ゲスト
(ka0000)
益虫だろうと無視できない!
マスター:奈華里

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2018/08/19 22:00
- 完成日
- 2018/09/01 01:18
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●苦手
「ギィヤァァァァァァァァァーーーーーーー!!」
一際大きな悲鳴が木霊したここはとある山の中にある軍の訓練場。
馴染みのない者なら飛び起きるレベルであったが、ここにいる者達にとってはある意味これも日常事。
皆またかという表情で苦笑を浮かべる。
だが、本人は至って真剣で、とりあえず同室の二人が様子を見に声の場所へと急ぐ。
「あぁもう、またかよ。シウ…」
呆れた顔でケイが言う。
「今度は何が出たんだ?」
そう言うのはケイと同い年のライトだ。シウよりはかなり若いが、軍の在籍日数はシウより長い為か、ため口で怯えて固まっている仲間・シウにそう声をかける。
「で、出た…んだ……あの、黒い悪魔が」
「黒い悪魔だ? それっていつもの奴だろぉ、いい加減慣れろよ」
黒い奴とはつまり黒光りするあの虫の事だろう。
ここは厨房で残飯は奴らの恰好の餌になるから間違いない。
「む、無理…慣れろとか無理だから…」
ロッドを大事そうに抱えたまま、シウがブンブン首を振る。
「あぁもう全く、面倒だなァおい」
そこでケイが前に出て、腰に撒いベルトから己が得物を静かに抜き取る。
「迅速に頼むぞ」
「誰に言ってんだよ」
ライトの言葉にそう答えて、後は一瞬だった。
姿を捕らえたと同時にケイはいともあっさりそれを駆除してみせる。
「あ、ありがとケイ~」
シウがほっとして彼に駆け寄ろうとする。だが、彼はすいっと避けて汚れたナイフを無言で拭き拭き。
「ちっ、また磨き直しかよ」
ぼそりとケイが愚痴を零し、自室へと戻っていく。
「ライトも来てくれて有難う。一時はどうなる事かと」
「……シウさん、あなた魔法を習っていたのでは?」
ライトにも礼を言いかけていたが、それを遮るようにそう言われては言い返す言葉がない。
「あ、あの」
「先に戻っている」
ライトもそう言い、彼に背を向ける。
そう、シウは虫が大の苦手だった。克服を目指して努力はしているもののまだまだ克服には至らない。
以前に比べればマシになったものの、戦う前に腰が抜けてしまいうまく術が出せないし、出せたとしても制御がうまくいかず、軍の厨房を燃やしかけたり冷凍庫にしてしまった経験もある。
「大丈夫か?」
一人残されてしまったシウを見つけて、部隊長のスニークが彼に声をかける。
「はい、すみません…」
シウは俯いたままそう言って、かなり時間を置いた後部屋へと戻っていった。
●益虫
黒い悪魔とて食物連鎖には逆らえない。
男はその事に目をつけて一山当てようと考えた。そうして、その生物を育成に至る。
見た目が悪いからその事を伏せて、販売文句はどうしようか。悩んだ結果『強力Gバスター』とし、すぐには出て行かないよう餌をたっぷりやって箱に詰める。
そして、まずは小さな村で試験販売。うまくいけばそれを拡大していけばいい。
だが、相手が生き物であるから操る事等出来よう筈がない。けれど、彼はこう甘く考えた。
大丈夫。食べる物がなくなれば自分の元に戻ってくるだろう――と。虫とて愛情込めて育てれば、飼い主を認識すると思う。現に手の平に乗っても逃げたりはしなかった。だったら、戻ってくると信じよう。そうなればGバスターの中身を知られる事もないし、回収できれば次の場所に移りまた売り出す事も出来る。しかし、当たり前であるが事は思うようには進まない。
「キャアァァァァ!!」
黒い悪魔は少なくなると姿を見せ始めたのは、Gバスターの中身である。
何本も伸びた細い脚、黒っぽい毛虫色の細長いボディ。ムカデに似ているが、動きの機敏さが断然違う。
その名もオオゲジ…黒い悪魔を食べてくれる益虫である。であるが、圧倒的に見た目がやばい。
「うそ、いやっ、こないでー!」
それを見つけた女性が慌てて走り去っていく。
「うわっ、僕のバッタが…母さん、かあさーん」
別のところでは捕まえたバッタがオオゲシに狙われ、少年が親に救いを求めている。
そんな騒ぎを聞きつけて、スニークの部隊は急遽この騒ぎの鎮圧に乗り出す。が、
「あ、悪夢だ…」
シウが呆然と立ち尽くす。手のひらサイズのおぞましい虫を前に、嫌な汗がとめどなく流れ出す。
「チッ、はええな」
近付いてきた一匹を駆除しようとしたケイだったが、ぴょんと跳び避けられ奥歯を噛む。
「ま、なんとかしろってお達しだ。せいぜい頑張ろうや」
異例の事であるが、軍による虫の一掃作戦が始まるも、
「こ、殺させないっ。戻れ、みんなっ!」
その男は研究者であり、また覚醒者でもあった。
今まで精魂込めて育ててきたオオゲジだ。無残にやられるのは見過ごせない。ポケットから何枚かの札を取り出すと、躊躇することなくこちらに向かって投げ放つ。それと同時にオオゲジはどういう訳か男の方へ撤退。その直後淡いピンクの花弁が舞い、こちらの接近を妨害する。だが、
「なんてこった」
スニークが呟いた。花弁が納まり視界が確保されたころ、その先にいた男の姿に皆は唖然とする。
何故なら、男が、死んでいた。
しかも立ったまま…彼自身もきっと自分がどうしてこうなったかは判らなかっただろう。
「隊長、これは一体?」
たまたま近くにいた隊員の一人が不思議がる。
だが、スニークは僅かな視界に男をやった犯人を捉えている。
「…あれは、オオゲジであってオオゲジでないものだった」
静かに彼が呟く。
「というと、まさか」
「俺の勘が言ってる。あれは雑魔だ…オオゲジの姿に似ていたがな。何匹かが飛びついてそして」
「こいつをやったと」
「そのようだな。この傷…僅かだが、皮膚を食い破っている…しかも的確に血管を狙ったものだ」
「ひっ、そんなぁ~」
ライトが遺体を検分し、それを聞いたシウはパニック寸前。以前なら既に錯乱していた事だろう。
「どうしますか? 雑魔が混じってるとなると俺らじゃあ」
別の隊員も流石に些か怯えを見せる。
「ああ判ってる。そこは心配すんな…ちゃんと手配しておくから」
そこでスニークはそう言うと、近隣の村人に聞き込みをすると共に注意を呼び掛けるのであった。
「ギィヤァァァァァァァァァーーーーーーー!!」
一際大きな悲鳴が木霊したここはとある山の中にある軍の訓練場。
馴染みのない者なら飛び起きるレベルであったが、ここにいる者達にとってはある意味これも日常事。
皆またかという表情で苦笑を浮かべる。
だが、本人は至って真剣で、とりあえず同室の二人が様子を見に声の場所へと急ぐ。
「あぁもう、またかよ。シウ…」
呆れた顔でケイが言う。
「今度は何が出たんだ?」
そう言うのはケイと同い年のライトだ。シウよりはかなり若いが、軍の在籍日数はシウより長い為か、ため口で怯えて固まっている仲間・シウにそう声をかける。
「で、出た…んだ……あの、黒い悪魔が」
「黒い悪魔だ? それっていつもの奴だろぉ、いい加減慣れろよ」
黒い奴とはつまり黒光りするあの虫の事だろう。
ここは厨房で残飯は奴らの恰好の餌になるから間違いない。
「む、無理…慣れろとか無理だから…」
ロッドを大事そうに抱えたまま、シウがブンブン首を振る。
「あぁもう全く、面倒だなァおい」
そこでケイが前に出て、腰に撒いベルトから己が得物を静かに抜き取る。
「迅速に頼むぞ」
「誰に言ってんだよ」
ライトの言葉にそう答えて、後は一瞬だった。
姿を捕らえたと同時にケイはいともあっさりそれを駆除してみせる。
「あ、ありがとケイ~」
シウがほっとして彼に駆け寄ろうとする。だが、彼はすいっと避けて汚れたナイフを無言で拭き拭き。
「ちっ、また磨き直しかよ」
ぼそりとケイが愚痴を零し、自室へと戻っていく。
「ライトも来てくれて有難う。一時はどうなる事かと」
「……シウさん、あなた魔法を習っていたのでは?」
ライトにも礼を言いかけていたが、それを遮るようにそう言われては言い返す言葉がない。
「あ、あの」
「先に戻っている」
ライトもそう言い、彼に背を向ける。
そう、シウは虫が大の苦手だった。克服を目指して努力はしているもののまだまだ克服には至らない。
以前に比べればマシになったものの、戦う前に腰が抜けてしまいうまく術が出せないし、出せたとしても制御がうまくいかず、軍の厨房を燃やしかけたり冷凍庫にしてしまった経験もある。
「大丈夫か?」
一人残されてしまったシウを見つけて、部隊長のスニークが彼に声をかける。
「はい、すみません…」
シウは俯いたままそう言って、かなり時間を置いた後部屋へと戻っていった。
●益虫
黒い悪魔とて食物連鎖には逆らえない。
男はその事に目をつけて一山当てようと考えた。そうして、その生物を育成に至る。
見た目が悪いからその事を伏せて、販売文句はどうしようか。悩んだ結果『強力Gバスター』とし、すぐには出て行かないよう餌をたっぷりやって箱に詰める。
そして、まずは小さな村で試験販売。うまくいけばそれを拡大していけばいい。
だが、相手が生き物であるから操る事等出来よう筈がない。けれど、彼はこう甘く考えた。
大丈夫。食べる物がなくなれば自分の元に戻ってくるだろう――と。虫とて愛情込めて育てれば、飼い主を認識すると思う。現に手の平に乗っても逃げたりはしなかった。だったら、戻ってくると信じよう。そうなればGバスターの中身を知られる事もないし、回収できれば次の場所に移りまた売り出す事も出来る。しかし、当たり前であるが事は思うようには進まない。
「キャアァァァァ!!」
黒い悪魔は少なくなると姿を見せ始めたのは、Gバスターの中身である。
何本も伸びた細い脚、黒っぽい毛虫色の細長いボディ。ムカデに似ているが、動きの機敏さが断然違う。
その名もオオゲジ…黒い悪魔を食べてくれる益虫である。であるが、圧倒的に見た目がやばい。
「うそ、いやっ、こないでー!」
それを見つけた女性が慌てて走り去っていく。
「うわっ、僕のバッタが…母さん、かあさーん」
別のところでは捕まえたバッタがオオゲシに狙われ、少年が親に救いを求めている。
そんな騒ぎを聞きつけて、スニークの部隊は急遽この騒ぎの鎮圧に乗り出す。が、
「あ、悪夢だ…」
シウが呆然と立ち尽くす。手のひらサイズのおぞましい虫を前に、嫌な汗がとめどなく流れ出す。
「チッ、はええな」
近付いてきた一匹を駆除しようとしたケイだったが、ぴょんと跳び避けられ奥歯を噛む。
「ま、なんとかしろってお達しだ。せいぜい頑張ろうや」
異例の事であるが、軍による虫の一掃作戦が始まるも、
「こ、殺させないっ。戻れ、みんなっ!」
その男は研究者であり、また覚醒者でもあった。
今まで精魂込めて育ててきたオオゲジだ。無残にやられるのは見過ごせない。ポケットから何枚かの札を取り出すと、躊躇することなくこちらに向かって投げ放つ。それと同時にオオゲジはどういう訳か男の方へ撤退。その直後淡いピンクの花弁が舞い、こちらの接近を妨害する。だが、
「なんてこった」
スニークが呟いた。花弁が納まり視界が確保されたころ、その先にいた男の姿に皆は唖然とする。
何故なら、男が、死んでいた。
しかも立ったまま…彼自身もきっと自分がどうしてこうなったかは判らなかっただろう。
「隊長、これは一体?」
たまたま近くにいた隊員の一人が不思議がる。
だが、スニークは僅かな視界に男をやった犯人を捉えている。
「…あれは、オオゲジであってオオゲジでないものだった」
静かに彼が呟く。
「というと、まさか」
「俺の勘が言ってる。あれは雑魔だ…オオゲジの姿に似ていたがな。何匹かが飛びついてそして」
「こいつをやったと」
「そのようだな。この傷…僅かだが、皮膚を食い破っている…しかも的確に血管を狙ったものだ」
「ひっ、そんなぁ~」
ライトが遺体を検分し、それを聞いたシウはパニック寸前。以前なら既に錯乱していた事だろう。
「どうしますか? 雑魔が混じってるとなると俺らじゃあ」
別の隊員も流石に些か怯えを見せる。
「ああ判ってる。そこは心配すんな…ちゃんと手配しておくから」
そこでスニークはそう言うと、近隣の村人に聞き込みをすると共に注意を呼び掛けるのであった。
リプレイ本文
●調査結果
スニーク隊の動きは迅速だった。
ハンター達を待っている間も注意勧告からGバスターの入手経路に、あの男の所在まで調査している。
「おお、ご苦労さん。後は宜しく頼むぜ」
スニークが代表してハンター達を招き入れる。
ハンターはハンターでオフィスに写真付きで例の男についての情報がないかを調べていたから話は早い。
「男の名前はビト―。符術師でレベルは十だったみたいよ…オフィスに記録が残ってたわ」
状況を聞いた時から桜幕符を使ったのではと推理していた夢路 まよい(ka1328)が話す。
「何でも元々虫好きさんだったらしいですぅ。技を習得したのも安全な昆虫研究の為だとかで、ハンターとしての仕事よりも昆虫採取目的で珍しい場所の依頼を受けて出向いていたとか。最近は研究に専念していたようですねー」
とこれはアシェ-ル(ka2983)。
「昆虫研究…なんて人だ」
現場ではまだオオゲジが残っているかもしれないという事で隊長と行動を共にし、ハンターらの話を静かに聞いていたシウがぽつりと呟く。
「あんた、そんなに虫が嫌いなのか?」
そんな彼を見つけてジャック・エルギン(ka1522)が声をかける。
「それはもう…だって、あれって自衛の為なら平気で足もいで逃げたりするんですよ~。それっておかしいじゃないですかっ! 痛いのに、そんな事するなんてどうかしている…」
いつ見たかは知らないが、妙に鮮明な説明にどうしたものかと溜息が出る。
「まあ、確かに奴らは普通じゃないな…特にGとか」
頭文字にびくっとしたシウであったが、同意見を持つレイア・アローネ(ka4082)の登場に幾分ほっとした。そうしてレイアの傍に移動し、子供の様にああだこうだと虫の嫌な所を話し出す。そんな姿を見ると龍宮 アキノ(ka6831)のドS心に火が付いて…。
(まずは小手調べと行こうか、シウちゃん…)
普段は相手にちゃん付けなどしないが、今はお楽しみ時間だから仕方がない。ここに来るまでにこっそり捕まえておいた虫がいる。それを彼の背にはっつけたら一体どんな反応を見せてくれるだろう。
「なあ、シウ。きみの背中に何かいるようだが」
にやりと口元を釣り上げて彼女が言う。
「え、何! もしかして…」
「大丈夫よ、シウ。背中にいるのはカマキリだから」
マリィア・バルデス(ka5848)の言葉を聞き、静かに強張っていた肩を下ろす。
だがそれとは逆に表情を変えたのはアキノだ。
「おい、どういう事だい。全然怖がらないじゃねぇか」
少し怒りすら覚えながらアキノが尋ねる。
「あー…カマキリだけは克服したんだったか。なあ、シウ?」
スニークが苦笑いで言う。
「そ、その時私もいたのよね…だから知ってる訳。荒療治もいいけど、程々にしないとトラウマものよ。それより、シウ。貴方そんなに嫌ならいっそ、ハンターにならない?」
唐突にマリィアがその方がいいのではと提案する。
「でも、僕なんて…」
「まあ、それは後にしてだ。そろそろオオゲジ退治、頼むわ」
そこでシウの迷いを組んでスニークがそう促した。
●餌
まずは聞き込みで掴んだ男の家へ。
ハンターが六人もいるんだからとライトやケイは別行動。慣れる為にとシウだけがこれに同行する。
そこは何の変哲もない山小屋だった。昔は木こりが使っていたらしいが、家主が随分前に年を理由にやめてしまったらしく、その後空き家になっていたのをビト―が買い取ったらしい。切った木を保管する倉庫を隣に併設していたから、虫の育成にも便利であっただろう。
「静かですね…」
小屋に到着してまずは様子見。今は寝てしまっているのか、ここからでは虫特有のかさかさ音はしない。
「どうだ。ピッキングしてみるか」
鍵開けの能力を持っているレイアが皆に尋ねる。
「いや、まずは誘き出せないかやってみようぜ」
雑魔か否か。混じったままでも構わないかもしれないが、万一一緒の場合は不意打ちを食らう可能性がある。情報ではオオゲジ雑魔は驚く程の瞬発力と殺傷能力を持っているようだから、迂闊に近付くのは賢明ではないだろう。
「ま、俺に任せな」
ジャックが予め用意してきた箱を取り出す。
「それはなんだい?」
そう問うアキノににやりとするジャック。それはGバスターの入れ物に似せて作ったものだ。
聞き込みの時に回収できた入れ物を見せて貰い、制作にはケイらにも手伝って貰った。ちなみに箱の構造は至ってシンプルで箱中央に餌とゲジの入るスペースがあり、その部分には屋根があるから中が見えない構造。その周りには香りの強いハーブらしきものが敷かれていて購入者はそれがGを殲滅する薬剤だと思っていた筈だ。だが、肝心の餌が何であったかは判らなくて…とりあえずマリィアの助言で手に入りやすかった雄鶏を仕掛けてみる。
「本当にこんなのでくるのかしら?」
まよいが疑いの眼差しでそれを見つめる。
「まあ、やってみるだけはタダだろ」
そんな彼女に虫採り少年の様な目でジャックが切り返す。
だが、やはり鶏は好みでないか。一向に出てくる気配がない。
(ゲジはともかく雑魔の方は襲ってくると思ったのだけれど違うのね)
予想が外れたなとマリィアが心中で呟く。
それから数時間待ってみたもののやって来たのは野犬のみで、作戦変更を余儀なくされる。
「では、改めて今度は私の番か」
そう言ってレイアがジャックと共に前に出る。
続いてはソウルトーチで雑魔のみを誘き出そうという事らしい。二人が気持ちを集中し、身体から炎の様なオーラを立ち昇らせる。その二人の篝火に今度は見事におびき寄せられ騒めく気配。それらが徐々に近付いてくる。
「うわー、どうしよう。また一斉に出てきたら…」
シウが自分で不安を煽る。
「ねえ、シウ。あなたディヴァインウィルは使えるのかしら?」
そんな折、ふと思い出したようにマリィアが尋ねる。
「え…いえ、無理です。今、僕魔術師ですし」
「けど、回復魔法も使えるのよね?」
マリィアは疑問に思っていた。回復魔法と言えば聖導師のスキルだ。なのに、彼は今魔導師だという。
という事は彼はサブクラスとして魔術師を選択し、元々は聖導師だったのではないだろうかと。
「回復は使えます、けど…ディヴァインウィルは習得していないので無理です」
レベル十四には到達していなかったか。ただ単に取っていなかったか、どちらにしても境界を張れないのであれば彼を守る動き方もしなくてはならない。
「…ご、ごめんなさい」
色々察して彼が謝る。
「大丈夫ですよぉ。だって虫より人の方が圧倒的に大きいですから弱気になる事はないですよ!」
そう励ますのはアシェールさん。何故だかとても楽しそうだ。
「それに魔法が使えるなら怖いもの無しです」
そう言い切る彼女だが、シウにとっては受け入れ難きことで…杖を持つ手が未だに震えている。
「さぁ、きたわよっ」
が、敵にそんな事等関係ない。わさわさとドアの隙間から姿を現わし始める。
「恨みはないけど、駆除させて貰うわよっ」
そこでまよいは錬金杖を掲げてマジックアローの構え。
フォースリングをはめているから出現する光の矢が一本ではない。
「おぉっ、かわカッコいいゲジさんのお出ましですね♪」
がその真横で囁かれた言葉に思わず皆振り返る。
「は? 今なんて」
「かわカッコイイですよね?」
「あははっ、あんたなかなかだねぇ」
そうして、その言葉にそれぞれの反応しつつも視線を前へ。
「えっ、だってあの姿可愛いじゃないですか! あの運動性能、俊敏な動き! すごくか…」
「ああ、わかった。その件は後だ後ッ!」
アシェールの衝撃発言はさておいて、出てきたゲジの数は半端なく多い。
という事は雑魔のみならず、通常ゲジも出て来てしまったらしい。
「あれ…ちょっと、これまずくね?」
予想と違う数にジャックの額から嫌な汗が流れる。
「……これも運命。やるしかないだろう」
そう言いレイアは覚悟を決めた。苦手を公言してはいるがシウほどではない。
近寄らせはするが、触れる前にやると堅く決意し、跳ね来るゲジを盾で防ぎ払い落とす。
「ま、どっち道やることに変わりはないんだ。恐れる事はないってね」
アキノは払い落とされたそれを容赦なく踏みつけ、迫ってくるものには剣の様な杖で対抗。豪快に振り抜けば、ゲジの体は真っ二つになり残骸が四方に飛ぶ。サイズは大きくとも虫は虫。だが、仲間がやられた事によりオオゲジ達もこちらを完全に警戒し、その場から逃げ出そうとするものも出てくる。
「ジャック、ソウルトーチは継続するぞ!」
「ああ」
そんな個体を出さない為に――二人はゲジの殲滅が終わるまでスキルを継続する。
●キッカケ
飛び交うゲジとシウの叫び声――ひゃっ、わひゃっと恥ずかしげもなく声を上げる。
「ははっ、たかが虫だろ。隠れてんじゃねーって」
そんな彼にアキノからの檄が飛ぶが、彼はそれどころではない。
残骸から逃げるのに必死で、杖はお飾りと化している。
(駄目だ…こんなじゃいけない。せめて、せめて、ハンターさんの雄姿を見ないとっ)
彼にとってハンターは憧れの存在。虫に負けて、彼らの活躍を見逃すのは悔しい。
そう思い、茂みから少しだけ顔を上げると、まるで踊るように立ち回るハンターの姿。それは本当に凄いとしか言いようがない。そんな彼らに負けていないゲジもなんだか凄く見えてくる。
(そう言えばさっきアシェールさんが何か言ってたっけ)
さっきより幾分落ち着いた様子でシウが皆を見守る。
「はっ、流石に数が多いねぇ」
跳躍特攻を盾で防ぐアキノから言葉が零れる。
「しかも何気にすばしっこいし」
そう言うのはまよいだ。二人が引き付けてくれているから狙いやすいが、ぴょんぴょん跳ねられては無駄撃ちも増えてくる。マリィアもそれは同じで両手持ちで弾丸の雨を降らせたい所だが、乱戦状態ではうっかり味方に当たりかねない。
「ちっ、面倒ね。せめて雑魔だけをやれれば」
今の状態では全てに注意を払わなければならない。スピードが違うから雑魔の見当はついても、それだけを追う事が出来ないなら意味がない。
「やっぱり中から調べた方がよかったですかねぇ」
この数、中にも未販売のゲジがいたのだろう。ゲジ推しであってもお仕事とあらば仕方がないと割り切り、アシェールはスキルで足止めし魔導ガントレットで容赦なくゲジを殴り飛ばす。
「っていうかもうこれ、あれだな。家ごと燃やせばよかった気がしないでもないな」
どうやって躾たのかという点は謎のままとなってしまうがそこまで求められていなかったのだから、克服作戦の事を無視すればその方が絶対早かったとレイアは思う。
(まあ、後少しで…お楽しみってね)
そんな中でもご褒美があれば頑張れる。アキノがこの後の事を密かに画策する。
そんなこんなで時間はかかったものの、ゲジ達の殲滅はそろそろ終盤。日が傾き、いつの間にかシウはカンテラを手にしていた。この時間まで生き残ったのは一層大きい個体であるから、きっと雑魔に違いない。散々普通のゲジに紛れてハンター達に無数の擦り傷を負わせた強者達だ。両者、相手の出方を見るように対峙する。完全に不利な状況であったが、ゲジはまだやる気だ。ハンターそれぞれを認識し、そしてこの場で一番弱い者を狙って十一対の足で大地を蹴り、そちらへと全力で駆け出す。
「えっえっ」
その弱きものとは勿論シウの事だった。茂みに隠れていたとて、雑魔のゲジは逃がさない。
「チッ、悪足掻きだなっ」
ジャックがシウに向かう一匹を大剣で薙ぎ払う。
「シウさんには近付けさせないのですぅ」
そう言って進路妨害するように結界を張ったのはアシェールだ。
「悪いわね、観念なさいな」
その後に銃声が響いて、また一匹今度はマリィアの手で葬られる。
だが、それらを掻い潜り茂み前まで進んだ一匹が華麗に跳躍。
「うわぁぁっ」
それに思わずシウが叫んで、
『あっ』
慌てた余りシウが手にしたカンテラを振り回し、ものの見事に指からすり抜け小屋へと飛んでいく。
そしてカンテラが派手に壊れ、木造の小屋に火をつける。
が、そっちを気にしている場合ではない。シウに向かった一匹がまだ生存中だ。
だが、そのゲジは彼には到達できず。レイアの盾がゲジを防ぎ振り払うと同時に、アキノの杖が仕留めている。
「ひとまずこれで全部かしら?」
周囲に動いているゲジがいないかどうか確認しつつ、まよいが問う。
「ま、まぁな…けど、これどうすんだ?」
小屋が派手に燃えていた。消火しようにも空気が思ったより乾燥しているようで火の回りが早い。
「えっと……これ、僕のせいですかね」
小声で言うシウに苦笑いを浮かべる一同であった。
さて、小屋は消滅したが付近のゲジの死骸はまだである。
そういう訳で翌日、この後始末をするようアキノがシウに提案する。
「シウ、これも克服の為だ。しっかり頼むよ」
まだ焦げ臭い小屋を前で、死骸でも嫌がるかと思ったがシウは昨日程拒否する様子はない。
(ふむ…昨日ので慣れちまったかねぇ?)
あれだけ見たのだ。おびえる反応が見れないのはつまらないが、彼が克服できたのなら万々歳とも思う。
「もしかして、小屋燃やした罪悪感でそれ所じゃないとか?」
マリィアが少し様子の変わったシウを覗き込み問う。
「…あ、いえそう言う訳ではないんです。ただ、この虫達、凄いなって思って」
「凄いってどういう事?」
彼の言葉が気になり、まよいが尋ねる。
「ほら、アシェールさんが言ってたじゃないですか。この運動性能に俊敏な動きがカッコいいって…あれ聞いて見てるうちに思ったんですよね。この虫、ハンターさん達に似てるなって」
『え゛っ…』
シウから出た爆弾発言に皆の声がはもる。
「おい、おまえ! あれに何処が似てるっていうんだ!」
レイアが流石にそれはないとご立腹のようでシウの胸倉を掴む。
「えっだって、本当そう思った訳で…」
「うん、うん。ついにシウさんもゲジのかわカッコよさに気付いたという事ですねー。って事で次は蜘蛛とかいってみますかぁ? あれもなかなかつぶらな瞳を持っていてかわカッコいいんですよ♪」
その意見を聞き、喜々として次の提案をするアシェール。ゲジ推し仲間が出来て嬉しいらしい。
「まぁ、克服の兆しが出てきたんだからいいんじゃね?」
ゲジと同じ扱いというのは解せないが、それでも一歩進んだのならとジャックは思う。
「はぁ、何がきっかけになるか判らないわね」
そんな中、マリィアは一人呆れ顔。ゲジを大きくする飼育法等は判らなかったが、まぁ依頼内容はクリアしたのでいいだろう。雑魔発生の要因となるものはなく自然発生だったとすると、男の愛がゲジを動かした…そう言う事にしておくとしよう。
スニーク隊の動きは迅速だった。
ハンター達を待っている間も注意勧告からGバスターの入手経路に、あの男の所在まで調査している。
「おお、ご苦労さん。後は宜しく頼むぜ」
スニークが代表してハンター達を招き入れる。
ハンターはハンターでオフィスに写真付きで例の男についての情報がないかを調べていたから話は早い。
「男の名前はビト―。符術師でレベルは十だったみたいよ…オフィスに記録が残ってたわ」
状況を聞いた時から桜幕符を使ったのではと推理していた夢路 まよい(ka1328)が話す。
「何でも元々虫好きさんだったらしいですぅ。技を習得したのも安全な昆虫研究の為だとかで、ハンターとしての仕事よりも昆虫採取目的で珍しい場所の依頼を受けて出向いていたとか。最近は研究に専念していたようですねー」
とこれはアシェ-ル(ka2983)。
「昆虫研究…なんて人だ」
現場ではまだオオゲジが残っているかもしれないという事で隊長と行動を共にし、ハンターらの話を静かに聞いていたシウがぽつりと呟く。
「あんた、そんなに虫が嫌いなのか?」
そんな彼を見つけてジャック・エルギン(ka1522)が声をかける。
「それはもう…だって、あれって自衛の為なら平気で足もいで逃げたりするんですよ~。それっておかしいじゃないですかっ! 痛いのに、そんな事するなんてどうかしている…」
いつ見たかは知らないが、妙に鮮明な説明にどうしたものかと溜息が出る。
「まあ、確かに奴らは普通じゃないな…特にGとか」
頭文字にびくっとしたシウであったが、同意見を持つレイア・アローネ(ka4082)の登場に幾分ほっとした。そうしてレイアの傍に移動し、子供の様にああだこうだと虫の嫌な所を話し出す。そんな姿を見ると龍宮 アキノ(ka6831)のドS心に火が付いて…。
(まずは小手調べと行こうか、シウちゃん…)
普段は相手にちゃん付けなどしないが、今はお楽しみ時間だから仕方がない。ここに来るまでにこっそり捕まえておいた虫がいる。それを彼の背にはっつけたら一体どんな反応を見せてくれるだろう。
「なあ、シウ。きみの背中に何かいるようだが」
にやりと口元を釣り上げて彼女が言う。
「え、何! もしかして…」
「大丈夫よ、シウ。背中にいるのはカマキリだから」
マリィア・バルデス(ka5848)の言葉を聞き、静かに強張っていた肩を下ろす。
だがそれとは逆に表情を変えたのはアキノだ。
「おい、どういう事だい。全然怖がらないじゃねぇか」
少し怒りすら覚えながらアキノが尋ねる。
「あー…カマキリだけは克服したんだったか。なあ、シウ?」
スニークが苦笑いで言う。
「そ、その時私もいたのよね…だから知ってる訳。荒療治もいいけど、程々にしないとトラウマものよ。それより、シウ。貴方そんなに嫌ならいっそ、ハンターにならない?」
唐突にマリィアがその方がいいのではと提案する。
「でも、僕なんて…」
「まあ、それは後にしてだ。そろそろオオゲジ退治、頼むわ」
そこでシウの迷いを組んでスニークがそう促した。
●餌
まずは聞き込みで掴んだ男の家へ。
ハンターが六人もいるんだからとライトやケイは別行動。慣れる為にとシウだけがこれに同行する。
そこは何の変哲もない山小屋だった。昔は木こりが使っていたらしいが、家主が随分前に年を理由にやめてしまったらしく、その後空き家になっていたのをビト―が買い取ったらしい。切った木を保管する倉庫を隣に併設していたから、虫の育成にも便利であっただろう。
「静かですね…」
小屋に到着してまずは様子見。今は寝てしまっているのか、ここからでは虫特有のかさかさ音はしない。
「どうだ。ピッキングしてみるか」
鍵開けの能力を持っているレイアが皆に尋ねる。
「いや、まずは誘き出せないかやってみようぜ」
雑魔か否か。混じったままでも構わないかもしれないが、万一一緒の場合は不意打ちを食らう可能性がある。情報ではオオゲジ雑魔は驚く程の瞬発力と殺傷能力を持っているようだから、迂闊に近付くのは賢明ではないだろう。
「ま、俺に任せな」
ジャックが予め用意してきた箱を取り出す。
「それはなんだい?」
そう問うアキノににやりとするジャック。それはGバスターの入れ物に似せて作ったものだ。
聞き込みの時に回収できた入れ物を見せて貰い、制作にはケイらにも手伝って貰った。ちなみに箱の構造は至ってシンプルで箱中央に餌とゲジの入るスペースがあり、その部分には屋根があるから中が見えない構造。その周りには香りの強いハーブらしきものが敷かれていて購入者はそれがGを殲滅する薬剤だと思っていた筈だ。だが、肝心の餌が何であったかは判らなくて…とりあえずマリィアの助言で手に入りやすかった雄鶏を仕掛けてみる。
「本当にこんなのでくるのかしら?」
まよいが疑いの眼差しでそれを見つめる。
「まあ、やってみるだけはタダだろ」
そんな彼女に虫採り少年の様な目でジャックが切り返す。
だが、やはり鶏は好みでないか。一向に出てくる気配がない。
(ゲジはともかく雑魔の方は襲ってくると思ったのだけれど違うのね)
予想が外れたなとマリィアが心中で呟く。
それから数時間待ってみたもののやって来たのは野犬のみで、作戦変更を余儀なくされる。
「では、改めて今度は私の番か」
そう言ってレイアがジャックと共に前に出る。
続いてはソウルトーチで雑魔のみを誘き出そうという事らしい。二人が気持ちを集中し、身体から炎の様なオーラを立ち昇らせる。その二人の篝火に今度は見事におびき寄せられ騒めく気配。それらが徐々に近付いてくる。
「うわー、どうしよう。また一斉に出てきたら…」
シウが自分で不安を煽る。
「ねえ、シウ。あなたディヴァインウィルは使えるのかしら?」
そんな折、ふと思い出したようにマリィアが尋ねる。
「え…いえ、無理です。今、僕魔術師ですし」
「けど、回復魔法も使えるのよね?」
マリィアは疑問に思っていた。回復魔法と言えば聖導師のスキルだ。なのに、彼は今魔導師だという。
という事は彼はサブクラスとして魔術師を選択し、元々は聖導師だったのではないだろうかと。
「回復は使えます、けど…ディヴァインウィルは習得していないので無理です」
レベル十四には到達していなかったか。ただ単に取っていなかったか、どちらにしても境界を張れないのであれば彼を守る動き方もしなくてはならない。
「…ご、ごめんなさい」
色々察して彼が謝る。
「大丈夫ですよぉ。だって虫より人の方が圧倒的に大きいですから弱気になる事はないですよ!」
そう励ますのはアシェールさん。何故だかとても楽しそうだ。
「それに魔法が使えるなら怖いもの無しです」
そう言い切る彼女だが、シウにとっては受け入れ難きことで…杖を持つ手が未だに震えている。
「さぁ、きたわよっ」
が、敵にそんな事等関係ない。わさわさとドアの隙間から姿を現わし始める。
「恨みはないけど、駆除させて貰うわよっ」
そこでまよいは錬金杖を掲げてマジックアローの構え。
フォースリングをはめているから出現する光の矢が一本ではない。
「おぉっ、かわカッコいいゲジさんのお出ましですね♪」
がその真横で囁かれた言葉に思わず皆振り返る。
「は? 今なんて」
「かわカッコイイですよね?」
「あははっ、あんたなかなかだねぇ」
そうして、その言葉にそれぞれの反応しつつも視線を前へ。
「えっ、だってあの姿可愛いじゃないですか! あの運動性能、俊敏な動き! すごくか…」
「ああ、わかった。その件は後だ後ッ!」
アシェールの衝撃発言はさておいて、出てきたゲジの数は半端なく多い。
という事は雑魔のみならず、通常ゲジも出て来てしまったらしい。
「あれ…ちょっと、これまずくね?」
予想と違う数にジャックの額から嫌な汗が流れる。
「……これも運命。やるしかないだろう」
そう言いレイアは覚悟を決めた。苦手を公言してはいるがシウほどではない。
近寄らせはするが、触れる前にやると堅く決意し、跳ね来るゲジを盾で防ぎ払い落とす。
「ま、どっち道やることに変わりはないんだ。恐れる事はないってね」
アキノは払い落とされたそれを容赦なく踏みつけ、迫ってくるものには剣の様な杖で対抗。豪快に振り抜けば、ゲジの体は真っ二つになり残骸が四方に飛ぶ。サイズは大きくとも虫は虫。だが、仲間がやられた事によりオオゲジ達もこちらを完全に警戒し、その場から逃げ出そうとするものも出てくる。
「ジャック、ソウルトーチは継続するぞ!」
「ああ」
そんな個体を出さない為に――二人はゲジの殲滅が終わるまでスキルを継続する。
●キッカケ
飛び交うゲジとシウの叫び声――ひゃっ、わひゃっと恥ずかしげもなく声を上げる。
「ははっ、たかが虫だろ。隠れてんじゃねーって」
そんな彼にアキノからの檄が飛ぶが、彼はそれどころではない。
残骸から逃げるのに必死で、杖はお飾りと化している。
(駄目だ…こんなじゃいけない。せめて、せめて、ハンターさんの雄姿を見ないとっ)
彼にとってハンターは憧れの存在。虫に負けて、彼らの活躍を見逃すのは悔しい。
そう思い、茂みから少しだけ顔を上げると、まるで踊るように立ち回るハンターの姿。それは本当に凄いとしか言いようがない。そんな彼らに負けていないゲジもなんだか凄く見えてくる。
(そう言えばさっきアシェールさんが何か言ってたっけ)
さっきより幾分落ち着いた様子でシウが皆を見守る。
「はっ、流石に数が多いねぇ」
跳躍特攻を盾で防ぐアキノから言葉が零れる。
「しかも何気にすばしっこいし」
そう言うのはまよいだ。二人が引き付けてくれているから狙いやすいが、ぴょんぴょん跳ねられては無駄撃ちも増えてくる。マリィアもそれは同じで両手持ちで弾丸の雨を降らせたい所だが、乱戦状態ではうっかり味方に当たりかねない。
「ちっ、面倒ね。せめて雑魔だけをやれれば」
今の状態では全てに注意を払わなければならない。スピードが違うから雑魔の見当はついても、それだけを追う事が出来ないなら意味がない。
「やっぱり中から調べた方がよかったですかねぇ」
この数、中にも未販売のゲジがいたのだろう。ゲジ推しであってもお仕事とあらば仕方がないと割り切り、アシェールはスキルで足止めし魔導ガントレットで容赦なくゲジを殴り飛ばす。
「っていうかもうこれ、あれだな。家ごと燃やせばよかった気がしないでもないな」
どうやって躾たのかという点は謎のままとなってしまうがそこまで求められていなかったのだから、克服作戦の事を無視すればその方が絶対早かったとレイアは思う。
(まあ、後少しで…お楽しみってね)
そんな中でもご褒美があれば頑張れる。アキノがこの後の事を密かに画策する。
そんなこんなで時間はかかったものの、ゲジ達の殲滅はそろそろ終盤。日が傾き、いつの間にかシウはカンテラを手にしていた。この時間まで生き残ったのは一層大きい個体であるから、きっと雑魔に違いない。散々普通のゲジに紛れてハンター達に無数の擦り傷を負わせた強者達だ。両者、相手の出方を見るように対峙する。完全に不利な状況であったが、ゲジはまだやる気だ。ハンターそれぞれを認識し、そしてこの場で一番弱い者を狙って十一対の足で大地を蹴り、そちらへと全力で駆け出す。
「えっえっ」
その弱きものとは勿論シウの事だった。茂みに隠れていたとて、雑魔のゲジは逃がさない。
「チッ、悪足掻きだなっ」
ジャックがシウに向かう一匹を大剣で薙ぎ払う。
「シウさんには近付けさせないのですぅ」
そう言って進路妨害するように結界を張ったのはアシェールだ。
「悪いわね、観念なさいな」
その後に銃声が響いて、また一匹今度はマリィアの手で葬られる。
だが、それらを掻い潜り茂み前まで進んだ一匹が華麗に跳躍。
「うわぁぁっ」
それに思わずシウが叫んで、
『あっ』
慌てた余りシウが手にしたカンテラを振り回し、ものの見事に指からすり抜け小屋へと飛んでいく。
そしてカンテラが派手に壊れ、木造の小屋に火をつける。
が、そっちを気にしている場合ではない。シウに向かった一匹がまだ生存中だ。
だが、そのゲジは彼には到達できず。レイアの盾がゲジを防ぎ振り払うと同時に、アキノの杖が仕留めている。
「ひとまずこれで全部かしら?」
周囲に動いているゲジがいないかどうか確認しつつ、まよいが問う。
「ま、まぁな…けど、これどうすんだ?」
小屋が派手に燃えていた。消火しようにも空気が思ったより乾燥しているようで火の回りが早い。
「えっと……これ、僕のせいですかね」
小声で言うシウに苦笑いを浮かべる一同であった。
さて、小屋は消滅したが付近のゲジの死骸はまだである。
そういう訳で翌日、この後始末をするようアキノがシウに提案する。
「シウ、これも克服の為だ。しっかり頼むよ」
まだ焦げ臭い小屋を前で、死骸でも嫌がるかと思ったがシウは昨日程拒否する様子はない。
(ふむ…昨日ので慣れちまったかねぇ?)
あれだけ見たのだ。おびえる反応が見れないのはつまらないが、彼が克服できたのなら万々歳とも思う。
「もしかして、小屋燃やした罪悪感でそれ所じゃないとか?」
マリィアが少し様子の変わったシウを覗き込み問う。
「…あ、いえそう言う訳ではないんです。ただ、この虫達、凄いなって思って」
「凄いってどういう事?」
彼の言葉が気になり、まよいが尋ねる。
「ほら、アシェールさんが言ってたじゃないですか。この運動性能に俊敏な動きがカッコいいって…あれ聞いて見てるうちに思ったんですよね。この虫、ハンターさん達に似てるなって」
『え゛っ…』
シウから出た爆弾発言に皆の声がはもる。
「おい、おまえ! あれに何処が似てるっていうんだ!」
レイアが流石にそれはないとご立腹のようでシウの胸倉を掴む。
「えっだって、本当そう思った訳で…」
「うん、うん。ついにシウさんもゲジのかわカッコよさに気付いたという事ですねー。って事で次は蜘蛛とかいってみますかぁ? あれもなかなかつぶらな瞳を持っていてかわカッコいいんですよ♪」
その意見を聞き、喜々として次の提案をするアシェール。ゲジ推し仲間が出来て嬉しいらしい。
「まぁ、克服の兆しが出てきたんだからいいんじゃね?」
ゲジと同じ扱いというのは解せないが、それでも一歩進んだのならとジャックは思う。
「はぁ、何がきっかけになるか判らないわね」
そんな中、マリィアは一人呆れ顔。ゲジを大きくする飼育法等は判らなかったが、まぁ依頼内容はクリアしたのでいいだろう。雑魔発生の要因となるものはなく自然発生だったとすると、男の愛がゲジを動かした…そう言う事にしておくとしよう。
依頼結果
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相談卓 ジャック・エルギン(ka1522) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/08/19 10:27:53 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/08/18 07:50:40 |