ゲスト
(ka0000)
行商人の荷物になく
マスター:竜桐水仙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/08/10 19:00
- 完成日
- 2018/08/16 19:38
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●行商人の荷物に泣く(者)
ガラガラガラ
森の中を、馬車が走っている。
幌付きのそれなりに上等な代物で、木の根が飛び出す悪路をものともしない。
御者台には一人の男。
鼻歌を歌いながら、暢気に首を振っている。
馬に任せて走っている男が、何ともなしに上を見上げた。
黒い影が、青い空を背景に、上空を旋回している。
カァ、カァ
鳥が鳴き始めた。
ふと、男は妙であることに気付く。
鳴き声はカラスだが、カラスにしては飛んでいる高度が高すぎる。
そう考えると身体の大きさもおかしい。木のてっぺんよりも高い所を飛んでいるなら、もっと小さく見えるはず……
冷たい汗が、背中を伝った。
手綱を締め、馬に速度を上げさせる。
「急げ! さっさと逃げないと……」
しかし、もう遅すぎた。
カラスの高度がだんだん下がってくる。
身体の大きさが際立つ。
羽を広げれば、二メートルは軽く越すだろう。
そんな鳥が、二頭、三頭と数を増やしていく。
「うわぁぁぁぁあああああ!!」
鳥が五頭を超えたところで、男はとうとう馬車を捨てることにした。
走る車から、全財産の入った袋だけを持ち、飛び降りる。
着地に失敗し、盛大に転んだ。
袋の口が開き、中から硬貨が転がり出す。
慌てて袋を掴もうとするが、振り返ればそこには大口を開けた大鴉。
取るものも取りあえず、命からがら森に駆け込んだ。
大鴉は身体の大きさが禍し、追いかけてこられない。
無我夢中で、男は町に走った。
●行商人の荷物に(カネは)無く
「やぁ、こんにちは。ボクの友人がちょっと困ったことになっていてね。依頼がしたいんだけど、話を聞いてくれるかな?」
行商人のアラミスは、ハンタースオフィスのカウンターに手をついた。
後ろでくくったブロンド髪が、ニコッと笑んだ動きでさらりと揺れる。
受付に座るクールビューティーは、にこりともせずに口を開いた。
アラミスの後ろには、所在なさげに辺りを見回す男がいる。
「どのようなご用件でしょうか」
素っ気ない受付嬢の態度に、ため息をつくアラミス。
「つれないなぁ……。まぁいい、本題に入ろう」
背筋を伸ばし、表情を引き締める。
「ボクの行商仲間、まぁ後ろにいる彼のことなんだが、彼が移動中に雑魔に襲われたらしくてね」
「それは災難でした」
「ありがとう。それで彼、荷物を馬車ごと置いて、身一つで逃げてきたらしいんだ」
「依頼内容は、馬車と荷物の奪還と言うことでよろしいですか?」
「せっかちは嫌われるよ~? 最後まで話を聞いてくれ」
苦笑いを浮かべながら、受付嬢をいさめるアラミス。
「彼、逃げるときに全財産の入った袋を落としてきてしまったらしくてね。今手持ちがギリギリみたいなんだ。全財産の入った袋を見つけてくれたら、追加報酬を出す」
「つまり……?」
「第一に荷物と馬車の奪還、それから第二に財産を収めた袋を捜索してきて欲しい。近くにあるとは思うんだけどね」
「かしこまりました。依頼を発注いたします」
「頼むよ! 最悪この町で品物を納品すればカネができる。荷物だけでも取り返してきてくれ!!」
「雑魔が全て倒されてるとパーフェクトだね。まぁそこまでやると超過労働もいいところだけど」
こうして、行商人による荷車奪還の依頼が発注された。
ガラガラガラ
森の中を、馬車が走っている。
幌付きのそれなりに上等な代物で、木の根が飛び出す悪路をものともしない。
御者台には一人の男。
鼻歌を歌いながら、暢気に首を振っている。
馬に任せて走っている男が、何ともなしに上を見上げた。
黒い影が、青い空を背景に、上空を旋回している。
カァ、カァ
鳥が鳴き始めた。
ふと、男は妙であることに気付く。
鳴き声はカラスだが、カラスにしては飛んでいる高度が高すぎる。
そう考えると身体の大きさもおかしい。木のてっぺんよりも高い所を飛んでいるなら、もっと小さく見えるはず……
冷たい汗が、背中を伝った。
手綱を締め、馬に速度を上げさせる。
「急げ! さっさと逃げないと……」
しかし、もう遅すぎた。
カラスの高度がだんだん下がってくる。
身体の大きさが際立つ。
羽を広げれば、二メートルは軽く越すだろう。
そんな鳥が、二頭、三頭と数を増やしていく。
「うわぁぁぁぁあああああ!!」
鳥が五頭を超えたところで、男はとうとう馬車を捨てることにした。
走る車から、全財産の入った袋だけを持ち、飛び降りる。
着地に失敗し、盛大に転んだ。
袋の口が開き、中から硬貨が転がり出す。
慌てて袋を掴もうとするが、振り返ればそこには大口を開けた大鴉。
取るものも取りあえず、命からがら森に駆け込んだ。
大鴉は身体の大きさが禍し、追いかけてこられない。
無我夢中で、男は町に走った。
●行商人の荷物に(カネは)無く
「やぁ、こんにちは。ボクの友人がちょっと困ったことになっていてね。依頼がしたいんだけど、話を聞いてくれるかな?」
行商人のアラミスは、ハンタースオフィスのカウンターに手をついた。
後ろでくくったブロンド髪が、ニコッと笑んだ動きでさらりと揺れる。
受付に座るクールビューティーは、にこりともせずに口を開いた。
アラミスの後ろには、所在なさげに辺りを見回す男がいる。
「どのようなご用件でしょうか」
素っ気ない受付嬢の態度に、ため息をつくアラミス。
「つれないなぁ……。まぁいい、本題に入ろう」
背筋を伸ばし、表情を引き締める。
「ボクの行商仲間、まぁ後ろにいる彼のことなんだが、彼が移動中に雑魔に襲われたらしくてね」
「それは災難でした」
「ありがとう。それで彼、荷物を馬車ごと置いて、身一つで逃げてきたらしいんだ」
「依頼内容は、馬車と荷物の奪還と言うことでよろしいですか?」
「せっかちは嫌われるよ~? 最後まで話を聞いてくれ」
苦笑いを浮かべながら、受付嬢をいさめるアラミス。
「彼、逃げるときに全財産の入った袋を落としてきてしまったらしくてね。今手持ちがギリギリみたいなんだ。全財産の入った袋を見つけてくれたら、追加報酬を出す」
「つまり……?」
「第一に荷物と馬車の奪還、それから第二に財産を収めた袋を捜索してきて欲しい。近くにあるとは思うんだけどね」
「かしこまりました。依頼を発注いたします」
「頼むよ! 最悪この町で品物を納品すればカネができる。荷物だけでも取り返してきてくれ!!」
「雑魔が全て倒されてるとパーフェクトだね。まぁそこまでやると超過労働もいいところだけど」
こうして、行商人による荷車奪還の依頼が発注された。
リプレイ本文
●大鴉との遭遇
鬱蒼とした森の中。
ハンターたちは、目的のポイントに向けて移動している。
と、飛び出ている木の根につんのめる、狐中・小鳥(ka5484)。
優しい笑顔の鳳凰院ひりょ(ka3744)が彼女を抱き止め、そっと助け起こした。
「大丈夫か?」
「あはは、ごめんなんだよ……」
羞恥心に顔を赤くしながら、目元を覆う小鳥。
微笑ましい空気になっている中、札抜 シロ(ka6328)が足を止めた。
これから起こることを理解し、全員が立ち止まる。
「それではこれから、占いを始めるの」
取り澄ました顔のシロが手首を返すと、湧き出るようにして掌にトランプが乗る。
パラパラとカードをもてあそびながら、不敵な笑みをこぼす。
「イッツ・ショータイムなの!」
パァン、とクラッカーの音とともに紙吹雪が舞い、カードが湧き水のように吹き上がる。
ひらひらと舞うあまたのカードの中、シロは目の前を舞う一枚をつかみ取る。
スペードのクイーン。
顎に手を当て、悩みながら言葉を紡ぐ。
「商人さんの袋は、敵の手元にあるみたいなの。そしてその巣はそれなりに遠い。でもまだ手に入る見込みはある」
顔を上げたシロに目を合わせ、夢路 まよい(ka1328)は微笑んだ。
「それでは打ち合わせ通りに、荷車のところまで移動して、そこから鴉の巣を探るってことでいいよね?」
全員がそれにうなずき、今までと同じ、行商人が打ち捨てていった荷車に向けて、移動を続けた。
「あ、あれじゃないかな?」
小鳥が見つけた荷車には、不吉な黒い影が周りを舞っている。
シロがトランプ二枚をはじいたのち、パチンと指を打ち鳴らす。
「禹歩、成功なの。先手が決められる」
「さすがだシロ」
ひりょが弓を構え、引き絞る。
「みんな、第一段階、いくよ」
ひょう、と羽根がうなった。
屋根にとまった鴉のそばを、弓が走りぬける。
途端に鴉が騒ぎ始めた。
いつの間にかまよいが姿を隠していることにうなずきながら、ひりょはそのままカラスに詰め寄っていく。
小鳥もひりょに並んで、鴉の群れへ突っ込んでいった。
襲い掛かる鴉を盾や剣で打ち払い、適当なところで逃げ出す。
振り向きざま、ひりょがブレスレットを投げつけた。
鴉たちはそちらに食いつき、二人を追いかけるのを中断してブレスレットを取り合っている。
そのまま鴉たちの視界に入らない所まで引き下がり、様子をうかがう。
小鳥のトランシーバーが、ザザッと音を発した。
『こちらはまよい。鴉たちがどこかに向かい始めるから、後を追うよ。しばらく音沙汰がないだろうけど、荷車で用心していてね』
「こちら小鳥です。了解したよ!」
二人は顔を見合わせ、ガッツボーズ。
荷車に向かったところ、シロが先に着いており、台車のところで足をぶらぶらさせていた。二人を見つけるなり、ゆらゆらと手を振ってくる。
シロは森の向こうを眺め渡しながら、憂いとともにつぶやく。
「第一段階は成功なの。ここからはまよいにかかってる。上手くいくといいの……」
●金貨と鴉と戦闘と
その頃まよいは、自分の杖にまたがり、カラスたちを追いかけていた。
最初は走っていたのだが、低木が邪魔で見失いそうになったため、枝の下を飛びながら追いかけている次第である。
ブレスレットを奪い合いながらも、まっすぐ一方向に飛んでいく鴉たち。
行く先にだいたいのあたりをつけて、先回りを試みる。
やはり行く先にて、木の股に不自然な枝の塊を見つけた。
のぞき込むと、枝に混じって金貨や鎧の一部、小石といった、脈絡もないあれやこれやが、日の光にキラキラと輝いている。
「ここね」
鴉の鳴き声を耳にとらえながら、巣からそっと離れる。
「まずはみんなに合流しないと」
青々とした緑の下をくぐって、荷車へ急いだ。
木々の間を縫って全速力で飛んでいくと、荷車に腰掛ける形で、三人が話しているのが見える。
三人の目の前で杖から降り、ふわりと着地する。
小鳥が駆け寄り、声をかける。
「おかえり。どうだった?」
「鴉の巣をみつけたわ。金貨とか鎧とか、たくさんあったね」
「よし、取り返しに行こう。わたしはそのために来たんだよ!」
ほかの面々も、その言葉にしっかりとうなずいた。
シロが手を上げ、口を開く。
「あの、あたしはここに残って荷車を守るの。三人で鴉を討伐して、いろんな品物を持ってくるといいの」
ひらひらと手を振る。
そんなシロに、ひりょが声をかけた。
「すぐに戻ってくるよ。この馬車を頼む」
無言で手を振り続ける。
「とりあえず移動しながら打ち合わせを続けようか」
まよいの言葉を受け、三人は移動を始めることにした。
「この中で一番素早いのは小鳥だよね。最初の一撃で一羽は落とせるといいけど……」
「それで足りなくても俺がその次で終わらせるさ」
「まよいさんとても頼りになるから、前衛はのびのびと戦えるよ!」
「となると俺は、まよいのカバーに回るのがよさそうか」
「だいたい作戦は固まったかな?」
そう言ってまよいは、前を見る。
そこにあるのは、巨木に据えられた巣を中心とした、鴉の隊列。
三人とも、きっとそれらをにらみつける。
中心に立ったひりょが、つぶやいた。
「さぁ、ここからが本番だ。さっきまでと一緒だと思うなよ?」
きりりと弓を引き絞った。
その横から前に躍り出た小鳥が、魔剣バルムンクを振りかぶり、攻撃のモーションに入る。
「お先♪」
先制で放たれた次元斬が、鴉たちの中心に出現する。
突如現けた斬撃は、鴉を打ち落とすことこそかなわなかったものの、隊列をかき乱すことには成功する。
ひょう!
続くひりょの矢は、避けようとした鴉に容赦なく突き立った。
ソウルエッジで強化された矢は、一発で鴉を地へ落とし、塵と変える。
続けてまよいが、五連続のマジックアローを放った。
二匹が打ち落とされ、残りは旋回してすかさず攻撃してくる。
しかし混乱がまだ収まらないのか、小鳥に向けた突撃は見当違いの方向に向かってしまっており、まよいに向けた攻撃も、どこか勢いの乗り切らないものになっている。
すかさずひりょがまよいとの間に割り込み、盾で攻撃を受ける。
カウンターの準備を進めていたまよいは、残った三匹めがけてマジックアローを放った。
これにより一匹が落ちる。
それに続くのは、小鳥の紅蓮斬。
赤い筋を空中に残しながら、剣撃が鴉に襲い掛かる。
黒い羽根を散らす鴉から目を離せば、残るは一匹。
ひりょが名刀「虹」を構えた。
飛び込む鴉。
待ち受けるひりょ。
一瞬の交差。
鴉の羽根が舞った。
●帰還
「あった~! きっとこれだよ!」
戦闘が終わった直後、すぐさま木に登った小鳥が、金貨の入った麻袋を掲げながら下を見下ろす。
「たぶんそうー!」
大きな声を上げて、まよいは小鳥の推測を肯定した。小鳥はその袋を大事そうに抱え、ぴょんぴょんと木の幹を飛び降りてくる。
「はい、これ持ってて!」
いうや否や、踵を返し、木の幹を再び登っていく。
少しでも多くの人に、なくなったものを戻してあげたい一心で、彼女は巣の中のものを運び出していった。
「依頼以外のものも、荷車を借りて持ち帰ってあげよう。きっと喜ぶ人がいるはずだ」
そう言うひりょは、男性にしては小さな体で、抱えられるだけ目いっぱいの品物を抱えて、バランスを取りながらゆっくりと歩いていく。
小鳥も巣からたくさんの物品を下ろし、全力でそれらを運んでいく。
品物すべては荷車に乗り切らず、後日ハンターズソサエティから回収用の荷車が来ることになった。
「うわぁ……!」
その歓声は、死にそうな顔をしていた行商人のもの。
彼は荷車を見上げ、金貨袋を大切そうに胸に抱えながら、感激のあまり地面にへたり込んでいる。
「あなたの荷車だよ! 金貨も見つかってよかった~」
小鳥が行商人の隣にしゃがみ込み、にっこりと笑いかける。
「荷車を借りちゃったけど、許してくれると嬉しいな。ほかにも困ってる人がたくさんいたと思うんだよ」
無言で、しかし必死に首を縦に振る行商人。
その様に、依頼の費用を半分負担したアラミスは、苦笑いを浮かべる。
やっと涙を収めた行商人が、しゃくりあげつつ言葉を紡いでいく。
「追加報酬を、出すって約束したんだ。こんだけベストな結果を出してくれれば文句もない。ほら、みんな受け取って。ほら、ほら!」
それぞれの手に、金貨を握らせる行商人。
「ほんっとうにありがとう。これでまだ商売を続けられる。品物も無事に納められそうだし、まだまだ旅を続けられる。ほんっとうにありがとう……」
行商人はまた泣き始めた。
小鳥をはじめ、全員がそんな彼を見つめている。
彼はその後、何があっても、死ぬまで行商を続け切ったという。
鬱蒼とした森の中。
ハンターたちは、目的のポイントに向けて移動している。
と、飛び出ている木の根につんのめる、狐中・小鳥(ka5484)。
優しい笑顔の鳳凰院ひりょ(ka3744)が彼女を抱き止め、そっと助け起こした。
「大丈夫か?」
「あはは、ごめんなんだよ……」
羞恥心に顔を赤くしながら、目元を覆う小鳥。
微笑ましい空気になっている中、札抜 シロ(ka6328)が足を止めた。
これから起こることを理解し、全員が立ち止まる。
「それではこれから、占いを始めるの」
取り澄ました顔のシロが手首を返すと、湧き出るようにして掌にトランプが乗る。
パラパラとカードをもてあそびながら、不敵な笑みをこぼす。
「イッツ・ショータイムなの!」
パァン、とクラッカーの音とともに紙吹雪が舞い、カードが湧き水のように吹き上がる。
ひらひらと舞うあまたのカードの中、シロは目の前を舞う一枚をつかみ取る。
スペードのクイーン。
顎に手を当て、悩みながら言葉を紡ぐ。
「商人さんの袋は、敵の手元にあるみたいなの。そしてその巣はそれなりに遠い。でもまだ手に入る見込みはある」
顔を上げたシロに目を合わせ、夢路 まよい(ka1328)は微笑んだ。
「それでは打ち合わせ通りに、荷車のところまで移動して、そこから鴉の巣を探るってことでいいよね?」
全員がそれにうなずき、今までと同じ、行商人が打ち捨てていった荷車に向けて、移動を続けた。
「あ、あれじゃないかな?」
小鳥が見つけた荷車には、不吉な黒い影が周りを舞っている。
シロがトランプ二枚をはじいたのち、パチンと指を打ち鳴らす。
「禹歩、成功なの。先手が決められる」
「さすがだシロ」
ひりょが弓を構え、引き絞る。
「みんな、第一段階、いくよ」
ひょう、と羽根がうなった。
屋根にとまった鴉のそばを、弓が走りぬける。
途端に鴉が騒ぎ始めた。
いつの間にかまよいが姿を隠していることにうなずきながら、ひりょはそのままカラスに詰め寄っていく。
小鳥もひりょに並んで、鴉の群れへ突っ込んでいった。
襲い掛かる鴉を盾や剣で打ち払い、適当なところで逃げ出す。
振り向きざま、ひりょがブレスレットを投げつけた。
鴉たちはそちらに食いつき、二人を追いかけるのを中断してブレスレットを取り合っている。
そのまま鴉たちの視界に入らない所まで引き下がり、様子をうかがう。
小鳥のトランシーバーが、ザザッと音を発した。
『こちらはまよい。鴉たちがどこかに向かい始めるから、後を追うよ。しばらく音沙汰がないだろうけど、荷車で用心していてね』
「こちら小鳥です。了解したよ!」
二人は顔を見合わせ、ガッツボーズ。
荷車に向かったところ、シロが先に着いており、台車のところで足をぶらぶらさせていた。二人を見つけるなり、ゆらゆらと手を振ってくる。
シロは森の向こうを眺め渡しながら、憂いとともにつぶやく。
「第一段階は成功なの。ここからはまよいにかかってる。上手くいくといいの……」
●金貨と鴉と戦闘と
その頃まよいは、自分の杖にまたがり、カラスたちを追いかけていた。
最初は走っていたのだが、低木が邪魔で見失いそうになったため、枝の下を飛びながら追いかけている次第である。
ブレスレットを奪い合いながらも、まっすぐ一方向に飛んでいく鴉たち。
行く先にだいたいのあたりをつけて、先回りを試みる。
やはり行く先にて、木の股に不自然な枝の塊を見つけた。
のぞき込むと、枝に混じって金貨や鎧の一部、小石といった、脈絡もないあれやこれやが、日の光にキラキラと輝いている。
「ここね」
鴉の鳴き声を耳にとらえながら、巣からそっと離れる。
「まずはみんなに合流しないと」
青々とした緑の下をくぐって、荷車へ急いだ。
木々の間を縫って全速力で飛んでいくと、荷車に腰掛ける形で、三人が話しているのが見える。
三人の目の前で杖から降り、ふわりと着地する。
小鳥が駆け寄り、声をかける。
「おかえり。どうだった?」
「鴉の巣をみつけたわ。金貨とか鎧とか、たくさんあったね」
「よし、取り返しに行こう。わたしはそのために来たんだよ!」
ほかの面々も、その言葉にしっかりとうなずいた。
シロが手を上げ、口を開く。
「あの、あたしはここに残って荷車を守るの。三人で鴉を討伐して、いろんな品物を持ってくるといいの」
ひらひらと手を振る。
そんなシロに、ひりょが声をかけた。
「すぐに戻ってくるよ。この馬車を頼む」
無言で手を振り続ける。
「とりあえず移動しながら打ち合わせを続けようか」
まよいの言葉を受け、三人は移動を始めることにした。
「この中で一番素早いのは小鳥だよね。最初の一撃で一羽は落とせるといいけど……」
「それで足りなくても俺がその次で終わらせるさ」
「まよいさんとても頼りになるから、前衛はのびのびと戦えるよ!」
「となると俺は、まよいのカバーに回るのがよさそうか」
「だいたい作戦は固まったかな?」
そう言ってまよいは、前を見る。
そこにあるのは、巨木に据えられた巣を中心とした、鴉の隊列。
三人とも、きっとそれらをにらみつける。
中心に立ったひりょが、つぶやいた。
「さぁ、ここからが本番だ。さっきまでと一緒だと思うなよ?」
きりりと弓を引き絞った。
その横から前に躍り出た小鳥が、魔剣バルムンクを振りかぶり、攻撃のモーションに入る。
「お先♪」
先制で放たれた次元斬が、鴉たちの中心に出現する。
突如現けた斬撃は、鴉を打ち落とすことこそかなわなかったものの、隊列をかき乱すことには成功する。
ひょう!
続くひりょの矢は、避けようとした鴉に容赦なく突き立った。
ソウルエッジで強化された矢は、一発で鴉を地へ落とし、塵と変える。
続けてまよいが、五連続のマジックアローを放った。
二匹が打ち落とされ、残りは旋回してすかさず攻撃してくる。
しかし混乱がまだ収まらないのか、小鳥に向けた突撃は見当違いの方向に向かってしまっており、まよいに向けた攻撃も、どこか勢いの乗り切らないものになっている。
すかさずひりょがまよいとの間に割り込み、盾で攻撃を受ける。
カウンターの準備を進めていたまよいは、残った三匹めがけてマジックアローを放った。
これにより一匹が落ちる。
それに続くのは、小鳥の紅蓮斬。
赤い筋を空中に残しながら、剣撃が鴉に襲い掛かる。
黒い羽根を散らす鴉から目を離せば、残るは一匹。
ひりょが名刀「虹」を構えた。
飛び込む鴉。
待ち受けるひりょ。
一瞬の交差。
鴉の羽根が舞った。
●帰還
「あった~! きっとこれだよ!」
戦闘が終わった直後、すぐさま木に登った小鳥が、金貨の入った麻袋を掲げながら下を見下ろす。
「たぶんそうー!」
大きな声を上げて、まよいは小鳥の推測を肯定した。小鳥はその袋を大事そうに抱え、ぴょんぴょんと木の幹を飛び降りてくる。
「はい、これ持ってて!」
いうや否や、踵を返し、木の幹を再び登っていく。
少しでも多くの人に、なくなったものを戻してあげたい一心で、彼女は巣の中のものを運び出していった。
「依頼以外のものも、荷車を借りて持ち帰ってあげよう。きっと喜ぶ人がいるはずだ」
そう言うひりょは、男性にしては小さな体で、抱えられるだけ目いっぱいの品物を抱えて、バランスを取りながらゆっくりと歩いていく。
小鳥も巣からたくさんの物品を下ろし、全力でそれらを運んでいく。
品物すべては荷車に乗り切らず、後日ハンターズソサエティから回収用の荷車が来ることになった。
「うわぁ……!」
その歓声は、死にそうな顔をしていた行商人のもの。
彼は荷車を見上げ、金貨袋を大切そうに胸に抱えながら、感激のあまり地面にへたり込んでいる。
「あなたの荷車だよ! 金貨も見つかってよかった~」
小鳥が行商人の隣にしゃがみ込み、にっこりと笑いかける。
「荷車を借りちゃったけど、許してくれると嬉しいな。ほかにも困ってる人がたくさんいたと思うんだよ」
無言で、しかし必死に首を縦に振る行商人。
その様に、依頼の費用を半分負担したアラミスは、苦笑いを浮かべる。
やっと涙を収めた行商人が、しゃくりあげつつ言葉を紡いでいく。
「追加報酬を、出すって約束したんだ。こんだけベストな結果を出してくれれば文句もない。ほら、みんな受け取って。ほら、ほら!」
それぞれの手に、金貨を握らせる行商人。
「ほんっとうにありがとう。これでまだ商売を続けられる。品物も無事に納められそうだし、まだまだ旅を続けられる。ほんっとうにありがとう……」
行商人はまた泣き始めた。
小鳥をはじめ、全員がそんな彼を見つめている。
彼はその後、何があっても、死ぬまで行商を続け切ったという。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 4人 |
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MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 夢路 まよい(ka1328) 人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2018/08/10 10:14:13 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/08/10 06:51:55 |