ゲスト
(ka0000)
暴れ猪と納涼祭
マスター:紫雨

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~4人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/09/13 12:00
- 完成日
- 2018/09/20 10:10
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●納涼祭
日が落ち始めた頃、山間部のとある町では納涼祭が行われている。
「いらっしゃい! いらっしゃい! 出来立ての焼きそばだよ!」
「こっちゃあ、もも、皮、ねぎまに砂肝!選り取り見取りな焼き鳥だ!」
「飲み物はこちらでーす!お好きなものを選んでくださーい!」
あちらこちらから威勢のいい売り子たちの声が響き、あたりには食欲をそそる食べ物の匂いがどこかしこから漂ってくる。町民たちは声や匂いに誘われるまま出店へ足を向けた。
「あたし、焼き鳥買ってくるー」
「なら、飲み物買ってくるわ。あっちの休憩所で」
「オッケー! あとでねー」
「パパ、わたあめかってー」
「あぁ、いいぞ。どれがいいんだ?」
浴衣姿で友人たちと祭りに繰り出した少女たちはお互いに買うものを分担しあい、娘に綿菓子を買い共に笑う父親がいた。祭りに参加している者たちの笑みは絶えず、日々の暑さや不安を忘れるように賑わっていた。
無事に終わるだろうと信じて疑わずに。
●惨劇の始まり
祭囃子と人々の喧噪に異音が混ざる。最初は小さく、徐々に大きくなっていくその音を例えるなら雷鳴のような轟音。
「ねぇ、なんか聞こえたんだけど」
「雷? にしては晴れてるわよね」
音に気付いたが空を見上げるが、入道雲や雨雲のような大きな雲の姿はどこにもない。その直後、音の正体が祭りへ突っ込んできた。
それ巨大な黒い猪だった。その巨体で出店をなぎ倒し、進路上にいた人々を跳ね飛ばし、踏みつけ、地面を足をより一層黒く染めて止まった。突然の出来事であたりは静まり返る。
「きゃーーっ!!」
「に、にげ……逃げろっ!」
「誰かハンターを呼びに行け!」
悲鳴があたりに木霊し、我に返った人々が一目散に駆け出した。どちらに逃げればいいのかわからず、四方八方へ人々は逃げていく。その姿を見て猪は目を細めた気がした。自分に近い人の群れに視線を向け、地を蹴り駆け出す。
猪の走る音に襲われた人々の悲鳴はかき消されてしまった。より、恐怖を煽られた人々は正常な判断ができないまま、ただ闇雲に逃げ惑う。
そんな人の波に揉まれ、少女が一人転んでしまう。痛みと恐怖で動けなくなり、泣きだしてしまった。
「きゃあっ! パぁパぁ……」
少女の泣き声に足を止める者はおらず、少女の泣き声が聞こえたのか、猪はゆっくりと少女の方へ身体の向きを変えるのだった。
●託された願い
険しい表情、慌ただしい足取りで受付嬢がカウンターから出てきた。
「皆さん! ちょっと、いいですか?」
出てくるときにどこかぶつけたのか一瞬だけ顔を歪めたがすぐに表情を戻す。ハンターたちが自身を見ているのを確認してから本題を切り出す。
「本日夜、山間部にある町で巨大猪型雑魔が出現しました。町では納涼祭の真っ最中で、そこに雑魔が突っ込んできたそうです。すでにかなりの数の負傷者が出てしまっています。また、不確定情報ですが、取り残された人が居るらしい、とのことです。これ以上、被害を増やすわけにもいきません。早急の討伐をお願いします」
一度言葉を切り、深々と一礼をしてからカウンターへ戻って行く。どうか、間に合うようにと願いながら。
日が落ち始めた頃、山間部のとある町では納涼祭が行われている。
「いらっしゃい! いらっしゃい! 出来立ての焼きそばだよ!」
「こっちゃあ、もも、皮、ねぎまに砂肝!選り取り見取りな焼き鳥だ!」
「飲み物はこちらでーす!お好きなものを選んでくださーい!」
あちらこちらから威勢のいい売り子たちの声が響き、あたりには食欲をそそる食べ物の匂いがどこかしこから漂ってくる。町民たちは声や匂いに誘われるまま出店へ足を向けた。
「あたし、焼き鳥買ってくるー」
「なら、飲み物買ってくるわ。あっちの休憩所で」
「オッケー! あとでねー」
「パパ、わたあめかってー」
「あぁ、いいぞ。どれがいいんだ?」
浴衣姿で友人たちと祭りに繰り出した少女たちはお互いに買うものを分担しあい、娘に綿菓子を買い共に笑う父親がいた。祭りに参加している者たちの笑みは絶えず、日々の暑さや不安を忘れるように賑わっていた。
無事に終わるだろうと信じて疑わずに。
●惨劇の始まり
祭囃子と人々の喧噪に異音が混ざる。最初は小さく、徐々に大きくなっていくその音を例えるなら雷鳴のような轟音。
「ねぇ、なんか聞こえたんだけど」
「雷? にしては晴れてるわよね」
音に気付いたが空を見上げるが、入道雲や雨雲のような大きな雲の姿はどこにもない。その直後、音の正体が祭りへ突っ込んできた。
それ巨大な黒い猪だった。その巨体で出店をなぎ倒し、進路上にいた人々を跳ね飛ばし、踏みつけ、地面を足をより一層黒く染めて止まった。突然の出来事であたりは静まり返る。
「きゃーーっ!!」
「に、にげ……逃げろっ!」
「誰かハンターを呼びに行け!」
悲鳴があたりに木霊し、我に返った人々が一目散に駆け出した。どちらに逃げればいいのかわからず、四方八方へ人々は逃げていく。その姿を見て猪は目を細めた気がした。自分に近い人の群れに視線を向け、地を蹴り駆け出す。
猪の走る音に襲われた人々の悲鳴はかき消されてしまった。より、恐怖を煽られた人々は正常な判断ができないまま、ただ闇雲に逃げ惑う。
そんな人の波に揉まれ、少女が一人転んでしまう。痛みと恐怖で動けなくなり、泣きだしてしまった。
「きゃあっ! パぁパぁ……」
少女の泣き声に足を止める者はおらず、少女の泣き声が聞こえたのか、猪はゆっくりと少女の方へ身体の向きを変えるのだった。
●託された願い
険しい表情、慌ただしい足取りで受付嬢がカウンターから出てきた。
「皆さん! ちょっと、いいですか?」
出てくるときにどこかぶつけたのか一瞬だけ顔を歪めたがすぐに表情を戻す。ハンターたちが自身を見ているのを確認してから本題を切り出す。
「本日夜、山間部にある町で巨大猪型雑魔が出現しました。町では納涼祭の真っ最中で、そこに雑魔が突っ込んできたそうです。すでにかなりの数の負傷者が出てしまっています。また、不確定情報ですが、取り残された人が居るらしい、とのことです。これ以上、被害を増やすわけにもいきません。早急の討伐をお願いします」
一度言葉を切り、深々と一礼をしてからカウンターへ戻って行く。どうか、間に合うようにと願いながら。
リプレイ本文
●初陣と猪退治
ヴァイス(ka0364)は無線を仕舞い、今しがた確認したことを仲間たちに告げる。
「避難所も混乱しているようだ。避難が完了しているか不明、逃げ遅れた人達がいる可能性が高い。まずは周囲の安全確認を優先させよう」
作戦内容は事前に打ち合わせをしてきた。確認がとれた情報から行動方針を決め、各自の役割を再認識する。
「はーい! お姉ちゃんと一夏ちゃんは初めての依頼だよね。無茶しちゃダメだよ」
「俺もフォローするから、無理はしなくていい。自分の命も大事にしないとだからな」
ハンターの先輩にあたるヴァイスとステラ=ライムライト(ka5122)の言葉に初依頼になるソリフェル=アウルクス(ka6680)と百鬼 一夏(ka7308)の無駄に入っていた力が抜けたようだ。
「頼りにしてるわね。ステラ、ヴァイスさん」
「はい! よろしくお願いします! ステラ先輩、ヴァイスさん」
ハンターとして歩んでいくために二人は最初の一歩を踏み出した。
町の入り口から見た景色は悲惨だった。
出店が壊され、家が崩れ、通りには点々と血の跡が落ちている。なかには巨大な血の足跡も残されており、縦横無尽に走り回っているのが見てとれた。
「ひどい……」
「敵はあそこか。この付近は安全そうだな。ソリフェル、捜索を頼む」
周囲の状況を的確に判断したヴァイスはソリフェルに声をかけると同時にその身を【灼熱】が包む。同じく引き付け役のステラ、一夏も迎撃できるよう体勢を整えた。炎の影が視界に入ったのか、猪がヴァイスの方を向いた気がした。
「わかったわ。早く探してあげないと」
(戦闘はまだ勇気が出ないの……でも、助けることはできるから)
葛藤を胸にソリフェルは目を閉じ、精神を研ぎ澄ませる。わずかな音も声も聞き逃さず早く見つけ出し保護するために。
【灼熱】の揺めきに誘われた猪はヴァイスを睨み付けていた。地を何度も蹴り、力を溜め、目障りな存在を排除すべく走り出す時を待つ。ヴァイスは敵がいつ走り出してもいいように身構え、猪の動きを見逃さないように注意を払う。
「先にこちらへ向かってくるか」
その言葉が聞こえたのか猪はまっすぐにヴァイスめがけ【突進】をくり出した。彼は黒い弾丸のような巨体を全身の筋肉を使い、衝撃を殺しながら受け止めた。
「これ以上、大きな被害を増やすわけにはいかないからな」
ヴァイスが避けていたら近くにある出店が倒壊していただろう。少しでも戦闘の被害を減らすこともハンターたちの作戦だ。
(うわっ大きい! あんなの無理! ……って無理じゃない! 私はもうハンターなんだからね!)
猪の巨体に気圧されてしまったが、ハンターとして戦場に立ち、憧れの先輩と共に戦うことで闘志を燃え上がらせる。気合を込めた一声を放ち、駆け出す。
「一夏、いきます!」
低く身をかがめ、助走の勢いをすべて踏み込みへの動力に変え、【震撃】を放つ。猪が一夏の攻撃を回避していまう。その先にはダガーを構え、猪の懐へ飛び込むステラの姿があった。
「お姉ちゃんの邪魔はさせないからね! 行って、お姉ちゃん!」
猪の動きを阻害するように脚を切り付けるが、傷は浅い。ダガーを払い、【納刀の構え】を取り次への攻撃のために力を貯めていく。
「ありがとう、ステラ。聞こえたわ」
少しでも早く助けを求める人のもとへ駆けつけるため、力を覚醒させる。肩甲骨のあたりから暖かい色をした小さな翼のような輝きが伸び、走った後には羽根のような残光が残った。仲間たちが猪の意識を引き付けているからこそ、その姿が捕らえることはなかった。
「救助は任せて大丈夫そうだな。俺たちも負けてられないな」
ヴァイスはソリフェルを見送り、仲間たちと猪の視界を遮り、猪の機動を削ぐように立ち回る。【守りの構え】と【ガイウスジェイル】を使用、猪の移動を阻止といつでも仲間を庇えるように立ち回る。サイズに差がある相手を完全に身動きを阻害することはできないと言えど行動を抑制することはできる。
「一夏ちゃん、続いて!」
ステラは【納刀の構え】から抜刀、【居合】からダガーで切りかかるが猪に避けられてしまう。刃を返し、【納刀の構え】を持続させる。小柄な彼女の背後から一夏が飛び出した。
「任せてください! 大きい敵を転ばせるイメトレはばっちりしてきたので! いけますとも!」
一夏は威勢よく啖呵を切り、猪の足を掴む。【柔能制剛】を使い、出店のない道路の方へ投げ飛ばした。イメージトレーニングの成果がしっかり発揮された。
投げ飛ばされ、倒れた猪はゆっくりと立ち上がると首を振るい、ハンターたちの方へ向く。その瞳は怒りに染まり、一夏をうつした。そのまま迷いなく猪は駆け出した。
「うぇっ!?」
「その攻撃を通すわけにはいかないな」
一夏へ向かう猪の【突進】を割り込み、ヴァイスが庇う。どっしりとした構え、敵の攻撃を受け止めきった。ヴァイス自身、高い防御力のおかげで大きなダメージにはなっていない。
「大丈夫か? 一夏」
「はい! ありがとうございます。大丈夫です!」
「攻撃は任したぞ」
「任せてください」
ヴァイスと並び、猪に立ち向かう一夏。最初に感じた猪への恐怖は薄れ、仲間と共に戦うことで勇気が生まれ、立ち向かう力になった。もう一人ではないのだから。
「お姉ちゃん、大丈夫かな……きっと、大丈夫!」
ステラは姉として慕っているソリフェルが心配になり彼女が走って行った方向を少しだけ視線を向けた。でも、大丈夫だと思い直し、猪へ向き直る。大事な姉を守るためにもここを通すわけにはいかないのだ。
●少女とソリフェル
一方、覚醒した姿で救助者を探しているソリフェル。声が聞こえた方向へ一直線に走ってきたのだ。
「ここね! 見つけたわ」
倒壊した出店と家屋の残骸の影に泣いている一人の少女がいた。ソリフェルは瓦礫を飛び越え、少女を優しく抱きしめる。
「もう大丈夫! おねーちゃんたちが来たわ!」
「ふぇ……おねーちゃん、だれ?」
「おねーちゃん達はハンターよ。助けに来たの、怪我はないかしら?」
周りの様子が見えない様に少女をしっかりと抱きしめてから涙をハンカチで拭ってあげる。少しでも恐怖心を和らげてあげようと優しく微笑みかけた。
「えっと……ころんじゃって、あしがいたい、です」
「ちょっと見せてね。うん、これならだいじょうぶよ」
ソリフェルは少女が怪我したほうの足を見ると膝が少しすりむいていた。血はまだ少し滲んでいたが、【ヒール】で治せる傷だ。傷口に手を翳し、優しく掛け声をかけると【ヒール】を発動させる。
「いたいのいたいの、とんでけ~。これでよし」
「わ、ほんとだ。いたくなくなった! ありがとう、おねーちゃん」
少女は柔らかな光が傷を包み込み、優しく治していく様子を一緒に見ていた。完治したところで少女は嬉しそうにお礼を告げる。不安そうな表情から一転、嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「ふふ、どういたしまして。もうちょっとだけここ隠れてて? ちょっとだけでいいから」
「おねーちゃんたち、だいじょうぶなの?」
「だいじょうぶよ。おねーちゃんの従妹、仲間たちはとっても強いのよ」
ソリフェルが少しだけ位置をずらし、背後の様子を少女へ見せる。ヴァイスが庇い守り、ステラと一夏が猪を翻弄し、追い詰めていく姿を少女は目撃した。
「わ、わっ! すごい、みんなかっこいい」
「だから、安心して待っててね。おねーちゃんも行ってくるわ」
「うん! ちゃんとまってる! がんばって、おねーちゃん!」
仲間たちの戦う姿に感動し、カッコいいと少女はいう。戦う姿を食い入るように見つめている。その様子にソリフェルは少女へ小さく微笑むと杖を構え、瓦礫を飛び越えた。仲間たちを支えることも彼女の役割だから。
●仲間と共に
「お待たせ、怪我した人はいないかしら? おねーちゃん、頑張って治すわよ!」
「救助はうまくいったみたいだな。少しだが、回復を頼む」
戦況は優勢、ヴァイスが負傷しているが大きなダメージにはなっていない。他の仲間たちに大きな怪我もないようだ。杖を構えヴァイスへ向けて【ヒール】を発動させる。
「これでいいわね。みんな、頑張って!」
「ありがとう。助かった」
ヴァイスは引き続き【守りの構え】と【ガイウスジェイル】を使用。仲間たちを守るために猪の動きに注意を払う。守りの要は彼が担っているのだから。
「まだ甘いですか……でも、まだまだこれからです!」
「一夏ちゃん、いい感じ! もっと行けるよ!」
一夏が【震撃】を放ち猪が回避のためにバランスを崩すと、その隙にステラが【電光石火】の一撃を放ち、【納刀の構え】を持続させる。もしもの時ため、全力攻撃を放てるよう準備は怠らない。大切な存在を傷つける相手に容赦はいらないのだ。
猪がちょこまかと切り付けてくるステラに業を煮やしたのか全速力で【突進】を繰り出した。ダメージが蓄積されているおかげで足元がふらついてきたようだ。その様子を見切り、ステラは的確に回避を行う。
「そんな攻撃当たらないよ!」
「もう一息というところか。二人とも頼んだぞ」
猪の姿が少しずつ解れ始めた。それでもまだ猪は暴れることをやめない。ちょこまかとまとわりついてくるのはステラだけではない。一夏も鬱陶しい存在だと認識しているのだ。近くに見えた一夏を睨み付け、何度目かの【突進】を放つ。一夏も猪の動きをずっと見てきたのだ、精彩を欠いた動きを見切るのは難しくなかった。
「私にもできた。もう当たりません!」
「いい感じだね、一夏ちゃん! 一緒にいくよ!」
「はい! ステラ先輩!」
一夏はステラと共に駆け出し、一気に猪との距離を詰めていく。ステラが猪の逃げ道を塞ぐように【電光石火】を放ち、脚部の傷を大きくえぐった。その後に続き一夏は【螺旋突】を猪の胴へ向けて放つ。動きがほぼ止まった猪に機械脚甲のエンジンが唸りを上げ、鋭い蹴りが突き刺さった。それが止めの一撃となり、猪はその姿を塵になり風に飛ばされていく。
「や、やった。やりました! ステラ先輩! みなさん!」
「やったね! 一夏ちゃん」
「おめでとう、凄かったわ」
「よくやったな。さて、事後処理を始めよう」
初めての依頼で敵を倒すことができ嬉しそうな一夏と彼女を労う仲間たち。猪を討伐し、この町に平和は訪れたが、ハンターたちの仕事はまだ終わっていない。
●再会
ヴァイスが避難所へ猪討伐が終了したことを報告した。そこで被害状況の確認を一緒にお願いできないかと依頼される。
「俺は頼まれた被害状況の確認をしてくる。みんなは少女の方を頼む」
「はーい! 任せてよ!」
女性陣に少女の事を任せ、ヴァイスは町の被害状況の確認へ向かって行く。幸いなことに戦闘での被害はほぼなく、最初に猪が壊した分だけを確認するだけで良さそうだ。
町民たちが町へ戻ってきた。その中には誰かを探している男性が一人、慌てた様子で駆け込んで来る。
「どこだ、どこにいるんだ? 無事でいてくれ……」
「あ、パパだ! パパー!」
「あの人がお父さんね。一緒に行きましょ?」
隠れていた場所からソリフェルとステラ、一夏に連れられた少女は父親を探していた。慌てている男性に向かって手を振りながら呼びかける。ソリフェル達も一緒に父親の元へついていく。
「無事だったのか! 良かった……」
「うん! ハンターのおねーちゃんたちにたすけてもらったの」
父親は無事だった娘を抱きしめる。土埃で汚れてはいるが怪我はどこにもない。娘を離し、ハンターたちへ深々と頭を下げる。
「そうか。娘を救ってくださって、ありがとうございました」
「当然のことをしただけです。次は気を付けてくださいね」
「本当にありがとうございました。さぁ、行こうか」
「うん! おねーちゃんたち、ありがとう!」
ソリフェルの言葉にもう一度、感謝を伝えた父親と少女は手を繋ぎ、我が家へと帰って行く。その後ろ姿をハンターたちは見送った。
一般人に被害を出すことなく、自分たちも無事に依頼を達成することができた。初依頼の二人にとっても経験者である二人にとってもかけがえのない経験となったことだろう。小さな命を守ることができたのだから。
ヴァイス(ka0364)は無線を仕舞い、今しがた確認したことを仲間たちに告げる。
「避難所も混乱しているようだ。避難が完了しているか不明、逃げ遅れた人達がいる可能性が高い。まずは周囲の安全確認を優先させよう」
作戦内容は事前に打ち合わせをしてきた。確認がとれた情報から行動方針を決め、各自の役割を再認識する。
「はーい! お姉ちゃんと一夏ちゃんは初めての依頼だよね。無茶しちゃダメだよ」
「俺もフォローするから、無理はしなくていい。自分の命も大事にしないとだからな」
ハンターの先輩にあたるヴァイスとステラ=ライムライト(ka5122)の言葉に初依頼になるソリフェル=アウルクス(ka6680)と百鬼 一夏(ka7308)の無駄に入っていた力が抜けたようだ。
「頼りにしてるわね。ステラ、ヴァイスさん」
「はい! よろしくお願いします! ステラ先輩、ヴァイスさん」
ハンターとして歩んでいくために二人は最初の一歩を踏み出した。
町の入り口から見た景色は悲惨だった。
出店が壊され、家が崩れ、通りには点々と血の跡が落ちている。なかには巨大な血の足跡も残されており、縦横無尽に走り回っているのが見てとれた。
「ひどい……」
「敵はあそこか。この付近は安全そうだな。ソリフェル、捜索を頼む」
周囲の状況を的確に判断したヴァイスはソリフェルに声をかけると同時にその身を【灼熱】が包む。同じく引き付け役のステラ、一夏も迎撃できるよう体勢を整えた。炎の影が視界に入ったのか、猪がヴァイスの方を向いた気がした。
「わかったわ。早く探してあげないと」
(戦闘はまだ勇気が出ないの……でも、助けることはできるから)
葛藤を胸にソリフェルは目を閉じ、精神を研ぎ澄ませる。わずかな音も声も聞き逃さず早く見つけ出し保護するために。
【灼熱】の揺めきに誘われた猪はヴァイスを睨み付けていた。地を何度も蹴り、力を溜め、目障りな存在を排除すべく走り出す時を待つ。ヴァイスは敵がいつ走り出してもいいように身構え、猪の動きを見逃さないように注意を払う。
「先にこちらへ向かってくるか」
その言葉が聞こえたのか猪はまっすぐにヴァイスめがけ【突進】をくり出した。彼は黒い弾丸のような巨体を全身の筋肉を使い、衝撃を殺しながら受け止めた。
「これ以上、大きな被害を増やすわけにはいかないからな」
ヴァイスが避けていたら近くにある出店が倒壊していただろう。少しでも戦闘の被害を減らすこともハンターたちの作戦だ。
(うわっ大きい! あんなの無理! ……って無理じゃない! 私はもうハンターなんだからね!)
猪の巨体に気圧されてしまったが、ハンターとして戦場に立ち、憧れの先輩と共に戦うことで闘志を燃え上がらせる。気合を込めた一声を放ち、駆け出す。
「一夏、いきます!」
低く身をかがめ、助走の勢いをすべて踏み込みへの動力に変え、【震撃】を放つ。猪が一夏の攻撃を回避していまう。その先にはダガーを構え、猪の懐へ飛び込むステラの姿があった。
「お姉ちゃんの邪魔はさせないからね! 行って、お姉ちゃん!」
猪の動きを阻害するように脚を切り付けるが、傷は浅い。ダガーを払い、【納刀の構え】を取り次への攻撃のために力を貯めていく。
「ありがとう、ステラ。聞こえたわ」
少しでも早く助けを求める人のもとへ駆けつけるため、力を覚醒させる。肩甲骨のあたりから暖かい色をした小さな翼のような輝きが伸び、走った後には羽根のような残光が残った。仲間たちが猪の意識を引き付けているからこそ、その姿が捕らえることはなかった。
「救助は任せて大丈夫そうだな。俺たちも負けてられないな」
ヴァイスはソリフェルを見送り、仲間たちと猪の視界を遮り、猪の機動を削ぐように立ち回る。【守りの構え】と【ガイウスジェイル】を使用、猪の移動を阻止といつでも仲間を庇えるように立ち回る。サイズに差がある相手を完全に身動きを阻害することはできないと言えど行動を抑制することはできる。
「一夏ちゃん、続いて!」
ステラは【納刀の構え】から抜刀、【居合】からダガーで切りかかるが猪に避けられてしまう。刃を返し、【納刀の構え】を持続させる。小柄な彼女の背後から一夏が飛び出した。
「任せてください! 大きい敵を転ばせるイメトレはばっちりしてきたので! いけますとも!」
一夏は威勢よく啖呵を切り、猪の足を掴む。【柔能制剛】を使い、出店のない道路の方へ投げ飛ばした。イメージトレーニングの成果がしっかり発揮された。
投げ飛ばされ、倒れた猪はゆっくりと立ち上がると首を振るい、ハンターたちの方へ向く。その瞳は怒りに染まり、一夏をうつした。そのまま迷いなく猪は駆け出した。
「うぇっ!?」
「その攻撃を通すわけにはいかないな」
一夏へ向かう猪の【突進】を割り込み、ヴァイスが庇う。どっしりとした構え、敵の攻撃を受け止めきった。ヴァイス自身、高い防御力のおかげで大きなダメージにはなっていない。
「大丈夫か? 一夏」
「はい! ありがとうございます。大丈夫です!」
「攻撃は任したぞ」
「任せてください」
ヴァイスと並び、猪に立ち向かう一夏。最初に感じた猪への恐怖は薄れ、仲間と共に戦うことで勇気が生まれ、立ち向かう力になった。もう一人ではないのだから。
「お姉ちゃん、大丈夫かな……きっと、大丈夫!」
ステラは姉として慕っているソリフェルが心配になり彼女が走って行った方向を少しだけ視線を向けた。でも、大丈夫だと思い直し、猪へ向き直る。大事な姉を守るためにもここを通すわけにはいかないのだ。
●少女とソリフェル
一方、覚醒した姿で救助者を探しているソリフェル。声が聞こえた方向へ一直線に走ってきたのだ。
「ここね! 見つけたわ」
倒壊した出店と家屋の残骸の影に泣いている一人の少女がいた。ソリフェルは瓦礫を飛び越え、少女を優しく抱きしめる。
「もう大丈夫! おねーちゃんたちが来たわ!」
「ふぇ……おねーちゃん、だれ?」
「おねーちゃん達はハンターよ。助けに来たの、怪我はないかしら?」
周りの様子が見えない様に少女をしっかりと抱きしめてから涙をハンカチで拭ってあげる。少しでも恐怖心を和らげてあげようと優しく微笑みかけた。
「えっと……ころんじゃって、あしがいたい、です」
「ちょっと見せてね。うん、これならだいじょうぶよ」
ソリフェルは少女が怪我したほうの足を見ると膝が少しすりむいていた。血はまだ少し滲んでいたが、【ヒール】で治せる傷だ。傷口に手を翳し、優しく掛け声をかけると【ヒール】を発動させる。
「いたいのいたいの、とんでけ~。これでよし」
「わ、ほんとだ。いたくなくなった! ありがとう、おねーちゃん」
少女は柔らかな光が傷を包み込み、優しく治していく様子を一緒に見ていた。完治したところで少女は嬉しそうにお礼を告げる。不安そうな表情から一転、嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「ふふ、どういたしまして。もうちょっとだけここ隠れてて? ちょっとだけでいいから」
「おねーちゃんたち、だいじょうぶなの?」
「だいじょうぶよ。おねーちゃんの従妹、仲間たちはとっても強いのよ」
ソリフェルが少しだけ位置をずらし、背後の様子を少女へ見せる。ヴァイスが庇い守り、ステラと一夏が猪を翻弄し、追い詰めていく姿を少女は目撃した。
「わ、わっ! すごい、みんなかっこいい」
「だから、安心して待っててね。おねーちゃんも行ってくるわ」
「うん! ちゃんとまってる! がんばって、おねーちゃん!」
仲間たちの戦う姿に感動し、カッコいいと少女はいう。戦う姿を食い入るように見つめている。その様子にソリフェルは少女へ小さく微笑むと杖を構え、瓦礫を飛び越えた。仲間たちを支えることも彼女の役割だから。
●仲間と共に
「お待たせ、怪我した人はいないかしら? おねーちゃん、頑張って治すわよ!」
「救助はうまくいったみたいだな。少しだが、回復を頼む」
戦況は優勢、ヴァイスが負傷しているが大きなダメージにはなっていない。他の仲間たちに大きな怪我もないようだ。杖を構えヴァイスへ向けて【ヒール】を発動させる。
「これでいいわね。みんな、頑張って!」
「ありがとう。助かった」
ヴァイスは引き続き【守りの構え】と【ガイウスジェイル】を使用。仲間たちを守るために猪の動きに注意を払う。守りの要は彼が担っているのだから。
「まだ甘いですか……でも、まだまだこれからです!」
「一夏ちゃん、いい感じ! もっと行けるよ!」
一夏が【震撃】を放ち猪が回避のためにバランスを崩すと、その隙にステラが【電光石火】の一撃を放ち、【納刀の構え】を持続させる。もしもの時ため、全力攻撃を放てるよう準備は怠らない。大切な存在を傷つける相手に容赦はいらないのだ。
猪がちょこまかと切り付けてくるステラに業を煮やしたのか全速力で【突進】を繰り出した。ダメージが蓄積されているおかげで足元がふらついてきたようだ。その様子を見切り、ステラは的確に回避を行う。
「そんな攻撃当たらないよ!」
「もう一息というところか。二人とも頼んだぞ」
猪の姿が少しずつ解れ始めた。それでもまだ猪は暴れることをやめない。ちょこまかとまとわりついてくるのはステラだけではない。一夏も鬱陶しい存在だと認識しているのだ。近くに見えた一夏を睨み付け、何度目かの【突進】を放つ。一夏も猪の動きをずっと見てきたのだ、精彩を欠いた動きを見切るのは難しくなかった。
「私にもできた。もう当たりません!」
「いい感じだね、一夏ちゃん! 一緒にいくよ!」
「はい! ステラ先輩!」
一夏はステラと共に駆け出し、一気に猪との距離を詰めていく。ステラが猪の逃げ道を塞ぐように【電光石火】を放ち、脚部の傷を大きくえぐった。その後に続き一夏は【螺旋突】を猪の胴へ向けて放つ。動きがほぼ止まった猪に機械脚甲のエンジンが唸りを上げ、鋭い蹴りが突き刺さった。それが止めの一撃となり、猪はその姿を塵になり風に飛ばされていく。
「や、やった。やりました! ステラ先輩! みなさん!」
「やったね! 一夏ちゃん」
「おめでとう、凄かったわ」
「よくやったな。さて、事後処理を始めよう」
初めての依頼で敵を倒すことができ嬉しそうな一夏と彼女を労う仲間たち。猪を討伐し、この町に平和は訪れたが、ハンターたちの仕事はまだ終わっていない。
●再会
ヴァイスが避難所へ猪討伐が終了したことを報告した。そこで被害状況の確認を一緒にお願いできないかと依頼される。
「俺は頼まれた被害状況の確認をしてくる。みんなは少女の方を頼む」
「はーい! 任せてよ!」
女性陣に少女の事を任せ、ヴァイスは町の被害状況の確認へ向かって行く。幸いなことに戦闘での被害はほぼなく、最初に猪が壊した分だけを確認するだけで良さそうだ。
町民たちが町へ戻ってきた。その中には誰かを探している男性が一人、慌てた様子で駆け込んで来る。
「どこだ、どこにいるんだ? 無事でいてくれ……」
「あ、パパだ! パパー!」
「あの人がお父さんね。一緒に行きましょ?」
隠れていた場所からソリフェルとステラ、一夏に連れられた少女は父親を探していた。慌てている男性に向かって手を振りながら呼びかける。ソリフェル達も一緒に父親の元へついていく。
「無事だったのか! 良かった……」
「うん! ハンターのおねーちゃんたちにたすけてもらったの」
父親は無事だった娘を抱きしめる。土埃で汚れてはいるが怪我はどこにもない。娘を離し、ハンターたちへ深々と頭を下げる。
「そうか。娘を救ってくださって、ありがとうございました」
「当然のことをしただけです。次は気を付けてくださいね」
「本当にありがとうございました。さぁ、行こうか」
「うん! おねーちゃんたち、ありがとう!」
ソリフェルの言葉にもう一度、感謝を伝えた父親と少女は手を繋ぎ、我が家へと帰って行く。その後ろ姿をハンターたちは見送った。
一般人に被害を出すことなく、自分たちも無事に依頼を達成することができた。初依頼の二人にとっても経験者である二人にとってもかけがえのない経験となったことだろう。小さな命を守ることができたのだから。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
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面白かった! | 4人 |
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/09/09 14:57:26 |
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相談卓 葛音 ステラ(ka5122) 人間(リアルブルー)|19才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2018/09/12 19:07:48 |