ゲスト
(ka0000)
寄生虫の恐怖
マスター:きりん

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/09/10 12:00
- 完成日
- 2018/09/12 10:26
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●動物の肉
クリムゾンウエストでは、リアルブルーでは一般的な牛、豚、鳥の肉以外にも、様々な動物の肉が食肉として親しまれている。
中には肉食動物の肉もあり、臭みがあったり筋張っていたりするものの、処理の仕方でどうにかなる問題だった。
とある街でのこと。
「串焼き、串焼きはいかがかねー」
屋台で串焼きを焼く男が、肉と葱を串に刺して焼いたものを売っていた。
味付けは塩、あるいはタレだ。
使っている肉は牛でも豚でも鳥でもない。
街の外でハンターに退治された肉食動物の肉だ。
その肉食動物は街の外に出た人間を襲って喰い殺したことで有名になり、ただの動物でありながらハンターに討伐依頼が入った経緯がある。
だが、どうしてその喰われた人間が外に出たのか、運悪く肉食動物に発見されてしまったのか、その理由が詮索されることはなく、偶然の一言で片付けられた。
故に、知る者は少ない。
一連の事件の裏で、糸を引いていたものの存在を。
●寄生虫雑魔
それは元を正せばただの寄生虫だった。
虫を宿主とし、その虫を操ってわざと捕食動物の目の前に姿を晒して捕食させ、捕食動物に寄生して産卵し、卵をフンと一緒に排泄させ、そのフンを食べる虫に再び寄生するというサイクルを繰り返す。
そんな人間とは全く関係ない寄生虫だったのだが、それが何らかの要因で雑魔となった時、全てが変わった。
宿主に寄生するという習性はそのままに、その宿主に人間を選ぶようになったのだ。
「串焼きを……これで一本売ってくれ」
「まいどー」
ホームレスが、串焼きを売る男から一本串焼きを購入する。
その串焼きに使われた肉に寄生しているモノの存在に気付くこともなく、食べてしまったのだった。
●寄生された人間は……
次の日。
あの串焼きを食べたホームレスが、ふらふらとおぼつかない足取りで通りを歩いていた。
ぎょろぎょろと目を左右別々に動かしている姿はとても奇妙だったが、彼に注意を向ける者はいなかった。
まるでホームレスの存在になど、誰も気付いていないかのように。
ごく少数、気付いて声をかける者もいたが、ホームレスは彼らに向かって猛然と走り出し、噛み付く。
その際噛まれた傷口から小さな何かが彼らの体内に入り込んだが、驚いた彼らはそれに気付かず噛み付かれた箇所を押さえ逃げていった。
ホームレスは彼らがいなくなると再び街の外を目指す。
ボロボロの服を着た姿のまま、武器さえ身に帯びずに、肉食動物や時には雑魔さえ出ることもある、街の外へと出てしまった。
街の外に出たホームレスは、どこかに隠れるでもなく、街道を堂々と歩き、やがて森の中に入った。
準備もせずに街道を離れるのは自殺行為だ。
それに、街道から離れてしまえば肉食動物に捕捉される確率は高くなる。
案の定、ホームレスは肉食動物に見つかってしまった。
しかし、逃げるどころかホームレスは肉食動物に向かって歩き出し、地面に倒れた。
肉食動物はホームレスに近付き、やがてホームレスの肉を喰らい始めた。
喰い殺されるまでの間、ホームレスはぎょろぎょろと左右の目をばらばらに動かし続けていた。
●ハンターズソサエティ
受付嬢の一人であるジェーン・ドゥが、依頼を一つ選んで席を立ち、ハンターたちの下へやってきた。
依頼の斡旋である。
「事件です」
若干青い顔色で、ジェーンが依頼の説明を始める。
「最近、元が寄生虫と思われる雑魔による被害が多発しています。この雑魔は寄生された動物の肉や宿主との直接接触を介して人間に寄生すると脳にまで達し、意識を乗っ取って外に出て、肉食動物に食べさせて再び動物に寄生するという行動を繰り返しています」
誰かがごくりと唾を飲み込む音が聞こえる。
「どうやら寄生虫だった頃の行動を繰り返しているようです。寄生されて喰われた人間の身体を解剖したところ、身体の中はスカスカになっていて、特に頭蓋骨の中身が丸ごと寄生虫雑魔に入れ替わっていることが判明しました」
ジェーンは淡々と説明を続けた。
「肉体的にはまだ生きていても寄生された時点で人としては死亡しています。また、街の外に出るのを止めようとした人間に対し宿主を襲い掛からせ、自分の身体の一部を切り離して寄生させることも確認されています。これ以上の被害を出すわけにはいきません。街の人間に注意を呼び掛けるとともに、不自然に街の外に出ようとする人間を捕まえ、寄生された人間でないか確かめてください。寄生されている人間は目が寄生虫のものに入れ替わって蠢いているので分かるそうです。寄生されていた場合は、真に痛ましいことですが、これ以上の感染を防ぐためにも処理が必要でしょう。感染源である動物や、元となった寄生虫への対応については、また別のハンターたちを向かわせるそうですので、街でこれ以上感染が広がらないよう寄生された人間への対応を最優先にお願いいたします」
最後にジェーンは深く頭を下げ、話を締め括った。
クリムゾンウエストでは、リアルブルーでは一般的な牛、豚、鳥の肉以外にも、様々な動物の肉が食肉として親しまれている。
中には肉食動物の肉もあり、臭みがあったり筋張っていたりするものの、処理の仕方でどうにかなる問題だった。
とある街でのこと。
「串焼き、串焼きはいかがかねー」
屋台で串焼きを焼く男が、肉と葱を串に刺して焼いたものを売っていた。
味付けは塩、あるいはタレだ。
使っている肉は牛でも豚でも鳥でもない。
街の外でハンターに退治された肉食動物の肉だ。
その肉食動物は街の外に出た人間を襲って喰い殺したことで有名になり、ただの動物でありながらハンターに討伐依頼が入った経緯がある。
だが、どうしてその喰われた人間が外に出たのか、運悪く肉食動物に発見されてしまったのか、その理由が詮索されることはなく、偶然の一言で片付けられた。
故に、知る者は少ない。
一連の事件の裏で、糸を引いていたものの存在を。
●寄生虫雑魔
それは元を正せばただの寄生虫だった。
虫を宿主とし、その虫を操ってわざと捕食動物の目の前に姿を晒して捕食させ、捕食動物に寄生して産卵し、卵をフンと一緒に排泄させ、そのフンを食べる虫に再び寄生するというサイクルを繰り返す。
そんな人間とは全く関係ない寄生虫だったのだが、それが何らかの要因で雑魔となった時、全てが変わった。
宿主に寄生するという習性はそのままに、その宿主に人間を選ぶようになったのだ。
「串焼きを……これで一本売ってくれ」
「まいどー」
ホームレスが、串焼きを売る男から一本串焼きを購入する。
その串焼きに使われた肉に寄生しているモノの存在に気付くこともなく、食べてしまったのだった。
●寄生された人間は……
次の日。
あの串焼きを食べたホームレスが、ふらふらとおぼつかない足取りで通りを歩いていた。
ぎょろぎょろと目を左右別々に動かしている姿はとても奇妙だったが、彼に注意を向ける者はいなかった。
まるでホームレスの存在になど、誰も気付いていないかのように。
ごく少数、気付いて声をかける者もいたが、ホームレスは彼らに向かって猛然と走り出し、噛み付く。
その際噛まれた傷口から小さな何かが彼らの体内に入り込んだが、驚いた彼らはそれに気付かず噛み付かれた箇所を押さえ逃げていった。
ホームレスは彼らがいなくなると再び街の外を目指す。
ボロボロの服を着た姿のまま、武器さえ身に帯びずに、肉食動物や時には雑魔さえ出ることもある、街の外へと出てしまった。
街の外に出たホームレスは、どこかに隠れるでもなく、街道を堂々と歩き、やがて森の中に入った。
準備もせずに街道を離れるのは自殺行為だ。
それに、街道から離れてしまえば肉食動物に捕捉される確率は高くなる。
案の定、ホームレスは肉食動物に見つかってしまった。
しかし、逃げるどころかホームレスは肉食動物に向かって歩き出し、地面に倒れた。
肉食動物はホームレスに近付き、やがてホームレスの肉を喰らい始めた。
喰い殺されるまでの間、ホームレスはぎょろぎょろと左右の目をばらばらに動かし続けていた。
●ハンターズソサエティ
受付嬢の一人であるジェーン・ドゥが、依頼を一つ選んで席を立ち、ハンターたちの下へやってきた。
依頼の斡旋である。
「事件です」
若干青い顔色で、ジェーンが依頼の説明を始める。
「最近、元が寄生虫と思われる雑魔による被害が多発しています。この雑魔は寄生された動物の肉や宿主との直接接触を介して人間に寄生すると脳にまで達し、意識を乗っ取って外に出て、肉食動物に食べさせて再び動物に寄生するという行動を繰り返しています」
誰かがごくりと唾を飲み込む音が聞こえる。
「どうやら寄生虫だった頃の行動を繰り返しているようです。寄生されて喰われた人間の身体を解剖したところ、身体の中はスカスカになっていて、特に頭蓋骨の中身が丸ごと寄生虫雑魔に入れ替わっていることが判明しました」
ジェーンは淡々と説明を続けた。
「肉体的にはまだ生きていても寄生された時点で人としては死亡しています。また、街の外に出るのを止めようとした人間に対し宿主を襲い掛からせ、自分の身体の一部を切り離して寄生させることも確認されています。これ以上の被害を出すわけにはいきません。街の人間に注意を呼び掛けるとともに、不自然に街の外に出ようとする人間を捕まえ、寄生された人間でないか確かめてください。寄生されている人間は目が寄生虫のものに入れ替わって蠢いているので分かるそうです。寄生されていた場合は、真に痛ましいことですが、これ以上の感染を防ぐためにも処理が必要でしょう。感染源である動物や、元となった寄生虫への対応については、また別のハンターたちを向かわせるそうですので、街でこれ以上感染が広がらないよう寄生された人間への対応を最優先にお願いいたします」
最後にジェーンは深く頭を下げ、話を締め括った。
リプレイ本文
●依頼開始前
一人が急用で来れなくなり、三人のハンターたちが集まった。
寄生された人を探してやっつけるつもりな夢路 まよい(ka1328)は、それしか方法がないとはいえ割と容赦がなかった。
「不思議な生き物、みたいなご本で、カタツムリを乗っ取って目玉をグルグルにしちゃう寄生虫、みたいなのは読んだことあるけど、人間相手でもそういうことするのがいるんだね」
さすがに異世界とはいえそんな化け物染みた寄生虫はいない……いるかもしれないが、少なくとも現時点では存在が確認されていない。
「え、あくまで雑魔化したからであって、普通はしない? ふーん、そうなんだ」
人の形をした、ナニカ。……聞いているだけで、ズィルバーン・アンネ・早咲(ka3361)には不快だった。
ともあれ、好き嫌いがどうであろうと、任務であればただ排除するのみ。
アンネは任務、寄生虫の掃討を開始する。
ただ、一つ懸念があるとするならば。
「串焼きを売っていた男……無事、なのかな。食事を売る人間が味見もせずに、というのも逆にどうかと思う、けど。もし無事なようなら、肉を売った客たちの特徴とか、先に聞いておいてもいいかもしれ、ない」
まず、アンネは串焼きを売っている男をあたることにしたようだ。
レイア・アローネ(ka4082)は、被害者の悲惨さと、普段からの様子ではあまり見られないうさんくさい受付嬢の姿が印象に残ったようだった。
「あまり気分のいい依頼ではないな……ジェーンまで顔色を変えていたか…………いや、あいつは割とこういうの苦手なのか?」
考え込んだレイアは、以前受けた肝試しの依頼を思い出し、ジェーンについてはそうでもないかもしれないと思い直したようだ。
それでも事件が悲惨であることには変わりない。
「中身が喰われているとはむごいな……。せめて遺体を弔ってやろう」
思い思いの感情を胸に、ハンターたちは街に散らばっていく。
さあ、依頼の始まりだ!
●寄生虫の宿主を探せ!
最優先は街の出入口の封鎖だ。
空から調べるまよいに上空の見張りを任せ、レイアはアンネと二人でそれぞれの出入口を張り込むつもりだった。
今回必要なのは戦力よりも人手なので、固まって行動するのではなく、方々に散ってレイアは門の確保を目指す。
同じように、別の門を押さえるためアンネも行動しているはずだ。
「……伝話とトランシーバーを両方携帯しているし、連絡については問題ないな」
懐にしまった二つの道具の感触を服越しに確かめ、レイアは足早に歩く。
空でまよいが飛び回っているのが見えた。
何かあれば、レイアは空から見るまよいの指示に従うつもりだ。
街中の探索に行ってもよかったが、人数的な都合で出入口の確保に回った。
飛行魔法を自分の杖に付与して、まよいは空中を哨戒しながら、街の外へフラフラと向かおうとしている寄生された人間を見つけ出そうと試みていた。
ハンターであるまよいは一般人と比べ目が良く、遠くの物でも少しばかりよく見えるので、限界はあるものの空高くからでも比較的地上の様子をはっきりと窺うことができる。
「ん……んー?」
行き交う人々を上から眺めていたまよいは、何だか微妙な違和感を感じて眉根を寄せた。
きちんと見て回っているはずなのに、妙に見ていた箇所に抜けがあるような気がする。
よくよく思い返せば、集中しているつもりで、やたら気が散る箇所があったような気もする。
「……変だね?」
杖に乗ったまま首を傾げたまよいは、飛行を続けながら眼下の景色を眺めつつ、考え込む。
何というか、意識的に魚の小骨が喉に引っかかった的な違和感があって座りが悪い。
強制的に何かから意識を逸らされそうになっているかのような、曖昧な感覚がある。
まよいは手持ちの通信機を使って、仲間へ異常か分からないけれど何となく怪しい場所を見つけたかもしれないことを連絡し、それが異常であれば暴いてみることにした。
マテリアルの流れを感じながら怪しい箇所を探り、ここだと思った場所で干渉を行う。
その結果、はっきりとその場所に意識を向けられるようになった。
どうやら効果があったようだ。
「……なんか、思ってた以上にいっぱいいる」
ぎょろぎょろと異様さを見せつける巨大な目玉を蠢かせながら、寄生虫に寄生されたらしき人間が四人、フラフラとゾンビのようにおぼつかない歩みで歩いている。
四人とも同じ方向を目指しており、歩いているのは街の外へ出る門に続く道だった。
他の入口を見張っている仲間たちを動かすのも忍びないので、まよいは自分で始末することにした。
中身が寄生虫なら遠慮する必要もない。
複数本一気に出してもろとも殲滅するのでも良かったが、ここは確実性を取って一体ずつ倒した。
ここはまよいの慎重さが功を奏したをいっていいだろう。
一人ずつ狙うことで、寄生虫たちが一斉にまよいに対して排除に動く可能性を摘んだのだから。
引き続き、まよいは上空からの哨戒を続け、宿主と思わしき人間を見つけると仲間たちへ連絡を入れた。
アンネが辿り着いた門は、案外人通りが多かった。
なるほど、これでは誰かが声をかけてしまうかもしれない。
その結果、感染させられていまう可能性は大いにあり得る。
「……案の定、店主も、いなかったし」
門に行くついでに寄ってみた串焼きの屋台は、屋台を残して店主が失踪していた。
残っている串焼きはすっかり冷え切っており、ついさっき屋台を離れたばかりだとは思えない。
客の特徴が聞けなくなったのは痛いが、そこは注意力でカバーだ。
見張っているとまよいから連絡が入り、すぐ近くで怪しい場所を見つけた気がしたから対抗魔法を使ったという連絡を受け、やってくるであろう寄生体を待ち構える。
不審人物が一人目に留まった。
目を顔に不釣り合いな巨大な目をぎょろぎょろと異様に動かす人間。それは二人、門を目指して近付いてくる。
少し前にまよいから発見の連絡を受けており、見た目についての情報を貰ったところ特徴が一致した。
やたらと拡散しがちだった意識が、宿主を明確に認識する。
どうやらまよいが対抗魔法をかけたらしい。
「……優秀」
まよいに対してアンネは賛辞を贈ると、己の魔導猟銃を取り出し突きつける。
無骨な雰囲気を持つ三連装のショットガン型魔導銃の、その暴威を振るわんと撃鉄を起こした。
そのままトリガーを引く。
魔導猟銃が轟音で吠え、ショットシェルが吐き出された。
ショットシェルから無数の散弾が飛び出し、寄生虫ごと頭を吹っ飛ばす。
あくまで邪魔をしないと反応しないのか、もう一体の寄生虫は宿主を操ったまま外を目指している。
薬莢を排出し、アンネは素早く再装填を済ませると、もう一人の宿主に照準を合わせ、今度は胴体を吹っ飛ばす。
「目標を照準に、捕捉……発射」
淡々と呟くと、ぎょろりと自分を見つめる寄生虫の目を見つめ返しながら、寄生虫雑魔が寄生する頭部に銃撃を叩き込んだ。
残るのは頭がはじけ飛んだ死体が二つ。一つは胴体も吹き飛んでいる。
もし複数同時に向かって来た場合は、機導術を使用して複数同時攻撃も視野に入れていたが、幸い邪魔をされて反転してくるのはあくまで邪魔をされた寄生虫の宿主のみらしい。
それからもアンネはまよいから流される情報を元に、寄生虫の宿主を見落とすまいと張り込み続けた。
しばらくしてレイアが見張る門にも寄生虫に侵された宿主らしき人間が二人、近付いてきていた。
「ふむ。あまり状況は良くないか」
認識阻害は空から援護するまよいの協力で見破ることができたレイアだったが、間の悪いことに、少々人通りが多い。
一般人を巻き込まないように即斬り倒す必要がある。
風体が異様とはいえ、人間の姿をしているから時間をかければパニックになるのは避けられないだろう。
そう判断したレイアは、攻めを意識した構えを取ると、自身の生体マテリアルを魔導剣に伝達し、強化して魔法剣にすると、鋭く踏み込みながら魔導剣を突き出し、短期決着を図る。
周りの通行人に詳しく事情を話している暇はない。
悲鳴が上がり、通行人がどよめいて集まってくる。
「心配するな! 雑魔を倒すだけだ!」
すぐに大声で説明したおかげでパニックが起きることこそ防げたものの、通行人を落ち着かせた時間でもう一匹に距離を稼がれている。
脚にマテリアルを集中することで、通常よりすばやく移動することができるようにして追いかけ、壁を駆け上がると建物を飛び越え回り込む。
見物人と化した通行人たちがどよめきを上げる中、回り込むという行為で邪魔されたと判断したのか、激しく目を蠢かせて襲い掛かってきた宿主の攻撃を冷静に避け、返す一撃で腹を貫き、寄生虫が潜む頭までそのまま縦に斬り上げ両断した。
魔導剣についた血液を軽く一振りして払い、鞘に納めると、レイアは両断された宿主の頭から寄生虫雑魔が溢れ、消滅するのを静かに見届けるのだった。
●依頼終了
ハンターたちの努力の甲斐あって、街の寄生虫雑魔は根絶された。
森の動物たちに寄生が広がっていないかどうかなど、いくつか調査しなければならない問題は残っているが、それはまた別のハンターたちの役目だ。
今は街に平和が訪れたことで満足するべきだろう。
今回は、ここで幕引きとする。
一人が急用で来れなくなり、三人のハンターたちが集まった。
寄生された人を探してやっつけるつもりな夢路 まよい(ka1328)は、それしか方法がないとはいえ割と容赦がなかった。
「不思議な生き物、みたいなご本で、カタツムリを乗っ取って目玉をグルグルにしちゃう寄生虫、みたいなのは読んだことあるけど、人間相手でもそういうことするのがいるんだね」
さすがに異世界とはいえそんな化け物染みた寄生虫はいない……いるかもしれないが、少なくとも現時点では存在が確認されていない。
「え、あくまで雑魔化したからであって、普通はしない? ふーん、そうなんだ」
人の形をした、ナニカ。……聞いているだけで、ズィルバーン・アンネ・早咲(ka3361)には不快だった。
ともあれ、好き嫌いがどうであろうと、任務であればただ排除するのみ。
アンネは任務、寄生虫の掃討を開始する。
ただ、一つ懸念があるとするならば。
「串焼きを売っていた男……無事、なのかな。食事を売る人間が味見もせずに、というのも逆にどうかと思う、けど。もし無事なようなら、肉を売った客たちの特徴とか、先に聞いておいてもいいかもしれ、ない」
まず、アンネは串焼きを売っている男をあたることにしたようだ。
レイア・アローネ(ka4082)は、被害者の悲惨さと、普段からの様子ではあまり見られないうさんくさい受付嬢の姿が印象に残ったようだった。
「あまり気分のいい依頼ではないな……ジェーンまで顔色を変えていたか…………いや、あいつは割とこういうの苦手なのか?」
考え込んだレイアは、以前受けた肝試しの依頼を思い出し、ジェーンについてはそうでもないかもしれないと思い直したようだ。
それでも事件が悲惨であることには変わりない。
「中身が喰われているとはむごいな……。せめて遺体を弔ってやろう」
思い思いの感情を胸に、ハンターたちは街に散らばっていく。
さあ、依頼の始まりだ!
●寄生虫の宿主を探せ!
最優先は街の出入口の封鎖だ。
空から調べるまよいに上空の見張りを任せ、レイアはアンネと二人でそれぞれの出入口を張り込むつもりだった。
今回必要なのは戦力よりも人手なので、固まって行動するのではなく、方々に散ってレイアは門の確保を目指す。
同じように、別の門を押さえるためアンネも行動しているはずだ。
「……伝話とトランシーバーを両方携帯しているし、連絡については問題ないな」
懐にしまった二つの道具の感触を服越しに確かめ、レイアは足早に歩く。
空でまよいが飛び回っているのが見えた。
何かあれば、レイアは空から見るまよいの指示に従うつもりだ。
街中の探索に行ってもよかったが、人数的な都合で出入口の確保に回った。
飛行魔法を自分の杖に付与して、まよいは空中を哨戒しながら、街の外へフラフラと向かおうとしている寄生された人間を見つけ出そうと試みていた。
ハンターであるまよいは一般人と比べ目が良く、遠くの物でも少しばかりよく見えるので、限界はあるものの空高くからでも比較的地上の様子をはっきりと窺うことができる。
「ん……んー?」
行き交う人々を上から眺めていたまよいは、何だか微妙な違和感を感じて眉根を寄せた。
きちんと見て回っているはずなのに、妙に見ていた箇所に抜けがあるような気がする。
よくよく思い返せば、集中しているつもりで、やたら気が散る箇所があったような気もする。
「……変だね?」
杖に乗ったまま首を傾げたまよいは、飛行を続けながら眼下の景色を眺めつつ、考え込む。
何というか、意識的に魚の小骨が喉に引っかかった的な違和感があって座りが悪い。
強制的に何かから意識を逸らされそうになっているかのような、曖昧な感覚がある。
まよいは手持ちの通信機を使って、仲間へ異常か分からないけれど何となく怪しい場所を見つけたかもしれないことを連絡し、それが異常であれば暴いてみることにした。
マテリアルの流れを感じながら怪しい箇所を探り、ここだと思った場所で干渉を行う。
その結果、はっきりとその場所に意識を向けられるようになった。
どうやら効果があったようだ。
「……なんか、思ってた以上にいっぱいいる」
ぎょろぎょろと異様さを見せつける巨大な目玉を蠢かせながら、寄生虫に寄生されたらしき人間が四人、フラフラとゾンビのようにおぼつかない歩みで歩いている。
四人とも同じ方向を目指しており、歩いているのは街の外へ出る門に続く道だった。
他の入口を見張っている仲間たちを動かすのも忍びないので、まよいは自分で始末することにした。
中身が寄生虫なら遠慮する必要もない。
複数本一気に出してもろとも殲滅するのでも良かったが、ここは確実性を取って一体ずつ倒した。
ここはまよいの慎重さが功を奏したをいっていいだろう。
一人ずつ狙うことで、寄生虫たちが一斉にまよいに対して排除に動く可能性を摘んだのだから。
引き続き、まよいは上空からの哨戒を続け、宿主と思わしき人間を見つけると仲間たちへ連絡を入れた。
アンネが辿り着いた門は、案外人通りが多かった。
なるほど、これでは誰かが声をかけてしまうかもしれない。
その結果、感染させられていまう可能性は大いにあり得る。
「……案の定、店主も、いなかったし」
門に行くついでに寄ってみた串焼きの屋台は、屋台を残して店主が失踪していた。
残っている串焼きはすっかり冷え切っており、ついさっき屋台を離れたばかりだとは思えない。
客の特徴が聞けなくなったのは痛いが、そこは注意力でカバーだ。
見張っているとまよいから連絡が入り、すぐ近くで怪しい場所を見つけた気がしたから対抗魔法を使ったという連絡を受け、やってくるであろう寄生体を待ち構える。
不審人物が一人目に留まった。
目を顔に不釣り合いな巨大な目をぎょろぎょろと異様に動かす人間。それは二人、門を目指して近付いてくる。
少し前にまよいから発見の連絡を受けており、見た目についての情報を貰ったところ特徴が一致した。
やたらと拡散しがちだった意識が、宿主を明確に認識する。
どうやらまよいが対抗魔法をかけたらしい。
「……優秀」
まよいに対してアンネは賛辞を贈ると、己の魔導猟銃を取り出し突きつける。
無骨な雰囲気を持つ三連装のショットガン型魔導銃の、その暴威を振るわんと撃鉄を起こした。
そのままトリガーを引く。
魔導猟銃が轟音で吠え、ショットシェルが吐き出された。
ショットシェルから無数の散弾が飛び出し、寄生虫ごと頭を吹っ飛ばす。
あくまで邪魔をしないと反応しないのか、もう一体の寄生虫は宿主を操ったまま外を目指している。
薬莢を排出し、アンネは素早く再装填を済ませると、もう一人の宿主に照準を合わせ、今度は胴体を吹っ飛ばす。
「目標を照準に、捕捉……発射」
淡々と呟くと、ぎょろりと自分を見つめる寄生虫の目を見つめ返しながら、寄生虫雑魔が寄生する頭部に銃撃を叩き込んだ。
残るのは頭がはじけ飛んだ死体が二つ。一つは胴体も吹き飛んでいる。
もし複数同時に向かって来た場合は、機導術を使用して複数同時攻撃も視野に入れていたが、幸い邪魔をされて反転してくるのはあくまで邪魔をされた寄生虫の宿主のみらしい。
それからもアンネはまよいから流される情報を元に、寄生虫の宿主を見落とすまいと張り込み続けた。
しばらくしてレイアが見張る門にも寄生虫に侵された宿主らしき人間が二人、近付いてきていた。
「ふむ。あまり状況は良くないか」
認識阻害は空から援護するまよいの協力で見破ることができたレイアだったが、間の悪いことに、少々人通りが多い。
一般人を巻き込まないように即斬り倒す必要がある。
風体が異様とはいえ、人間の姿をしているから時間をかければパニックになるのは避けられないだろう。
そう判断したレイアは、攻めを意識した構えを取ると、自身の生体マテリアルを魔導剣に伝達し、強化して魔法剣にすると、鋭く踏み込みながら魔導剣を突き出し、短期決着を図る。
周りの通行人に詳しく事情を話している暇はない。
悲鳴が上がり、通行人がどよめいて集まってくる。
「心配するな! 雑魔を倒すだけだ!」
すぐに大声で説明したおかげでパニックが起きることこそ防げたものの、通行人を落ち着かせた時間でもう一匹に距離を稼がれている。
脚にマテリアルを集中することで、通常よりすばやく移動することができるようにして追いかけ、壁を駆け上がると建物を飛び越え回り込む。
見物人と化した通行人たちがどよめきを上げる中、回り込むという行為で邪魔されたと判断したのか、激しく目を蠢かせて襲い掛かってきた宿主の攻撃を冷静に避け、返す一撃で腹を貫き、寄生虫が潜む頭までそのまま縦に斬り上げ両断した。
魔導剣についた血液を軽く一振りして払い、鞘に納めると、レイアは両断された宿主の頭から寄生虫雑魔が溢れ、消滅するのを静かに見届けるのだった。
●依頼終了
ハンターたちの努力の甲斐あって、街の寄生虫雑魔は根絶された。
森の動物たちに寄生が広がっていないかどうかなど、いくつか調査しなければならない問題は残っているが、それはまた別のハンターたちの役目だ。
今は街に平和が訪れたことで満足するべきだろう。
今回は、ここで幕引きとする。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 7人 |
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MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
寄生虫 レイア・アローネ(ka4082) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/09/10 09:52:57 |
|
![]() |
質問卓 レイア・アローネ(ka4082) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/09/08 08:53:54 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/09/10 04:41:38 |