ゲスト
(ka0000)
ちょっと山賊から襲われに
マスター:トーゴーヘーゾー

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/06/24 22:00
- 完成日
- 2014/07/02 04:22
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
俺の名前はベルンハルト・ベルガー。
反応を見ると、俺の事を知らないみたいだね。……まあ、むしろその方が都合がいいか。
さっそくだけど、この地図を見て欲しい。
この町とこの町を行き来するには、山道を行くのが近道なんだ。
山道ならゆっくり進んでも2日。山裾を迂回するルートだと、平坦で楽なんだけど倍ぐらいの時間がかかる。
山道はよく使われるだけあって、休憩地点まで設けられているんだけど、だからこそ、山賊にしてみれば狙い目になるんだろうね。
今回のケースはそのデメリットで問題が発生した。山道を通った人間が何人も犠牲になっているんだ。
逃げ切った何人かの情報によれば、山賊の数は10名以上で、ほとんどが剣を装備している。大声で命じていたのは、斧を持った大男。他に目立っていたのは、ひとりだけ弓を持った男が混じっていたらしい。
あまりにも頻繁に襲撃を繰り返した結果、山道を通る者がぱったりと途絶えてしまった。
今頃、自分たちの強欲さに、反省してるかもね。
普通に考えると、盗賊にしたって都市部の方が稼ぎは多いはずなんだ。わざわざ地方まで来て山賊をしているってことは、競争に負けて、治安の緩い地方へと追いやられてきたんじゃないかな。だから、犯行も行き当たりばったりに見える。
幸い、迂回路での犠牲者はまだ出ていないんだけど、このままだと、どうなるかわからない。
それで依頼なんだけど……、ああ、依頼者は俺自身なんだ。
依頼内容は、俺に同行して、この山道を歩くこと。
え? いいや。どっちの町にも知り合いはいないよ。人と会うのが目的じゃないんだ。山道にも、山にも、行くべき理由はない。
あえて言うなら、山賊退治が目的かな。
わざと山道を歩いて、山賊をおびき出し、返り討ちにする。
獲物がいなくて困ってるだろうから、すぐに飛びつくはずだ。無防備を装った方が、襲われる確率は増えるかもね。
山賊退治は生死を問わない。殺せばそれで済むだろうし、拘束までしてしまえば、さすがに怠慢な領主の兵だって動いてくれるだろう。
……違う違う。山賊に恨みがあるわけでもないよ。そもそも、山賊の名前や経歴もわかってないんだ。山道で襲われた被害者やその知人でもなければ、恨んだりはしないだろう。俺はまったくの第三者だよ。
山賊退治だけが目的なら、君等に全部任せた方が安全確実なのはわかってる。
悪いけど、これは前提条件なんだ。
依頼者として、この条件は撤回しないよ。こういう条件を踏まえた料金で、請け負うかどうか判断してもらう。もちろん、依頼料のほとんどは成功報酬になるよ。
山賊を退治する。俺も守る。大変だろうけど、それを両立させてこそのハンターじゃないかな?
反応を見ると、俺の事を知らないみたいだね。……まあ、むしろその方が都合がいいか。
さっそくだけど、この地図を見て欲しい。
この町とこの町を行き来するには、山道を行くのが近道なんだ。
山道ならゆっくり進んでも2日。山裾を迂回するルートだと、平坦で楽なんだけど倍ぐらいの時間がかかる。
山道はよく使われるだけあって、休憩地点まで設けられているんだけど、だからこそ、山賊にしてみれば狙い目になるんだろうね。
今回のケースはそのデメリットで問題が発生した。山道を通った人間が何人も犠牲になっているんだ。
逃げ切った何人かの情報によれば、山賊の数は10名以上で、ほとんどが剣を装備している。大声で命じていたのは、斧を持った大男。他に目立っていたのは、ひとりだけ弓を持った男が混じっていたらしい。
あまりにも頻繁に襲撃を繰り返した結果、山道を通る者がぱったりと途絶えてしまった。
今頃、自分たちの強欲さに、反省してるかもね。
普通に考えると、盗賊にしたって都市部の方が稼ぎは多いはずなんだ。わざわざ地方まで来て山賊をしているってことは、競争に負けて、治安の緩い地方へと追いやられてきたんじゃないかな。だから、犯行も行き当たりばったりに見える。
幸い、迂回路での犠牲者はまだ出ていないんだけど、このままだと、どうなるかわからない。
それで依頼なんだけど……、ああ、依頼者は俺自身なんだ。
依頼内容は、俺に同行して、この山道を歩くこと。
え? いいや。どっちの町にも知り合いはいないよ。人と会うのが目的じゃないんだ。山道にも、山にも、行くべき理由はない。
あえて言うなら、山賊退治が目的かな。
わざと山道を歩いて、山賊をおびき出し、返り討ちにする。
獲物がいなくて困ってるだろうから、すぐに飛びつくはずだ。無防備を装った方が、襲われる確率は増えるかもね。
山賊退治は生死を問わない。殺せばそれで済むだろうし、拘束までしてしまえば、さすがに怠慢な領主の兵だって動いてくれるだろう。
……違う違う。山賊に恨みがあるわけでもないよ。そもそも、山賊の名前や経歴もわかってないんだ。山道で襲われた被害者やその知人でもなければ、恨んだりはしないだろう。俺はまったくの第三者だよ。
山賊退治だけが目的なら、君等に全部任せた方が安全確実なのはわかってる。
悪いけど、これは前提条件なんだ。
依頼者として、この条件は撤回しないよ。こういう条件を踏まえた料金で、請け負うかどうか判断してもらう。もちろん、依頼料のほとんどは成功報酬になるよ。
山賊を退治する。俺も守る。大変だろうけど、それを両立させてこそのハンターじゃないかな?
リプレイ本文
●スタート
「初仕事は山賊退治ですの」
「奇遇だな、颯さん。自分もそうだし、もうひとりいるみたいだ」
八劒 颯(ka1804)を促す霧島(ka2263)。
「初めての依頼だけど、頑張ってみんなを守らないと!」
「ああ。そいつは有難いなぁ。俺……戦闘とか危ないこと嫌いだから……」
意気込む聖盾(ka2154)に、如月・涼一(ka1734)は全てをお任せしそうだ。
「涼一さんもハンターなのですから、仕事を全うすべきですわ」
颯の指摘を受けて彼は肩を落とす。
「わかってるんだ……。働かないと宿泊費とか食事代稼げないし……。でも、働きたくないでござる。働いたら負けだと思うでござる」
涼一が情けない主張を力説する。
「だから、何もないのが一番だ! 危険は山賊だけで十分だしっ!」
「確かに……。山賊退治『だけ』のシンプルな依頼なら有難かったな」
含みのある霧島の言葉に、アリス・ナイトレイ(ka0202)も同意する。
「余計な面倒まで抱え込みたくはないのですが、依頼条件に含まれては仕方ないですね」
8人のハンターの視線が、ちらちらと9人目へ向けられていた。
「ベルンハルト・ベルガー。一体何者なのでしょう? 依頼主を疑いたくはないのですが……、それとなく探りを入れるべきでしょうか」
「情報を聞き出すのに向いているのは、私かしらね。うまく聞き出してみるわ」
妖艶に微笑むミスティカ(ka2227)のセリフには、『特に男性が相手なら』という言葉が抜けているように感じられた。
「警戒だけはしておくべきだろうなぁ」
「はい。道中、密かに監視しておきましょう」
涼一や颯が警戒を見せるも、気づいているのかいないのか、当のベルンハルトはのんきに風景を眺めている。
「ベルンハルトが『どんな人物』でも、守るしかないアル。仕事は仕事アル」
アルカ・リー(ka0636)があっさりと流すのは、別に目的があるためだ。
「人と戦うのも楽しそうアル! 手合せじゃないから、思いっきりやるヨ!」
「山を甘く見るといけないって、登山家のおじさんが前に言ってたよ。山賊もそうだけど、しっかりと周りに注意して行かないとね」
海堂 紅緒(ka1880)のそんな指摘が、皆の気持ちを引き締め直す。
「確かに、敵と味方だけじゃなかったな」
狩人をしていた霧島は、自然の中にいるのが当たり前すぎてあまり意識しなかったが、山は全ての人にとって優しいわけではないのだ。
●第1チェックポイント
「颯君、アルカ君、一緒に先頭を頑張ろう!」
紅緒を含む3名が前衛班だ。
「山賊に狙われ易い無防備な服装も考えていたけど、女性メンバーが多くて良かったアル。おかげでいつもの動きやすい服で来られたアル」
「その服も薄着なので、別な意味で山賊を引きつけるかもしれませんわ」
アルカの服装を、客観的に論評する颯。
「これでも、右太もものベルトには予備のナイフを装備しているアル」
「一番ヘタレの俺は後方に回るのが正しい。ある意味で危険には敏感な俺こそが!」
こんな主張から、涼一は後衛班に含まれていた。
「早く襲ってくれませんかね……」
意欲的に聞こえるアリスのセリフだが、霧島は違和感を覚えた。
「山歩きに慣れてなさそうだな。大丈夫か?」
「大丈夫です」
健気に返すものの、体つきからして山歩きに不向きに見える。証となる杖を纏ったローブの中へ隠しているが、彼女は知性に重きを置く魔術師なのだ。
「疲れるのは嫌だから、のんびり行こうぜ! 別に急ぎじゃないんだ!」
わがままも聞こえる涼一の主張だが、霧島が意図を察して賛同する。
「獣道に比べれば楽なものだが、初めての道はペース配分が難しいからな。女性も多いし、余裕を持って進むべきだ」
そして、前衛班と後衛班に挟まれて中衛班は進む。
「ちょっとしたピクニック気分も楽しみたいものね」
表面上はそう口にするも、警戒を含むスティカの視線は、周囲を巡ってから、依頼人へと到達する。
「私達の事を色々知りたいらしいけど、女性に過去を聞くのは失礼よ。尤も、私と深い仲になってくれるなら考えても良いわ。……もしかして、若い子の方が好みかしら?」
「年齢は関係ないよ。全員に話を聞くつもりなんだ。もちろん、涼一にも」
「まさか男色家だとは思わなかったわ」
クスクス笑ってベルンハルトをからかっている。
傍らを行く聖盾は、口を挟まずにふたりの会話に耳を傾けていた。
(ちょっと変わった人みたいだけど、悪い人ではないみたいですね)
そう思えて胸をなで下ろす。いくら仕事でも、悪人を守るのは精神的な疲労度が違ってくる。
河原へ到着する頃には、彼に対する警戒の念も薄れてしまった。
手分けして、昼食用に新鮮な食材を入手する事となった。
「山菜取りに行ってきます。ここならみんなもいるから、ベルンハルトさんも安全でしょう」
聖盾が即席の相棒に告げた。
「私も一緒に行くわ。少し離れて、単独行動するあなたや、河原の周辺も確認しておきたいから」
山菜のついでに、山賊の姿も求めて、女性ふたりが林へ分け入った。
「目的は山賊に襲われる事……か。ふふ、元狩人としては襲われるのを待つというのも新鮮な体験だな」
「狩人あがりなのか。何かの事件が原因?」
何気ない独白を、聞かれていたようだ。
「そうして尋ねるのは、誰かのためか? それとも自分のためか?」
「……どっちでもあるかな」
すでに山賊との疑いを捨てた霧島だが、ベルンハルトはまだ明確な返答を避けている。
「新鮮な魚ネ! おいしそうアル!」
涼一の釣果を知らせる、何度目かのアルカの歓声。
「なんか、ホントにハイキングに来たみたい。っと駄目駄目! 任務中だからしっかり周りを警戒しないとね」
思い直した紅緒は、気持ちを切り替えるためにも、身体を伸ばしてストレッチを始めた。
「颯達の事が知りたいならまずはご自分の事を話すのが筋ではありませんか?」
「隠しておく方が都合がいいこともあるんだ。そっちもそうなの?」
悪びれずに聞き返され、颯は少しだけ情報を明かす。
「生憎ですが、颯には転移前の記憶がありませんの。戦い方は見た方が早いかと……」
「へえ、記憶喪失? 失礼じゃなかったら、そこをもっと詳しく聞きたいんだけど」
逆効果だったらしく、さらに興味をかき立ててしまう。
手帳に書き留めているその姿を、アリスがじっと見つめていた。
●第2チェックポイント
山の幸や川の幸を揃え、昼食も、夕食もなかなかに豪勢である。
霧島が少しだけ酒を振る舞ったこともあって、夜の山中は賑やかだ。
「ベルンハルト君は人の話を聞くのが好きなのかな? んー、私は面白い話を持ち合わせてないからなぁ、残念!」
「紅緒は酒を飲んでないよな? これが素なのか?」
「そうそう。これが私。戦い方も聞きたい? こうガッと行ってバッとやってザーッとやるんだよ。……あれ? ちょっと難しかったかな?」
ゼスチャーを交えた紅緒の説明を、手帳に書き込むのは困難を極めた。
困惑する彼を救ったのは颯だ。
「紅緒さん。順番もありますから、早めに仮眠を取りましょう。アルカさんも」
「わかったアル」
「……聞き足りなかったら、また明日話すね♪」
颯に促され、前衛班の3名がまず小屋へ向かう。
この後は、中衛班、後衛班の順で、仮眠を取ることになっていた。
「……女の中に男が一人だけって、幸せそうに見えて違うんだぜ? 仮眠の順番だって最後になったし」
涼一が愚痴れる相手は『同じ男性』だけだ。
「不満があるなら言っておけばいいのに」
「だって……怖いもん」
ぼそりと漏らしたせいで、女性陣から視線の集中砲火を浴びると、彼は冷や汗を垂らしながらそっぽを向いた。
「頭数も減ったし、襲撃への警戒は怠らないようにしないとね」
ミスティカ達に警戒を任せて、ベルンハルトは新たに質問を重ねていた。
「へえ。アリスは転移者なのか」
老魔術師夫婦の養子から、そのまま弟子となり、これまで魔術を学んできたとの事だ。
「まだ若いのに波瀾万丈だ。……当然、魔術を使って戦うんだよな?」
「戦い方については、いずれわかるはずです。山賊が現れれば」
「それを楽しみにするかな」
手帳を閉じるベルンハルトの態度に、アリスは抱いていた予測に確信を持つ。
(戦い方の追求を後回しにするあたり、やはり山賊とは思えません。それに、依頼の時の発言も考えると……)
アリスもまた霧島同、ひとつの推測に行き着いていた。
●第3チェックポイント
持参したロープを木に縛り付け、まずは紅緒が単独で吊り橋を渡った。
「揺れはするけど、橋の作りはしっかりしてるみたい。渡っても大丈夫だよ」
アルカや颯が渡り終えるまで、紅緒は対岸で山賊を警戒する。
「次は私たちね。私と聖さんでベルンハルトさんを挟む形で渡りましょう」
「では、私が先に行きます」
中衛班の3名が中空を渡る途中で、それは起こる。
「うおおおーっ!」
男達の雄叫びが後方であがった。
「なんだってこんな目に……」
かき消されたはずの涼一の嘆きを、皆は聞いた気がする。
「急いで橋を渡るべきか?」
霧島の思考は、振り向いた彼女の『後方』から聞こえてくる声で中断させられた。
「うおおおーっ!」
山賊の挟撃によって、ハンターは吊り橋を中心に動きを封じられてしまう。
「前門の虎、後門の狼ですね。かといって、橋の上にとどまるのも危険です」
「……敵のリーダーは、先に動いた後ろ側にいると思うわ。聖さんはベルンハルトさんを守って、前に合流して。私は後ろに加勢するわ」
「わかりました。ついてきてください」
最後の言葉は警護対象に向けた言葉だ。
「おっと! 今のはあぶないネ!」
孤立の危険を察して、アルカはマルチステップで後退する。
「橋を落とされないように気をつけて、アルカ君」
「わかったアル」
素直に頷くと、紅緒と共に防衛線を築く。
「こちらは10人ほどでしょうか。一点突破を計りたいところですが難しそうですね」
機導剣で山賊を打ち払った颯の腕に、一本の矢が命中した。
「聖なる力よ、彼の者の傷を癒せ! ヒール!」
癒し手は、盾を掲げた聖盾だ。遅れてもう一人も到着する。
「橋の守りは私が引受けます! 容易く突破させません! みなさん、頑張りましょう!」
聖盾を頼りに、颯が方針を示す。
「まずは、右側の敵後方にいる弓持ちを最優先で狙いましょう! 他にもいる可能性があるので注意してください!」
もともと攻勢に向いているアルカと紅緒が、勇躍して山賊へ挑みかかった。
「あなた、わたしの相手してくるれるネ?」
アルカが包囲をこじ開け、紅緒が身体事ねじ込んでいく。
「本当はリーダーを狙いたいところなんだけどね」
強打で叩き込む紅緒の一撃が、受け止めようとした弓を打ち払い、射手を斬り伏せた。
動揺する山賊を突き崩すようにして、撃ち込まれる颯の機導砲。
「ち、ちくしょう!」
数を減らした山賊達が敗走する。
対岸で仲間がどれだけ頑張っていようと、山賊達が一番大事なのは己の命だ。
「……まだ終わってないアル」
「後方班の応援しないとね。皆で反転だー」
仲間達を加勢すべく、彼女らは再び橋を渡る。
「ベルンハルトさんはこの場で待機してください。逃げた山賊が戻ってきても、私が貴方を守りますから!」
●ゴール
足を止めた戦いを強いられていた涼一は、ミスティカの参戦でようやく解放される。
「っとぉ! だから危険は嫌いだし逃げるって!」
力任せの攻撃を、軽やかにかわす涼一。
「蝶のように舞い、ゴキブリのように逃げる! ――と見せかけて蜂のように刺す! そして逃げる!」
涼一と入れ替わりに、ミスティカが遠距離主体の仲間達の警護に回っていた。
「一人ずつ確実に始末していくわよ」
アリスを背にかばい、ミスティカのスラッシュエッジが山賊を捉える。
それでも反撃に出た山賊へ、霧島の強弾がとどめを刺した。
「飛び道具を持った敵は対岸にいるようだ。まず、狙うべきはあの斧持ちだろうな」
「積極的に命までは取りませんが……、当たり所が悪ければ諦めてください。因果応報です」
アリスのウィンドスラッシュで脅かされた頭は、部下に理不尽な命令を下す。
「貴様等、俺を守れ!」
生きた盾にされた山賊が、アリスや霧島の攻撃で数を減らしていく。
ここで、対岸にいた3名が加勢した。
「此方を殺す気で来る相手に、躊躇ったりはしません」
殺意を込めた剣を受け止め、颯はゼロ距離から機導砲で撃ち抜いた。
「それじゃ当たらないアルよ!」
踏み込むアルカのスラッシュエッジが山賊を打ち倒す。
増強された戦力が、山賊を押し返していく。
「雑魚もずいぶんと片付いたし、本格的にリーダーを狙っていきましょうか」
ミスティカの言葉に応じて、アリスや霧島による着弾がさらに頭へと迫った。
「大振りなのは隙がでかいからね、狙い目だよ。リーダー格不在だと困るだろうしね」
あはは、と笑いながら紅緒が攻め込んだ。
「くそぉぉぉ」
逃げ出すタイミングを計っていた頭は、すぐにその悩みから解放された。
「俺は臆病だから、捕縛とかはちょっと無理」
言葉の意味を山賊の頭が理解するよりも早く、死角を突いた涼一の一撃が、その首筋を深々と切り裂いた。
「首魁を倒せば危険も減る……はず!」
涼一の要望に応え、ミスティカが声を張り上げた。
「もう貴方達に勝ち目は無いわ。……それでもまだ戦うというのなら、切り刻んで雑魔の餌にでもしてあげようかしら」
脅すというよりも、微笑すら浮かべて告げるミスティカに、荒くれ者どもは虚脱したようにへたり込む。
紅緒のロープを使って山賊達を縛り上げ、負傷者への治療も行った。数に勝っていながら、それでも敗れた山賊達に犯行の気配は見られない。
聖盾は一仕事終えたところで、死者に対しする黙祷も含め、神に向かって祈りを捧げる。
「逃げた山賊は少数だし、これでめでたし、めでたし。……かな?」
うむうむと頷くベルンハルトの言葉を、ミスティカが否定する。
「まだね。だって、貴方の素性を教えてもらってないもの」
こちらの意見に頷く者の方が多かった。
これまでと違い、問われたベルンハルトはあっさりと明かした。
「俺はただの小説家だよ。山賊達とは無関係で、まったくの第三者。話のネタ探しに、よく冒険の依頼を出してるんだ。新しいハンターが増えたから、顔つなぎもしたかったんだ」
拍子抜けするような内容だが、推測していた数名は答えに納得もしている。
「正体を伏せていたのはなんでだ?」
涼一の質問にも彼は軽く応じた。
「小説のモデルにされる事を考えて、経歴を飾る人がたまにいるんだ。それを避けたくてさ。また俺の依頼を受ける機会があったら、よろしく頼むよ」
当人は、依頼の目的が達せられて、実に満足そうであった。
「初仕事は山賊退治ですの」
「奇遇だな、颯さん。自分もそうだし、もうひとりいるみたいだ」
八劒 颯(ka1804)を促す霧島(ka2263)。
「初めての依頼だけど、頑張ってみんなを守らないと!」
「ああ。そいつは有難いなぁ。俺……戦闘とか危ないこと嫌いだから……」
意気込む聖盾(ka2154)に、如月・涼一(ka1734)は全てをお任せしそうだ。
「涼一さんもハンターなのですから、仕事を全うすべきですわ」
颯の指摘を受けて彼は肩を落とす。
「わかってるんだ……。働かないと宿泊費とか食事代稼げないし……。でも、働きたくないでござる。働いたら負けだと思うでござる」
涼一が情けない主張を力説する。
「だから、何もないのが一番だ! 危険は山賊だけで十分だしっ!」
「確かに……。山賊退治『だけ』のシンプルな依頼なら有難かったな」
含みのある霧島の言葉に、アリス・ナイトレイ(ka0202)も同意する。
「余計な面倒まで抱え込みたくはないのですが、依頼条件に含まれては仕方ないですね」
8人のハンターの視線が、ちらちらと9人目へ向けられていた。
「ベルンハルト・ベルガー。一体何者なのでしょう? 依頼主を疑いたくはないのですが……、それとなく探りを入れるべきでしょうか」
「情報を聞き出すのに向いているのは、私かしらね。うまく聞き出してみるわ」
妖艶に微笑むミスティカ(ka2227)のセリフには、『特に男性が相手なら』という言葉が抜けているように感じられた。
「警戒だけはしておくべきだろうなぁ」
「はい。道中、密かに監視しておきましょう」
涼一や颯が警戒を見せるも、気づいているのかいないのか、当のベルンハルトはのんきに風景を眺めている。
「ベルンハルトが『どんな人物』でも、守るしかないアル。仕事は仕事アル」
アルカ・リー(ka0636)があっさりと流すのは、別に目的があるためだ。
「人と戦うのも楽しそうアル! 手合せじゃないから、思いっきりやるヨ!」
「山を甘く見るといけないって、登山家のおじさんが前に言ってたよ。山賊もそうだけど、しっかりと周りに注意して行かないとね」
海堂 紅緒(ka1880)のそんな指摘が、皆の気持ちを引き締め直す。
「確かに、敵と味方だけじゃなかったな」
狩人をしていた霧島は、自然の中にいるのが当たり前すぎてあまり意識しなかったが、山は全ての人にとって優しいわけではないのだ。
●第1チェックポイント
「颯君、アルカ君、一緒に先頭を頑張ろう!」
紅緒を含む3名が前衛班だ。
「山賊に狙われ易い無防備な服装も考えていたけど、女性メンバーが多くて良かったアル。おかげでいつもの動きやすい服で来られたアル」
「その服も薄着なので、別な意味で山賊を引きつけるかもしれませんわ」
アルカの服装を、客観的に論評する颯。
「これでも、右太もものベルトには予備のナイフを装備しているアル」
「一番ヘタレの俺は後方に回るのが正しい。ある意味で危険には敏感な俺こそが!」
こんな主張から、涼一は後衛班に含まれていた。
「早く襲ってくれませんかね……」
意欲的に聞こえるアリスのセリフだが、霧島は違和感を覚えた。
「山歩きに慣れてなさそうだな。大丈夫か?」
「大丈夫です」
健気に返すものの、体つきからして山歩きに不向きに見える。証となる杖を纏ったローブの中へ隠しているが、彼女は知性に重きを置く魔術師なのだ。
「疲れるのは嫌だから、のんびり行こうぜ! 別に急ぎじゃないんだ!」
わがままも聞こえる涼一の主張だが、霧島が意図を察して賛同する。
「獣道に比べれば楽なものだが、初めての道はペース配分が難しいからな。女性も多いし、余裕を持って進むべきだ」
そして、前衛班と後衛班に挟まれて中衛班は進む。
「ちょっとしたピクニック気分も楽しみたいものね」
表面上はそう口にするも、警戒を含むスティカの視線は、周囲を巡ってから、依頼人へと到達する。
「私達の事を色々知りたいらしいけど、女性に過去を聞くのは失礼よ。尤も、私と深い仲になってくれるなら考えても良いわ。……もしかして、若い子の方が好みかしら?」
「年齢は関係ないよ。全員に話を聞くつもりなんだ。もちろん、涼一にも」
「まさか男色家だとは思わなかったわ」
クスクス笑ってベルンハルトをからかっている。
傍らを行く聖盾は、口を挟まずにふたりの会話に耳を傾けていた。
(ちょっと変わった人みたいだけど、悪い人ではないみたいですね)
そう思えて胸をなで下ろす。いくら仕事でも、悪人を守るのは精神的な疲労度が違ってくる。
河原へ到着する頃には、彼に対する警戒の念も薄れてしまった。
手分けして、昼食用に新鮮な食材を入手する事となった。
「山菜取りに行ってきます。ここならみんなもいるから、ベルンハルトさんも安全でしょう」
聖盾が即席の相棒に告げた。
「私も一緒に行くわ。少し離れて、単独行動するあなたや、河原の周辺も確認しておきたいから」
山菜のついでに、山賊の姿も求めて、女性ふたりが林へ分け入った。
「目的は山賊に襲われる事……か。ふふ、元狩人としては襲われるのを待つというのも新鮮な体験だな」
「狩人あがりなのか。何かの事件が原因?」
何気ない独白を、聞かれていたようだ。
「そうして尋ねるのは、誰かのためか? それとも自分のためか?」
「……どっちでもあるかな」
すでに山賊との疑いを捨てた霧島だが、ベルンハルトはまだ明確な返答を避けている。
「新鮮な魚ネ! おいしそうアル!」
涼一の釣果を知らせる、何度目かのアルカの歓声。
「なんか、ホントにハイキングに来たみたい。っと駄目駄目! 任務中だからしっかり周りを警戒しないとね」
思い直した紅緒は、気持ちを切り替えるためにも、身体を伸ばしてストレッチを始めた。
「颯達の事が知りたいならまずはご自分の事を話すのが筋ではありませんか?」
「隠しておく方が都合がいいこともあるんだ。そっちもそうなの?」
悪びれずに聞き返され、颯は少しだけ情報を明かす。
「生憎ですが、颯には転移前の記憶がありませんの。戦い方は見た方が早いかと……」
「へえ、記憶喪失? 失礼じゃなかったら、そこをもっと詳しく聞きたいんだけど」
逆効果だったらしく、さらに興味をかき立ててしまう。
手帳に書き留めているその姿を、アリスがじっと見つめていた。
●第2チェックポイント
山の幸や川の幸を揃え、昼食も、夕食もなかなかに豪勢である。
霧島が少しだけ酒を振る舞ったこともあって、夜の山中は賑やかだ。
「ベルンハルト君は人の話を聞くのが好きなのかな? んー、私は面白い話を持ち合わせてないからなぁ、残念!」
「紅緒は酒を飲んでないよな? これが素なのか?」
「そうそう。これが私。戦い方も聞きたい? こうガッと行ってバッとやってザーッとやるんだよ。……あれ? ちょっと難しかったかな?」
ゼスチャーを交えた紅緒の説明を、手帳に書き込むのは困難を極めた。
困惑する彼を救ったのは颯だ。
「紅緒さん。順番もありますから、早めに仮眠を取りましょう。アルカさんも」
「わかったアル」
「……聞き足りなかったら、また明日話すね♪」
颯に促され、前衛班の3名がまず小屋へ向かう。
この後は、中衛班、後衛班の順で、仮眠を取ることになっていた。
「……女の中に男が一人だけって、幸せそうに見えて違うんだぜ? 仮眠の順番だって最後になったし」
涼一が愚痴れる相手は『同じ男性』だけだ。
「不満があるなら言っておけばいいのに」
「だって……怖いもん」
ぼそりと漏らしたせいで、女性陣から視線の集中砲火を浴びると、彼は冷や汗を垂らしながらそっぽを向いた。
「頭数も減ったし、襲撃への警戒は怠らないようにしないとね」
ミスティカ達に警戒を任せて、ベルンハルトは新たに質問を重ねていた。
「へえ。アリスは転移者なのか」
老魔術師夫婦の養子から、そのまま弟子となり、これまで魔術を学んできたとの事だ。
「まだ若いのに波瀾万丈だ。……当然、魔術を使って戦うんだよな?」
「戦い方については、いずれわかるはずです。山賊が現れれば」
「それを楽しみにするかな」
手帳を閉じるベルンハルトの態度に、アリスは抱いていた予測に確信を持つ。
(戦い方の追求を後回しにするあたり、やはり山賊とは思えません。それに、依頼の時の発言も考えると……)
アリスもまた霧島同、ひとつの推測に行き着いていた。
●第3チェックポイント
持参したロープを木に縛り付け、まずは紅緒が単独で吊り橋を渡った。
「揺れはするけど、橋の作りはしっかりしてるみたい。渡っても大丈夫だよ」
アルカや颯が渡り終えるまで、紅緒は対岸で山賊を警戒する。
「次は私たちね。私と聖さんでベルンハルトさんを挟む形で渡りましょう」
「では、私が先に行きます」
中衛班の3名が中空を渡る途中で、それは起こる。
「うおおおーっ!」
男達の雄叫びが後方であがった。
「なんだってこんな目に……」
かき消されたはずの涼一の嘆きを、皆は聞いた気がする。
「急いで橋を渡るべきか?」
霧島の思考は、振り向いた彼女の『後方』から聞こえてくる声で中断させられた。
「うおおおーっ!」
山賊の挟撃によって、ハンターは吊り橋を中心に動きを封じられてしまう。
「前門の虎、後門の狼ですね。かといって、橋の上にとどまるのも危険です」
「……敵のリーダーは、先に動いた後ろ側にいると思うわ。聖さんはベルンハルトさんを守って、前に合流して。私は後ろに加勢するわ」
「わかりました。ついてきてください」
最後の言葉は警護対象に向けた言葉だ。
「おっと! 今のはあぶないネ!」
孤立の危険を察して、アルカはマルチステップで後退する。
「橋を落とされないように気をつけて、アルカ君」
「わかったアル」
素直に頷くと、紅緒と共に防衛線を築く。
「こちらは10人ほどでしょうか。一点突破を計りたいところですが難しそうですね」
機導剣で山賊を打ち払った颯の腕に、一本の矢が命中した。
「聖なる力よ、彼の者の傷を癒せ! ヒール!」
癒し手は、盾を掲げた聖盾だ。遅れてもう一人も到着する。
「橋の守りは私が引受けます! 容易く突破させません! みなさん、頑張りましょう!」
聖盾を頼りに、颯が方針を示す。
「まずは、右側の敵後方にいる弓持ちを最優先で狙いましょう! 他にもいる可能性があるので注意してください!」
もともと攻勢に向いているアルカと紅緒が、勇躍して山賊へ挑みかかった。
「あなた、わたしの相手してくるれるネ?」
アルカが包囲をこじ開け、紅緒が身体事ねじ込んでいく。
「本当はリーダーを狙いたいところなんだけどね」
強打で叩き込む紅緒の一撃が、受け止めようとした弓を打ち払い、射手を斬り伏せた。
動揺する山賊を突き崩すようにして、撃ち込まれる颯の機導砲。
「ち、ちくしょう!」
数を減らした山賊達が敗走する。
対岸で仲間がどれだけ頑張っていようと、山賊達が一番大事なのは己の命だ。
「……まだ終わってないアル」
「後方班の応援しないとね。皆で反転だー」
仲間達を加勢すべく、彼女らは再び橋を渡る。
「ベルンハルトさんはこの場で待機してください。逃げた山賊が戻ってきても、私が貴方を守りますから!」
●ゴール
足を止めた戦いを強いられていた涼一は、ミスティカの参戦でようやく解放される。
「っとぉ! だから危険は嫌いだし逃げるって!」
力任せの攻撃を、軽やかにかわす涼一。
「蝶のように舞い、ゴキブリのように逃げる! ――と見せかけて蜂のように刺す! そして逃げる!」
涼一と入れ替わりに、ミスティカが遠距離主体の仲間達の警護に回っていた。
「一人ずつ確実に始末していくわよ」
アリスを背にかばい、ミスティカのスラッシュエッジが山賊を捉える。
それでも反撃に出た山賊へ、霧島の強弾がとどめを刺した。
「飛び道具を持った敵は対岸にいるようだ。まず、狙うべきはあの斧持ちだろうな」
「積極的に命までは取りませんが……、当たり所が悪ければ諦めてください。因果応報です」
アリスのウィンドスラッシュで脅かされた頭は、部下に理不尽な命令を下す。
「貴様等、俺を守れ!」
生きた盾にされた山賊が、アリスや霧島の攻撃で数を減らしていく。
ここで、対岸にいた3名が加勢した。
「此方を殺す気で来る相手に、躊躇ったりはしません」
殺意を込めた剣を受け止め、颯はゼロ距離から機導砲で撃ち抜いた。
「それじゃ当たらないアルよ!」
踏み込むアルカのスラッシュエッジが山賊を打ち倒す。
増強された戦力が、山賊を押し返していく。
「雑魚もずいぶんと片付いたし、本格的にリーダーを狙っていきましょうか」
ミスティカの言葉に応じて、アリスや霧島による着弾がさらに頭へと迫った。
「大振りなのは隙がでかいからね、狙い目だよ。リーダー格不在だと困るだろうしね」
あはは、と笑いながら紅緒が攻め込んだ。
「くそぉぉぉ」
逃げ出すタイミングを計っていた頭は、すぐにその悩みから解放された。
「俺は臆病だから、捕縛とかはちょっと無理」
言葉の意味を山賊の頭が理解するよりも早く、死角を突いた涼一の一撃が、その首筋を深々と切り裂いた。
「首魁を倒せば危険も減る……はず!」
涼一の要望に応え、ミスティカが声を張り上げた。
「もう貴方達に勝ち目は無いわ。……それでもまだ戦うというのなら、切り刻んで雑魔の餌にでもしてあげようかしら」
脅すというよりも、微笑すら浮かべて告げるミスティカに、荒くれ者どもは虚脱したようにへたり込む。
紅緒のロープを使って山賊達を縛り上げ、負傷者への治療も行った。数に勝っていながら、それでも敗れた山賊達に犯行の気配は見られない。
聖盾は一仕事終えたところで、死者に対しする黙祷も含め、神に向かって祈りを捧げる。
「逃げた山賊は少数だし、これでめでたし、めでたし。……かな?」
うむうむと頷くベルンハルトの言葉を、ミスティカが否定する。
「まだね。だって、貴方の素性を教えてもらってないもの」
こちらの意見に頷く者の方が多かった。
これまでと違い、問われたベルンハルトはあっさりと明かした。
「俺はただの小説家だよ。山賊達とは無関係で、まったくの第三者。話のネタ探しに、よく冒険の依頼を出してるんだ。新しいハンターが増えたから、顔つなぎもしたかったんだ」
拍子抜けするような内容だが、推測していた数名は答えに納得もしている。
「正体を伏せていたのはなんでだ?」
涼一の質問にも彼は軽く応じた。
「小説のモデルにされる事を考えて、経歴を飾る人がたまにいるんだ。それを避けたくてさ。また俺の依頼を受ける機会があったら、よろしく頼むよ」
当人は、依頼の目的が達せられて、実に満足そうであった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/06/19 23:16:06 |
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相談卓 ミスティカ(ka2227) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/06/24 21:01:01 |