ゲスト
(ka0000)
霧に隠れた狩人
マスター:ザント

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~4人
- サポート
- 0~20人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/07/30 07:30
- 完成日
- 2018/08/03 04:29
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
闇が支配し、獰猛な生物が活発に動き出す夜。
農耕推進地域ジェオルジにある草原は、今は霧に包まれていた。
その中で焚き火の灯りが揺らめき、それを囲むように座る四人の男女がいた。
男女は霧の中でありながらも談笑しつつ食事を取っていた。
「それで行ってみたら……こんなにでかいネズミだったわけだ!」
「……それ雑魔だったんじゃないの?」
両手を大きく広げて大きさを示す男性に横にいた女性が横槍を入れると、男性はやれやれと言った風に首を横に振る。
「そんな訳ないだろ、レミア。雑魔だったら少なからず騒ぎになってるはずだろ」
「確かにそうだな。だとしたら、本当にネズミがそんなに大きくなったっていうのか?」
黙々と食事を口に運んでいた男性が疑念の声を上げ、レミアも同意するように頷く。
「おいおい、お前まで疑うのかよ」
「ヴァンの言うことはほとんどが誇張したものって決まってるからね」
「違いない」
最後の一人も口を開き、肩をすくめるヴァンを除いて声を上げて笑う。
四人はハンターで、依頼を受ける時以外は街から街、時には村から村を一人で旅をする旅人だった。
だが、ある街で四人は出会うと同じ旅人だからかすぐに意気投合して共に旅をすることになった。
最初は次の街までだったが、その次にはまた次の街までと、言い方は悪いがそれが何度も続いていき、今では切っても切れない……大切な仲間となっていた。
「しっかし、霧が出るなんて運が悪かったな」
一頻り笑った後、男性がぽつりと呟いた。
最後に立ち寄った村から次の村へ出発したのは早朝で、予定では日没前までには着いているはずだったが、途中で霧が出て来てしまって方向を見失ってしまった。
そして今はご覧の通りの野宿である。
「そうだな。まぁ、アクシデントも旅の醍醐味さ」
「そうね。でも、霧も四~五メートルくらい先は見える程度だったのは不幸中の幸いだったわね」
前向きに考える男性とレミアも肯定的な意見にヴァンたちも頷く。
「そろそろ休むか。見張りは交代制で、まずは俺からでいいか?」
ヴァンの立候補に他の三人は頷くと、すぐに就寝の準備を始めた。
「……?」
レミアが目を覚ました理由は些細なことだ。
顔に何かがかかった程度のことだ。
続いて何かを咀嚼する音が耳に届き、見張りの誰かが隠れて何かを食べてるのかと思ってレミアは目を開き。
「ひっ」
レミアは思わず小さい悲鳴を漏らした。
その悲鳴は驚きではなく、恐怖から出たものだった。
何故なら、焚き火の光に照らされているその顔は、血の気を失った真っ白な……大切な仲間であるヴァンの顔だったからだ。
口から鮮血がレミアの顔へと滴り落ちており、これが原因がレミアは起きたのだろう。
半分となったヴァンは巨大な鎌に挟まれて水っぽい咀嚼音を立てながら食われ続けている。
レミアは変わり果てたヴァンから視線を逸らし、巨大な鎌の持ち主の正体を見た。
それは巨大な真っ白なカマキリだった。
他でもする咀嚼音の方にも目を向け、その巨大カマキリは一匹ではなく他にも何体もいるのをレミアは確認する。
他の仲間の変わり果てた姿も。
何故自分だけが生き残っているのかは分からない。
でも、ハンターとしての使命からか、それとも仲間を殺されたからか。
レミアは生き残る為に、逃げずにそのまま身動き一つせずカマキリがここを去るのを待つことにした。
(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい)
目をつぶり、仲間たちが食われる音を聞きながらレミアは心の中で仲間たちに謝りながら待ち続ける。
どれくらい経っただろうか……途中で気絶でもしたのか、レミアがふと気付けばカマキリたちは居なくなっていた。
仲間たちが居なくなった証である真っ赤な血の跡だけを残して。
「その後、レミアさんは最寄のハンターオフィスに報告したことで事件が発覚。レミアさんからの証言と時期的に見て……恐らく相手はミストマンティスに間違いないと思われます」
ハンターオフィスの女性職員は元ハンターとしての知識を元に敵を特定し、敵の情報を伝えてきた。
「ミストマンティスは霧の中の殺人鬼と呼ばれる珍しい巨大昆虫です。普段は森に生息している体高が3mにもなる巨大な白いカマキリで、普通のカマキリと同じく肉食。虫や動物などを食べて生きています。ですが、繁殖期であるこの時期になると外敵が多い森から草原に移動してから白い泡で1つにまとめながら100個近い卵を出産します。その後、さらに魔法を使って霧を発生させて卵を守りながら、霧の中に入ってきた生物を捕らえて卵の孵化を待つという生態を持っています」
職員は何を思ったのか、一瞬だけ顔を顰めてから依頼内容を説明し始めた。
「今回の依頼主は我々ハンターオフィスから。複数居ると思われるミストマンティス全ての討伐と、可能であれば複数あると思われる卵全て焼くなりして始末をお願いします。ミストマンティスが居る霧の場所はレミアさんの話を聞いて場所は特定していますので、そこへ向かってください」
説明を終えた職員は最後に。
「尚、霧の中で闇雲に動くのは危険ですので、くれぐれも慎重に行動をお願いします」
と、真剣な表情で注告した。
農耕推進地域ジェオルジにある草原は、今は霧に包まれていた。
その中で焚き火の灯りが揺らめき、それを囲むように座る四人の男女がいた。
男女は霧の中でありながらも談笑しつつ食事を取っていた。
「それで行ってみたら……こんなにでかいネズミだったわけだ!」
「……それ雑魔だったんじゃないの?」
両手を大きく広げて大きさを示す男性に横にいた女性が横槍を入れると、男性はやれやれと言った風に首を横に振る。
「そんな訳ないだろ、レミア。雑魔だったら少なからず騒ぎになってるはずだろ」
「確かにそうだな。だとしたら、本当にネズミがそんなに大きくなったっていうのか?」
黙々と食事を口に運んでいた男性が疑念の声を上げ、レミアも同意するように頷く。
「おいおい、お前まで疑うのかよ」
「ヴァンの言うことはほとんどが誇張したものって決まってるからね」
「違いない」
最後の一人も口を開き、肩をすくめるヴァンを除いて声を上げて笑う。
四人はハンターで、依頼を受ける時以外は街から街、時には村から村を一人で旅をする旅人だった。
だが、ある街で四人は出会うと同じ旅人だからかすぐに意気投合して共に旅をすることになった。
最初は次の街までだったが、その次にはまた次の街までと、言い方は悪いがそれが何度も続いていき、今では切っても切れない……大切な仲間となっていた。
「しっかし、霧が出るなんて運が悪かったな」
一頻り笑った後、男性がぽつりと呟いた。
最後に立ち寄った村から次の村へ出発したのは早朝で、予定では日没前までには着いているはずだったが、途中で霧が出て来てしまって方向を見失ってしまった。
そして今はご覧の通りの野宿である。
「そうだな。まぁ、アクシデントも旅の醍醐味さ」
「そうね。でも、霧も四~五メートルくらい先は見える程度だったのは不幸中の幸いだったわね」
前向きに考える男性とレミアも肯定的な意見にヴァンたちも頷く。
「そろそろ休むか。見張りは交代制で、まずは俺からでいいか?」
ヴァンの立候補に他の三人は頷くと、すぐに就寝の準備を始めた。
「……?」
レミアが目を覚ました理由は些細なことだ。
顔に何かがかかった程度のことだ。
続いて何かを咀嚼する音が耳に届き、見張りの誰かが隠れて何かを食べてるのかと思ってレミアは目を開き。
「ひっ」
レミアは思わず小さい悲鳴を漏らした。
その悲鳴は驚きではなく、恐怖から出たものだった。
何故なら、焚き火の光に照らされているその顔は、血の気を失った真っ白な……大切な仲間であるヴァンの顔だったからだ。
口から鮮血がレミアの顔へと滴り落ちており、これが原因がレミアは起きたのだろう。
半分となったヴァンは巨大な鎌に挟まれて水っぽい咀嚼音を立てながら食われ続けている。
レミアは変わり果てたヴァンから視線を逸らし、巨大な鎌の持ち主の正体を見た。
それは巨大な真っ白なカマキリだった。
他でもする咀嚼音の方にも目を向け、その巨大カマキリは一匹ではなく他にも何体もいるのをレミアは確認する。
他の仲間の変わり果てた姿も。
何故自分だけが生き残っているのかは分からない。
でも、ハンターとしての使命からか、それとも仲間を殺されたからか。
レミアは生き残る為に、逃げずにそのまま身動き一つせずカマキリがここを去るのを待つことにした。
(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい)
目をつぶり、仲間たちが食われる音を聞きながらレミアは心の中で仲間たちに謝りながら待ち続ける。
どれくらい経っただろうか……途中で気絶でもしたのか、レミアがふと気付けばカマキリたちは居なくなっていた。
仲間たちが居なくなった証である真っ赤な血の跡だけを残して。
「その後、レミアさんは最寄のハンターオフィスに報告したことで事件が発覚。レミアさんからの証言と時期的に見て……恐らく相手はミストマンティスに間違いないと思われます」
ハンターオフィスの女性職員は元ハンターとしての知識を元に敵を特定し、敵の情報を伝えてきた。
「ミストマンティスは霧の中の殺人鬼と呼ばれる珍しい巨大昆虫です。普段は森に生息している体高が3mにもなる巨大な白いカマキリで、普通のカマキリと同じく肉食。虫や動物などを食べて生きています。ですが、繁殖期であるこの時期になると外敵が多い森から草原に移動してから白い泡で1つにまとめながら100個近い卵を出産します。その後、さらに魔法を使って霧を発生させて卵を守りながら、霧の中に入ってきた生物を捕らえて卵の孵化を待つという生態を持っています」
職員は何を思ったのか、一瞬だけ顔を顰めてから依頼内容を説明し始めた。
「今回の依頼主は我々ハンターオフィスから。複数居ると思われるミストマンティス全ての討伐と、可能であれば複数あると思われる卵全て焼くなりして始末をお願いします。ミストマンティスが居る霧の場所はレミアさんの話を聞いて場所は特定していますので、そこへ向かってください」
説明を終えた職員は最後に。
「尚、霧の中で闇雲に動くのは危険ですので、くれぐれも慎重に行動をお願いします」
と、真剣な表情で注告した。
リプレイ本文
●
依頼を受け、ハンターズオフィスにあるテーブルに集まった四人。
まず最初に自己紹介でもと、誰からともなく言って自己紹介が始まった。
「私はフェリア。よろしくね」
「どうもぉ、星野ハナですぅ」
「わたしはクオン・サガラです」
「ディーナ・フェルミなの。よろしくなの」
始めにフェリア(ka2870)が自己紹介をすると、続いて星野 ハナ(ka5852)が、次にクオン・サガラ(ka0018)、そしてディーナ・フェルミ(ka5843)の順で自己紹介をする。
「では、自己紹介が済んだ所で依頼について作戦を話し合いたいと思うのですが、よろしいですか?」
年長者だからか、クオンが話を振ると三人は同時に頷き、意見を出し始めた。
「今回はミストマンティスを全て討伐して欲しいとのことでしたね」
「卵があるから親虫は大きくは逃げないと思うの。だから殲滅するの」
ディーナがやる気満々の姿勢を見せると、ハナはんー、と唸る。
「全滅させなきゃならないならぁ、やっぱり端っこから絨毯爆撃的に全踏破がいいんじゃないでしょぉかぁ。下手に撃ち漏らしが出ても困りますしぃ、全方位からの一斉襲撃はなるべく避けたいですしぃ……敵は飛ぶから完全に安全とは言い切れませんけどぉ」
「そうなると、やはり霧を何とかしない駄目ですか。わたしは馬に出来るだけ多く角材をけん引させて、大きな焚火を作って霧を晴らす作戦を考えていますが……」
クオンが三人の意見も聞こうと三人に順に目を向けるとフェリアが優雅に手を上げた。
「私もちょっと乱暴ですが、魔法で地面を熱して行く作戦を考えていました」
「なるほど。魔法を使う方法も良いですね」
フェリアの作戦にクオンは感心の言葉を漏らす。
その後も少し話し合い、クオンとフェリアの方法で霧を晴らすことを決めると次はミストマンティスについてになる。
「炎があれば温度差が出るし霧も流れるの。自分達の身を隠すだけでなくそうやって獲物を見つける役にも立てていると思うの。寝ていて火の傍の地面の温度と体温の差が分かり難かった人だけが助かったのはそういうことだと思うの」
「確かに……」
「それか、寝ている人の死命を分けたのは卵への距離だったかもしれないの。それならその方向から来て火を避けなかったからより温度差に気付き易かった可能性があると思うの。卵探しの時確認しましょうなの」
生い立ちからか、昆虫に詳しいディーナが主導権を握って意見を言っていき、他の三人もその意見に納得していく。
「これが肉食系の甲虫だったら本当にCAM案件の殴り合いなの。でも蟷螂のお腹は柔らかいから何とかなると思うの。卵は親虫討伐後なら見つけやすいと思うの」
「私、10分おきにしか使えませんけどぉ、生命感知持ってきましたぁ。ミストマンティスの子供なら卵の中でも普通の蟷螂の成虫並みかもしれませんからぁ、上手くいけば卵位置が判別できるかもですぅ。不自然に周囲に生命が居なくてでも生命が重なってる場所があったらぁ、ミストマンティスの成虫が居る場所かもしれないと思いますぅ。少しでも襲撃が察知できるよう所々で使って行きますぅ」
ディーナの見つけやすいという言葉でハナでバッと手を上げてそう言った。
それを聞いて、依頼を遂行できそうだと思った四人は、霧の中での行動を手早く決めると準備をするためにいったん解散する。
その後、準備を終えた四人は再度合流し、目的地へと出発した。
●
農耕推進地域ジェオルジにある草原。
そこは普段ならば草花がさんさんと日光を浴びる自然豊かな場所だが、今は巨大な濃い霧に覆われていた。
「どうやらあそこみたいですね」
「真っ白なの」
その霧から少し離れた場所でフェリアは目的地を見据えながら、同じく眺めていたディーナは見たままの感想を呟く。
「まるでわたがしみたいですぅ」
「あぁ、確かにそう見えますね」
するとディーナの感想に影響を受けたのか、ハナは霧を見て彼女らしい感想を言うとクオンはそれに頷きながら同意を示した。
今からのことを考えると、全体で百メートル以上のわたがしならどんなに楽なことだったか。
四人はそんなことを一瞬考えたが、すぐに頭から消すと霧への突入準備を整えていく。
最後にディーナとハナが魔法がかかった水晶球を浮かばせ、松明を灯すと四人は霧へと突入した。
「やはりと言うのでしょうか。霧で遠くは見えませんね」
霧の中はフェリアの言う通り精々が四~五メートル程度を見渡せる程度であり、それより先は白い壁に閉ざされている。
これは目撃者の話と同じなので、霧が悪化していないことに四人は安堵した。
「離れたら危ないの。みんな一緒に行くの」
「そうですね。まずは進んでいきましょう」
ディーナの確認の言葉に全員は頷き、親虫の足跡などに気をつけながら、霧の奥へと歩みを進めていく。
「わーっ!」
ディーナが大きな声を出しながら歩き続け、前もって決めていた生命感知を使うポイントまで進んだところで、ハナが生命感知を使うこととなった。
「では、お願いしますね」
「分かりましたぁ。いきますよぉ」
ハナの目が蒼く輝き、風もないのに髪がゆらゆらと広がり出した。
そしてハナから二枚の符が飛び出ると同時に不可視の結界がハナを中心に敷かれ、ハナは結界内にいる生命体の位置を把握する。
「見つけましたぁ。左後方に十ニメートルのところに二つですぅ」
ハナが指差す方向に目を向け、クオンがディーナは首を横に振る。
「少し遠いですね、移動しないと届きません」
「私も届かないの」
「私が」
言淡く輝く銀髪と背中に髪と同色の輝く翼の幻影を背負いながら、フェリアが言葉少なく呟くと、ハナが探知した場所とその付近三箇所。
それぞれの少し上辺りに濃い霧の向こうからも見て分かる程に光る球が出現したと思ったら、一斉に降り注いだ。
「きゃっ」
「っ」
「ひゃあっ」
爆音と爆風が四人を襲い、ほんの少しだが熱が肌を撫でて消える。
爆風によって霧が吹き飛んだことで、爆心地がよく見えた。
煙と熱気を上げる焦げた大地と炭化した何か、それと何とか原型を止めている巨大カマキリの死骸がそこにあった。
「す、凄いですぅ」
「えぇ、凄まじいですね……」
「フェリアさん、凄いの」
「ありがとうございます」
フェリアは何事もなかったかのように振舞っているが、内心では思った以上の惨状にとても驚いていた。
四人が驚いている中、霧がじりじりと空いた部分を埋めようと晴れた部分を侵食し始めるが、熱気に当てられたのかすぐに消えていく。
そうしてほんの一部分ではあるが霧が晴れた場所が出現した。
四人は霧の中にいるよりも霧が晴れている場所にいる方がいいと判断し、死骸の確認もかねて移動をする。
「これはミストマンティスですよねぇ」
「多分そうなの」
「このすぐ近くにあるのは卵でしょうか」
「恐らくはそうでしょう」
遠目ながら軽く死骸たちの検分をしていると、ハナが急に声を上げた。
「反応が二つ、結界に入ってきましたぁ!」
「どの方向でしょうか」
フェリアの問いにハナは素早く感知した方向を指差した直後、指を差した方向とは全く別の方向……死骸を挟んだ霧の中から真っ白な巨大カマキリが姿を現した。
今いる場所はハナが張った結界の端の方であるが為に、感知出来ずに虚を突かれたのだ。
「っ!」
「キュァアッ」
ディーナは反射的に光の波動を放つと、ミストマンティスに直撃するが、仕留めきれない。
ハナが追撃として符を放ち、ミストマンティスを焼き焦がしてようやくミストマンティスは地響きを立てて倒れた。
それを見て四人は無力化出来たと判断して目を離し、ミストマンティスたちが迫ってきている方向へと目を向ける。
霧の中からざかざかと足音が聞こえると思うと、ミストマンティスが北と東の二方向から現れた。
「キシュァァ!」
「キュォオ!」
ミストマンティスたちが現れた瞬間に、ディーナは近づき再び光の波動を放つ。
衝撃を喰らったかのように二匹のミストマンティスの進みが止まり、北から現れたミストマンティスに向かってハナは符を放って結界を張った。
そして結界内が光り輝き、中にあるもの全てを焼く。
結界が消えた後、現れたのは炭化したミストマンティスらしき物体であった。
「ふっ!」
剣に持ち替えたクオンは東に現れたミストマンティスの目前まで接近して剣を振るうと、剣から雷撃が飛び出し、ミストマンティスの全身を電撃が迸り内部も焼き尽くす。
電撃が消えると同時に崩れ落ちるように倒れたミストマンティスは、そのまま二度と動かなくなった。
「フェリアさん、お願いしますぅ」
ハナの言葉で少し離れた場所四ヶ所にまた燃え盛る火球が出現し、地面に炸裂する。
今度は先ほどよりも離れているので、爆風もそよ風程度だ。
すると、ようやく気象条件に変化が起きたのか、現在地の周辺の霧が徐々に薄まり始める。
「これならもう少しで霧を晴らせそうなの」
「そうですねぇ」
(確かにこれならもう少しで霧が晴れそうですね。そうであれば私の焚き火の作戦は不要……それは構わないですが、フェリアさんに負担をかけてしまうのが申し訳ありませんね)
ディーナの言う通り、フェリアの魔法を一発か二発放てば霧は完全に消えるだろう。
クオンも同じことを思いながらも、フェリア一人に負担をかけてしまうのが申し訳なく、そのことを伝えることにした。
「フェリアさんばかりに負担をかけていて申し訳ありません」
「そんなことありません。私が集中出来るのも、皆さんがすぐにミストマンティスを倒してくれるからなのですから」
申し訳なさそうにするクオンに、フェリアは笑みを浮かべながらそう言った。
「そう、ですね。フェリアさんの言う通りですね」
その言葉を聞き、クオンは大きく頷くとすぐに頭を切り替える。
「卵が孵っちゃったら大変なの」
「無いと思いますけどぉ、卵を置いて親虫が逃げちゃったらまずいですしねぇ」
「そうですね。行きましょう」
クオンの一言で霧が晴れてきた場所から四人は移動を始める。
薄まっているとは言え霧によって視界が悪い中、ハナの生命感知の範囲外へと出たのを感じ、四人は気を引き締めて歩みを進め始めた。
その時、聞き覚えのある足音がクオンの耳に届く。
そちらに目を向けた時にはもう遅く、ミストマンティスが目の前に来て、大きな白い鎌を振り下ろす直前だった。
「ぐぁっ!」
何とか剣を間に滑り込ませて受けることに成功したクオンだが、咄嗟だった為に防ぎきれずに急所にそれは深く突き刺さった。
激痛の中、クオンは冷静に突き刺さったものを剣で押し返すようにして抜き、追撃を避けるために距離を取ると傷口を抑えた。
「治すの!」
クオンの傷はディーナの目からでもとても深い傷で、すぐにクオンに駆け寄って祈ると、強くも暖かい光がクオンを包み込み癒す。
その光景を視界の隅に捉えながら、ハナは素早く符を放ち結界を形成すると内部のミストマンティスを光で焼くが、虫故の高い生命力で倒しきれない。
「ありがとうございます」
傷を治してくれたディーナに手短に礼を言うと、クオンは剣を握り締めてミストマンティスとの距離を詰めて剣を振るった。
「キュォオオオオッ」
飛び出した雷撃がミストマンティスの全身を走りながら焼き、たまらずよろめくミストマンティス。
「これで終わりです」
そこへフェリアが放った一直線に伸びる雷撃がミストマンティスを貫き、ミストマンティスを葬った。
「傷の方は大丈夫ですかぁ?」
「えぇ、ディーナさんのおかげで全快です。ディーナさん、ありがとうございます」
「どういたしましてなの」
ハナの気遣うような声色に、クオンは傷があった場所を軽く叩いて全快を示す。
ディーナにも再度お礼を言い、ディーナも嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「しかし、思った以上にミストマンティスは素早いですね」
「何かしらの方法でこちらの位置を感知しているのかもしれません」
「ディーナさんが言ってた温度でしょうかぁ」
「私はそう思うの」
「うーん……」
四人は頭を悩ませるが、霧の中で考えるのは危険だとすぐに考えるのを止め、今度は先ほどよりも周りに気を配りながら再び歩き出す。
だが、四人が慎重に進んだことが功を奏したのか、その後は何事もなく進んで行き、霧の端に到達する。
「ここから折り返すの」
「折り返したら、私のメテオスウォームを使いましょうか」
「そうですねぇ。お願いしますぅ」
「では、折り返しましょう」
霧の中を折り返そうとした一行の耳に、大きな足音が聞こえてきた。
四人は頷き合い、足音の主を待ち構える。
待ち構えてすぐに霧の中からミストマンティスが現れた。
敵の数は一。
「なのっ!」
「ギュボォオオ!」
ディーナが駆け、ミストマンティスに接近するとメイスに魔力を集中させ、腹部めがけて殴りつけた。
だが、ミストマンティスはとっさに身を翻して背でその一撃を受ける。
そこへすかさずハナの放った符が火炎となってミストマンティスを焼き焦がす。
火炎は体全体を燃やし、瞬く間にミストマンティスを炭にした。
「フェリアさん、お願いします」
「はい」
そして、フェリアによって離れたところに燃え盛る火球が地面に落ちた。
すると、許容量を超えたのか、まるでぬぐい去られたかのように霧が薄まり始める。
「キュァァ」
「キシュゥゥ」
ミストマンティスたちの困惑の声が聞こえ出し、霧が薄まりもやへと変わり、草原を見通すのに問題ない状態にまでなる。
「これで丸見えですぅ」
「周りに気を配らずに撃破出来ますね」
「殲滅するの!」
「えぇ、行きましょう」
文字通り、丸見えとなった残りのミストマンティスと卵らしき物体たちを確認し、四人は意気揚々と殲滅に乗り出した。
フェリアは箒で空を飛ぶと、空から俯瞰して見て、まだ霧が濃い部分や新たに発生しようとしている位置を確認して三人に伝える。
霧が晴れたとはいえ、一人で行動するのは危険なので、四人一緒行動しながらミストマンティスを撃破していった。
●
「これでぇ」
「最後なの」
最後のミストマンティスの卵が置かれ、集められた卵は九個。
最初のミストマンティスの傍にあったものも卵と考えると全部で十個。
そして十個と言っても、一つに百個程の卵が入っているので全ての卵を合わせると、その数は千個にも上る。
「では、燃やしましょう」
フェリアの言葉でディーナとハナが離れると、クオンが卵へ手を翳した。
手にマテリアルを集中させると、扇状に炎が吹き出てミストマンティスの卵を燃やす。
立ち上る黒煙を見上げながら、四人は犠牲者たちに黙祷を捧げた。
依頼を受け、ハンターズオフィスにあるテーブルに集まった四人。
まず最初に自己紹介でもと、誰からともなく言って自己紹介が始まった。
「私はフェリア。よろしくね」
「どうもぉ、星野ハナですぅ」
「わたしはクオン・サガラです」
「ディーナ・フェルミなの。よろしくなの」
始めにフェリア(ka2870)が自己紹介をすると、続いて星野 ハナ(ka5852)が、次にクオン・サガラ(ka0018)、そしてディーナ・フェルミ(ka5843)の順で自己紹介をする。
「では、自己紹介が済んだ所で依頼について作戦を話し合いたいと思うのですが、よろしいですか?」
年長者だからか、クオンが話を振ると三人は同時に頷き、意見を出し始めた。
「今回はミストマンティスを全て討伐して欲しいとのことでしたね」
「卵があるから親虫は大きくは逃げないと思うの。だから殲滅するの」
ディーナがやる気満々の姿勢を見せると、ハナはんー、と唸る。
「全滅させなきゃならないならぁ、やっぱり端っこから絨毯爆撃的に全踏破がいいんじゃないでしょぉかぁ。下手に撃ち漏らしが出ても困りますしぃ、全方位からの一斉襲撃はなるべく避けたいですしぃ……敵は飛ぶから完全に安全とは言い切れませんけどぉ」
「そうなると、やはり霧を何とかしない駄目ですか。わたしは馬に出来るだけ多く角材をけん引させて、大きな焚火を作って霧を晴らす作戦を考えていますが……」
クオンが三人の意見も聞こうと三人に順に目を向けるとフェリアが優雅に手を上げた。
「私もちょっと乱暴ですが、魔法で地面を熱して行く作戦を考えていました」
「なるほど。魔法を使う方法も良いですね」
フェリアの作戦にクオンは感心の言葉を漏らす。
その後も少し話し合い、クオンとフェリアの方法で霧を晴らすことを決めると次はミストマンティスについてになる。
「炎があれば温度差が出るし霧も流れるの。自分達の身を隠すだけでなくそうやって獲物を見つける役にも立てていると思うの。寝ていて火の傍の地面の温度と体温の差が分かり難かった人だけが助かったのはそういうことだと思うの」
「確かに……」
「それか、寝ている人の死命を分けたのは卵への距離だったかもしれないの。それならその方向から来て火を避けなかったからより温度差に気付き易かった可能性があると思うの。卵探しの時確認しましょうなの」
生い立ちからか、昆虫に詳しいディーナが主導権を握って意見を言っていき、他の三人もその意見に納得していく。
「これが肉食系の甲虫だったら本当にCAM案件の殴り合いなの。でも蟷螂のお腹は柔らかいから何とかなると思うの。卵は親虫討伐後なら見つけやすいと思うの」
「私、10分おきにしか使えませんけどぉ、生命感知持ってきましたぁ。ミストマンティスの子供なら卵の中でも普通の蟷螂の成虫並みかもしれませんからぁ、上手くいけば卵位置が判別できるかもですぅ。不自然に周囲に生命が居なくてでも生命が重なってる場所があったらぁ、ミストマンティスの成虫が居る場所かもしれないと思いますぅ。少しでも襲撃が察知できるよう所々で使って行きますぅ」
ディーナの見つけやすいという言葉でハナでバッと手を上げてそう言った。
それを聞いて、依頼を遂行できそうだと思った四人は、霧の中での行動を手早く決めると準備をするためにいったん解散する。
その後、準備を終えた四人は再度合流し、目的地へと出発した。
●
農耕推進地域ジェオルジにある草原。
そこは普段ならば草花がさんさんと日光を浴びる自然豊かな場所だが、今は巨大な濃い霧に覆われていた。
「どうやらあそこみたいですね」
「真っ白なの」
その霧から少し離れた場所でフェリアは目的地を見据えながら、同じく眺めていたディーナは見たままの感想を呟く。
「まるでわたがしみたいですぅ」
「あぁ、確かにそう見えますね」
するとディーナの感想に影響を受けたのか、ハナは霧を見て彼女らしい感想を言うとクオンはそれに頷きながら同意を示した。
今からのことを考えると、全体で百メートル以上のわたがしならどんなに楽なことだったか。
四人はそんなことを一瞬考えたが、すぐに頭から消すと霧への突入準備を整えていく。
最後にディーナとハナが魔法がかかった水晶球を浮かばせ、松明を灯すと四人は霧へと突入した。
「やはりと言うのでしょうか。霧で遠くは見えませんね」
霧の中はフェリアの言う通り精々が四~五メートル程度を見渡せる程度であり、それより先は白い壁に閉ざされている。
これは目撃者の話と同じなので、霧が悪化していないことに四人は安堵した。
「離れたら危ないの。みんな一緒に行くの」
「そうですね。まずは進んでいきましょう」
ディーナの確認の言葉に全員は頷き、親虫の足跡などに気をつけながら、霧の奥へと歩みを進めていく。
「わーっ!」
ディーナが大きな声を出しながら歩き続け、前もって決めていた生命感知を使うポイントまで進んだところで、ハナが生命感知を使うこととなった。
「では、お願いしますね」
「分かりましたぁ。いきますよぉ」
ハナの目が蒼く輝き、風もないのに髪がゆらゆらと広がり出した。
そしてハナから二枚の符が飛び出ると同時に不可視の結界がハナを中心に敷かれ、ハナは結界内にいる生命体の位置を把握する。
「見つけましたぁ。左後方に十ニメートルのところに二つですぅ」
ハナが指差す方向に目を向け、クオンがディーナは首を横に振る。
「少し遠いですね、移動しないと届きません」
「私も届かないの」
「私が」
言淡く輝く銀髪と背中に髪と同色の輝く翼の幻影を背負いながら、フェリアが言葉少なく呟くと、ハナが探知した場所とその付近三箇所。
それぞれの少し上辺りに濃い霧の向こうからも見て分かる程に光る球が出現したと思ったら、一斉に降り注いだ。
「きゃっ」
「っ」
「ひゃあっ」
爆音と爆風が四人を襲い、ほんの少しだが熱が肌を撫でて消える。
爆風によって霧が吹き飛んだことで、爆心地がよく見えた。
煙と熱気を上げる焦げた大地と炭化した何か、それと何とか原型を止めている巨大カマキリの死骸がそこにあった。
「す、凄いですぅ」
「えぇ、凄まじいですね……」
「フェリアさん、凄いの」
「ありがとうございます」
フェリアは何事もなかったかのように振舞っているが、内心では思った以上の惨状にとても驚いていた。
四人が驚いている中、霧がじりじりと空いた部分を埋めようと晴れた部分を侵食し始めるが、熱気に当てられたのかすぐに消えていく。
そうしてほんの一部分ではあるが霧が晴れた場所が出現した。
四人は霧の中にいるよりも霧が晴れている場所にいる方がいいと判断し、死骸の確認もかねて移動をする。
「これはミストマンティスですよねぇ」
「多分そうなの」
「このすぐ近くにあるのは卵でしょうか」
「恐らくはそうでしょう」
遠目ながら軽く死骸たちの検分をしていると、ハナが急に声を上げた。
「反応が二つ、結界に入ってきましたぁ!」
「どの方向でしょうか」
フェリアの問いにハナは素早く感知した方向を指差した直後、指を差した方向とは全く別の方向……死骸を挟んだ霧の中から真っ白な巨大カマキリが姿を現した。
今いる場所はハナが張った結界の端の方であるが為に、感知出来ずに虚を突かれたのだ。
「っ!」
「キュァアッ」
ディーナは反射的に光の波動を放つと、ミストマンティスに直撃するが、仕留めきれない。
ハナが追撃として符を放ち、ミストマンティスを焼き焦がしてようやくミストマンティスは地響きを立てて倒れた。
それを見て四人は無力化出来たと判断して目を離し、ミストマンティスたちが迫ってきている方向へと目を向ける。
霧の中からざかざかと足音が聞こえると思うと、ミストマンティスが北と東の二方向から現れた。
「キシュァァ!」
「キュォオ!」
ミストマンティスたちが現れた瞬間に、ディーナは近づき再び光の波動を放つ。
衝撃を喰らったかのように二匹のミストマンティスの進みが止まり、北から現れたミストマンティスに向かってハナは符を放って結界を張った。
そして結界内が光り輝き、中にあるもの全てを焼く。
結界が消えた後、現れたのは炭化したミストマンティスらしき物体であった。
「ふっ!」
剣に持ち替えたクオンは東に現れたミストマンティスの目前まで接近して剣を振るうと、剣から雷撃が飛び出し、ミストマンティスの全身を電撃が迸り内部も焼き尽くす。
電撃が消えると同時に崩れ落ちるように倒れたミストマンティスは、そのまま二度と動かなくなった。
「フェリアさん、お願いしますぅ」
ハナの言葉で少し離れた場所四ヶ所にまた燃え盛る火球が出現し、地面に炸裂する。
今度は先ほどよりも離れているので、爆風もそよ風程度だ。
すると、ようやく気象条件に変化が起きたのか、現在地の周辺の霧が徐々に薄まり始める。
「これならもう少しで霧を晴らせそうなの」
「そうですねぇ」
(確かにこれならもう少しで霧が晴れそうですね。そうであれば私の焚き火の作戦は不要……それは構わないですが、フェリアさんに負担をかけてしまうのが申し訳ありませんね)
ディーナの言う通り、フェリアの魔法を一発か二発放てば霧は完全に消えるだろう。
クオンも同じことを思いながらも、フェリア一人に負担をかけてしまうのが申し訳なく、そのことを伝えることにした。
「フェリアさんばかりに負担をかけていて申し訳ありません」
「そんなことありません。私が集中出来るのも、皆さんがすぐにミストマンティスを倒してくれるからなのですから」
申し訳なさそうにするクオンに、フェリアは笑みを浮かべながらそう言った。
「そう、ですね。フェリアさんの言う通りですね」
その言葉を聞き、クオンは大きく頷くとすぐに頭を切り替える。
「卵が孵っちゃったら大変なの」
「無いと思いますけどぉ、卵を置いて親虫が逃げちゃったらまずいですしねぇ」
「そうですね。行きましょう」
クオンの一言で霧が晴れてきた場所から四人は移動を始める。
薄まっているとは言え霧によって視界が悪い中、ハナの生命感知の範囲外へと出たのを感じ、四人は気を引き締めて歩みを進め始めた。
その時、聞き覚えのある足音がクオンの耳に届く。
そちらに目を向けた時にはもう遅く、ミストマンティスが目の前に来て、大きな白い鎌を振り下ろす直前だった。
「ぐぁっ!」
何とか剣を間に滑り込ませて受けることに成功したクオンだが、咄嗟だった為に防ぎきれずに急所にそれは深く突き刺さった。
激痛の中、クオンは冷静に突き刺さったものを剣で押し返すようにして抜き、追撃を避けるために距離を取ると傷口を抑えた。
「治すの!」
クオンの傷はディーナの目からでもとても深い傷で、すぐにクオンに駆け寄って祈ると、強くも暖かい光がクオンを包み込み癒す。
その光景を視界の隅に捉えながら、ハナは素早く符を放ち結界を形成すると内部のミストマンティスを光で焼くが、虫故の高い生命力で倒しきれない。
「ありがとうございます」
傷を治してくれたディーナに手短に礼を言うと、クオンは剣を握り締めてミストマンティスとの距離を詰めて剣を振るった。
「キュォオオオオッ」
飛び出した雷撃がミストマンティスの全身を走りながら焼き、たまらずよろめくミストマンティス。
「これで終わりです」
そこへフェリアが放った一直線に伸びる雷撃がミストマンティスを貫き、ミストマンティスを葬った。
「傷の方は大丈夫ですかぁ?」
「えぇ、ディーナさんのおかげで全快です。ディーナさん、ありがとうございます」
「どういたしましてなの」
ハナの気遣うような声色に、クオンは傷があった場所を軽く叩いて全快を示す。
ディーナにも再度お礼を言い、ディーナも嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「しかし、思った以上にミストマンティスは素早いですね」
「何かしらの方法でこちらの位置を感知しているのかもしれません」
「ディーナさんが言ってた温度でしょうかぁ」
「私はそう思うの」
「うーん……」
四人は頭を悩ませるが、霧の中で考えるのは危険だとすぐに考えるのを止め、今度は先ほどよりも周りに気を配りながら再び歩き出す。
だが、四人が慎重に進んだことが功を奏したのか、その後は何事もなく進んで行き、霧の端に到達する。
「ここから折り返すの」
「折り返したら、私のメテオスウォームを使いましょうか」
「そうですねぇ。お願いしますぅ」
「では、折り返しましょう」
霧の中を折り返そうとした一行の耳に、大きな足音が聞こえてきた。
四人は頷き合い、足音の主を待ち構える。
待ち構えてすぐに霧の中からミストマンティスが現れた。
敵の数は一。
「なのっ!」
「ギュボォオオ!」
ディーナが駆け、ミストマンティスに接近するとメイスに魔力を集中させ、腹部めがけて殴りつけた。
だが、ミストマンティスはとっさに身を翻して背でその一撃を受ける。
そこへすかさずハナの放った符が火炎となってミストマンティスを焼き焦がす。
火炎は体全体を燃やし、瞬く間にミストマンティスを炭にした。
「フェリアさん、お願いします」
「はい」
そして、フェリアによって離れたところに燃え盛る火球が地面に落ちた。
すると、許容量を超えたのか、まるでぬぐい去られたかのように霧が薄まり始める。
「キュァァ」
「キシュゥゥ」
ミストマンティスたちの困惑の声が聞こえ出し、霧が薄まりもやへと変わり、草原を見通すのに問題ない状態にまでなる。
「これで丸見えですぅ」
「周りに気を配らずに撃破出来ますね」
「殲滅するの!」
「えぇ、行きましょう」
文字通り、丸見えとなった残りのミストマンティスと卵らしき物体たちを確認し、四人は意気揚々と殲滅に乗り出した。
フェリアは箒で空を飛ぶと、空から俯瞰して見て、まだ霧が濃い部分や新たに発生しようとしている位置を確認して三人に伝える。
霧が晴れたとはいえ、一人で行動するのは危険なので、四人一緒行動しながらミストマンティスを撃破していった。
●
「これでぇ」
「最後なの」
最後のミストマンティスの卵が置かれ、集められた卵は九個。
最初のミストマンティスの傍にあったものも卵と考えると全部で十個。
そして十個と言っても、一つに百個程の卵が入っているので全ての卵を合わせると、その数は千個にも上る。
「では、燃やしましょう」
フェリアの言葉でディーナとハナが離れると、クオンが卵へ手を翳した。
手にマテリアルを集中させると、扇状に炎が吹き出てミストマンティスの卵を燃やす。
立ち上る黒煙を見上げながら、四人は犠牲者たちに黙祷を捧げた。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/07/28 22:29:32 |
|
![]() |
霧蟷螂をぶっ殺せ 星野 ハナ(ka5852) 人間(リアルブルー)|24才|女性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2018/07/29 15:20:39 |