ゲスト
(ka0000)
湖の主
マスター:きりん

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/09/12 15:00
- 完成日
- 2018/09/13 14:16
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●水中を泳ぐ巨大魚
昔から、その湖には主がいるという噂があった。
実際に主と呼ばれる生物の姿を見た者がいるわけではないが、夜中に巨大な鰭のようなものが湖の水面に突き出ているのを見た者はならばいたのだ。
「今日こそ主を釣り上げてみせるぞ!」
釣り人姿の老人たちが、釣り船に乗り込んで湖に出て行く。
「あー、またやってるよあの爺さんたち」
「何度も空振りに終わってるのに、懲りないねぇ」
老人たちの挑戦はもはや毎度のことだったので、目撃した通行人たちも呆れた表情で見るだけだった。
湖に出た老人たちが持ち出したのは、巨大な特製の釣竿だった。通常の釣竿の十倍くらいはありそうな大きさだ。
それを老人たちは全員で抱えて持ち、一人が釣竿の先の針に魚の切り身を引っ掛けて餌とし、竿を持った全員が協力して竿を振り、糸を湖面に垂らす。
後は餌に獲物が食いつくまで適当に動き回りながらひたすら待つだけだ。
「昨日も一昨日も釣れなかった。今日こそは釣れるといいが……」
「竿が小さいんじゃないか? もっと大きくするべきだろう」
「だが、これ以上大きくしたら船自体が沈みかねんぞ」
待っている間、老人たちは雑談に興じる。
しかしその間も、老人たちの目線はチラチラと湖面と釣竿に向けられており、本来の目的を見失っていないことが窺える。
しかしそのまま音沙汰なく太陽は天頂に達し、老人たちは船の上で昼食を取った。
「午前中は空振りか……」
「何、まだ午後がある!」
「午後もダメだったらどうするんだ?」
「午後がダメでも明日があるだろう」
「そうだな! 明日がダメでも明後日があるしな!」
「最悪俺たちが寿命で死ぬ前に釣れれば問題ない!」
老人たちは昼食を取りながら盛り上がっていた。
寿命で死ぬまでにとは気の長い話である。
そんな中、突然船に固定していた竿が激しく引っ張られた。
「おおおおお、掛かったか!?」
「あ、いや、ちがうぞ。湖の底に引っかかっただけみたいだ」
「ああ、そういえばこの辺りは急に浅くなるんだったな」
「もっと深いところに移動するぞ」
老人たちは船を動かし、釣り場所を変えていく。
そして再び竿が引っ張られた。
今度は湖の底に針が着くような深さでもない。
「掛かったぞおおおおおおお!」
「引けえええええええええ!」
「うぉっしゃああああああ!」
「力の限りいくぞおおおおおおおお!」
「凄い引きだぞこれはああああああああ!」
竿に飛びついた老人たちは、力を合わせて竿を引く。
その瞬間、抵抗が消えた。
糸が切れたかと落胆した老人たちの真上を影が覆う。
思わず空を見上げた老人たちの頭上を、きらきらと七色に光る鱗が通過していく。
「で……」
誰かが息を飲む。
いや、誰もが、かもしれない。
「でけえええええええええええ!」
悲鳴と共に、巨大魚が着水した衝撃で、船が転覆した。
なお、奇跡的に死傷者が出なかったことをここに特筆しておく。
●ハンターズソサエティ
その日も受付嬢ジェーン・ドゥは承認された依頼を掲示していた。
依頼を吟味していたハンターたちに掲示したばかりの依頼について説明を求められたジェーンは、うさんくさいことで定評のある営業スマイルを浮かべ、すらすらと淀みなく依頼を売り込む営業トークを始める。
「この依頼は、とある街の老人会が出した、自分たちに代わって湖の主を釣り上げて欲しいという依頼ですね。どうやら一度自分たちで挑戦して失敗し、ハンターの力を頼ることにしたようです。釣り上げるという名目になっておりますが、依頼人である老人会の方々にとっては、捕まえることができるなら釣りに拘る必要はなく、その方法は問わないそうです。依頼に当たっては、老人会から釣り船と釣り道具一式が貸し出されます。この釣り道具は特製で、湖の主たる巨大魚を釣れるように相応に巨大になっております。……ですが、釣れはするものの船自体は普通の船なので、釣った際に乱れる湖面や巨大魚の自重に耐え切れず転覆してしまうようです。何かしらの対処が必要でしょう。水中戦になることも予想されます。湖に落ちた老人会の方々が全員生きて生還できたことから、巨大魚の気性は大人しいことが予想されますが、念のため受ける場合は注意をしておいてください。興味がお有りならば、如何ですか?」
そのハンターにとって、ジェーンのうさんくさい微笑みが悪魔の手招きに見えたかどうかは定かではない。
「……ちなみに、その主を食すことは?」
「ダメに決まっています。キャッチアンドリリースです」
「ですよねー」
ハンターは落胆した。
食べてもいいのなら、ちょっとはやってみようかなという気分にもなるのだが。
「ああ、でも、普通の魚が釣れた場合は、食べるのも持ち帰るのも常識の範囲内で自由にして構わない許可が出ています。フナ、コイ、アユ、ニジマスなど、色々釣れるみたいですよ。稀にですが、二メートル近いオオナマズが釣れることもあるそうです。まあ、巨大魚の大きさが八メートルほどらしいので、それには霞みますけれど。もし受ける意思がお有りなら、湖は巨大で広いので、遭難しないよう注意してくださいね」
立て板に水を流すかのように淀みなくトークを終えたジェーンは、一礼すると通常業務に戻っていった。
昔から、その湖には主がいるという噂があった。
実際に主と呼ばれる生物の姿を見た者がいるわけではないが、夜中に巨大な鰭のようなものが湖の水面に突き出ているのを見た者はならばいたのだ。
「今日こそ主を釣り上げてみせるぞ!」
釣り人姿の老人たちが、釣り船に乗り込んで湖に出て行く。
「あー、またやってるよあの爺さんたち」
「何度も空振りに終わってるのに、懲りないねぇ」
老人たちの挑戦はもはや毎度のことだったので、目撃した通行人たちも呆れた表情で見るだけだった。
湖に出た老人たちが持ち出したのは、巨大な特製の釣竿だった。通常の釣竿の十倍くらいはありそうな大きさだ。
それを老人たちは全員で抱えて持ち、一人が釣竿の先の針に魚の切り身を引っ掛けて餌とし、竿を持った全員が協力して竿を振り、糸を湖面に垂らす。
後は餌に獲物が食いつくまで適当に動き回りながらひたすら待つだけだ。
「昨日も一昨日も釣れなかった。今日こそは釣れるといいが……」
「竿が小さいんじゃないか? もっと大きくするべきだろう」
「だが、これ以上大きくしたら船自体が沈みかねんぞ」
待っている間、老人たちは雑談に興じる。
しかしその間も、老人たちの目線はチラチラと湖面と釣竿に向けられており、本来の目的を見失っていないことが窺える。
しかしそのまま音沙汰なく太陽は天頂に達し、老人たちは船の上で昼食を取った。
「午前中は空振りか……」
「何、まだ午後がある!」
「午後もダメだったらどうするんだ?」
「午後がダメでも明日があるだろう」
「そうだな! 明日がダメでも明後日があるしな!」
「最悪俺たちが寿命で死ぬ前に釣れれば問題ない!」
老人たちは昼食を取りながら盛り上がっていた。
寿命で死ぬまでにとは気の長い話である。
そんな中、突然船に固定していた竿が激しく引っ張られた。
「おおおおお、掛かったか!?」
「あ、いや、ちがうぞ。湖の底に引っかかっただけみたいだ」
「ああ、そういえばこの辺りは急に浅くなるんだったな」
「もっと深いところに移動するぞ」
老人たちは船を動かし、釣り場所を変えていく。
そして再び竿が引っ張られた。
今度は湖の底に針が着くような深さでもない。
「掛かったぞおおおおおおお!」
「引けえええええええええ!」
「うぉっしゃああああああ!」
「力の限りいくぞおおおおおおおお!」
「凄い引きだぞこれはああああああああ!」
竿に飛びついた老人たちは、力を合わせて竿を引く。
その瞬間、抵抗が消えた。
糸が切れたかと落胆した老人たちの真上を影が覆う。
思わず空を見上げた老人たちの頭上を、きらきらと七色に光る鱗が通過していく。
「で……」
誰かが息を飲む。
いや、誰もが、かもしれない。
「でけえええええええええええ!」
悲鳴と共に、巨大魚が着水した衝撃で、船が転覆した。
なお、奇跡的に死傷者が出なかったことをここに特筆しておく。
●ハンターズソサエティ
その日も受付嬢ジェーン・ドゥは承認された依頼を掲示していた。
依頼を吟味していたハンターたちに掲示したばかりの依頼について説明を求められたジェーンは、うさんくさいことで定評のある営業スマイルを浮かべ、すらすらと淀みなく依頼を売り込む営業トークを始める。
「この依頼は、とある街の老人会が出した、自分たちに代わって湖の主を釣り上げて欲しいという依頼ですね。どうやら一度自分たちで挑戦して失敗し、ハンターの力を頼ることにしたようです。釣り上げるという名目になっておりますが、依頼人である老人会の方々にとっては、捕まえることができるなら釣りに拘る必要はなく、その方法は問わないそうです。依頼に当たっては、老人会から釣り船と釣り道具一式が貸し出されます。この釣り道具は特製で、湖の主たる巨大魚を釣れるように相応に巨大になっております。……ですが、釣れはするものの船自体は普通の船なので、釣った際に乱れる湖面や巨大魚の自重に耐え切れず転覆してしまうようです。何かしらの対処が必要でしょう。水中戦になることも予想されます。湖に落ちた老人会の方々が全員生きて生還できたことから、巨大魚の気性は大人しいことが予想されますが、念のため受ける場合は注意をしておいてください。興味がお有りならば、如何ですか?」
そのハンターにとって、ジェーンのうさんくさい微笑みが悪魔の手招きに見えたかどうかは定かではない。
「……ちなみに、その主を食すことは?」
「ダメに決まっています。キャッチアンドリリースです」
「ですよねー」
ハンターは落胆した。
食べてもいいのなら、ちょっとはやってみようかなという気分にもなるのだが。
「ああ、でも、普通の魚が釣れた場合は、食べるのも持ち帰るのも常識の範囲内で自由にして構わない許可が出ています。フナ、コイ、アユ、ニジマスなど、色々釣れるみたいですよ。稀にですが、二メートル近いオオナマズが釣れることもあるそうです。まあ、巨大魚の大きさが八メートルほどらしいので、それには霞みますけれど。もし受ける意思がお有りなら、湖は巨大で広いので、遭難しないよう注意してくださいね」
立て板に水を流すかのように淀みなくトークを終えたジェーンは、一礼すると通常業務に戻っていった。
リプレイ本文
●依頼準備
大きな湖の主を釣り上げるという目的で依頼を受けた夢路 まよい(ka1328)は、釣り船を借りて、それに巨大竿を積んで湖に繰り出すつもりだ。
「八メートル! それだけおっきかったら、何人前のお魚料理ができるかな? え、主は食べちゃダメだって? キャッチアンドリリース、って美味しくないんだね……」
「さぁて、巨大魚ですよ皆さん! 巨大魚! 釣り上げた時、下敷きにならないように注意、ですか。それ、私が下敷きになる役回りになる予感しかしないんですが!」
心配そうな言葉とは裏腹に、青峰 らずり(ka3616)は恐れない。
かつていかなるハプニングに会おうとも、魔法少女は省みないのだ。
「これ本当に釣っていいのか?」
いきなり依頼の根本揺るがすような事を口にしたのは、レイア・アローネ(ka4082)だった。
「ご老人達のテンションを見ているとこのまま永遠にチャレンジさせている方が幸せなんじゃないかという気もしてな……。いや……忘れてくれ。その老人達からの依頼だものな……」
魚に興味があり参加した狐中・小鳥(ka5484)は、老人たちから巨大釣り竿を借りて、湖の主である巨大魚を釣る役だ。
どれだけ大きなお魚かな、と楽しみにしつつ釣り糸を垂らすつもりでいる。
「主釣りも楽しみだけど、それ以外のお魚を釣って料理とか出来るといいな♪ 釣ったばかりのお魚はきっとおいしいんだよ♪」
老人会の老人たちが見物人として見守る中、ハンターたちは動き出した。
さあ、依頼の始まりだ!
●湖の主、巨大魚を釣れ!
船に乗り釣り竿を垂らし、小鳥はまったり過ごす。
事前に老人に餌とか釣りのコツ等を聞いておいたので、それを参考にしつつかかるのを待つのだ。
主と別の魚がかかったら、それはそれで後で食べる事にすればいい。
「目標の魚がかかるまではまったり待つしかないのかな? 目標以外でもかかってくれれば後々の楽しみに出来るんだけどもね♪」
主を釣るための巨大釣り竿の方はまだまだかからないものの、通常の釣り竿の方は他の魚がそこそこ釣れる。
「……以前他の依頼でウナギとかいうのを食べたことがある…ここにはいないのかな……」
釣りをしながらレイアは岸で待つ依頼人の老人たちを思う。
主を釣ってしまったら、これからどうするのか。
新しい目標でも出来ればいいのだが。
巨大竿が積まれた釣り船の上から、まよいは元気よく飛び降りた。
その躊躇のなさは、無邪気さの表れか。
水の精霊力をまとい、水上でも地上と同じように移動できるようにし、軽やかに湖面に着地する。
水中を覗く様子は可憐なまよいの容姿も相まって、さながら湖の妖精のよう。
「さすがに無理かぁ」
湖の底は真っ暗で何も見えない。
らずりは、巨大魚を釣り上げるとき、船がバランスを崩しそうな点に着目した。
実際、老人達が釣ろうとしたとき、そうなったことを依頼の説明を受けた時に聞き逃さなかったのだ。
「私達はハンター、同じ轍は踏みません!」
まよいに魔法をかけてもらい、まよいに続いて水の上に飛び降り、船が転覆しないように押さえる係に志願する。
びくりと、沈黙を保っていた主用の巨大釣り竿が揺れた。
獲物が掛かったのだ。
俄然色めき立つ老人たちの歓声をバックミュージックに、まよい、らずり、レイア、小鳥の四人は速やかに主捕獲のための行動に移った。
「何かかかった? ふわ、凄く大物の気配だよ!これが主かな!?」
小鳥は主ならば仲間に舟を支えてもらいながら相対しようと考え、巨大釣り竿を操った。
釣り竿が折れないよう無理に引き上げず、向こうが引っ張っている間はその力を受け流すようにし、力が緩んだら糸を引くの繰り返しで、主の体力を消耗させつつ、少しずつ少しずつ手繰り寄せるように竿を引いていく。
主の力は中々のもので、まだ水面に上がってきていないというのに引きの力が既に強い。
少しでも力加減を間違えたら、釣り糸が切れてしまうかもしれない。
「せっかくかかったのに逃すわけにはいかないよね。釣り竿持っていかれないようにしないとだよっ」
それでも小鳥は奮起し、細心の注意で巨大魚を湖の底から湖面へとゆっくり竿の引き上げと脱力を繰り返し確実に誘導していく。
落ちても大丈夫なように水着姿になったレイアは、少し心配だった。
水中戦を挑んでもいいのだが、そうなると割と荒っぽくなる。
剣は使わなくとも不要に傷をつけてしまうかもしれないことを懸念し、まよいの案に従い船を支えることにした。
透明だった水面が、気付けば暗くなっている。
あまりにも大きかったので、それが主だと気付くのにレイアは少し時間がかかった。
「私にもウォーターウォークを頼む! 悪いが小鳥、釣り上げは任せたぞ!」
「魔法、かけたよ!」
「わたしに任せるんだよ!」
周囲を確認し、水の精霊力が身体を覆ったのを感じながら、小鳥が盛大に水しぶきを起こしながら主を釣り上げたのとほぼ同じくして、レイアは湖面に飛び降りてまよい、らずりと一緒に船を掴んで支え、衝撃に備えた。
衝撃が釣り船を押さえる手越しに伝わってくる。
水中に転落しないようレイアは耐えた。
釣り上げられた巨大魚はとにかく大きかった。
既に釣り船から全身がはみ出ており、それがびちびち暴れるものだから、小鳥が必死になって押さえている。
死なせてはいけないので、釣り上げた後に暴れないよう大人しくさせなければならない。
幸い、まよいはそれにぴったりな魔法を知っている。
唱える魔法は眠りの魔法だ。
これは本来青白い雲状のガスが一瞬広がり、そのガスに包まれた対象を眠りに誘うものだが、まよいが使う眠りの魔法は眠らせる原理が異なる。
「果てなき夢路に迷え……ドリームメイズ!」
力強いまよいの言葉とともに、神秘的な迷路の幻影が描き出された。
幻影に包み込まれた巨大魚は、次第に夢と現の境が薄れ、深い眠りに誘われ、まるで死んだように意識を失う。
「証拠写真も撮っておこうっと」
大人しくなった主を魔導カメラで写真に収めるまよいだった。
キャッチが終わってもリリースが残っている。
らずりも加わって、レイアと小鳥は船が転覆しないように押さえる配置につく。
四人のうち、らずりは三人のうち誰が見ても分かるほどウッキウキだった。
三人の視線に気付いたらずりは弁解する。
「志願したのは、水の上を歩けるという奇跡の魔法を、苔を採取した依頼の時のようにまた体感したい……という個人的な理由などではございませんよ! あくまでボランティーア精神で志願させて頂いてるんですから、そのあたりお間違いのなきよう!」
あまりの微笑ましさに和みながら、小鳥が目覚めて再び暴れ出した主から針を外す。
リリースに備える三人は、着水の際起きた衝撃に全員必死になって釣り船を押さえる。
乱れる湖面に大きく揺られて転覆しそうになる船を、まよい、らずり、レイアの三人は協力して無事転覆から守った。
●楽しい釣りとご飯
主釣りが終わった後は、残っていた時間を利用して引き続き魚釣りとなった。
残念ながらウナギは釣れなかったが、フナ、コイ、アユ、ニジマスなどの淡水魚とオオナマズが釣れ、まよい、らずり、レイア、小鳥の四人は楽しく食事を楽しんだ。
「こっちは調理してもいいんだよね♪ それなら私の腕の見せ所だよ♪」
小鳥がお刺身や焼き魚にして皆に振舞った他、調理は依頼人の老人たちが街の女衆を呼んで手伝ってくれて、アユの塩焼きや、ちょっと贅沢にリアルブルー産の物資であるアルミホイルを使ったニジマスのホイル焼き、コイの味噌汁、フナのあんかけから揚げなど、とても美味しい料理が提供された。
アユの塩焼きは塩のしょっぱさと焦げてパリッとした皮に、脂が乗った熱い身のバランスが絶妙で、ニジマスのホイル焼きは付け合わせの野菜から出た出汁とニジマス自体から出る味が複雑に絡み合い、見事なハーモニーを形成している。
コイの味噌汁とフナのあんかけから揚げは特有の泥臭さが上手く生姜などで消されており、もはや絶品という他ない。
そして最後に出てきたのは東方のコメを使ったうな丼ならぬナマズ丼で、うなぎよりもさっぱりとしていて上品な味なのが特徴的だった。
「ほれ、残りの魚やら料理やらは土産に持って帰れ!」
「今日の礼だ、遠慮すんな!」
レイアの危惧も杞憂だったようで、いつの間にか酒盛りまで始めていたらしい老人たちは上機嫌に数々のお土産を持たせ、四人を帰したのだった。
大きな湖の主を釣り上げるという目的で依頼を受けた夢路 まよい(ka1328)は、釣り船を借りて、それに巨大竿を積んで湖に繰り出すつもりだ。
「八メートル! それだけおっきかったら、何人前のお魚料理ができるかな? え、主は食べちゃダメだって? キャッチアンドリリース、って美味しくないんだね……」
「さぁて、巨大魚ですよ皆さん! 巨大魚! 釣り上げた時、下敷きにならないように注意、ですか。それ、私が下敷きになる役回りになる予感しかしないんですが!」
心配そうな言葉とは裏腹に、青峰 らずり(ka3616)は恐れない。
かつていかなるハプニングに会おうとも、魔法少女は省みないのだ。
「これ本当に釣っていいのか?」
いきなり依頼の根本揺るがすような事を口にしたのは、レイア・アローネ(ka4082)だった。
「ご老人達のテンションを見ているとこのまま永遠にチャレンジさせている方が幸せなんじゃないかという気もしてな……。いや……忘れてくれ。その老人達からの依頼だものな……」
魚に興味があり参加した狐中・小鳥(ka5484)は、老人たちから巨大釣り竿を借りて、湖の主である巨大魚を釣る役だ。
どれだけ大きなお魚かな、と楽しみにしつつ釣り糸を垂らすつもりでいる。
「主釣りも楽しみだけど、それ以外のお魚を釣って料理とか出来るといいな♪ 釣ったばかりのお魚はきっとおいしいんだよ♪」
老人会の老人たちが見物人として見守る中、ハンターたちは動き出した。
さあ、依頼の始まりだ!
●湖の主、巨大魚を釣れ!
船に乗り釣り竿を垂らし、小鳥はまったり過ごす。
事前に老人に餌とか釣りのコツ等を聞いておいたので、それを参考にしつつかかるのを待つのだ。
主と別の魚がかかったら、それはそれで後で食べる事にすればいい。
「目標の魚がかかるまではまったり待つしかないのかな? 目標以外でもかかってくれれば後々の楽しみに出来るんだけどもね♪」
主を釣るための巨大釣り竿の方はまだまだかからないものの、通常の釣り竿の方は他の魚がそこそこ釣れる。
「……以前他の依頼でウナギとかいうのを食べたことがある…ここにはいないのかな……」
釣りをしながらレイアは岸で待つ依頼人の老人たちを思う。
主を釣ってしまったら、これからどうするのか。
新しい目標でも出来ればいいのだが。
巨大竿が積まれた釣り船の上から、まよいは元気よく飛び降りた。
その躊躇のなさは、無邪気さの表れか。
水の精霊力をまとい、水上でも地上と同じように移動できるようにし、軽やかに湖面に着地する。
水中を覗く様子は可憐なまよいの容姿も相まって、さながら湖の妖精のよう。
「さすがに無理かぁ」
湖の底は真っ暗で何も見えない。
らずりは、巨大魚を釣り上げるとき、船がバランスを崩しそうな点に着目した。
実際、老人達が釣ろうとしたとき、そうなったことを依頼の説明を受けた時に聞き逃さなかったのだ。
「私達はハンター、同じ轍は踏みません!」
まよいに魔法をかけてもらい、まよいに続いて水の上に飛び降り、船が転覆しないように押さえる係に志願する。
びくりと、沈黙を保っていた主用の巨大釣り竿が揺れた。
獲物が掛かったのだ。
俄然色めき立つ老人たちの歓声をバックミュージックに、まよい、らずり、レイア、小鳥の四人は速やかに主捕獲のための行動に移った。
「何かかかった? ふわ、凄く大物の気配だよ!これが主かな!?」
小鳥は主ならば仲間に舟を支えてもらいながら相対しようと考え、巨大釣り竿を操った。
釣り竿が折れないよう無理に引き上げず、向こうが引っ張っている間はその力を受け流すようにし、力が緩んだら糸を引くの繰り返しで、主の体力を消耗させつつ、少しずつ少しずつ手繰り寄せるように竿を引いていく。
主の力は中々のもので、まだ水面に上がってきていないというのに引きの力が既に強い。
少しでも力加減を間違えたら、釣り糸が切れてしまうかもしれない。
「せっかくかかったのに逃すわけにはいかないよね。釣り竿持っていかれないようにしないとだよっ」
それでも小鳥は奮起し、細心の注意で巨大魚を湖の底から湖面へとゆっくり竿の引き上げと脱力を繰り返し確実に誘導していく。
落ちても大丈夫なように水着姿になったレイアは、少し心配だった。
水中戦を挑んでもいいのだが、そうなると割と荒っぽくなる。
剣は使わなくとも不要に傷をつけてしまうかもしれないことを懸念し、まよいの案に従い船を支えることにした。
透明だった水面が、気付けば暗くなっている。
あまりにも大きかったので、それが主だと気付くのにレイアは少し時間がかかった。
「私にもウォーターウォークを頼む! 悪いが小鳥、釣り上げは任せたぞ!」
「魔法、かけたよ!」
「わたしに任せるんだよ!」
周囲を確認し、水の精霊力が身体を覆ったのを感じながら、小鳥が盛大に水しぶきを起こしながら主を釣り上げたのとほぼ同じくして、レイアは湖面に飛び降りてまよい、らずりと一緒に船を掴んで支え、衝撃に備えた。
衝撃が釣り船を押さえる手越しに伝わってくる。
水中に転落しないようレイアは耐えた。
釣り上げられた巨大魚はとにかく大きかった。
既に釣り船から全身がはみ出ており、それがびちびち暴れるものだから、小鳥が必死になって押さえている。
死なせてはいけないので、釣り上げた後に暴れないよう大人しくさせなければならない。
幸い、まよいはそれにぴったりな魔法を知っている。
唱える魔法は眠りの魔法だ。
これは本来青白い雲状のガスが一瞬広がり、そのガスに包まれた対象を眠りに誘うものだが、まよいが使う眠りの魔法は眠らせる原理が異なる。
「果てなき夢路に迷え……ドリームメイズ!」
力強いまよいの言葉とともに、神秘的な迷路の幻影が描き出された。
幻影に包み込まれた巨大魚は、次第に夢と現の境が薄れ、深い眠りに誘われ、まるで死んだように意識を失う。
「証拠写真も撮っておこうっと」
大人しくなった主を魔導カメラで写真に収めるまよいだった。
キャッチが終わってもリリースが残っている。
らずりも加わって、レイアと小鳥は船が転覆しないように押さえる配置につく。
四人のうち、らずりは三人のうち誰が見ても分かるほどウッキウキだった。
三人の視線に気付いたらずりは弁解する。
「志願したのは、水の上を歩けるという奇跡の魔法を、苔を採取した依頼の時のようにまた体感したい……という個人的な理由などではございませんよ! あくまでボランティーア精神で志願させて頂いてるんですから、そのあたりお間違いのなきよう!」
あまりの微笑ましさに和みながら、小鳥が目覚めて再び暴れ出した主から針を外す。
リリースに備える三人は、着水の際起きた衝撃に全員必死になって釣り船を押さえる。
乱れる湖面に大きく揺られて転覆しそうになる船を、まよい、らずり、レイアの三人は協力して無事転覆から守った。
●楽しい釣りとご飯
主釣りが終わった後は、残っていた時間を利用して引き続き魚釣りとなった。
残念ながらウナギは釣れなかったが、フナ、コイ、アユ、ニジマスなどの淡水魚とオオナマズが釣れ、まよい、らずり、レイア、小鳥の四人は楽しく食事を楽しんだ。
「こっちは調理してもいいんだよね♪ それなら私の腕の見せ所だよ♪」
小鳥がお刺身や焼き魚にして皆に振舞った他、調理は依頼人の老人たちが街の女衆を呼んで手伝ってくれて、アユの塩焼きや、ちょっと贅沢にリアルブルー産の物資であるアルミホイルを使ったニジマスのホイル焼き、コイの味噌汁、フナのあんかけから揚げなど、とても美味しい料理が提供された。
アユの塩焼きは塩のしょっぱさと焦げてパリッとした皮に、脂が乗った熱い身のバランスが絶妙で、ニジマスのホイル焼きは付け合わせの野菜から出た出汁とニジマス自体から出る味が複雑に絡み合い、見事なハーモニーを形成している。
コイの味噌汁とフナのあんかけから揚げは特有の泥臭さが上手く生姜などで消されており、もはや絶品という他ない。
そして最後に出てきたのは東方のコメを使ったうな丼ならぬナマズ丼で、うなぎよりもさっぱりとしていて上品な味なのが特徴的だった。
「ほれ、残りの魚やら料理やらは土産に持って帰れ!」
「今日の礼だ、遠慮すんな!」
レイアの危惧も杞憂だったようで、いつの間にか酒盛りまで始めていたらしい老人たちは上機嫌に数々のお土産を持たせ、四人を帰したのだった。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 5人 |
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サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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釣りハンター日誌(相談卓) 夢路 まよい(ka1328) 人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2018/09/11 23:43:45 |
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![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/09/11 22:35:31 |