時間稼ぎお願いします!

マスター:三田村 薫

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
締切
2018/09/01 22:00
完成日
2018/09/07 00:04

みんなの思い出? もっと見る

nori

オープニング

●生きてる人間が一番怖いじゃないですか
「僕はいつまで徳を積めば良いのだろうか」
 昼下がりのハンターオフィスにて。ラフな格好をしているオフィス職員は、資料で顔を扇ぎながらぼんやりと呟いた。最近事件に巻き込まれてついていない彼は、ボランティアなどで徳を積もうと目論んでいるのである。目論む時点で徳は無効になるのではないか? そんな哲学的倫理的宗教的疑問も覚えなくはないがここでは割愛する。
「ほら、そうやって仕事道具で涼んでるから徳ポイントが下がるんですぅ」
 お下げに眼鏡の職員が唇を尖らせる。
「でもさぁ、思ったんだよね。いくら徳積んだって、巻き込まれるときは巻き込まれる」
「開き直らないでくださぁい」
「大体、歪虚ならどうしようもないけど、普通の人間ならもうちょっとどうにか出来ると思わない?」
「殺し屋にでもなるんですかぁ?」
「ならねぇよ。何言ってんだ」
 青年は呆れた顔で相手を見返した。
「護身術を習いたいよね」
「護身術ですか」
 それを聞きつけたのは二人の司祭だった。一人はこの前、ボランティアを斡旋してくれた亜麻色の髪のアルトゥーロ。もう一人は鉄面皮で赤毛のヴィルジーリオだ。馬に乗るアルトゥーロは聖導士であることもあって常に司祭服だが、バイクで移動する魔術師のヴィルジーリオは車輪に巻き込むから、と言ってオフィスには大体ライダースーツで現れる。自分の町では当然司祭服だそうだ。
「徳を積むのはやめたんですか?」
 アルトゥーロがにっこりと微笑んで見せると、青年職員は慌てた。
「そんなことない。徳は積むよ。でもさぁ、旅行先で突然一般人に囲まれて、だったら突破出来た方が良くない?」
「格闘技なら彼が得意です」
 そう言って、ヴィルジーリオを指す。ヴィルジーリオは眉を上げた
「得意と言うか……アルトゥーロが優しすぎるだけじゃないんですか?」
「はは、嬉しいね。まあ、彼は僕を含めた同期から格闘士を選ぶと思われていた程度には近接戦闘が得意ですよ。この前も春郷祭で喧嘩の仲裁に入ったんでしょう? 関節技で」
「関節技を使えば大抵の人間は大人しくなるので……あ、勿論いつもは使いませんよ」
「当たり前だ」

●手加減してくれない男
 眼鏡の職員が、まあとりあえず軽くジャブでも打って受け止めてもらったら、と勧めるので、空いたスペースに移動した。
「私は覚醒者ですから、あなたが本気でかかってきてもそんな大怪我をすることはありません。ひとまず私を、あなたを拘束して売り飛ばそうとする悪辣商人と思って打ってきなさい」
「何その具体的な設定……調子狂うなぁ」
「護身術が必要な状況とは、大体が調子が狂っているときですよ。さ、どうぞ」
「わかったよ……とりゃ!」
 職員は渾身の右ストレートを放った。仮に、彼に恋人がいたとして、その浮気相手をぶん殴るには十分なパンチだ。が、しかし。
「遅い!」
「当たり前でしょ!? いだだだだだ!!!」
 あっさりヴィルジーリオに取られてねじ上げられる。
「あなたを拘束しようとする相手にとって、あなたが接近してくるのはまたとないチャンスでもあります。立ち向かうとはそういうことです。必ずしも良いことではない。リアクションをするとは、自分と相手を何かしらで繋ぐ行為です。マジックアローだって、弾道を辿れば使い手に行き着きますよ」
「わかっ……! わかったから! 離して!!!!」
「失礼」
 ヴィルジーリオはそっと手を離した。職員はうち捨てられたカエルの様にべしゃっと床に倒れ伏す。
「あ、ありがとう……参考になったよ……もう良いから……」
「いえ、私は請けた依頼が終わったところなので。まだ帰らなくても大丈夫です。お相手しますよ。さ、次の手は?」
 職員はアルトゥーロを見上げた。司祭コンビの優しい方はにっこりと笑って、言った。
「これも神の御心。甘受するものまた徳を積むと言うものですよ」

●ハンドアウト
 あなたたちは、オフィスに依頼を探しに来たハンターです。何か良い依頼はないものか、と貼り出された依頼を物色しています。
 と、そこに、慌てた様子で青年オフィス職員がやって来ました。彼の事を、あなたはよく知っているか、顔とか声くらいは知っているか、全く知らないか。いずれにせよ、職員が慌てているのだから話くらいは聞いてみよう、とあなたたちは思います。
「助けて! 何気なく護身術やりたいって言ったらやべーのが来たんだよ!!! 教えてくれるって言うけどあいつ一人に相手されたら身体がバラバラになっちゃう! 君たちで時間とってできるだけあいつの時間短くして!」
 何を言ってるんだお前は。

リプレイ本文

●開幕ゴング
 ちょっと失礼! と叫んで席を立った職員が、ハンターをぞろぞろと六人も連れて帰って来たのを見て、二人の司祭は顔を見合わせた。先頭にいたのはディーナ・フェルミ(ka5843)。彼女はおかんむりだ。
「エクラの司祭で善意に溢れぬ者はいないの。人と争うことはある、それでも歪虚を退け人を守るのがエクラの司祭の本懐。ヴィルジーリオ司祭、善意はエクラの司祭の免罪符にはならないの」
「善意が免罪符にならないのは司祭に限ったことではありません」
「ディーナ……?」
 職員が不安げに二人を見る。アルトゥーロもカップを置いて立ち上がった。自分のメイスを持つ司祭を、ディーナは視線で押しとどめる。
「御心配なく、アルトゥーロ司祭。ヴィルジーリオ司祭にはその身でエクラさまの御威光を味わっていただくだけです。言葉を尽くすより、体験する方が深い理解を得られましょう。どうぞ貴方の本気を、ヴィルジーリオ司祭。エクラさまの御許に到達する栄誉を、一瞬だけ味あわせて差し上げます」
「何か誤解があるようですが、体験する方が深い理解を得られると言うのには同意します」
「あのう……」
 職員が何か言おうとしたその時だった。ディーナが動いた。エンジェルフェザーを用いて、翼の幻覚を呼び起こす。赤毛の司祭が身構えるのに、素早く肉薄した。オフィス内で攻撃魔法を使うことを避けた司祭は、アースウォールを立てる。
 その壁を、ディーナはフォースクラッシュでぶち抜いた。

 詳しくは紙幅の都合で割愛するが、最終的にフォースクラッシュをまともに食らったヴィルジーリオは倫理コードに引っかかりそうな有様になった。が、当のディーナのリザレクションとフルリカバリーで綺麗さっぱり復活する。
「何ですか今の……」
「おはようございます、ヴィルジーリオ司祭。エクラさまに一瞬拝謁する機会とエクラさまの御業に四つも触れる機会がありましたが、使えるようになりましたか?」
 ぽかん、としているヴィルジーリオの顔を見て、ディーナは厳かに頷く。
「精進すれば貴方もすぐに届きますが、それは今ではない。何事ももっとゆっくり段階を踏まねばならないということです」
「それに関しては同意いたします」
「何!? 何なの!? 僕が悪いの!?」
「まあまあ、落ち着けって。ひとまず無事だからさ」
 後ろでは騒いでいる職員が歩夢(ka5975)たちに宥められていた。

●命あっての物種
「何故護身でサブミッションを選ぶ。逃げられなくなるではないか」
 椅子を跨いで座り、背凭れに顎乗せていたルベーノ・バルバライン(ka6752)が、騒然としたその場を収めた。立ち上がって居住まいを正すと、手を叩いて注意を惹いたのだ。
「そこまでだ。ところで名前は?」
「僕? 皆C.J.って呼ぶから君もそう呼んでくれると嬉しいな」
「C.J.か。男ゆえ自力で危機を脱したいという心根は分かる。一対一なら関節技が最強になれるのも間違いではない。しかしな、本当に危機を脱する方法を会得したいならば今それをやることに意味はない。腕を押さえこまれ痛みを与えられると萎縮し余計動けなくなるだけだ」
「うーん、まあ、そうかもしれないけど」
「一対一でお前を害そうという者は大通りのコソ泥くらいだ。例え一ヶ月分の給料が入っていようが盗まれたら喜捨したと思え。その位の期間なら俺が養ってやる」
「リアルブルーで流行りのスパダリじゃん」
「茶化すな」
「はぁい」
「これ見よがしにお前を追わせようという素振りを見せた者は絶対追ってはいかん。それはな、大勢で待ち受けてお前を殺そうとする者だからだ」
「あー……うん、そうだね。追い掛けたわけじゃないけど、覚えはあるよ……うん……」
 遠い目をしながら、C.J.は続きを促した。
「素人は暴力に慣れた者と一対一で対面したら絶対勝てん。相手は痛みと恐怖で獲物がどうしたら動けなくなるか知っているからだ。そしてそうやって他者を害そうという者は効率的にそれを行うために徒党を組む。格闘巧者であっても一対多に勝つのは難しい。相手はお前が死んでも構わんと思って襲ってくるのだ。中途半端な反撃をすれば確実に殺されるぞ」
「うん……」
「銃を持ち、相手を殺す気はないのだろう?」
「そりゃあ、もちろん」
「ならば逃げ方を学べ。叫んで他者を巻き込め。どんな時でも叫べる体力と胆力を養え。火事でも野太い女言葉でも構わん、人目を集めろ。お前が師事すべきはアルトゥーロだ」
「えっ、僕ですか」
 突然名前を出されたアルトゥーロはきょとんとして目を瞬かせる。
「僕は誤フォースクラッシュでヴィルジーリオの肋骨を折ったことが」
「誤フォースクラッシュ?」
「敵も赤毛だったので慌てて間違えました」
「初めてじゃないんですよ、フォースクラッシュで大怪我するの」
「その時はフルリカバリー使えなくてヒール何回も掛けたね」
 C.J.はもうそれ以上は聞かずに、ルベーノを見上げた。
「ありがとね。ちょっと頭が冷えた。複数に囲まれて怖い思いをしたことはある。のど元過ぎて熱さを忘れたみたいだ」
「うん。わかったなら良い。後は……誤フォースクラッシュの教訓を彼から聞け」
「そうする」
 彼は肩を竦めた。
「立ち向かうにも、気を配るところが多そうだ」

●選んだ道と腕相撲
 夢路 まよい(ka1328)は司祭の傍に歩み寄ると傍の椅子に腰掛けた。
「関節技掛けたくてうずうずしてるかなって思ったけど、なんかもうそんな気力ないって感じだね」
「ええ、体力は回復しましたが、少々疲れました」
「死の淵をさまよったからね」
「でもさ、関節技が有効なら、ヴィルジーリオが掛けるんじゃなくて、C.J.が掛けないと意味ないんじゃない?」
「ああ……」
 彼は顔を覆った。
「そう。そうですね……彼の護身術ならこちらから打った際の話ですよね……順序が逆でした……立ち向かうとこう言う反撃を食らいますよ、と言う話をしたかったんですが……」
 誰かを拘束しようとする相手にとって、その人が接近してくるのはまたとないチャンスでもある。
「つい興が乗ってしまいまして……」
 ウキウキして関節技を披露していたら人を呼ばれてしまった、と言うわけだ。
「なぁんだ!」
 まよいはけらけらと笑った。それで一瞬とは言え重傷を負っていれば世話はない。
「マジックアローだってどこから来たか、くらいはわかるじゃないですか……」
「うんうん、そうだね」
「でもだからと言って関節技で痛い目を見せるのは違うと思うの……」
 ディーナが眉間に皺を寄せて苦言を呈した。
「ええ、それに関しては反省しております」
「ところで、ヴィルジーリオって魔術師としてはどれくらいなの?」
「近い内エクステンドキャストが使えたら良いですね、くらいですかね」
「そっか。一般人の鎮圧するときは?」
「スリープクラウド一択ですね」
「だよねぇ」
「雑魔ならファイアーボール投げれば早めに蹴りがつきます」
「魔術師に馴染んでらっしゃいますが、格闘士の道を進もうとはまったく思わなかったんですか?」
 同じように傍らで話を聞いていたレオン(ka5108)が尋ねた。彼もまた、聖職者であるが闘狩人をメインクラスにしている。
「ええ。格闘士も大変魅力的ではありましたが、そもそも私は同盟の生まれなんですよ。魔術師教会がありましたから、クラスとしては魔術師の方に馴染みがありましてね」
「格闘技はどう言う境遇で?」
「聖堂は駆け込み寺にもなり得る。たとえば暴漢から。そう思った時に習いました。ハンターになるよりも前のことです。助祭の頃でした」
「そうでしたか。僕も神父という道を悩んだ事もあったけれど、幼い頃から共に覚醒者でもあった両親の背中、それに何より母の親友で騎士である師に憧れてしまったから……」
「それで闘狩人なのね」
「メインクラスはやっぱり馴染みのあるものになりますよね」
「近くにいる人の影響って大きそうだよね」
 三人が頷いた。レオンは微笑む。かつて憧れた師、今は隣にいる恋人である女性を思い浮かべて。
 とても強く、凛々しく、でも時に儚げに感じる師。彼女を守りたいと幼い日に誓った事は今でも覚えている……。
「ところでさ」
 まよいはヴィルジーリオの前に椅子を持ってきた。
「私とあなたって腕相撲したらどっちが強いと思う? 私も結構筋力あるんだけど」
「どうでしょう。二人とも魔術師ですし……とは言えあなたの方がハンターとしては練度が高いでしょうが……読めないですね。相手になってくださいますか」
「良いよ。本当は関節技掛けてみたいんだけどね」
「今日は勘弁してください」
「じゃあ、僕がレフェリーをやりますね」
 レオンが言うと、二人はカウンターに移動して手を組み合わせた。レオンはその組んだ手に自分の掌を当てる。
「良いですか? 用意……はいっ!」

●吟遊詩人のハッタリと誇り
「まあ、殺したくはないだろうけど、銃は持っといても良いんじゃないの?」
 話を聞いてメモを取りながら、歩夢が言った。
「人がより楽に何かを成し遂げられるようにこそいろんな道具が生まれたんだ。なら、それを利用しない手もないだろう? 専門でもないならなおさらさ。そういう時代なんだし」
「えっ、でも銃持ってても、いざとなった時に撃てるかな?」
 C.J.は不安そうだ。歩夢は首を横に振る。
「撃てなくたって良いんだよ。武器を示せば実力はどうあれ、相手は躊躇する。慣れないもんを使うのは危険ってのは同じでも、使わない方向で行くんならハッタリにはなるだろう。武器を持ってると知ってひるんでくれたなら後は一直線に逃げればいいわけだしな」
「ハッタリ……」
「要するに余計なトラブルを回避できれば良いわけだろう? なら逃げを打つのはいいじゃないか」
「むう……君の言いたいことはわかるしそれが順当だとは思うけど」
 C.J.は口を尖らせた。歩夢はその様子を見て、ぽん、とその肩を叩く。
「悔しいって気持ちはあるのかも知れないけれど、戦うコトで食ってくプロになりたい訳じゃなんだろう?」
「うーん、お恥ずかしながら覚醒者の適性もないんだよなぁ」
「なら自分の仕事に支障がでないようにするのがプロだと俺は思うぜ。誇りは自分の仕事にこそ持つべきだろう」
 歩夢はそう言って、ニカッと笑って見せた。
「腕っ節なんざ二の次さ。わかりやすい依頼の解説、期待してるぜ」
「それは任せて。今日のお礼としておつりが来るくらいの説明をしてあげよう。ありがとね」

●三十六計逃げるに如かず
 多田野一数(ka7110)はハンター業を半年ほど休んでいて、これが復帰後一号らしい。復帰早々におかしなことに巻き込んじゃったなぁ、とC.J.は内心申し訳なく思い始めているが、一数としては、護身の話をするのもカンを取り戻すのに適していると思ってくれているようだ。
「護身の話をすれば良いのか」
「うん」
「俺なら大声で助けを呼び、距離を取る事に専念して隙見て全速力で逃げるかな。ルベーノさんや歩夢さんも言ってたけど。ていうか、今回俺たちに助けてって言いに来たみたいにすれば良いんだよ」
「だって、それはヴィルジーリオがタンマ! って言ったら待っててくれる奴だから」
「だったら、タンマのかわりに手近な物を相手の顔めがけてぶん投げて、怯んだ隙に一目散に逃げるとかな。日頃から投擲に向いた日用品を持ち歩くと役に立つだろう。小銭とかでも良いし」
「もったいない……」
「それこそルベーノさんの言ってたとおり、喜捨だと思うしかない。あとは……懐中電灯辺りは役立つかもな。光で目潰しもでき、鈍器にも投擲物にもなる」
「おお……」
 C.J.は普段あまり気に留めずに使っていた日用品が、俄然武器としての輝きを帯びてきたことに感激したようだ。
「何かが入った鞄は盾として優秀か。この道具は使えるなと。日頃から目を付けると活用出来るかもしれん。だからと言って詰め込んでたらいざと言うときに使えないけどな」
「探すのも大変だしね」
「あと投げる時だけど、目狙いの投擲は効く。大抵の人間は反射的に目を瞑るし足が止まる」
「虫が目に飛んでくると、反射的に目をつぶって壁にぶつかるとかあるしね」
「そうそう」
 一数は頷いた。果たして、前髪で目を覆った彼はどれくらい目への投擲に怯むんだろうか。もしかして彼の前髪は頑丈なんだろうか。覚醒すると強くなるんだろうか。
「……一数って、覚醒すると何か変わったりする?」
「ん? いや、特に変化はないと思うけど」
 特別な前髪と言うわけではないらしい。
「近距離になるほど致命傷を受ける可能性が高まる。兎に角距離を離したい。至近に接近されたら死を覚悟して、目や股間の急所を躊躇せず狙い抵抗するかな。運良く隙が出来たら全力で逃げる」
「ああ……」
 接近されればそれだけ手数が増える。確かに、距離を取るのが一番賢い。抵抗しなくて済むのが一番良いのだ。
「『咄嗟に出来る簡単な方法』を駆使して、『逃げる』ことを考えた方が良いと俺も思う」
 そう言って、一数はルベーノと歩夢を見た。向こうでは、まよいに腕相撲でねじ伏せられてレオンにカウントを取られているヴィルジーリオが見えた。関節技以外はあんまり強くないんだろうか。
「ああなったら終わりってこと?」
「カウント取られるくらいだとなぁ」
「まよいはなかなかの手練れと見えるな」
 歩夢とルベーノも興味深そうに見ている。一数が話を戻す。
「ただの人間でも、特に武装と殺意を持って襲いかかってくる奴は、素人でも自分より格上だと思った方が良い。素人の刃が武術の達人を殺す事もある。歪虚じゃなくても人は殺せる」
「そうだね……」
「人間を殺せるという点において人間の暴漢も歪虚も同じ」
 止めに入った警察官や軍人が、刺されたり殴られたりして死亡する事例はいくらでもある。訓練されていてもそういうことはある。
「だから逃げ延びれば勝ちだと俺は思う。速く走る練習を勧めたい」
「それならできそう」
「集団に囲まれたらという前提はその時点でアウト。自分が一手打つ毎に敵は四手も五手も動く。無理だ」
「村ぐるみで拘束されたことがある。無理だった」
「だろうね。人通りの多い所を歩く、ヤバイ場所に行かない、夜は出歩かない、覚醒者の護衛を付ける。予防が一番だ」
「ん……ありがとう。もし護衛を頼むときは君も来てくれると嬉しいな」

●即興詩
 赤の司祭に薔薇が咲き
 白の淑女が雨降らす
 鎧の男は声授け
 逃げる誰かの道示す
 幾千万の闇超えて
 夢の迷い路後に見る
 獅子の心を胸に抱き
 歩き続けたその先に
 人の数だけ光あれ

「ま、こんなもんかね」
 歩夢は帳面を閉じた。ディーナが、
「やりすぎた場合法の裁きを受けるのもまた当然……縛り首は回避されるよう証言をお願いするの」
 そう言いながらヴィルジーリオを引っ張っていくのを、C.J.が必死になって引き留めているのが見えた。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 13
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 死者へ捧ぐ楽しき祈り
    レオン(ka5108
    人間(紅)|16才|男性|闘狩人
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 真実を照らし出す光
    歩夢(ka5975
    人間(紅)|20才|男性|符術師
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士

  • 多田野一数(ka7110
    人間(蒼)|16才|男性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/09/01 09:06:29
アイコン 相談卓
多田野一数(ka7110
人間(リアルブルー)|16才|男性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
2018/09/01 09:21:24