ゲスト
(ka0000)
緊急の依頼です!
マスター:びなっす

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~4人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/08/13 19:00
- 完成日
- 2018/08/20 16:45
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
日も沈んだ、真っ暗がりの森の中。
不気味な静けさが支配するその暗闇を歩く、二人の兄妹。
彼らの動かす足はおぼつかず、一目で迷っているであろう事が見て取れた。
「おにいちゃん……怖いよ……」
「大丈夫だ、少し我慢しろ。家で母さんが待ってるんだから」
幼い妹の手を引く少年は、心の底から這い出てくる不安を呑み込み、ひたすらに足を動かした。
枝を踏む音だけで妹の小さな手がびくりと震える。
妹は恐怖に怯えるも、手にした花だけは手放さずしっかりと掴んでいた。
その花は、少し前に森の奥で見つけたものだ。
二人は母親の誕生日プレゼントのために、この森にしか咲かない貴重な花を取りに来たのだ。
普段からここへ遊びに来ていて、森に慣れていた二人だったが。
この花を取りに行くため、いつもより深くへと踏み入ってしまい、それに暗がりの視界の悪さが加わり、道を間違え迷ってしまった。
辺りは木々が密集していて、真っ直ぐに進むにも木を避けながら歩かなくてはならない。
そこに目印らしい目印も無い。ただ、同じような場所を延々と進んでいるだけの状態。
こんなはずじゃ無かったのに……と、少年の苛立ちと不安の混じった感情が、歩を早める。
それについて行けず、手を引っ張る妹が煩わしく思えてしまう。
「……ねぇ、おにいちゃん……まだ帰れないの?」
「黙ってろって……もう少しで、いつもの道に出られるはずなんだ」
妹の消え入りそうな問い掛けに、ぶっきらぼうに言い返す少年。
その言葉は、少年自身にも言い聞かせているような希望じみたものだった。
しかしそんな言葉も、目の前に広がる暗闇に呑み込まれ、少年の足取りが徐々に重くなる。
それでも震えている妹を見るたび、俺がなんとかしなきゃと、妹の手を引きながら足を懸命に動かす。
そんな少年の足が、突然ぴたりと止まった。
こちらへ近付いてくる何かの足音が聞こえる。
獣の発するそれじゃなく、人の足音のようだった。
もしかして、迷っている自分達を助けてくれるかも……そんな少年の思いは、暗闇から現れた姿を前に霧散する。
「……っな」
「ひぃっ!」
目の前に現れた巨大な人型の影。
暗いため、その姿ははっきりとは見えなかったが、全身に濃く生えている体毛や獣のような頭部から、目の前にいるそれが獣人だと理解できた。
そして、二人を震え上がらせたのは、真っ赤に光る獰猛な瞳だ。
それが前に立つ少年に向けられ、あまりの恐怖に少年は動けないまま歯をガチガチと鳴らす。
途端、少年の繋がっている手に強い力がこもり、そして大きな震えを感じ、同様に動けずにいる妹の存在に気付いた。
どうすればいいのか分からない少年は、勇気を振り絞り震える身体を動かす。
そして、今もなお少年の手を強く掴んでいる妹に対し声を掛けた。
「……メヌ、ここから逃げろ」
「……で……でも」
突然の事態に困惑している妹。
そんな妹に対し、少年は覚悟を決め、妹の手を振り払い声を荒げた。
「いいから、早く行けよっ!」
大声に反応して、走り出す妹。
獣人は、突然走り出した妹の方に反応し、逃がすものかと追い掛ける。
それを見た少年は、咄嗟に足下にあった大きな石をつかんで、獣人へ向かって勢いよく投げつけた。
それは偶然にも目に命中し、勢いのあった大柄な身体が小さくよろめいた。
「おい、こっちだ化け物っ!」
少年は、ただ妹から獣人を引き離す事で頭がいっぱいだった。
瞬間、膨れ上がる殺気を前に、少年は怯みながらもどうにか足を動かし一目散に走り出す。
辺り一帯に轟くほどの咆哮をあげながら、片目を押さえ鬼の如く追う獣人。
こうして、少年と獣人の命懸けの鬼ごっこが始まった。
●同刻。
ハンターオフィスにて、女性職員の声がフロアに響いた。
「緊急の依頼です!」
普段はおっとりと温和そうな職員は、珍しく顔を強張らせながら、辺りにいるハンター達へ向けて言葉を放つ。
「今日の昼頃に森へと向かった兄妹二人が、夜になっても戻ってこないと母親から地元警察に通報がありました。加えて先程、兄妹が向かったと思われる森で雑魔の目撃情報があったそうです。この雑魔が兄妹二人に関係しているかどうかは現時点では不明ですが……このままでは危険だと判断しました。ゆっくりと募集を掛けている時間はありません。今この場にいる方で、すぐに向かえる方がいましたらご協力をお願いします」
何人かのハンター達がすぐさま立ち上がり、女性職員の前に集まった。
「ありがとうございます。依頼の内容は、行方不明の兄妹の捜索および雑魔の退治です。どうかよろしくお願いいたします。ことは急を要しますが……皆さんも、大怪我を負わないように、十分に気をつけて下さい」
不気味な静けさが支配するその暗闇を歩く、二人の兄妹。
彼らの動かす足はおぼつかず、一目で迷っているであろう事が見て取れた。
「おにいちゃん……怖いよ……」
「大丈夫だ、少し我慢しろ。家で母さんが待ってるんだから」
幼い妹の手を引く少年は、心の底から這い出てくる不安を呑み込み、ひたすらに足を動かした。
枝を踏む音だけで妹の小さな手がびくりと震える。
妹は恐怖に怯えるも、手にした花だけは手放さずしっかりと掴んでいた。
その花は、少し前に森の奥で見つけたものだ。
二人は母親の誕生日プレゼントのために、この森にしか咲かない貴重な花を取りに来たのだ。
普段からここへ遊びに来ていて、森に慣れていた二人だったが。
この花を取りに行くため、いつもより深くへと踏み入ってしまい、それに暗がりの視界の悪さが加わり、道を間違え迷ってしまった。
辺りは木々が密集していて、真っ直ぐに進むにも木を避けながら歩かなくてはならない。
そこに目印らしい目印も無い。ただ、同じような場所を延々と進んでいるだけの状態。
こんなはずじゃ無かったのに……と、少年の苛立ちと不安の混じった感情が、歩を早める。
それについて行けず、手を引っ張る妹が煩わしく思えてしまう。
「……ねぇ、おにいちゃん……まだ帰れないの?」
「黙ってろって……もう少しで、いつもの道に出られるはずなんだ」
妹の消え入りそうな問い掛けに、ぶっきらぼうに言い返す少年。
その言葉は、少年自身にも言い聞かせているような希望じみたものだった。
しかしそんな言葉も、目の前に広がる暗闇に呑み込まれ、少年の足取りが徐々に重くなる。
それでも震えている妹を見るたび、俺がなんとかしなきゃと、妹の手を引きながら足を懸命に動かす。
そんな少年の足が、突然ぴたりと止まった。
こちらへ近付いてくる何かの足音が聞こえる。
獣の発するそれじゃなく、人の足音のようだった。
もしかして、迷っている自分達を助けてくれるかも……そんな少年の思いは、暗闇から現れた姿を前に霧散する。
「……っな」
「ひぃっ!」
目の前に現れた巨大な人型の影。
暗いため、その姿ははっきりとは見えなかったが、全身に濃く生えている体毛や獣のような頭部から、目の前にいるそれが獣人だと理解できた。
そして、二人を震え上がらせたのは、真っ赤に光る獰猛な瞳だ。
それが前に立つ少年に向けられ、あまりの恐怖に少年は動けないまま歯をガチガチと鳴らす。
途端、少年の繋がっている手に強い力がこもり、そして大きな震えを感じ、同様に動けずにいる妹の存在に気付いた。
どうすればいいのか分からない少年は、勇気を振り絞り震える身体を動かす。
そして、今もなお少年の手を強く掴んでいる妹に対し声を掛けた。
「……メヌ、ここから逃げろ」
「……で……でも」
突然の事態に困惑している妹。
そんな妹に対し、少年は覚悟を決め、妹の手を振り払い声を荒げた。
「いいから、早く行けよっ!」
大声に反応して、走り出す妹。
獣人は、突然走り出した妹の方に反応し、逃がすものかと追い掛ける。
それを見た少年は、咄嗟に足下にあった大きな石をつかんで、獣人へ向かって勢いよく投げつけた。
それは偶然にも目に命中し、勢いのあった大柄な身体が小さくよろめいた。
「おい、こっちだ化け物っ!」
少年は、ただ妹から獣人を引き離す事で頭がいっぱいだった。
瞬間、膨れ上がる殺気を前に、少年は怯みながらもどうにか足を動かし一目散に走り出す。
辺り一帯に轟くほどの咆哮をあげながら、片目を押さえ鬼の如く追う獣人。
こうして、少年と獣人の命懸けの鬼ごっこが始まった。
●同刻。
ハンターオフィスにて、女性職員の声がフロアに響いた。
「緊急の依頼です!」
普段はおっとりと温和そうな職員は、珍しく顔を強張らせながら、辺りにいるハンター達へ向けて言葉を放つ。
「今日の昼頃に森へと向かった兄妹二人が、夜になっても戻ってこないと母親から地元警察に通報がありました。加えて先程、兄妹が向かったと思われる森で雑魔の目撃情報があったそうです。この雑魔が兄妹二人に関係しているかどうかは現時点では不明ですが……このままでは危険だと判断しました。ゆっくりと募集を掛けている時間はありません。今この場にいる方で、すぐに向かえる方がいましたらご協力をお願いします」
何人かのハンター達がすぐさま立ち上がり、女性職員の前に集まった。
「ありがとうございます。依頼の内容は、行方不明の兄妹の捜索および雑魔の退治です。どうかよろしくお願いいたします。ことは急を要しますが……皆さんも、大怪我を負わないように、十分に気をつけて下さい」
リプレイ本文
【集ったハンター】
「きたきたきたー、こういう依頼を待っていたんじゃんよ。このオフィスで張ってて当たりだったぜー!」
緊迫した空気をぶち壊すように、意気揚々と言い放つゾファル・G・初火(ka4407)。
闘志に満ちあふれた笑みを浮かべ、子供のような好奇心旺盛な表情を作る。
その横に、巨大な斧を携えた筋骨隆々の体躯のボルディア・コンフラムス(ka0796)。
普段は好戦的であろう彼女は子供達の事が心配なのか、雑魔よりも兄妹のことを気に掛けているようだった。
「さっさとガキ共を連れて帰らねーとな」
「只の迷子であってほしいが……そう楽観はできないか」
落ち着いた雰囲気の彼ロニ・カルディス(ka0551)は、切迫した状況を感じ取り兄妹の身を案じた。
「時間も惜しいです。急ぎましょう」
焦燥感に駆られる彼女レオナ(ka6158)の言葉に、一同は頷いた。
【森の入り口にて】
森の入り口までやってきた一同。
前もって行っておいたレオナの『Forfeda』で精度を高めた『Bas-ogham』による占いにて、兄妹の位置を導き出す。
それによると二人の位置は離れているようで、はぐれている可能性があった。
二人のいる方角的には同じようなので、まずはその方向へ向かうことにした。
「これだけ広い中を闇雲に分かれて探しては、二次被害に繋がる。ひとまずレオナの占いの場所までは、全員離れすぎないようにしよう」
視界の悪い森の中。ロニは慎重を期して、仲間にそう伝える。
「俺が先を歩く」
強い光を灯し前方を照らしながら、更に自らが目立つように『シャイン』を杖に灯し周囲を照らす。
もし、迷った兄妹が近くにいたら、その光を頼りにここへ来るかもしれない。
もっとも、雑魔も引き寄せてしまう可能性だってあるのだが……
そんな思いを持ちながら、ロニは急ぎかつ慎重に先頭をいく。
少し進むと、さっそく何かの気配を感じた。
こちらへ向かって、よたよたと歩いてくる人陰が見える。
前方から徐々に近づいてくるそれは、まだ幼い少女の姿だった。
暗闇で危険な森の中、少女は涙を流しながらこちらへ向かってくる。
いち早く気付いたレオナはすぐに皆に呼びかけ、少女に駆け寄りそれぞれ少女を気遣う言葉を放った。
「大丈夫? 君はメヌちゃんかな?」
「うん」
「もう一人のガキはどうしたんだ? 一緒じゃねーのか?」
ボルティアの姿とその巨大な斧を前に、少女は少し怯えつつ弱々しく言葉を呟く。
「おにいちゃんは……かいぶつに追い掛けられてるの……私に逃げろって言って……一人で……」
断片的な単語がメヌの口から出てくるが……皆は状況をなんとなく察した。
「……その怪物というのが、報告にあった雑魔ですね。これは困ったことになりましたね」
「へぇ~そいつ、雑魔から妹を守ったのか。やるじゃね~か」
ふとゾファルが、ずぃっと少女に顔を近づけた。
「ねぇ君、その雑魔はどこだか分かるかにゃ?」
「わからない……ずっと逃げてたから」
ロニは少女の話と、レオナの占いの結果をもとに推測する。
「この子のやってきた方向と、レオナの占いの方向が重なる。おそらく、少年も同じようにこの先にいるのだろう」
「ふむふむ、ってことは、このまま真っ直ぐ行けばいいってことじゃーん?」
「とりあえず方向が分かりゃ、遭難はしねーよな」
ゾファルは一目散に森の奥へ駆け出し、ボルディアも用意していた馬に乗り真っ直ぐ駆けていった。
「おいっ! お前ら……まったく」
ロニは勝手な行動をとる二人に呆れつつ、それでも緊急事態なのだから仕方ないかと思い直し納得する。
その横で、レオナは少女を説得していた。
「お兄ちゃんを急いで助けないとだから怖いかもだけど一緒に付いて来て?」
出来ることなら、少女を戦場に連れて行きたくはないが……ただでさえハンターの数が少なく、危機差し迫っているこの状況で、誰かが抜ける状況は作りたくはなかった。
妹はレオナの言葉にコクンと頷く。
「犬は大丈夫? アニーか私の服にでも掴まって離れないようにしてね」
レオナの側にいた愛犬のアニーが、少女のもとへ近付いてくる。
少女は犬が好きなのか、アニーの姿に強張った表情をわずかに緩めた。
【森に残る痕跡】
「うぉらー! 助けに来たぞ生きてンなら返事しろクソガキー!」
大声を上げながら馬に乗り疾走するボルディア。
反応するものがないかと、辺りに注意を払いながら声を張り上げる。
しばらくの間、馬で森を駆けていたボルディアは、途中で停止を余儀なくされた。
「っち」
止まった先は木々が異様に密集していて、真っ直ぐに走れる場所が見当たらない。
これでは馬で走るとかえって時間が掛かってしまうだろう。
そう判断したボルディアは馬から降り、徒歩に切り替え更に奥を目指す。
すると、少し走ったところで、いくつかの木々が倒されている痕跡を見つけた。
倒された木には、爪の跡が深々と刻まれているが……ただの獣に出来る芸当ではない。
これは雑魔の仕業なのだろう。
そうボルディアが確信したと同時に、後ろから気の抜けた締まらない声が発せられた。
「おぉ~なんか凄いことになってんじゃん」
全力で走ってきたのか肩で息をしている状態のゾファル。
辺りをキョロキョロと見回したかと思えば、突然屈み込み地面に耳を当て、何か聞こえないかを確認した。
「……んむ?」
「何か聞こえたのか?」
「あっちの方で、何かが聞こえたような気もしないような」
「なんだそりゃ、当てにならねーな」
「まぁともかく行ってみるしかないじゃ~ん」
訝しみながらも他に手がかりもないボルティアは、ゾファルと同じ方向へ向かった。
「おーい、少年~聞こえてるなら返事しろ~」
走りながら拡声器で呼びかけるゾファル。
同じように声を張り上げながら、木々の倒れ具合や痕跡の跡を確認しつつ進行方向を推測するボルディア。
そんな彼女たちの視界に、何かが蠢く姿を捉えた。
少年……にしては、あきらなに大柄な姿。
熊のようで、人のようにバランス良く二足で走る姿。
それを見て報告にあった雑魔だと判断した。
雑魔は赤く光る目を、騒音の原因である二人に向けている。
「お、雑魔見っけ。少年はいないみたいじゃん。どうするんだ?」
「雑魔がここにいるって事は、近くにいるんだろ。俺はガキの捜索を優先するぜ」
「おっけ~あいつは俺様ちゃんに任せろ!」
ゾファルは両拳を打ち付けつつ意気揚々と言葉を放つ。
雑魔を見つけた途端に生き生きしたゾファルに後を任せ、ボルディアはトイズの捜索を再開した。
【メヌの心配】
レオナの服を掴みながら、アニーと並び歩いているメヌ。
メヌは兄を心配しているのか、手に持った花を握りしめ暗鬱な表情をする。
レオナは、そんな少女が持つ花に気が向いた。
「綺麗な花ね」
「うん。今日、おかあさんの誕生日だったから、あげようとしたの……この花は、ここにしか咲いてなくて」
「そうか、それで君達はこの森に来たんだな」
「私が思いついたことなの……そのせいで、おにいちゃんが……」
「大丈夫だ。俺達が来たからには誰も死なせはしない」
ロニは大切な人を失う痛みをよく知っていた。
なので、メヌのことを他人事のように思えなかったのだ。
「そうですね。なんとしても、トイズ君を助けないと」
二人が改めて救出を決意したところで、辺りに拡散器で増幅したゾファルの声とハウリング音が響いた。
何かを発見したのだと推測し、声の放たれている場所へと急いだ。
【トイズの保護】
「やっと見つけたぜ、クソガキ」
ボルディアは、木々の間に隠れるようにしてうずくまっていた少年の姿を見つけた。
彼女が荒々しい格好をしているため、危害を加えられるかもしれないと思ったのだろう。
興奮して、尖った木の枝を突きつけるトイズ。
だが、それをボルティアは臆せず笑みを作り、少年の頭をがしっと撫で言い放つ。
「お前が妹を守ったんだって? 誰にでもできることじゃねぇぜ。カッコイイじゃねぇか、お前。次はもっと強くなってキッチリ守ってやれよ?」
そういって頭をガシガシ撫でるボルディア。
張り詰めていた気が緩んだのか、涙を溢れさせてしまうトイズ。
それを隠すように両腕で顔を覆い、立ち上がろうとするトイズだが、逃げるときに負傷した足が思うように動かずバランスを崩す。
「ん? なんだ、お前足を怪我してるのか? ……ったく、仕方ねーなっと」
「うわっ!」
ボルディアはトイズをひょいと持ち上げ肩に乗せて移動した。
【雑魔との戦闘】
ゾファルは一目散に敵へ走り、雑魔を仕留めようと動いた……が、携帯していたおでこぺっかりん☆では一方向しか明かりを照らせず、更に木々で塞がれた視界で動き回る雑魔の動きを捉えるのは難しかった。
ゾファルは思うように攻撃を当てることが出来ず、雑魔の攻撃にも対応が遅れダメージを受けてしまう。
「うぎゃっ、結構痛いにゃー」
普通、こんな状況では、為す術もなく一方的に攻められるだけなのだろうが……
しかしゾファルは、唯一相手から発する赤く光る目の光を捉え、ここだっ! と、拳を大きく振り抜く。
それは上手く雑魔に命中したようで、呻き声を上げながら地面に倒れ込む雑魔。
だが、ダメージが浅かったのかすぐに起き上がり、木々の陰に隠れてしまう。
一直線の光源と音と気配で雑魔の位置を予測し、攻撃を放つゾファルだが、その拳は木々によって邪魔された。
「だぁー! 木が邪魔すぎぃ!」
攻撃が難しいと判断したゾファルは、パリィローブで敵の攻撃を確実に防ぎ、仲間が来るまで時間を稼ぐことにした。
しばらくしてゾファルのもとへ駆け付けたロニは、強い光を雑魔の目に当て、気を自分へと向かせた。
「お前の相手はこっちだ!」
後はこちらへ迫ってくる雑魔に対し、動きを封じる魔法を当てればいい。
しかし注意は引けたが、雑魔は木々の間を素早く移動し、ロニの魔法の射程に入ってくれない。
そのまま木々を利用し、ロニに迫る雑魔。
身を構えるロニだが……雑魔の攻撃に対し構えていたロニを通り過ぎ、雑魔は後ろにいるメヌの方へ向かった。
弱い獲物から確実に仕留める気なのだろう。
雑魔の狙いに遅れて気付いたロニだが、そこにしれやられたといった焦りはない。
雑魔とメヌを遮るように、レオナが間に立ち、流れるような動作でセロを『Forfeda』で装填し『修祓陣』を展開する。
輝く光が辺りを包み、仲間を守る。
「メヌちゃんには手出しさせませんよ」
レオナは雑魔の攻撃を防ぎ、少し前に投げ上げていた符により『風雷陣』を発動させ、雑魔に稲妻を落とした。
ダメージを受けた雑魔が引いたところで、ボルディアがトイズを連れて合流する。
「お、やってるじゃねーか」
まともにやっても敵わぬと判断したであろう雑魔は、木々の間を移動しながらこちら側の隙を伺っているようだ。
ロニとレオナが駆け付けた事により、場は明るく照らされているが、それでも邪魔な木々をどうにか出来るわけでもない。
手出しが出来ない状況に、ボルディアは業を煮やした。
「ったく、めんどくせーな。誰か、クソガキは任せたぜ」
そう言い、単身で木々の中に突っ込んでいくボルディア。
「トイズ君は私に任せてください」
即座にレオナが、メヌを連れてトイズの元へ駆け付け、二人を背にし守りを固めた。
ボルディアは素早く動く雑魔の近くへ駆け、周りに仲間がいないことを確認し、『烽火連天』を放った。
炎を纏った斧を凄まじい勢いで回転させ、その尋常ならざる威力で周りの木々を吹き飛ばす。
その豪快なやり方に、仲間の何人かは唖然とした。
木々で塞がれていた場所が開け、斧を振るための十分なスペースが出来る。
あまりのことに雑魔は怯み、ハッとしすぐに木々が切り倒されていない場所へと逃げようとするが……
ロニがそのチャンスを見逃さない。
ボルティアの放ったスキルにより、ロニからボルティアを挟み雑魔まで木々の無い空間が広がっていた。
ボルディア越しに立っている雑魔に向けて、ロニは『プルガトリオ』を撃つ。
ロニの作り出した闇の刃が、ボルディアをすり抜け雑魔に命中し、そのまま雑魔を空間に縫い付け移動不能にした。
すぐさま斧で足を破壊し、雑魔の機動力を削ぐボルディア。
そこに、散々苦汁を飲まされ続けていたゾファルも駆け付けていた。
「にっしし、やっと止まったじゃーん」
動きが完全に制限された雑魔に対し、ゾファルは即座にソウルエッジで武器を強化し、今までの鬱憤を晴らすかのように『如来掌』からの『星砕き』と凄まじい連続攻撃を繰り出した。
耳を打つ程の打撃音と共に、雑魔の巨体が宙を舞い、地面に勢いよく倒れる。苛烈な連続攻撃によりほとんど原型を留めていない雑魔。
しぶとくまだ息のあった雑魔だったが、ボルディアが頭部を叩き潰し、そのまま雑魔の姿は霧散した。
【雑魔撃破後】
不利な状況での戦闘で傷だらけのゾファル、そして足を負傷したトイズを見て、ロニは『フルリカバリー』で二人の傷を癒やした。
「おぉ、ありがとにゃ、ロニちゃん」
「……ありがとう」
ロニにお礼を言ったトイズは、すぐさま妹のメヌのもとへと向かった。
「大丈夫かメヌ」
心配をするトイズに、メヌは涙目で言った。
「ごめんなさい、おにいちゃん……花が萎れちゃって……」
「なっ、そんなこと、そこまで気にすることじゃないだろ」
命の危機を脱したばかりだというのに、妹のメヌの心配の方向にトイズは呆気にとられる。
「でも、これじゃお母さん喜んでくれないよ……」
メヌの手の内には、強く握り続けたためか弱々しく萎れた花があった。
最初の時の元気そうな姿は見る影もない。
そんな状態の花を眺めつつ嗚咽をもらすメヌに、ロニは優しい言葉を掛けた。
「そんなことはないさ。君達が母親のために一生懸命探して見つけた花だ。それを喜ばないはずが無い」
それにレオナも同調した。
「そうですね。見たところ枯れているわけでも無さそうですし、元気になるかもしれません」
「それに、だめでもまた摘みに行けばいいじゃ~ん」
慰めになってるのかどうかわからないゾファルの言葉。
「なんだったら、今から摘みに行くか? 面倒だし、森中の花を全部いただいちまうか」
そう軽く言うボルディア。冗談だと思いたいが、辺りの木々を薙ぎ倒す程の豪快な彼女なので本当にやりかねない。
「そんなことしたら、森に花が無くなっちまうだろ!」
焦ってボルティアを止めに入るトイズ。
その掛け合いがおかしかったのか、悲しみに塗れていた少女はフッと笑みを浮かばせた。
「さぁ、早くお家に帰りましょうか」
レオナの言葉に、二人はコクンと頷いた。
「きたきたきたー、こういう依頼を待っていたんじゃんよ。このオフィスで張ってて当たりだったぜー!」
緊迫した空気をぶち壊すように、意気揚々と言い放つゾファル・G・初火(ka4407)。
闘志に満ちあふれた笑みを浮かべ、子供のような好奇心旺盛な表情を作る。
その横に、巨大な斧を携えた筋骨隆々の体躯のボルディア・コンフラムス(ka0796)。
普段は好戦的であろう彼女は子供達の事が心配なのか、雑魔よりも兄妹のことを気に掛けているようだった。
「さっさとガキ共を連れて帰らねーとな」
「只の迷子であってほしいが……そう楽観はできないか」
落ち着いた雰囲気の彼ロニ・カルディス(ka0551)は、切迫した状況を感じ取り兄妹の身を案じた。
「時間も惜しいです。急ぎましょう」
焦燥感に駆られる彼女レオナ(ka6158)の言葉に、一同は頷いた。
【森の入り口にて】
森の入り口までやってきた一同。
前もって行っておいたレオナの『Forfeda』で精度を高めた『Bas-ogham』による占いにて、兄妹の位置を導き出す。
それによると二人の位置は離れているようで、はぐれている可能性があった。
二人のいる方角的には同じようなので、まずはその方向へ向かうことにした。
「これだけ広い中を闇雲に分かれて探しては、二次被害に繋がる。ひとまずレオナの占いの場所までは、全員離れすぎないようにしよう」
視界の悪い森の中。ロニは慎重を期して、仲間にそう伝える。
「俺が先を歩く」
強い光を灯し前方を照らしながら、更に自らが目立つように『シャイン』を杖に灯し周囲を照らす。
もし、迷った兄妹が近くにいたら、その光を頼りにここへ来るかもしれない。
もっとも、雑魔も引き寄せてしまう可能性だってあるのだが……
そんな思いを持ちながら、ロニは急ぎかつ慎重に先頭をいく。
少し進むと、さっそく何かの気配を感じた。
こちらへ向かって、よたよたと歩いてくる人陰が見える。
前方から徐々に近づいてくるそれは、まだ幼い少女の姿だった。
暗闇で危険な森の中、少女は涙を流しながらこちらへ向かってくる。
いち早く気付いたレオナはすぐに皆に呼びかけ、少女に駆け寄りそれぞれ少女を気遣う言葉を放った。
「大丈夫? 君はメヌちゃんかな?」
「うん」
「もう一人のガキはどうしたんだ? 一緒じゃねーのか?」
ボルティアの姿とその巨大な斧を前に、少女は少し怯えつつ弱々しく言葉を呟く。
「おにいちゃんは……かいぶつに追い掛けられてるの……私に逃げろって言って……一人で……」
断片的な単語がメヌの口から出てくるが……皆は状況をなんとなく察した。
「……その怪物というのが、報告にあった雑魔ですね。これは困ったことになりましたね」
「へぇ~そいつ、雑魔から妹を守ったのか。やるじゃね~か」
ふとゾファルが、ずぃっと少女に顔を近づけた。
「ねぇ君、その雑魔はどこだか分かるかにゃ?」
「わからない……ずっと逃げてたから」
ロニは少女の話と、レオナの占いの結果をもとに推測する。
「この子のやってきた方向と、レオナの占いの方向が重なる。おそらく、少年も同じようにこの先にいるのだろう」
「ふむふむ、ってことは、このまま真っ直ぐ行けばいいってことじゃーん?」
「とりあえず方向が分かりゃ、遭難はしねーよな」
ゾファルは一目散に森の奥へ駆け出し、ボルディアも用意していた馬に乗り真っ直ぐ駆けていった。
「おいっ! お前ら……まったく」
ロニは勝手な行動をとる二人に呆れつつ、それでも緊急事態なのだから仕方ないかと思い直し納得する。
その横で、レオナは少女を説得していた。
「お兄ちゃんを急いで助けないとだから怖いかもだけど一緒に付いて来て?」
出来ることなら、少女を戦場に連れて行きたくはないが……ただでさえハンターの数が少なく、危機差し迫っているこの状況で、誰かが抜ける状況は作りたくはなかった。
妹はレオナの言葉にコクンと頷く。
「犬は大丈夫? アニーか私の服にでも掴まって離れないようにしてね」
レオナの側にいた愛犬のアニーが、少女のもとへ近付いてくる。
少女は犬が好きなのか、アニーの姿に強張った表情をわずかに緩めた。
【森に残る痕跡】
「うぉらー! 助けに来たぞ生きてンなら返事しろクソガキー!」
大声を上げながら馬に乗り疾走するボルディア。
反応するものがないかと、辺りに注意を払いながら声を張り上げる。
しばらくの間、馬で森を駆けていたボルディアは、途中で停止を余儀なくされた。
「っち」
止まった先は木々が異様に密集していて、真っ直ぐに走れる場所が見当たらない。
これでは馬で走るとかえって時間が掛かってしまうだろう。
そう判断したボルディアは馬から降り、徒歩に切り替え更に奥を目指す。
すると、少し走ったところで、いくつかの木々が倒されている痕跡を見つけた。
倒された木には、爪の跡が深々と刻まれているが……ただの獣に出来る芸当ではない。
これは雑魔の仕業なのだろう。
そうボルディアが確信したと同時に、後ろから気の抜けた締まらない声が発せられた。
「おぉ~なんか凄いことになってんじゃん」
全力で走ってきたのか肩で息をしている状態のゾファル。
辺りをキョロキョロと見回したかと思えば、突然屈み込み地面に耳を当て、何か聞こえないかを確認した。
「……んむ?」
「何か聞こえたのか?」
「あっちの方で、何かが聞こえたような気もしないような」
「なんだそりゃ、当てにならねーな」
「まぁともかく行ってみるしかないじゃ~ん」
訝しみながらも他に手がかりもないボルティアは、ゾファルと同じ方向へ向かった。
「おーい、少年~聞こえてるなら返事しろ~」
走りながら拡声器で呼びかけるゾファル。
同じように声を張り上げながら、木々の倒れ具合や痕跡の跡を確認しつつ進行方向を推測するボルディア。
そんな彼女たちの視界に、何かが蠢く姿を捉えた。
少年……にしては、あきらなに大柄な姿。
熊のようで、人のようにバランス良く二足で走る姿。
それを見て報告にあった雑魔だと判断した。
雑魔は赤く光る目を、騒音の原因である二人に向けている。
「お、雑魔見っけ。少年はいないみたいじゃん。どうするんだ?」
「雑魔がここにいるって事は、近くにいるんだろ。俺はガキの捜索を優先するぜ」
「おっけ~あいつは俺様ちゃんに任せろ!」
ゾファルは両拳を打ち付けつつ意気揚々と言葉を放つ。
雑魔を見つけた途端に生き生きしたゾファルに後を任せ、ボルディアはトイズの捜索を再開した。
【メヌの心配】
レオナの服を掴みながら、アニーと並び歩いているメヌ。
メヌは兄を心配しているのか、手に持った花を握りしめ暗鬱な表情をする。
レオナは、そんな少女が持つ花に気が向いた。
「綺麗な花ね」
「うん。今日、おかあさんの誕生日だったから、あげようとしたの……この花は、ここにしか咲いてなくて」
「そうか、それで君達はこの森に来たんだな」
「私が思いついたことなの……そのせいで、おにいちゃんが……」
「大丈夫だ。俺達が来たからには誰も死なせはしない」
ロニは大切な人を失う痛みをよく知っていた。
なので、メヌのことを他人事のように思えなかったのだ。
「そうですね。なんとしても、トイズ君を助けないと」
二人が改めて救出を決意したところで、辺りに拡散器で増幅したゾファルの声とハウリング音が響いた。
何かを発見したのだと推測し、声の放たれている場所へと急いだ。
【トイズの保護】
「やっと見つけたぜ、クソガキ」
ボルディアは、木々の間に隠れるようにしてうずくまっていた少年の姿を見つけた。
彼女が荒々しい格好をしているため、危害を加えられるかもしれないと思ったのだろう。
興奮して、尖った木の枝を突きつけるトイズ。
だが、それをボルティアは臆せず笑みを作り、少年の頭をがしっと撫で言い放つ。
「お前が妹を守ったんだって? 誰にでもできることじゃねぇぜ。カッコイイじゃねぇか、お前。次はもっと強くなってキッチリ守ってやれよ?」
そういって頭をガシガシ撫でるボルディア。
張り詰めていた気が緩んだのか、涙を溢れさせてしまうトイズ。
それを隠すように両腕で顔を覆い、立ち上がろうとするトイズだが、逃げるときに負傷した足が思うように動かずバランスを崩す。
「ん? なんだ、お前足を怪我してるのか? ……ったく、仕方ねーなっと」
「うわっ!」
ボルディアはトイズをひょいと持ち上げ肩に乗せて移動した。
【雑魔との戦闘】
ゾファルは一目散に敵へ走り、雑魔を仕留めようと動いた……が、携帯していたおでこぺっかりん☆では一方向しか明かりを照らせず、更に木々で塞がれた視界で動き回る雑魔の動きを捉えるのは難しかった。
ゾファルは思うように攻撃を当てることが出来ず、雑魔の攻撃にも対応が遅れダメージを受けてしまう。
「うぎゃっ、結構痛いにゃー」
普通、こんな状況では、為す術もなく一方的に攻められるだけなのだろうが……
しかしゾファルは、唯一相手から発する赤く光る目の光を捉え、ここだっ! と、拳を大きく振り抜く。
それは上手く雑魔に命中したようで、呻き声を上げながら地面に倒れ込む雑魔。
だが、ダメージが浅かったのかすぐに起き上がり、木々の陰に隠れてしまう。
一直線の光源と音と気配で雑魔の位置を予測し、攻撃を放つゾファルだが、その拳は木々によって邪魔された。
「だぁー! 木が邪魔すぎぃ!」
攻撃が難しいと判断したゾファルは、パリィローブで敵の攻撃を確実に防ぎ、仲間が来るまで時間を稼ぐことにした。
しばらくしてゾファルのもとへ駆け付けたロニは、強い光を雑魔の目に当て、気を自分へと向かせた。
「お前の相手はこっちだ!」
後はこちらへ迫ってくる雑魔に対し、動きを封じる魔法を当てればいい。
しかし注意は引けたが、雑魔は木々の間を素早く移動し、ロニの魔法の射程に入ってくれない。
そのまま木々を利用し、ロニに迫る雑魔。
身を構えるロニだが……雑魔の攻撃に対し構えていたロニを通り過ぎ、雑魔は後ろにいるメヌの方へ向かった。
弱い獲物から確実に仕留める気なのだろう。
雑魔の狙いに遅れて気付いたロニだが、そこにしれやられたといった焦りはない。
雑魔とメヌを遮るように、レオナが間に立ち、流れるような動作でセロを『Forfeda』で装填し『修祓陣』を展開する。
輝く光が辺りを包み、仲間を守る。
「メヌちゃんには手出しさせませんよ」
レオナは雑魔の攻撃を防ぎ、少し前に投げ上げていた符により『風雷陣』を発動させ、雑魔に稲妻を落とした。
ダメージを受けた雑魔が引いたところで、ボルディアがトイズを連れて合流する。
「お、やってるじゃねーか」
まともにやっても敵わぬと判断したであろう雑魔は、木々の間を移動しながらこちら側の隙を伺っているようだ。
ロニとレオナが駆け付けた事により、場は明るく照らされているが、それでも邪魔な木々をどうにか出来るわけでもない。
手出しが出来ない状況に、ボルディアは業を煮やした。
「ったく、めんどくせーな。誰か、クソガキは任せたぜ」
そう言い、単身で木々の中に突っ込んでいくボルディア。
「トイズ君は私に任せてください」
即座にレオナが、メヌを連れてトイズの元へ駆け付け、二人を背にし守りを固めた。
ボルディアは素早く動く雑魔の近くへ駆け、周りに仲間がいないことを確認し、『烽火連天』を放った。
炎を纏った斧を凄まじい勢いで回転させ、その尋常ならざる威力で周りの木々を吹き飛ばす。
その豪快なやり方に、仲間の何人かは唖然とした。
木々で塞がれていた場所が開け、斧を振るための十分なスペースが出来る。
あまりのことに雑魔は怯み、ハッとしすぐに木々が切り倒されていない場所へと逃げようとするが……
ロニがそのチャンスを見逃さない。
ボルティアの放ったスキルにより、ロニからボルティアを挟み雑魔まで木々の無い空間が広がっていた。
ボルディア越しに立っている雑魔に向けて、ロニは『プルガトリオ』を撃つ。
ロニの作り出した闇の刃が、ボルディアをすり抜け雑魔に命中し、そのまま雑魔を空間に縫い付け移動不能にした。
すぐさま斧で足を破壊し、雑魔の機動力を削ぐボルディア。
そこに、散々苦汁を飲まされ続けていたゾファルも駆け付けていた。
「にっしし、やっと止まったじゃーん」
動きが完全に制限された雑魔に対し、ゾファルは即座にソウルエッジで武器を強化し、今までの鬱憤を晴らすかのように『如来掌』からの『星砕き』と凄まじい連続攻撃を繰り出した。
耳を打つ程の打撃音と共に、雑魔の巨体が宙を舞い、地面に勢いよく倒れる。苛烈な連続攻撃によりほとんど原型を留めていない雑魔。
しぶとくまだ息のあった雑魔だったが、ボルディアが頭部を叩き潰し、そのまま雑魔の姿は霧散した。
【雑魔撃破後】
不利な状況での戦闘で傷だらけのゾファル、そして足を負傷したトイズを見て、ロニは『フルリカバリー』で二人の傷を癒やした。
「おぉ、ありがとにゃ、ロニちゃん」
「……ありがとう」
ロニにお礼を言ったトイズは、すぐさま妹のメヌのもとへと向かった。
「大丈夫かメヌ」
心配をするトイズに、メヌは涙目で言った。
「ごめんなさい、おにいちゃん……花が萎れちゃって……」
「なっ、そんなこと、そこまで気にすることじゃないだろ」
命の危機を脱したばかりだというのに、妹のメヌの心配の方向にトイズは呆気にとられる。
「でも、これじゃお母さん喜んでくれないよ……」
メヌの手の内には、強く握り続けたためか弱々しく萎れた花があった。
最初の時の元気そうな姿は見る影もない。
そんな状態の花を眺めつつ嗚咽をもらすメヌに、ロニは優しい言葉を掛けた。
「そんなことはないさ。君達が母親のために一生懸命探して見つけた花だ。それを喜ばないはずが無い」
それにレオナも同調した。
「そうですね。見たところ枯れているわけでも無さそうですし、元気になるかもしれません」
「それに、だめでもまた摘みに行けばいいじゃ~ん」
慰めになってるのかどうかわからないゾファルの言葉。
「なんだったら、今から摘みに行くか? 面倒だし、森中の花を全部いただいちまうか」
そう軽く言うボルディア。冗談だと思いたいが、辺りの木々を薙ぎ倒す程の豪快な彼女なので本当にやりかねない。
「そんなことしたら、森に花が無くなっちまうだろ!」
焦ってボルティアを止めに入るトイズ。
その掛け合いがおかしかったのか、悲しみに塗れていた少女はフッと笑みを浮かばせた。
「さぁ、早くお家に帰りましょうか」
レオナの言葉に、二人はコクンと頷いた。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/08/12 00:50:14 |
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相談室 レオナ(ka6158) エルフ|20才|女性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2018/08/13 18:33:46 |