ゲスト
(ka0000)
【CF】子供達とクリスマスにパーティを
マスター:十野誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/12/29 15:00
- 完成日
- 2015/01/06 00:14
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
多くのお祭り好きの力を借りて、準備は既に整った。
彩られたイルミネーションは街を宝石のように照らし出し、運び込まれたモミの木には色とりどりの飾りつけが施されていた。
立ち並ぶお店の店員は紅白の衣装に身を包み、ラッピングされたプレゼントの山が街に到着する。
一体、誰の掛け声から始まったのだろう。いや、誰の掛け声だって関係ない。
ここは崖上都市「ピースホライズン」陽気で楽しいお祭りの街。
騒げる口実があるならば、踊れる舞台があるのならば、かの街は喜んでお祭りムードに染め上げる。
たとえそれがエクラ教由来だろうが、リアルブルー由来であろうが、お祭りである事に変わりは無いのだ。
各々が、好き好きに、その祭りの日を楽しめば良い。
ここはピースホライゾン。水平線を望む平和の街。
クリムゾンウエストのクリスマスが今、始まろうとしていた。
時に、クリスマスと言えば様々な奇跡が起こる事でも知られているものであるが……
この世界に果たしてどのような奇跡が舞い降りるのだろうか。
●
年を送り、近くに迫る準備を行うピースホライズンでは、街路のあちこちがきらびやかな色で飾られ、街を行く人はそれぞれに笑顔を浮かべる。
家族と、親しい人と、大切な人との一時をどうすごそうか――そんなことを考える街の人を、とある教会の窓から、4対の目が覗いている。
「とうとうクリスマスねー。なんど見てもきれい……」
「へーん、そんなこと言って、楽しみなのはそっちじゃないんだろー」
「あら、それだれのこと? どこかのくいしんぼうさんとはちがうわ」
からかうように言う茶色い髪の男の子に、赤い髪の女の子がツンと答える。
そんなやり取りをする2人をよそに、淡い金色の髪の女の子がぼんやりとした口調で声を上げる。
「――あれ、あのこ――」
「どうしたの? って……あら……」
その視線の先。そこには父親と母親に挟まれて幸せそうな顔で、プレゼントを持っている少女がいた。
少女の手の中には、一包みの小さな箱。4人からはどんな箱かは分からないが、
――いいなぁ――
4人の内の誰かがぽそりとつぶやく。
思わず、だったのだろう。子供達の中に、気まずい空気が流れる。
「さて、もどりましょう。シスターたちのお手伝いをしないといけませんから」
それまで静かにしていた黒髪の男の子の声を受け、固まっていた彼らは動き始めていく。
「めんどくせぇなあ……」
「ダメですよ、クリスマスのパーティがなくなってしまいますよ?」
「おかあさまたち、いっしょにおいわいできたらよかったのに……」
「しかたないですよ、おしごとなんですから」
言葉をかわしながら、子供達は開いていた窓を閉じ、教会の中へと戻っていく。
「――わすれて、ました、ね」
そんな中。近くに立っていたシスターが、そう言って冷や汗を流した。
●
「というワケで、プレゼントを用意してくれちゃってたりなんかしませんかねっ!?」
「はしたない。まず落ち着きなさい。子供達に見られてはどうするのです。いいですか? まずシスターたるもの――」
年上のシスターがお決まりの説法を繰り出そうとすると、駆け込んできた後輩シスターが言葉を続けた。
「クリスマスプレゼントが、いるんですっ! 子供達にあげるための!」
「詳しくお話しなさい」
………………
…………
……
話を聞いた先輩シスターが、ガタァ! と音を立て席を立つ
「なんと、何という事でしょう……」
「ごめんなさい、先輩。パーティの準備だけでいいとばかり……」
「いいえ。私も悪いのです。あなたに指示をしたのは、パーティの準備だけ。そうですか、プレゼントが……」
「どうしましょう。急いで子供達へのプレゼントを買ってきた方が良いでしょうか……」
後輩の言葉に、先輩は静かに首を振る。
「あなたには割り振った仕事が有ります。そちらをおろそかにしては元も子も無いと言うもの」
ですけど、と口を開く後輩を、先輩シスターがそっと手で押さえる。
「――依頼をさせていただく事としましょう」
「依頼……ハンターに、ですか? プレゼントを買うためだけに?」
後輩の言葉に、先輩シスターは顔の眼鏡を光らせる。
「いいえ。それだけではありません。彼らの力を借り、サンタを用意するのです……!」
さんたくろーす。
クリスマスに現れ、良い子にプレゼントを、悪い子に黒い炭を渡すと言われる人物。
それを用意するという言葉に、後輩は不審げな顔を見せる。
「せんぱい……忙しさにとうとう……」
「お黙りなさい。まだ20を数えたばかりの私になんてことを言うのです。いいですか?」
サンタ自体を連れてくるのではない。ハンター達にプレゼントを用意して頂き、それを子供達に配ってもらおうというのだと、先輩は語る。
パーティで渡してもらっても構わないし、子供達が寝ているところにそっと置いてもらっても構わない。
寂しさを堪える子供が、それを見て元気になってくれるような事をしてもらうのだと。
「さて。許可は私がとっておきます。あなたは……」
「………………」
「聞いていますか?」
「え、あ、はい! 大丈夫です! ハンターオフィスに出して来ればいいんですねっ!?」
先輩シスターの言葉に、考え事をするような表情を見せていた後輩が、我に返って叫ぶ。
「そうと決まれば早速行ってきます! 後はよろしくお願いしますっ!」
「あ、こら。だから走らな――行ってしまいましたか。全くせわしない」
ばたばたと音を立てて走り去っていく後輩の後姿を見ながら、先輩はそう言って苦笑を漏らす。
「……今日は見逃しますか。共に過ごす家族を失ったあの子達のためなら。ささいなことですしね」
●
「今日の依頼はこちらに――あら?」
オフィスを訪れたハンターに、受付嬢は依頼を案内しようとして、手元残されていた1枚の紙に気がつく。
「申し訳ございません。そちらの依頼に追加の点があったようです。あわせてご確認ください」
<依頼書>
・子供達への贈り物の用意及び、プレゼントをお願いいたします
・プレゼントの予算については、当方より支出致します。ただし、あまり多くは出せませんのでご注意ください。
・リアルブルーでサンタをご存じの方がいれば、その格好をしていただいても構いません。子供達も喜ぶかと。
・聖夜節では当教会において、パーティを行います。プレゼントはこの会場で渡していただいても良いですし、夜中にプレゼントをされても構いません。
<追加分>
・パーティの準備をされる方も募集しています! 一緒に子供達を喜ばせませんか!
彩られたイルミネーションは街を宝石のように照らし出し、運び込まれたモミの木には色とりどりの飾りつけが施されていた。
立ち並ぶお店の店員は紅白の衣装に身を包み、ラッピングされたプレゼントの山が街に到着する。
一体、誰の掛け声から始まったのだろう。いや、誰の掛け声だって関係ない。
ここは崖上都市「ピースホライズン」陽気で楽しいお祭りの街。
騒げる口実があるならば、踊れる舞台があるのならば、かの街は喜んでお祭りムードに染め上げる。
たとえそれがエクラ教由来だろうが、リアルブルー由来であろうが、お祭りである事に変わりは無いのだ。
各々が、好き好きに、その祭りの日を楽しめば良い。
ここはピースホライゾン。水平線を望む平和の街。
クリムゾンウエストのクリスマスが今、始まろうとしていた。
時に、クリスマスと言えば様々な奇跡が起こる事でも知られているものであるが……
この世界に果たしてどのような奇跡が舞い降りるのだろうか。
●
年を送り、近くに迫る準備を行うピースホライズンでは、街路のあちこちがきらびやかな色で飾られ、街を行く人はそれぞれに笑顔を浮かべる。
家族と、親しい人と、大切な人との一時をどうすごそうか――そんなことを考える街の人を、とある教会の窓から、4対の目が覗いている。
「とうとうクリスマスねー。なんど見てもきれい……」
「へーん、そんなこと言って、楽しみなのはそっちじゃないんだろー」
「あら、それだれのこと? どこかのくいしんぼうさんとはちがうわ」
からかうように言う茶色い髪の男の子に、赤い髪の女の子がツンと答える。
そんなやり取りをする2人をよそに、淡い金色の髪の女の子がぼんやりとした口調で声を上げる。
「――あれ、あのこ――」
「どうしたの? って……あら……」
その視線の先。そこには父親と母親に挟まれて幸せそうな顔で、プレゼントを持っている少女がいた。
少女の手の中には、一包みの小さな箱。4人からはどんな箱かは分からないが、
――いいなぁ――
4人の内の誰かがぽそりとつぶやく。
思わず、だったのだろう。子供達の中に、気まずい空気が流れる。
「さて、もどりましょう。シスターたちのお手伝いをしないといけませんから」
それまで静かにしていた黒髪の男の子の声を受け、固まっていた彼らは動き始めていく。
「めんどくせぇなあ……」
「ダメですよ、クリスマスのパーティがなくなってしまいますよ?」
「おかあさまたち、いっしょにおいわいできたらよかったのに……」
「しかたないですよ、おしごとなんですから」
言葉をかわしながら、子供達は開いていた窓を閉じ、教会の中へと戻っていく。
「――わすれて、ました、ね」
そんな中。近くに立っていたシスターが、そう言って冷や汗を流した。
●
「というワケで、プレゼントを用意してくれちゃってたりなんかしませんかねっ!?」
「はしたない。まず落ち着きなさい。子供達に見られてはどうするのです。いいですか? まずシスターたるもの――」
年上のシスターがお決まりの説法を繰り出そうとすると、駆け込んできた後輩シスターが言葉を続けた。
「クリスマスプレゼントが、いるんですっ! 子供達にあげるための!」
「詳しくお話しなさい」
………………
…………
……
話を聞いた先輩シスターが、ガタァ! と音を立て席を立つ
「なんと、何という事でしょう……」
「ごめんなさい、先輩。パーティの準備だけでいいとばかり……」
「いいえ。私も悪いのです。あなたに指示をしたのは、パーティの準備だけ。そうですか、プレゼントが……」
「どうしましょう。急いで子供達へのプレゼントを買ってきた方が良いでしょうか……」
後輩の言葉に、先輩は静かに首を振る。
「あなたには割り振った仕事が有ります。そちらをおろそかにしては元も子も無いと言うもの」
ですけど、と口を開く後輩を、先輩シスターがそっと手で押さえる。
「――依頼をさせていただく事としましょう」
「依頼……ハンターに、ですか? プレゼントを買うためだけに?」
後輩の言葉に、先輩シスターは顔の眼鏡を光らせる。
「いいえ。それだけではありません。彼らの力を借り、サンタを用意するのです……!」
さんたくろーす。
クリスマスに現れ、良い子にプレゼントを、悪い子に黒い炭を渡すと言われる人物。
それを用意するという言葉に、後輩は不審げな顔を見せる。
「せんぱい……忙しさにとうとう……」
「お黙りなさい。まだ20を数えたばかりの私になんてことを言うのです。いいですか?」
サンタ自体を連れてくるのではない。ハンター達にプレゼントを用意して頂き、それを子供達に配ってもらおうというのだと、先輩は語る。
パーティで渡してもらっても構わないし、子供達が寝ているところにそっと置いてもらっても構わない。
寂しさを堪える子供が、それを見て元気になってくれるような事をしてもらうのだと。
「さて。許可は私がとっておきます。あなたは……」
「………………」
「聞いていますか?」
「え、あ、はい! 大丈夫です! ハンターオフィスに出して来ればいいんですねっ!?」
先輩シスターの言葉に、考え事をするような表情を見せていた後輩が、我に返って叫ぶ。
「そうと決まれば早速行ってきます! 後はよろしくお願いしますっ!」
「あ、こら。だから走らな――行ってしまいましたか。全くせわしない」
ばたばたと音を立てて走り去っていく後輩の後姿を見ながら、先輩はそう言って苦笑を漏らす。
「……今日は見逃しますか。共に過ごす家族を失ったあの子達のためなら。ささいなことですしね」
●
「今日の依頼はこちらに――あら?」
オフィスを訪れたハンターに、受付嬢は依頼を案内しようとして、手元残されていた1枚の紙に気がつく。
「申し訳ございません。そちらの依頼に追加の点があったようです。あわせてご確認ください」
<依頼書>
・子供達への贈り物の用意及び、プレゼントをお願いいたします
・プレゼントの予算については、当方より支出致します。ただし、あまり多くは出せませんのでご注意ください。
・リアルブルーでサンタをご存じの方がいれば、その格好をしていただいても構いません。子供達も喜ぶかと。
・聖夜節では当教会において、パーティを行います。プレゼントはこの会場で渡していただいても良いですし、夜中にプレゼントをされても構いません。
<追加分>
・パーティの準備をされる方も募集しています! 一緒に子供達を喜ばせませんか!
リプレイ本文
●買い出し
「これでええんやな?」
「はい、よろしくお願いします。シスターもよろしいですね?」
渡されたメモ帳を確認するアカーシャ・ヘルメース(ka0473)に、三日月 壱(ka0244)は、無垢な笑顔を向ける。
「はい、三日月様にヘルメース様。よろしくお願いします。少々数が多いですが……」
声をかけられた先輩シスターは、問題は無いと言いつつ、不安そうな顔を浮かべる。
リストは子供達へのプレゼントに料理の食材などが加わり、シスター達が買おうとすると、確実に予算をオーバーする品揃えとなっていた。
「こんぐらいならなんとかなるわ。こう言う時こそ、ヘルメース商会の腕の見せどころや」
自信ありげに言う彼女に、シスターは念を押すように告げる。
「子供達の為ではありますが、くれぐれも予算内という事でお願い致します」
予算について話をした際、アカーシャは自らの報酬を予算に使うように要請していた。しかし。
「こーいうとこで身銭を切るんのも、商売繁盛に大事なんやけどなぁ」
「分からないではありません。ですが……」
少なくともこの教会において。子供達を導く場所がそれをしてはいけないとシスターは語る。
「了解や。行ってくるとしますわ」
頑固なシスターの言葉にそう返すと、アカーシャは教会を後にした。
●パーティの準備
教会の中ではパーティに向けた飾りつけの準備が始まろうとしていた。
飾りつけに使う小物作りを始めるのは、エステル・クレティエ(ka3783)と、ルナ・レンフィールド(ka1565)、陽菜=A=カヤマ(ka3533)の3人だ。
料理に使われる卵の殻に穴を開け、中身をボウルに出していく彼女達に、興味を持った子供達が顔を出す。
「お、たくさんあるじゃん! なにやろーとしてんの?」
「お子さまねー。しらないの?」
「なんだよ、お前知ってるのかよ」
言い合う子供達をなだめるようにエステルが声をかける。
「キャンドルを作るんですよ、ちょっと見てて下さい」
キャンドルと聞いて不思議そうな顔をする子供の前で、エステルは中身を抜き取った卵の中に、色粉を混ぜた蝋を注ぐ。
蝋が卵の穴の縁に近づいたところで、エステルは注ぐのを止めて、キャンドルの芯をさす。
「後は冷めたら完成です。香油を混ぜて見るのも良いかもしれませんね。皆さんもやってみますか?」
エステルの言葉に、ケイティが真っ先に手をあげる。
「きれい! 私もやってみたい!」
「それなら一緒にやりましょう。蝋は熱いから気をつけてね」
「おれもやるっ」
「それじゃあ、レイ君はこっちで私とやりましょうか」
負けじと声を上げたレイに、ルナが声をかけてキャンドル作りに誘う。
「あいつに負けないよーに、すっげーの作ろうぜ、ねーちゃん!」
あまり器用ではないが、レイのやる気に答えようと、ルナは微笑みで答える。
「それなら、ぼくは……」
「良ければ私の方を手伝ってもらえません?」
何をやろうかと考えるアルに、陽菜は声をかける。
「はい、よろこんで……おねえさんは何をされているんですか?」
陽菜の手元に広がる材料に、アルが疑問の顔を浮かべる。
「オーナメント、って言って分かる? クリスマスツリーの飾りを作ろうとしてるの」
陽菜はそういうと手本を見せるように、手元のモールを曲げて星やベルの形を作り出していく。
「そうやっていくんですねっ、やらせてください!」
ワイワイと楽しげに小道具を作る中、ファルはそっと教会の外へと足を踏み出していた。
ぼうっとした顔つきで向かう先は、いつも自分が小鳥と遊ぶお気に入りの場所。
どんな鳥がいるだろうと、楽しみにしていたファルは、行き先から聞き慣れない歌声が響いてくるのを耳にした。
それは、リアルブルーのクリスマスの讃美歌。
――人こぞりて迎えまつれ――
途中から聞こえる伸びやかなボーイソプラノが、薪を割る音にあわせるように響く。
ファルがそっと物陰から覗くと、広場では薪割り斧を振るう皐月=A=カヤマ(ka3534)が歌をうたっていた。
リアルブルーにいたときに聖歌隊に所属していたと言う彼の歌声に、ファルはほっと笑顔を浮かべると、その場に腰を下ろして耳を澄ませる。
――久しく待ちにし主は――
「――♪」
穏やかな笑顔を浮かべるファルの膝の上には、小鳥の姿があった。
●プレゼントの用意
他の荷物より先に、子供達へのプレゼントは教会へと届けられた。
沢城 葵(ka3114)はアカーシャより受け取った荷物を受け取ると、教会の一室へと運び込む。
「こちらが、子供達へのプレゼントですか?」
葵が運び込んだ荷物の中身を見て、後輩シスターが首をかしげる。
男の子に渡すだろう二つはそのままだが、残りの品は布と毛糸。そのまま渡すのは少々冒険と言える。
「あ、分かりました! 裁縫セットとか手芸セットとかってヤツですね!」
「あわてないでね、シスターさん」
早とちりをする後輩シスターに、葵はそう言いながら中の品々を手に取る。
「ここから私が仕立て上げようと思ってるのよ。喜んでくれるといいんだけど」
アカーシャが買ってきた品に満足行ったかのように頷くと、葵は布を近くのテーブルに広げ、ペンを握る。
リアルブルーで女性物の服飾関係の仕事を行っていたという彼の手先に迷いはない。思い描くプレゼントの形に合わせ、布に型となる線を引いていく。
素早く、それでいて誤らないように葵の手つきに、後輩シスターが、感嘆のため息を漏らす。
「凄いですねぇ……リアルブルーでは男の方でも皆さん出来るんですか?」
「あたしはお仕事で身に着けたのよ~。ふつうの人はどうかしらね?」
「でも、よっぽど好きなんですねっ」
後輩シスターは腕前が羨ましいと言って、腕まくりをする。
「それじゃあ、私もお手伝いしますっ。何かやった方がいい事ありますかっ?」
そして日々は進み。クリスマスの日を迎える。
●クリスマスパーティ
「それじゃあみんな、今日はよろしくお願いねっ」
パーティの会場に子供達を迎え入れると、ルナはそう言葉をかける。
丸いテーブルの上には、皆で作った卵型のキャンドル。
窓わきに飾られたツリーは、星やベル等の様々なオーナメントで飾り付けられ、その頂上には一際大きな星。
多めに作ったキャンドルやオーナメントが窓の辺りに並ぶその光景は、まさに子供達が待ち望んでいたクリスマスパーティと言えるだろう。
「「「おぉー!」」」
完成した姿を見たことが無かった子供達から、歓声が上がる。
「さぁ、みんな。ちゃんと席に着いてね、配膳は……」
「シスター達も座っていてくださいっ。料理を出すのも僕達がやりますから」
手伝おうとしたシスターに声をかけ、厨房から料理を持ってくるのは壱だ。その手には、葵が作り上げた料理。
リアルブルーでクリスマスに作られる料理。クリムゾンウェストでそれらが用意出来たのは、一重にアカーシャのおかげと言える。
彼女は、教会での準備作業に関わるかわりに、脚を棒にするように方々を探し回り、予算に収める形で全てを購入することに成功していた。
子供が進んで食べるように工夫を凝らした前菜、温かなポタージュスープ。そして主菜は鳥のロースト。葵なりの細やかな気配りが凝らされた料理の数々に、子供たちは夢中になる。
「なぁ、なぁアル! それ、お肉、食べるか?」
「食べますよ……ダメですよレイ君。ゆさぶってもあげません」
「なら、このやさいとこうかん!」
「なんでそうなるんですか。ぼくだって食べたいんですから、あげませんてば」
男の子2人がそんな事をしている横では女の子たちがおしゃべりをしている。
「オトコノコってば、食いしん坊でやーね」
「……ケイティも……ぜんぶ……食べてる…………」
「……だって、おいしかったんだもの……」
「わたしの……たべる……?」
「――、う、うぅん。いいわ。ファルが食べた方が作った人も嬉しいもの」
そんな中、皆の前に立つのは陽菜、ルナ、エステルの3人だ。
ルナは三味線、エステルは横笛を持ち、2人は目配せをすると、息をそろえて曲を演奏し始める。
響く曲は、クリムゾンウェストでは――少なくともピースホライズンの中では――聞いたことのない曲だ。
音の始まりに合わせて、中央で陽菜が舞いを踊りはじめる。
その思いが相手に届いてほしいと訴えるように、曲に込めるお祝いの気持ちが届くように。
続けて、それまで座っていた皐月が、3人の元に歩みより、口を開く。
――若むらさきに とかえりの――
それは、長唄と呼ばれる歌。藤の精の娘が踊る様を現す一幕。
声変わり前の皐月の歌声は伸びやかに部屋中に広がり、陽菜の舞に更なる奥行きをもたらす。
まだ年若いながらも、堂に入ったその様に、子供達は分からないながらも息をのむ。
――名残惜しみて 帰る雁金――
やがて、静かに舞終える陽菜に子供達が真っ先に拍手を送る。
「――すっげー! ねえちゃんたちとさつきにーちゃんすげー!」
「おふたりともすてきですわっ!」
カッコよかった、素晴らしかったと。声に出さないまでも、周りの子供達やシスター達も同意するように頷く。
拍手が鳴る中、壱が皆の元にブッシュ・ド・ノエルを運ぶ。
定番の薪の形のケーキは、手に入れられたフルーツなどが置かれ、見るだけでも食べるものの目を楽しませる。
皆がそれぞれの感想を言いながら口に運ぶ中、ルナとエステルの次の曲の演奏が始まる。
ルナがリュートに持ち変えて演奏をはじめるのは、クリスマスの定番の讃美歌だ。
今年のクリスマスでもあちこちで奏でられているその曲に、子供達が楽しそうな顔を見せる。
(……でも、本当は)
笑顔を浮かべる子供達の様子に、踊りの片付けをしていた陽菜は、事前に聞いた子供達の生い立ちを思い出す。
『あの子達は、実は……』
先輩シスターが語っていたのは、親を失ない、そしてそれに気がついていないと言う子供達の話。
来年は親と一緒と信じ、今年だけはと我慢をして。4人の子供達はクリスマスパーティを楽しんでいる。
(本当は、ご家族と……)
「そんな顔してんじゃねーよ、ヒナ」
びしっ、と、陽菜に皐月が軽くチョップを入れる。
「泣いて同情すんじゃなくて、楽しく笑って喜ばしてやれよ」
「わ、分かってますわ。ちょっとリアルブルーのことを思い出しただけなのですわっ」
頬を膨らませる陽菜に、皐月はそれでいいと笑みを浮かべる。
皐月に言葉を返して席に戻った陽菜が、近くに寄ってきたケイティに話しかけられるのを見ていた皐月は、そっと袖を引かれることに気がついた。
「ね……歌わないの……?」
小さな声の方を皐月が向くと、その顔を下から見上げるファルと目があった。
「お歌、もっと聞きたい。鳥さんも喜んでた……」
せがむような目に、皐月は笑みを浮かべてファルの頭を軽く撫でると、改めて口を開いて歌声を曲に乗せた。
デザートも食べ終わり、皆がおしゃべりに興じる中、奥で打ち合わせていた壱が子供達に声をかける。
「ジャジャーン! お待たせしました! 良い子にしていた皆さんに、僕達からのプレゼントがあります!」
「みな、良い子にしていたかの? ご褒美のプレゼントじゃよ」
サンタの衣装に身を包み、顔を出したのは葵だ。
わぁっ、と歓声を上げて集まる子供達に葵は1つずつプレゼントを渡す。
ケイティには、彼女が好きだと言っていた花の柄の赤い箱。
ファルには、小鳥柄の桃色の箱。
レイには、地図柄の青い箱。
アルには、異国の文字が書かれた緑色の箱。
エステルの発案のもと、それぞれの子にあわせてラッピングを行い、葵が準備した飾りを付けた箱が渡される。
箱の中に納められているのは、子供達がみんなで遊べるようにと、ハンター達が選んだおもちゃだ。
どれも簡単なカードゲームや、玉遊びに使うボールなどだが、遊び道具が無い子供達の喜びはひとしおだ。
「ね、いっしょに遊ぼう!」
「こーら、皆さん? その前に言うことがあるでしょう?」
ハンター達に遊びを持ちかけようとする子供達に、先輩シスターが手を叩きながら釘をさす。
「「「「みなさん、ありがとうございますっ!」」」」
歓声と、新しい玩具で遊ぶ声で、賑やかにパーティの時間は過ぎていった。
●そして……
(抜き足差し足忍び足……ってな)
遊びに疲れ、子供達が寝静まった部屋にこっそりと忍び込むアカーシャの姿があった。
その手には、可愛らしいリボンで包まれた箱が4つ。
彼女が仕入れ、葵が仕立てたプレゼントだ。
音を立てないように注意しながら、アカーシャは子供達の枕の脇に1つずつプレゼントを置く。
(メリークリスマス! 良い夢みるんやで♪)
全員のプレゼントを置き終えると、音にしないように口の中で、アカーシャは心からの祝いの言葉を告げる。
そっと部屋を離れて、教会のホールに戻った彼女はそこに灯りがついている事に気がつく。
「なんや? シスターはんら起きとるんかな?」
なら帰る前に挨拶と、灯りに近づいた彼女は、思ってもみなかったものを目にする。
それは、1人分が残されたクリスマスの料理。そして、
「こいつは……」
ハンター達全員に宛てた、メッセージカード。
【おにーさん、おねーさん。サンタさん、ありがとう!】
その字は決して上手くはない。だが、子供達の精一杯の思いをこもったメッセージが書かれていた。
「気に入っていただけましたか?」
「あー……言うたん?」
「いいえ。子供達には言っていませんよ」
振り向きながら問うアカーシャに、先輩シスターは首を横に振って答える。
「料理はエステルさんが頼まれたものですし……けれど、あの子達も分かっていたのかもしれません」
見たことはない。けれど、誰かいる。そんなことを子供特有の感覚で理解したのかもしれないと、シスターは笑みを浮かべた。
「――あの子達がこれほどはしゃいでいたのは、本当に久しぶりです」
そう言って、深く頭を下げたシスターの目尻には、僅かな光が見えた。
「またどこかで機会があれば、皆様、ハンター様達に、お願いさせていただきます。この度は……」
本当に、ありがとうございました。
聖夜節の夜は更けていく。
次の日になれば、子供達は枕元に置かれたプレゼントに喜びの声をあげるだろう。
ケイティは花の飾りがついた帽子を被り、
ファルは鳥の飾りのついたケープをまとい、
レイはベルトポーチを腰に巻き、
アルは新しいブックカバーをお気に入りの本につけ、
新たなお礼をハンターオフィスへ向けて書く。
新しい年を迎える教会は、賑やかな笑顔で溢れる。
子供達の顔からは、寂しさは無くなっていた。
――子供達とクリスマスにパーティを 了――
「これでええんやな?」
「はい、よろしくお願いします。シスターもよろしいですね?」
渡されたメモ帳を確認するアカーシャ・ヘルメース(ka0473)に、三日月 壱(ka0244)は、無垢な笑顔を向ける。
「はい、三日月様にヘルメース様。よろしくお願いします。少々数が多いですが……」
声をかけられた先輩シスターは、問題は無いと言いつつ、不安そうな顔を浮かべる。
リストは子供達へのプレゼントに料理の食材などが加わり、シスター達が買おうとすると、確実に予算をオーバーする品揃えとなっていた。
「こんぐらいならなんとかなるわ。こう言う時こそ、ヘルメース商会の腕の見せどころや」
自信ありげに言う彼女に、シスターは念を押すように告げる。
「子供達の為ではありますが、くれぐれも予算内という事でお願い致します」
予算について話をした際、アカーシャは自らの報酬を予算に使うように要請していた。しかし。
「こーいうとこで身銭を切るんのも、商売繁盛に大事なんやけどなぁ」
「分からないではありません。ですが……」
少なくともこの教会において。子供達を導く場所がそれをしてはいけないとシスターは語る。
「了解や。行ってくるとしますわ」
頑固なシスターの言葉にそう返すと、アカーシャは教会を後にした。
●パーティの準備
教会の中ではパーティに向けた飾りつけの準備が始まろうとしていた。
飾りつけに使う小物作りを始めるのは、エステル・クレティエ(ka3783)と、ルナ・レンフィールド(ka1565)、陽菜=A=カヤマ(ka3533)の3人だ。
料理に使われる卵の殻に穴を開け、中身をボウルに出していく彼女達に、興味を持った子供達が顔を出す。
「お、たくさんあるじゃん! なにやろーとしてんの?」
「お子さまねー。しらないの?」
「なんだよ、お前知ってるのかよ」
言い合う子供達をなだめるようにエステルが声をかける。
「キャンドルを作るんですよ、ちょっと見てて下さい」
キャンドルと聞いて不思議そうな顔をする子供の前で、エステルは中身を抜き取った卵の中に、色粉を混ぜた蝋を注ぐ。
蝋が卵の穴の縁に近づいたところで、エステルは注ぐのを止めて、キャンドルの芯をさす。
「後は冷めたら完成です。香油を混ぜて見るのも良いかもしれませんね。皆さんもやってみますか?」
エステルの言葉に、ケイティが真っ先に手をあげる。
「きれい! 私もやってみたい!」
「それなら一緒にやりましょう。蝋は熱いから気をつけてね」
「おれもやるっ」
「それじゃあ、レイ君はこっちで私とやりましょうか」
負けじと声を上げたレイに、ルナが声をかけてキャンドル作りに誘う。
「あいつに負けないよーに、すっげーの作ろうぜ、ねーちゃん!」
あまり器用ではないが、レイのやる気に答えようと、ルナは微笑みで答える。
「それなら、ぼくは……」
「良ければ私の方を手伝ってもらえません?」
何をやろうかと考えるアルに、陽菜は声をかける。
「はい、よろこんで……おねえさんは何をされているんですか?」
陽菜の手元に広がる材料に、アルが疑問の顔を浮かべる。
「オーナメント、って言って分かる? クリスマスツリーの飾りを作ろうとしてるの」
陽菜はそういうと手本を見せるように、手元のモールを曲げて星やベルの形を作り出していく。
「そうやっていくんですねっ、やらせてください!」
ワイワイと楽しげに小道具を作る中、ファルはそっと教会の外へと足を踏み出していた。
ぼうっとした顔つきで向かう先は、いつも自分が小鳥と遊ぶお気に入りの場所。
どんな鳥がいるだろうと、楽しみにしていたファルは、行き先から聞き慣れない歌声が響いてくるのを耳にした。
それは、リアルブルーのクリスマスの讃美歌。
――人こぞりて迎えまつれ――
途中から聞こえる伸びやかなボーイソプラノが、薪を割る音にあわせるように響く。
ファルがそっと物陰から覗くと、広場では薪割り斧を振るう皐月=A=カヤマ(ka3534)が歌をうたっていた。
リアルブルーにいたときに聖歌隊に所属していたと言う彼の歌声に、ファルはほっと笑顔を浮かべると、その場に腰を下ろして耳を澄ませる。
――久しく待ちにし主は――
「――♪」
穏やかな笑顔を浮かべるファルの膝の上には、小鳥の姿があった。
●プレゼントの用意
他の荷物より先に、子供達へのプレゼントは教会へと届けられた。
沢城 葵(ka3114)はアカーシャより受け取った荷物を受け取ると、教会の一室へと運び込む。
「こちらが、子供達へのプレゼントですか?」
葵が運び込んだ荷物の中身を見て、後輩シスターが首をかしげる。
男の子に渡すだろう二つはそのままだが、残りの品は布と毛糸。そのまま渡すのは少々冒険と言える。
「あ、分かりました! 裁縫セットとか手芸セットとかってヤツですね!」
「あわてないでね、シスターさん」
早とちりをする後輩シスターに、葵はそう言いながら中の品々を手に取る。
「ここから私が仕立て上げようと思ってるのよ。喜んでくれるといいんだけど」
アカーシャが買ってきた品に満足行ったかのように頷くと、葵は布を近くのテーブルに広げ、ペンを握る。
リアルブルーで女性物の服飾関係の仕事を行っていたという彼の手先に迷いはない。思い描くプレゼントの形に合わせ、布に型となる線を引いていく。
素早く、それでいて誤らないように葵の手つきに、後輩シスターが、感嘆のため息を漏らす。
「凄いですねぇ……リアルブルーでは男の方でも皆さん出来るんですか?」
「あたしはお仕事で身に着けたのよ~。ふつうの人はどうかしらね?」
「でも、よっぽど好きなんですねっ」
後輩シスターは腕前が羨ましいと言って、腕まくりをする。
「それじゃあ、私もお手伝いしますっ。何かやった方がいい事ありますかっ?」
そして日々は進み。クリスマスの日を迎える。
●クリスマスパーティ
「それじゃあみんな、今日はよろしくお願いねっ」
パーティの会場に子供達を迎え入れると、ルナはそう言葉をかける。
丸いテーブルの上には、皆で作った卵型のキャンドル。
窓わきに飾られたツリーは、星やベル等の様々なオーナメントで飾り付けられ、その頂上には一際大きな星。
多めに作ったキャンドルやオーナメントが窓の辺りに並ぶその光景は、まさに子供達が待ち望んでいたクリスマスパーティと言えるだろう。
「「「おぉー!」」」
完成した姿を見たことが無かった子供達から、歓声が上がる。
「さぁ、みんな。ちゃんと席に着いてね、配膳は……」
「シスター達も座っていてくださいっ。料理を出すのも僕達がやりますから」
手伝おうとしたシスターに声をかけ、厨房から料理を持ってくるのは壱だ。その手には、葵が作り上げた料理。
リアルブルーでクリスマスに作られる料理。クリムゾンウェストでそれらが用意出来たのは、一重にアカーシャのおかげと言える。
彼女は、教会での準備作業に関わるかわりに、脚を棒にするように方々を探し回り、予算に収める形で全てを購入することに成功していた。
子供が進んで食べるように工夫を凝らした前菜、温かなポタージュスープ。そして主菜は鳥のロースト。葵なりの細やかな気配りが凝らされた料理の数々に、子供たちは夢中になる。
「なぁ、なぁアル! それ、お肉、食べるか?」
「食べますよ……ダメですよレイ君。ゆさぶってもあげません」
「なら、このやさいとこうかん!」
「なんでそうなるんですか。ぼくだって食べたいんですから、あげませんてば」
男の子2人がそんな事をしている横では女の子たちがおしゃべりをしている。
「オトコノコってば、食いしん坊でやーね」
「……ケイティも……ぜんぶ……食べてる…………」
「……だって、おいしかったんだもの……」
「わたしの……たべる……?」
「――、う、うぅん。いいわ。ファルが食べた方が作った人も嬉しいもの」
そんな中、皆の前に立つのは陽菜、ルナ、エステルの3人だ。
ルナは三味線、エステルは横笛を持ち、2人は目配せをすると、息をそろえて曲を演奏し始める。
響く曲は、クリムゾンウェストでは――少なくともピースホライズンの中では――聞いたことのない曲だ。
音の始まりに合わせて、中央で陽菜が舞いを踊りはじめる。
その思いが相手に届いてほしいと訴えるように、曲に込めるお祝いの気持ちが届くように。
続けて、それまで座っていた皐月が、3人の元に歩みより、口を開く。
――若むらさきに とかえりの――
それは、長唄と呼ばれる歌。藤の精の娘が踊る様を現す一幕。
声変わり前の皐月の歌声は伸びやかに部屋中に広がり、陽菜の舞に更なる奥行きをもたらす。
まだ年若いながらも、堂に入ったその様に、子供達は分からないながらも息をのむ。
――名残惜しみて 帰る雁金――
やがて、静かに舞終える陽菜に子供達が真っ先に拍手を送る。
「――すっげー! ねえちゃんたちとさつきにーちゃんすげー!」
「おふたりともすてきですわっ!」
カッコよかった、素晴らしかったと。声に出さないまでも、周りの子供達やシスター達も同意するように頷く。
拍手が鳴る中、壱が皆の元にブッシュ・ド・ノエルを運ぶ。
定番の薪の形のケーキは、手に入れられたフルーツなどが置かれ、見るだけでも食べるものの目を楽しませる。
皆がそれぞれの感想を言いながら口に運ぶ中、ルナとエステルの次の曲の演奏が始まる。
ルナがリュートに持ち変えて演奏をはじめるのは、クリスマスの定番の讃美歌だ。
今年のクリスマスでもあちこちで奏でられているその曲に、子供達が楽しそうな顔を見せる。
(……でも、本当は)
笑顔を浮かべる子供達の様子に、踊りの片付けをしていた陽菜は、事前に聞いた子供達の生い立ちを思い出す。
『あの子達は、実は……』
先輩シスターが語っていたのは、親を失ない、そしてそれに気がついていないと言う子供達の話。
来年は親と一緒と信じ、今年だけはと我慢をして。4人の子供達はクリスマスパーティを楽しんでいる。
(本当は、ご家族と……)
「そんな顔してんじゃねーよ、ヒナ」
びしっ、と、陽菜に皐月が軽くチョップを入れる。
「泣いて同情すんじゃなくて、楽しく笑って喜ばしてやれよ」
「わ、分かってますわ。ちょっとリアルブルーのことを思い出しただけなのですわっ」
頬を膨らませる陽菜に、皐月はそれでいいと笑みを浮かべる。
皐月に言葉を返して席に戻った陽菜が、近くに寄ってきたケイティに話しかけられるのを見ていた皐月は、そっと袖を引かれることに気がついた。
「ね……歌わないの……?」
小さな声の方を皐月が向くと、その顔を下から見上げるファルと目があった。
「お歌、もっと聞きたい。鳥さんも喜んでた……」
せがむような目に、皐月は笑みを浮かべてファルの頭を軽く撫でると、改めて口を開いて歌声を曲に乗せた。
デザートも食べ終わり、皆がおしゃべりに興じる中、奥で打ち合わせていた壱が子供達に声をかける。
「ジャジャーン! お待たせしました! 良い子にしていた皆さんに、僕達からのプレゼントがあります!」
「みな、良い子にしていたかの? ご褒美のプレゼントじゃよ」
サンタの衣装に身を包み、顔を出したのは葵だ。
わぁっ、と歓声を上げて集まる子供達に葵は1つずつプレゼントを渡す。
ケイティには、彼女が好きだと言っていた花の柄の赤い箱。
ファルには、小鳥柄の桃色の箱。
レイには、地図柄の青い箱。
アルには、異国の文字が書かれた緑色の箱。
エステルの発案のもと、それぞれの子にあわせてラッピングを行い、葵が準備した飾りを付けた箱が渡される。
箱の中に納められているのは、子供達がみんなで遊べるようにと、ハンター達が選んだおもちゃだ。
どれも簡単なカードゲームや、玉遊びに使うボールなどだが、遊び道具が無い子供達の喜びはひとしおだ。
「ね、いっしょに遊ぼう!」
「こーら、皆さん? その前に言うことがあるでしょう?」
ハンター達に遊びを持ちかけようとする子供達に、先輩シスターが手を叩きながら釘をさす。
「「「「みなさん、ありがとうございますっ!」」」」
歓声と、新しい玩具で遊ぶ声で、賑やかにパーティの時間は過ぎていった。
●そして……
(抜き足差し足忍び足……ってな)
遊びに疲れ、子供達が寝静まった部屋にこっそりと忍び込むアカーシャの姿があった。
その手には、可愛らしいリボンで包まれた箱が4つ。
彼女が仕入れ、葵が仕立てたプレゼントだ。
音を立てないように注意しながら、アカーシャは子供達の枕の脇に1つずつプレゼントを置く。
(メリークリスマス! 良い夢みるんやで♪)
全員のプレゼントを置き終えると、音にしないように口の中で、アカーシャは心からの祝いの言葉を告げる。
そっと部屋を離れて、教会のホールに戻った彼女はそこに灯りがついている事に気がつく。
「なんや? シスターはんら起きとるんかな?」
なら帰る前に挨拶と、灯りに近づいた彼女は、思ってもみなかったものを目にする。
それは、1人分が残されたクリスマスの料理。そして、
「こいつは……」
ハンター達全員に宛てた、メッセージカード。
【おにーさん、おねーさん。サンタさん、ありがとう!】
その字は決して上手くはない。だが、子供達の精一杯の思いをこもったメッセージが書かれていた。
「気に入っていただけましたか?」
「あー……言うたん?」
「いいえ。子供達には言っていませんよ」
振り向きながら問うアカーシャに、先輩シスターは首を横に振って答える。
「料理はエステルさんが頼まれたものですし……けれど、あの子達も分かっていたのかもしれません」
見たことはない。けれど、誰かいる。そんなことを子供特有の感覚で理解したのかもしれないと、シスターは笑みを浮かべた。
「――あの子達がこれほどはしゃいでいたのは、本当に久しぶりです」
そう言って、深く頭を下げたシスターの目尻には、僅かな光が見えた。
「またどこかで機会があれば、皆様、ハンター様達に、お願いさせていただきます。この度は……」
本当に、ありがとうございました。
聖夜節の夜は更けていく。
次の日になれば、子供達は枕元に置かれたプレゼントに喜びの声をあげるだろう。
ケイティは花の飾りがついた帽子を被り、
ファルは鳥の飾りのついたケープをまとい、
レイはベルトポーチを腰に巻き、
アルは新しいブックカバーをお気に入りの本につけ、
新たなお礼をハンターオフィスへ向けて書く。
新しい年を迎える教会は、賑やかな笑顔で溢れる。
子供達の顔からは、寂しさは無くなっていた。
――子供達とクリスマスにパーティを 了――
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パーティ準備打ち合わせ! ルナ・レンフィールド(ka1565) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/12/29 01:59:51 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/25 01:43:20 |