ゲスト
(ka0000)
呪いの金切り声
マスター:きりん

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/09/01 09:00
- 完成日
- 2018/09/03 18:25
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●とある農家の異変
野菜を育て、収穫したそれらを出荷して生計を立てている男がいた。
その日も男は、朝早くから農作業に取り掛かるため、家を出て農地へと向かった。
雨があまり降らず乾燥しがちな土地だが、それでも丹念に世話をすることで野菜は順調に育っている。
日差しが強くならいうちに水やりを済ませ、草引きをし、必要に応じて薬を散布したり肥料を追加したりする。
気づけば太陽は頂点に昇っていて、男の顔にも汗が滴っていた。
「……昼飯にするか」
男は畑のあぜ道まで戻ると、木の下に止めておいた荷車から弁当箱を取り出して切り株を椅子替わりにどっかりと座り込む。
「痛んでないよな?」
この暑い季節、木陰に置いているとはいえ食べ物を放置していると常に悪くなる可能性が付きまとう。
あまりに暑いと、朝作って持って行った弁当が、昼に食べようとしたら異臭を放っていた、なんてこともあるほどだ。
今回は大丈夫そうで、男は安心して昼休憩を楽しむ。
弁当を食べ終え茶の一服も済ませて、そろそろ作業に戻ろうとした男は、畑に見慣れぬ草がいくつか生えているのに気付く。
土の上に出ている草を見る限りでは、それほど大きい草ではない。
だが、根はしっかり張っていそうで、少々引っ張った程度ではびくともしない。
どうやら根野菜のようで、少し土を掘ってみると白いものが見えた。
大根だろうか。
「……はて。大根なんてこんなところに植えたっけか」
男は大根も栽培していたが、別の畑で纏めて栽培していた。
この畑で育てている野菜は、また別の野菜だ。
しかも、根野菜ではなく、葉野菜。
実際に、周りの野菜は根ではなく外に出ている部分が大きく成長している。
「こりゃ、苗を間違えて植えちまったか?」
ひとまず納得して農作業を再開させた男だったが、途中でその大根らしき野菜のことが気になり始めた。
他の大根はまだまだ小さく、大根だとすればあの野菜は育ち過ぎなことに気が付いたのだ。
「フーム、抜いてみるか」
何気なく、男はその野菜を引き抜いた。
白い根らしきものが露になる。
まるで人間の上半身と下半身のような形の根が露になり、草は髪、根本は顔のようで、奇妙な外見が太陽の光にさらされた。
しかし、男がその全貌を見ることはなかった。
抜かれた瞬間にその野菜が発した恐ろしい奇声染みた絶叫の後に放たれた魔法により、絶命していたのである。
●ハンターズソサエティ
受付嬢たちが通常業務を行う中、その一人がある依頼を持ってカウンターから出た。
彼女の名前はジェーン・ドゥ。
うさんくさい言動が特徴的な受付嬢である。
「事件です」
お決まりの第一声はよく通る声で告げられ、依頼を見繕っていたハンターたちが振り返る。
注目が自分に集中したことを確認したジェーンは、澄ました表情で依頼の説明を始めた。
「とある農村で、夜になっても畑仕事に出かけた亭主が帰ってこないと役所に通報がありました。通報を受けた兵士が明朝に畑で死亡している男性を発見。近くを捜索したところ、畑の野菜にどこから混ざってきたのか雑魔が紛れているのが判明しました」
ジェーンが淡々と経緯を述べていく。
「雑魔は植物型、地面に植わっており引き抜くと魔法で空間対象の強力な範囲攻撃を行ってくるようです。犠牲になったのが一般人ですので、この攻撃がハンターにどれほどの脅威があるのかは分かりませんが、警戒するに越したことはないでしょう。攻撃の前動作に奇声を上げることが確認されていますので、依頼を受ける場合はそれを目安に対策を練ってください。また、引き抜かれると地面の中に植わるまで魔法攻撃を止めないようです」
一通りの説明を終え、ジェーンは一礼する。
「参加を検討してくださるハンターの皆様は、お手続きをお願いいたします」
踵を返したジェーンが受付カウンターに戻ると、静まり返っていた喧噪が戻ってきた。
野菜を育て、収穫したそれらを出荷して生計を立てている男がいた。
その日も男は、朝早くから農作業に取り掛かるため、家を出て農地へと向かった。
雨があまり降らず乾燥しがちな土地だが、それでも丹念に世話をすることで野菜は順調に育っている。
日差しが強くならいうちに水やりを済ませ、草引きをし、必要に応じて薬を散布したり肥料を追加したりする。
気づけば太陽は頂点に昇っていて、男の顔にも汗が滴っていた。
「……昼飯にするか」
男は畑のあぜ道まで戻ると、木の下に止めておいた荷車から弁当箱を取り出して切り株を椅子替わりにどっかりと座り込む。
「痛んでないよな?」
この暑い季節、木陰に置いているとはいえ食べ物を放置していると常に悪くなる可能性が付きまとう。
あまりに暑いと、朝作って持って行った弁当が、昼に食べようとしたら異臭を放っていた、なんてこともあるほどだ。
今回は大丈夫そうで、男は安心して昼休憩を楽しむ。
弁当を食べ終え茶の一服も済ませて、そろそろ作業に戻ろうとした男は、畑に見慣れぬ草がいくつか生えているのに気付く。
土の上に出ている草を見る限りでは、それほど大きい草ではない。
だが、根はしっかり張っていそうで、少々引っ張った程度ではびくともしない。
どうやら根野菜のようで、少し土を掘ってみると白いものが見えた。
大根だろうか。
「……はて。大根なんてこんなところに植えたっけか」
男は大根も栽培していたが、別の畑で纏めて栽培していた。
この畑で育てている野菜は、また別の野菜だ。
しかも、根野菜ではなく、葉野菜。
実際に、周りの野菜は根ではなく外に出ている部分が大きく成長している。
「こりゃ、苗を間違えて植えちまったか?」
ひとまず納得して農作業を再開させた男だったが、途中でその大根らしき野菜のことが気になり始めた。
他の大根はまだまだ小さく、大根だとすればあの野菜は育ち過ぎなことに気が付いたのだ。
「フーム、抜いてみるか」
何気なく、男はその野菜を引き抜いた。
白い根らしきものが露になる。
まるで人間の上半身と下半身のような形の根が露になり、草は髪、根本は顔のようで、奇妙な外見が太陽の光にさらされた。
しかし、男がその全貌を見ることはなかった。
抜かれた瞬間にその野菜が発した恐ろしい奇声染みた絶叫の後に放たれた魔法により、絶命していたのである。
●ハンターズソサエティ
受付嬢たちが通常業務を行う中、その一人がある依頼を持ってカウンターから出た。
彼女の名前はジェーン・ドゥ。
うさんくさい言動が特徴的な受付嬢である。
「事件です」
お決まりの第一声はよく通る声で告げられ、依頼を見繕っていたハンターたちが振り返る。
注目が自分に集中したことを確認したジェーンは、澄ました表情で依頼の説明を始めた。
「とある農村で、夜になっても畑仕事に出かけた亭主が帰ってこないと役所に通報がありました。通報を受けた兵士が明朝に畑で死亡している男性を発見。近くを捜索したところ、畑の野菜にどこから混ざってきたのか雑魔が紛れているのが判明しました」
ジェーンが淡々と経緯を述べていく。
「雑魔は植物型、地面に植わっており引き抜くと魔法で空間対象の強力な範囲攻撃を行ってくるようです。犠牲になったのが一般人ですので、この攻撃がハンターにどれほどの脅威があるのかは分かりませんが、警戒するに越したことはないでしょう。攻撃の前動作に奇声を上げることが確認されていますので、依頼を受ける場合はそれを目安に対策を練ってください。また、引き抜かれると地面の中に植わるまで魔法攻撃を止めないようです」
一通りの説明を終え、ジェーンは一礼する。
「参加を検討してくださるハンターの皆様は、お手続きをお願いいたします」
踵を返したジェーンが受付カウンターに戻ると、静まり返っていた喧噪が戻ってきた。
リプレイ本文
●戦闘準備
ハンターたちが現場に着くと、広大な畑が視界に広がった。
一面に広がる、土の茶色と農作物の緑。
等間隔に植えられた農作物の整然さを崩すかのように、おかしな場所に植えられている何かの野菜らしきものが混じっている。
あれが、件の雑魔だろうか。
(歩く大根! 面白い形~。リアルブルーのお家に居たころにも、ファンタジーな絵本とかで見たことある気がする)
興味深そうに眺めながらも、夢路 まよい(ka1328)は畑に被害を出さないようにしつつ、雑魔を倒すつもりだった。
「ただいまより任務、マンドラゴラ雑魔の駆除を開始、する」
雑魔は出現が確認され次第、殲滅。それがズィルバーン・アンネ・早咲(ka3361)に与えられた任務だ。
マンドラゴラというものが本当に実在するかは知らないが、レイア・アローネ(ka4082)は聞いたことがあった。
魔術師が薬として重宝している貴重な植物だとか。
それ故手に入れるのは至難を極めると。
(……至難を極めるだけしか合っていないただの雑魔か……。なんていうか……流石はジェーンの依頼……疲れるなあ……)
狐中・小鳥(ka5484)は事前に用意しておいた、マンドラゴラを引き抜くための紐を取り出していた。
(雑魔が現れたのが大根畑の方じゃなくてよかったな)
もしそうだったら、全く見分けがつかなかったに違いない。
全員が配置についた。
さあ、戦いの始まりだ!
●マンドラゴラを倒せ
小鳥は少し離れて待機し、雑魔が引き抜かれたらすぐに攻撃出来るようにするつもりだ。
念の為耳栓も準備している。
「他の野菜と間違って抜くことはなさそうなのだけはいいことかな? 音での攻撃みたいだし耳栓とかしてたら多少は安全かな? ……会話もできなくなるけど」
会話は手での合図を主に使うようにすれば、耳が使えない中でも問題ないだろう。
念のため既に距離を取りながら、まよいは考えていた。
(叫び声は近くで聞くほど痛いっていうし、引っこ抜くのはロープか何かで葉の付け根を縛って、少し遠くから引っ張ってもらうようにしようかな?)
ついでにいえば、まよいは防御に難があるので、できれば引っこ抜くのは他の人にお願いしたい気持ちもある。
幸い、ロープか何かは小鳥が持ってきた紐があるし、引っこ抜く役目はレイアが名乗りを上げている。
複数を同時に相手する理由も特にないので、一体ずつ片付けては、次の一体にいく感じにするといいだろう。
(雑魔を地面から引き抜くのは、できれば他の仲間に任せ、たい)
まよいと同じくアンネも防御力に難がある。
抜いた直後の不安定な体勢で悲鳴攻撃を食らいたくはないので、ロープ等に敵を繋いで、遠くで引き抜くという方針には賛成だった。
引っこ抜く担当であり、その後もどうせ近付いて攻撃することになるレイアだけは、話は別かもしれないが。
(叫び声が魔法攻撃になっているのであれば…耳を塞ぐ事が多少は対策になる……か?)
特に連携を取る激しい戦闘をするわけでもないので、レイアは耳栓をしていた。
粘土を耳に詰めると防音性は高くなると聞いたので、そちらも行っている。
抜くのはレイアが担当する。
元々近付くつもりだったので問題はない。
他の皆は抜けたところを攻撃してもらう予定だ。
レイアはまよい、アンネ、小鳥の三人と目を合わせ、頷き合うと、まず一体目の地上部に手をかけ、一気に引っこ抜く。
直前、何か物凄い轟音が鼓膜を貫いたような衝撃が襲った。
耳栓をしていても、物凄い振動が耳を襲っているのが全員感覚で分かった。
予備動作であるはずの絶叫だけでこれだ。
本番の魔法はどれほどの威力か。
一人だけ、対抗魔法を準備してきたまよいは耳栓をしていないので顔をしかめている。
だがそれでも、タイミングは誤らない。
まよいはマテリアルを感じ取る感覚を研ぎ澄ませ、魔法を行使する際にマンドラゴラが操るマテリアルの動きを注視する。
(ここっ! ここで、邪魔すればいいよね!)
マンドラゴラを中心に、マテリアルが放射状に励起する兆候を見逃さず、まよいは魔法の構成に干渉する。
魔法の成就妨害は成功した。
絶叫の後に起こるはずの、魔法による暴威は起こらず、マンドラゴラはレイアに引っこ抜かれた体勢のまま、不思議そうに首を傾げている。
いや、顔なんてないのであくまで雰囲気だが。
そこで、一行の中で一番素早い小鳥が動いた。
「近づくと流石に痛そうだし離れて対応しないとだね。と、言っても私は使えるスキルが限られちゃうけど」
予め取っておいた距離は、これから行おうとしている攻撃の射程ギリギリで、レイアも小鳥も動いていない今なら、味方まで一緒に誤って斬るようなことはない、はずだ。
敵味方の区別なく両断する斬撃が、突如何もない空間に発生し、マンドラゴラの表皮をごっそりと削り取っていった。
直撃ではない。どうやらレイアを巻き込むことを警戒したせいか、踏み込みが浅かったようだ。
「フォローは任せておけ!」
レイアはソウルエッジで強化した魔導剣で守りを捨て、攻撃を重視した構えを取り、大きく踏み込みながら魔導剣を突き出し、その軌道上にいるマンドラゴラを刺し貫く。
それでもマンドラゴラはまだ倒れない。
あくまで地面から引き抜いてから攻撃し、畑に損害を出さないよう注意していたせいか、思い切りが足らなかったようだ。
「ならばっ!」
瞬時に追撃を判断し、レイアは魔法剣のオーラを解放した連撃を放つ。
魔力により加速を受けた一撃は重く、そして鋭くマンドラゴラに襲い掛かり、その身体を穿つ。
下から斬り上げるように放った二連撃は畑もレタスも巻き込まないように気遣ったものだったが、さすがに片手でマンドラゴラを掴んだままこれらの行動を全て完遂するのは無理があったか、手負いのマンドラゴラがレイアの手から逃げ出してしまった。
だが、問題はない。
「逃がすわけ、ないでしょ!」
マギサークレットの助けも借りて精神を集中し、マテリアルを感じることで、次に行う魔法攻撃の威力を高めたまよいが、今にも練り上げた魔力を魔法という形で発現させようとしているのだから。
水と地の力がまよいの周りで急激に膨れ上がる。
連続で射出された二つの攻撃魔法は、マンドラゴラに直撃して一つは凍り付きもう一つはへばり付き、マンドラゴラをその地に縛り付けた。
なおもマンドラゴラは動くが、その動作は今までとは比べ物にならないくらい鈍い。
まよいが放った魔法はそれぞれが高い威力と対象の自由を奪う効果を持つ。
別々に放つこともできるが、同じ対象に連続で放つことで、真価を発揮するのだ。
それでも、マンドラゴラはまだ動いている。しぶとい。
しかし、既にアンネが追撃の準備を整えていた。
(魔導アーマーの分厚い装甲も撃ち抜くといわれる巨大銃の威力を、見せる)
アンネは物々しい武骨な銃を構えている。
全長二メートルに及ぶそれは、三連装のショットガン型魔導銃だ。
分厚い装甲を持つ強敵を撃ち倒せる火力を求めて作られた事から、『アーマーキラー』という名が付けられている。
散弾であるため有効射程が短く、ライフルのような長射程こそないものの、吟味された素材と職人の腕が相まって、火力に特化した性能を持ち命中率が高いのが特徴だ。
マンドラゴラを、アンネはその魔導猟銃で銃撃した。
魔力の爆発による轟音が鳴り響き、放射状に射出されたショットシェルがさらに中の散弾をばらまく。
人型大根のような身体に散弾の痕を残しながらも、マンドラゴラは小鳥に近付く形で逃げると己の身体を回転させ穴を掘り始めた。
どうやら埋まるつもりらしい。
「まだ生きてる。それなら大技で一気に行くんだよ! ……火鳥風月、食らうんだよー!」
ダッシュした小鳥が、半身の姿勢で武器を水平に構え、一気に間合いを詰めて半ばまで埋まりかけたマンドラゴラを貫き斬る。
だがこれは本命である攻撃の前座に過ぎない。
これに繋がる斬撃こそが、小鳥にとっての必殺の一撃。
機動力と攻撃力を兼ね備え、複数の技を極めた者にしか使えない高等技術が、火と風のオーラを纏う斬撃を放つことを可能する。
しかし、高等技術故に、技の制御に多くの意識を割かれ、回避行動を取る相手に当てるのが難しい。
マンドラゴラの回転が増し、地面に埋まる速度が増した。
小鳥の計算が狂いかける。このままでは回避されてしまうかもしれない。
そこへ、アンネの静謐な声が響いた。
「──させ、ない」
アンネは元々、他の仲間がマンドラゴラに攻撃するタイミングで、牽制射撃を行い、敵の回避を邪魔して支援するつもりだった。
どちらかというと、自力で敵の回避を下げることのできない攻撃に対して、支援するほうが効率がよさそうだという考えからだ。
元から回避半減などの効果がある攻撃は、アンネの支援がなくても、十分に当たる可能性が高い。
故にこの状況で、アンネが動かないなどあり得ない。
地面に潜ろうとするマンドラゴラに銃撃を加え、地上にその身体を弾き出した。
体勢が崩れ回避困難になったマンドラゴラを、今度こそ小鳥の魔剣が両断する。
まよい、アンネ、レイア、小鳥の四人は勝利を祝う。
……さて、喜んでばかりもいられない。
マンドラゴラはあと三体である。
訂正しよう。まだ三体もいるのだ。
●戦闘終了
基本的には一体ずつ引き抜き対応していくように相談して決めており、残りの三体を処理し終えた頃には、四人とも主要なスキルが軒並み尽きていた。
最後の方は豊富に使えるまよいの魔法の矢が一番頼りになっていたくらいだ。
もし引き抜かずに全員でタコ殴りにしていたら、日が暮れるまでかかっていたかもしれない。
全てのマンドラゴラを倒した四人は、疲れた身体を引きずってハンターズソサエティに戻った。
ハンターズソサエティで、依頼人からの差し入れらしい野菜をジェーン経由で貰ったことが、規定報酬以外での唯一の収穫だろうか。
野菜だけに。
こうして、今回の雑魔退治依頼は終わった。
ハンターたちが現場に着くと、広大な畑が視界に広がった。
一面に広がる、土の茶色と農作物の緑。
等間隔に植えられた農作物の整然さを崩すかのように、おかしな場所に植えられている何かの野菜らしきものが混じっている。
あれが、件の雑魔だろうか。
(歩く大根! 面白い形~。リアルブルーのお家に居たころにも、ファンタジーな絵本とかで見たことある気がする)
興味深そうに眺めながらも、夢路 まよい(ka1328)は畑に被害を出さないようにしつつ、雑魔を倒すつもりだった。
「ただいまより任務、マンドラゴラ雑魔の駆除を開始、する」
雑魔は出現が確認され次第、殲滅。それがズィルバーン・アンネ・早咲(ka3361)に与えられた任務だ。
マンドラゴラというものが本当に実在するかは知らないが、レイア・アローネ(ka4082)は聞いたことがあった。
魔術師が薬として重宝している貴重な植物だとか。
それ故手に入れるのは至難を極めると。
(……至難を極めるだけしか合っていないただの雑魔か……。なんていうか……流石はジェーンの依頼……疲れるなあ……)
狐中・小鳥(ka5484)は事前に用意しておいた、マンドラゴラを引き抜くための紐を取り出していた。
(雑魔が現れたのが大根畑の方じゃなくてよかったな)
もしそうだったら、全く見分けがつかなかったに違いない。
全員が配置についた。
さあ、戦いの始まりだ!
●マンドラゴラを倒せ
小鳥は少し離れて待機し、雑魔が引き抜かれたらすぐに攻撃出来るようにするつもりだ。
念の為耳栓も準備している。
「他の野菜と間違って抜くことはなさそうなのだけはいいことかな? 音での攻撃みたいだし耳栓とかしてたら多少は安全かな? ……会話もできなくなるけど」
会話は手での合図を主に使うようにすれば、耳が使えない中でも問題ないだろう。
念のため既に距離を取りながら、まよいは考えていた。
(叫び声は近くで聞くほど痛いっていうし、引っこ抜くのはロープか何かで葉の付け根を縛って、少し遠くから引っ張ってもらうようにしようかな?)
ついでにいえば、まよいは防御に難があるので、できれば引っこ抜くのは他の人にお願いしたい気持ちもある。
幸い、ロープか何かは小鳥が持ってきた紐があるし、引っこ抜く役目はレイアが名乗りを上げている。
複数を同時に相手する理由も特にないので、一体ずつ片付けては、次の一体にいく感じにするといいだろう。
(雑魔を地面から引き抜くのは、できれば他の仲間に任せ、たい)
まよいと同じくアンネも防御力に難がある。
抜いた直後の不安定な体勢で悲鳴攻撃を食らいたくはないので、ロープ等に敵を繋いで、遠くで引き抜くという方針には賛成だった。
引っこ抜く担当であり、その後もどうせ近付いて攻撃することになるレイアだけは、話は別かもしれないが。
(叫び声が魔法攻撃になっているのであれば…耳を塞ぐ事が多少は対策になる……か?)
特に連携を取る激しい戦闘をするわけでもないので、レイアは耳栓をしていた。
粘土を耳に詰めると防音性は高くなると聞いたので、そちらも行っている。
抜くのはレイアが担当する。
元々近付くつもりだったので問題はない。
他の皆は抜けたところを攻撃してもらう予定だ。
レイアはまよい、アンネ、小鳥の三人と目を合わせ、頷き合うと、まず一体目の地上部に手をかけ、一気に引っこ抜く。
直前、何か物凄い轟音が鼓膜を貫いたような衝撃が襲った。
耳栓をしていても、物凄い振動が耳を襲っているのが全員感覚で分かった。
予備動作であるはずの絶叫だけでこれだ。
本番の魔法はどれほどの威力か。
一人だけ、対抗魔法を準備してきたまよいは耳栓をしていないので顔をしかめている。
だがそれでも、タイミングは誤らない。
まよいはマテリアルを感じ取る感覚を研ぎ澄ませ、魔法を行使する際にマンドラゴラが操るマテリアルの動きを注視する。
(ここっ! ここで、邪魔すればいいよね!)
マンドラゴラを中心に、マテリアルが放射状に励起する兆候を見逃さず、まよいは魔法の構成に干渉する。
魔法の成就妨害は成功した。
絶叫の後に起こるはずの、魔法による暴威は起こらず、マンドラゴラはレイアに引っこ抜かれた体勢のまま、不思議そうに首を傾げている。
いや、顔なんてないのであくまで雰囲気だが。
そこで、一行の中で一番素早い小鳥が動いた。
「近づくと流石に痛そうだし離れて対応しないとだね。と、言っても私は使えるスキルが限られちゃうけど」
予め取っておいた距離は、これから行おうとしている攻撃の射程ギリギリで、レイアも小鳥も動いていない今なら、味方まで一緒に誤って斬るようなことはない、はずだ。
敵味方の区別なく両断する斬撃が、突如何もない空間に発生し、マンドラゴラの表皮をごっそりと削り取っていった。
直撃ではない。どうやらレイアを巻き込むことを警戒したせいか、踏み込みが浅かったようだ。
「フォローは任せておけ!」
レイアはソウルエッジで強化した魔導剣で守りを捨て、攻撃を重視した構えを取り、大きく踏み込みながら魔導剣を突き出し、その軌道上にいるマンドラゴラを刺し貫く。
それでもマンドラゴラはまだ倒れない。
あくまで地面から引き抜いてから攻撃し、畑に損害を出さないよう注意していたせいか、思い切りが足らなかったようだ。
「ならばっ!」
瞬時に追撃を判断し、レイアは魔法剣のオーラを解放した連撃を放つ。
魔力により加速を受けた一撃は重く、そして鋭くマンドラゴラに襲い掛かり、その身体を穿つ。
下から斬り上げるように放った二連撃は畑もレタスも巻き込まないように気遣ったものだったが、さすがに片手でマンドラゴラを掴んだままこれらの行動を全て完遂するのは無理があったか、手負いのマンドラゴラがレイアの手から逃げ出してしまった。
だが、問題はない。
「逃がすわけ、ないでしょ!」
マギサークレットの助けも借りて精神を集中し、マテリアルを感じることで、次に行う魔法攻撃の威力を高めたまよいが、今にも練り上げた魔力を魔法という形で発現させようとしているのだから。
水と地の力がまよいの周りで急激に膨れ上がる。
連続で射出された二つの攻撃魔法は、マンドラゴラに直撃して一つは凍り付きもう一つはへばり付き、マンドラゴラをその地に縛り付けた。
なおもマンドラゴラは動くが、その動作は今までとは比べ物にならないくらい鈍い。
まよいが放った魔法はそれぞれが高い威力と対象の自由を奪う効果を持つ。
別々に放つこともできるが、同じ対象に連続で放つことで、真価を発揮するのだ。
それでも、マンドラゴラはまだ動いている。しぶとい。
しかし、既にアンネが追撃の準備を整えていた。
(魔導アーマーの分厚い装甲も撃ち抜くといわれる巨大銃の威力を、見せる)
アンネは物々しい武骨な銃を構えている。
全長二メートルに及ぶそれは、三連装のショットガン型魔導銃だ。
分厚い装甲を持つ強敵を撃ち倒せる火力を求めて作られた事から、『アーマーキラー』という名が付けられている。
散弾であるため有効射程が短く、ライフルのような長射程こそないものの、吟味された素材と職人の腕が相まって、火力に特化した性能を持ち命中率が高いのが特徴だ。
マンドラゴラを、アンネはその魔導猟銃で銃撃した。
魔力の爆発による轟音が鳴り響き、放射状に射出されたショットシェルがさらに中の散弾をばらまく。
人型大根のような身体に散弾の痕を残しながらも、マンドラゴラは小鳥に近付く形で逃げると己の身体を回転させ穴を掘り始めた。
どうやら埋まるつもりらしい。
「まだ生きてる。それなら大技で一気に行くんだよ! ……火鳥風月、食らうんだよー!」
ダッシュした小鳥が、半身の姿勢で武器を水平に構え、一気に間合いを詰めて半ばまで埋まりかけたマンドラゴラを貫き斬る。
だがこれは本命である攻撃の前座に過ぎない。
これに繋がる斬撃こそが、小鳥にとっての必殺の一撃。
機動力と攻撃力を兼ね備え、複数の技を極めた者にしか使えない高等技術が、火と風のオーラを纏う斬撃を放つことを可能する。
しかし、高等技術故に、技の制御に多くの意識を割かれ、回避行動を取る相手に当てるのが難しい。
マンドラゴラの回転が増し、地面に埋まる速度が増した。
小鳥の計算が狂いかける。このままでは回避されてしまうかもしれない。
そこへ、アンネの静謐な声が響いた。
「──させ、ない」
アンネは元々、他の仲間がマンドラゴラに攻撃するタイミングで、牽制射撃を行い、敵の回避を邪魔して支援するつもりだった。
どちらかというと、自力で敵の回避を下げることのできない攻撃に対して、支援するほうが効率がよさそうだという考えからだ。
元から回避半減などの効果がある攻撃は、アンネの支援がなくても、十分に当たる可能性が高い。
故にこの状況で、アンネが動かないなどあり得ない。
地面に潜ろうとするマンドラゴラに銃撃を加え、地上にその身体を弾き出した。
体勢が崩れ回避困難になったマンドラゴラを、今度こそ小鳥の魔剣が両断する。
まよい、アンネ、レイア、小鳥の四人は勝利を祝う。
……さて、喜んでばかりもいられない。
マンドラゴラはあと三体である。
訂正しよう。まだ三体もいるのだ。
●戦闘終了
基本的には一体ずつ引き抜き対応していくように相談して決めており、残りの三体を処理し終えた頃には、四人とも主要なスキルが軒並み尽きていた。
最後の方は豊富に使えるまよいの魔法の矢が一番頼りになっていたくらいだ。
もし引き抜かずに全員でタコ殴りにしていたら、日が暮れるまでかかっていたかもしれない。
全てのマンドラゴラを倒した四人は、疲れた身体を引きずってハンターズソサエティに戻った。
ハンターズソサエティで、依頼人からの差し入れらしい野菜をジェーン経由で貰ったことが、規定報酬以外での唯一の収穫だろうか。
野菜だけに。
こうして、今回の雑魔退治依頼は終わった。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
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面白かった! | 4人 |
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MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 夢路 まよい(ka1328) 人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2018/09/01 02:46:58 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/08/31 22:07:40 |