、マリエルが呼びかける。
「私は、司法にゆだねるべきだと思うけど……」
 真夕が小声で言った。
「個人的には全員、何らかの理由でのたうち回って欲しい」
 職員は正直に言った。
「僕は死んで終わりにするよりも生きてて苦しんで欲しい派閥なんだ」
「お、案外言うな」
「ただ、僕はエクラ教徒でもある。歪虚には苛烈だがそれ以外では結構寛容な教えなんだ。それに、オフィスの職員だ。これを期に彼らを啓蒙したい。何かあったらハンターオフィスに頼るようにと」
 本来なら守られるべき彼らだ。ハンターオフィス案件であるこの村を、私怨で私刑に処してしまうのも、それはそれでためらいがある。
「ここの警察機関に通報する。あとはしかるべき裁きを受けてくれ。拉致誘拐、監禁……情状酌量がつくかもしれないけど、数で掛かった報いは受けてもらう」
「まあ、本人がそう言うならそれで良いよ」
 ルナリリルがそう言って剣から手を離す。智里も頷いた。その様子を見て、クレイが村人たちに向き直る。
「そういうことだそうです。あなたたちのことは司法に任せると。近日中に事情聴取があると思いますがよろしいですね」
「……良いでしょう」
 長老が渋い顔で頷くと、ネムリアが職員の後ろから顔を出して、言った。
「あのね。ハンターオフィスの職員も、怖いんだよ?」
 主に同意するように、スズメも一声鳴いた。

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MVP一覧

  • 竜潰
    ルナリリル・フェルフューズka4108
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里ka6819

重体一覧

参加者一覧

  • 聖癒の奏者
    マリエル(ka0116
    人間(蒼)|16才|女性|聖導士
  • 轟雷の巫女
    七夜・真夕(ka3977
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • 竜潰
    ルナリリル・フェルフューズ(ka4108
    エルフ|16才|女性|機導師
  • 希望の火を灯す者
    ネムリア・ガウラ(ka4615
    エルフ|14才|女性|霊闘士
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里(ka6819
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
  • 駆け出しハンター
    クレイ・ルカキス(ka7256
    人間(蒼)|17才|男性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ネムリア・ガウラ(ka4615
エルフ|14才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2018/07/22 07:09:15
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/07/21 05:37:57