ゲスト
(ka0000)
【落葉】英雄の腑
マスター:ゆくなが

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~4人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/09/22 07:30
- 完成日
- 2018/10/04 09:48
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「どうしたものかしらね……」
アイネ・モルツは煙草を灰皿に押し付けて言った。
「そっちも同じところで詰まっているみたいだね」
眉根を寄せているアイネを見て、クライ・ヴォルフが淹れたてのコーヒーを差し出す。
ゆったり流れる紫煙を通して、アイネは別のものを見ているようだった。
「お悩みは、あの英霊、でしょ?」
クライがアイネと向かい合わせになるように腰掛け、自分のコーヒーを一口啜った。
その言葉が真実だったので、アイネの眉間の皺がさらに深くなった。
ゾンネンシュトラール帝国は今、歴史の見直しをしていた。
アイネとクライはその監査を担当している。
アイネは帝国に伝わる英雄譚……主に絶火の騎士の伝承が真実であったのかを調べている。
帝国の歴史はまだ王国だった時代に、北方制圧をはじめたところからはじまっている。そもそも帝国の成り立ちが暴力的なものなのだ。で、あるならば、英雄と伝えられた者が、本当に英雄だったのか? を調べているのだ。
クライは犯罪史担当だ。過去に起きた事件の真相を調査している。
ふたりの共通点はどちらも2代目辺境伯時代を担当していることにある。
資料が正確だとは限らない。伝承が真実だとは限らない。だから、大方の資料を当たった後、ふたりが選んだのは、当時を生きていた英霊に話をきくことだった。
【天誓】において顕現した英霊、2代目辺境伯時代の絶火の騎士アラベラ・クララ(kz0250)に、である。
彼女は、快く当時の話をしてくれた。しかし、ある話題になった途端、アラベラは話題をそらし始め、きいたことに全く答えず、自分の話ばかりをするようになった。アラベラは目立ちたがりだ。そもそも自分についての話が多かったが、どう考えても、彼女は何かを隠しているようにしか思えなかった。
だから、アイネとクライは困っていた。
アラベラは何かを隠している。
しかし、アラベラに真実を話すようどうやって説得したものか。
「そっちは、英雄……『不眠の騎士エミル』のことだっけ」
クライがアイネに話題を振った。
「そうよ」
『不眠の騎士エミル』は帝国に伝わる2代目辺境伯に仕えた絶火の騎士のひとりだ。
類稀なる殺戮技巧の持ち主で、漆黒の鎧を纏い剣と短剣で、亜人を殺してまわった。
特筆すべきは晩年を戦場でのみ過ごし、6日間不眠不休で敵を殺しつくし、戦場でその生涯を閉じた。それはどう考えても過労死だった。このことが、忠義を尽くす騎士として伝承に残り、今も英雄として語られている。
「で、そっちは『殺人鬼デミアン』だったかしら」
クライが調べているのは、同じく2代目辺境伯時代に起きた連続殺人事件だ。被害者は13人。全て鋭利な刃物で殺されている。結局、事件は解決に至らず、犯人はわかっていない。
そう、アラベラは『不眠の騎士エミル』と『殺人鬼デミアン』というふたつの話題になった途端、話をはぐらかしはじめたのだ。
このままでは一向に歴史の調査は進まない。
アラベラは何かを隠している、ただその確信だけがふたりにあった。
●
「いい加減、本当のことを話してやったらどうだ?」
クレーネウス・フェーデルバールがアラベラに言った。
アラベラはグリューエリン・ヴァルファー(kz0050)と出会って以来、この帝国歌舞音曲部隊のための一室に入り浸っていた。
当然、アイネとクライもこの部屋でアラベラの話をきいていたのだ。
で、あれば自然会話の内容は周囲にいる者達に聞こえてくる。
クレーネウスもアラベラが何かを隠していることに勘付いていた。このままでは監査に来たふたりが報われない。そこで、少し迷ったが口出しすることにしたのだ。
「おや、なんのことでしょうね?」
しかし、アラベラは自分が見事にバレない嘘をついていると思っているのか、そんなことを言う。
「エミルとデミアンの話だよ。何か知っているんだろう?」
「……クレーネウス。妾は思うのですよ」
アラベラは急に声のトーンを落として、真剣な調子で語りはじめた。
「イメージ、というものがあるでしょう」
「まあ、そうだな。アイドルにもイメージは大切だ」
「そうでしょう? イメージを覆すことはあまりにも致命的です」
「そうだが……」
アイドルにもイメージがある。それは発信者が作り出そうとする場合もあるし、受け手側が勝手に妄想を持つことだってある。
「それが、死ぬ思いをして作り上げたものなら尚のことでしょう」
「……つまり、あなたは誰かのイメージを守っている、と?」
「おやおや、そんなことは言っていませんよ」
アラベラはやっぱりはぐらかすような態度をとるのだった。
●
このようなやり取りがあり、結局アラベラに真実を話すよう説得することはハンターに委任されることになった。
アラベラはハンターならどこか好いている節がある、とクレーネウスがアイネとクライに助言したからだった。
アイネ・モルツは煙草を灰皿に押し付けて言った。
「そっちも同じところで詰まっているみたいだね」
眉根を寄せているアイネを見て、クライ・ヴォルフが淹れたてのコーヒーを差し出す。
ゆったり流れる紫煙を通して、アイネは別のものを見ているようだった。
「お悩みは、あの英霊、でしょ?」
クライがアイネと向かい合わせになるように腰掛け、自分のコーヒーを一口啜った。
その言葉が真実だったので、アイネの眉間の皺がさらに深くなった。
ゾンネンシュトラール帝国は今、歴史の見直しをしていた。
アイネとクライはその監査を担当している。
アイネは帝国に伝わる英雄譚……主に絶火の騎士の伝承が真実であったのかを調べている。
帝国の歴史はまだ王国だった時代に、北方制圧をはじめたところからはじまっている。そもそも帝国の成り立ちが暴力的なものなのだ。で、あるならば、英雄と伝えられた者が、本当に英雄だったのか? を調べているのだ。
クライは犯罪史担当だ。過去に起きた事件の真相を調査している。
ふたりの共通点はどちらも2代目辺境伯時代を担当していることにある。
資料が正確だとは限らない。伝承が真実だとは限らない。だから、大方の資料を当たった後、ふたりが選んだのは、当時を生きていた英霊に話をきくことだった。
【天誓】において顕現した英霊、2代目辺境伯時代の絶火の騎士アラベラ・クララ(kz0250)に、である。
彼女は、快く当時の話をしてくれた。しかし、ある話題になった途端、アラベラは話題をそらし始め、きいたことに全く答えず、自分の話ばかりをするようになった。アラベラは目立ちたがりだ。そもそも自分についての話が多かったが、どう考えても、彼女は何かを隠しているようにしか思えなかった。
だから、アイネとクライは困っていた。
アラベラは何かを隠している。
しかし、アラベラに真実を話すようどうやって説得したものか。
「そっちは、英雄……『不眠の騎士エミル』のことだっけ」
クライがアイネに話題を振った。
「そうよ」
『不眠の騎士エミル』は帝国に伝わる2代目辺境伯に仕えた絶火の騎士のひとりだ。
類稀なる殺戮技巧の持ち主で、漆黒の鎧を纏い剣と短剣で、亜人を殺してまわった。
特筆すべきは晩年を戦場でのみ過ごし、6日間不眠不休で敵を殺しつくし、戦場でその生涯を閉じた。それはどう考えても過労死だった。このことが、忠義を尽くす騎士として伝承に残り、今も英雄として語られている。
「で、そっちは『殺人鬼デミアン』だったかしら」
クライが調べているのは、同じく2代目辺境伯時代に起きた連続殺人事件だ。被害者は13人。全て鋭利な刃物で殺されている。結局、事件は解決に至らず、犯人はわかっていない。
そう、アラベラは『不眠の騎士エミル』と『殺人鬼デミアン』というふたつの話題になった途端、話をはぐらかしはじめたのだ。
このままでは一向に歴史の調査は進まない。
アラベラは何かを隠している、ただその確信だけがふたりにあった。
●
「いい加減、本当のことを話してやったらどうだ?」
クレーネウス・フェーデルバールがアラベラに言った。
アラベラはグリューエリン・ヴァルファー(kz0050)と出会って以来、この帝国歌舞音曲部隊のための一室に入り浸っていた。
当然、アイネとクライもこの部屋でアラベラの話をきいていたのだ。
で、あれば自然会話の内容は周囲にいる者達に聞こえてくる。
クレーネウスもアラベラが何かを隠していることに勘付いていた。このままでは監査に来たふたりが報われない。そこで、少し迷ったが口出しすることにしたのだ。
「おや、なんのことでしょうね?」
しかし、アラベラは自分が見事にバレない嘘をついていると思っているのか、そんなことを言う。
「エミルとデミアンの話だよ。何か知っているんだろう?」
「……クレーネウス。妾は思うのですよ」
アラベラは急に声のトーンを落として、真剣な調子で語りはじめた。
「イメージ、というものがあるでしょう」
「まあ、そうだな。アイドルにもイメージは大切だ」
「そうでしょう? イメージを覆すことはあまりにも致命的です」
「そうだが……」
アイドルにもイメージがある。それは発信者が作り出そうとする場合もあるし、受け手側が勝手に妄想を持つことだってある。
「それが、死ぬ思いをして作り上げたものなら尚のことでしょう」
「……つまり、あなたは誰かのイメージを守っている、と?」
「おやおや、そんなことは言っていませんよ」
アラベラはやっぱりはぐらかすような態度をとるのだった。
●
このようなやり取りがあり、結局アラベラに真実を話すよう説得することはハンターに委任されることになった。
アラベラはハンターならどこか好いている節がある、とクレーネウスがアイネとクライに助言したからだった。
リプレイ本文
●
その日はヴェールみたいな雲が空を優しく覆っていた。陽光がやんわり遮られ、地上をほのかに照らしている。
そんな日の、ある一室にて。澪(ka6002)は櫛を持って、濡羽 香墨(ka6760)に言葉をかける。
「香墨の髪、梳くの好き。手入れしたい」
香墨はこくりと頷いて、梳りやすい様、澪に背を向ける。
櫛が、香墨の黒髪に通される。櫛が通るたびに、絡まった髪の毛がほぐされて、ひとつの流れをつくり、つやつやと輝きだした。
「……今日は、依頼があるね」
「うん」
澪が言っているのは、ゾンネンシュトラール帝国の歴史再編に関わる依頼だった。
ある英雄がいた──『不眠の騎士エミル』。
そして、殺人鬼──通称『デミアン』と呼ばれるものがいた。
彼らをめぐる真実を知っているらしい、英霊も存在した。
【天誓】にて顕現した絶火の騎士アラベラ・クララ(kz0250)に真実を話す様に説得するのが、今回澪や香墨たちの請け負った依頼の概要だ。
「ねえ、澪」
「何、香墨」
「──話だけ聞くと。フリーデみたい」
同じく2代目辺境伯時代の絶火の騎士の姿が、2人の脳裏に思い浮かぶ。
「デミアンとエミル、よく似ている。同一人物で殺し好き……かもしれない」
香墨が推測を立てる。
デミアンは鋭利な刃物で犠牲者を殺していたという。そして伝承に謳われるエミルも剣と短剣を用い、卓越した殺戮技巧の持ち主だった。
とても似ているのだ、エミルとデミアンは。
「香墨、髪梳かすの、終わった」
「ありがとう」
香墨は細い体に、無造作にローブを羽織った。
「今日は鎧じゃないんだね」
「……いつもなら。こんな格好じゃないけど。でも、この方がいいと思うから」
そうして、2人は連れ立って、歩き出す。
目的の場所に。
●
「……良い真実ではない、ということでしょうか」
蓬(ka7311)は2代目辺境伯時代の資料を調べながら呟いた。
そもそもこの依頼の発端は、アラベラが真実を語らないことにある。デミアンとエミルの話題になった途端、あからさまに話をそらし始めたのだ。
英霊は、貴重な当時の生き証人だ。アラベラの証言は大いに役に立つことだろう。けれど、彼女は何かを知っているらしいが、話そうとしない。
蓬は、監査を行っているアイネ・モルツとクライ・ヴォルフにはすでに接触し、アラベラとどんな話をしたのかは聞いている。
そして、時間の許す限り、こうして資料を調べている。
何分過去のことで、完全な資料があるとは言い難い。明瞭でない部分、忘却された部分、あるいは人為的にねじ曲げられた部分、多々存在する。
そして、真実を話さない英霊の存在。
蓬は考える。もしかしたら、ここにある真実は、騎士のイメージを覆しかねないようなよくないものでなかいか、と。
「ああ──もうこんな時間ですか」
蓬もまた、出発しなければならない。
●
『不眠の騎士エミル』『殺人鬼デミアン』そして『鉄靴令嬢アラベラ』。その3人を調べている者がここにもいた。
Uisca Amhran(ka0754)はぱらぱらと資料をめくりながら思う。
「6日間不眠不休で戦い、戦場で亡くなった不眠の騎士さま……どこかの鉄靴令嬢さまの伝承と似ていますね」
そう、エミルの最後はいわば過労死だ。伝承ではそれが忠義を尽くす者のお手本として書かれている。
そして、アラベラの最期は、たったひとりで勝てるはずのない大軍勢に挑んだというものだった。その嬉々として死地に向かう様はあまりにも異様であった。
お互いに戦場で死に、伝承に残った者。
その在り方は、どこか似ているのかもしれない。
「これ以上は、新しい情報はなさそうですね……では、向かうとしましょう」
アラベラは大抵、帝国第一師団兵営の中にある帝国歌舞音曲部隊の一室にいる。今日もそこにいることだろう。
「アラベラさん……私は貴女のことを信じます。貴女が守ろうとしている、エミルさん、デミアンさんのことも」
●
「おや……今日は顔ぶれが違いますね」
やっぱり、アラベラは帝国歌舞音曲部隊の一室にいた。普段なら部隊員が働いているが、今はラズビルナムの浄化作戦とやらで忙しいのか、人が少ない。
「妾はあの監査をしている2人が来ると思っていたのですが」
「貴女と貴女の話、興味ある。知り合いにも絶火の騎士がいるけど、彼女以外には会ったことがないし」
澪がそう話を切り出した。
「澪は、澪という。今日は貴女から真実を聞くためにここへ来た」
「ふふん、妾に興味を持つことは大変よいことです」
アラベラは、ハンターたちの目的が自分にあることを知って、大変気を良くした。
基本、アラベラは目立ちたがりだ。そのために騎士として戦っていた。忠義などきっとどこにもなかった。ただ自分が目立つという目的のために戦場に向かい、そして死んだ。
「【天誓】の影響で精霊を通し帝国の歴史について、……ちょっとは知ってるけど。まずは歴史教えて」
ローブを纏った香墨が澪の言葉にそう続いた。
「私も是非伺いたいです」
蓬も歴史のおさらいをすることに同意する。
「特に、2代目辺境伯時代のアラベラさんが当時をどのように思っているのかを知りたいですね」
「そうですか。でははじめましょうか。妾の話を」
●
アラベラが話したのは主に自分の話だった。これは彼女の性質上仕方ないことと言える。
「妾から見て、どうあの時代が映ったか、ですか」
アラベラはもともと目立つためだけに騎士になった人間だった。敵の多勢を恐れることなく、その渦中で戦った。アラベラにとってそれは『目立つから』しただけに過ぎないが、周りからは勇敢にも見えたのかもしれない。
「妾にとって当時の北方は、つまり今の帝国は時代の最先端に思えたのです。もっとも目立つことができる場所、妾にとって戦場とはその意味でしかありません。忠義がどうとか言う者もいましたが、妾はそんなものは持っていませんでした。言葉を変えれば妾は妾に尽くしていたのです。それに比べてエミルは……」
「エミルさんは?」
Uiscaが途切れたアラベラの言葉を拾った。
ちょっとアラベラは迷ったようだが、続きを紡いだ。
「……エミルは紛れもなく、忠義の騎士でしたよ。伝承でもその通り伝えられていて、安心しました」
「今、エミルの話が出たけど。デミアンについては知らないの?」
「えーと……」
アラベラは目を泳がせた。
「デ、デミアンは、まあ、同時代の人物ですし? まあ、道ですれ違ったりしたりしないこともないのかな……? それより妾の話をしましょう!」
「今はエミルとデミアンの話をしている。その話をして」
「うぐ……」
澪はあるひとつの仮説を立てていた。
監査に来た者たちがエミルとデミアンの話題を振った途端、アラベラは誤魔化しをはじめた、と言う点から、彼女は嘘をつけないのではないか、と。
確かに、同室で話を聞いているだけだったクレーネウスにすら何か隠していることを見抜かれるくらいなのだから、アラベラは話を偽ることが恐ろしく下手なのだろう。
「アラベラ、もしかして、嘘がつけない?」
「……だって、自分に正直に生きるのが妾の生き様ですもの」
アラベラは拗ねた子供のように唇を尖らせて、そんなことを言った。
「でも、貴女はエミル──あるいはデミアンの生涯について正直になってない」
こほん、とひとつ咳払いをして、アラベラは姿勢を正す。
「生きたいように生きろ、といのが妾の信念です。……ですが同時に、なりたい自分になろうと頑張ることも、とても素敵だと思います。だって──」
──なりたい自分になろうと努力することは、今の自分を全否定して進もうとすることだから。
アラベラはそう続けた。
●
「……それが、貴女が守っている、イメージ?」
「おや、そこまでは言っていませんよ」
澪はまっすぐ青い瞳でアラベラを見つめた。
「隠し事も、誤魔化しも正義の騎士らしくない。友達であればこそ、真実を偽るのは良くないと思う」
青い瞳の視線を、アラベラは正面から受けた。
「……なんか。2人の話。フリーデに似てる」
と、言葉を挟んだのは香墨だ。
「……現実と歴史って。どんどんずれていく。……フリーデだって。そうだったから」
澪と香墨はフリーデリーケについて交互に説明した。
現実と歴史に乖離のある、ある絶火の騎士の存在を。
「そうですよ、アラベラさん」
Uiscaも言葉をかける。
「アラベラさんが話さない事で、皆がエミルさんやデミアンさんについて色々空想します。それがひとり歩きしてしまったら……それはアラベラさんの本意ではないのでは?」
その時のアラベラの瞳はどこか遠くを見つめていた。ここではないどこか。そう、例えばかつて生きていた時代を見つめるような。
「確かに、現実と後世に伝わった歴史は違うものかもしれません。時には美化されたり、あるいは意図しない方へ捻じ曲げられていたり、そもそも存在自体がなかったことにされていたりする場合もあるのでしょう。でも──間違ったイメージこそが、本人の望んだモノだったとしたら、どうなのでしょうか。それを覆すことは、その人の努力を水泡に帰す、あまりに罪深い行いのように感じられます」
「それでも」
蓬が言う。
「今、必要とされているのは真実です。……お話を、聞かせていただけませんか」
「真実が必ずしも美しいとは限りません」
それは薄々、蓬が予想していたことだった。
「……やはり、それは騎士そのものを覆しかねないようなものなのでしょうか?」
「少なくともひとりの騎士を完全に失墜させるのに十分でしょうね。それと……澪、と言いましたか」
アラベラは澪に視線を向けた。
「妾は、先ほども言いましたが、目立ちたいから戦場に立っていたのです。それ以外の理由はありません。正義を謳うこともありましたが──妾にとって正しい行いとは、妾が目立つこと以外にないのです。妾は……あなたの言うような正義を持っていない。妾は多分、常識や良識とは無縁の人間なんです。だから、周りを顧みず、目立つことだけに邁進できた。だからこそ、絶火の騎士として名前を残すことができたのでしょう。それに……エミルとは友達と言えるほど親しい仲ではありませんよ」
窓からは、薄い陽光が差し込んで、室内の埃をきらきら照らしていた。淡い影が床に落ちる。その光景が、沈黙を埋めていく。
「待ってください、アラベラさん」
Uiscaが沈黙を破った。
「アラベラさんは、エミルさん、デミアンさんを守ろうとしているんでしょう? 貴女が守ろうとしている人なら守るに値する何かがあると思います。貴女に背中を預け、共に戦った私は貴女の事を信じてます」
「Uisca……」
「だから、私はエミルさんとデミアンさんのことも信じますよ」
Uiscaはアラベラの手を取って、正面から輝く紫色の瞳で見つめて言葉を紡ぐ。
「私たちはあいどるであるとともに戦士ですよね? 先に逝った戦友を悼む時、共に戦った戦士なら、戦友の生き様を、死に様を、誇らしく語る事がよい弔いの仕方じゃないか? って私は思うんです」
Uiscaが訴えかける。彼女が動く度、金髪が波打った。
「もし本当の事を知る人がいなくなったら、その時が戦士の本当の『死』なんだって……」
「死……」
「そうです。エミルさんも、デミアンさんも、本当に死んでしまうんじゃないかって思うんです。それを繋ぎとめられるのは貴女だけなんです」
「でも……本当のことを喋ってしまった時にこそ、彼の伝承は潰えてしまう……のではないか、と思うのです」
アラベラの瞳が曇った。言葉にもどこか覇気がない。いつもの自信に溢れたアラベラらしからぬ物言いだ。
この時、確かにアラベラは迷っていたのだ。Uiscaの言葉に少なからず動かされていた。
◆
ああ、確かに。
エミルにも誇りがあったのでしょう。
いや──彼の場合は常識……良識という方が近いのかしら。
彼は苦しんでいた。
なりたい自分になろうと頑張っていた。
Uiscaの言う通り、妾がここで真実を語らなかったら、彼の努力は誰にも知られることはない。
同時に、妾が真実を話してしまったら、彼の努力は無駄になってしまう。
エミルの努力を誰かに話したいと思う。彼の悲愴な努力の話を。あんなに頑張った人は、他に見たことない。
でも……それでも……。
『不眠の騎士』という伝承の中でなりたい自分になった彼をどうやったら暴くことができるのだろう──?
●
「伝承の鉄靴令嬢さまはすごいと思いますよ。でも私は今、目の前にいて、時に目立とうとして失敗したり。一緒にあいどるしたりするアラベラ・クララという存在が好きなんです!」
Uiscaはぎゅっとアラベラに抱きついた。
「……ありがとうございます、Uisca。あなたはきっと優しい人なのでしょう。でも……ごめんなさい」
「どうして……?」
「はっきりとはわかりません。こうして真実を喋らないことが全てエミルのためにしているだけでなないと思います。だって、妾はあの鉄靴令嬢ですから。こうしてあなたたちの目論見を破綻させることで、あなたたちの心に居座り続けられるんじゃないか、なんて考えもあるのですよ」
「つまり、目立つため……?」
「はい。やっぱり妾は目立つことが1番好きなのです。ああ、もしかしたら──」
──真実を話すことで、妾が目立つことができるとわかったら、案外妾は簡単に言う通りにしたかもしれませんね。
そう言って笑ったアラベラの顔は悪魔的だった。
このアラベラ・クララという女は、多少丸くなったとはいえ元来『目立つ』ことを優先する、そのために死んだという、困った性質をしたモノなのだ。
エミルとデミアンについてはよくわからない。しかし、ハンターたちの推測にアラベラが誤魔化しをしたことを見ればそれはきっと正しいのだろう。
とにかく、アラベラは喋らないことにした。
傾いた太陽が帝都を赤く照らしだす。
ハンターはすでにいない。部隊員もちょうど出払っており、暗くなった部屋でアラベラはひとりで暗がりを眺めていた。
思い出すのは昔のこと。どうにもならない過去のこと。
ひとりの騎士のこと。
「……あなたが妾をどう思っていようとも、あの日以来、妾はあなたが結構好きだったのですよ」
そんな独り言は誰に突き刺さるわけでもなく、暗がりに転がって消えた。
その日はヴェールみたいな雲が空を優しく覆っていた。陽光がやんわり遮られ、地上をほのかに照らしている。
そんな日の、ある一室にて。澪(ka6002)は櫛を持って、濡羽 香墨(ka6760)に言葉をかける。
「香墨の髪、梳くの好き。手入れしたい」
香墨はこくりと頷いて、梳りやすい様、澪に背を向ける。
櫛が、香墨の黒髪に通される。櫛が通るたびに、絡まった髪の毛がほぐされて、ひとつの流れをつくり、つやつやと輝きだした。
「……今日は、依頼があるね」
「うん」
澪が言っているのは、ゾンネンシュトラール帝国の歴史再編に関わる依頼だった。
ある英雄がいた──『不眠の騎士エミル』。
そして、殺人鬼──通称『デミアン』と呼ばれるものがいた。
彼らをめぐる真実を知っているらしい、英霊も存在した。
【天誓】にて顕現した絶火の騎士アラベラ・クララ(kz0250)に真実を話す様に説得するのが、今回澪や香墨たちの請け負った依頼の概要だ。
「ねえ、澪」
「何、香墨」
「──話だけ聞くと。フリーデみたい」
同じく2代目辺境伯時代の絶火の騎士の姿が、2人の脳裏に思い浮かぶ。
「デミアンとエミル、よく似ている。同一人物で殺し好き……かもしれない」
香墨が推測を立てる。
デミアンは鋭利な刃物で犠牲者を殺していたという。そして伝承に謳われるエミルも剣と短剣を用い、卓越した殺戮技巧の持ち主だった。
とても似ているのだ、エミルとデミアンは。
「香墨、髪梳かすの、終わった」
「ありがとう」
香墨は細い体に、無造作にローブを羽織った。
「今日は鎧じゃないんだね」
「……いつもなら。こんな格好じゃないけど。でも、この方がいいと思うから」
そうして、2人は連れ立って、歩き出す。
目的の場所に。
●
「……良い真実ではない、ということでしょうか」
蓬(ka7311)は2代目辺境伯時代の資料を調べながら呟いた。
そもそもこの依頼の発端は、アラベラが真実を語らないことにある。デミアンとエミルの話題になった途端、あからさまに話をそらし始めたのだ。
英霊は、貴重な当時の生き証人だ。アラベラの証言は大いに役に立つことだろう。けれど、彼女は何かを知っているらしいが、話そうとしない。
蓬は、監査を行っているアイネ・モルツとクライ・ヴォルフにはすでに接触し、アラベラとどんな話をしたのかは聞いている。
そして、時間の許す限り、こうして資料を調べている。
何分過去のことで、完全な資料があるとは言い難い。明瞭でない部分、忘却された部分、あるいは人為的にねじ曲げられた部分、多々存在する。
そして、真実を話さない英霊の存在。
蓬は考える。もしかしたら、ここにある真実は、騎士のイメージを覆しかねないようなよくないものでなかいか、と。
「ああ──もうこんな時間ですか」
蓬もまた、出発しなければならない。
●
『不眠の騎士エミル』『殺人鬼デミアン』そして『鉄靴令嬢アラベラ』。その3人を調べている者がここにもいた。
Uisca Amhran(ka0754)はぱらぱらと資料をめくりながら思う。
「6日間不眠不休で戦い、戦場で亡くなった不眠の騎士さま……どこかの鉄靴令嬢さまの伝承と似ていますね」
そう、エミルの最後はいわば過労死だ。伝承ではそれが忠義を尽くす者のお手本として書かれている。
そして、アラベラの最期は、たったひとりで勝てるはずのない大軍勢に挑んだというものだった。その嬉々として死地に向かう様はあまりにも異様であった。
お互いに戦場で死に、伝承に残った者。
その在り方は、どこか似ているのかもしれない。
「これ以上は、新しい情報はなさそうですね……では、向かうとしましょう」
アラベラは大抵、帝国第一師団兵営の中にある帝国歌舞音曲部隊の一室にいる。今日もそこにいることだろう。
「アラベラさん……私は貴女のことを信じます。貴女が守ろうとしている、エミルさん、デミアンさんのことも」
●
「おや……今日は顔ぶれが違いますね」
やっぱり、アラベラは帝国歌舞音曲部隊の一室にいた。普段なら部隊員が働いているが、今はラズビルナムの浄化作戦とやらで忙しいのか、人が少ない。
「妾はあの監査をしている2人が来ると思っていたのですが」
「貴女と貴女の話、興味ある。知り合いにも絶火の騎士がいるけど、彼女以外には会ったことがないし」
澪がそう話を切り出した。
「澪は、澪という。今日は貴女から真実を聞くためにここへ来た」
「ふふん、妾に興味を持つことは大変よいことです」
アラベラは、ハンターたちの目的が自分にあることを知って、大変気を良くした。
基本、アラベラは目立ちたがりだ。そのために騎士として戦っていた。忠義などきっとどこにもなかった。ただ自分が目立つという目的のために戦場に向かい、そして死んだ。
「【天誓】の影響で精霊を通し帝国の歴史について、……ちょっとは知ってるけど。まずは歴史教えて」
ローブを纏った香墨が澪の言葉にそう続いた。
「私も是非伺いたいです」
蓬も歴史のおさらいをすることに同意する。
「特に、2代目辺境伯時代のアラベラさんが当時をどのように思っているのかを知りたいですね」
「そうですか。でははじめましょうか。妾の話を」
●
アラベラが話したのは主に自分の話だった。これは彼女の性質上仕方ないことと言える。
「妾から見て、どうあの時代が映ったか、ですか」
アラベラはもともと目立つためだけに騎士になった人間だった。敵の多勢を恐れることなく、その渦中で戦った。アラベラにとってそれは『目立つから』しただけに過ぎないが、周りからは勇敢にも見えたのかもしれない。
「妾にとって当時の北方は、つまり今の帝国は時代の最先端に思えたのです。もっとも目立つことができる場所、妾にとって戦場とはその意味でしかありません。忠義がどうとか言う者もいましたが、妾はそんなものは持っていませんでした。言葉を変えれば妾は妾に尽くしていたのです。それに比べてエミルは……」
「エミルさんは?」
Uiscaが途切れたアラベラの言葉を拾った。
ちょっとアラベラは迷ったようだが、続きを紡いだ。
「……エミルは紛れもなく、忠義の騎士でしたよ。伝承でもその通り伝えられていて、安心しました」
「今、エミルの話が出たけど。デミアンについては知らないの?」
「えーと……」
アラベラは目を泳がせた。
「デ、デミアンは、まあ、同時代の人物ですし? まあ、道ですれ違ったりしたりしないこともないのかな……? それより妾の話をしましょう!」
「今はエミルとデミアンの話をしている。その話をして」
「うぐ……」
澪はあるひとつの仮説を立てていた。
監査に来た者たちがエミルとデミアンの話題を振った途端、アラベラは誤魔化しをはじめた、と言う点から、彼女は嘘をつけないのではないか、と。
確かに、同室で話を聞いているだけだったクレーネウスにすら何か隠していることを見抜かれるくらいなのだから、アラベラは話を偽ることが恐ろしく下手なのだろう。
「アラベラ、もしかして、嘘がつけない?」
「……だって、自分に正直に生きるのが妾の生き様ですもの」
アラベラは拗ねた子供のように唇を尖らせて、そんなことを言った。
「でも、貴女はエミル──あるいはデミアンの生涯について正直になってない」
こほん、とひとつ咳払いをして、アラベラは姿勢を正す。
「生きたいように生きろ、といのが妾の信念です。……ですが同時に、なりたい自分になろうと頑張ることも、とても素敵だと思います。だって──」
──なりたい自分になろうと努力することは、今の自分を全否定して進もうとすることだから。
アラベラはそう続けた。
●
「……それが、貴女が守っている、イメージ?」
「おや、そこまでは言っていませんよ」
澪はまっすぐ青い瞳でアラベラを見つめた。
「隠し事も、誤魔化しも正義の騎士らしくない。友達であればこそ、真実を偽るのは良くないと思う」
青い瞳の視線を、アラベラは正面から受けた。
「……なんか。2人の話。フリーデに似てる」
と、言葉を挟んだのは香墨だ。
「……現実と歴史って。どんどんずれていく。……フリーデだって。そうだったから」
澪と香墨はフリーデリーケについて交互に説明した。
現実と歴史に乖離のある、ある絶火の騎士の存在を。
「そうですよ、アラベラさん」
Uiscaも言葉をかける。
「アラベラさんが話さない事で、皆がエミルさんやデミアンさんについて色々空想します。それがひとり歩きしてしまったら……それはアラベラさんの本意ではないのでは?」
その時のアラベラの瞳はどこか遠くを見つめていた。ここではないどこか。そう、例えばかつて生きていた時代を見つめるような。
「確かに、現実と後世に伝わった歴史は違うものかもしれません。時には美化されたり、あるいは意図しない方へ捻じ曲げられていたり、そもそも存在自体がなかったことにされていたりする場合もあるのでしょう。でも──間違ったイメージこそが、本人の望んだモノだったとしたら、どうなのでしょうか。それを覆すことは、その人の努力を水泡に帰す、あまりに罪深い行いのように感じられます」
「それでも」
蓬が言う。
「今、必要とされているのは真実です。……お話を、聞かせていただけませんか」
「真実が必ずしも美しいとは限りません」
それは薄々、蓬が予想していたことだった。
「……やはり、それは騎士そのものを覆しかねないようなものなのでしょうか?」
「少なくともひとりの騎士を完全に失墜させるのに十分でしょうね。それと……澪、と言いましたか」
アラベラは澪に視線を向けた。
「妾は、先ほども言いましたが、目立ちたいから戦場に立っていたのです。それ以外の理由はありません。正義を謳うこともありましたが──妾にとって正しい行いとは、妾が目立つこと以外にないのです。妾は……あなたの言うような正義を持っていない。妾は多分、常識や良識とは無縁の人間なんです。だから、周りを顧みず、目立つことだけに邁進できた。だからこそ、絶火の騎士として名前を残すことができたのでしょう。それに……エミルとは友達と言えるほど親しい仲ではありませんよ」
窓からは、薄い陽光が差し込んで、室内の埃をきらきら照らしていた。淡い影が床に落ちる。その光景が、沈黙を埋めていく。
「待ってください、アラベラさん」
Uiscaが沈黙を破った。
「アラベラさんは、エミルさん、デミアンさんを守ろうとしているんでしょう? 貴女が守ろうとしている人なら守るに値する何かがあると思います。貴女に背中を預け、共に戦った私は貴女の事を信じてます」
「Uisca……」
「だから、私はエミルさんとデミアンさんのことも信じますよ」
Uiscaはアラベラの手を取って、正面から輝く紫色の瞳で見つめて言葉を紡ぐ。
「私たちはあいどるであるとともに戦士ですよね? 先に逝った戦友を悼む時、共に戦った戦士なら、戦友の生き様を、死に様を、誇らしく語る事がよい弔いの仕方じゃないか? って私は思うんです」
Uiscaが訴えかける。彼女が動く度、金髪が波打った。
「もし本当の事を知る人がいなくなったら、その時が戦士の本当の『死』なんだって……」
「死……」
「そうです。エミルさんも、デミアンさんも、本当に死んでしまうんじゃないかって思うんです。それを繋ぎとめられるのは貴女だけなんです」
「でも……本当のことを喋ってしまった時にこそ、彼の伝承は潰えてしまう……のではないか、と思うのです」
アラベラの瞳が曇った。言葉にもどこか覇気がない。いつもの自信に溢れたアラベラらしからぬ物言いだ。
この時、確かにアラベラは迷っていたのだ。Uiscaの言葉に少なからず動かされていた。
◆
ああ、確かに。
エミルにも誇りがあったのでしょう。
いや──彼の場合は常識……良識という方が近いのかしら。
彼は苦しんでいた。
なりたい自分になろうと頑張っていた。
Uiscaの言う通り、妾がここで真実を語らなかったら、彼の努力は誰にも知られることはない。
同時に、妾が真実を話してしまったら、彼の努力は無駄になってしまう。
エミルの努力を誰かに話したいと思う。彼の悲愴な努力の話を。あんなに頑張った人は、他に見たことない。
でも……それでも……。
『不眠の騎士』という伝承の中でなりたい自分になった彼をどうやったら暴くことができるのだろう──?
●
「伝承の鉄靴令嬢さまはすごいと思いますよ。でも私は今、目の前にいて、時に目立とうとして失敗したり。一緒にあいどるしたりするアラベラ・クララという存在が好きなんです!」
Uiscaはぎゅっとアラベラに抱きついた。
「……ありがとうございます、Uisca。あなたはきっと優しい人なのでしょう。でも……ごめんなさい」
「どうして……?」
「はっきりとはわかりません。こうして真実を喋らないことが全てエミルのためにしているだけでなないと思います。だって、妾はあの鉄靴令嬢ですから。こうしてあなたたちの目論見を破綻させることで、あなたたちの心に居座り続けられるんじゃないか、なんて考えもあるのですよ」
「つまり、目立つため……?」
「はい。やっぱり妾は目立つことが1番好きなのです。ああ、もしかしたら──」
──真実を話すことで、妾が目立つことができるとわかったら、案外妾は簡単に言う通りにしたかもしれませんね。
そう言って笑ったアラベラの顔は悪魔的だった。
このアラベラ・クララという女は、多少丸くなったとはいえ元来『目立つ』ことを優先する、そのために死んだという、困った性質をしたモノなのだ。
エミルとデミアンについてはよくわからない。しかし、ハンターたちの推測にアラベラが誤魔化しをしたことを見ればそれはきっと正しいのだろう。
とにかく、アラベラは喋らないことにした。
傾いた太陽が帝都を赤く照らしだす。
ハンターはすでにいない。部隊員もちょうど出払っており、暗くなった部屋でアラベラはひとりで暗がりを眺めていた。
思い出すのは昔のこと。どうにもならない過去のこと。
ひとりの騎士のこと。
「……あなたが妾をどう思っていようとも、あの日以来、妾はあなたが結構好きだったのですよ」
そんな独り言は誰に突き刺さるわけでもなく、暗がりに転がって消えた。
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【質問卓】 Uisca=S=Amhran(ka0754) エルフ|17才|女性|聖導士(クルセイダー) |
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【相談卓】英雄の偶像 Uisca=S=Amhran(ka0754) エルフ|17才|女性|聖導士(クルセイダー) |
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