ゲスト
(ka0000)
【落葉】彼女は今日も歌を歌う
マスター:ゆくなが

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/09/22 12:00
- 完成日
- 2018/10/04 10:08
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ことの経緯
ゾンネンシュトラール帝国は歴史を再編している最中だ。
そこで、帝国はある依頼をハンターに出した。
ワルプルギス錬魔院トップのナサニエル・カロッサ(kz0028)が捕まったことは周知の事実だ。しかし、その罪を調べ上げるには手間と時間を要する。
錬魔院所属のアイドルであるブレンネ・シュネートライベン(kz0145)も何かしらの研究に関わっている可能性がある。なので、近々行われるライブに潜入し、その様子を探って来て欲しい、というのだ。
そして、ライブ当日。
ライブ会場は帝都の、ある広い公園に設営されていた。
だが、上演開始時間の18:00を過ぎてもブレンネはなかなか舞台に現れない。
集った観客からは、徐々に不満の声が漏れ始めていた。
「何かあったのか?」「機材トラブル?」「いつもならもうはじまっているよね?」「早くライブはじまらないかなぁ」
●控え室にて
「それって、どういうこと!?」
ブレンネが机に勢いよく手をついた。
「落ち着いて、ブレンネ」
マネージャーの大柳莉子は口調こそ穏やかだが、彼女自身も少なからぬ焦りを感じている様子だった。
「スピーカーの最終調整ができないって……」
ブレンネはグリューエリン・ヴァルファー(kz0050)と同じく帝国のアイドルだ。
ただし所属は違う。グリューエリンは帝国軍第一師団の部隊所属だが、ブレンネはワルプルギス錬魔院所属のアイドルだった。
帝国は今、歴史の見直しをしている。
錬魔院もその対象になっていた。
もともと非人道的な実験もしていた機関だ。叩けばいくらでも埃はでる。
そこで、錬魔院のトップ、ナサニエルが逮捕されたのだ。
詳しい罪状はまだ調査中だ。
ナサニエルは錬魔院で行われている研究の総監督のようなものだ。そんなナサニエルの不在は、ブレンネのライブにも影響を及ぼしていた。
ライブに使うためのスピーカーの最終調整ができないのである。
ナサニエル逮捕という事件があっても、ライブの人の入りは上々だった。今更、ライブを中止にすることはできない。また、ブレンネの性格もそれを許さない。
「不完全なパフォーマンスをしなくちゃいけないっての?」
ブレンネが爪を噛む。おそらく彼女は観客に完璧ではないパフォーマンスを見せなければいけないことが不満なのだ。
「本当に、スピーカーの調整はできないの?」
「今、錬魔院自体がまともに機能していないの。この調子じゃ……」
莉子は時計を見る。
ライブ開始は18:00。すでにその時間を10分オーバーしていた。
ブレンネが拳で机を叩く。
「……ところでブレンネ」
そこで莉子は話題を変えた。
「グリューエリンが復帰ライブをしたことは、きいた?」
「はっ」
それを、ブレンネは鼻で笑った。
「グリューエリン? 今更帰って来たって遅いのよ。所詮金持ちのお遊びだったのよね。あいつのファン、根こそぎあたしが貰うわ」
ブレンネは好戦的に笑う。
グリューエリンはある出来事を境に長らくアイドルとしての活動をしていなかった。ブレンネとグリューエリンはライバルでもあり、練習仲間だった。でも、それを境に、交流は完全に絶たれていた。
グリューエリンは歌うことをやめていた。
しかし、ブレンネはグリューエリンが活動を休止してからも、精力的にアイドルとして活動していたのだ。
それは、マネージャーの莉子が心配するほどに、精力的──言葉を変えれば自傷的ですらあった。
まるで『歌うこと』に追い詰められているかのようだった。
だが、そのおかげで、ブレンネのファンは一気に増えた。アイドルというリアルブルー由来の文化を帝国に浸透させたのは、ブレンネが休まず活動を続けていたことも大きいだろう。
「……遅いのよ。今更来たからなんだってのよ」
苦虫を噛み潰したように、ブレンネが言う。
「わかった。スピーカーのことは諦める。舞台へ行くわ」
ブレンネが立ち上がる。
「ブレンネ……このライブが終わったら、少し休まない?」
莉子は心配そうにブレンネを見る。
「錬魔院だってまともに機能していない。休むにはちょうどいい機会だと──」
「あたしはっ!」
莉子の言葉をブレンネが遮った。
「あたしには歌しかないの。歌うしかないの」
それは莉子への反論というよりは、自分に言い聞かせるような言葉だった。
「……これ以上、観客を待たせるわけにはいかない。莉子、この話はもう終わりよ。次のライブの予定も入れておいて」
ブレンネは舞台へと向かっていった。
ゾンネンシュトラール帝国は歴史を再編している最中だ。
そこで、帝国はある依頼をハンターに出した。
ワルプルギス錬魔院トップのナサニエル・カロッサ(kz0028)が捕まったことは周知の事実だ。しかし、その罪を調べ上げるには手間と時間を要する。
錬魔院所属のアイドルであるブレンネ・シュネートライベン(kz0145)も何かしらの研究に関わっている可能性がある。なので、近々行われるライブに潜入し、その様子を探って来て欲しい、というのだ。
そして、ライブ当日。
ライブ会場は帝都の、ある広い公園に設営されていた。
だが、上演開始時間の18:00を過ぎてもブレンネはなかなか舞台に現れない。
集った観客からは、徐々に不満の声が漏れ始めていた。
「何かあったのか?」「機材トラブル?」「いつもならもうはじまっているよね?」「早くライブはじまらないかなぁ」
●控え室にて
「それって、どういうこと!?」
ブレンネが机に勢いよく手をついた。
「落ち着いて、ブレンネ」
マネージャーの大柳莉子は口調こそ穏やかだが、彼女自身も少なからぬ焦りを感じている様子だった。
「スピーカーの最終調整ができないって……」
ブレンネはグリューエリン・ヴァルファー(kz0050)と同じく帝国のアイドルだ。
ただし所属は違う。グリューエリンは帝国軍第一師団の部隊所属だが、ブレンネはワルプルギス錬魔院所属のアイドルだった。
帝国は今、歴史の見直しをしている。
錬魔院もその対象になっていた。
もともと非人道的な実験もしていた機関だ。叩けばいくらでも埃はでる。
そこで、錬魔院のトップ、ナサニエルが逮捕されたのだ。
詳しい罪状はまだ調査中だ。
ナサニエルは錬魔院で行われている研究の総監督のようなものだ。そんなナサニエルの不在は、ブレンネのライブにも影響を及ぼしていた。
ライブに使うためのスピーカーの最終調整ができないのである。
ナサニエル逮捕という事件があっても、ライブの人の入りは上々だった。今更、ライブを中止にすることはできない。また、ブレンネの性格もそれを許さない。
「不完全なパフォーマンスをしなくちゃいけないっての?」
ブレンネが爪を噛む。おそらく彼女は観客に完璧ではないパフォーマンスを見せなければいけないことが不満なのだ。
「本当に、スピーカーの調整はできないの?」
「今、錬魔院自体がまともに機能していないの。この調子じゃ……」
莉子は時計を見る。
ライブ開始は18:00。すでにその時間を10分オーバーしていた。
ブレンネが拳で机を叩く。
「……ところでブレンネ」
そこで莉子は話題を変えた。
「グリューエリンが復帰ライブをしたことは、きいた?」
「はっ」
それを、ブレンネは鼻で笑った。
「グリューエリン? 今更帰って来たって遅いのよ。所詮金持ちのお遊びだったのよね。あいつのファン、根こそぎあたしが貰うわ」
ブレンネは好戦的に笑う。
グリューエリンはある出来事を境に長らくアイドルとしての活動をしていなかった。ブレンネとグリューエリンはライバルでもあり、練習仲間だった。でも、それを境に、交流は完全に絶たれていた。
グリューエリンは歌うことをやめていた。
しかし、ブレンネはグリューエリンが活動を休止してからも、精力的にアイドルとして活動していたのだ。
それは、マネージャーの莉子が心配するほどに、精力的──言葉を変えれば自傷的ですらあった。
まるで『歌うこと』に追い詰められているかのようだった。
だが、そのおかげで、ブレンネのファンは一気に増えた。アイドルというリアルブルー由来の文化を帝国に浸透させたのは、ブレンネが休まず活動を続けていたことも大きいだろう。
「……遅いのよ。今更来たからなんだってのよ」
苦虫を噛み潰したように、ブレンネが言う。
「わかった。スピーカーのことは諦める。舞台へ行くわ」
ブレンネが立ち上がる。
「ブレンネ……このライブが終わったら、少し休まない?」
莉子は心配そうにブレンネを見る。
「錬魔院だってまともに機能していない。休むにはちょうどいい機会だと──」
「あたしはっ!」
莉子の言葉をブレンネが遮った。
「あたしには歌しかないの。歌うしかないの」
それは莉子への反論というよりは、自分に言い聞かせるような言葉だった。
「……これ以上、観客を待たせるわけにはいかない。莉子、この話はもう終わりよ。次のライブの予定も入れておいて」
ブレンネは舞台へと向かっていった。
リプレイ本文
●クリス・クロフォード(ka3628)は久々にあることをする
「やーれやれだ。……男のカッコも久しぶりか」
クリスは男性であるが、女性の言葉遣いをし、衣服も女性そのものだ。整った顔立ちもあり、彼を男性だと見抜くのは容易なことではない。
だが、今回のクリスは男性の格好をしていた。ブレンネ・シュネートライベン(kz0145)のライブの調査のためである。
「あんまし背ぇ高くないのも幸いしたな。紛れやすい」
クリスはクリムゾンウェストでは一般的な服装をややラフに着こなしていた。長い金髪はオールバックにし、首の後ろで軽く束ねてある。インテリ風であるが、どことなくチャラい雰囲気である。
依頼に当たるハンターとは事前に打ち合わせてある。ライブ会場では基本赤の他人として振舞うことになっている。収集した情報の共有も後日行う予定だ。
(さて……どの子がいいかしらね)
クリスがライブ会場に着いたのは開演時間より少し早い。しかし、会場付近にはすでにライブを待っているらしい人がちらほらいた。
(あの子なんか、どうかしら)
クリスが目をつけたのは、手荷物を最小限に済ませ、かなりの軽装をした少女だ。
クリスはライブ開始前に、ブレンネのライブに通い詰めてそうな女の子から、最近のライブの様子をきくつもりなのだ。
あれほどの軽装ともなれば、彼女はきっと最前列でライブを楽しむ熱烈なファンなのだろう。
「やあ」
クリスはその少女に声をかける。
「君、ブレンネのファンだろう?」
「そうですけど……」
「同盟の方で仕事しててね。久しぶりに戻ってきたんで来てみたんだ。前に見れたのはデビューしたころだったけど、最近どんな感じか聴きたくて。君、結構ライブ常連じゃない? だからだよ。どうせ聞くならたくさん見てる人からの方がいいからね」
そこでにっこりとクリスは笑った。
「そっか。お兄さん、ブレンネちゃんの初期、知ってるんだ」
ブレンネの話題になったことで、少女は態度を和らげた。
「うん。時間ができたから、気になってライブに来てみたんだけど、久しぶりだといろいろわからないことも多くてね。始まるまでご一緒していい? 来れなかった間のライブの話、聞きたくてさ」
「いいよ。ブレンネちゃんのファンに悪い人いないし」
こうして、クリスと少女は近場のカフェに移動した。
「最近のブレンネちゃんは……、初期に比べてライブの数がすごく増えたかな」
少女は訥々と話し始めた。
「だから、追っかけるの大変な時もあるけど、すごく盛り上がるから、来てよかったって思うんだよね。なんだか、嫌なこととか全部吹っ飛んじゃうくらい楽しい……っていうか、熱狂できるんだよね」
「熱狂?」
「そう、熱狂。でも、ちょっと心配なこともあって……」
少女は言うべきかどうか、少し迷ったらしいが、言葉を紡いだ。
「……なんだか、ライブの後、すごくブレンネちゃん疲れてるように見えるんだよね」
──疲れている。
聡くクリスはその言葉に反応した。
「アイドルってリアルブルーの文化だよね? あたしクリムゾンウェストの出身だし、よくわからないんだけど……ライブって……そりゃあ、歌ったり踊ったりすれば誰でも疲れるだろうけど、なんだか、ちょっと疲れすぎな気がする……あ、でも、ライブは楽しいんだよ? お兄さんもライブ久しぶりって言ってたけど、きっと楽しいよ!」
少女にとって、ブレンネはなんでもない日常を彩ってくれる存在なのだろう。
「そっか。君に話を聴けてよかったよ。そろそろ時間だね、会場に戻ろうか」
飲食代はクリスが払い、2人は会場に戻っていく。
●アリア・セリウス(ka6424)は悲しみを聴く
歌は想いの反響。
歌声を紡いだ後も、心の中で響いていく。
それは聞いた側も、発した側も。
「自分の心を傷つけながら歌わないで欲しい。なんて、私の我が儘」
──でも、悲しくて痛い残響は嫌なの。
アリアは普通の町娘の格好に、ブレンネのイメージカラーである雪色のリボンをする。
アリアがライブ会場で探すのは、寂しそうにしているグループや人。
会場の後方に、どこか冷めた視線を舞台に向けている人間を、見つけた。開演も迫っているというのに、それを持ちわびる様子もなく、ひとり佇んでいる青年である。
「少し、いいかしら」
青年にアリアは声をかけた。
彼はアリアに振り向く。
「ここに来ているということは、あなたもブレンネのファンなのでしょう?」
「君も?」
「ええ。最近ファンになったの。……でも、ちょっと言いにくいのだけれど、昔の曲の方がよかったような気もして」
クリムゾンウェストにはリアルブルーのようにCDなどの記録媒体を大量生産することは難しい。しかし、魔導レコードとも呼べるものが数量限定で発売されており、今回の依頼の資料の中にもそれがあったのだ。
「あー、なるほどね」
青年はアリアの言葉に思うところがあったらしい。
「歌やダンスのレベルは昔より今の方が圧倒的に上だと思うよ。だけど、僕も雰囲気は昔の方が好きなんだ」
「雰囲気?」
「なんというか、ブレンネは昔より笑顔が減った気がするんだ。張り詰めているっていうのかな」
「それは、いつ頃から?」
「……ちょうどグリューエリンが活動しなくなったくらいから、かなぁ」
アリアがこのような青年を狙ったのは訳がある。即興での調査ではなく、ずっと間近で、本当の声と姿で歌を聴き付けてきた人だから、小さな、少しずつの変化も判る筈だと思い、今のブレンネに違和感や寂しさを抱いていていそうなファンを探していたのだ。
「今日の彼女はどうかしら」
「最近は過剰なくらいライブをやっているから……ブレンネも疲れているんじゃないかって思うんだ。いつか壊れてしまいそうで、心配だよ。少しくらい休んでもいいのに」
──歌に乗った気持ちは、共に響くものだから。
──歌に乗せた想いの変化に気付く。
●ケイ(ka4032)とセシア・クローバー(ka7248)は連れ立ってやってくる
「今日はあいつの分まで思いっきり楽しみましょうね! セシアちゃん!」
ケイは何処にでもいる普通の帝国娘。今回は友人の妹(セシア)を連れてライブに来た。
──という設定である。
「あいつったら折角私がチケットをもぎ取ってきたのに……まったくあの服飾馬鹿ったら嫌んなっちゃうわ。まあいいけど」
ケイの服装は普通のブラウスにスカート、さらにイヤリングなどの小物で女子力高めである。
伊達眼鏡の向こうから、セシアが会場を見回す。
「とにかく、ライブは初めてだし、慣れていそうな人からマナーをきくのはどうだろうか」
「そうね。あそこの人たちなんかよさそうじゃない?」
ケイが眼差しで示すのは、ライブの開演が楽しみで仕方ないといった風のグループだ。
「失礼」
と、セシアが声をかける。グループの面々は笑顔で彼女たちを受け入れた。
「ライブは初めてなんだ。何か、マナーみたいなものはあるのか?」
グループの人たちは、口々にライブのルールを教えてくれた。大荷物は良くないとか、ステージ付近は盛り上がるともみくちゃにされるから覚悟して行けだとかだ。
また、セシアがブレンネのライブの頻度と、ファンである彼らがライブに行く回数などをきいた。熱心なファンでも、全てを追うのは難しいくらいに、ブレンネはライブをしているらしい。
「辺境だと想像もつかないな。……ところで、このライブというのは大きな催しのようだが、他にもライブをするようなアイドルはいるのか?」
「前に、グリューエリンって子、いたよね」
ひとりが思い出すように、その名前を口にした。
「前に? 今はいないのか?」
「なんか、活動しなくなっちゃってさ。確か、デビューはブレンネより先だったはず」
「同じアイドルだったら切磋琢磨していただろう……。寂しさもあったと思うがこうしてライブをやっているなら、ブレンネは凄い人なんだな」
セシアはそこから、グリューエリンが引退した後のブレンネの様子を聞き出すように誘導する。
グリューエリンが活動を休止して以来、ブレンネのライブ回数が増えたことなどが話題に上った。
「ねえ、ききたいことがあるんだけど。会場って結構広いじゃない? おすすめの場所とかあるのかしら」
と、ケイがきいた。
ステージ付近は盛り上がりたい人が集う場所で、初ライブでいきなり行くのは危険なこと。ゆったりライブを見たいなら、後方が良いと言われた。
「まあ、盛り上がるとどこにいてもそんな変わんないけどね」
と、ファンのひとりは締めくくる。
「色々ありがとう。帝国の思い出に楽しむよ」
セシアはそう感謝の言葉を述べた。
●キヅカ・リク(ka0038)は考える
人は何かを失った時、2つの選択を迫られる。
立ち止まるか、それとも、前に進むか。
こんな話をすると進む方が前向きで模範的に見える。
──けどそうじゃない。
立ち止まるのは失ったものが大きいから。
前に進むのはもっと大きなものを失ってもう止まれないから。
もし、この仮定が正しかったら……。
キヅカは双眼鏡を用いて、装置や舞台の周り、警備員の様子などを観察する。
そして、警備員や係員がいる側で、他のファンに話しかける。
「実は、ある港町で、グリューエリンって子のライブをみて、興味が湧いて、ここに来て見たんだ」
「じゃあ、ブレンネのライブは初めてなんだ。すっごく盛り上がるから覚悟しておいた方がいいよ?」
「ブレンネってどんな感じの子?」
「気が強くて、負けず嫌い、かな。まあ、そういう人じゃないと、舞台になんて立てないのかもしれないけど」
これらの会話が、警備員のそばで行われたことは偶然ではない。目的は、『グリューエリンのライブに行った一般人がいる』ことを敢えてブレンネたちに流す撒き餌だった。
●アティ(ka2729)もまた初めてだった
アティもライブ会場へとやってきた。
初めてのライブで、アティはその様子に度肝をぬかれていた。
「こ、こうしてはいられません。ライブに詳しい方にいろいろ教えてもらわねば……!」
アティが進み出そうとしたその時、急に声をかけられた。
「お嬢ちゃん、仕事帰り?」
「え?」
声をかけてきたのは、恰幅のいい男だ。見た目、アティより年上である。
「ほら、その格好。ハンターか、なにかかい?」
アティは装備を纏っていた。その格好を見て、非戦闘職の人間であることを主張するのは難しいだろう。
「えっと、私はエクラ教の者でして……」
「そうかい、お勤めご苦労様」
「あの、もしよろしければライブのことを教えていただけませんか? 実は初めてなんです」
アティは、信者の方に熱狂的なファンがおり偶然この場に立ち会ったので興味を惹かれて寄ったと説明した。
「そっか。開演まで時間があるし、構わんよ」
「ありがとうございます。アティと言います。よろしくお願いしますね」
「まず、嬢ちゃんの格好で最前列にはいかない方がいい。あそこは人が密集しているからな。行きたきゃ、もっと身軽な格好がいい」
男は簡単に、ライブのことをアティに教えた。
アティはそれをききながら、心の中で懺悔する。
熱狂的なファンがいて聞いた、という以外に嘘はないが、嘘をついてしまったことは事実。
──神よお許しください。
「あの、ブレンネさんってどんな方なんですか?」
「勝気、に見える」
「見える?」
「見た目、大人びてるし。でも、その実繊細な子なんじゃないかと思うね」
やがて、時が過ぎ、開演時間になる。しかし、その時間になってもブレンネはなかなか現れないので、観客に不安が生まれてきた頃、ようやく、ライトが華々しく輝いた。
●ライブは走り出す
色とりどりのライトが会場を照らし、大音量の音楽が流れて行く。
舞台の中心で、ブレンネは今日も歌を歌う。
楽曲は耳あたりがよく、歌詞は覚えやすく、キャッチーだ。ハンターたちも、それぞれ不審なところはないか耳をすませているが、変わったところはない。
観客も、リズムに合わせ、腕を振っている者や、静かにきいている者などそれぞれだ。
──今日は来てくれてありがとう。残り1曲、楽しんでいってね。
MCが挟まれて、最後の楽曲が奏でられる。
──ねぇ私を見て! 私を聞いて! 私を好きになってお願い!
「……」
キヅカは自分の中で、ブレンネの歌の印象を言語化しようとしていた。
(なんだろう、この感じ)
(がんばっている、のはわかる。でもどこか……)
(痛々しく思えるのは何故だろう……)
ポップな曲の陰に、明るい歌詞の裏に、血を流すハートが見えた気がした。
●違和感
「今日は調子が悪かったのかな……」
青年が呟いた。
「なにかおかしな点でも?」
アリアがきく。
「なんというか……今日は盛り上がらなかったなって。歌はいつも通りだったと思うんだけど」
「ライブ、凄かったな」
セシアは先程いろいろ話をきかせてくれたファンにそう言った。
「そう、かな……」
「なにか気にかかることでも?」
「こう、グワーっと熱狂する感じが今日は薄かった気がして」
「ねえ、舞台からはける時のブレンネちゃんの顔色悪くなかった?」
ケイが言葉を挟む。
「あれはいつものことだよ……なんだが不完全燃焼だなぁ」
「いつもはもっと盛り上がってるの?」
キヅカも話をきいている。
ファン曰く、最後の曲では熱気が渦巻くような、盛り上がり方をするらしい。
「もしかして、開演が押したことも関係あるのかな?」
「そうかもね。トラブルでもあったのかも」
「本人に素晴らしかったです、と直に伝えたいですけど……流石に無理ですよね……」
アティの言葉に、流石にそれは無理だろうと男は言った。
「他のライブはどんな感じだったのでしょうか?」
「そうだな……」
男も、今回のライブに不満があるのか、歯切れが悪かった。
「もし、お嬢ちゃんが本当にファンになったというんなら、またライブに来てくれ。そうすれば、ブレンネの本当のライブってのがわかるはずだ」
●控え室で
勢いよく、ブレンネは壁を蹴りつけた。
今日ライブが盛り上がらなかったこと、それを一番知っているのは、舞台の上から観客を見ていた彼女だろう。
歌もいつも通り歌えていた。踊りだって間違っていなかった。なのに、今日は観客を惹きつけられなかった。
「どうして、どうしてなのよ……!?」
その問いにこたえる者はいなかった。
「あたしから歌がなくなったら……何が残るっていうの……?」
●後日
ハンターは集めた情報を交換した。
クリスは得た情報を紙にまとめていた。
「私の方はこれに書いてある通りよ。やー、ナンパなんてしたの久しぶりだわ」
ブレンネのライブの裏には何かがある。
もしかしたら、ブレンネ自身でもコントロールできない何かが。
どんよりと曇った空が怪しい行く末を暗示しているようだった。
「やーれやれだ。……男のカッコも久しぶりか」
クリスは男性であるが、女性の言葉遣いをし、衣服も女性そのものだ。整った顔立ちもあり、彼を男性だと見抜くのは容易なことではない。
だが、今回のクリスは男性の格好をしていた。ブレンネ・シュネートライベン(kz0145)のライブの調査のためである。
「あんまし背ぇ高くないのも幸いしたな。紛れやすい」
クリスはクリムゾンウェストでは一般的な服装をややラフに着こなしていた。長い金髪はオールバックにし、首の後ろで軽く束ねてある。インテリ風であるが、どことなくチャラい雰囲気である。
依頼に当たるハンターとは事前に打ち合わせてある。ライブ会場では基本赤の他人として振舞うことになっている。収集した情報の共有も後日行う予定だ。
(さて……どの子がいいかしらね)
クリスがライブ会場に着いたのは開演時間より少し早い。しかし、会場付近にはすでにライブを待っているらしい人がちらほらいた。
(あの子なんか、どうかしら)
クリスが目をつけたのは、手荷物を最小限に済ませ、かなりの軽装をした少女だ。
クリスはライブ開始前に、ブレンネのライブに通い詰めてそうな女の子から、最近のライブの様子をきくつもりなのだ。
あれほどの軽装ともなれば、彼女はきっと最前列でライブを楽しむ熱烈なファンなのだろう。
「やあ」
クリスはその少女に声をかける。
「君、ブレンネのファンだろう?」
「そうですけど……」
「同盟の方で仕事しててね。久しぶりに戻ってきたんで来てみたんだ。前に見れたのはデビューしたころだったけど、最近どんな感じか聴きたくて。君、結構ライブ常連じゃない? だからだよ。どうせ聞くならたくさん見てる人からの方がいいからね」
そこでにっこりとクリスは笑った。
「そっか。お兄さん、ブレンネちゃんの初期、知ってるんだ」
ブレンネの話題になったことで、少女は態度を和らげた。
「うん。時間ができたから、気になってライブに来てみたんだけど、久しぶりだといろいろわからないことも多くてね。始まるまでご一緒していい? 来れなかった間のライブの話、聞きたくてさ」
「いいよ。ブレンネちゃんのファンに悪い人いないし」
こうして、クリスと少女は近場のカフェに移動した。
「最近のブレンネちゃんは……、初期に比べてライブの数がすごく増えたかな」
少女は訥々と話し始めた。
「だから、追っかけるの大変な時もあるけど、すごく盛り上がるから、来てよかったって思うんだよね。なんだか、嫌なこととか全部吹っ飛んじゃうくらい楽しい……っていうか、熱狂できるんだよね」
「熱狂?」
「そう、熱狂。でも、ちょっと心配なこともあって……」
少女は言うべきかどうか、少し迷ったらしいが、言葉を紡いだ。
「……なんだか、ライブの後、すごくブレンネちゃん疲れてるように見えるんだよね」
──疲れている。
聡くクリスはその言葉に反応した。
「アイドルってリアルブルーの文化だよね? あたしクリムゾンウェストの出身だし、よくわからないんだけど……ライブって……そりゃあ、歌ったり踊ったりすれば誰でも疲れるだろうけど、なんだか、ちょっと疲れすぎな気がする……あ、でも、ライブは楽しいんだよ? お兄さんもライブ久しぶりって言ってたけど、きっと楽しいよ!」
少女にとって、ブレンネはなんでもない日常を彩ってくれる存在なのだろう。
「そっか。君に話を聴けてよかったよ。そろそろ時間だね、会場に戻ろうか」
飲食代はクリスが払い、2人は会場に戻っていく。
●アリア・セリウス(ka6424)は悲しみを聴く
歌は想いの反響。
歌声を紡いだ後も、心の中で響いていく。
それは聞いた側も、発した側も。
「自分の心を傷つけながら歌わないで欲しい。なんて、私の我が儘」
──でも、悲しくて痛い残響は嫌なの。
アリアは普通の町娘の格好に、ブレンネのイメージカラーである雪色のリボンをする。
アリアがライブ会場で探すのは、寂しそうにしているグループや人。
会場の後方に、どこか冷めた視線を舞台に向けている人間を、見つけた。開演も迫っているというのに、それを持ちわびる様子もなく、ひとり佇んでいる青年である。
「少し、いいかしら」
青年にアリアは声をかけた。
彼はアリアに振り向く。
「ここに来ているということは、あなたもブレンネのファンなのでしょう?」
「君も?」
「ええ。最近ファンになったの。……でも、ちょっと言いにくいのだけれど、昔の曲の方がよかったような気もして」
クリムゾンウェストにはリアルブルーのようにCDなどの記録媒体を大量生産することは難しい。しかし、魔導レコードとも呼べるものが数量限定で発売されており、今回の依頼の資料の中にもそれがあったのだ。
「あー、なるほどね」
青年はアリアの言葉に思うところがあったらしい。
「歌やダンスのレベルは昔より今の方が圧倒的に上だと思うよ。だけど、僕も雰囲気は昔の方が好きなんだ」
「雰囲気?」
「なんというか、ブレンネは昔より笑顔が減った気がするんだ。張り詰めているっていうのかな」
「それは、いつ頃から?」
「……ちょうどグリューエリンが活動しなくなったくらいから、かなぁ」
アリアがこのような青年を狙ったのは訳がある。即興での調査ではなく、ずっと間近で、本当の声と姿で歌を聴き付けてきた人だから、小さな、少しずつの変化も判る筈だと思い、今のブレンネに違和感や寂しさを抱いていていそうなファンを探していたのだ。
「今日の彼女はどうかしら」
「最近は過剰なくらいライブをやっているから……ブレンネも疲れているんじゃないかって思うんだ。いつか壊れてしまいそうで、心配だよ。少しくらい休んでもいいのに」
──歌に乗った気持ちは、共に響くものだから。
──歌に乗せた想いの変化に気付く。
●ケイ(ka4032)とセシア・クローバー(ka7248)は連れ立ってやってくる
「今日はあいつの分まで思いっきり楽しみましょうね! セシアちゃん!」
ケイは何処にでもいる普通の帝国娘。今回は友人の妹(セシア)を連れてライブに来た。
──という設定である。
「あいつったら折角私がチケットをもぎ取ってきたのに……まったくあの服飾馬鹿ったら嫌んなっちゃうわ。まあいいけど」
ケイの服装は普通のブラウスにスカート、さらにイヤリングなどの小物で女子力高めである。
伊達眼鏡の向こうから、セシアが会場を見回す。
「とにかく、ライブは初めてだし、慣れていそうな人からマナーをきくのはどうだろうか」
「そうね。あそこの人たちなんかよさそうじゃない?」
ケイが眼差しで示すのは、ライブの開演が楽しみで仕方ないといった風のグループだ。
「失礼」
と、セシアが声をかける。グループの面々は笑顔で彼女たちを受け入れた。
「ライブは初めてなんだ。何か、マナーみたいなものはあるのか?」
グループの人たちは、口々にライブのルールを教えてくれた。大荷物は良くないとか、ステージ付近は盛り上がるともみくちゃにされるから覚悟して行けだとかだ。
また、セシアがブレンネのライブの頻度と、ファンである彼らがライブに行く回数などをきいた。熱心なファンでも、全てを追うのは難しいくらいに、ブレンネはライブをしているらしい。
「辺境だと想像もつかないな。……ところで、このライブというのは大きな催しのようだが、他にもライブをするようなアイドルはいるのか?」
「前に、グリューエリンって子、いたよね」
ひとりが思い出すように、その名前を口にした。
「前に? 今はいないのか?」
「なんか、活動しなくなっちゃってさ。確か、デビューはブレンネより先だったはず」
「同じアイドルだったら切磋琢磨していただろう……。寂しさもあったと思うがこうしてライブをやっているなら、ブレンネは凄い人なんだな」
セシアはそこから、グリューエリンが引退した後のブレンネの様子を聞き出すように誘導する。
グリューエリンが活動を休止して以来、ブレンネのライブ回数が増えたことなどが話題に上った。
「ねえ、ききたいことがあるんだけど。会場って結構広いじゃない? おすすめの場所とかあるのかしら」
と、ケイがきいた。
ステージ付近は盛り上がりたい人が集う場所で、初ライブでいきなり行くのは危険なこと。ゆったりライブを見たいなら、後方が良いと言われた。
「まあ、盛り上がるとどこにいてもそんな変わんないけどね」
と、ファンのひとりは締めくくる。
「色々ありがとう。帝国の思い出に楽しむよ」
セシアはそう感謝の言葉を述べた。
●キヅカ・リク(ka0038)は考える
人は何かを失った時、2つの選択を迫られる。
立ち止まるか、それとも、前に進むか。
こんな話をすると進む方が前向きで模範的に見える。
──けどそうじゃない。
立ち止まるのは失ったものが大きいから。
前に進むのはもっと大きなものを失ってもう止まれないから。
もし、この仮定が正しかったら……。
キヅカは双眼鏡を用いて、装置や舞台の周り、警備員の様子などを観察する。
そして、警備員や係員がいる側で、他のファンに話しかける。
「実は、ある港町で、グリューエリンって子のライブをみて、興味が湧いて、ここに来て見たんだ」
「じゃあ、ブレンネのライブは初めてなんだ。すっごく盛り上がるから覚悟しておいた方がいいよ?」
「ブレンネってどんな感じの子?」
「気が強くて、負けず嫌い、かな。まあ、そういう人じゃないと、舞台になんて立てないのかもしれないけど」
これらの会話が、警備員のそばで行われたことは偶然ではない。目的は、『グリューエリンのライブに行った一般人がいる』ことを敢えてブレンネたちに流す撒き餌だった。
●アティ(ka2729)もまた初めてだった
アティもライブ会場へとやってきた。
初めてのライブで、アティはその様子に度肝をぬかれていた。
「こ、こうしてはいられません。ライブに詳しい方にいろいろ教えてもらわねば……!」
アティが進み出そうとしたその時、急に声をかけられた。
「お嬢ちゃん、仕事帰り?」
「え?」
声をかけてきたのは、恰幅のいい男だ。見た目、アティより年上である。
「ほら、その格好。ハンターか、なにかかい?」
アティは装備を纏っていた。その格好を見て、非戦闘職の人間であることを主張するのは難しいだろう。
「えっと、私はエクラ教の者でして……」
「そうかい、お勤めご苦労様」
「あの、もしよろしければライブのことを教えていただけませんか? 実は初めてなんです」
アティは、信者の方に熱狂的なファンがおり偶然この場に立ち会ったので興味を惹かれて寄ったと説明した。
「そっか。開演まで時間があるし、構わんよ」
「ありがとうございます。アティと言います。よろしくお願いしますね」
「まず、嬢ちゃんの格好で最前列にはいかない方がいい。あそこは人が密集しているからな。行きたきゃ、もっと身軽な格好がいい」
男は簡単に、ライブのことをアティに教えた。
アティはそれをききながら、心の中で懺悔する。
熱狂的なファンがいて聞いた、という以外に嘘はないが、嘘をついてしまったことは事実。
──神よお許しください。
「あの、ブレンネさんってどんな方なんですか?」
「勝気、に見える」
「見える?」
「見た目、大人びてるし。でも、その実繊細な子なんじゃないかと思うね」
やがて、時が過ぎ、開演時間になる。しかし、その時間になってもブレンネはなかなか現れないので、観客に不安が生まれてきた頃、ようやく、ライトが華々しく輝いた。
●ライブは走り出す
色とりどりのライトが会場を照らし、大音量の音楽が流れて行く。
舞台の中心で、ブレンネは今日も歌を歌う。
楽曲は耳あたりがよく、歌詞は覚えやすく、キャッチーだ。ハンターたちも、それぞれ不審なところはないか耳をすませているが、変わったところはない。
観客も、リズムに合わせ、腕を振っている者や、静かにきいている者などそれぞれだ。
──今日は来てくれてありがとう。残り1曲、楽しんでいってね。
MCが挟まれて、最後の楽曲が奏でられる。
──ねぇ私を見て! 私を聞いて! 私を好きになってお願い!
「……」
キヅカは自分の中で、ブレンネの歌の印象を言語化しようとしていた。
(なんだろう、この感じ)
(がんばっている、のはわかる。でもどこか……)
(痛々しく思えるのは何故だろう……)
ポップな曲の陰に、明るい歌詞の裏に、血を流すハートが見えた気がした。
●違和感
「今日は調子が悪かったのかな……」
青年が呟いた。
「なにかおかしな点でも?」
アリアがきく。
「なんというか……今日は盛り上がらなかったなって。歌はいつも通りだったと思うんだけど」
「ライブ、凄かったな」
セシアは先程いろいろ話をきかせてくれたファンにそう言った。
「そう、かな……」
「なにか気にかかることでも?」
「こう、グワーっと熱狂する感じが今日は薄かった気がして」
「ねえ、舞台からはける時のブレンネちゃんの顔色悪くなかった?」
ケイが言葉を挟む。
「あれはいつものことだよ……なんだが不完全燃焼だなぁ」
「いつもはもっと盛り上がってるの?」
キヅカも話をきいている。
ファン曰く、最後の曲では熱気が渦巻くような、盛り上がり方をするらしい。
「もしかして、開演が押したことも関係あるのかな?」
「そうかもね。トラブルでもあったのかも」
「本人に素晴らしかったです、と直に伝えたいですけど……流石に無理ですよね……」
アティの言葉に、流石にそれは無理だろうと男は言った。
「他のライブはどんな感じだったのでしょうか?」
「そうだな……」
男も、今回のライブに不満があるのか、歯切れが悪かった。
「もし、お嬢ちゃんが本当にファンになったというんなら、またライブに来てくれ。そうすれば、ブレンネの本当のライブってのがわかるはずだ」
●控え室で
勢いよく、ブレンネは壁を蹴りつけた。
今日ライブが盛り上がらなかったこと、それを一番知っているのは、舞台の上から観客を見ていた彼女だろう。
歌もいつも通り歌えていた。踊りだって間違っていなかった。なのに、今日は観客を惹きつけられなかった。
「どうして、どうしてなのよ……!?」
その問いにこたえる者はいなかった。
「あたしから歌がなくなったら……何が残るっていうの……?」
●後日
ハンターは集めた情報を交換した。
クリスは得た情報を紙にまとめていた。
「私の方はこれに書いてある通りよ。やー、ナンパなんてしたの久しぶりだわ」
ブレンネのライブの裏には何かがある。
もしかしたら、ブレンネ自身でもコントロールできない何かが。
どんよりと曇った空が怪しい行く末を暗示しているようだった。
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相談卓 セシア・クローバー(ka7248) 人間(クリムゾンウェスト)|19才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2018/09/21 23:02:35 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/09/21 08:22:41 |