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【CF】ひとりぼっちの夜の為に

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
寸志
相談期間
5日
締切
2014/12/26 19:00
完成日
2015/01/03 06:17

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 崖上都市「ピースホライズン」で進められていたクリスマスの準備も佳境に入っていた。
 魔導仕掛けのイルミネーションの輝きを筆頭に、店も家も問わず、クリスマスの色で溢れている。
 ハンターたちの手伝ったその成果も、町を歩く人々に広まっていた。
 例えばプレゼントであったり、ツリーを飾る小物であったり。
 目新しいものも、定番のものも等しくクリスマスの空気に溶け込んで、ピースホライズンのお祭り空気をより鮮やかにしている。

 クリスマス当日は目前に迫っている。
 どう過ごそうか、決まっていても、決まっていなくても。ピースホライズンに足を運ぶ人の数は日に日に増えていくのだった。



「今年もAPVでクリスマス会を開く予定はありません、っと……」
 帝国ユニオンAPV、その掲示板に張り紙を出すタングラムの姿があった。
 クリムゾンウェストも年の瀬、何かと忙しい季節になってきた。今年はCAMの起動実験やら何やらもあり、クリスマスどころではない者も多いだろう。
 実際、今年もクリスマスを楽しみにしていた帝国皇帝はトラックに揺られて今頃辺境領でふんぞり返っているはずだが、多分その頭の中では「クリスマス行きたかった」的な残念思考が繰り広げられている。そうに違いない。
「……え? なんでクリスマス会をしないのか、ですか? うーん、理由は色々あるですが……」
 一人のハンターの問いかけにタングラムは思案する。そう、理由は色々ある。
 まず、このクリスマスの季節に行われる祭事はクリムゾンウェスト世界では“聖輝節”と呼ばれており、その本場はピースホライズンだ。
 別にどこで聖輝節を楽しもうがケチをつけるつもりはないが、ユニオンでやるよりは出来ればピースホライズンに足を運んで本場の雰囲気を楽しんでもらいたい。
「なにせここでは大した準備も出来ませんからねぇ。しょぼいケーキとしょぼい料理でいつも通りの面子で顔を合わせても寂しくないですか?」
 少し考えた後、ハンターは首を横に振る。別にいつも通りの面子でもいいのではないだろうか。料理にしたって、ボランティアを募れば腕に覚えのある者が名乗り出るだろうし。
 そも、これまでの祭りだってそんな感じではなかっただろーか。しかし思えば確かに前回の万霊節……ハロウィンの祭りでは、わざわざピースホライズンまでハンターを釣れ出していたか。
「やっぱりお祭りは本場でなくても大勢で雰囲気を楽しんだ方が良いと思うのですよね。まあ、前回は帝国的な事情もあったのですが……」
 今回は帝国首脳陣の注目はCAM起動実験に向いている筈だ。帝国は基本、ピースホライズンを支持する立場を示しているが、今回は手が回っていない印象もある。
「帝国からの依頼もない以上、APVとしてはピースホライズンに派遣する大義名分がないですからね。あ、もちろん個人単位で飲み会をしたりするのにAPVを使うのは構わないですよ。二十四時間常時開放されているですからね。去年もそうしてる奴らが結構いたかな」
 なんとなく納得した気がするが、それならちゃんと場を仕切った方がいいような気もする。そう提案するとタングラムは煮え切らない様子で。
「うーん……そうですねぇ。まあでも、ほら。クリスマスというのは特別な行事ですからね」
 聖輝節に纏わる恋人同士の甘い逸話など枚挙にいとまがない程だ。別に恋人同士で過ごさにゃならんってモンでもないが、そうできるならそうしたほうがいいんじゃなかろうか。
「例えばですが。ここにハンター同士のカップルがいたとして、女の子の方は二人きりで聖輝節を過ごしたいと思っていたとする。しかし男の方は“APVでクリスマス会があるからついでに参加すればいいじゃん”とか言い出したりするかもしれないでしょう? そうなったら女の子の健気な勇気が可哀想じゃないですか」
 ……そんなヤツいるのだろうか? いや、いそうだ。かなりいそうだ。なんかハンターの男って大体朴念仁な気がする。
「ていうか……実際に過去にそういうことが……」
 あったんですね。
「……うーん。しかしまあ、そうですねぇ。彼女も居ないで一人寂しくクリスマスを過ごす奴もいるにはいるでしょうからね。そんなヤツにはこの美少女エルフであるタングラム様がお情けを頂戴してやる方がよいのかもしれません」
 若干語弊はあるような気はするが……ていうかなんで男限定のぼっち想定なのか……まあいいだろう。
「じゃあ、来年からはAPVでもクリスマス会を開こうじゃないですか。うん、そうしようそうしよう」
 一人で結論を出して頷くタングラム。そのままいつもの帽子を手に取り、外套を纏って歩き出す。
「どこに行くのかって……ピースホライズンに視察に行くのですよ。本場の聖輝節を知らなきゃ来年の企画はおぼつかないですからね」
 その鞄に詰め込んでる酒瓶はなんですか?
「この間大掃除したらいっぱい出てきたので、ついでに呑んでこようかなと……」
 ハンターに振る舞うんじゃなかったんですか?
「…………」
 なんで目をそらすんですか?
「と、ともかく……私は聖輝節の視察に行ってくるですからね。あーいそがしいいそがしい……ちょっ、なんで掴むんですか!?」
 一人だけピースホライズンで休暇を楽しむなんてずるいと思います。
「じゃあ別についてくればいいんじゃないですか? 本当にただの視察ですから給料は出せないですが、まあ、飲食代位は奢ってあげるですよ。これでもユニオンリーダーですからね。その代わり、来年のクリスマスの準備に貢献するのですよ?」
 帽子を頭に載せながら苦笑するタングラム。こうしてハンターはタングラムと共にピースホライズンを目指すのであった。

リプレイ本文

 やってきましたハンター一行。そして季節は聖輝節、所謂クリスマスである。
 リアルブルー由来ではあるとされるが、宗教的な意味合いは持たず、ピースホライズンは祭り好きという事もあり、夜でもイルミネーションの光で街全体が賑やかだ。
「その前に一つ確認したいんだが」
 腕を組み、目を瞑る。近衛 惣助(ka0510)は小さく息を吐いた後、左右に目を向け。
「まさかの男は俺だけか?」
 そう。今回の依頼を引き受けたハンターは彼を除き全員女性。見た感じだと惣助が周囲に六人女性を侍らせているような図だ。
「再確認するまでもなくその通りだと思うが……まさかあなたにはこの中に男性が紛れているように見えるのか?」
「いや誰もそうは言ってないが……」
 胸を両腕で隠しながら惣助を見つめる夕鶴(ka3204)。メープル・マラカイト(ka0347)は帽子の鍔をくいっと下げ。
「惣助さん……そうそうに、スケベ……ふふ」
「確かにこの状況を楽しむのは近衛さんの権利ですけど、えっちなのはいけませんよ!」
「いや本当に見てないから。見比べてもいないから」
 ソフィア =リリィホルム(ka2383)の声に大慌てで両手を振る惣助。もう前途多難だ。
「彼女のいない男限定じゃなかったのか……」
「え? 近衛さんは男性に囲まれたかったんですか?」
「まあ、素敵な趣味ですわね!」
 ファティマ・シュミット(ka0298)とロジー・ビィ(ka0296)の言葉に冷や汗が止まらない。
「しかもよく見ればリアルブルー人は俺だけじゃないか。物凄いアウェー感だ」
「これも何かの修行だと思って耐えるですよ」
 タングラムの言葉にがくりと肩を落とす。まあ、彼には諦めてもらうとして。
「流石はピースホライズン、聖輝節の本場ですわね。キラキラしたイルミネーションに陽気な音楽……ああ! わくわくしてきますわ!」
 ロジーは胸の前で手を組み、煌めく夜の街に息を吐いている。流石お祭りの本場、かけてる金と工数が違いますね。
「それは良いんだが、この大掛かりな準備をユニオンで再現するのは骨が折れそうだ。リーダーはどの程度本格的にするつもりなのかな」
「そもそも本格的なクリスマスってカップルで過ごす日だったんですね! 本格的なクリスマスを再現するとなると、もしかしてカップルを用意するところから始めないといけないんでしょうか!?」
「カップルを用意するのは難しいのではないか? まあ、家族を用意するのも難しいのだが……」
 行き交う人々を観察するファティマの声に夕鶴が難色を示す。そんな時、ソフィアが手を叩き。
「皆さん、今日はお仕事で来てるんですからねっ!」
「そうだな。ちゃんとメモを……」
「そこでパンフレットを貰ったので、計画的に回って行きましょう! 希望はありますか!?」
 ソフィアの周りにぞろぞろ集まる女衆。惣助はペンとメモを手に遠い目で空を見上げた。
「今日の俺は、空気のように目立たない存在でいようと思うんです」
「どこに向かって宣言してるですか?」
 肩を竦めるタングラム。こうしてクリスマスの調査が幕を開けた。



「まず、ケーキは用意すべきですわよね。それとお菓子と……お酒ですわね!」
「酒……避けては通れません……ふふ」
 ロジーの声に頷きながら笑うメープル。夕鶴は首を傾げ。
「先程から少し気になっていたが、ひょっとしてダジャレを言っているのか……?」
「ダジャレを言うのは誰じゃ……ふふ」
「いや、あなたしかいないが」
「ケーキにお菓子にお酒と……あれ? どうしたんですかファティマさん?」
 パンフから顔を上げ振り返るソフィア。見ればファティマは道の隅っこに突っ立っている。
「いえ。今日の支配階級は彼らなので、独り身のわたしは道を譲るべきかと思いまして……」
 成る程、確かに行き交う人々はカップルも多く、そのカップルはだいたい自分達の世界に没入し、ファティマは轢かれている。
「別に逃げまわる必要もないのでは?」
「逃げてるわけじゃないんですけど、なんかこう、負けてる気がします!」
「恋人か……興味がないわけではないが……」
 メープルの言葉に悔しげに両手を振るファティマ。夕鶴は顎に手を当て一人で考えている。
「独り身を嘆く必要はありませんわ。それこそ、ここで出会いを見つけてしまえば良いのです。際どい下着を纏ったタングラムのように!」
 ビシリと指差すロジーにタングラムはずっこけた後、跳び上がり。
「なんでじゃゴラァ!? 今日はそんな派手なの穿いとらんわ!」
「今日のような特別な日に身につけずしていつ……? はっ!? タングラムは特に理由もなく勝負下着を……つまり常時臨戦態勢……!?」
「おーい! 帰ってこーい!」
「恋人か……興味がないわけではないが……」
「え? なんで二回言ったんですか?」
 まだ思案している夕鶴のぼやきにファティマは驚き目を向けた。
「タングラムさんは……何グラム? ふふ」
「え? なんでこのタイミングでダジャレ考えてるんですか?」
 夕鶴と同じく何か考えこんでいるメープル。ファティマは首を傾げた。
 もうどうにも出来ない惣助は久しぶりに神に祈った。
「こんな道端で騒いでたら通行の妨げですよー! こちらについてきてくださーい!」
 手を振るソフィアにぞろぞろついていく一行。まだまだお楽しみは始まったばかりだ。

「それにしても、どなたも華やかな衣装ですわね。特別な夜なのだから、当然ですけれども」
 歩きながらくるりと身を翻し、ロジーは目を瞑り楽器を奏でるような仕草をしてみせる。
「APVでもドレスアップ必須とすればどうでしょうか。クリスマスらしい音楽もあれば最高ですわね」
「成る程。確かにクリスマスらしい雰囲気を作ってしまえば誰でも自然とそんな気分になるだろうな」
 頷く夕鶴。しかし苦笑を浮かべ。
「だが、大前提として幸せいっぱい夢いっぱいの人々が集う可能性は限りなく低い。そんな連中が上品に宴を楽しめるだろうか」
「別に慎ましく過ごさなくても良いとは思いますけど、独り身対象なら合コンを兼ねるとかどうかしら?」
「それはリーダーの言う本格的なクリスマスなのだろうか……」
「ドレスコードもそうですけれど、あまり固いコトに拘る必要もきっとないですわよ。お祭りというのは、人を選ばず受け入れる物ですから、ね?」
 ロジーの言う通り、ピースホライズンはどんな人間でも受け入れている。
 別に独り身でも構わないし、カップルでも家族でも友人同士でも良いのだ。
「カップルの人達も別にわたし達を否定しているわけではないですよね。ただ自分達が今幸せだから眼中にないだけで」
 乾いた笑みを浮かべ、ハイライトのない目でファティマが呟く。
「でも、こうして皆さんと一緒にいる瞬間が楽しくて満たされているのは事実ですから」
 メープルは帽子の鍔を持ち上げ。
「雰囲気作りの為には独自の食べ物や飲み物がならではの楽しみですよね。その中でもやはり特にお酒ですよね」
「そうですわね! ケーキもお料理も大切ですけれど、やはりお酒ですわよね!」
 頬に手を当て瞳を輝かせるロジー。ファティマは両手を上下に振っている。
「雰囲気作りならキラキラして綺麗なお酒が良いですよねっ! あと、皆で呑むなら量が確保できそうなものでしょうか?」
「そうですね。高級酒ばかりでは現実的な予算に落ち着かないだろうし……入手難度とか、流通も意識した方がいいでしょうね」
 ソフィアの話を聞いているのに速攻でピースホライズンの地酒に走って行く一行。そのお酒は高いぞ。
「全く、完全に飲み歩く流れだな……。夕鶴は走って行かないのか?」
「恥ずかしながら私は酒が飲めなくてな。まだまだ子供の舌でね」
「酒が飲めないから子供というわけでもないと思うが、確かに下戸もいるだろうな。成る程、盲点だった」
「果実のジュースとかもあるですからね。そういうのでもいいと思いますよ」
 メモを取る惣助の隣で店を指差すタングラム。どうにも酒飲み基準になりがちな今、夕鶴の意見は逆に貴重になりそうだった。
「このブッシュドノエルというケーキ、可愛くないですかっ? お酒はやっぱりワインですよね!」
「スパークリングワインですの? 見た目にも華やかですわね」
「私、ワインには目がないというか、ワインに弱いんです……ふふ」
「これって帝国でも手に入ります?」
 なにせ酒飲み共は完全に酒の世界に入ってしまっている。惣助は冷や汗を流し。
「皆心配ないとは思うが、潰れる程は飲まない様にな」
「多分あいつら全然聞いてねーと思うですよ」
 僅かに右手を伸ばして語りかける惣助だが、タングラムに言われるまでもなくそっと手を下ろすのであった。



「では僭越ながら……。今日この日の出会いと、来年のまだ見ぬ出会いに……乾杯!」
「「「 かんぱーい! 」」」
 掲げられたグラスが小気味いい音を立てる。と同時、中身が女共の口から胃の中へ速攻で消え去ってゆく。
「結局飲み会になったな。まあ最初からそういうつもりではいたが」
 あちこちで酒や料理を試した一行だが、だんだん手荷物が増え、最終的に立ち食い出来ない状態に陥った為、来客用に開放されているテーブルをひとつ借りて即席の宴会を開く事になった。
「ワイン美味しいですワイン! 右も左もワイン! 幸せですぅ!」
「ワインの飲み比べだけで夜が明けてしまいそうな量ですね」
 涙を流しながら叫ぶファティマ。その隣でメープルは淡々とコルクを捻っている。
「泣く程の事なのか?」
「今が幸せだと何故か日常が寂しく感じられるこの現象に名前があればすぐに説明出来るんですけどっ」
「……いや、だいたいわかったからもう大丈夫だ。飲みなさい」
 空いたファティマのグラスに眉間に皺を寄せつつ惣助がワインを注いでいく。
「ところで、そちらの可愛らしい御仁はどなたですの?」
「ああ、それはなんというか……タングラムさんに買ってもらったんですよね?」
 チキンを切り分ける夕鶴の隣にはでかいうさぎのぬいぐるみが座っている。ちゃんと赤い服を着て帽子も被っているクリスマス仕様だ。
「いや、恥ずかしい……この歳になって迷子になるとは……」
 ロジーとソフィアの視線に頬を掻く夕鶴。まさか途中でぬいぐるみ屋さんに一人で向かい、置いて行かれるとは思っていなかった。
 幸いソフィアがすぐに気づいて引き返したのでよかったが、完全にはぐれてはこの人通り。合流には骨を折っただろう。
「でも、プレゼントはいいですわね。プレゼント交換をするのはどうでしょう?」
「そうだな。催しがあれば通夜のようにはならないだろうしな」
 ロジーの提案に頷く夕鶴。実際にプレゼントを受け取った立場ならばこそ、反対理由は思いつかない。
「来年のクリスマス会は隠し芸大会でもやります? 場も盛り上がるのでは?」
「タングラムさんが火の輪くぐるとかで良いんじゃないでしょうか?」
「なんでやねん。っていうかユニオン内で火ぃ燃やすんじゃねーですよ」
 ファティマのいい加減な提案に冷や汗を流す惣助。タングラムも微妙な表情だ。
「プレゼントと言えばタングラムさんが凄く高いお酒をもっていましたね。是非ともご相伴に預かりたいものです」
「もし不服があるようならば交換という事でワインを差し出すのも吝かではありませんわよ?」
「もうそれ同じやつ皆で飲んだ後だろ!」
 最初から諦めていたのか、ロジーに突っ込みを入れつつ大人しく酒瓶をメープルに手渡すタングラム。
「この辺の料理は一応ユニオンの台所でも再現できそうだが、いざ作るとなると手間かな?」
「ユニオンには料理上手も多いですからね。レシピさえあれば大丈夫でしょう」
 手帳を広げながら呟く惣助に笑顔を向けるタングラム。ファティマも酒の進みが落ち着いてきたのか、スケッチブックを開いて街の様子を描いている。
「こういう飾り付けがありましたっていうのがわかれば、より本格的になりますよね」
「意外とちゃんと考えているのですね」
「これが終わったら朝まで飲みますので、大丈夫です!」
「大丈夫じゃねえよ」
「報告書にはタングラムさんが高いお酒を振る舞ってくれる事も書いておきますね……」
「それクリスマス関係ねーし! そんな大量に振る舞えるほど秘蔵酒ねーし!!」
 容赦なく秘蔵酒を開けるメープルを前に頭を抱え絶叫するタングラム。こうして夜は更けていく……。

「そろそろ新しいお酒を買って来ましょうか」
「タングラムが持っていた秘蔵酒、ここで買えるのかしら? ちょっと調べてきますわね」
 メープルとロジーがほぼ同時に立ち上がる。ファティマはりんごジュースを飲んでいる夕鶴に目を向け。
「夕鶴さんも一緒に行きませんか?」
「あ、いや。私は酒が苦手でな」
「途中、果実を漬け込んだカワイイお酒があったんですよ。甘いお酒なら楽しめるんじゃないですか?」
 そういう事ならと同行する夕鶴。惣助は何やら険しい表情でゆっくりと席を立ち。
「本当にきみ達は容赦無いな。パトロンがあると言えども無尽蔵ではないんだぞ」
 手持ちは幾らあっただろうか。もし飲み代が間に合わなくなれば自分が出すべきだろう。なにせ男一人だし。
「タングラムのお酒ありましたけれど、凄い額ですわー!」
 ロジーの悲鳴めいた、しかし楽しげな声にずっこけそうになる惣助。だらだらと汗を流しながら慌てて走っていった。
 呆れながら見送るタングラム。残されたソフィアは煙草を取り出し、マッチに火を灯す。
「……なあ。あんた、ドワーフ嫌いか?」
「急な質問ですね?」
「そうだな、急すぎた。悪い、今の無し。聞かなかった事にしてくれ」
 溜息混じりに紫煙を吐き出すソフィア。タングラムはグラスを傾け。
「話したい事があるのなら相談に乗るですよ。それもユニオンリーダーというものですから」
 少し考えた後、思い直したようにソフィアは顔を上げ。
「わたしはエルフハイム出身なんだ」
 そう短く告げた。それだけでタングラムは驚き、それからソフィアの肩を抱く。
「それは苦労しましたね……」
「今は時代が変わったな。こんな所で当たり前に酒を呑んでいられるなんて」
 遠巻きに仲間たちが酒を買う姿に目を細める。タングラムは頷き。
「ドワーフだろうがエルフだろうが人間だろうが、大切なのは種ではなく個です。善悪の判断は自らの基準で測る。それが私の答えです」
「そうか……」
 目を瞑り頷くソフィア。買い物を終え大量に酒やつまみを手にした仲間達が戻ってくる。
 ソフィアは煙草をもみ消し、仲間達に手を振り返す。この街は平和の地平線。誰も何にも縛られる必要のない世界だ。
「良いものですね。クリスマスというのも」
 グラスを片手に微笑みを返すタングラム。
 願わくば来年もこうしてまた、その次もまた聖輝節が訪れますように。そう願いながら、ハンター達は宴を楽しむのであった。

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重体一覧

参加者一覧

  • もふもふ もふもふ!
    ロジー・ビィ(ka0296
    エルフ|25才|女性|闘狩人
  • 理の探求者
    ファティマ・シュミット(ka0298
    人間(紅)|15才|女性|機導師
  • Pun Pun ぷー
    メープル・マラカイト(ka0347
    エルフ|25才|女性|魔術師
  • 双璧の盾
    近衛 惣助(ka0510
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • 大工房
    ソフィア =リリィホルム(ka2383
    ドワーフ|14才|女性|機導師
  • 質実にして勇猛
    夕鶴(ka3204
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 聖輝祭見学するよっ!
ソフィア =リリィホルム(ka2383
ドワーフ|14才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/12/26 06:33:08
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/12/21 22:46:27