ゲスト
(ka0000)
夕涼み会までの暑い一日
マスター:三田村 薫

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 寸志
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/08/05 09:00
- 完成日
- 2018/08/10 02:36
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●徳を積んで平和な休日を手に入れよう!
「なんかもうさぁ、最近ツイてないんだよね」
一時的に、人が少なくなった時間帯、ハンターオフィスにて。青年職員はカウンターに肘を突いてそんな愚痴をこぼした。彼はここのところ災難続きなのである。
「日頃の行いが悪いからじゃないですかぁ?」
と、返したのは眼鏡にお下げの職員だ。
「は? 何言ってるんだ? 僕のどんな行いが悪いって言うの? リアルブルーから転移してきて、オフィスに職を得たは良いけど、クリムゾンウェストのことが右も左もわからなくてべそかいてたお嬢ちゃんに助け船を出したのは誰?」
「あの人」
そう言って彼女が指すのは中年の職員である。
「僕も手を貸してあげたでしょ!?」
「そうでしたっけ?」
「こんにゃろ……いいか、僕と彼が次々と事件に巻き込まれてるから、次は君だぞ。今に見てろ」
「もう、縁起でもないこと言わないでもらえませんかぁ?」
「まぁまぁ、いつ人が来るかわからないんだから窓口で喧嘩はやめなさい」
中年職員が仲裁に入る。
「とは言え、君はお祓いにでも行った方が良いんじゃないのかな? それかボランティアでもして徳を積めよ」
「え! オフィス職員やってる時点で充分徳積んでない!?」
「オフィス職員の徳を凌駕する悪行の数々……」
「コボルドの集団に放り込むぞ」
青年が眼鏡の彼女を睨んだ丁度その時だった。
「賑やかですね」
「おや、アルトゥーロじゃないか」
亜麻色の髪の毛をした、背の高いハンターがやって来た。彼はアルトゥーロと言って、ハンターであると同時に町の司祭様でもある。
「善行を積みたいのですか?」
彼は優しく微笑みながら青年職員を見下ろした。眼鏡の職員が、ここぞとばかりに彼の背中を押す。
「そうなんですぅ! アルトゥーロさんの教会、そう言う修行とかやってないんですか? 霊峰にこもるとか」
「何言ってんの!? 善行積むのにこもってどうすんの!?」
「ははは、僕も人に厳しいことを言えた立場ではありませんからね。毎日が修行のようなものですよ。エクラは寛容ではありますが、司祭を任されている以上、日々自分を律するべきと僕は考えています」
「爪の垢ください。この人に飲ませますぅ」
「この野郎」
「まあ、僕の宗教観はおいておくとして、ボランティアの場はご紹介できますよ」
「おや、それは良いね。気分転換も兼ねて行ってきたらどうだい?」
中年職員が水を向けると、青年職員は困った様にアルトゥーロを見上げた。
「肉体労働は嫌だ」
「大したことはしませんよ。町でささやかな夕涼み会をやるんです。夏野菜を収穫して、大鍋いっぱいにカポナータを作る。夕方から皆でそれをつまみながら、冷たいジュースやお酒を飲んでお互いにねぎらうんです」
「楽しそう」
眼鏡の職員が目を輝かせた。
「君が行く?」
「いいえ。あなたに徳を積むチャンスを譲ってあげますぅ。アルトゥーロさん、なんなりとこき使ってやってください」
「え? なんなの? お前は僕の母親か?」
●旅は道連れ世は情け
「と言うことで、せっかくだから他にも誰か行かない? あっちの町長さんの計らいでハンターには寸志出るって。僕には出ないけど」
徳を積まなきゃいけないからね、と彼は苦笑した。
「アルトゥーロによると、やってほしいことは、野菜の収穫の手伝い、子供たちの相手、大鍋いっぱいのカポナータ作り。それと良かったら納涼会も一緒にどうぞって。カポナータ以外にも多少はお料理出るみたい」
最初は文句を言っていた彼も、読み上げている内に楽しみになってきたらしい。
「夏の行事って良いよねぇ。小さい頃を思い出すなぁ。なんだかちょっとだけわくわくしてきたよ」
「なんかもうさぁ、最近ツイてないんだよね」
一時的に、人が少なくなった時間帯、ハンターオフィスにて。青年職員はカウンターに肘を突いてそんな愚痴をこぼした。彼はここのところ災難続きなのである。
「日頃の行いが悪いからじゃないですかぁ?」
と、返したのは眼鏡にお下げの職員だ。
「は? 何言ってるんだ? 僕のどんな行いが悪いって言うの? リアルブルーから転移してきて、オフィスに職を得たは良いけど、クリムゾンウェストのことが右も左もわからなくてべそかいてたお嬢ちゃんに助け船を出したのは誰?」
「あの人」
そう言って彼女が指すのは中年の職員である。
「僕も手を貸してあげたでしょ!?」
「そうでしたっけ?」
「こんにゃろ……いいか、僕と彼が次々と事件に巻き込まれてるから、次は君だぞ。今に見てろ」
「もう、縁起でもないこと言わないでもらえませんかぁ?」
「まぁまぁ、いつ人が来るかわからないんだから窓口で喧嘩はやめなさい」
中年職員が仲裁に入る。
「とは言え、君はお祓いにでも行った方が良いんじゃないのかな? それかボランティアでもして徳を積めよ」
「え! オフィス職員やってる時点で充分徳積んでない!?」
「オフィス職員の徳を凌駕する悪行の数々……」
「コボルドの集団に放り込むぞ」
青年が眼鏡の彼女を睨んだ丁度その時だった。
「賑やかですね」
「おや、アルトゥーロじゃないか」
亜麻色の髪の毛をした、背の高いハンターがやって来た。彼はアルトゥーロと言って、ハンターであると同時に町の司祭様でもある。
「善行を積みたいのですか?」
彼は優しく微笑みながら青年職員を見下ろした。眼鏡の職員が、ここぞとばかりに彼の背中を押す。
「そうなんですぅ! アルトゥーロさんの教会、そう言う修行とかやってないんですか? 霊峰にこもるとか」
「何言ってんの!? 善行積むのにこもってどうすんの!?」
「ははは、僕も人に厳しいことを言えた立場ではありませんからね。毎日が修行のようなものですよ。エクラは寛容ではありますが、司祭を任されている以上、日々自分を律するべきと僕は考えています」
「爪の垢ください。この人に飲ませますぅ」
「この野郎」
「まあ、僕の宗教観はおいておくとして、ボランティアの場はご紹介できますよ」
「おや、それは良いね。気分転換も兼ねて行ってきたらどうだい?」
中年職員が水を向けると、青年職員は困った様にアルトゥーロを見上げた。
「肉体労働は嫌だ」
「大したことはしませんよ。町でささやかな夕涼み会をやるんです。夏野菜を収穫して、大鍋いっぱいにカポナータを作る。夕方から皆でそれをつまみながら、冷たいジュースやお酒を飲んでお互いにねぎらうんです」
「楽しそう」
眼鏡の職員が目を輝かせた。
「君が行く?」
「いいえ。あなたに徳を積むチャンスを譲ってあげますぅ。アルトゥーロさん、なんなりとこき使ってやってください」
「え? なんなの? お前は僕の母親か?」
●旅は道連れ世は情け
「と言うことで、せっかくだから他にも誰か行かない? あっちの町長さんの計らいでハンターには寸志出るって。僕には出ないけど」
徳を積まなきゃいけないからね、と彼は苦笑した。
「アルトゥーロによると、やってほしいことは、野菜の収穫の手伝い、子供たちの相手、大鍋いっぱいのカポナータ作り。それと良かったら納涼会も一緒にどうぞって。カポナータ以外にも多少はお料理出るみたい」
最初は文句を言っていた彼も、読み上げている内に楽しみになってきたらしい。
「夏の行事って良いよねぇ。小さい頃を思い出すなぁ。なんだかちょっとだけわくわくしてきたよ」
リプレイ本文
●夕涼み会までの暑い一日
気温は高いが、気持ち良い風の吹く日だった。現地で待ち合わせをしていた参加者たちは、星野 ハナ(ka5852)が連れてきた馬を見て驚いた。その背中に樽が乗っているのである。
「星野、その樽は?」
鳳凰院ひりょ(ka3744)が目を丸くして訪ねると、彼女は、
「これですかぁ? ジンジャーエールですぅ。フルーツポンチも作ろうかと思ってぇ。果物も持ってきたんですよぉ」
にこにこしながら答える。
「ああ、良いですね。揚げ物が出ますからさっぱりしたデザートは喜ばれそうね」
フェリア(ka2870)が頷いた。口直しにもなるだろう。
「料理も手伝いたかったですが、安全の為にやらないほうがいいと言われまして……」
麦わら帽子をかぶって残念そうに言うのはサクラ・エルフリード(ka2598)。職員がプロフィールを読んだところ、包丁が宙を舞うというパワーワードを発見した。そして見なかったことにした。
「そ、そうか。私は料理の方を手伝おうと思っているが……」
「レイア、料理できるんですか?」
レイア・アローネ(ka4082)の言葉に問いかけたのはセレスティア(ka2691)だ。レイアは心外と言わんばかりに友人を見ると、
「いや、そりゃ得意ではないがな。これでもハンターとして一人で生活してる身だ。最低限の料理くらいは出来るぞ。まずくないものが作れるくらいだが」
「十分だと思いますぅ。自分が美味しくてもぉ、他人の口に合わないなんてザラですしぃ。味付けは他の人たちにも味見してもらいながらすれば良いですからぁ」
「俺は収穫と子どもたちの相手をしようと思っていたが……本当に大丈夫か?」
「大丈夫ですよ」
ひりょが不安そうに訪ねるのに答えたのはアルトゥーロだ。
「普段から料理に携わっている奥様旦那様もサポートしてくださいますからね。むしろ若い人たちと料理ができると皆さん楽しみにされていますよ」
●お菓子作りの下準備
町の人たちに挨拶をすると、ハンターたちは三々五々散って行った。調理場は町の飲食店の厨房を借りる。ハナはカポナータ作り班とは離れた調理台に陣取ると、持ってきた食材と調理器具を広げた。
「ハナちゃん何を作るの?」
奥様の一人が興味津々に覗き込んだ。
「マカロンモドキとフレンチトースト、それにフルーツポンチですぅ。子どもたちにも手伝ってもらおうかと思いましてぇ」
「あらぁー良いわね。楽しみだわ」
「誰か鍋持ってきてぇー!」
向こうで誰かが叫んだ。奥様はそれを聞くと、同じく大声で返事をしながら去って行く。ハナはそれを見送ると下準備を始めた。子どもたちにしてもらうのは簡単でわかりやすい行程だ。それまでは一人……否、御霊符の手も借りて作業をする。
「じゃあ始めますかぁ」
まずはフレンチトーストの卵液から。バタールを切るのは式神に任せ……。
「おやおやぁ?」
パン切り包丁が上手く持てない式神に、ハナは笑って手を添えた。
●取れたて野菜丸かじり
さて、麦わら帽子をかぶったサクラとひりょは、野菜畑に案内された。鋏と籠を渡される。
「トマトは赤くなってるやつ、ナスはそうだな、十センチ以上なら収穫して良い。できればでかいやつを優先して取って欲しいかな」
説明を受けながら、二人は同行した農家の人が示す実を切り落とした。みずみずしい野菜の張りに、二人も自然笑顔になる。
「それにしてもとても美味しそうな野菜です……採れたてはやはりよいものですね……」
サクラが嬉しそうに言う。
「そうだな。この後煮込むみたいだが……そのままでも充分美味しそうだ」
「お、食べるかい? ちょっと待ってな」
農家はそう言って二人からトマトを取り上げると、水で良く洗ってから持ってきた。
「さ、遠慮なく丸かじりしな」
「い、良いのか?」
「良いんだよ」
「じゃあ遠慮なく」
二人はトマトにかぶりついた。冷えていればもっと美味しかっただろう。だが、取れたて新鮮野菜は、舌鼓を打つには十分であった。
「トマトも頂いたことだし頑張るか」
「そうですね……」
二人は一つずつ丁寧に収穫して行く。籠の中に放り込んで傷めるようなことはしない。ぱちん、ぱちん、と丁寧に鋏が動かされる音が続く。
「暑いですね。皆さん大丈夫でしょうか? 休憩を挟んだ方が良いかと思いますが……」
サクラが不意に顔を上げた。こう暑い中、収穫に没頭していると熱中症になる可能性がある。
「そうだなぁ。一旦休憩にするか。さっき司祭様が冷たいお茶を差し入れてくださった。皆で飲むとしよう。おーい、お茶出してくれ」
農家がそう声を掛けると、子どもたちの返事が家の中から聞こえる。ほどなくして、お茶の入ったグラスが振る舞われた。
「私たちも何か手伝う?」
少女の一人が、サクラとひりょを見上げて言う。
「そうだな……野菜を運ぶのを、少し手伝ってもらえないか? それが終わったら一緒に遊ぼう」
「はーい! お野菜運ぶの手伝ってだってー!」
「はーい!」
「まだ収穫は全部終わってないが、一部だけ運び出して貰うのは問題ないよな?」
「ええ、問題ないと思います」
「じゃあ、僕がそれに着いていこうかな」
職員がグラスを置いて立ち上がった。徳を積む関係で色んなことをしないといけない。
「ああ、頼んで良いか? 皆、オフィスのお兄さんが一緒に行ってくれるぞ」
「はーい!」
子どもたちと職員が野菜を運び出すと、二人はまた作業に戻った。子どもたちと職員はすぐに戻ってくる。
「持って行った」
「ああ、ありがとう。助かったよ」
ひりょはそう言って笑いかける。
「おかげで休憩が取れました。ありがとうございます……」
サクラも同じように謝意を伝える。必要な数が揃うまで、そう時間は掛からないだろう。
●はじめての大人数料理
取れたての野菜が運び込まれてきた。セレスティアはレイアの料理の腕が心配、と言うことで友人のそばに貼り付いている。
「い、いや、そんなに貼り付かなくても、心配するな」
「ちょっと見ていくだけです。あとはフェリアさんにお任せします」
「私も自信があるのはお菓子作りだけなのだけど」
野菜を水洗いしながら、フェリアも首を横に振る。
「どうせ煮込むんだから多少失敗したって良いわよ」
と、肩を竦めるのは一緒に料理をする若奥様である。
「うちの主人なんて、私の料理がお義母さんの味と違うからって美味しいって言ってくれないんだもん。だったら多少失敗したって同じ」
「そ、それは……なんと言えば良いのか……」
突然の家庭事情暴露に動揺を隠せないレイア。
「さ、人様の家庭事情に首突っ込んでる場合じゃないですよ、レイア。料理の腕を見せてください」
セレスティアに言われて、レイアは慌てて包丁を持った。
「ど、どのように切れば良いだろうか!?」
「適当」
「てきとう」
「輪切りにしてごらんなさい」
フェリアに言われて、レイアは恐る恐るナスに包丁を入れる。普段自分で作る料理とはやや勝手が違う。すとん、すとん、と、音は軽快だが……。
「薄くありませんか……」
セレスティアの指摘するとおり、スライスと言って差し支えない薄さである。
「確かにもっと厚くても良いとは思いますが……レイアだけがナスを切るわけではないですし問題ないでしょう」
「それもそうですね。包丁の持ち方も危なくはないですし。ではフェリアさん、後はお願いします。私は子どもたちの遊び相手をしてきますので」
セレスティアはそう言うと、左手の薬指をさすりながら出て行った。
「ま、待ってくれセティ……置いて行かないでくれ」
「私も皆さんもいますからね、レイア。それよりもう少し厚く切ってみてはどうかしら。薄くても問題はないと思うけど、せっかく切ったのに煮崩れてはもったいないわ」
自分はトマトを切りながら、フェリアは困惑するレイアにそう告げた。
「それにしても、今から新婚生活の予習かしら……相手のいる娘は流石、余裕ね」
見合い話から逃げ回っているフェリアは、微笑んで妹弟子の後ろ姿を見送った。
●小さな手にしてもらうこと
「みんなぁ、今日は夕涼み会でお菓子が出るんだけどぉ、お手伝いしてくれる子は居るかなぁ? 勿論味見もして貰うんだけどぉ?」
下ごしらえを終えたハナは、そう言って子どもたちからの手伝いを募った。女の子を中心に何人かが集まってくる。
「やる! 何作るの?」
「フレンチトーストとぉ、マカロンモドキを作ってもらいまぁす!」
「なにそれ!」
「面白そう!」
「面白いよぉ。さ、おいでおいで」
子どもたちを手招きし、まずは手洗いから始める。
「レイア! 火! 火を止めて!」
「ちょっと油の温度が高いかもしれませんね」
「あっちのお手伝いは大丈夫なの?」
子どもたちの一人がハナを見上げる。厨房の少し離れたところでは、大人数の調理に不慣れなレイアがあたふたと走り回っていた。そのフォローにはフェリアとオフィス職員、奥様方がついている。
「あっちはみんなのママたちがいるから大丈夫だよぉ」
まずはマカロンモドキの生地を鉄板に絞り出しだ。多少いびつになったところで問題はない。その方が手作りの楽しみが現れる。それを焼いている間に、フルーツポンチの果物を洗う。幼い子供には皮ごと食べられる葡萄の実をむしってもらったり、桃の皮を剥いたりだ。幾分年上の子どもたちには桃と梨を切ってもらう。
一人の子が、むしった葡萄を口に入れようとして、ハナと目が合った。丸い目が瞬く。
「つまみ食いもオッケーですぅ」
彼女はそう言って片目をつぶって見せた。
「い、いや、これは違うんだ! 普段はこんなミスなどしないんだ!」
「大丈夫よ。最後に煮込んじゃえば一緒だから」
カポナータの方は依然賑やかであった。
●お料理ができるまで
ひりょは幼い頃から鳳凰院家の跡取りとして勉強ばかりの毎日だった。だから、年の近い子どもたちと遊んだ経験がないに等しい。
サッカーがしたい、と少年たちは言う。ひりょはそれを了承し、司祭の差し入れる飲み物で水分補給に気を配りながら遊ぶ。
「ほら! シュートしてくれ!」
そう言って一人の少年にパスを回すと、少年はドリブルしながらゴールに向かって走り込む。
「いくぞー!」
放たれたシュートは、キーパーに阻まれた。シュートを打った少年が残念そうに口を尖らせる。
「もうちょっとだったな。じゃ、ちょっと休憩しよう」
そう言ってひりょは彼の背中を軽く叩いた。その声に従って、少年たちも日陰に入る。
子供時代に過ごせなかった遊び時間。普段激しい戦いに身を投じることへのご褒美の様に、彼は楽しんだ。
一方、サクラは川遊びを所望した子供たちの相手をしている。
「水辺はまだ涼しくていいですね……ほら、遊ぶのはいいですが転んだりしないよう注意でしてくださいね……膝より深いところには行ったらいけません……」
「おねーちゃん! えいっ」
一人の少女がサクラに水を思いっきり掛けた。
「ん……お返しです」
サクラも、加減しながらやり返す。日差しの中で、川の水の冷たさは心地良い。風に乗って細かい飛沫が飛んでくる。はしゃぎすぎた子供をやんわりと、遠くに行きすぎないように宥めながら、彼女は自分も川遊びを楽しんだ。
レイアの料理の腕を確認してから合流したセレスティアは、おままごとをしたい子どもたちの相手をつとめた。木陰で、お母さん役、お父さん役、娘役などを決める。セレスティアはお母さん役を仰せつかった。お母さん。彼女にとっては非現実的な呼ばれ方ではない。
「ふふ、お母さん。お母さんですね……彼ともいつか……やだ、私ったら」
左手薬指の感触に思いを馳せながら、幸せな微笑みを浮かべていると、
「おかーさん? 夕ご飯を一緒に作りましょー?」
「はい、一緒に作りましょうね」
子どもたちに呼ばれて、「お母さん」はにっこりと微笑むと、野菜に見立てた葉っぱを一緒に千切った。
●日没後のお楽しみ
「今度はちゃんとした料理を作りたいなあ……」
ぐったりと疲れ切った顔をしつつも、料理の後、一緒に遊んでいた子どもたちを連れながら、レイアは独りごちた。
「ちゃんとしたお料理作らなかったの?」
「作ったから安心してくれ」
子どもたちの問いにレイアがダメージを受けているのを見て、職員が口を挟んだ。
「ええ、ちょっとそそっかしかっただけで、概ね料理としては問題なかった筈です」
フェリアもそれに同意する。
「お料理来ましたよー!」
「デザートも来てますぅ」
司祭が大声で宣言しながら大鍋を持ってくる。その後ろからは、ハナと子どもたちが一緒に作ったデザートを運んできていた。他にも有志が作ったサラダ、パスタ、肉料理など。御霊符の式神も運搬を手伝った。
「美味しそうですね。レイア、ちゃんと作れたじゃないですか」
「そうだといいなぁ」
セレスティアが感心したように言うと、レイアは調理中のことを思い出しているのがまだうなだれている。
「大丈夫だって! 味付けまで全部一人でやったわけじゃないんだからさ!」
「フォローになってないぞ……」
レイアの背中を叩く職員に、ひりょが小声で指摘する。力仕事も手伝った彼は、やや疲れてはいたが達成感に満ちた顔だ。
「良い香りですね……」
酢の香りは食欲をそそる。サクラは、一緒に遊んだ子どもたちと一緒にカポナータの鍋を覗き込んだ。
「美味しそうですね……」
「美味しそう! おねーちゃん一緒に食べようね!」
「はい……一緒に食べましょう……」
「ではこれから夕涼み会を始めます!」
町長が高らかに宣言する。
「今年はハンターさんもお手伝いに来てくれました! 皆さん拍手ー!」
ぱちぱちと、拍手がされる。
「では皆様、食べて、飲んで、昼の暑さを忘れて楽しみましょう! 以上! お皿持ってお料理を取りに来て下さーい!」
「俺たちももう良いのか?」
ひりょがアルトゥーロに訪ねると、司祭は頷いた。
「どうぞ。子どもたちも、皆さんと一緒に食事をしたがっていますから。良かったら一緒に」
言われてみれば、子どもたちの視線を感じる。ひりょは一緒に遊んだ子どもたちに目配せをした。
「ハナちゃん、先にデザート食べちゃだめ?」
「先に皆で一緒にお料理を食べましょうねぇ」
「はぁい」
料理好きの子どもたちにすっかり懐かれたハナは、子どもたちの皿に料理をよそう。
「この薄いナスはおねーちゃんのだよね?」
「今度は君たちが私に料理を教えてくれるか……? 楽しみだな……」
薄切りナスを見付けて報告に来た子どもの言葉に、レイアは沈痛の面持ちで応える。
それでも、皆で作ったカポナータは決して不味くはなかった。
「ん、こういう平和な時間もよいものです……これから忙しくなりそうですしね……」
子どもたちと料理を楽しみながら、サクラが呟いた。
夜の風が葉を揺らし、晴れた夜空には星が輝いている。まだ続く、暑い日々の隙間のような夜。
気温は高いが、気持ち良い風の吹く日だった。現地で待ち合わせをしていた参加者たちは、星野 ハナ(ka5852)が連れてきた馬を見て驚いた。その背中に樽が乗っているのである。
「星野、その樽は?」
鳳凰院ひりょ(ka3744)が目を丸くして訪ねると、彼女は、
「これですかぁ? ジンジャーエールですぅ。フルーツポンチも作ろうかと思ってぇ。果物も持ってきたんですよぉ」
にこにこしながら答える。
「ああ、良いですね。揚げ物が出ますからさっぱりしたデザートは喜ばれそうね」
フェリア(ka2870)が頷いた。口直しにもなるだろう。
「料理も手伝いたかったですが、安全の為にやらないほうがいいと言われまして……」
麦わら帽子をかぶって残念そうに言うのはサクラ・エルフリード(ka2598)。職員がプロフィールを読んだところ、包丁が宙を舞うというパワーワードを発見した。そして見なかったことにした。
「そ、そうか。私は料理の方を手伝おうと思っているが……」
「レイア、料理できるんですか?」
レイア・アローネ(ka4082)の言葉に問いかけたのはセレスティア(ka2691)だ。レイアは心外と言わんばかりに友人を見ると、
「いや、そりゃ得意ではないがな。これでもハンターとして一人で生活してる身だ。最低限の料理くらいは出来るぞ。まずくないものが作れるくらいだが」
「十分だと思いますぅ。自分が美味しくてもぉ、他人の口に合わないなんてザラですしぃ。味付けは他の人たちにも味見してもらいながらすれば良いですからぁ」
「俺は収穫と子どもたちの相手をしようと思っていたが……本当に大丈夫か?」
「大丈夫ですよ」
ひりょが不安そうに訪ねるのに答えたのはアルトゥーロだ。
「普段から料理に携わっている奥様旦那様もサポートしてくださいますからね。むしろ若い人たちと料理ができると皆さん楽しみにされていますよ」
●お菓子作りの下準備
町の人たちに挨拶をすると、ハンターたちは三々五々散って行った。調理場は町の飲食店の厨房を借りる。ハナはカポナータ作り班とは離れた調理台に陣取ると、持ってきた食材と調理器具を広げた。
「ハナちゃん何を作るの?」
奥様の一人が興味津々に覗き込んだ。
「マカロンモドキとフレンチトースト、それにフルーツポンチですぅ。子どもたちにも手伝ってもらおうかと思いましてぇ」
「あらぁー良いわね。楽しみだわ」
「誰か鍋持ってきてぇー!」
向こうで誰かが叫んだ。奥様はそれを聞くと、同じく大声で返事をしながら去って行く。ハナはそれを見送ると下準備を始めた。子どもたちにしてもらうのは簡単でわかりやすい行程だ。それまでは一人……否、御霊符の手も借りて作業をする。
「じゃあ始めますかぁ」
まずはフレンチトーストの卵液から。バタールを切るのは式神に任せ……。
「おやおやぁ?」
パン切り包丁が上手く持てない式神に、ハナは笑って手を添えた。
●取れたて野菜丸かじり
さて、麦わら帽子をかぶったサクラとひりょは、野菜畑に案内された。鋏と籠を渡される。
「トマトは赤くなってるやつ、ナスはそうだな、十センチ以上なら収穫して良い。できればでかいやつを優先して取って欲しいかな」
説明を受けながら、二人は同行した農家の人が示す実を切り落とした。みずみずしい野菜の張りに、二人も自然笑顔になる。
「それにしてもとても美味しそうな野菜です……採れたてはやはりよいものですね……」
サクラが嬉しそうに言う。
「そうだな。この後煮込むみたいだが……そのままでも充分美味しそうだ」
「お、食べるかい? ちょっと待ってな」
農家はそう言って二人からトマトを取り上げると、水で良く洗ってから持ってきた。
「さ、遠慮なく丸かじりしな」
「い、良いのか?」
「良いんだよ」
「じゃあ遠慮なく」
二人はトマトにかぶりついた。冷えていればもっと美味しかっただろう。だが、取れたて新鮮野菜は、舌鼓を打つには十分であった。
「トマトも頂いたことだし頑張るか」
「そうですね……」
二人は一つずつ丁寧に収穫して行く。籠の中に放り込んで傷めるようなことはしない。ぱちん、ぱちん、と丁寧に鋏が動かされる音が続く。
「暑いですね。皆さん大丈夫でしょうか? 休憩を挟んだ方が良いかと思いますが……」
サクラが不意に顔を上げた。こう暑い中、収穫に没頭していると熱中症になる可能性がある。
「そうだなぁ。一旦休憩にするか。さっき司祭様が冷たいお茶を差し入れてくださった。皆で飲むとしよう。おーい、お茶出してくれ」
農家がそう声を掛けると、子どもたちの返事が家の中から聞こえる。ほどなくして、お茶の入ったグラスが振る舞われた。
「私たちも何か手伝う?」
少女の一人が、サクラとひりょを見上げて言う。
「そうだな……野菜を運ぶのを、少し手伝ってもらえないか? それが終わったら一緒に遊ぼう」
「はーい! お野菜運ぶの手伝ってだってー!」
「はーい!」
「まだ収穫は全部終わってないが、一部だけ運び出して貰うのは問題ないよな?」
「ええ、問題ないと思います」
「じゃあ、僕がそれに着いていこうかな」
職員がグラスを置いて立ち上がった。徳を積む関係で色んなことをしないといけない。
「ああ、頼んで良いか? 皆、オフィスのお兄さんが一緒に行ってくれるぞ」
「はーい!」
子どもたちと職員が野菜を運び出すと、二人はまた作業に戻った。子どもたちと職員はすぐに戻ってくる。
「持って行った」
「ああ、ありがとう。助かったよ」
ひりょはそう言って笑いかける。
「おかげで休憩が取れました。ありがとうございます……」
サクラも同じように謝意を伝える。必要な数が揃うまで、そう時間は掛からないだろう。
●はじめての大人数料理
取れたての野菜が運び込まれてきた。セレスティアはレイアの料理の腕が心配、と言うことで友人のそばに貼り付いている。
「い、いや、そんなに貼り付かなくても、心配するな」
「ちょっと見ていくだけです。あとはフェリアさんにお任せします」
「私も自信があるのはお菓子作りだけなのだけど」
野菜を水洗いしながら、フェリアも首を横に振る。
「どうせ煮込むんだから多少失敗したって良いわよ」
と、肩を竦めるのは一緒に料理をする若奥様である。
「うちの主人なんて、私の料理がお義母さんの味と違うからって美味しいって言ってくれないんだもん。だったら多少失敗したって同じ」
「そ、それは……なんと言えば良いのか……」
突然の家庭事情暴露に動揺を隠せないレイア。
「さ、人様の家庭事情に首突っ込んでる場合じゃないですよ、レイア。料理の腕を見せてください」
セレスティアに言われて、レイアは慌てて包丁を持った。
「ど、どのように切れば良いだろうか!?」
「適当」
「てきとう」
「輪切りにしてごらんなさい」
フェリアに言われて、レイアは恐る恐るナスに包丁を入れる。普段自分で作る料理とはやや勝手が違う。すとん、すとん、と、音は軽快だが……。
「薄くありませんか……」
セレスティアの指摘するとおり、スライスと言って差し支えない薄さである。
「確かにもっと厚くても良いとは思いますが……レイアだけがナスを切るわけではないですし問題ないでしょう」
「それもそうですね。包丁の持ち方も危なくはないですし。ではフェリアさん、後はお願いします。私は子どもたちの遊び相手をしてきますので」
セレスティアはそう言うと、左手の薬指をさすりながら出て行った。
「ま、待ってくれセティ……置いて行かないでくれ」
「私も皆さんもいますからね、レイア。それよりもう少し厚く切ってみてはどうかしら。薄くても問題はないと思うけど、せっかく切ったのに煮崩れてはもったいないわ」
自分はトマトを切りながら、フェリアは困惑するレイアにそう告げた。
「それにしても、今から新婚生活の予習かしら……相手のいる娘は流石、余裕ね」
見合い話から逃げ回っているフェリアは、微笑んで妹弟子の後ろ姿を見送った。
●小さな手にしてもらうこと
「みんなぁ、今日は夕涼み会でお菓子が出るんだけどぉ、お手伝いしてくれる子は居るかなぁ? 勿論味見もして貰うんだけどぉ?」
下ごしらえを終えたハナは、そう言って子どもたちからの手伝いを募った。女の子を中心に何人かが集まってくる。
「やる! 何作るの?」
「フレンチトーストとぉ、マカロンモドキを作ってもらいまぁす!」
「なにそれ!」
「面白そう!」
「面白いよぉ。さ、おいでおいで」
子どもたちを手招きし、まずは手洗いから始める。
「レイア! 火! 火を止めて!」
「ちょっと油の温度が高いかもしれませんね」
「あっちのお手伝いは大丈夫なの?」
子どもたちの一人がハナを見上げる。厨房の少し離れたところでは、大人数の調理に不慣れなレイアがあたふたと走り回っていた。そのフォローにはフェリアとオフィス職員、奥様方がついている。
「あっちはみんなのママたちがいるから大丈夫だよぉ」
まずはマカロンモドキの生地を鉄板に絞り出しだ。多少いびつになったところで問題はない。その方が手作りの楽しみが現れる。それを焼いている間に、フルーツポンチの果物を洗う。幼い子供には皮ごと食べられる葡萄の実をむしってもらったり、桃の皮を剥いたりだ。幾分年上の子どもたちには桃と梨を切ってもらう。
一人の子が、むしった葡萄を口に入れようとして、ハナと目が合った。丸い目が瞬く。
「つまみ食いもオッケーですぅ」
彼女はそう言って片目をつぶって見せた。
「い、いや、これは違うんだ! 普段はこんなミスなどしないんだ!」
「大丈夫よ。最後に煮込んじゃえば一緒だから」
カポナータの方は依然賑やかであった。
●お料理ができるまで
ひりょは幼い頃から鳳凰院家の跡取りとして勉強ばかりの毎日だった。だから、年の近い子どもたちと遊んだ経験がないに等しい。
サッカーがしたい、と少年たちは言う。ひりょはそれを了承し、司祭の差し入れる飲み物で水分補給に気を配りながら遊ぶ。
「ほら! シュートしてくれ!」
そう言って一人の少年にパスを回すと、少年はドリブルしながらゴールに向かって走り込む。
「いくぞー!」
放たれたシュートは、キーパーに阻まれた。シュートを打った少年が残念そうに口を尖らせる。
「もうちょっとだったな。じゃ、ちょっと休憩しよう」
そう言ってひりょは彼の背中を軽く叩いた。その声に従って、少年たちも日陰に入る。
子供時代に過ごせなかった遊び時間。普段激しい戦いに身を投じることへのご褒美の様に、彼は楽しんだ。
一方、サクラは川遊びを所望した子供たちの相手をしている。
「水辺はまだ涼しくていいですね……ほら、遊ぶのはいいですが転んだりしないよう注意でしてくださいね……膝より深いところには行ったらいけません……」
「おねーちゃん! えいっ」
一人の少女がサクラに水を思いっきり掛けた。
「ん……お返しです」
サクラも、加減しながらやり返す。日差しの中で、川の水の冷たさは心地良い。風に乗って細かい飛沫が飛んでくる。はしゃぎすぎた子供をやんわりと、遠くに行きすぎないように宥めながら、彼女は自分も川遊びを楽しんだ。
レイアの料理の腕を確認してから合流したセレスティアは、おままごとをしたい子どもたちの相手をつとめた。木陰で、お母さん役、お父さん役、娘役などを決める。セレスティアはお母さん役を仰せつかった。お母さん。彼女にとっては非現実的な呼ばれ方ではない。
「ふふ、お母さん。お母さんですね……彼ともいつか……やだ、私ったら」
左手薬指の感触に思いを馳せながら、幸せな微笑みを浮かべていると、
「おかーさん? 夕ご飯を一緒に作りましょー?」
「はい、一緒に作りましょうね」
子どもたちに呼ばれて、「お母さん」はにっこりと微笑むと、野菜に見立てた葉っぱを一緒に千切った。
●日没後のお楽しみ
「今度はちゃんとした料理を作りたいなあ……」
ぐったりと疲れ切った顔をしつつも、料理の後、一緒に遊んでいた子どもたちを連れながら、レイアは独りごちた。
「ちゃんとしたお料理作らなかったの?」
「作ったから安心してくれ」
子どもたちの問いにレイアがダメージを受けているのを見て、職員が口を挟んだ。
「ええ、ちょっとそそっかしかっただけで、概ね料理としては問題なかった筈です」
フェリアもそれに同意する。
「お料理来ましたよー!」
「デザートも来てますぅ」
司祭が大声で宣言しながら大鍋を持ってくる。その後ろからは、ハナと子どもたちが一緒に作ったデザートを運んできていた。他にも有志が作ったサラダ、パスタ、肉料理など。御霊符の式神も運搬を手伝った。
「美味しそうですね。レイア、ちゃんと作れたじゃないですか」
「そうだといいなぁ」
セレスティアが感心したように言うと、レイアは調理中のことを思い出しているのがまだうなだれている。
「大丈夫だって! 味付けまで全部一人でやったわけじゃないんだからさ!」
「フォローになってないぞ……」
レイアの背中を叩く職員に、ひりょが小声で指摘する。力仕事も手伝った彼は、やや疲れてはいたが達成感に満ちた顔だ。
「良い香りですね……」
酢の香りは食欲をそそる。サクラは、一緒に遊んだ子どもたちと一緒にカポナータの鍋を覗き込んだ。
「美味しそうですね……」
「美味しそう! おねーちゃん一緒に食べようね!」
「はい……一緒に食べましょう……」
「ではこれから夕涼み会を始めます!」
町長が高らかに宣言する。
「今年はハンターさんもお手伝いに来てくれました! 皆さん拍手ー!」
ぱちぱちと、拍手がされる。
「では皆様、食べて、飲んで、昼の暑さを忘れて楽しみましょう! 以上! お皿持ってお料理を取りに来て下さーい!」
「俺たちももう良いのか?」
ひりょがアルトゥーロに訪ねると、司祭は頷いた。
「どうぞ。子どもたちも、皆さんと一緒に食事をしたがっていますから。良かったら一緒に」
言われてみれば、子どもたちの視線を感じる。ひりょは一緒に遊んだ子どもたちに目配せをした。
「ハナちゃん、先にデザート食べちゃだめ?」
「先に皆で一緒にお料理を食べましょうねぇ」
「はぁい」
料理好きの子どもたちにすっかり懐かれたハナは、子どもたちの皿に料理をよそう。
「この薄いナスはおねーちゃんのだよね?」
「今度は君たちが私に料理を教えてくれるか……? 楽しみだな……」
薄切りナスを見付けて報告に来た子どもの言葉に、レイアは沈痛の面持ちで応える。
それでも、皆で作ったカポナータは決して不味くはなかった。
「ん、こういう平和な時間もよいものです……これから忙しくなりそうですしね……」
子どもたちと料理を楽しみながら、サクラが呟いた。
夜の風が葉を揺らし、晴れた夜空には星が輝いている。まだ続く、暑い日々の隙間のような夜。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/08/04 09:28:49 |
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夕涼み会を盛り上げろ 星野 ハナ(ka5852) 人間(リアルブルー)|24才|女性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2018/08/04 23:28:13 |