ゲスト
(ka0000)
【空蒼】不条理な生きる世界
マスター:大林さゆる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/08/28 07:30
- 完成日
- 2018/09/04 00:57
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
リアルブルーの日本、名古屋。
議員である田中は、大手企業ビルの会議に招かれていた。
エレベーターに乗り、目的地の三階に辿り着いた時だった。
銃を持った強化人間たちに取り囲まれ、三階の会議室へと強引に引き摺り込まれた。
「よー、田中さん、あなたも世界を守るため、例のヤツ、使っちゃいな~?」
「例のヤツ? 君達、もしや、アレを使ったのか! 誰の差し金だ?!」
田中議員にも、思い当たることがあった。
イクシード・アプリの存在だ。単なる噂だと思っていたが、本当にあったのか?
「君達は、ヒトとしての尊厳も忘れてしまったのか?!」
憤る田中。
強化人間たちが、ケラケラとからかうように笑った。
そもそも強化人間たちは、自分の『力』は正義であると盲信し、自分自身が強化人間になってしまったことさえ理解していなかった。
「ソンゲン? なにそれー、美味しいの?」
「生きるためには、力が必要だよねー。あんたの親友だった畑本さんから、田中さんを連れて来いって言われてさ~」
親友の名を聞いて、田中は驚きを隠せなかった。
「畑本が……? あいつは、転移者の力を危惧していたが、それなのに、どうして?」
田中の脳裏に、畑本と互いに将来の夢について語り合った日々が思い浮かんだ。
「結局、権力に勝てなかったんじゃない? 誰だって、死ぬのは怖いもんねー」
強化人間たちが、田中を取り囲む。
田中は懸命に抵抗するが、強化人間たちに殴り飛ばされ、成す術もなく気絶した。
●
「ヒトというものは、実に興味深い……フフフ」
黒いシルクハットを被り、白い仮面を付けた男…カッツォ・ヴォイ(kz0224)は、リアルブルーの混沌とした世界に酔いしれていた。
「裏切り、裏切られ、嫉妬の炎が渦巻いている……少し揺さ振るだけで、こうも簡単に広がるとはな」
カッツォは、大手企業ビルの七階にいた。
その頃。
「周辺の住民たちは、全て避難完了。……これから、任務を遂行する」
ボディをレッドにコーティングしたR7エクスシアが一機。
OF-004は、モニター画面から周囲を確認すると、大手企業ビル一階の裏口に廻り込んだ。
●
ハンターズソサエティに、一通の手紙が届いていた。
「カッツォ・ヴォイから、予告状?」
マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)が、手紙を受け取る。
カッツォから届いた予告状には、『リアルブルーの日本、名古屋にある大手企業ビルの一つを占拠した』と書かれていた。
「……また、何を企んでいるのか」
このまま放っておく訳にはいかないと思い、マクシミリアンはハンターズソサエティの依頼として、ハンターたちを集めることにした。
●
リアルブルー、名古屋。
カッツォに指定された場所に辿り着くと、大手企業ビルの周囲にR7エクスシアが6体、行く手を阻むように立ち並んでいた。
「一機だけ、赤いエクスシア……搭乗しているは全員、強化人間らしいな」
マクシミリアンは、ビルに取り残されている議員を救出するつもりでいた。
予告状には、『尚、ビルの三階にある会議室には、一般人の議員がいる。それをどうするかは、ハンターたちに委ねよう』とも明記されていたのだ。
たとえ、罠だとしても、一般人が取り残されているならば、優先的に救助することが望ましいだろうと、マクシミリアンは考えていた。
リアルブルーの日本、名古屋。
議員である田中は、大手企業ビルの会議に招かれていた。
エレベーターに乗り、目的地の三階に辿り着いた時だった。
銃を持った強化人間たちに取り囲まれ、三階の会議室へと強引に引き摺り込まれた。
「よー、田中さん、あなたも世界を守るため、例のヤツ、使っちゃいな~?」
「例のヤツ? 君達、もしや、アレを使ったのか! 誰の差し金だ?!」
田中議員にも、思い当たることがあった。
イクシード・アプリの存在だ。単なる噂だと思っていたが、本当にあったのか?
「君達は、ヒトとしての尊厳も忘れてしまったのか?!」
憤る田中。
強化人間たちが、ケラケラとからかうように笑った。
そもそも強化人間たちは、自分の『力』は正義であると盲信し、自分自身が強化人間になってしまったことさえ理解していなかった。
「ソンゲン? なにそれー、美味しいの?」
「生きるためには、力が必要だよねー。あんたの親友だった畑本さんから、田中さんを連れて来いって言われてさ~」
親友の名を聞いて、田中は驚きを隠せなかった。
「畑本が……? あいつは、転移者の力を危惧していたが、それなのに、どうして?」
田中の脳裏に、畑本と互いに将来の夢について語り合った日々が思い浮かんだ。
「結局、権力に勝てなかったんじゃない? 誰だって、死ぬのは怖いもんねー」
強化人間たちが、田中を取り囲む。
田中は懸命に抵抗するが、強化人間たちに殴り飛ばされ、成す術もなく気絶した。
●
「ヒトというものは、実に興味深い……フフフ」
黒いシルクハットを被り、白い仮面を付けた男…カッツォ・ヴォイ(kz0224)は、リアルブルーの混沌とした世界に酔いしれていた。
「裏切り、裏切られ、嫉妬の炎が渦巻いている……少し揺さ振るだけで、こうも簡単に広がるとはな」
カッツォは、大手企業ビルの七階にいた。
その頃。
「周辺の住民たちは、全て避難完了。……これから、任務を遂行する」
ボディをレッドにコーティングしたR7エクスシアが一機。
OF-004は、モニター画面から周囲を確認すると、大手企業ビル一階の裏口に廻り込んだ。
●
ハンターズソサエティに、一通の手紙が届いていた。
「カッツォ・ヴォイから、予告状?」
マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)が、手紙を受け取る。
カッツォから届いた予告状には、『リアルブルーの日本、名古屋にある大手企業ビルの一つを占拠した』と書かれていた。
「……また、何を企んでいるのか」
このまま放っておく訳にはいかないと思い、マクシミリアンはハンターズソサエティの依頼として、ハンターたちを集めることにした。
●
リアルブルー、名古屋。
カッツォに指定された場所に辿り着くと、大手企業ビルの周囲にR7エクスシアが6体、行く手を阻むように立ち並んでいた。
「一機だけ、赤いエクスシア……搭乗しているは全員、強化人間らしいな」
マクシミリアンは、ビルに取り残されている議員を救出するつもりでいた。
予告状には、『尚、ビルの三階にある会議室には、一般人の議員がいる。それをどうするかは、ハンターたちに委ねよう』とも明記されていたのだ。
たとえ、罠だとしても、一般人が取り残されているならば、優先的に救助することが望ましいだろうと、マクシミリアンは考えていた。
リプレイ本文
リアルブルー、名古屋。
大手企業ビルの入口手前には、R7エクスシア5体が行く手を阻んでいた。
ミグ・ロマイヤー(ka0665)が操縦する魔導ヘリコプター「ポルックス」のバウ・キャリアーが先手を取った。
「議員を人質に取るとはな、カッツォめ」
ミグは『連結通話』を発動させた。
バウ・キャリアーが、ツインローターで飛行し、R7エクスシアの射程外まで移動していく。
オウカ・レンヴォルト(ka0301)が搭乗するのは、オファニムの夜天弐式「王牙」だ。
「ビルや仲間を巻き込まないようにせねば、な」
夜天弐式「王牙」が、眼前のR7エクスシア目掛けて駆けていく。
「沙織嬢、エクスシアは敵に廻すと厄介な相手だ。突入班のためにも、敵の布陣に穴を開けようではないか」
久我・御言(ka4137)の搭乗するコンフェッサーが『マテリアルライン』を駆使して、沙織(ka5977)が乗るR7エクスシアのエーデルワイス弐型と通信だけでなくカメラ映像も共有する。
「CAMを傷つけたくはないけど……手は抜きません!」
そう自分に言い聞かせる沙織。敵のR7エクスシアには、強化人間が乗っているという情報も聞いていた。幸い、今回の依頼は『敵のR7エクスシアを破壊する』ことだ。
沙織にとって、強化人間も同じ人間……戦うのは心苦しいが、今回の依頼では強化人間を捕えることは入っていないのが救いだった。
キヅカ・リク(ka0038)が運転する魔導トラックは、CAM対応班が戦闘を開始するまでスタンバイしていた。
トラックの荷台に、仲間のハンターたちが連れている幻獣たちを乗せ、アーク・フォーサイス(ka6568)とフィロ(ka6966)は後部座席、ジャック・エルギン(ka1522)は助手席に座っていた。
マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)は魔導バイクに騎乗して、待機していた。
ミグのバウ・キャリアーが射程を捉えると、ミサイルランチャー「アフリクシオン」を撃ちこむ。ミサイルは中央に居たR7エクスシアに命中し、ダメージを与えることにも成功した。
ミサイルランチャー「アフリクシオン」はリロードに時間がかかるため、バウ・キャリアーは『スモークカーテン』を発生させて敵を攪乱していた。
ウイングフレーム「ゲファレナー・エンゲル」を装備した夜天弐式「王牙」が、フライトシステムで飛行し、接近戦に持ち込むように右側にいたR7エクスシアの側まで移動していく。
「強化人間が『敵』として立ち回るならば、躊躇う理由はない、な」
オウカには、『彼ら』がどういう経緯でイクシード・アプリを使い、強化人間になってしまったのか、その理由までは分からなかった。簡単に正義の味方になれるからなのか、極限の状況下でやむを得ず『力』を得たのか、推論に過ぎなかった。
それでも、オウカは迷うことなく、強化人間が搭乗するR7エクスシアと戦うと自分自身で決めたのだ。ならばこそ、最初から躊躇いはないのだ。
御言は『人機一体』を発動させ、コンフェッサーがアクティブスラスターを起動……中央に居るR7エクスシアに接近していく。
エーデルワイス弐型が、アクティブスラスターを駆使してR7エクスシアの布陣を目指して、駆けていく。
R7エクスシア5体が、CAM対応班に攻撃をしかけた。バウ・キャリアーは敵が放つマテリアルライフルの射程外にいたこともあり、ダメージを受けることはなかったが、低空飛行を続けていたため、魔導ヘリコプターに搭載された二基のローターの回転により、周辺住宅のベランダに干してあった洗濯物が飛ばされていった。
すでに住民たちは避難を終えていたこともあり、それほどの被害はなかった。
御言のコンフェッサーが可変機銃「ポレモスSGS」で、R7エクスシアの刀を受け払い、沙織が搭乗するエーデルワイス弐型はマテリアルキャノン「タスラム」を発動体としたスキルトレースLv20による『攻性防壁』を発動させ、R7エクスシアの攻撃を受け止める。と同時に、光の障壁が雷撃となって、R7エクスシア1体が行動を阻害されたが、弾き飛ばすことはできなかった。
夜天弐式「王牙」に搭乗していたオウカは、赤いエクスシアの動向が気になっていたが、まずは隣接するR7エクスシアの刀を、斬艦刀「雲山」で受け止めた。
「赤いエクスシア……味方かどうか、分からんな。目的さえ分かれば、こちらも対処することができるが…さて、どう転ぶか」
オウカの呟きは、魔導短伝話を通して仲間に伝わっていた。
コンフェッサーに乗っていた御言が、魔導パイロットインカムを使用して返答した。
「赤いエクスシアは裏口に廻ったようだが、今のところ、こちらに攻撃はしかけてこない。頃合いを見て、私が接触してみよう。まずは、目の前にいるR7エクスシア5体をどうにかせねばな」
コンフェッサーの魔剣「ダインスレイフ」が『マテリアルフィスト』に包まれ、すかさず左側にいるR7エクスシアに攻撃を繰り出した。その衝撃によりマテリアルを流し込み、R7エクスシア1体に凄まじいダメージを与えていた。胴部が吹き飛び、コックピットが剥き出しになると、中にいた強化人間は狂ったように大声で笑っていた。
バウ・キャリアーの操縦席から、ミグは強化人間の様子を見ながら、R7エクスシアの脚元を狙ってプラズマランチャーで攻撃をしかける。狙いはコンフェッサーの攻撃により胴部が飛び散ったR7エクスシアだ。命中すると、コックピットから強化人間が飛び降り、その刹那、R7エクスシア1体が爆発して粉々になり、焦げた部品が周辺の道路にまで飛び散っていた。
「この期において強化人間など信じられるものではないな。意志があろうとなかろうと、いつ暴走してもおかしくはないと言えるものを信じることなどできはせぬよ」
ミグはそう言いながらも、カッツォと強化人間たちが共闘している訳ではないと推測していた。
「御言が、赤いエクスシアと対処するなら、ミグは見届けようではないか」
少しでも、救いがあるなら……。
●
リクが運転する魔導トラックはターボブーストで加速し、CAM対応班との連携により、大手企業ビルの入口まで辿り着くことができた。スモークカーテンを使って視線を遮り、その隙に移動していたのだ。
「なんとか到着できたね」
入口の前にトラックを止めるリク。
ジャックが、イェジドのフォーコと一緒にトラックから降りると、マクシミリアンと合流した。
「カッツォの野郎、予告状なんざフザけた真似しやがって。三階に議員がいることまで俺らに教えるってことは、明らかに罠だぜ。だったら、その話、乗ってやろうじゃねーの」
ユグディラと同行していたフィロが、皆に提案する。
「エレベーターは、敵の支配下にある可能性があります。少しでもリスクを避けるなら、三階まで階段で行くのはいかがでしょうか」
アークが頷く。
「議員の救出は、ルート確保も大事だからね」
ユキウサギのモチヅキが鼻を小さくヒクヒクさせて、周囲を警戒していた。
「フィロさんの言う通りだ。エレベーターは扉が閉まると密室状態だから危険だよね」
リクはそう言いながら、ビルの入口から侵入することにした。
ビルの1階を駆け抜け、2階へと続く階段付近まで進むと、光の檻が発生した。
モチヅキがワンド「雷光錫」を振り下ろして光の檻を破壊して、アークがデリンジャー「ニックス」を構え、ペイント弾を撃ちこむ。作動した罠の目印だ。
「階段を登る時も気を付けよう」
リクは光の檻に引っかかる度に、聖機剣「マグダレーネ」で罠を叩き割っていた。
「踏む程度では、壊れないか」
イェジドのフォーコは光の檻に包まれると、罠を噛み千切って壊していた。
ジャックもまた、光の檻に引っかかり、バスタードソード「アニマ・リベラ」で罠を叩きながら、少しずつ前へと進んでいった。
フィロは歩いてきたルートに、スプレーを撒いていた。
「マクシミリアン様、スプレー缶の用意、ありがとうございます」
「今回は議員の命がかかっている。こちらで用意できる物は、できるだけ使えるようにしたいからな」
マクシミリアンは日本刀を振り翳して、光の檻を破壊していた。
罠に引っかかり、軽い怪我を負ったハンターもいたため、フィロのユグディラが『森の午睡の前奏曲』を奏で、傷を癒していた。
●
3階の会議室に辿り着くと、リクは電光楽器「パラレルフォニック」を用いた『アイデアル・ソング』を発動……メロディに合わせた軽やかなステップで、床から発生した光の檻を踏み潰して先へ進むことができた。
フィロの予想通り、暴走した強化人間がいた。
「ここは、私にお任せください」
フィロが拳で殴り付けると、強化人間が気絶して倒れた。
この隙に、イェジドのフォーコが光の檻を牙で噛み千切り、破壊した。
その先にいた議員に手を差し伸べたのは、アークだ。見れば、議員は気絶していた。『破邪顕正』を使い、周囲の罠を解除するアーク。
「カッツォと遭遇する前に、議員をここから連れ出すことが先決だ」
「今のうちに議員を頼む」
ジャックの言葉に、マクシミリアンが頷き、議員を背負う。
「俺はフィロと一緒にビルから出る」
駆け出すマクシミリアン。その後を追うフィロ。
ビルの入口に辿り着いた頃、議員が目を覚ましたが、意識は朦朧としていた。
まだ互いに話ができる状態ではなかったが、フィロが議員にヒーリングポーションを飲ませると、怪我は少しだけ回復させることができた。
その頃。
ビルの外では、CAM対応班が二機目のR7エクスシアを撃破していた。
エーデルワイス弐型が『マテリアルカーテン』を展開させ、R7エクスシアが放ったマテリアルライフルの攻撃を防いでいた。
「私は赤いエクスシアと接触してみるよ」
コンフェッサーに搭乗していた御言が『ダメージコントロール』で機体の不具合を回復させ、魔導パイロットインカムを使い、仲間たちに伝えた。
通信を受信した沙織が、コンフェッサーを援護するため、R7エクスシアに立ちはだかり、エーデルワイス弐型のスキルトレースLv20による『ファイアスローワー』を噴射。
2体のR7エクスシアが炎に包まれ、ダメージを受けていた。
「久我さん、お願いします」
マテリアルラインの効果が続いていたこともあり、沙織のエーデルワイス弐型は、御言のコンフェッサーと通信が繋がっていた。
バウ・キャリアーを操縦していたミグは、敵のR7エクスシアが前へ出るのを待っていたが、敵は最初の位置からほぼ動くことはなかった。
「そっちがその気なら、ミグは射程ギリギリで攻撃をしかけてやるまでよ」
プラズマランチャーで応戦するバウ・キャリアー。左にいたR7エクスシアの胴部に攻撃が命中し、ダメージを与えることができた。
夜天弐式「王牙」に搭乗していたオウカが、スティックを握ると、機体に装備していた斬艦刀「雲山」がR7エクスシアの胴部を斬り裂いていく。R7エクスシア1体が粉々に砕け散り、その衝撃でコックピットにいた強化人間が外へと吹き飛ばされていく。落下して、地面に叩きつけられ、気を失う強化人間。
ハンターたちは、あくまでもR7エクスシアを破壊することを優先して、強化人間たちの命まで奪うような行動はしなかった。
インジェクションで補充したアクティブスラスターを駆使して、ビルの裏口に辿り着いた御言のコンフェッサーが、赤いエクスシアと対面していた。
相手からの反応がなかったため、御言はコンフェッサーの『マテリアルライン』を発動させ、通信を試みた。
「こちらはハンターの久我御言。聞こえているかね?」
『……久我か。また会うとはな。こちら、OF-004…』
赤いエクスシアに搭乗していたのは、強化人間のOF-004だった。
「久しぶりだね。クドウ君。戦友よ、カラーチェンジとは何か心境の変化でもあったのかね」
戦友と呼ばれても、そっけない声のOF-004。
『意外と黒が多いからな。単に区別するためだ』
実際、今回の依頼では、ハンター側には黒の機体がいた。
「そういうことか。それで、今回の目的だが、私たちはカッツォに捕まっている議員を救出するために来た。できれば、共闘したいのだが、どうだろう?」
御言の問いかけに、しばらくしてから応えるOF-004。
『…俺の目的は、暴走した強化人間を捕まえて確保することだ。今回は共闘できない。だが、久我たちと戦う理由もない。それぞれの目的を遂行する方が効率が良いと思う』
「……共闘はできないか。了解した。クドウ君、君の武運を祈っているよ」
そこで通信が途切れ、OF-004は赤いエクスシアのコックピットから飛び降り、地面に着地すると裏口の非常階段から三階へと向かっていた。
●
「……負のマテリアルが近づいてきているようだな」
カッツォ・ヴォイ(kz0224)は、OF-004の気配に気付き、エレベーターに乗り、七階から三階へと目指していた。
「……何か、来る……カッツォか?」
アークがエレベーターの動きに気付き、聖罰刃「ターミナー・レイ」を構え、『次元斬』を放った。目視せずとも、アークの繰り出した次元斬は、カッツォの胴部を斬り裂いていた。
エレベーターが三階に辿り着く前にアークの攻撃を喰らったカッツォは、カウンターを発動できなかった。
だが、何事もなかったかのように三階へと降り立つカッツォ。
「ほう、変わった技もあるものだな」
「カッツォ! ここから先へはいかせない!」
リクはまず防御に徹して『攻性防壁』の使用に備え、アーク、ジャックと並び、通路を占有した。
モチヅキは『雪水晶』で防御力を上げ、アークの隣に陣取ることにした。
狼牙「イフティヤージュ」を装備したイェジドのフォーコがウォークライで威嚇。
カッツォの動きを封じることはできなかったが、ジャックが身捧の腕輪による『ソウルエッジ』を発動させ、魔法剣となったバスタードソード「アニマ・リベラ」で『衝撃波』を解き放った。
カッツォの身体に衝撃が迸り、ダメージを与えると、カウンターを誘発。
狙いはジャックだ。フォーコのブロッキングさえ抜けてきたカッツォは、杖を構えてジャックにカウンターを繰り出す。
全身鎧「サーベラス」を身に纏ったジャックは反射的に『鎧受け』で杖を受け流し、目にも止まらぬ速さで『リバースエッジ』の連撃を繰り出す。鋭い一撃が、カッツォの胴部を斬り裂き、かなりのダメージを与えていた。強化された魔法剣の攻撃により、カッツォも、さらに反撃する余裕がなかった。
「カッツォ、嫉妬眷属はやめて黙示騎士の手下に鞍替えかよ?」
軽傷で済んだが、自分を奮い立たせるため、敢えて余裕のある仕草で挑発するジャック。
カッツォはどことなく悔しそうだ。
「…ジャック・エルギン、腕を上げたな。やはり捨て置けぬ」
「待て! まだ終わりじゃない!」
リクが聖機剣「マグダレーネ」を媒体とした『機導剣』が光となって出現し、カッツォの腕を狙い、攻撃をしかけた。
リクの狙いは、カッツォが持っている杖だ。
アリア・セリウスの想いも乗せて、リクの機導剣がカッツォの腕に命中……多大なダメージを受けながらも、カッツォは杖を手放さず、カウンターをしかけてきた。
リクの『攻性防壁』が発動し、光の障壁による受けを試みる。だが、カッツォは光の障壁を突き破り、手に持つ杖の先がリクの腹部を抉るように突き刺さっていた。
「キヅカ!」
ジャックの防御は間に合わなかった。先の戦闘で攻撃に集中していたこともあり、仲間の防御まで手が回らなかったのだ。
リクの腹部から杖を抜くカッツォ。
血飛沫で、リクの身体は血塗れになった。高瀬 未悠の祈りにより、リクは死の淵から救われたが、重体となり、動くだけで全身に痛みが走っていた。
「……エルギンさん、僕のことよりも、アーク君のことを……」
リクは痛みを堪えて、壁に寄り掛かった。カッツォの狙いが、OF-004だとしたら、ここで倒れる訳にはいかなかった。クリムゾンウェストの精霊たちとも約束したのだ。二つの世界を守ることを。
「すまねえ、キヅカ。次こそは、なんとしてでも食い止めてみせるからな」
ジャックは『ガウスジェイル』を発動させ、ヒーリングポーションを飲み干した。自身の怪我が回復していく。
「リクの仇、討ち取ってやる。接近戦なら、これだ」
アークは『疾風剣』で間合いを詰めてカッツォの腕を狙い、聖罰刃「ターミナー・レイ」を水平に構えて貫き斬り、『火鳥風月』の斬撃を放った。一連の攻撃は、カッツォの腕に命中してダメージを与えていたが、なかなか杖を手放さないカッツォ。
攻撃を受けた反動を活かして、カッツォがカウンターをしかけてきた。
アークを狙ったはずの杖は、ガウスジェイルに引き寄せられ、ジャックに襲い掛かる。とっさに『鎧受け』を発動させるジャック。
ガウスジェイルによって本来の標的に当たらなかった杖は、鎧の隙間を貫いてジャックの胴部に突き刺さっていた。
「ジャック?!」
アークは、敵のカウンターをユキウサギのモチヅキに任せていたが、モチヅキにはカウンターを受け止める術がなかった。
とっさの判断で、カッツォのカウンターを受け止めることができたのは、ジャックだった。
「ちっくしょ……受けが間に合わなかったぜ」
急所は免れたが、胴部にカッツォの杖が深く突き刺さり、ジャックは重体になった。懸命に立ち上がり、流れ出る血を抑えながらカッツォを睨み据えるジャック。
「さすがに、捻じ曲げてやった一撃じゃ、急所は狙えねえだろ」
フォーコはジャックを支えるように寄り添い、カッツォに対して怒りを顕にして唸り声を上げた。
カッツォは、一歩下がり、スーツの裾を整えていた。
「やはりジャック・エルギンは危険な存在……今すぐ、ここで抹殺してやる」
静かなる怒りをジャックに向けるカッツォ。
その時。
「ジャック様に何をするつもりかは知りませんが、私にもやるべきことがあります」
三階に戻っていたのは、フィロだ。
カッツォを狙い、フィロがユグディラの奏でる『森の宴の狂詩曲』によって魔法威力が上乗せされた『鎧徹し』を繰り出した。敵の反撃が来ると思いきや、『ソードブレイカー』を発動させたフィロが、カッツォの杖をソードブレイクによって封じることができた。
杖を封じられたカッツォは、反撃ができず、後方へと下がった。
「……おまえには、ただならぬ気配を感じる。何者だ?」
「私はフィロと申します。あなた様は、ジャック様を抹殺するつもりのようですが、そうはさせません」
「それは、俺だって同じだ。ジャックは命懸けで俺を守ってくれた。だったら、ここで返してやる」
アークは聖罰刃「ターミナー・レイ」を水平に構えた『疾風剣』を繰り出し、続け様、『火鳥風月』の斬撃を放った。狙いは、カッツォの腕だ。
杖を封じられたカッツォであったが、素手のカウンターを繰り出した。
アークの腹部に叩き付ける。
重い一撃だった。
だが、クラン・クィールスの想いが届き、紙一重でアークはカッツォの反撃に耐えていた。
「俺は、負けはしない。俺のことを信じてくれる仲間のためにも」
アークの決意……それは、紛れもない真実だった。
「……貴様らが、言いそうなことだな。今回は見逃してやろう」
カッツォはそう告げた後、瞬間移動で、その場から消え去った。
「モチヅキ、しっかりしろ」
モチヅキが回転に失敗して、目を回しているのに気付き、アークが駆け寄る。
リペアキット「キズナオール君」を取り出すアーク。
この薬は皮下注射で使用する……尚、箱には使った後どうなっても知らないという旨の免責文が明記されていた。
怪我は少しだけ回復したが、モチヅキは注射を見るとビクビクしていたようだ。
●
フィロがトランシーバーで通信を行うと、ビルの外にいたミグが応答した。
『こちらミグ、外のR7エクスシアは残り1体になったが、そちらの状況はどうだ?』
「議員様は無事に救出できました。現在は、マクシミリアン様が魔導トラックの側で待機し、議員様を保護しております。カッツォ・ヴォイの対応においては苦戦しましたが、追い出すことができたようです」
フィロの受け答えに、ミグが感心する。
『そちらの目的は達成できたようだな。ならば、残りのR7エクスシア1体を撃破すれば、ミッションは完了だ。後はミグたちに任せてくれ』
ミグは『神の御手「ゴッドハンドオブフェアリー」』を発動させ、バウ・キャリアーを巧みに操縦していた。
オウカが搭乗する夜天弐式「王牙」が、斬艦刀「雲山」を振るい、R7エクスシアの腕を斬り裂いた。
「マテリアルライフルを使うまでもない、か」
随時、夜天弐式「王牙」は接近戦に持ち込み、R7エクスシアと対峙していた。
沙織のエーデルワイス弐型は、スキルトレースLv20のシステムにより『デルタレイ』が出現させ、R7エクスシアが狙い撃ちされた。
「確実にR7エクスシアだけ狙い撃つなら、デルタレイです」
沙織は、敵のR7エクスシアが、マテリアルライフルを使ってビルを狙い撃ちしないように、警戒していた。その甲斐もあり、ビルが攻撃されることはなかった。
「心置きなく、止めを撃てるな」
ミグが『フーファイター』を発動させ、バウ・キャリアーがプラズマランチャーを放った。R7エクスシアの胴部に命中すると、敵の本体が吹き飛び、残骸だけが散らばっていた。
「これで、ミッション終了だな」
こうして、R7エクスシア5体を全て、破壊することができた。
その頃。
OF-004は任務が完了すると、ビルの非常階段を降りて、赤いエクスシアに乗り込んだ。
コックピットからモニター画面を確認すると、コンフェッサーの姿が見えた。
御言はコンフェッサーの『マテリアルライン』を使って再度、通信を繋いで『機導の徒』を発動させた。
以前、OF-004が乗っていた黒いエクスシアとの違いまでは分からなかった。
『……何の用だ?』
OF-004は怪訝そうな声だった。
「すまない。君の無事を確認したかっただけだ」
『……無事と言えば無事だが……おまえも変わったヤツだな。俺がコックピットから降りれば、その間に赤いエクスシアを破壊できたというのに』
「そのような卑怯なことは、私のプライドが許さないのだよ。戦友のエクスシアを破壊することなど、私にはできない」
御言がそう言うと、OF-004は微かに笑っていた。
『久我は、やはり変わったヤツだな。もっと早く、あんたのようなヒトと出会えていたら、俺も……』
そこまで言いかけてから、OF-004は操縦席のスティックを握り、赤いエクスシアが量産型フライトパックで飛行していく。
「クドウ君、カッツォ・ヴォイには気を付けたまえ。君は狙われている恐れがある」
御言の声が、マテリアルラインにより、OF-004に届く。
『……カッツォ・ヴォイか。忠告、感謝する』
赤いエクスシアが、アクティブスラスターを起動させて飛び去っていった。
その後、御言は仲間たちにOF-004との会話を報告することにした。
大手企業ビルの入口手前には、R7エクスシア5体が行く手を阻んでいた。
ミグ・ロマイヤー(ka0665)が操縦する魔導ヘリコプター「ポルックス」のバウ・キャリアーが先手を取った。
「議員を人質に取るとはな、カッツォめ」
ミグは『連結通話』を発動させた。
バウ・キャリアーが、ツインローターで飛行し、R7エクスシアの射程外まで移動していく。
オウカ・レンヴォルト(ka0301)が搭乗するのは、オファニムの夜天弐式「王牙」だ。
「ビルや仲間を巻き込まないようにせねば、な」
夜天弐式「王牙」が、眼前のR7エクスシア目掛けて駆けていく。
「沙織嬢、エクスシアは敵に廻すと厄介な相手だ。突入班のためにも、敵の布陣に穴を開けようではないか」
久我・御言(ka4137)の搭乗するコンフェッサーが『マテリアルライン』を駆使して、沙織(ka5977)が乗るR7エクスシアのエーデルワイス弐型と通信だけでなくカメラ映像も共有する。
「CAMを傷つけたくはないけど……手は抜きません!」
そう自分に言い聞かせる沙織。敵のR7エクスシアには、強化人間が乗っているという情報も聞いていた。幸い、今回の依頼は『敵のR7エクスシアを破壊する』ことだ。
沙織にとって、強化人間も同じ人間……戦うのは心苦しいが、今回の依頼では強化人間を捕えることは入っていないのが救いだった。
キヅカ・リク(ka0038)が運転する魔導トラックは、CAM対応班が戦闘を開始するまでスタンバイしていた。
トラックの荷台に、仲間のハンターたちが連れている幻獣たちを乗せ、アーク・フォーサイス(ka6568)とフィロ(ka6966)は後部座席、ジャック・エルギン(ka1522)は助手席に座っていた。
マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)は魔導バイクに騎乗して、待機していた。
ミグのバウ・キャリアーが射程を捉えると、ミサイルランチャー「アフリクシオン」を撃ちこむ。ミサイルは中央に居たR7エクスシアに命中し、ダメージを与えることにも成功した。
ミサイルランチャー「アフリクシオン」はリロードに時間がかかるため、バウ・キャリアーは『スモークカーテン』を発生させて敵を攪乱していた。
ウイングフレーム「ゲファレナー・エンゲル」を装備した夜天弐式「王牙」が、フライトシステムで飛行し、接近戦に持ち込むように右側にいたR7エクスシアの側まで移動していく。
「強化人間が『敵』として立ち回るならば、躊躇う理由はない、な」
オウカには、『彼ら』がどういう経緯でイクシード・アプリを使い、強化人間になってしまったのか、その理由までは分からなかった。簡単に正義の味方になれるからなのか、極限の状況下でやむを得ず『力』を得たのか、推論に過ぎなかった。
それでも、オウカは迷うことなく、強化人間が搭乗するR7エクスシアと戦うと自分自身で決めたのだ。ならばこそ、最初から躊躇いはないのだ。
御言は『人機一体』を発動させ、コンフェッサーがアクティブスラスターを起動……中央に居るR7エクスシアに接近していく。
エーデルワイス弐型が、アクティブスラスターを駆使してR7エクスシアの布陣を目指して、駆けていく。
R7エクスシア5体が、CAM対応班に攻撃をしかけた。バウ・キャリアーは敵が放つマテリアルライフルの射程外にいたこともあり、ダメージを受けることはなかったが、低空飛行を続けていたため、魔導ヘリコプターに搭載された二基のローターの回転により、周辺住宅のベランダに干してあった洗濯物が飛ばされていった。
すでに住民たちは避難を終えていたこともあり、それほどの被害はなかった。
御言のコンフェッサーが可変機銃「ポレモスSGS」で、R7エクスシアの刀を受け払い、沙織が搭乗するエーデルワイス弐型はマテリアルキャノン「タスラム」を発動体としたスキルトレースLv20による『攻性防壁』を発動させ、R7エクスシアの攻撃を受け止める。と同時に、光の障壁が雷撃となって、R7エクスシア1体が行動を阻害されたが、弾き飛ばすことはできなかった。
夜天弐式「王牙」に搭乗していたオウカは、赤いエクスシアの動向が気になっていたが、まずは隣接するR7エクスシアの刀を、斬艦刀「雲山」で受け止めた。
「赤いエクスシア……味方かどうか、分からんな。目的さえ分かれば、こちらも対処することができるが…さて、どう転ぶか」
オウカの呟きは、魔導短伝話を通して仲間に伝わっていた。
コンフェッサーに乗っていた御言が、魔導パイロットインカムを使用して返答した。
「赤いエクスシアは裏口に廻ったようだが、今のところ、こちらに攻撃はしかけてこない。頃合いを見て、私が接触してみよう。まずは、目の前にいるR7エクスシア5体をどうにかせねばな」
コンフェッサーの魔剣「ダインスレイフ」が『マテリアルフィスト』に包まれ、すかさず左側にいるR7エクスシアに攻撃を繰り出した。その衝撃によりマテリアルを流し込み、R7エクスシア1体に凄まじいダメージを与えていた。胴部が吹き飛び、コックピットが剥き出しになると、中にいた強化人間は狂ったように大声で笑っていた。
バウ・キャリアーの操縦席から、ミグは強化人間の様子を見ながら、R7エクスシアの脚元を狙ってプラズマランチャーで攻撃をしかける。狙いはコンフェッサーの攻撃により胴部が飛び散ったR7エクスシアだ。命中すると、コックピットから強化人間が飛び降り、その刹那、R7エクスシア1体が爆発して粉々になり、焦げた部品が周辺の道路にまで飛び散っていた。
「この期において強化人間など信じられるものではないな。意志があろうとなかろうと、いつ暴走してもおかしくはないと言えるものを信じることなどできはせぬよ」
ミグはそう言いながらも、カッツォと強化人間たちが共闘している訳ではないと推測していた。
「御言が、赤いエクスシアと対処するなら、ミグは見届けようではないか」
少しでも、救いがあるなら……。
●
リクが運転する魔導トラックはターボブーストで加速し、CAM対応班との連携により、大手企業ビルの入口まで辿り着くことができた。スモークカーテンを使って視線を遮り、その隙に移動していたのだ。
「なんとか到着できたね」
入口の前にトラックを止めるリク。
ジャックが、イェジドのフォーコと一緒にトラックから降りると、マクシミリアンと合流した。
「カッツォの野郎、予告状なんざフザけた真似しやがって。三階に議員がいることまで俺らに教えるってことは、明らかに罠だぜ。だったら、その話、乗ってやろうじゃねーの」
ユグディラと同行していたフィロが、皆に提案する。
「エレベーターは、敵の支配下にある可能性があります。少しでもリスクを避けるなら、三階まで階段で行くのはいかがでしょうか」
アークが頷く。
「議員の救出は、ルート確保も大事だからね」
ユキウサギのモチヅキが鼻を小さくヒクヒクさせて、周囲を警戒していた。
「フィロさんの言う通りだ。エレベーターは扉が閉まると密室状態だから危険だよね」
リクはそう言いながら、ビルの入口から侵入することにした。
ビルの1階を駆け抜け、2階へと続く階段付近まで進むと、光の檻が発生した。
モチヅキがワンド「雷光錫」を振り下ろして光の檻を破壊して、アークがデリンジャー「ニックス」を構え、ペイント弾を撃ちこむ。作動した罠の目印だ。
「階段を登る時も気を付けよう」
リクは光の檻に引っかかる度に、聖機剣「マグダレーネ」で罠を叩き割っていた。
「踏む程度では、壊れないか」
イェジドのフォーコは光の檻に包まれると、罠を噛み千切って壊していた。
ジャックもまた、光の檻に引っかかり、バスタードソード「アニマ・リベラ」で罠を叩きながら、少しずつ前へと進んでいった。
フィロは歩いてきたルートに、スプレーを撒いていた。
「マクシミリアン様、スプレー缶の用意、ありがとうございます」
「今回は議員の命がかかっている。こちらで用意できる物は、できるだけ使えるようにしたいからな」
マクシミリアンは日本刀を振り翳して、光の檻を破壊していた。
罠に引っかかり、軽い怪我を負ったハンターもいたため、フィロのユグディラが『森の午睡の前奏曲』を奏で、傷を癒していた。
●
3階の会議室に辿り着くと、リクは電光楽器「パラレルフォニック」を用いた『アイデアル・ソング』を発動……メロディに合わせた軽やかなステップで、床から発生した光の檻を踏み潰して先へ進むことができた。
フィロの予想通り、暴走した強化人間がいた。
「ここは、私にお任せください」
フィロが拳で殴り付けると、強化人間が気絶して倒れた。
この隙に、イェジドのフォーコが光の檻を牙で噛み千切り、破壊した。
その先にいた議員に手を差し伸べたのは、アークだ。見れば、議員は気絶していた。『破邪顕正』を使い、周囲の罠を解除するアーク。
「カッツォと遭遇する前に、議員をここから連れ出すことが先決だ」
「今のうちに議員を頼む」
ジャックの言葉に、マクシミリアンが頷き、議員を背負う。
「俺はフィロと一緒にビルから出る」
駆け出すマクシミリアン。その後を追うフィロ。
ビルの入口に辿り着いた頃、議員が目を覚ましたが、意識は朦朧としていた。
まだ互いに話ができる状態ではなかったが、フィロが議員にヒーリングポーションを飲ませると、怪我は少しだけ回復させることができた。
その頃。
ビルの外では、CAM対応班が二機目のR7エクスシアを撃破していた。
エーデルワイス弐型が『マテリアルカーテン』を展開させ、R7エクスシアが放ったマテリアルライフルの攻撃を防いでいた。
「私は赤いエクスシアと接触してみるよ」
コンフェッサーに搭乗していた御言が『ダメージコントロール』で機体の不具合を回復させ、魔導パイロットインカムを使い、仲間たちに伝えた。
通信を受信した沙織が、コンフェッサーを援護するため、R7エクスシアに立ちはだかり、エーデルワイス弐型のスキルトレースLv20による『ファイアスローワー』を噴射。
2体のR7エクスシアが炎に包まれ、ダメージを受けていた。
「久我さん、お願いします」
マテリアルラインの効果が続いていたこともあり、沙織のエーデルワイス弐型は、御言のコンフェッサーと通信が繋がっていた。
バウ・キャリアーを操縦していたミグは、敵のR7エクスシアが前へ出るのを待っていたが、敵は最初の位置からほぼ動くことはなかった。
「そっちがその気なら、ミグは射程ギリギリで攻撃をしかけてやるまでよ」
プラズマランチャーで応戦するバウ・キャリアー。左にいたR7エクスシアの胴部に攻撃が命中し、ダメージを与えることができた。
夜天弐式「王牙」に搭乗していたオウカが、スティックを握ると、機体に装備していた斬艦刀「雲山」がR7エクスシアの胴部を斬り裂いていく。R7エクスシア1体が粉々に砕け散り、その衝撃でコックピットにいた強化人間が外へと吹き飛ばされていく。落下して、地面に叩きつけられ、気を失う強化人間。
ハンターたちは、あくまでもR7エクスシアを破壊することを優先して、強化人間たちの命まで奪うような行動はしなかった。
インジェクションで補充したアクティブスラスターを駆使して、ビルの裏口に辿り着いた御言のコンフェッサーが、赤いエクスシアと対面していた。
相手からの反応がなかったため、御言はコンフェッサーの『マテリアルライン』を発動させ、通信を試みた。
「こちらはハンターの久我御言。聞こえているかね?」
『……久我か。また会うとはな。こちら、OF-004…』
赤いエクスシアに搭乗していたのは、強化人間のOF-004だった。
「久しぶりだね。クドウ君。戦友よ、カラーチェンジとは何か心境の変化でもあったのかね」
戦友と呼ばれても、そっけない声のOF-004。
『意外と黒が多いからな。単に区別するためだ』
実際、今回の依頼では、ハンター側には黒の機体がいた。
「そういうことか。それで、今回の目的だが、私たちはカッツォに捕まっている議員を救出するために来た。できれば、共闘したいのだが、どうだろう?」
御言の問いかけに、しばらくしてから応えるOF-004。
『…俺の目的は、暴走した強化人間を捕まえて確保することだ。今回は共闘できない。だが、久我たちと戦う理由もない。それぞれの目的を遂行する方が効率が良いと思う』
「……共闘はできないか。了解した。クドウ君、君の武運を祈っているよ」
そこで通信が途切れ、OF-004は赤いエクスシアのコックピットから飛び降り、地面に着地すると裏口の非常階段から三階へと向かっていた。
●
「……負のマテリアルが近づいてきているようだな」
カッツォ・ヴォイ(kz0224)は、OF-004の気配に気付き、エレベーターに乗り、七階から三階へと目指していた。
「……何か、来る……カッツォか?」
アークがエレベーターの動きに気付き、聖罰刃「ターミナー・レイ」を構え、『次元斬』を放った。目視せずとも、アークの繰り出した次元斬は、カッツォの胴部を斬り裂いていた。
エレベーターが三階に辿り着く前にアークの攻撃を喰らったカッツォは、カウンターを発動できなかった。
だが、何事もなかったかのように三階へと降り立つカッツォ。
「ほう、変わった技もあるものだな」
「カッツォ! ここから先へはいかせない!」
リクはまず防御に徹して『攻性防壁』の使用に備え、アーク、ジャックと並び、通路を占有した。
モチヅキは『雪水晶』で防御力を上げ、アークの隣に陣取ることにした。
狼牙「イフティヤージュ」を装備したイェジドのフォーコがウォークライで威嚇。
カッツォの動きを封じることはできなかったが、ジャックが身捧の腕輪による『ソウルエッジ』を発動させ、魔法剣となったバスタードソード「アニマ・リベラ」で『衝撃波』を解き放った。
カッツォの身体に衝撃が迸り、ダメージを与えると、カウンターを誘発。
狙いはジャックだ。フォーコのブロッキングさえ抜けてきたカッツォは、杖を構えてジャックにカウンターを繰り出す。
全身鎧「サーベラス」を身に纏ったジャックは反射的に『鎧受け』で杖を受け流し、目にも止まらぬ速さで『リバースエッジ』の連撃を繰り出す。鋭い一撃が、カッツォの胴部を斬り裂き、かなりのダメージを与えていた。強化された魔法剣の攻撃により、カッツォも、さらに反撃する余裕がなかった。
「カッツォ、嫉妬眷属はやめて黙示騎士の手下に鞍替えかよ?」
軽傷で済んだが、自分を奮い立たせるため、敢えて余裕のある仕草で挑発するジャック。
カッツォはどことなく悔しそうだ。
「…ジャック・エルギン、腕を上げたな。やはり捨て置けぬ」
「待て! まだ終わりじゃない!」
リクが聖機剣「マグダレーネ」を媒体とした『機導剣』が光となって出現し、カッツォの腕を狙い、攻撃をしかけた。
リクの狙いは、カッツォが持っている杖だ。
アリア・セリウスの想いも乗せて、リクの機導剣がカッツォの腕に命中……多大なダメージを受けながらも、カッツォは杖を手放さず、カウンターをしかけてきた。
リクの『攻性防壁』が発動し、光の障壁による受けを試みる。だが、カッツォは光の障壁を突き破り、手に持つ杖の先がリクの腹部を抉るように突き刺さっていた。
「キヅカ!」
ジャックの防御は間に合わなかった。先の戦闘で攻撃に集中していたこともあり、仲間の防御まで手が回らなかったのだ。
リクの腹部から杖を抜くカッツォ。
血飛沫で、リクの身体は血塗れになった。高瀬 未悠の祈りにより、リクは死の淵から救われたが、重体となり、動くだけで全身に痛みが走っていた。
「……エルギンさん、僕のことよりも、アーク君のことを……」
リクは痛みを堪えて、壁に寄り掛かった。カッツォの狙いが、OF-004だとしたら、ここで倒れる訳にはいかなかった。クリムゾンウェストの精霊たちとも約束したのだ。二つの世界を守ることを。
「すまねえ、キヅカ。次こそは、なんとしてでも食い止めてみせるからな」
ジャックは『ガウスジェイル』を発動させ、ヒーリングポーションを飲み干した。自身の怪我が回復していく。
「リクの仇、討ち取ってやる。接近戦なら、これだ」
アークは『疾風剣』で間合いを詰めてカッツォの腕を狙い、聖罰刃「ターミナー・レイ」を水平に構えて貫き斬り、『火鳥風月』の斬撃を放った。一連の攻撃は、カッツォの腕に命中してダメージを与えていたが、なかなか杖を手放さないカッツォ。
攻撃を受けた反動を活かして、カッツォがカウンターをしかけてきた。
アークを狙ったはずの杖は、ガウスジェイルに引き寄せられ、ジャックに襲い掛かる。とっさに『鎧受け』を発動させるジャック。
ガウスジェイルによって本来の標的に当たらなかった杖は、鎧の隙間を貫いてジャックの胴部に突き刺さっていた。
「ジャック?!」
アークは、敵のカウンターをユキウサギのモチヅキに任せていたが、モチヅキにはカウンターを受け止める術がなかった。
とっさの判断で、カッツォのカウンターを受け止めることができたのは、ジャックだった。
「ちっくしょ……受けが間に合わなかったぜ」
急所は免れたが、胴部にカッツォの杖が深く突き刺さり、ジャックは重体になった。懸命に立ち上がり、流れ出る血を抑えながらカッツォを睨み据えるジャック。
「さすがに、捻じ曲げてやった一撃じゃ、急所は狙えねえだろ」
フォーコはジャックを支えるように寄り添い、カッツォに対して怒りを顕にして唸り声を上げた。
カッツォは、一歩下がり、スーツの裾を整えていた。
「やはりジャック・エルギンは危険な存在……今すぐ、ここで抹殺してやる」
静かなる怒りをジャックに向けるカッツォ。
その時。
「ジャック様に何をするつもりかは知りませんが、私にもやるべきことがあります」
三階に戻っていたのは、フィロだ。
カッツォを狙い、フィロがユグディラの奏でる『森の宴の狂詩曲』によって魔法威力が上乗せされた『鎧徹し』を繰り出した。敵の反撃が来ると思いきや、『ソードブレイカー』を発動させたフィロが、カッツォの杖をソードブレイクによって封じることができた。
杖を封じられたカッツォは、反撃ができず、後方へと下がった。
「……おまえには、ただならぬ気配を感じる。何者だ?」
「私はフィロと申します。あなた様は、ジャック様を抹殺するつもりのようですが、そうはさせません」
「それは、俺だって同じだ。ジャックは命懸けで俺を守ってくれた。だったら、ここで返してやる」
アークは聖罰刃「ターミナー・レイ」を水平に構えた『疾風剣』を繰り出し、続け様、『火鳥風月』の斬撃を放った。狙いは、カッツォの腕だ。
杖を封じられたカッツォであったが、素手のカウンターを繰り出した。
アークの腹部に叩き付ける。
重い一撃だった。
だが、クラン・クィールスの想いが届き、紙一重でアークはカッツォの反撃に耐えていた。
「俺は、負けはしない。俺のことを信じてくれる仲間のためにも」
アークの決意……それは、紛れもない真実だった。
「……貴様らが、言いそうなことだな。今回は見逃してやろう」
カッツォはそう告げた後、瞬間移動で、その場から消え去った。
「モチヅキ、しっかりしろ」
モチヅキが回転に失敗して、目を回しているのに気付き、アークが駆け寄る。
リペアキット「キズナオール君」を取り出すアーク。
この薬は皮下注射で使用する……尚、箱には使った後どうなっても知らないという旨の免責文が明記されていた。
怪我は少しだけ回復したが、モチヅキは注射を見るとビクビクしていたようだ。
●
フィロがトランシーバーで通信を行うと、ビルの外にいたミグが応答した。
『こちらミグ、外のR7エクスシアは残り1体になったが、そちらの状況はどうだ?』
「議員様は無事に救出できました。現在は、マクシミリアン様が魔導トラックの側で待機し、議員様を保護しております。カッツォ・ヴォイの対応においては苦戦しましたが、追い出すことができたようです」
フィロの受け答えに、ミグが感心する。
『そちらの目的は達成できたようだな。ならば、残りのR7エクスシア1体を撃破すれば、ミッションは完了だ。後はミグたちに任せてくれ』
ミグは『神の御手「ゴッドハンドオブフェアリー」』を発動させ、バウ・キャリアーを巧みに操縦していた。
オウカが搭乗する夜天弐式「王牙」が、斬艦刀「雲山」を振るい、R7エクスシアの腕を斬り裂いた。
「マテリアルライフルを使うまでもない、か」
随時、夜天弐式「王牙」は接近戦に持ち込み、R7エクスシアと対峙していた。
沙織のエーデルワイス弐型は、スキルトレースLv20のシステムにより『デルタレイ』が出現させ、R7エクスシアが狙い撃ちされた。
「確実にR7エクスシアだけ狙い撃つなら、デルタレイです」
沙織は、敵のR7エクスシアが、マテリアルライフルを使ってビルを狙い撃ちしないように、警戒していた。その甲斐もあり、ビルが攻撃されることはなかった。
「心置きなく、止めを撃てるな」
ミグが『フーファイター』を発動させ、バウ・キャリアーがプラズマランチャーを放った。R7エクスシアの胴部に命中すると、敵の本体が吹き飛び、残骸だけが散らばっていた。
「これで、ミッション終了だな」
こうして、R7エクスシア5体を全て、破壊することができた。
その頃。
OF-004は任務が完了すると、ビルの非常階段を降りて、赤いエクスシアに乗り込んだ。
コックピットからモニター画面を確認すると、コンフェッサーの姿が見えた。
御言はコンフェッサーの『マテリアルライン』を使って再度、通信を繋いで『機導の徒』を発動させた。
以前、OF-004が乗っていた黒いエクスシアとの違いまでは分からなかった。
『……何の用だ?』
OF-004は怪訝そうな声だった。
「すまない。君の無事を確認したかっただけだ」
『……無事と言えば無事だが……おまえも変わったヤツだな。俺がコックピットから降りれば、その間に赤いエクスシアを破壊できたというのに』
「そのような卑怯なことは、私のプライドが許さないのだよ。戦友のエクスシアを破壊することなど、私にはできない」
御言がそう言うと、OF-004は微かに笑っていた。
『久我は、やはり変わったヤツだな。もっと早く、あんたのようなヒトと出会えていたら、俺も……』
そこまで言いかけてから、OF-004は操縦席のスティックを握り、赤いエクスシアが量産型フライトパックで飛行していく。
「クドウ君、カッツォ・ヴォイには気を付けたまえ。君は狙われている恐れがある」
御言の声が、マテリアルラインにより、OF-004に届く。
『……カッツォ・ヴォイか。忠告、感謝する』
赤いエクスシアが、アクティブスラスターを起動させて飛び去っていった。
その後、御言は仲間たちにOF-004との会話を報告することにした。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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相談卓 鬼塚 陸(ka0038) 人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2018/08/28 06:32:59 |
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質問卓 ジャック・エルギン(ka1522) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/08/24 11:27:54 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/08/23 18:05:49 |