ゲスト
(ka0000)
緊急輸送護衛
マスター:きりん

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/09/07 12:00
- 完成日
- 2018/09/10 09:47
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●必要なもの
とある旅商人が、馬車に荷物を詰め込んでいた。
商人は、王国に近いこの街で美味しい王国の食べ物をたっぷり仕入れ、これから拠点の街に帰るところだ。
道中強盗などの襲撃が一番怖いので、一般人だが腕利きの護衛も複数雇っている。
安全を考えるならば、ハンターを雇うのが一番なのだが、いかんせんハンターを雇うのには安くない資金が必要だ。
商品を仕入れたばかりの商人には、ハンターを雇うだけの余裕がない。
いや、正確にいえば金がないわけではないのだが、何かのアクシデントで商品が売れない可能性を考えると、あまりこれ以上金を使いたくなかったというのが本音である。
「帝国は食べ物が不味いからな。王国産の美味い食べ物は需要があるはずだ。そう睨んで大枚をはたいたのだから、絶対に失敗できん」
旅商人というのは基本的に自転車操業で、前の商売で得た利益がそのまま次の商売の資金になる。
なので、損をすればするほど扱える額が少なくなり、大口の商売を行うのが難しくなっていく。
それはそのまま商人としての没落に繋がり、商売の失敗を意味する。
根無し草である旅商人は、ほとんどの者が街に定住して自分の店を開くことを目標にしている。
誰だって、何かと危険が多い旅をして商いをするよりも、一箇所に店を構えて平和に商いをしたいに決まっているのだ。
しかし、店を開くにはとにかく金がかかる。伝手やコネがない商人は、旅商人として各地を巡り、少しずつ利益を上げて資金を貯めるしかないのだ。
●ドタキャン
ところが出発当日の朝になっても、雇った護衛たちは来なかった。
「どういうことだ……! もう出発時間だぞ! 前金をケチったのがいけなかったのか……!?」
まさかこんな事態になるとは思わなかった商人は、困り果てている。
馬車に積んでいる荷物も問題だった。
食料だ。そして当然、食料は時間経過で腐る。
街から街への移動時間も考えないと、せっかく仕入れた食料が腐ってしまう。
そうなれば商人の懐は大打撃を受ける。
「くそ、どうする。私一人では盗賊にどうぞ襲ってくれといっているようなものだ。だが、しかし、時間がない」
しばらく考え込んだ商人は決断した。
「背に腹は変えられん。出費は痛いがハンターに頼もう」
商人は護衛にハンターを雇うことに決めたのだった。
●熱を出した
しかし、商人は依頼を出すことができなかった。
その後体調を崩して熱を出してしまったのである。
幸い重篤な病にかかったわけではなく、休んでいれば治る程度であるが、その時間が荷物には致命的だった。
全てが腐ってしまう。
そうなれば、もう売り物にはならない。大損だ。
次の商売すら危うくなるだろう。
「く、くそ、急がなければ……」
一日経って回復した商人は慌ててハンターズソサエティに向かった。
●ハンターズソサエティ
受付嬢のジェーン・ドゥが依頼を携えてハンターたちの下へやってきた。
依頼の斡旋だ。もはや見慣れた光景である。
何の依頼を持ってきたのか、ハンターたちは生唾を飲み込んでジェーンの依頼説明を待つ。
「緊急依頼です」
何人かのハンターたちがジェーンの第一声にホッと胸を撫で下ろした。
緊急性の高い依頼の斡旋なら、まともな可能性が高い。
「今回の依頼は、旅商人を護衛しながら目的地の街まで護衛することになります。依頼人はとても急いでいるようなので、そのつもりでお願いします。道中何が起きてもとにかく目的地に着くことを優先して欲しいというのが、依頼人の意向です」
説明を終えたジェーンが最後に頭を下げる。
「ただ、一つ気になる報告が入っています。他の旅商人の報告によりますと、通り道で濃霧が発生し、その濃霧を抜ける途中傭兵崩れの盗賊団に襲われたとのことです。それでは皆様、よろしくお願いいたします」
何人かのハンターが、依頼を受けようと立ち上がった。
とある旅商人が、馬車に荷物を詰め込んでいた。
商人は、王国に近いこの街で美味しい王国の食べ物をたっぷり仕入れ、これから拠点の街に帰るところだ。
道中強盗などの襲撃が一番怖いので、一般人だが腕利きの護衛も複数雇っている。
安全を考えるならば、ハンターを雇うのが一番なのだが、いかんせんハンターを雇うのには安くない資金が必要だ。
商品を仕入れたばかりの商人には、ハンターを雇うだけの余裕がない。
いや、正確にいえば金がないわけではないのだが、何かのアクシデントで商品が売れない可能性を考えると、あまりこれ以上金を使いたくなかったというのが本音である。
「帝国は食べ物が不味いからな。王国産の美味い食べ物は需要があるはずだ。そう睨んで大枚をはたいたのだから、絶対に失敗できん」
旅商人というのは基本的に自転車操業で、前の商売で得た利益がそのまま次の商売の資金になる。
なので、損をすればするほど扱える額が少なくなり、大口の商売を行うのが難しくなっていく。
それはそのまま商人としての没落に繋がり、商売の失敗を意味する。
根無し草である旅商人は、ほとんどの者が街に定住して自分の店を開くことを目標にしている。
誰だって、何かと危険が多い旅をして商いをするよりも、一箇所に店を構えて平和に商いをしたいに決まっているのだ。
しかし、店を開くにはとにかく金がかかる。伝手やコネがない商人は、旅商人として各地を巡り、少しずつ利益を上げて資金を貯めるしかないのだ。
●ドタキャン
ところが出発当日の朝になっても、雇った護衛たちは来なかった。
「どういうことだ……! もう出発時間だぞ! 前金をケチったのがいけなかったのか……!?」
まさかこんな事態になるとは思わなかった商人は、困り果てている。
馬車に積んでいる荷物も問題だった。
食料だ。そして当然、食料は時間経過で腐る。
街から街への移動時間も考えないと、せっかく仕入れた食料が腐ってしまう。
そうなれば商人の懐は大打撃を受ける。
「くそ、どうする。私一人では盗賊にどうぞ襲ってくれといっているようなものだ。だが、しかし、時間がない」
しばらく考え込んだ商人は決断した。
「背に腹は変えられん。出費は痛いがハンターに頼もう」
商人は護衛にハンターを雇うことに決めたのだった。
●熱を出した
しかし、商人は依頼を出すことができなかった。
その後体調を崩して熱を出してしまったのである。
幸い重篤な病にかかったわけではなく、休んでいれば治る程度であるが、その時間が荷物には致命的だった。
全てが腐ってしまう。
そうなれば、もう売り物にはならない。大損だ。
次の商売すら危うくなるだろう。
「く、くそ、急がなければ……」
一日経って回復した商人は慌ててハンターズソサエティに向かった。
●ハンターズソサエティ
受付嬢のジェーン・ドゥが依頼を携えてハンターたちの下へやってきた。
依頼の斡旋だ。もはや見慣れた光景である。
何の依頼を持ってきたのか、ハンターたちは生唾を飲み込んでジェーンの依頼説明を待つ。
「緊急依頼です」
何人かのハンターたちがジェーンの第一声にホッと胸を撫で下ろした。
緊急性の高い依頼の斡旋なら、まともな可能性が高い。
「今回の依頼は、旅商人を護衛しながら目的地の街まで護衛することになります。依頼人はとても急いでいるようなので、そのつもりでお願いします。道中何が起きてもとにかく目的地に着くことを優先して欲しいというのが、依頼人の意向です」
説明を終えたジェーンが最後に頭を下げる。
「ただ、一つ気になる報告が入っています。他の旅商人の報告によりますと、通り道で濃霧が発生し、その濃霧を抜ける途中傭兵崩れの盗賊団に襲われたとのことです。それでは皆様、よろしくお願いいたします」
何人かのハンターが、依頼を受けようと立ち上がった。
リプレイ本文
●出発前
馬車の後方に陣取り、後ろからの襲撃に対して警戒するつもりのクオン・サガラ(ka0018)は、目立つ鎧を駆使しての囮を務める予定だった。
「相変わらず、治安はお察しで……。リアルブルーの人間としては道路の整備とそれを警戒する組織の設立を求めたい所ですが、今は私たちが頑張るしかないですね」
同じく馬車の護衛として、馬車の後ろについて護る夢路 まよい(ka1328)は、急ぐ馬車にもついていけるように訓練された馬に騎乗している。
「緊急の依頼のほうが、かえってハンター達に安心されるっていうのもどうかと思うけど、まあジェーンの斡旋する依頼だしねえ。食べ物が腐っちゃうと勿体ないし、まあ頑張って届けようかな」
馬車の隣を担当するサクラ・エルフリード(ka2598)は、馬車と並走しながら魔導スマートフォンで先行班からの連絡を都度受け取り、その情報を御者に伝える役目も受け持つ。
「早めに届けなければいけないのに、濃い霧で道が見えづらく、更に襲撃まで、とは……。踏んだり蹴ったりですね……」
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は濃霧が出ても急ぐ方針を変えない依頼人に、無理をすると考えていた。
「まあ、そうしないと商品がダメになるというのなら仕方がないが……。荷物の密閉や固定は大丈夫か? いくら急ぐとしても商品がダメになったら意味がないからな」
依頼人である商人が答えるには、振動対策に毛布と耐水性のシートを用意してあるそうで、しっかりと毛布と耐水シートで二重に商品を包み、密閉した上で積み込んでいるらしい。
バイクに乗り馬車を護衛する支度を行う鳳凰院ひりょ(ka3744)はため息をついた。
「急いでいる時に限って……、まったく……」
もし盗賊が出てくれば、倒すのを目的にするのではなく、こちらの馬車の進行を妨げさせない程度に留めるつもりでいた。
魔法に銃、さらには刀を用いての衝撃波など、遠距離攻撃手段は豊富にある。
「馬を休ませず走らせろと。……やれやれ、今度はバイクを乗りこなせるようにもう少し練習しておくか……」
馬車に併走し、サクラと供に馬車及び荷台の安全を守る役目のレイア・アローネ(ka4082)は、万が一御者がいなければ自分がやろうと思っていたが、依頼人が御者席に座っているのを見て思うだけに留めた。
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は、進路の街道地図をしっかり暗記した上で、魔道アシスト付きのママチャリを駆って、胸を張って依頼人の前に立つ。
「ニンジャの脚力にかかれば、チャリは馬やバイクより早いんだからっ。……必ず荷物を期限までに届けますから、犬船に乗ったつもりでいてください」
毛布と耐水シートの中身は木箱で、その中に積み荷である食料品が詰まっている。
これだけではまだ不十分だということで、フィロ(ka6966)を中心にさらに対策を取ることになった。
「全員で行えば時間は短縮できます。この手間を惜しむ方が後々ロスになるのではないでしょうか、ご主人様?」
木箱が悪路で荷台を跳ね回り中身が傷んだりしないよう、全員で木箱が荷台を跳ね回らないよう藁等でしっかり隙間を詰め、更に白色の布を荷台にかけ日除けと矢避けにする。
そしてフィロは荷馬車を引く馬を見て、依頼人にもう一つ質問した。
「この子たちの耳を塞いでも走る事は可能でしょうか、ご主人様? 戦馬は人にも轟音にも驚かぬ訓練受けていますが、荷馬はそうではありません。襲撃や迎撃の銃撃音に驚いて入りだしてしまうような子達であるならば、耳栓をした方が良いかもしれません」
フィロの申し出に確かにと頷いた依頼人は、手早く耳栓を用意して馬の耳に詰める。
準備が完了し、慌ただしく一行は出発した。
さあ、依頼の始まりだ!
●とにかく急げ!
周辺の安全確保を行いながら進んでいたアルトとフィロ、ルンルンは、馬車の前方警戒に当たり濃霧を発見していた。
ルンルンが電話と無線を駆使して、濃霧が出たことを馬車組に伝えてナビゲートを行う。
その際、濃霧の周りは人が伏せられそうな地形だったので、不可視のマテリアルの結界を敷き、その中の生命体の位置を把握する符術を行う。
いくつもの反応をキャッチするが、大きさまでは特定できないのでどれが本物の反応かは分からない。
ただ、明らかに地形的に怪しい場所に密集している反応があるので、そこが怪しい。
気付かない振りをしつつその点もきっちり連絡を入れ、ついでに敵が進路に選びそうな箇所にこっそり、誰かが踏み込むと不可視の結界を展開する符を仕掛けておく。
続いて、濃霧の向こうに大木がそびえているのを発見する。
「ルンルン忍法壁走りの術!」
チャリで一気に向かい、飛び降りて大木を駆け上ったルンルンは、霧より上に出て周囲を見渡す。
路面状況や道の方向を確認しながら、馬車が迷ったり横転する事がないようにそこから先導を行うことにした。
「その先路面状況とカーブに気を付けて」
先導を受け、馬車がゆっくりと濃霧に突入した。
「我ながら、馬よりこっちの方が早いとはいえ、シュールな感じではあるが……」
濃霧の中はどこから攻撃が来るか分からないので、アルトは比較的馬車の傍にいるように位置を変えた。
ルンルンが見張っているとはいえ、遠くが見えない以上襲われた時に傍にいなければ護衛のしようがないからだ。
早速ルンルンから警告が来た。
傭兵崩れの盗賊たちが動き出したらしい。
しかし、何人かがルンルンの結界に引っかかったので、足取りが乱れている。
時を同じくして矢が飛んでくるが、アルトは容易く回避すると飛んできた矢の方角から敵の大まかな位置を割り出し、手裏剣の軌道をマテリアルで操りながら投げつける。
複雑な軌道を描き、手裏剣は盗賊たちを何人か斬り裂いて一人に突き刺さった。
怪我を負った数人が馬車の追跡から脱落するが、追手はまだまだ大勢いる。
引き続き対応する必要があるだろう。
霧の中の明かりは灯火の水晶球とバイクのランプで確保し、重魔導バイクを走らせながら軍用双眼鏡で周囲を確認していたフィロは、飛び出してきた傭兵崩れの盗賊たちに仲間への注意喚起を兼ね、即座に銃剣付き騎兵銃で銃撃を加えた。
濃霧の中を進む馬車の護衛はそのまま仲間たちに託し、フィロ自体は重魔導バイクのスピードを上げ、早目に濃霧地帯からの離脱を目指す。
魔導スマートフォンで濃霧の規模と走行路を尋ねると、ルンルンから正確な数値と位置情報が返ってきた。
どうやらどこかに登って見張りをしているようだ。
一足早く濃霧を抜けると、馬車が来るまで道の脇に寄り、足を止めて周囲の警戒を行う。
何人かフィロを追いかけてきたのか、それとも濃霧の中に入らなかったのか、傭兵崩れが襲い掛かってきたので、重剣付き騎兵銃で応戦する。
一般人対オートマトンではまるで勝負にならず、傭兵崩れたちは容易く蹴散らされた。
馬車の周辺に残り敵の襲撃を飛んできた矢から確認したレイアは、魔導剣を抜き放つと矢が飛んできた方角に振り抜く。
発生した衝撃波が空を裂いて飛び濃霧の中に消えた。
当たるとはレイア自身思わないが、威嚇と仲間の援護の意味合いも兼ねるので問題ない。
出来るだけ馬車の近くでの戦闘は避けたいので、レイアは馬車から心持ち距離を取った。
濃霧を裂いて飛んでくる矢を、守りに適した構えとマテリアルを漲らせ、感覚を空間に拡張させることで行うベクトル操作で敵が馬車に向かないように引き付ける。
本来ならあり得ない軌道で飛んでくる矢を、鎧の装甲部分に当ててダメージを抑え、魔導剣にマテリアルを流し込み、強化して敵がいるであろう矢が飛んできた方角へ突進した。
「赤字覚悟での依頼ならば最低限期待には応えないとな……!」
案の定いた傭兵崩れらしき集団に飛び込み、暴れ回って追い散らすと、深追いはせず、馬を急がせ馬車に合流する。
いつまで経っても馬車が止まらないことに業を煮やしたか、次々と傭兵崩れたちが肉眼で視認できる至近距離にまで詰めてきた。
ひりょは盗賊が騎乗する馬の足元を狙って魔法の矢を放ち、馬を躓かせ盗賊を落馬させる。
続いて名刀を抜き放ち、マテリアルを溜めて衝撃波を放つ。
横薙ぎに放たれた衝撃波は、地面すれすれを抉るように飛び、彼らの馬の脚に直撃して転倒させ、盛大に土砂をぶちまけさせた。
「すまないがこっちは急いでいる。ご退場願おうか?」
ひりょはもう一撃衝撃波を馬車の目前に広がる濃霧へ向けて繰り出す。
馬車の進行を阻害する濃霧の除去に尽力しようという心積もりだったが、衝撃波はそのまま濃霧に呑み込まれて消えた。
(駄目だったか。急ぎの依頼だが、やる事は結構多いな、忙しい限りだ……)
飛んでくる矢に対して機敏に反応し、馬車への射線に入り斬り払って被害を軽減していく。
自分でも傭兵崩れに気付いたまよいは、即座に魔法の詠唱を始めた。
「果てなき夢路に迷え……ドリームメイズ!」
神秘的な迷路の幻影が描き出され、姿を現した傭兵崩れを何人か包み込む。
幻影に包み込まれた傭兵崩れたちは、次第に夢と現の境が薄れ、抗い難い深い眠りに誘われた。
眠りこけた傭兵崩れたちがバランスを崩し落馬する。
それで諦めてくれるなら良かったが、傭兵崩れたちは諦め悪く追いかけるのを止めない。
(他にどうしようもないし、仕方ないよね)
まよいは魔法の矢を複数作り出す。
馬を狙って追いかけられないようにしても良かったが、それはそれで馬がかわいそうな気がしたし、どの道濃霧では精密な狙いはつけようがないので、まよいは当たるに任せる。
「悪いけど、急ぎの旅だからね!」
号令とともに放たれた矢が、傭兵崩れや彼らが乗る馬を射抜く。
倒した敵はその場にほったらかし、まよいは馬車を追いかけ先を急いだ。
戦闘は基本的に護衛を行う仲間に任せ、サクラは霧を突破し街まで最速で到着する事を最優先に考える。
しかし、自分が護る側面にも傭兵崩れが何人か現れたため、迎撃体勢に移行した。
「こちらの邪魔をしないでください……。今、忙しいのであなた達の相手をしている暇はないんです……」
サクラの武器は魔導機械とそれにつながる引き金のついた柄を持つバスタードソードだ。
銃身に沿って刃が取り付けられており、剣先から銃弾を発射できる構造になっている。
近接射程外で剣を無駄に構えているように見せかけ、寄って来ようとしたところで再び銃撃し、魔法を撃ち込んで攻撃する。
その際乗っている者を馬から落とすか、馬そのものを狙った。
「この武器をただの剣だと思ったのがそちらの敗因ですよ……。見た目に騙されない事です……」
薬莢を排出し次弾を装填したサクラは、撃たれた痛みや落馬の衝撃で呻く傭兵崩れを残し、再び濃霧からの脱出を目指した。
追跡してくる傭兵崩れを確認したクオンは、反転しするとマテリアルで形成した光の障壁に雷撃を纏わせ、身を守ると同時に敵を弾き飛ばす攻性防壁を展開して正面から迎え撃つ。
アサルトライフルを構え、連続射撃により弾幕を張り、足止めする。
さらに追加で弾幕を巻き散らした。
「まあ、倒せればいいんですが……今の火力では馬ですら怪しいのであくまでも足止めですね……」
ある程度掻き回して傭兵崩れたちが浮足立つのを確認すると、クオンはわざと馬車とは別の方向に離脱した。
追ってきた傭兵崩れが剣を振り上げた瞬間、魔力を帯びた雷撃を放って応戦し、麻痺させる。
「馬車が到着したら現地の衛兵に報告して戻って山賊を回収……する余裕はあればやっておきたいですけどね……」
再び適当な所で反転して追跡を誘い、同じように雷撃するというのを繰り返し、敵の進行速度減退に努めた。
●積み荷の状態は?
傭兵崩れを撃破し、濃霧を抜ければ、後は目的地まで走り抜けるだけだ。
群を抜く移動速度を誇るアルトが、その脚力を全開にし、全力で先行する。
魔導機関の助力もあるとはいえ、冗談じみた速度が出ている。
それもそのはず、アルトは炎のようなオーラを纏い、同時に体内のマテリアルも制御し、自身の残像すらも吹き飛ばすかの勢いで、内外から強引に全身を超加速させているのだ。
その様は、紅き花弁が舞い散るかの如く。『飛花落葉』、戦場で咲くその花の跡には命が落ちている。
だが、ママチャリだ。
急いで運んだ分が待機時間で無駄になってしまったり、馬車を受け入れに手間取ってしまってはもったいないので、街の検問所に着くと、事情を説明し急ぎの馬車がもうすぐ来ることを伝え、検問準備を早めに始めてもらう。
スムーズに検問を終えて街に入った商人はニコニコと上機嫌だった。
「いやあ、思っていたよりすごく早く着いて、簡単に検問も抜けられて助かったよ! 腐ってなかったし、しっかり内と外から梱包してくれたおかげで崩れてもいなかった! ありがとう! これ、報酬ね! 機会があればまたよろしく頼むよ!」
全員にぎっしりと貨幣が詰まった袋を手渡すと、商人は慌てて荷馬車に飛び乗った。
「おっとこうしちゃいられない! さっそく売りに行かないと!」
慌ただしく去っていく商人を見送ったハンターたちは、次の目的のために各々動き出した。
ある者は拠点に戻るために転移門へ向かい、ある者はせっかく来たので街の観光を始め、またある者は店を冷やかす。
そんな中、アルトは傭兵崩れの盗賊たちについて、街の衛兵に報告を行った。
それからしばらくした後、街道では衛兵たちを引き連れ再びママチャリを駆って来た道を爆走するアルトの姿があったという。
馬車の後方に陣取り、後ろからの襲撃に対して警戒するつもりのクオン・サガラ(ka0018)は、目立つ鎧を駆使しての囮を務める予定だった。
「相変わらず、治安はお察しで……。リアルブルーの人間としては道路の整備とそれを警戒する組織の設立を求めたい所ですが、今は私たちが頑張るしかないですね」
同じく馬車の護衛として、馬車の後ろについて護る夢路 まよい(ka1328)は、急ぐ馬車にもついていけるように訓練された馬に騎乗している。
「緊急の依頼のほうが、かえってハンター達に安心されるっていうのもどうかと思うけど、まあジェーンの斡旋する依頼だしねえ。食べ物が腐っちゃうと勿体ないし、まあ頑張って届けようかな」
馬車の隣を担当するサクラ・エルフリード(ka2598)は、馬車と並走しながら魔導スマートフォンで先行班からの連絡を都度受け取り、その情報を御者に伝える役目も受け持つ。
「早めに届けなければいけないのに、濃い霧で道が見えづらく、更に襲撃まで、とは……。踏んだり蹴ったりですね……」
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は濃霧が出ても急ぐ方針を変えない依頼人に、無理をすると考えていた。
「まあ、そうしないと商品がダメになるというのなら仕方がないが……。荷物の密閉や固定は大丈夫か? いくら急ぐとしても商品がダメになったら意味がないからな」
依頼人である商人が答えるには、振動対策に毛布と耐水性のシートを用意してあるそうで、しっかりと毛布と耐水シートで二重に商品を包み、密閉した上で積み込んでいるらしい。
バイクに乗り馬車を護衛する支度を行う鳳凰院ひりょ(ka3744)はため息をついた。
「急いでいる時に限って……、まったく……」
もし盗賊が出てくれば、倒すのを目的にするのではなく、こちらの馬車の進行を妨げさせない程度に留めるつもりでいた。
魔法に銃、さらには刀を用いての衝撃波など、遠距離攻撃手段は豊富にある。
「馬を休ませず走らせろと。……やれやれ、今度はバイクを乗りこなせるようにもう少し練習しておくか……」
馬車に併走し、サクラと供に馬車及び荷台の安全を守る役目のレイア・アローネ(ka4082)は、万が一御者がいなければ自分がやろうと思っていたが、依頼人が御者席に座っているのを見て思うだけに留めた。
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は、進路の街道地図をしっかり暗記した上で、魔道アシスト付きのママチャリを駆って、胸を張って依頼人の前に立つ。
「ニンジャの脚力にかかれば、チャリは馬やバイクより早いんだからっ。……必ず荷物を期限までに届けますから、犬船に乗ったつもりでいてください」
毛布と耐水シートの中身は木箱で、その中に積み荷である食料品が詰まっている。
これだけではまだ不十分だということで、フィロ(ka6966)を中心にさらに対策を取ることになった。
「全員で行えば時間は短縮できます。この手間を惜しむ方が後々ロスになるのではないでしょうか、ご主人様?」
木箱が悪路で荷台を跳ね回り中身が傷んだりしないよう、全員で木箱が荷台を跳ね回らないよう藁等でしっかり隙間を詰め、更に白色の布を荷台にかけ日除けと矢避けにする。
そしてフィロは荷馬車を引く馬を見て、依頼人にもう一つ質問した。
「この子たちの耳を塞いでも走る事は可能でしょうか、ご主人様? 戦馬は人にも轟音にも驚かぬ訓練受けていますが、荷馬はそうではありません。襲撃や迎撃の銃撃音に驚いて入りだしてしまうような子達であるならば、耳栓をした方が良いかもしれません」
フィロの申し出に確かにと頷いた依頼人は、手早く耳栓を用意して馬の耳に詰める。
準備が完了し、慌ただしく一行は出発した。
さあ、依頼の始まりだ!
●とにかく急げ!
周辺の安全確保を行いながら進んでいたアルトとフィロ、ルンルンは、馬車の前方警戒に当たり濃霧を発見していた。
ルンルンが電話と無線を駆使して、濃霧が出たことを馬車組に伝えてナビゲートを行う。
その際、濃霧の周りは人が伏せられそうな地形だったので、不可視のマテリアルの結界を敷き、その中の生命体の位置を把握する符術を行う。
いくつもの反応をキャッチするが、大きさまでは特定できないのでどれが本物の反応かは分からない。
ただ、明らかに地形的に怪しい場所に密集している反応があるので、そこが怪しい。
気付かない振りをしつつその点もきっちり連絡を入れ、ついでに敵が進路に選びそうな箇所にこっそり、誰かが踏み込むと不可視の結界を展開する符を仕掛けておく。
続いて、濃霧の向こうに大木がそびえているのを発見する。
「ルンルン忍法壁走りの術!」
チャリで一気に向かい、飛び降りて大木を駆け上ったルンルンは、霧より上に出て周囲を見渡す。
路面状況や道の方向を確認しながら、馬車が迷ったり横転する事がないようにそこから先導を行うことにした。
「その先路面状況とカーブに気を付けて」
先導を受け、馬車がゆっくりと濃霧に突入した。
「我ながら、馬よりこっちの方が早いとはいえ、シュールな感じではあるが……」
濃霧の中はどこから攻撃が来るか分からないので、アルトは比較的馬車の傍にいるように位置を変えた。
ルンルンが見張っているとはいえ、遠くが見えない以上襲われた時に傍にいなければ護衛のしようがないからだ。
早速ルンルンから警告が来た。
傭兵崩れの盗賊たちが動き出したらしい。
しかし、何人かがルンルンの結界に引っかかったので、足取りが乱れている。
時を同じくして矢が飛んでくるが、アルトは容易く回避すると飛んできた矢の方角から敵の大まかな位置を割り出し、手裏剣の軌道をマテリアルで操りながら投げつける。
複雑な軌道を描き、手裏剣は盗賊たちを何人か斬り裂いて一人に突き刺さった。
怪我を負った数人が馬車の追跡から脱落するが、追手はまだまだ大勢いる。
引き続き対応する必要があるだろう。
霧の中の明かりは灯火の水晶球とバイクのランプで確保し、重魔導バイクを走らせながら軍用双眼鏡で周囲を確認していたフィロは、飛び出してきた傭兵崩れの盗賊たちに仲間への注意喚起を兼ね、即座に銃剣付き騎兵銃で銃撃を加えた。
濃霧の中を進む馬車の護衛はそのまま仲間たちに託し、フィロ自体は重魔導バイクのスピードを上げ、早目に濃霧地帯からの離脱を目指す。
魔導スマートフォンで濃霧の規模と走行路を尋ねると、ルンルンから正確な数値と位置情報が返ってきた。
どうやらどこかに登って見張りをしているようだ。
一足早く濃霧を抜けると、馬車が来るまで道の脇に寄り、足を止めて周囲の警戒を行う。
何人かフィロを追いかけてきたのか、それとも濃霧の中に入らなかったのか、傭兵崩れが襲い掛かってきたので、重剣付き騎兵銃で応戦する。
一般人対オートマトンではまるで勝負にならず、傭兵崩れたちは容易く蹴散らされた。
馬車の周辺に残り敵の襲撃を飛んできた矢から確認したレイアは、魔導剣を抜き放つと矢が飛んできた方角に振り抜く。
発生した衝撃波が空を裂いて飛び濃霧の中に消えた。
当たるとはレイア自身思わないが、威嚇と仲間の援護の意味合いも兼ねるので問題ない。
出来るだけ馬車の近くでの戦闘は避けたいので、レイアは馬車から心持ち距離を取った。
濃霧を裂いて飛んでくる矢を、守りに適した構えとマテリアルを漲らせ、感覚を空間に拡張させることで行うベクトル操作で敵が馬車に向かないように引き付ける。
本来ならあり得ない軌道で飛んでくる矢を、鎧の装甲部分に当ててダメージを抑え、魔導剣にマテリアルを流し込み、強化して敵がいるであろう矢が飛んできた方角へ突進した。
「赤字覚悟での依頼ならば最低限期待には応えないとな……!」
案の定いた傭兵崩れらしき集団に飛び込み、暴れ回って追い散らすと、深追いはせず、馬を急がせ馬車に合流する。
いつまで経っても馬車が止まらないことに業を煮やしたか、次々と傭兵崩れたちが肉眼で視認できる至近距離にまで詰めてきた。
ひりょは盗賊が騎乗する馬の足元を狙って魔法の矢を放ち、馬を躓かせ盗賊を落馬させる。
続いて名刀を抜き放ち、マテリアルを溜めて衝撃波を放つ。
横薙ぎに放たれた衝撃波は、地面すれすれを抉るように飛び、彼らの馬の脚に直撃して転倒させ、盛大に土砂をぶちまけさせた。
「すまないがこっちは急いでいる。ご退場願おうか?」
ひりょはもう一撃衝撃波を馬車の目前に広がる濃霧へ向けて繰り出す。
馬車の進行を阻害する濃霧の除去に尽力しようという心積もりだったが、衝撃波はそのまま濃霧に呑み込まれて消えた。
(駄目だったか。急ぎの依頼だが、やる事は結構多いな、忙しい限りだ……)
飛んでくる矢に対して機敏に反応し、馬車への射線に入り斬り払って被害を軽減していく。
自分でも傭兵崩れに気付いたまよいは、即座に魔法の詠唱を始めた。
「果てなき夢路に迷え……ドリームメイズ!」
神秘的な迷路の幻影が描き出され、姿を現した傭兵崩れを何人か包み込む。
幻影に包み込まれた傭兵崩れたちは、次第に夢と現の境が薄れ、抗い難い深い眠りに誘われた。
眠りこけた傭兵崩れたちがバランスを崩し落馬する。
それで諦めてくれるなら良かったが、傭兵崩れたちは諦め悪く追いかけるのを止めない。
(他にどうしようもないし、仕方ないよね)
まよいは魔法の矢を複数作り出す。
馬を狙って追いかけられないようにしても良かったが、それはそれで馬がかわいそうな気がしたし、どの道濃霧では精密な狙いはつけようがないので、まよいは当たるに任せる。
「悪いけど、急ぎの旅だからね!」
号令とともに放たれた矢が、傭兵崩れや彼らが乗る馬を射抜く。
倒した敵はその場にほったらかし、まよいは馬車を追いかけ先を急いだ。
戦闘は基本的に護衛を行う仲間に任せ、サクラは霧を突破し街まで最速で到着する事を最優先に考える。
しかし、自分が護る側面にも傭兵崩れが何人か現れたため、迎撃体勢に移行した。
「こちらの邪魔をしないでください……。今、忙しいのであなた達の相手をしている暇はないんです……」
サクラの武器は魔導機械とそれにつながる引き金のついた柄を持つバスタードソードだ。
銃身に沿って刃が取り付けられており、剣先から銃弾を発射できる構造になっている。
近接射程外で剣を無駄に構えているように見せかけ、寄って来ようとしたところで再び銃撃し、魔法を撃ち込んで攻撃する。
その際乗っている者を馬から落とすか、馬そのものを狙った。
「この武器をただの剣だと思ったのがそちらの敗因ですよ……。見た目に騙されない事です……」
薬莢を排出し次弾を装填したサクラは、撃たれた痛みや落馬の衝撃で呻く傭兵崩れを残し、再び濃霧からの脱出を目指した。
追跡してくる傭兵崩れを確認したクオンは、反転しするとマテリアルで形成した光の障壁に雷撃を纏わせ、身を守ると同時に敵を弾き飛ばす攻性防壁を展開して正面から迎え撃つ。
アサルトライフルを構え、連続射撃により弾幕を張り、足止めする。
さらに追加で弾幕を巻き散らした。
「まあ、倒せればいいんですが……今の火力では馬ですら怪しいのであくまでも足止めですね……」
ある程度掻き回して傭兵崩れたちが浮足立つのを確認すると、クオンはわざと馬車とは別の方向に離脱した。
追ってきた傭兵崩れが剣を振り上げた瞬間、魔力を帯びた雷撃を放って応戦し、麻痺させる。
「馬車が到着したら現地の衛兵に報告して戻って山賊を回収……する余裕はあればやっておきたいですけどね……」
再び適当な所で反転して追跡を誘い、同じように雷撃するというのを繰り返し、敵の進行速度減退に努めた。
●積み荷の状態は?
傭兵崩れを撃破し、濃霧を抜ければ、後は目的地まで走り抜けるだけだ。
群を抜く移動速度を誇るアルトが、その脚力を全開にし、全力で先行する。
魔導機関の助力もあるとはいえ、冗談じみた速度が出ている。
それもそのはず、アルトは炎のようなオーラを纏い、同時に体内のマテリアルも制御し、自身の残像すらも吹き飛ばすかの勢いで、内外から強引に全身を超加速させているのだ。
その様は、紅き花弁が舞い散るかの如く。『飛花落葉』、戦場で咲くその花の跡には命が落ちている。
だが、ママチャリだ。
急いで運んだ分が待機時間で無駄になってしまったり、馬車を受け入れに手間取ってしまってはもったいないので、街の検問所に着くと、事情を説明し急ぎの馬車がもうすぐ来ることを伝え、検問準備を早めに始めてもらう。
スムーズに検問を終えて街に入った商人はニコニコと上機嫌だった。
「いやあ、思っていたよりすごく早く着いて、簡単に検問も抜けられて助かったよ! 腐ってなかったし、しっかり内と外から梱包してくれたおかげで崩れてもいなかった! ありがとう! これ、報酬ね! 機会があればまたよろしく頼むよ!」
全員にぎっしりと貨幣が詰まった袋を手渡すと、商人は慌てて荷馬車に飛び乗った。
「おっとこうしちゃいられない! さっそく売りに行かないと!」
慌ただしく去っていく商人を見送ったハンターたちは、次の目的のために各々動き出した。
ある者は拠点に戻るために転移門へ向かい、ある者はせっかく来たので街の観光を始め、またある者は店を冷やかす。
そんな中、アルトは傭兵崩れの盗賊たちについて、街の衛兵に報告を行った。
それからしばらくした後、街道では衛兵たちを引き連れ再びママチャリを駆って来た道を爆走するアルトの姿があったという。
依頼結果
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相談卓 夢路 まよい(ka1328) 人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2018/09/06 22:57:32 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/09/06 21:25:24 |