ゲスト
(ka0000)
収穫祭
マスター:秋月雅哉

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 8日
- 締切
- 2018/09/19 12:00
- 完成日
- 2018/09/20 10:43
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●秋の実りに
その日は子供たちにとって特別だった。吟遊詩人がやってきて歌を歌い、陽気な音楽が紡がれ、村娘と若者は手に手を取り合って踊りを踊る。
秋にとれる果物は畑のものも山のものも問わず広場に並べられ、よく肥えた豚や牛が丸焼きにされてふるまわれる。
鳥たちは野菜と一緒にシチューになってパンとともに提供され、冬のために用意された塩漬け肉やベーコンも味見を兼ねて食卓をにぎわせる。
ブドウ、アケビ、梨、柿。イモ類にそろそろ保存できなるから冬には食べられない青菜。鮭は近くの漁港から仕入れてきたものだ。他にも空きが旬の食べ物が所狭しと並ぶ。
ワインをはじめとする酒もふるまわれ、人々は高らかに笑ってその日を迎えるだろう。
今日は収穫祭。実りに感謝し、大いに騒ぐ、村一番のお祭りだった。
●いつものお誘い
「前にハンターに村を助けられた、何年もかかったけれど復興もあらかたすんで人でにぎわう暮らしが戻ってきた。と手紙をもらってね」
ルカ・シュバルツエンド(kz0073)は口元にわずかに笑みを浮かべる。戦いに出ることなく斡旋屋としてハンターたちと依頼人の間を取り持つ彼だが依頼人が救われた後平穏無事に暮らすことができているというのはやはり喜ばしい知らせのようだ。
「その村では冬がはやいから、いつも他の場所より少し早く収穫祭を行うんだそうだ。これはその招待状。ハンターの名前がわからないからオフィスでこの話を聞いた皆様に、ってことだったよ」
踊りを楽しんだり、出店をのぞいたり、村人と言葉を交わしたり、海や山、畑の幸に舌鼓を売ったり。そんな風に平和な日々を過ごし、村人から感謝の気持ちを受け取ってきてほしいのだと銀髪の青年は言葉を続ける。
「村から少し離れた場所に花畑があるらしくてね。この収穫祭では思い人に花飾りを送るらしい。花冠や花で作った指輪や腕輪、不器用な人は小さな花束にしたりね。恋心を伝えたいけれど口にするのが恥ずかしい、なんて人は意中の相手を誘ってみるのもいいんじゃないかな」
せっかくのお祭りなんだから楽しめるといいよね。祭り会場で待ってるよ。そういってルカは招待状をボードに張り付けたのだった。
その日は子供たちにとって特別だった。吟遊詩人がやってきて歌を歌い、陽気な音楽が紡がれ、村娘と若者は手に手を取り合って踊りを踊る。
秋にとれる果物は畑のものも山のものも問わず広場に並べられ、よく肥えた豚や牛が丸焼きにされてふるまわれる。
鳥たちは野菜と一緒にシチューになってパンとともに提供され、冬のために用意された塩漬け肉やベーコンも味見を兼ねて食卓をにぎわせる。
ブドウ、アケビ、梨、柿。イモ類にそろそろ保存できなるから冬には食べられない青菜。鮭は近くの漁港から仕入れてきたものだ。他にも空きが旬の食べ物が所狭しと並ぶ。
ワインをはじめとする酒もふるまわれ、人々は高らかに笑ってその日を迎えるだろう。
今日は収穫祭。実りに感謝し、大いに騒ぐ、村一番のお祭りだった。
●いつものお誘い
「前にハンターに村を助けられた、何年もかかったけれど復興もあらかたすんで人でにぎわう暮らしが戻ってきた。と手紙をもらってね」
ルカ・シュバルツエンド(kz0073)は口元にわずかに笑みを浮かべる。戦いに出ることなく斡旋屋としてハンターたちと依頼人の間を取り持つ彼だが依頼人が救われた後平穏無事に暮らすことができているというのはやはり喜ばしい知らせのようだ。
「その村では冬がはやいから、いつも他の場所より少し早く収穫祭を行うんだそうだ。これはその招待状。ハンターの名前がわからないからオフィスでこの話を聞いた皆様に、ってことだったよ」
踊りを楽しんだり、出店をのぞいたり、村人と言葉を交わしたり、海や山、畑の幸に舌鼓を売ったり。そんな風に平和な日々を過ごし、村人から感謝の気持ちを受け取ってきてほしいのだと銀髪の青年は言葉を続ける。
「村から少し離れた場所に花畑があるらしくてね。この収穫祭では思い人に花飾りを送るらしい。花冠や花で作った指輪や腕輪、不器用な人は小さな花束にしたりね。恋心を伝えたいけれど口にするのが恥ずかしい、なんて人は意中の相手を誘ってみるのもいいんじゃないかな」
せっかくのお祭りなんだから楽しめるといいよね。祭り会場で待ってるよ。そういってルカは招待状をボードに張り付けたのだった。
リプレイ本文
●村祭りは賑やかに。そして、花を君に
かつてハンターの尽力によって救われた村で、収穫祭が行われる。
招待を受けたハンターたとはその村ではプロポーズに花を贈ること、返礼は花の数で決まることを、招待状で聞いていた。
白い花は貴方色に染まる未来を共に。赤い花は炎よりも激しい愛。青い花は私の心を蕩かして。
黄色い花は貴方は私の太陽です。紫の花は寄り添って生きていたい。ピンクの花は可憐な恋心。オレンジの花はいつも明るい未来でいたい。
その村でだけ伝わる花言葉のようなものだ。うれしいです、受け入れますと承諾の返事は三輪の色が違う花。ごめんなさい、受け取れません、と拒絶する場合は二輪の白い花、友達でいましょう、は一輪咲きの花が返礼として用いられる。
村祭りの会場、瀬織 怜皇 (ka0684)は花を贈るのにそんな意味があるのか、と感心しながらいい機会なので恋人のUisca Amhran(ka0754)に贈ろうと思い立ち祭りに誘った。
まずは村祭りを見て歩こうと二人で出店をめぐる。
「たくさん、出店が出ているみたいですねぇ?」
「寄せ木細工や木でできたお人形だって。どれも可愛いね!」
日常的に伝統工芸を大切にする村なのか、寄せ木細工の小物も木で作られた人形も、木訥だが温かみがあり、どれもこれも丁寧に作られている。
人形は命宿らぬもののはずなのになんだが幸せで楽しげだ。
「ん。本当に。可愛いですね」
ハンターに救われたということ、復興に何年もかかったということは村が壊滅の危機になっていたということだろう。
だからこそこの村の人たちは日々に感謝し、細工物にも心を籠めるのかもしれない。
Uiscaは巫女としてこの村に祝福があるように、と思いを込めて豊穣の舞を披露する。
「この村に白龍さまの祝福があらんことを……」
舞が終わった後拍手喝さいをする村人たちにぺこりと頭を下げて恋人を見やる。
怜皇はそんな恋人を優しく見つめた。
「いつみても綺麗ですねぇ」
思わず、といったような微笑みにうれしそうに笑い返す恋人たち。
怜皇は最後にアレンジした白い花を恋人に差し出した。
「イスカと一緒にいつまでもいたい、です。いつか、結婚してもらえますか?」
「わぁ、ありがとう……巫女だからすぐには無理だけど、巫女のお勤めに一区切りついたら結婚したいっ」
返礼はもちろん三輪の違う色の花。
「……そうですね、ありがとう、イスカ」
「これからもよろしくね!」
同じくプロポーズに挑んでいた村の若者たちは口々に祝福を二人に述べたのだった。
「ただ酒が飲めると聞いてっ! ドワーフとして、逃がす手はねーですよねぇ! んふふふ、流浪のエクラ教シスター、シレークスがきやがりましたですよ」
シレークス (ka0752)はサクラ・エルフリード (ka2598)とともに祭りへやってきた。
サクラは白い私服のワンピースで清楚ないでたちだ。二人とも布教に戦いにと忙しい日々を過ごしているので今日は息抜きに来たのだ。
「いろんなお店が出ていて目移りしそうですね……おいしそうな料理や……お酒も……」
「って、サクラ! おめーは飲むんじゃねーです!」
「ちょっとだけ、ちょっとだけならダメですか……」
シレークスに断固阻止されサクラは残念そうだ。酒癖が悪すぎるので絶対だめだ、と言われてしぶしぶジュースで我慢。
ワインやビールをとにかく飲むべし、飲むべしっと酔いが回ってご機嫌のシレークスを羨ましそうに見ながらせめてワイン気分を味わおうとサクラはブドウのジュースを。
飲みすぎて前後不覚になるのは酒好きとしても祭りの参加者としてもよろしくない、という点はわきまえているのでたくさん飲みはするが、完全に酔いつぶれたり記憶が飛んだりしないように、あくまでも明るく楽しく飲める範疇にとどめる。
気分がよくなってきたシレークスはエクラ教聖歌をアレンジして歌おう、とサクラに持ち掛ける。
「わたくしの歌を聞きやがれ、なのですよっ♪」
「聖歌ですか……。歌うのは任せて私は演奏をしましょうか……。練習はしているので聖歌なら何とかなるはずです……」
歌は恥ずかしいから、と手持ちの楽器を使い、シレークスの歌にあわせるサクラ。聖職者なので楽器の扱い方はそれなりに得意だ。
アレンジした聖歌とそれにあわせた音楽が広場に響くと人々は二人のシスターに祝福のお礼を述べた後、まだ二人が味わっていない料理やアルコールをふるまうのだった。
夢路 まよい (ka1328)は一人で祭りの出店を見て回っていた。甘いものと可愛いものに目がないので、季節の果物を使ったお菓子の店や木彫りの人形の店を見かけるとつい立ち寄ってしまう。
食べ物は出来立てがおいしいものは休憩スペースで食べたり、祭りなので食べ歩きをしたり。日持ちのするものや「今は作り立てだけど味が染みてから食べるとおいしいよ」と村の人が進めてくれたものと、人形を一つお土産に購入。
祭りから帰る前に青い花を摘んでアレンジしたものを作る。
「この場に渡したい相手はいないし、渡したい相手はこの花を贈ることの意味を知らないだろうけれど、ね」
ただの花のプレゼントだと思われるだろうし、返事の花ももらうことはできないけれど。
「それでも、私のキモチ、相手の手元に置いておきたいんだよね」
花を散らさないように気を付けながらそうつぶやいて。いつか私の心は蕩かしてもらえるのかな、と思いながらまよいは帰途についたのだった。
(もしも自分がとっくに死んでいて。今ここにいるのが自分の幽霊だったら人はどうするのかな? そんなこと絶対ないって言いきれるのかな)
ディーナ・フェルミ (ka5843)は一緒に来ていない相手に対して白と、黄色と、紫で花束を作る。ドライフラワーにして飾ってほしかったから花束だ。プロポーズの代わりだということに、ディーナと送られる相手は気づいているのかいないのか。
もう一人へは、お菓子をお土産に。
(リアルブルーの大精霊に会ったあとから、ずっとふわふわしてる。私……あの時ちゃんとCAMおりたかな)
ふらり、ふらりと歩くと見知った姿を見つけた。
「ルカさん……もし私が死んでいたら、この花束を届けてほしい人がいるの」
ルカ・シュバルツエンド(kz0073)はそんな申し出に青い目を軽く見張って首をかしげ。
「大けがはしてるみたいだけど、君はちゃんと生きてるじゃないか。疲れてるのかい? 休憩所まで案内しようか?」
「そう……だよね。疲れてるのかな……疲れてるのかも」
ただならぬ様子にルカが休憩所まで付き添おうとするのを断ってディーナは自分の体に視線を落とす。
傷だらけの体を見ていたら不意に痛みを思い出した。
(あぁ、いたい、な。でも。……そっか、生きてるんだ……)
そっか、とつぶやいて。ディーナは色とりどりの花束をしばらくじっと見つめ続けて気持ちに整理をつけようとするのだった。
星野 ハナ (ka5852)は思いついてしまった。花交換の話を聞いて、いろんなイケメンから花を一輪か二輪ずつもらって花束を自作したら楽しいんじゃないか、と。
プロポーズに使われる花で断られることを前提に花をばらまくというのはなかなか斬新なアイディアだが、だって花束が欲しいのだ。
花用の籠を二つ準備。一つは白、青、紫の三色の花束を満載にしたもの。もう一つはもらった花を入れておくもの。
イケメンなら遊び心に乗ってくれると考えてじゃんじゃん説明しながら花束を配ってお断りか友達でいましょう、の花を返礼としてもらう。
花を贈るのはプロポーズのための儀式、と考えている村人たちは最初こそ驚いたようだが、そういう楽しみ方もあるのか、と苦笑しながらハナのリクエストに応えてくれる人が多かった。
そんな中ハナは知り合いを発見。すかさず近づいて。
「あー、ルカさん発見ですぅ。花束あげるんで一輪か二輪お花くださいぃ」
「噂になってたよ、斬新な楽しみ方をしてる招待客がいたって。頭固い人に怒られないように贈る人には気を付けてね」
「そこは選んでますよぅ。だってぇ、こんな楽しい遊びがあるのに参加できないの寂しいじゃないですかぁ。知らない場所で知らない人からのプロポーズなんてありえないですしぃ、逆に受けられてもドン引きですけどぉ、雰囲気は楽しみたいし花束は欲しいんですぅ」
街角で出会ったイケメンに対してしたのと同じ説明をするとルカも男の端くれ、乙女の要望に応えて友達でいましょう、と返礼の花を返してくれた。
「ありがとうございますぅ。イケメンからもらった花がこんなにたくさん……ご利益ありそうですねぇ」
「全部遠回しなお断りなんだけどご利益ってあるのかな……縁切りになりそうな」
「楽しみに水差さないでくださぁい!」
ごめんごめん、とルカは笑ってハナと別れ、ハナは次の花を求めてイケメン探しを再スタート。
祭りの楽しみ方は人それぞれ、を地でいくたくましさに、村人たちは新しい楽しみを来年からは取り入れてもいいかもしれない、なんて影響を受けてしまったのだった。
レイア・アローネ (ka4082)はそんなハナの様子を見て何をしてるんだ、あいつは、と若干ひきつった顔。
プロポーズのための大切な花で断られること前提のばらまき大作戦、一歩間違えば追い出されるのではないだろうか、とひとごとながらひやひやしたが案外この村の住民はノリがいいらしく受け入れられたようだ。
「あいかわらずというかなんというか」
仲間の恋路を見かけたときは陰ながらちょっと応援したくなったり。
「べ、別に野次馬ではないのだが……カップル率高いのか?」
そんなレイアに伝えたいことがあってきているだろうか、と探していた無道 (ka7139)は一人で浮足立っている後ろ姿に声をかける。
驚きに飛び上がるレイアによかったら一緒に見て回らないか、と声をかけ一人で祭りを見物していた二人は一緒に歩くことに。
「何か気になるものがあったらついていくぞ?」
「気、気になるものか。プロポーズをしているハンターや村人をたくさん見かけたが、無道も誰かに贈りたくてこの村に?」
「あぁ、今の俺の心……ピンクの花束を、レイアに贈ろうと思っていた」
受け取ってくれるかどうかは賭けだったし会えるかどうかも賭けだったが、と肩をすくめながら無道はピンクの花束をレイアに差し出す。
「……は? 私に? ……相手間違えてないか? だって……私だぞ?」
「いや、相手がレイアだから贈るんだが……」
自分の魅力を分かっていないレイアがきょとんとする。ジョークか何かと思われているのを視線で本気だ、とアピールするとそわそわしだすレイア。
「……すぐには返事はできないな……それでもいいというなら……ええと、こういう場合『友達から』とかいうのかな……?」
「……ん、友人から、か。それじゃ……早く格上げされるよう、頑張ってみるかな」
双方照れくささを隠しきれず視線をそらし合って。それでも祭りをしばらく二人で眺めて回る。
これから歩く二人の道は、今までとは少しだけ、けれど確実に違うものになることだろう。
雲雀 (ka6084)は最近特別な意味で好意を持っていることに気づいた、幼馴染であるグラディート (ka6433)に祭りに誘われて二つ返事で承諾し、待ち合わせ。
なんとなく花を物色しながら待ち人に思いをはせる。
「ピンクの花……いや、自分で可憐ってどうなのですよ。むらさき……渡すならこの辺り……ってまだはえーですから!」
合流してからは美味しそうな料理を分け合い、踊っている人たちを見ればグラディートがちょっとおどけて手を差し出す。
「お嬢さん、僕と踊ってくださいな?」
「お、踊りくらいなんてことないですよー」
踊りに誘われてドギマギしながら踊る雲雀を見てグラディートは微笑む。
「ぎこちなくツンツンしてるけど、雲雀ちゃん、耳真っ赤だよね。わかりやすくてかわいいなぁ~♪」
踊り終わった後グラディートは雲雀に綺麗なオレンジ色の花束を差し出す。
ちなみに、プロポーズとしてではなく『いつまでも明るい未来を貴方に』という意味だと思っていることに雲雀はまだ気づいていないので、好意を寄せている相手からのプロポーズに頭が真っ白に。
「ふぇっ? こ、これって……?」
「あれ?お花嫌いだった??? 素敵だよね、明るい未来を貴方にって。そういう花ことばなのかな、このお花」
「あ、そういう……」
花の意味だけか、とドキドキを返せと言わんばかりにムッとして足を踏むと痛いよ!? と抗議の声が上がる。
「一応受け取っておくですよ」
もらった花束から一輪抜いて、紫とピンクの花をくわえてお返しをするがグラディートはそれがプロポーズの了承だということにも気づかない。
「でも、ずっと一緒にいれたらいいね」
そういって紫の花にキスする思い人の言葉がプロポーズに聞こえて真っ赤になりながら雲雀はぶんぶんと頭を振った。
(ふ、深い意味はないんですから期待したら駄目、期待したら駄目……っ!)
イヴ (ka6763)は一人で祭り会場の中を散策。目的は食べ歩き。
フルーツとワインを中心に、特に好きな赤いフルーツを探し求める。
真っ赤に熟した果実を使ったクレープやジャムにして挟んだサンドイッチなどを食べて気分は上々。
美味しそうに食べるね、と言われて赤味が強いほど甘い気がする、これはよく熟していておいしいと返事をするとうれしそうな笑顔が帰ってくる。
ワインのお供にチーズと干し肉もちょいちょいとつまんで。
振舞われていたシチューのレシピをよかったら教えてくれないか、と問いかけた理由はといえば。
「お料理を覚えようと思って! 花嫁修業、みたいな?」
いつか大好きな人と家族になった時のため。愛する人との間にできた子供に母親の味を覚えてもらうため。
「この村の伝統の味が貴方の家庭の味になったら、誇らしいことはないねぇ。とびっきり美味しいシチューの作り方を、教えないと」
伝統の料理といっても各家庭でそれぞれ秘伝の隠し味は違う。それから奥様から料理を覚え始めた少女、そんな彼女たちに料理を教えてきた母親やその母親が集まってとっておきを伝授する。
「ありがとう、とても参考になったよ。絶対勉強して、おいしいシチューを作れるようになるからね」
「頑張るんだよ!」
笑顔で見送られて、紫の大きな花と黄色の小さな花で小ぶりの花束を作ると寄せ木細工の箱を買ってその中にそっとしまう。
お土産に寄せ木細工のペアの食器とシチューの材料を買って、家に帰ったらさっそく作ってみようと心を弾ませてイヴは村を後にした。
賑やかに、そして甘やかに祭りの時間は過ぎて。きっとまた来年もハンターの皆さんを招けるように、と招待した側である村人たちも、招待されたハンターたちも交流と祭りと料理を存分に楽しんだ、少し早めの収穫祭は幕を下ろしたのだった。
かつてハンターの尽力によって救われた村で、収穫祭が行われる。
招待を受けたハンターたとはその村ではプロポーズに花を贈ること、返礼は花の数で決まることを、招待状で聞いていた。
白い花は貴方色に染まる未来を共に。赤い花は炎よりも激しい愛。青い花は私の心を蕩かして。
黄色い花は貴方は私の太陽です。紫の花は寄り添って生きていたい。ピンクの花は可憐な恋心。オレンジの花はいつも明るい未来でいたい。
その村でだけ伝わる花言葉のようなものだ。うれしいです、受け入れますと承諾の返事は三輪の色が違う花。ごめんなさい、受け取れません、と拒絶する場合は二輪の白い花、友達でいましょう、は一輪咲きの花が返礼として用いられる。
村祭りの会場、瀬織 怜皇 (ka0684)は花を贈るのにそんな意味があるのか、と感心しながらいい機会なので恋人のUisca Amhran(ka0754)に贈ろうと思い立ち祭りに誘った。
まずは村祭りを見て歩こうと二人で出店をめぐる。
「たくさん、出店が出ているみたいですねぇ?」
「寄せ木細工や木でできたお人形だって。どれも可愛いね!」
日常的に伝統工芸を大切にする村なのか、寄せ木細工の小物も木で作られた人形も、木訥だが温かみがあり、どれもこれも丁寧に作られている。
人形は命宿らぬもののはずなのになんだが幸せで楽しげだ。
「ん。本当に。可愛いですね」
ハンターに救われたということ、復興に何年もかかったということは村が壊滅の危機になっていたということだろう。
だからこそこの村の人たちは日々に感謝し、細工物にも心を籠めるのかもしれない。
Uiscaは巫女としてこの村に祝福があるように、と思いを込めて豊穣の舞を披露する。
「この村に白龍さまの祝福があらんことを……」
舞が終わった後拍手喝さいをする村人たちにぺこりと頭を下げて恋人を見やる。
怜皇はそんな恋人を優しく見つめた。
「いつみても綺麗ですねぇ」
思わず、といったような微笑みにうれしそうに笑い返す恋人たち。
怜皇は最後にアレンジした白い花を恋人に差し出した。
「イスカと一緒にいつまでもいたい、です。いつか、結婚してもらえますか?」
「わぁ、ありがとう……巫女だからすぐには無理だけど、巫女のお勤めに一区切りついたら結婚したいっ」
返礼はもちろん三輪の違う色の花。
「……そうですね、ありがとう、イスカ」
「これからもよろしくね!」
同じくプロポーズに挑んでいた村の若者たちは口々に祝福を二人に述べたのだった。
「ただ酒が飲めると聞いてっ! ドワーフとして、逃がす手はねーですよねぇ! んふふふ、流浪のエクラ教シスター、シレークスがきやがりましたですよ」
シレークス (ka0752)はサクラ・エルフリード (ka2598)とともに祭りへやってきた。
サクラは白い私服のワンピースで清楚ないでたちだ。二人とも布教に戦いにと忙しい日々を過ごしているので今日は息抜きに来たのだ。
「いろんなお店が出ていて目移りしそうですね……おいしそうな料理や……お酒も……」
「って、サクラ! おめーは飲むんじゃねーです!」
「ちょっとだけ、ちょっとだけならダメですか……」
シレークスに断固阻止されサクラは残念そうだ。酒癖が悪すぎるので絶対だめだ、と言われてしぶしぶジュースで我慢。
ワインやビールをとにかく飲むべし、飲むべしっと酔いが回ってご機嫌のシレークスを羨ましそうに見ながらせめてワイン気分を味わおうとサクラはブドウのジュースを。
飲みすぎて前後不覚になるのは酒好きとしても祭りの参加者としてもよろしくない、という点はわきまえているのでたくさん飲みはするが、完全に酔いつぶれたり記憶が飛んだりしないように、あくまでも明るく楽しく飲める範疇にとどめる。
気分がよくなってきたシレークスはエクラ教聖歌をアレンジして歌おう、とサクラに持ち掛ける。
「わたくしの歌を聞きやがれ、なのですよっ♪」
「聖歌ですか……。歌うのは任せて私は演奏をしましょうか……。練習はしているので聖歌なら何とかなるはずです……」
歌は恥ずかしいから、と手持ちの楽器を使い、シレークスの歌にあわせるサクラ。聖職者なので楽器の扱い方はそれなりに得意だ。
アレンジした聖歌とそれにあわせた音楽が広場に響くと人々は二人のシスターに祝福のお礼を述べた後、まだ二人が味わっていない料理やアルコールをふるまうのだった。
夢路 まよい (ka1328)は一人で祭りの出店を見て回っていた。甘いものと可愛いものに目がないので、季節の果物を使ったお菓子の店や木彫りの人形の店を見かけるとつい立ち寄ってしまう。
食べ物は出来立てがおいしいものは休憩スペースで食べたり、祭りなので食べ歩きをしたり。日持ちのするものや「今は作り立てだけど味が染みてから食べるとおいしいよ」と村の人が進めてくれたものと、人形を一つお土産に購入。
祭りから帰る前に青い花を摘んでアレンジしたものを作る。
「この場に渡したい相手はいないし、渡したい相手はこの花を贈ることの意味を知らないだろうけれど、ね」
ただの花のプレゼントだと思われるだろうし、返事の花ももらうことはできないけれど。
「それでも、私のキモチ、相手の手元に置いておきたいんだよね」
花を散らさないように気を付けながらそうつぶやいて。いつか私の心は蕩かしてもらえるのかな、と思いながらまよいは帰途についたのだった。
(もしも自分がとっくに死んでいて。今ここにいるのが自分の幽霊だったら人はどうするのかな? そんなこと絶対ないって言いきれるのかな)
ディーナ・フェルミ (ka5843)は一緒に来ていない相手に対して白と、黄色と、紫で花束を作る。ドライフラワーにして飾ってほしかったから花束だ。プロポーズの代わりだということに、ディーナと送られる相手は気づいているのかいないのか。
もう一人へは、お菓子をお土産に。
(リアルブルーの大精霊に会ったあとから、ずっとふわふわしてる。私……あの時ちゃんとCAMおりたかな)
ふらり、ふらりと歩くと見知った姿を見つけた。
「ルカさん……もし私が死んでいたら、この花束を届けてほしい人がいるの」
ルカ・シュバルツエンド(kz0073)はそんな申し出に青い目を軽く見張って首をかしげ。
「大けがはしてるみたいだけど、君はちゃんと生きてるじゃないか。疲れてるのかい? 休憩所まで案内しようか?」
「そう……だよね。疲れてるのかな……疲れてるのかも」
ただならぬ様子にルカが休憩所まで付き添おうとするのを断ってディーナは自分の体に視線を落とす。
傷だらけの体を見ていたら不意に痛みを思い出した。
(あぁ、いたい、な。でも。……そっか、生きてるんだ……)
そっか、とつぶやいて。ディーナは色とりどりの花束をしばらくじっと見つめ続けて気持ちに整理をつけようとするのだった。
星野 ハナ (ka5852)は思いついてしまった。花交換の話を聞いて、いろんなイケメンから花を一輪か二輪ずつもらって花束を自作したら楽しいんじゃないか、と。
プロポーズに使われる花で断られることを前提に花をばらまくというのはなかなか斬新なアイディアだが、だって花束が欲しいのだ。
花用の籠を二つ準備。一つは白、青、紫の三色の花束を満載にしたもの。もう一つはもらった花を入れておくもの。
イケメンなら遊び心に乗ってくれると考えてじゃんじゃん説明しながら花束を配ってお断りか友達でいましょう、の花を返礼としてもらう。
花を贈るのはプロポーズのための儀式、と考えている村人たちは最初こそ驚いたようだが、そういう楽しみ方もあるのか、と苦笑しながらハナのリクエストに応えてくれる人が多かった。
そんな中ハナは知り合いを発見。すかさず近づいて。
「あー、ルカさん発見ですぅ。花束あげるんで一輪か二輪お花くださいぃ」
「噂になってたよ、斬新な楽しみ方をしてる招待客がいたって。頭固い人に怒られないように贈る人には気を付けてね」
「そこは選んでますよぅ。だってぇ、こんな楽しい遊びがあるのに参加できないの寂しいじゃないですかぁ。知らない場所で知らない人からのプロポーズなんてありえないですしぃ、逆に受けられてもドン引きですけどぉ、雰囲気は楽しみたいし花束は欲しいんですぅ」
街角で出会ったイケメンに対してしたのと同じ説明をするとルカも男の端くれ、乙女の要望に応えて友達でいましょう、と返礼の花を返してくれた。
「ありがとうございますぅ。イケメンからもらった花がこんなにたくさん……ご利益ありそうですねぇ」
「全部遠回しなお断りなんだけどご利益ってあるのかな……縁切りになりそうな」
「楽しみに水差さないでくださぁい!」
ごめんごめん、とルカは笑ってハナと別れ、ハナは次の花を求めてイケメン探しを再スタート。
祭りの楽しみ方は人それぞれ、を地でいくたくましさに、村人たちは新しい楽しみを来年からは取り入れてもいいかもしれない、なんて影響を受けてしまったのだった。
レイア・アローネ (ka4082)はそんなハナの様子を見て何をしてるんだ、あいつは、と若干ひきつった顔。
プロポーズのための大切な花で断られること前提のばらまき大作戦、一歩間違えば追い出されるのではないだろうか、とひとごとながらひやひやしたが案外この村の住民はノリがいいらしく受け入れられたようだ。
「あいかわらずというかなんというか」
仲間の恋路を見かけたときは陰ながらちょっと応援したくなったり。
「べ、別に野次馬ではないのだが……カップル率高いのか?」
そんなレイアに伝えたいことがあってきているだろうか、と探していた無道 (ka7139)は一人で浮足立っている後ろ姿に声をかける。
驚きに飛び上がるレイアによかったら一緒に見て回らないか、と声をかけ一人で祭りを見物していた二人は一緒に歩くことに。
「何か気になるものがあったらついていくぞ?」
「気、気になるものか。プロポーズをしているハンターや村人をたくさん見かけたが、無道も誰かに贈りたくてこの村に?」
「あぁ、今の俺の心……ピンクの花束を、レイアに贈ろうと思っていた」
受け取ってくれるかどうかは賭けだったし会えるかどうかも賭けだったが、と肩をすくめながら無道はピンクの花束をレイアに差し出す。
「……は? 私に? ……相手間違えてないか? だって……私だぞ?」
「いや、相手がレイアだから贈るんだが……」
自分の魅力を分かっていないレイアがきょとんとする。ジョークか何かと思われているのを視線で本気だ、とアピールするとそわそわしだすレイア。
「……すぐには返事はできないな……それでもいいというなら……ええと、こういう場合『友達から』とかいうのかな……?」
「……ん、友人から、か。それじゃ……早く格上げされるよう、頑張ってみるかな」
双方照れくささを隠しきれず視線をそらし合って。それでも祭りをしばらく二人で眺めて回る。
これから歩く二人の道は、今までとは少しだけ、けれど確実に違うものになることだろう。
雲雀 (ka6084)は最近特別な意味で好意を持っていることに気づいた、幼馴染であるグラディート (ka6433)に祭りに誘われて二つ返事で承諾し、待ち合わせ。
なんとなく花を物色しながら待ち人に思いをはせる。
「ピンクの花……いや、自分で可憐ってどうなのですよ。むらさき……渡すならこの辺り……ってまだはえーですから!」
合流してからは美味しそうな料理を分け合い、踊っている人たちを見ればグラディートがちょっとおどけて手を差し出す。
「お嬢さん、僕と踊ってくださいな?」
「お、踊りくらいなんてことないですよー」
踊りに誘われてドギマギしながら踊る雲雀を見てグラディートは微笑む。
「ぎこちなくツンツンしてるけど、雲雀ちゃん、耳真っ赤だよね。わかりやすくてかわいいなぁ~♪」
踊り終わった後グラディートは雲雀に綺麗なオレンジ色の花束を差し出す。
ちなみに、プロポーズとしてではなく『いつまでも明るい未来を貴方に』という意味だと思っていることに雲雀はまだ気づいていないので、好意を寄せている相手からのプロポーズに頭が真っ白に。
「ふぇっ? こ、これって……?」
「あれ?お花嫌いだった??? 素敵だよね、明るい未来を貴方にって。そういう花ことばなのかな、このお花」
「あ、そういう……」
花の意味だけか、とドキドキを返せと言わんばかりにムッとして足を踏むと痛いよ!? と抗議の声が上がる。
「一応受け取っておくですよ」
もらった花束から一輪抜いて、紫とピンクの花をくわえてお返しをするがグラディートはそれがプロポーズの了承だということにも気づかない。
「でも、ずっと一緒にいれたらいいね」
そういって紫の花にキスする思い人の言葉がプロポーズに聞こえて真っ赤になりながら雲雀はぶんぶんと頭を振った。
(ふ、深い意味はないんですから期待したら駄目、期待したら駄目……っ!)
イヴ (ka6763)は一人で祭り会場の中を散策。目的は食べ歩き。
フルーツとワインを中心に、特に好きな赤いフルーツを探し求める。
真っ赤に熟した果実を使ったクレープやジャムにして挟んだサンドイッチなどを食べて気分は上々。
美味しそうに食べるね、と言われて赤味が強いほど甘い気がする、これはよく熟していておいしいと返事をするとうれしそうな笑顔が帰ってくる。
ワインのお供にチーズと干し肉もちょいちょいとつまんで。
振舞われていたシチューのレシピをよかったら教えてくれないか、と問いかけた理由はといえば。
「お料理を覚えようと思って! 花嫁修業、みたいな?」
いつか大好きな人と家族になった時のため。愛する人との間にできた子供に母親の味を覚えてもらうため。
「この村の伝統の味が貴方の家庭の味になったら、誇らしいことはないねぇ。とびっきり美味しいシチューの作り方を、教えないと」
伝統の料理といっても各家庭でそれぞれ秘伝の隠し味は違う。それから奥様から料理を覚え始めた少女、そんな彼女たちに料理を教えてきた母親やその母親が集まってとっておきを伝授する。
「ありがとう、とても参考になったよ。絶対勉強して、おいしいシチューを作れるようになるからね」
「頑張るんだよ!」
笑顔で見送られて、紫の大きな花と黄色の小さな花で小ぶりの花束を作ると寄せ木細工の箱を買ってその中にそっとしまう。
お土産に寄せ木細工のペアの食器とシチューの材料を買って、家に帰ったらさっそく作ってみようと心を弾ませてイヴは村を後にした。
賑やかに、そして甘やかに祭りの時間は過ぎて。きっとまた来年もハンターの皆さんを招けるように、と招待した側である村人たちも、招待されたハンターたちも交流と祭りと料理を存分に楽しんだ、少し早めの収穫祭は幕を下ろしたのだった。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/09/19 07:10:55 |