ゲスト
(ka0000)
【幻痛】千年の王国
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 不明
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~4人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/08/29 19:00
- 完成日
- 2018/09/01 18:21
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
怠惰王ビックマー討伐作戦『ベアーレヤクト』が展開中の辺境において、比較的穏やかな場所がある。
そこはある精霊の住む場所であり、波風さえ立てなければ普通の森と変わらない。
しかし、この森は一晩にして辺境の地へ現出したものであり、ここに住む幻獣達もよその幻獣とはどことなく違う。
人に干渉しない。
観測者でありながら、気紛れに人間と関わりを持つ。
まるで猫のような性格とも言える勇気の精霊――イクタサ(kz0246)は、ビックマーを巡る戦いを傍観者として見つめていた。
強大な力に対抗する術は既に人間達へ伝えている。対怠惰の感染用結界があれば、十分なはずだ。
これ以上の関与は、更なる歪虚の能力を引き出す事になる。
世の中のバランスを考えれば、この辺りがちょうど良い。
何事も欲張って良い事は何一つない。塩梅が重要だ。
――だが。
「ボクの所へ来てもこれ以上は何もないよ」
イクタサはシンタチャシの小屋でうんざり顔であった。
対ビックマーを意識したハンター達が新たなる情報を求めてイクタサの元を訪れていたのだ。
イクタサからすれば、シンタチャシで静かに過ごしたい。
しかし、歪虚と戦い続けるハンター達からすれば少しでも戦いを有利にしたい。
双方の願望が、絡み合いながらも負の感情を呼び起こしていく。
「そんな事を言わずに。ここで少しでもガツンと歪虚を叩いておいた方が……」
「ファリフさんも参加するのですから、もう少し手を貸していただいても良いと思います」
ハンターの口からファリフ――ファリフ・スコール(kz0009)の名前が出た瞬間、イクタサの眉が上がる。
お気に入りのファリフが戦いに関与している。
万一ファリフが傷付くような事があれば……。
しかし、イクタサは必死に感情を押し殺す。
「だ、だから? ファリフはファリフで頑張っているのだから、ボクが手を貸さなくても大丈夫でしょ」
「頑張りますね……」
既に数十分は続く攻防。
双方が一歩も退かない状況であり、誰の目からみても膠着状態に陥っていた。
「あのね、キミ達……」
そう言い掛けた瞬間、イクタサは立ち上がる。
そして、ドアに向けて鋭い視線を送る。
「どうされました?」
「キミ達以外にこの森へ足を踏み入れた者がいるね。それも招かれざる客。以前にも似た感覚があった。確か、コーリアスって歪虚が来た時だね」
錬金の到達者――コーリアス(kz0245)。
歪虚でありながら、不遜にもシンタチャシのイクタサへ会いに来た。
既にコーリアスはリアルブルーにて撃破されている。
怠惰もビックマーに従って南下している以上、一体誰がシンタチャシへ足を踏み入れたというのか。
ハンターは意を決して小屋の扉を開く。
そこには――。
「天使達が出迎えですか。言っておきますが、そこの精霊に頼っても終末の到来は避けられませんよ」
「ブラッドリー……!」
神の御遣いを名乗るブラッドリー(kz0252)が、そこに立っていた。
ブラッドリーの周りには複数の光球。臨戦態勢、というには少々雰囲気が異なるようだ。
「何しにきたの? ボクを相手にする気にしては随分余裕そうだけど」
「天での戦いをで引き起こし、あなたを地底へ投げ落とすつもりはありません」
相変わらずブラッドリーの言葉が分かりにくい。
どうやら、イクタサの顔を見に来たらしい。その目的は皆目不明だが、この場で戦うつもりはないようだ。
「面倒そうだなぁ、キミ」
「古代の残滓を引き出して抗うよう手を貸したのはあなたでしょう? 言っておきますが、そのような事をしても終末は止められません。終末は到来する運命なのです」
「大体、古代文明の遺物はあの時代の者が後世を心配して残した物じゃないかな。少なくとも歪虚に指示される謂われはないよ」
ブラッドリーはイクタサと会話する事で、相手を知ろうとしているようだ。
だが、それ以外にも何か目的があるようにも見える。
イクタサはさっさと追い出したいようだが、この状況はハンターにとっても重要な機会だ。
ブラッドリーと呼ばれる歪虚が一体何を考えているのか。
もしかしたら、ブラッドリーから何か情報を引き出せるかもしれない。
そう考えたハンターの一人がブラッドリーの声をかける。
「あ、あの……戦う気がないなら、椅子に座りませんか? その方が落ち着いてお話できるでしょう?」
そこはある精霊の住む場所であり、波風さえ立てなければ普通の森と変わらない。
しかし、この森は一晩にして辺境の地へ現出したものであり、ここに住む幻獣達もよその幻獣とはどことなく違う。
人に干渉しない。
観測者でありながら、気紛れに人間と関わりを持つ。
まるで猫のような性格とも言える勇気の精霊――イクタサ(kz0246)は、ビックマーを巡る戦いを傍観者として見つめていた。
強大な力に対抗する術は既に人間達へ伝えている。対怠惰の感染用結界があれば、十分なはずだ。
これ以上の関与は、更なる歪虚の能力を引き出す事になる。
世の中のバランスを考えれば、この辺りがちょうど良い。
何事も欲張って良い事は何一つない。塩梅が重要だ。
――だが。
「ボクの所へ来てもこれ以上は何もないよ」
イクタサはシンタチャシの小屋でうんざり顔であった。
対ビックマーを意識したハンター達が新たなる情報を求めてイクタサの元を訪れていたのだ。
イクタサからすれば、シンタチャシで静かに過ごしたい。
しかし、歪虚と戦い続けるハンター達からすれば少しでも戦いを有利にしたい。
双方の願望が、絡み合いながらも負の感情を呼び起こしていく。
「そんな事を言わずに。ここで少しでもガツンと歪虚を叩いておいた方が……」
「ファリフさんも参加するのですから、もう少し手を貸していただいても良いと思います」
ハンターの口からファリフ――ファリフ・スコール(kz0009)の名前が出た瞬間、イクタサの眉が上がる。
お気に入りのファリフが戦いに関与している。
万一ファリフが傷付くような事があれば……。
しかし、イクタサは必死に感情を押し殺す。
「だ、だから? ファリフはファリフで頑張っているのだから、ボクが手を貸さなくても大丈夫でしょ」
「頑張りますね……」
既に数十分は続く攻防。
双方が一歩も退かない状況であり、誰の目からみても膠着状態に陥っていた。
「あのね、キミ達……」
そう言い掛けた瞬間、イクタサは立ち上がる。
そして、ドアに向けて鋭い視線を送る。
「どうされました?」
「キミ達以外にこの森へ足を踏み入れた者がいるね。それも招かれざる客。以前にも似た感覚があった。確か、コーリアスって歪虚が来た時だね」
錬金の到達者――コーリアス(kz0245)。
歪虚でありながら、不遜にもシンタチャシのイクタサへ会いに来た。
既にコーリアスはリアルブルーにて撃破されている。
怠惰もビックマーに従って南下している以上、一体誰がシンタチャシへ足を踏み入れたというのか。
ハンターは意を決して小屋の扉を開く。
そこには――。
「天使達が出迎えですか。言っておきますが、そこの精霊に頼っても終末の到来は避けられませんよ」
「ブラッドリー……!」
神の御遣いを名乗るブラッドリー(kz0252)が、そこに立っていた。
ブラッドリーの周りには複数の光球。臨戦態勢、というには少々雰囲気が異なるようだ。
「何しにきたの? ボクを相手にする気にしては随分余裕そうだけど」
「天での戦いをで引き起こし、あなたを地底へ投げ落とすつもりはありません」
相変わらずブラッドリーの言葉が分かりにくい。
どうやら、イクタサの顔を見に来たらしい。その目的は皆目不明だが、この場で戦うつもりはないようだ。
「面倒そうだなぁ、キミ」
「古代の残滓を引き出して抗うよう手を貸したのはあなたでしょう? 言っておきますが、そのような事をしても終末は止められません。終末は到来する運命なのです」
「大体、古代文明の遺物はあの時代の者が後世を心配して残した物じゃないかな。少なくとも歪虚に指示される謂われはないよ」
ブラッドリーはイクタサと会話する事で、相手を知ろうとしているようだ。
だが、それ以外にも何か目的があるようにも見える。
イクタサはさっさと追い出したいようだが、この状況はハンターにとっても重要な機会だ。
ブラッドリーと呼ばれる歪虚が一体何を考えているのか。
もしかしたら、ブラッドリーから何か情報を引き出せるかもしれない。
そう考えたハンターの一人がブラッドリーの声をかける。
「あ、あの……戦う気がないなら、椅子に座りませんか? その方が落ち着いてお話できるでしょう?」
リプレイ本文
「言の葉を交わしましょう。その交わりが新たなる世界を開く扉となります」
『神の御遣い』ブラッドリー(kz0252)は、両手を広げて出会いを讃える。
争う気はないようだが、相手は歪虚。何を仕掛けて来るかは分からない。
偶然にも同席したハンタ-達は、招かれざる客に警戒を怠らない。
――だが。
「わふーー!!」
ブラッドリーの姿を目視した瞬間、アルマ・A・エインズワース(ka4901)はブラッドリーへ走り出した。
一気に走り、間合いが徐々に縮まっていく。
アルマの顔にはブラッドリーを警戒する気配は無い。むしろ、歓喜に満ちた笑顔である。
「ドリーさん、ですーー! ……へぶっ!」
わんこタックルでブラッドリーへ抱きつこうとするアルマ。
しかし、ブラッドリーの体に手が届く寸前で、ブラッドリーはアルマに向かって光の盾を形成。わんこタックルを光の盾で防いでしまった。
光の盾に顔面から衝突したアルマ。痛みで思わず手で顔を押さえてしまう。
「毎回同じ行動をしていれば、学習します。駄犬さん」
「ううう、酷いですぅ……」
再会を喜ぶ表現であるわんこタックルをあっさり光の盾で防がれ、やや哀しい面持ちのアルマ。
一方、ブラッドリーの方はイクタサ(kz0246)の周囲にいるハンターへ視線を移す。
「駄犬さん以外にラッパを吹く天使達の姿がありましたか。あなた方も懺悔を?」
「懺悔? ……私、神道だから宗派違うんだけどなぁ」
七夜・真夕(ka3977)は、目の前に現れたブラッドリーへの対応に苦慮していた。
リアルブルーでも同様の宗教は存在するが、歪虚であるブラッドリーが同じ宗教とは限らない。そもそも真夕の信仰はまったく別の宗教。おそらく宗教論をぶつけても平行線を辿って終わるに違いない。
「神道? それは何でしょう?
異なる神を崇めるとは……嘆かわしい。我が神が唯一にして絶対の存在である事に気付かず、裁きの時を待つ罪人よ」
「言っている事が分からないのだけど……」
「確か、ブラッドリーって東方や北方で布教活動してた勤勉な牧師様っすね。辺境にも布教に来たっすか?」
臆する事無くブラッドリーに話し掛ける神楽(ka2032)。
報告書でもブラッドリーの目撃情報は確認されている。詩天では鬼哭組を、北方ではアルフォンソに接触して契約者を増やしたとされている。
「今度は辺境でも契約者を増やして手駒にするっすか?」
「私は神を崇める改宗した信者を増やしているに過ぎません。この世界に溢れる悲しみや苦しみを、人々から救っています」
「えーっと……」
神楽もブラッドリーの発言を理解するのに一苦労しているようだ。
おそらくブラッドリーからすれば契約者を増やしているのではなく、ブラッドリーが信じる神に仕えているに過ぎないという事なのだろう。力を欲する者を契約者にしているだけで、仲間を増やす意図とは異なるようだ。
「どうやら、話をしなければ帰る気は無いって感じかな。ボクの小屋は集会所じゃないのに……」
イクタサはブツブツと愚痴を呟きながら、ハンターとブラッドリーを小屋へと招き入れる。
静かに暮らしたいイクタサのようだが、数多い来訪者に少し疲れ気味のようにも見える。
そんな中、雨を告げる鳥(ka6258)は歩みだそうとするブラッドリーの前に立ちはだかる。
「大地に盃を溢し、終末を呼び込む天使の一人ですか」
「私は完成させる。パズルのピースは既に揃っているはずだ」
雨を告げる鳥には、一つの推論が組み上がっていた。
これが正しいか否か。それを確かめるのに、この二人の接触は好都合だ。
誤っているならそれでもいい。その誤りは確実に正解へと一歩近付ける。
見つめるべきは真実であり、その真実の先に道標がある。
「それも選択の一つ。その選択が神の怒りを招く事があると知りなさい」
ブラッドリーは、雨を告げる鳥の脇を通り抜け小屋の中へと入っていく。
古代文明を知る歪虚の背を雨を告げる鳥は黙って見つめていた。
●
「ドリーさんも飲むですー。僕が淹れてたげるです!」
既にお茶会を行うつもりだったのか、アルマは小屋にあるテーブルに準備していたお茶を並べ始める。
紅茶「ジェオルジの風」、ハーブティー「リスペルン」、さらには牛乳やオアシスの天然水 、天然蜂蜜まで持ち込んでの本格的なお茶会であった。もしかしたらアルマは最初からイクタサとお茶を飲むつもりだったのかもしれない。
「いえ、結構。神は私が天使からの施しを受ける事を嫌うでしょうから」
「わう、残念ですー。イクタサさんは飲んでくれるです?」
軽く小首を傾げてイクタサを見つめるアルマ。
正直、茶を飲んで落ち着く気分でもないイクタサであったがここで飲まなければアルマが小屋で大騒ぎする予感があった。
軽くため息をついた後、イクタサはティーカップに口をつける。
「美味しいです?」
「あ、ああ」
「わーい、喜んでもらえたですー」
歪虚と精霊が緊張感を持って接触する中、アルマは一人脳天気に喜んでいる。
しかし、このお茶のおかげでハンター達も落ち着いて話を切り出し易くなったのは事実だ。一呼吸を置いた後、一人一人が考えを述べやすくなった。
最初に話し掛けたのは真夕であった。
「さっき『終末は到来する運命』って言ってたわね」
「はい。終末は訪れます。それは神の裁き。天使であるあなた方が選択した結果なのです」
「それよそれ。大体さ。避けられない避けられないっていうけど、なんで貴方にはそんな事が分かるの? やってみなくちゃ分からないじゃない?
それに天使? 精霊に頼ってもラッパを吹き鳴らすのを避けられないなら何に頼れって? 諦めろ、なんてつまらない事を言いに来たのかしら」
真夕はブラッドリーに問いかけを繰り返す。
反論を重ねて根拠を問う事でブラッドリーの目的を探りだそうというのだ。これも答えを導き出す作戦である。
これでブラッドリーを精神的に揺さぶれるなら尚更良いのだが……。
「終末は来ます」
はっきりと断言するブラッドリー。
「はっきり断言するわね」
「私が神の声に耳を傾け、終末へ誘っています。そしてその甲斐もあり、終末には順調に近づいています。すべての苦しみから解放される楽園……フロンティア。私達は終末の先にある楽園へ還るのです」
ブラッドリーは真夕にそう告げた。
ブラッドリー自身が終末と呼ばれるものに向かうよう準備をしていたというのだ。それであれば先日ビックマーとの戦いで乱入した意図も終末に向かわせる為なのかもしれない。
「天使っていうのは?」
「あなた方です。世界は選択の連続であり、神はその選択を見ておられます。あなた方がラッパを吹き鳴らせして騎士を助ければ、終末へ確実にやってくるでしょう」
「それって……つまり私達が終末を呼ぶ何かをするって事?」
真夕の言葉にブラッドリーは大きく頷いた。
思い返してみるが、真夕には皆目見当がつかない。
ただ、イクタサの元へやってきたのは終末へ導く為と考えるのが自然だろう。少なくともブラッドリーの目的は終末を引き起こす事なのだから。
「最後に聞かせて欲しいな、ブラッドリー。貴方にとっての神って、何?」
「絶対にして唯一の存在。私達の父です。父に祈りを捧げる喜びを知りなさい」
「…………」
真夕は、ブラッドリーに向けられる視線から目を背けた。
●
神楽が話を振ったのはイクタサであった。
「一つイクタサ様にお聞きしたいんすけど、イクタサ様はいつまで俺達を見守っていくつもりでしょうかっす?」
神楽は以前の報告書でイクタサが人間達を見守っていたという情報を手に入れていた。
クリムゾンウェストの大精霊の一部と言っても差し支えない四大精霊の一人だ。
イクタサが人間を見守っているのは庇護するべき存在だからなのだろう。だが、神楽からすれば見守られている間に人間は大きく力をつけた。
「俺達はここ数年で相当の力を付けたっす。イクタサ様達精霊やトマーゾや白龍様達龍の力を借りたとはいえ、歪虚王も何体か倒したっすし、大精霊様と一戦交えて説得にも成功したっす。
これでもまだ見守る存在っすか? 後どれだけ力を付けたら、アンタは俺達と一緒に戦ってくれるっす? 後どれだけ試練をこなしたらアンタは俺達を対等の戦友と認めてくれるっす?」
神楽は思いの丈をイクタサにぶつけた。
既にハンター達は複数の世界を移動して様々な経験を積んできた。強くなるだけじゃない。悲しい別れも、嬉しい出会いも経験して精神的な成長がそこにあった。
もう見守られるだけの存在じゃない。一緒に戦う戦友であるべきではないか。
「ボクもさ。そりゃ手は貸したいよ。ファリフが『あれが欲しい』と言えば準備してあげるし、ファリフが『あそこに行きたい』と言えば連れて行ってあげるし、ファリフが……」
「ファリフの事はいいっす。だったら助けてくれればいいっすよ」
「でもね。ボクの力を使うという事は、それだけこの地に影響を与えるって事。そしてその影響の分だけ歪虚もこの地に影響を与えられる」
あくまでもイクタサ個人の考えだ、と前置きをしてイクタサは話し始めた。
イクタサは四大精霊。ある程度の事象は実現可能だ。
だが、その力を使った分だけ、反動のように歪虚側も負のマテリアルを使って力を行使する。
「力を使いすぎれば正負の理は崩壊する。もしボクがキミ達と共に戦うとするなら、それは歪虚側が大きな力を行使した時。その時こそ、ボクはキミ達を助ける為に力を使う事ができるんだ」
「そういうもんっすか」
神楽は何となくだが理解した。
考えてみればイクタサの力は強すぎる。その力を当てにすれば際限なく求め続けるかもしれない。それは元々あった世界を破壊しかねない危険な行為である。
だが、ここでブラッドリーがそっと囁く。
「ですが、既に天使達はあなたの手を離れる程強くなりました。そう思いませんか?」
「…………」
ブラッドリーの言葉にイクタサは黙って耳を傾ける。
「それ程の力を持った人間は危険ではありませんか?」
「そんな! そんな事、絶対にさせない。そんな未来は絶対にないわ。私達がさせない。少しでも良い未来を選びたいから、大切な人の笑顔を取りこぼさない様に必死なだけ」
真夕はブラッドリーの言葉を即座に否定する。
イクタサが助けてくれるなら、それはありがたい。
だが、助力を過剰に期待するつもりはない。
「天使達は選択をします。その選択を誤ればニガヨモギの味、身を持って知る事に……」
「ドリーさん、いきなり要求だけぽいってしようとしてるように見えるです。お行儀悪いです」
何かを感じ取ったのだろうか、今度はアルマが口を出した。
「お行儀……」
「わぅ。ドリーさん風に言うと自由な風を縛ってはいけない、です。どこに吹こうと、それは風の勝手ですー」
アルマが言いたいのは、ブラッドリーの言う事をイクタサが聞く必要は無いという事だ。
どんなに言い分を並べてもそれを決めるのはイクタサ。
真夕の言い分とブラッドリーの言い分。
どちらの言い分を信じるかはイクタサ次第である。
「ま、そういう事だね。どっちを信じるかなんて、分かりきってるけどね」
イクタサは静かにカップの中に注がれた紅茶に口を付けた。
●
「私は考察する。ブラッドリーが先に述べた戦いで述べた言葉を。終末の獣は騎士が甲冑を脱ぎ捨てた姿だと告げた。
遺跡に残されていた古代技術。
ニュークロウス。
ラメトク。
ピリカ。
これらはすべて幻獣に関わるものだ。
私達はラッパ吹き。それならば、騎士とは幻獣の事を指していると考えられる」
雨を告げる鳥は自らが立てた推論を述べていた。
チュプ大神殿に眠っていた古代技術はすべて幻獣に絡むものだ。ならば、ブラッドリーの言っていた騎士が幻獣である可能性は捨てきれない。
ブラッドリーは興味深そうに話に耳を傾ける。
「それで?」
「私は推測する。今この瞬間にブラッドリーが接触してきた理由。
それは本来であればラメトクの力によってビックマーと戦うのは、大幻獣トリシュヴァーナであったはず。
ラメトクによって注がれた正のマテリアルと膨大な負のマテリアルにミタされた戦場。
トリシュヴァーナが抱いていた歪虚への強い恨み。
この二つを利用して騎士たるトリシュヴァーナを終末へ導こうとした。
しかし、その役目がチューダに変わってしまった。
これは私達だけではなく、ブラッドリーにとっても不測の事態となった。
故に。更なる不確定要素を増やさないようイクタサの介入を防ぎたいのではないか」
雨を告げる鳥の推理では、騎士である幻獣はファリフ・スコールを認めた大幻獣トリシュヴァーナ。
ブラッドリーはラメトクでトリシュヴァーナを巨大化させてビックマーと衝突させる事で終末を引き起こそうとしていた。トリシュヴァーナが抱く歪虚への恨みは強い。正のマテリアルを持ちながら負の感情を抱く幻獣。
しかし、不測の事態でラメトクはチューダを巨大化させた。
これは終末に至る流れを壊しかねない。その為、更なる不確定要素を増やさぬよう精霊のイクタサ介入を防ぎたいのではないか。そう考えたのだ。
「仮に真実だとすれば、幻獣を友とするファリフ・スコールの想いに影を落とす事だろう。
さて、ブラッドリー。神の御遣いを名乗る者よ。
預言書を手にするならば、到来するという終末について今こそ語る時ではないか」
追い詰める雨を告げる鳥。
だが、ブラッドリーから告げられるのはまったく予想外の言葉であった。
「素晴らしい。素晴らしい推測です。
ですが、真実はもっとシンプルです」
「違うのか?」
「騎士はあなたも知る別の者です。己の願望を強く抱く故に、終末を導く引き金を引く。天使達はその騎士を手伝う。その結果、終末はこの地に現れるのです。
知の天使。あなたの考えは答えに限りなく近い。ですが、まだパズルを解く鍵が足りません」
「……足りない?」
ブラッドリーは、はっきりと言った。
この謎を解く鍵を、まだ雨を告げる鳥は手に入れていないと。
「その鍵は間もなく示されるでしょう。天使達がラッパを吹き鳴らし、騎士の願望が達せられた時。終末は、この地に訪れるのです」
雨を告げる鳥は再び思案する。
どの鍵が足りないのか。
だが、考えてもピースは埋まらない。
「ねぇ。もういいかい? ボクはもうキミの話を聞く気はないんだけど」
うんざりとした様子でイクタサは声を上げる。
その声に怒気が含まれている事をブラッドリーは感じ取った。
「いいでしょう。私も終末に向けての準備、つまり収穫をしなければなりません。騎士の元へ向かいます。それが、神の望みですから」
ブラッドリーは、小屋を後にする。
新たなる謎を並べ、騎士の元へと消えていく。
『神の御遣い』ブラッドリー(kz0252)は、両手を広げて出会いを讃える。
争う気はないようだが、相手は歪虚。何を仕掛けて来るかは分からない。
偶然にも同席したハンタ-達は、招かれざる客に警戒を怠らない。
――だが。
「わふーー!!」
ブラッドリーの姿を目視した瞬間、アルマ・A・エインズワース(ka4901)はブラッドリーへ走り出した。
一気に走り、間合いが徐々に縮まっていく。
アルマの顔にはブラッドリーを警戒する気配は無い。むしろ、歓喜に満ちた笑顔である。
「ドリーさん、ですーー! ……へぶっ!」
わんこタックルでブラッドリーへ抱きつこうとするアルマ。
しかし、ブラッドリーの体に手が届く寸前で、ブラッドリーはアルマに向かって光の盾を形成。わんこタックルを光の盾で防いでしまった。
光の盾に顔面から衝突したアルマ。痛みで思わず手で顔を押さえてしまう。
「毎回同じ行動をしていれば、学習します。駄犬さん」
「ううう、酷いですぅ……」
再会を喜ぶ表現であるわんこタックルをあっさり光の盾で防がれ、やや哀しい面持ちのアルマ。
一方、ブラッドリーの方はイクタサ(kz0246)の周囲にいるハンターへ視線を移す。
「駄犬さん以外にラッパを吹く天使達の姿がありましたか。あなた方も懺悔を?」
「懺悔? ……私、神道だから宗派違うんだけどなぁ」
七夜・真夕(ka3977)は、目の前に現れたブラッドリーへの対応に苦慮していた。
リアルブルーでも同様の宗教は存在するが、歪虚であるブラッドリーが同じ宗教とは限らない。そもそも真夕の信仰はまったく別の宗教。おそらく宗教論をぶつけても平行線を辿って終わるに違いない。
「神道? それは何でしょう?
異なる神を崇めるとは……嘆かわしい。我が神が唯一にして絶対の存在である事に気付かず、裁きの時を待つ罪人よ」
「言っている事が分からないのだけど……」
「確か、ブラッドリーって東方や北方で布教活動してた勤勉な牧師様っすね。辺境にも布教に来たっすか?」
臆する事無くブラッドリーに話し掛ける神楽(ka2032)。
報告書でもブラッドリーの目撃情報は確認されている。詩天では鬼哭組を、北方ではアルフォンソに接触して契約者を増やしたとされている。
「今度は辺境でも契約者を増やして手駒にするっすか?」
「私は神を崇める改宗した信者を増やしているに過ぎません。この世界に溢れる悲しみや苦しみを、人々から救っています」
「えーっと……」
神楽もブラッドリーの発言を理解するのに一苦労しているようだ。
おそらくブラッドリーからすれば契約者を増やしているのではなく、ブラッドリーが信じる神に仕えているに過ぎないという事なのだろう。力を欲する者を契約者にしているだけで、仲間を増やす意図とは異なるようだ。
「どうやら、話をしなければ帰る気は無いって感じかな。ボクの小屋は集会所じゃないのに……」
イクタサはブツブツと愚痴を呟きながら、ハンターとブラッドリーを小屋へと招き入れる。
静かに暮らしたいイクタサのようだが、数多い来訪者に少し疲れ気味のようにも見える。
そんな中、雨を告げる鳥(ka6258)は歩みだそうとするブラッドリーの前に立ちはだかる。
「大地に盃を溢し、終末を呼び込む天使の一人ですか」
「私は完成させる。パズルのピースは既に揃っているはずだ」
雨を告げる鳥には、一つの推論が組み上がっていた。
これが正しいか否か。それを確かめるのに、この二人の接触は好都合だ。
誤っているならそれでもいい。その誤りは確実に正解へと一歩近付ける。
見つめるべきは真実であり、その真実の先に道標がある。
「それも選択の一つ。その選択が神の怒りを招く事があると知りなさい」
ブラッドリーは、雨を告げる鳥の脇を通り抜け小屋の中へと入っていく。
古代文明を知る歪虚の背を雨を告げる鳥は黙って見つめていた。
●
「ドリーさんも飲むですー。僕が淹れてたげるです!」
既にお茶会を行うつもりだったのか、アルマは小屋にあるテーブルに準備していたお茶を並べ始める。
紅茶「ジェオルジの風」、ハーブティー「リスペルン」、さらには牛乳やオアシスの天然水 、天然蜂蜜まで持ち込んでの本格的なお茶会であった。もしかしたらアルマは最初からイクタサとお茶を飲むつもりだったのかもしれない。
「いえ、結構。神は私が天使からの施しを受ける事を嫌うでしょうから」
「わう、残念ですー。イクタサさんは飲んでくれるです?」
軽く小首を傾げてイクタサを見つめるアルマ。
正直、茶を飲んで落ち着く気分でもないイクタサであったがここで飲まなければアルマが小屋で大騒ぎする予感があった。
軽くため息をついた後、イクタサはティーカップに口をつける。
「美味しいです?」
「あ、ああ」
「わーい、喜んでもらえたですー」
歪虚と精霊が緊張感を持って接触する中、アルマは一人脳天気に喜んでいる。
しかし、このお茶のおかげでハンター達も落ち着いて話を切り出し易くなったのは事実だ。一呼吸を置いた後、一人一人が考えを述べやすくなった。
最初に話し掛けたのは真夕であった。
「さっき『終末は到来する運命』って言ってたわね」
「はい。終末は訪れます。それは神の裁き。天使であるあなた方が選択した結果なのです」
「それよそれ。大体さ。避けられない避けられないっていうけど、なんで貴方にはそんな事が分かるの? やってみなくちゃ分からないじゃない?
それに天使? 精霊に頼ってもラッパを吹き鳴らすのを避けられないなら何に頼れって? 諦めろ、なんてつまらない事を言いに来たのかしら」
真夕はブラッドリーに問いかけを繰り返す。
反論を重ねて根拠を問う事でブラッドリーの目的を探りだそうというのだ。これも答えを導き出す作戦である。
これでブラッドリーを精神的に揺さぶれるなら尚更良いのだが……。
「終末は来ます」
はっきりと断言するブラッドリー。
「はっきり断言するわね」
「私が神の声に耳を傾け、終末へ誘っています。そしてその甲斐もあり、終末には順調に近づいています。すべての苦しみから解放される楽園……フロンティア。私達は終末の先にある楽園へ還るのです」
ブラッドリーは真夕にそう告げた。
ブラッドリー自身が終末と呼ばれるものに向かうよう準備をしていたというのだ。それであれば先日ビックマーとの戦いで乱入した意図も終末に向かわせる為なのかもしれない。
「天使っていうのは?」
「あなた方です。世界は選択の連続であり、神はその選択を見ておられます。あなた方がラッパを吹き鳴らせして騎士を助ければ、終末へ確実にやってくるでしょう」
「それって……つまり私達が終末を呼ぶ何かをするって事?」
真夕の言葉にブラッドリーは大きく頷いた。
思い返してみるが、真夕には皆目見当がつかない。
ただ、イクタサの元へやってきたのは終末へ導く為と考えるのが自然だろう。少なくともブラッドリーの目的は終末を引き起こす事なのだから。
「最後に聞かせて欲しいな、ブラッドリー。貴方にとっての神って、何?」
「絶対にして唯一の存在。私達の父です。父に祈りを捧げる喜びを知りなさい」
「…………」
真夕は、ブラッドリーに向けられる視線から目を背けた。
●
神楽が話を振ったのはイクタサであった。
「一つイクタサ様にお聞きしたいんすけど、イクタサ様はいつまで俺達を見守っていくつもりでしょうかっす?」
神楽は以前の報告書でイクタサが人間達を見守っていたという情報を手に入れていた。
クリムゾンウェストの大精霊の一部と言っても差し支えない四大精霊の一人だ。
イクタサが人間を見守っているのは庇護するべき存在だからなのだろう。だが、神楽からすれば見守られている間に人間は大きく力をつけた。
「俺達はここ数年で相当の力を付けたっす。イクタサ様達精霊やトマーゾや白龍様達龍の力を借りたとはいえ、歪虚王も何体か倒したっすし、大精霊様と一戦交えて説得にも成功したっす。
これでもまだ見守る存在っすか? 後どれだけ力を付けたら、アンタは俺達と一緒に戦ってくれるっす? 後どれだけ試練をこなしたらアンタは俺達を対等の戦友と認めてくれるっす?」
神楽は思いの丈をイクタサにぶつけた。
既にハンター達は複数の世界を移動して様々な経験を積んできた。強くなるだけじゃない。悲しい別れも、嬉しい出会いも経験して精神的な成長がそこにあった。
もう見守られるだけの存在じゃない。一緒に戦う戦友であるべきではないか。
「ボクもさ。そりゃ手は貸したいよ。ファリフが『あれが欲しい』と言えば準備してあげるし、ファリフが『あそこに行きたい』と言えば連れて行ってあげるし、ファリフが……」
「ファリフの事はいいっす。だったら助けてくれればいいっすよ」
「でもね。ボクの力を使うという事は、それだけこの地に影響を与えるって事。そしてその影響の分だけ歪虚もこの地に影響を与えられる」
あくまでもイクタサ個人の考えだ、と前置きをしてイクタサは話し始めた。
イクタサは四大精霊。ある程度の事象は実現可能だ。
だが、その力を使った分だけ、反動のように歪虚側も負のマテリアルを使って力を行使する。
「力を使いすぎれば正負の理は崩壊する。もしボクがキミ達と共に戦うとするなら、それは歪虚側が大きな力を行使した時。その時こそ、ボクはキミ達を助ける為に力を使う事ができるんだ」
「そういうもんっすか」
神楽は何となくだが理解した。
考えてみればイクタサの力は強すぎる。その力を当てにすれば際限なく求め続けるかもしれない。それは元々あった世界を破壊しかねない危険な行為である。
だが、ここでブラッドリーがそっと囁く。
「ですが、既に天使達はあなたの手を離れる程強くなりました。そう思いませんか?」
「…………」
ブラッドリーの言葉にイクタサは黙って耳を傾ける。
「それ程の力を持った人間は危険ではありませんか?」
「そんな! そんな事、絶対にさせない。そんな未来は絶対にないわ。私達がさせない。少しでも良い未来を選びたいから、大切な人の笑顔を取りこぼさない様に必死なだけ」
真夕はブラッドリーの言葉を即座に否定する。
イクタサが助けてくれるなら、それはありがたい。
だが、助力を過剰に期待するつもりはない。
「天使達は選択をします。その選択を誤ればニガヨモギの味、身を持って知る事に……」
「ドリーさん、いきなり要求だけぽいってしようとしてるように見えるです。お行儀悪いです」
何かを感じ取ったのだろうか、今度はアルマが口を出した。
「お行儀……」
「わぅ。ドリーさん風に言うと自由な風を縛ってはいけない、です。どこに吹こうと、それは風の勝手ですー」
アルマが言いたいのは、ブラッドリーの言う事をイクタサが聞く必要は無いという事だ。
どんなに言い分を並べてもそれを決めるのはイクタサ。
真夕の言い分とブラッドリーの言い分。
どちらの言い分を信じるかはイクタサ次第である。
「ま、そういう事だね。どっちを信じるかなんて、分かりきってるけどね」
イクタサは静かにカップの中に注がれた紅茶に口を付けた。
●
「私は考察する。ブラッドリーが先に述べた戦いで述べた言葉を。終末の獣は騎士が甲冑を脱ぎ捨てた姿だと告げた。
遺跡に残されていた古代技術。
ニュークロウス。
ラメトク。
ピリカ。
これらはすべて幻獣に関わるものだ。
私達はラッパ吹き。それならば、騎士とは幻獣の事を指していると考えられる」
雨を告げる鳥は自らが立てた推論を述べていた。
チュプ大神殿に眠っていた古代技術はすべて幻獣に絡むものだ。ならば、ブラッドリーの言っていた騎士が幻獣である可能性は捨てきれない。
ブラッドリーは興味深そうに話に耳を傾ける。
「それで?」
「私は推測する。今この瞬間にブラッドリーが接触してきた理由。
それは本来であればラメトクの力によってビックマーと戦うのは、大幻獣トリシュヴァーナであったはず。
ラメトクによって注がれた正のマテリアルと膨大な負のマテリアルにミタされた戦場。
トリシュヴァーナが抱いていた歪虚への強い恨み。
この二つを利用して騎士たるトリシュヴァーナを終末へ導こうとした。
しかし、その役目がチューダに変わってしまった。
これは私達だけではなく、ブラッドリーにとっても不測の事態となった。
故に。更なる不確定要素を増やさないようイクタサの介入を防ぎたいのではないか」
雨を告げる鳥の推理では、騎士である幻獣はファリフ・スコールを認めた大幻獣トリシュヴァーナ。
ブラッドリーはラメトクでトリシュヴァーナを巨大化させてビックマーと衝突させる事で終末を引き起こそうとしていた。トリシュヴァーナが抱く歪虚への恨みは強い。正のマテリアルを持ちながら負の感情を抱く幻獣。
しかし、不測の事態でラメトクはチューダを巨大化させた。
これは終末に至る流れを壊しかねない。その為、更なる不確定要素を増やさぬよう精霊のイクタサ介入を防ぎたいのではないか。そう考えたのだ。
「仮に真実だとすれば、幻獣を友とするファリフ・スコールの想いに影を落とす事だろう。
さて、ブラッドリー。神の御遣いを名乗る者よ。
預言書を手にするならば、到来するという終末について今こそ語る時ではないか」
追い詰める雨を告げる鳥。
だが、ブラッドリーから告げられるのはまったく予想外の言葉であった。
「素晴らしい。素晴らしい推測です。
ですが、真実はもっとシンプルです」
「違うのか?」
「騎士はあなたも知る別の者です。己の願望を強く抱く故に、終末を導く引き金を引く。天使達はその騎士を手伝う。その結果、終末はこの地に現れるのです。
知の天使。あなたの考えは答えに限りなく近い。ですが、まだパズルを解く鍵が足りません」
「……足りない?」
ブラッドリーは、はっきりと言った。
この謎を解く鍵を、まだ雨を告げる鳥は手に入れていないと。
「その鍵は間もなく示されるでしょう。天使達がラッパを吹き鳴らし、騎士の願望が達せられた時。終末は、この地に訪れるのです」
雨を告げる鳥は再び思案する。
どの鍵が足りないのか。
だが、考えてもピースは埋まらない。
「ねぇ。もういいかい? ボクはもうキミの話を聞く気はないんだけど」
うんざりとした様子でイクタサは声を上げる。
その声に怒気が含まれている事をブラッドリーは感じ取った。
「いいでしょう。私も終末に向けての準備、つまり収穫をしなければなりません。騎士の元へ向かいます。それが、神の望みですから」
ブラッドリーは、小屋を後にする。
新たなる謎を並べ、騎士の元へと消えていく。
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【相談卓】神父と精霊のお茶会を 神楽(ka2032) 人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2018/08/29 00:05:44 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/08/25 03:36:21 |