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【幻痛】ふたたびポンコツ(?)姉上

マスター:凪池シリル

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在4人 / 3~4人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2018/08/29 19:00
リプレイ完成予定
2018/09/07 19:00

オープニング

 巨体、という言葉が生易しい程に思えるほどの、巨体。そのぶつかり合いにより生まれる衝撃が、幾度となく周囲を揺るがせる。
 次第に感覚が麻痺してくる。あまりの大きさに狂いそうになる遠近感にも。絶え間ない地響きにも。そしてそれをもたらす──気の抜ける姿にも。段々と慣れて、動揺も薄れていく。
 それでも戦場の緊張感は無くなるわけではなかった。参加するハンターの一人である夕霧は、共に参加する姉、朝霞の姿を時折に確認する。
 戦装束を纏い刀を差す姉は惚れ惚れする姿だった。戦い以外は天然で、たまに騒ぎを起こす姉ではあるが、舞刀士としては誰よりも尊敬する存在であり、夕霧にとって、戦場において最も安全な場所と言えばこの姉の傍である。大丈夫だ。何があっても。彼女はそうして、高まっていく緊張をほどよい具合に調整して出撃の時を待っていた。
 ビャスラグ山付近における、作戦『ベアーレヤクト』本戦。戦いはそれなりに長期戦に及ぶと見られ、彼女らの役割は今は控えだった。先発隊の消耗する頃に交代する形で出陣。もちろん、何かあれば直ぐにでも急行する、故に、今は待ちの時──
「ありゃ?」
 不意に、朝霞が、こんなときにも一切の気負いを感じさせないようなそんな声を上げた。
「なんか、今ちょっと、可愛いのが居た?」
「……姉上?」
 急速に顔色を不安に曇らせていく夕霧と対照的に、朝霞はキラキラした目を、眼前に広がる森林地帯へと向けていた。
「かわいい動物が見えたんだよ。でも奥の方行ったら大変だね。戦場だもん。ちょっとだけ見てこようか」
「いや待て! 待つのだ姉上!」
 制止を聞かずに走り出した朝霞を、慌てて追いかける夕霧。
「大丈夫ー。任務を忘れたわけじゃないよー? ちょっと確認したら戻ってくるからー」
「違う! 駄目だ! 姉上に『行った道をそのまま戻る』などと言うことが出来るわけ無かろう!? 何故分からぬのだ姉上ぇ!」
 言いながら必死の追いかけっこが始まる。朝霞が向かうのは今、ビックマーの周辺に展開する巨人たちとの主戦場とは別のところだった。小動物を追いかけて、ならまあ、そうなるだろう。……が。
「ありゃあ?」
 また不意に、前を行く朝霞が、先程とはまた違ったニュアンスの声を上げて立ち止まる。
 その表情が至って真面目なものになっていき、そして気配を潜めていく。それから、ゆっくりと夕霧の方へと振り向くと、しぃ、と言うように唇に人差し指を立てた。
「……?」
 夕霧は戸惑いながらも、これは『尊敬すべき姉上』の方だと直感し、素直に声を、足音を忍ばせ、静かに朝霞へと近づいていく。
 朝霞が静かに指差した方向には、巨人が数体、身体を縮めて潜んでいた。潜んでいた、とは言え、巨人だ。こうして、近くまで来ればあっさり発見できる程度のもの。だが。
 元来、巨人はこの森林地帯においても、発見は容易な程の巨体だ。しかし、だからこそ。敢えて、何も見えないところを探すという発想を見落としがちにはならないのか。
 近代兵器で武装するようになった巨人たち。指揮官の中に頭の回るものがいたら? あらかた周囲の敵はなぎ倒した、そうこちらが油断した隙に伏せていた敵を動かす──巨人が伏することなどあるまい、という盲点を突いてくる作戦……!
「……またか。またなのか」
 夕霧は、思わず呟いていた。
「なあ、聞かせてくれ姉上。姉上は……もしかして全て分かってやっていないか?」
 これは手柄だ。尊敬すべき姉の手柄。だがそれに、夕霧は複雑な想いを抱く。
 今までもこうしたことがあったのだ。どれだけ言い聞かせてもこの姉は急にフラッと出ていってしまったかと思えば、何故かたまにそれが人の役に立つ!
 畑を荒そうとしていた害獣を早期発見したり、幼児を騙して拐かそうとしていた現場にその祖父を出くわさせたり……あるいは、思い詰めた少年が、その人生を取り返しのつかないものにしていただろう犯罪を犯そうとしていたのを阻止したり、だ。
 ……だから、夕霧は姉のこの『悪癖』を強く咎めることが出来ない。引き留め、あるいは矯正してしまった場合、救われるべき誰かを見殺しにすることになるのではないか? と、不安に駆られてしまうから。
 だがしかし、一方で姉の方向感覚の酷さは間違いなく本物だと思う。そのせいでいつか、本当に自分の目の届かぬところに行ってしまったらどうなるのか。それもまた、心配で仕方ない。
 わざとなら、そう言ってくれ。すがるような夕霧の視線に、朝霞は困ったような笑みで小首を傾げて……その笑みを少し悲しげなものに変えて、ごめんね? と小さく言った。
 夕霧は溜め息を吐く。これが姉の天命だというのなら。私はどうするのが良いのだ。
「……ごめん」
 もう一度、朝霞が言った。夕霧は首を振る。
「いや、今はそんな話ではないな……あれを、どうにかしなくてはだ、姉上」
 結局、シュンとした姉の様子に耐えきれなくて、夕霧はそう話題を切り替えた。
 そう、実際今はそれどころではない。潜伏(と、言うべきなのかは微妙な隠れっぷりだが)している巨人の報告と、その対処は早急に行わなければならない。夕霧は静かに姉を誘導し、仲間と連絡を取った。

解説

●目的
武装オーガの撃退。
以下の三体となります。
・巨人用突撃砲(アサルトライフル)持ち
・巨人用太刀持ち
・巨人用大型盾、巨人用ナイフ持ち

●状況
ベアーレヤクト本戦、ビックマーとチューダが戦うビャスラグ山付近、西側の森林地帯における一幕となります。
偶然発見された伏兵、これが現在交戦中の本体に奇襲をかけたり、あるいはチューダに突撃されてやる気を削ぐことの無いよう、撃退してください。
ここで撃退に成功すれば、味方は伏兵作戦の存在を、敵はその失敗を認識し、捜索あるいは無駄と判断し姿を現すなどは自然に行われるでしょう。このため、他に敵の存在を捜索したり撃退したり、という心配は無用です。
あくまで上記三体の撃破までが本シナリオの範囲となります。
シナリオ開始時点は夕霧により敵の位置情報がもたらされてから。敵はまだ動いてはいませんが警戒はしています。奇襲にはそれなりの作戦と能力が必要となるでしょう。

味方戦力として舞刀士の朝霞と夕霧がいます。朝霞は実際結構な腕前、夕霧はまあそれなり程度ですが、朝霞が守ろうとはしています。
つまり、戦闘上特に気にしなければいけない存在ではありません。勿論、何かしらの連携を持ちかけても構いません。

なお、夕霧の心労につきましても、シナリオの主目的ではありません。ロールプレイの一環として何か声をかけてあげるのは歓迎ですが、敵の撃退より優先して字数を割くようなものではないとは言っておきます。

マスターより

凪池です。
はいそんなわけで、幻痛にも隅っこの小ネタ要因として、うちのNPCが寸劇繰り広げつつお邪魔しますよー。
覚えておりますでしょうかこちらのポンコツ姉妹、拙シナリオ「愛しのポンコツ姉上」にて初登場しております。
とは言え、本シナリオの攻略上では特に把握しておくべきこともそう無いでしょうから、気にせず、普通の戦闘シナリオとして参加していただいても一向に構いません。
では、よろしくお願いいたします。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/09/06 06:17

参加者一覧

  • 蒼き世界の守護者
    アーサー・ホーガン(ka0471
    人間(蒼)|27才|男性|闘狩人
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
アーサー・ホーガン(ka0471
人間(リアルブルー)|27才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/08/29 12:48:13
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/08/28 07:56:05