• 幻痛

【幻痛】ふたたびポンコツ(?)姉上

マスター:凪池シリル

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~4人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/08/29 19:00
完成日
2018/09/06 06:17

みんなの思い出

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オープニング

 巨体、という言葉が生易しい程に思えるほどの、巨体。そのぶつかり合いにより生まれる衝撃が、幾度となく周囲を揺るがせる。
 次第に感覚が麻痺してくる。あまりの大きさに狂いそうになる遠近感にも。絶え間ない地響きにも。そしてそれをもたらす──気の抜ける姿にも。段々と慣れて、動揺も薄れていく。
 それでも戦場の緊張感は無くなるわけではなかった。参加するハンターの一人である夕霧は、共に参加する姉、朝霞の姿を時折に確認する。
 戦装束を纏い刀を差す姉は惚れ惚れする姿だった。戦い以外は天然で、たまに騒ぎを起こす姉ではあるが、舞刀士としては誰よりも尊敬する存在であり、夕霧にとって、戦場において最も安全な場所と言えばこの姉の傍である。大丈夫だ。何があっても。彼女はそうして、高まっていく緊張をほどよい具合に調整して出撃の時を待っていた。
 ビャスラグ山付近における、作戦『ベアーレヤクト』本戦。戦いはそれなりに長期戦に及ぶと見られ、彼女らの役割は今は控えだった。先発隊の消耗する頃に交代する形で出陣。もちろん、何かあれば直ぐにでも急行する、故に、今は待ちの時──
「ありゃ?」
 不意に、朝霞が、こんなときにも一切の気負いを感じさせないようなそんな声を上げた。
「なんか、今ちょっと、可愛いのが居た?」
「……姉上?」
 急速に顔色を不安に曇らせていく夕霧と対照的に、朝霞はキラキラした目を、眼前に広がる森林地帯へと向けていた。
「かわいい動物が見えたんだよ。でも奥の方行ったら大変だね。戦場だもん。ちょっとだけ見てこようか」
「いや待て! 待つのだ姉上!」
 制止を聞かずに走り出した朝霞を、慌てて追いかける夕霧。
「大丈夫ー。任務を忘れたわけじゃないよー? ちょっと確認したら戻ってくるからー」
「違う! 駄目だ! 姉上に『行った道をそのまま戻る』などと言うことが出来るわけ無かろう!? 何故分からぬのだ姉上ぇ!」
 言いながら必死の追いかけっこが始まる。朝霞が向かうのは今、ビックマーの周辺に展開する巨人たちとの主戦場とは別のところだった。小動物を追いかけて、ならまあ、そうなるだろう。……が。
「ありゃあ?」
 また不意に、前を行く朝霞が、先程とはまた違ったニュアンスの声を上げて立ち止まる。
 その表情が至って真面目なものになっていき、そして気配を潜めていく。それから、ゆっくりと夕霧の方へと振り向くと、しぃ、と言うように唇に人差し指を立てた。
「……?」
 夕霧は戸惑いながらも、これは『尊敬すべき姉上』の方だと直感し、素直に声を、足音を忍ばせ、静かに朝霞へと近づいていく。
 朝霞が静かに指差した方向には、巨人が数体、身体を縮めて潜んでいた。潜んでいた、とは言え、巨人だ。こうして、近くまで来ればあっさり発見できる程度のもの。だが。
 元来、巨人はこの森林地帯においても、発見は容易な程の巨体だ。しかし、だからこそ。敢えて、何も見えないところを探すという発想を見落としがちにはならないのか。
 近代兵器で武装するようになった巨人たち。指揮官の中に頭の回るものがいたら? あらかた周囲の敵はなぎ倒した、そうこちらが油断した隙に伏せていた敵を動かす──巨人が伏することなどあるまい、という盲点を突いてくる作戦……!
「……またか。またなのか」
 夕霧は、思わず呟いていた。
「なあ、聞かせてくれ姉上。姉上は……もしかして全て分かってやっていないか?」
 これは手柄だ。尊敬すべき姉の手柄。だがそれに、夕霧は複雑な想いを抱く。
 今までもこうしたことがあったのだ。どれだけ言い聞かせてもこの姉は急にフラッと出ていってしまったかと思えば、何故かたまにそれが人の役に立つ!
 畑を荒そうとしていた害獣を早期発見したり、幼児を騙して拐かそうとしていた現場にその祖父を出くわさせたり……あるいは、思い詰めた少年が、その人生を取り返しのつかないものにしていただろう犯罪を犯そうとしていたのを阻止したり、だ。
 ……だから、夕霧は姉のこの『悪癖』を強く咎めることが出来ない。引き留め、あるいは矯正してしまった場合、救われるべき誰かを見殺しにすることになるのではないか? と、不安に駆られてしまうから。
 だがしかし、一方で姉の方向感覚の酷さは間違いなく本物だと思う。そのせいでいつか、本当に自分の目の届かぬところに行ってしまったらどうなるのか。それもまた、心配で仕方ない。
 わざとなら、そう言ってくれ。すがるような夕霧の視線に、朝霞は困ったような笑みで小首を傾げて……その笑みを少し悲しげなものに変えて、ごめんね? と小さく言った。
 夕霧は溜め息を吐く。これが姉の天命だというのなら。私はどうするのが良いのだ。
「……ごめん」
 もう一度、朝霞が言った。夕霧は首を振る。
「いや、今はそんな話ではないな……あれを、どうにかしなくてはだ、姉上」
 結局、シュンとした姉の様子に耐えきれなくて、夕霧はそう話題を切り替えた。
 そう、実際今はそれどころではない。潜伏(と、言うべきなのかは微妙な隠れっぷりだが)している巨人の報告と、その対処は早急に行わなければならない。夕霧は静かに姉を誘導し、仲間と連絡を取った。

リプレイ本文

 どかーん。
 ばこーん。
 ……実際には、生まれているのはそんなに呑気な破壊力ではないのだが。
 それでも、図にするとそんな擬音を書き込みたくなる。少し視線を上げれば目に入るのは、そんな背景だった。
「二体の巨獣決戦の周囲も、油断はなりませんね」
 ミオレスカ(ka3496)が静かに立ち上がる。
 いや、これはそんな一言で流せる事態なのか、と、アーサー・ホーガン(ka0471)は呆れ気味に内心で独りごちた。
(また、チューダがやらかしたのか。ファンシーな怪獣大決戦もあったもんだぜ)
 そのまま見続けていると頭痛がしそうな絵面から視線を下げる。そうすると目に入るのは、ディーナ・フェルミ(ka5843)の、対照的な、キラキラと見上げる視線だった。
「朝霞お姉さん、ないすあしすとなの、これでチューダさまもやる気倍増なの」
 ぶんぶんと朝霞の両手を握りながらディーナ。いやあ、と言いつつものほほんとした調子の朝霞。
「これからお姉さんのことを幸運の女神さまと呼ぶの、じゃんじゃんばりばりばり引き当てて欲しいの!」
 そして、そんな二人の様子に、ますます表情を複雑化させる夕霧。
 ミオレスカが頷く。
「お二人とも、お手柄です。伏兵に逆に先手を取って、無力化しましょう」
 続くミオレスカの様子はやはり、落ち着き払っていた。
 マイペースを保つ女性陣に、クリムゾンウェスト人にとってはこの事態に対してもこんなもんなのかね、と、肩を竦めかけて、自嘲めいたものが胸に浮かんだ。
 この世界にとっては、か。なら、リアルブルーの現状はどうなのか。混迷というならば、度し難さはこちらの方が余程、か。そう思えば。情勢がシンプルなクリムゾンウェストの戦いは気が楽だ。癒されるな、と言ってもいい。
「まあ、あっちのことはあっちに任せて、こっちはこっちの仕事を果たすとするか」
 呟いた横で。
「アサルトライフル持ちの巨人にバンザイアタックなんざぞっとしない話だが……やるしかねぇわなぁ」
 トリプルJ(ka6653)が、そう言って嘆息した。それはそうなんだけどな、と、アーサーは今度こそ肩を竦めた。

「全身金属鎧の私に難しい注文なの~……でも頑張るの」
 ディーナがぼやく。アーサーが立てた全体方針に従い、極力動きを抑えながら進む一行だが。
「前衛にこんだけ全身鎧やら部分鎧やらがいりゃ、さすがに隠密行動は厳しくねえか? まあバンバン撃たれながら特攻するのもぞっとしない話だがなあ……」
 Jが指摘する通り、いずれ無理が生じるだろう、というのは明らかだった。それでも、相手の獲物を思えば、いつか突撃することにはなろうとも、その距離は極力短くしたいというのも頷ける話だ。あちこちの関節を意識して動かねばならないディーナがかなりぎこちない動きになるのを見やりながら、それでも彼女の健気な努力含め否定はしなかった。
 が、やはり近づききるというのは無理がある。どうしても発生する金属の音色、それに反応したらしい敵が彼らが潜む木陰の方へと視線をやる。咄嗟にアーサーがモフロウを飛ばして、その意識を数秒逸らす。
 奇襲から強襲への変更。まず動いたのは気付かれたその場から行動が可能なミオレスカ。手にした弓を次々とつがえ、放つ。攻撃では無く制圧を目的とした射撃は態勢を整えようとした巨人たちの動きを牽制する。
 アサルトライフルを手にしたオーガが理解が出来ない何かをわめく。側面から回り込んでいたJが全力で近づいていく。気配に気づくと、オーガは銃口を彼へと向けた。
(だから……ぞっとしない!)
 近くで見る、巨人サイズのライフルは悪夢に見そうな迫力だった。生身でCAMを相手にするようなものだ──まあ世の中平然とそれらの手足を両断したり一撃で沈める輩もいるらしいが、ハンターだからと言って一緒にするものではない──が、駆け抜ける速度をそれで緩めることは無かった。相対速度分加速される弾丸。火を噴く瞬間はやけにゆっくり見えた気がする。瞬間の銃口の向かう先を計算より早く本能が判断して位置をずらす。風圧と背後の地面が割れて飛沫を上げるのを感じた。さらに前進。
 敵は纏まった位置には居るがミオレスカの牽制のお陰で密集はしていない。そのうちの一体、盾を掲げるそいつに向かって、Jから幻影の腕が伸びた。拡散し巨人をもつかむ腕は盾オーガを、それらが直線状に並ぶように引き摺り出し、銃オーガから引きはがす。こじ開けた隙間に、その巨体から見れば小さい身体を滑り込ませるように、銃オーガにアーサーとJが接近する。
 銃オーガの怒号は増々ヒートアップしたように見えて、狼狽えた様子で太刀オーガが振り返り……
「他のところには行かせないの!」
 真正面から突撃していたディーナが、この時それに肉薄している。彼女のホーリーメイスが唸りを上げた。目の前にあるのは巨人の脚、目掛けて振り下ろされたそれが叩き込むのは彼女の、筋力ではなく魔力の威力。バァン、と、震わせた大気が破壊力を想像させるその一撃が、人であれば弁慶の泣き所に思い切り炸裂し、後衛から見ていたミオレスカが思わず、あ、痛いですねと軽く肩を縮めて呟いた。勿論直に食らった方はそれどころでは済まない。地団太を踏むようにして太刀を手に暴れまわる。やはり巨体、怒りに任せて振り回す太刀はそれだけで凄まじい風圧を生み、ディーナに襲い掛かる。鎧とメイスで受け止めてそれに耐えながら、彼女は攻め立てる勢いを崩さなかった。このまま足に当て続ければ逃げられなくなる筈、この敵をミオレスカや他の仲間の元に行かせてはいけない、と。
 視線を翻せば、幻影の手を振りほどこうともがく盾オーガ。おそらくハンターたちが想定していた通りだろう、こいつは銃オーガの射撃をフリーにするための護衛が役割りのようだった。となれば、移動は抑えられているとはいえ現状のまま放置ともいかない。いずれ振りほどいて銃持ちの元に割り込まれれば厄介だ。
「そいつらは任せたぜ」
 アーサーが、朝霞と夕霧の姉妹に告げる。同じく正面から駆け抜けていた二人が、ディーナの足止めする太刀オーガの横をすり抜けて盾オーガの行動を阻むべく接敵する。
「おい姉妹、大怪我するような無茶すんじゃねぇぞ! 終わったらすぐそっちに回る、2人で足止めだけに集中しとけ」
 実力が不透明な二人を心配して、Jが声を上げた。
「ほいほーい」
「心得た!」
 ……妹との落差がある分余計に、姉の返答のふんわり感は分かっているのだろうか、とJを不安にさせる。だが、夕霧の声からは、依頼前に見せていたような不安感は無かった。戦闘に関しては本当に、姉を信じているのだろう。その信頼が盲目でなく、実力を正確に知っているからの判断であることを今は祈るしかない。
「急ぐぞ、アーサー」
 銃持ちへと意識を集中し直し、Jが告げる。幻影の手は銃オーガにも向けて伸ばされる。移動だけを封じる手が、銃オーガをその場に縫い留める。
「……急げねえ」
 やれやれと言いたげに告げながら、アーサーが動く。間近の銃口の迫力、そこに、彼とて背筋に走るものを感じないでもなかった。ともすれば次の瞬間自分の頭がスイカ割りのスイカになってそうな想像を振りほどきながら、その懐に飛び込んでいくことで射程から逃れようとする。
 速攻。恐れも躊躇いも不要、回復が間に合わない威力で抉る、それだけを考えろ。デカブツ相手に避けられることなど考える必要もなかった。右手を一閃。勢いをつけて左の剣。定められた動作が更に身体を加速させ、両の剣での追加の斬撃を一呼吸の間に生み出す。空気を切り裂く音。衝撃が、切り裂かれたばかりの傷を叩き、巨体に対しても浅くはないダメージに耳障りな叫びが上がる。怒りの眼差しが己へと向けられるのに対して、アーサーは不敵に笑った。
「お人好しだねえ。……ったく」
 一連の挙動の後、Jの声に対してぼやき気味に呟く、と。
「互いにな」
 それにJは、不敵な笑みを返した。
 戦況がアーサーの描いた通りになったのを見届けて、ミオレスカが弓の構えを変えた。
 向ける先は天空。集中は魔力を練り上げるためのもの。術の発動を成功させるとともに矢は天高くへと打ち上がる。マテリアルを纏った矢は光の雨となって降り注いだ。六本。それはちょうど、巨体の相手に二本ずつ突き立っていく。
「弱らせているうちに、一体でも落として、戦況を整えてください」
 ミオレスカの声に、Jがありがたいね、と応え、再び巨人へと対峙した。幻影の手で相変わらず目の前の相手を抑えつけながら、野生の力を引き出した身体のしなりで彼の身につける鉄爪が二度、翻る。目に見えて動きの鈍った巨体に二発とも易々と食い込んでいく。
 とはいえ、ミオレスカのリトリビューションの効果が有効な時間は限られている。巨人の動きが復帰するや否や二発目を放ち、そこでもうこの技は打ち止めとなる。次に彼女が放つのはレイターコールドショット。やはり行動を阻害する氷の弾丸、だが、光の矢のような広範囲性も強度もない。となると、その標的に定めるべきは……。
「あの巨人の一撃は強力ですが、動きが鈍れば回避もできるはずです」
 やはり、アーサーとJが相手にする銃オーガだった。
 それぞれの個体を足止めして各個撃破。連携をさせず、厄介な銃持ちが戦場に銃弾をばら撒くのを防ぐ。その試みは間違いなくハンターの狙い通りいっていた。
 というか──
「奇襲なんざ企んでた割りにゃ、想像以上の木偶だな」
 敵の戦術に関しては、それがアーサーの感想だった。
 元々考えて動くような輩ではないのだ。それが、中途半端に作戦など練るから、想定外に対処できない。分断された敵の行動ははっきり言って、指揮系統などあったものではなかった。一応銃持ちがリーダーだったのだろうが、相変わらず、冷静さを欠いた声で喚くだけだ。それで盾オーガや太刀オーガの動きが変わるわけでもない。なんとなく、怒りの内容は理解できる気がした。『おいどうにかしろ』。
 戦術は明らかにハンターたちが上手を行って……それでも、『戦術は』という前置きは入る。それで、巨体から繰り出される攻撃威力の脅威が消え去ったわけでは無い。叩きつけられた一撃、その光景に、良くこの身は弾け飛ばないものだ、と不自然さに酔いそうになり、傷みに引き戻される。そして、主にディーナのフルリカバリーが、それを無かったことにする。精密な作戦、一人一人の意識が徹底した役割分担の上にハンターたちの優位が出来上がっているのだが、それでいてどこか大味な戦い。
 ディーナが踏み込む。立て続けの脚への猛攻に、ついには膝を着いた巨人に向けて、メイスの渾身のフルスイングが襲う。叩きつける、その衝動にふと、ビックマーと戦うチューダの面影がよぎる。
「チューダさまが……チューダさまが今戦っているの……」
 反撃を食らうたびにふらつく身体。想いに、闘志を燃やす。
「チュ-ダさまのやる気にケチをつけようなんて絶対許さないの!」
 ……アーサーたちがこちらに到達する前にタイマンで討伐してしまいたいと、内心思っていた。
 そのアーサーたちはと言えば、やはり、二人しての連撃はこの戦場で一番の火力。巨体の体力、回復力を、ついにその猛攻が上回り、銃持ちオーガは地に倒れる。
 次に彼ら二人が向かうのはフォローが必要と思われた姉妹の元。実際、この場でディーナやJの回復に最も世話になっていたのは夕霧だが、しかし、存外健闘はしていた。朝霞の剣技は実際、言われた通りに盾オーガを釘付けにはしていた。綺麗な構えと太刀筋で、隙が少ない。二人ほどの威力は無い物の、回復能力のあるオーガ相手に手傷を残している。巻き込めるときは、アーサーのアスラトゥーリに巻き込んだのもあるが。
 アーサーの剣が突き出される──オーガの、盾に向けて。その攻撃には、受けた武器に変調を齎す呪いが仕込まれている。ふいに取り回しの不便になった己の盾に、オーガが混乱した表情を見せた。その状態で……四人からの攻撃に堪え切れようはずもない。
 ──結局。
「待たせたの手伝うの!」
 ディーナがそう言って振り向いた時には、情勢はほぼ決していた。

「さあ、みんなでチューダさまの勇姿を見に行かなきゃなの!」
 残っていたリザレクションで仲間を回復しながらディーナが促す。他の一行は、回復してもらった手前何を言う気にもなれず……さりとて提案に前向きな気分になるでもなく、なんというか、惰性で彼女の移動に付き合う形になる。
「これで、おそらく戦場の味方も、優位に動けるようになるでしょう」
 やがて適当に腰を落ち着けたところで、ミオレスカが静かに告げた。
「マシュマロでも食べて、一息ついて、次の戦いに備えましょう」
 マイペースにチューダを見上げるディーナを、菓子をほおばるミオレスカを見て、残る一行は自然と息を吐いた。……まあ、一息つきたくはある。知能の足りない相手ゆえに何とかなったが、終わってみれば精神を削られる戦いだったと、自覚する。
 その中で、最も溜息が深かった夕霧に、Jがぽんとその頭を撫ぜた。
「それでもあのネエチャンはアンタの姉貴で、あのネエチャンの手綱になれるのはアンタだけだ。大変だろうが、頑張れや」
 告げられた言葉に、夕霧は疲れた声だが、それでも笑う。
「尊敬は、しているのだ。本当に」
「まあ……剣士としては悪くなかったな。確かに」
「お心遣い、傷み入る」
 そう言って頭を下げて……それから上がった夕霧の表情には、苦悩だけではなく優しさも、滲んでいた気がした。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 蒼き世界の守護者
    アーサー・ホーガン(ka0471
    人間(蒼)|27才|男性|闘狩人
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
アーサー・ホーガン(ka0471
人間(リアルブルー)|27才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/08/29 12:48:13
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/08/28 07:56:05