ゲスト
(ka0000)
【落葉】雷の斬り込み隊
マスター:朝臣あむ

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/09/21 19:00
- 完成日
- 2018/10/02 10:03
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ゾンネンシュトラール帝国北方。
ここは今、ヒルデブラント率いるヴルツァライヒの兵が帝国兵と激突している。
帝国側の目的はヴルツァライヒの兵を倒し、新体制の下で国民のための国を築くこと。
対するヴルツァライヒ側の目的は、彼らとは正反対の貴族制度の復活を目論む新たな革命を起こすこと。
「……元革命軍の英雄だかなんだか知らないが、何でこんなに強いんだ!」
「俺たちは誉ある帝国軍人だ。文句を口にする暇があるなら、手を動かせ! 敵を討て!!」
ここ戦場から聞こえる声に不満があるのも無理はない。
彼らは帝都「バルトアンデルス」を出発して以降、頻繁に敵勢力との衝突を繰り返している。
どこにこれだけの戦力がいたのか、そしてどこにこれだけの戦力を動かす力があるのかと、嘆く声も聞こえてくるほどに敵の戦力は強大だった。
「怪我人は後ろに下げろ! それ以外の奴は前に出るんだ! 次の攻撃がくるぞ!!」
押し返しては追加される兵。
次第に迎撃にも慣れてくるが、これ以上の衝突は正直言ってマズい。
「ハンターはまだなのか!? これ以上は、兵が無駄死にしちまう!!」
「大丈夫だ! 彼らが到着するまでもう一息だ! だから頑張れ!!」
彼らが到着すれば、僅かながら休息も可能になるはず。
怪我人を帝都に返すことも、上手くいけば戦況をひっくり返すことだってできるかもしれない。
そんな希望を胸に剣を手に取った兵士の目に、あってはならない光景が飛び込んで来た。
「な、なな何か来る……っ!」
「いかん!! 総員戦闘態勢を整えろ! 不測の事態に対処するんだ!!」
ザワッと空気が揺れ、自分たちの部隊前方に砂埃が見えた。
次第に響いてくる怒号と足音。中には馬の蹄らしき音も交じっているだろうか。
「このタイミングで、援軍……だと……」
カランっと武器が落ちる音がして、多くの者が無意識にツバを呑んだ。
そうして下がり始める足が何かにぶつかって止まる。
「きみ、たちは……まさか……ハンター、か?」
振り返った先に見えた顔のなんと心強いことか。
前を見据える意思のある瞳。歴戦を駆け抜けただけのことはある力強い姿。そして何より、ピンチに颯爽と駆けつける運。
どれをとっても、自分たちには追いつけない雰囲気を纏う彼らに、兵士たちは歓喜した。
そして今なら勝てると、そう思った!
「But! そうはトンやが下ろしまセーン!」
風に乗って届いたの声に、ザワッと再び空気が揺れる。
「今の声、今の口調――」
まさか! そう誰かが放とうとした声が、激しい雷撃と共に吹き飛んだ。
響き渡る悲鳴と怒声。湧き上がる恐怖と嘆きの声の中、その声は姿と共に降って来た。
「帝国のエブバディー! スーパーひさしぶりデスネー!! ミーは紫電の刀鬼――またの名をライジングソルジャーといいマース♪」
よろしくね☆
そうフルヘルメットの下でウインクしたかは定かではないが、その姿を目撃した帝国兵とハンターが身構えたのは言うまでもない。
そもそもヴルツァライヒの戦力は不明な点が多かった。故に慎重に戦う必要もあった。
だが十三魔である紫電の刀鬼(kz0136)がいることは想定外だった――いや、想定外ではないかもしれない。
「ヒルデブラント……奴がいるから、か……」
聞いたことがある。
過去、革命軍の中に紫電の刀鬼らしき歪虚が混じっていたと。そしてその話を師団長の誰かがしていたとも。
「イエース、ザッツラーイト! ミーはユーたちを撃破して、新しい革命というのをみるデース♪」
「歪虚の手を借りるなど……そんなこと、許されるはずがない!!」
「その否定、いろいろと痛いデスよ?」
背中から引き抜かれた巨大な機械刀が、雷撃を纏ってハンターたちに向かう。
彼は言外に戦おう、とハンターを誘う。そしてその姿にハンターは静かに覚悟を決めたようだった。
「今日のミーは、ヒトアジ違いますヨー!!」
そう放ち、彼は帝国兵の壁を崩すべく斬り込んでいった。
ここは今、ヒルデブラント率いるヴルツァライヒの兵が帝国兵と激突している。
帝国側の目的はヴルツァライヒの兵を倒し、新体制の下で国民のための国を築くこと。
対するヴルツァライヒ側の目的は、彼らとは正反対の貴族制度の復活を目論む新たな革命を起こすこと。
「……元革命軍の英雄だかなんだか知らないが、何でこんなに強いんだ!」
「俺たちは誉ある帝国軍人だ。文句を口にする暇があるなら、手を動かせ! 敵を討て!!」
ここ戦場から聞こえる声に不満があるのも無理はない。
彼らは帝都「バルトアンデルス」を出発して以降、頻繁に敵勢力との衝突を繰り返している。
どこにこれだけの戦力がいたのか、そしてどこにこれだけの戦力を動かす力があるのかと、嘆く声も聞こえてくるほどに敵の戦力は強大だった。
「怪我人は後ろに下げろ! それ以外の奴は前に出るんだ! 次の攻撃がくるぞ!!」
押し返しては追加される兵。
次第に迎撃にも慣れてくるが、これ以上の衝突は正直言ってマズい。
「ハンターはまだなのか!? これ以上は、兵が無駄死にしちまう!!」
「大丈夫だ! 彼らが到着するまでもう一息だ! だから頑張れ!!」
彼らが到着すれば、僅かながら休息も可能になるはず。
怪我人を帝都に返すことも、上手くいけば戦況をひっくり返すことだってできるかもしれない。
そんな希望を胸に剣を手に取った兵士の目に、あってはならない光景が飛び込んで来た。
「な、なな何か来る……っ!」
「いかん!! 総員戦闘態勢を整えろ! 不測の事態に対処するんだ!!」
ザワッと空気が揺れ、自分たちの部隊前方に砂埃が見えた。
次第に響いてくる怒号と足音。中には馬の蹄らしき音も交じっているだろうか。
「このタイミングで、援軍……だと……」
カランっと武器が落ちる音がして、多くの者が無意識にツバを呑んだ。
そうして下がり始める足が何かにぶつかって止まる。
「きみ、たちは……まさか……ハンター、か?」
振り返った先に見えた顔のなんと心強いことか。
前を見据える意思のある瞳。歴戦を駆け抜けただけのことはある力強い姿。そして何より、ピンチに颯爽と駆けつける運。
どれをとっても、自分たちには追いつけない雰囲気を纏う彼らに、兵士たちは歓喜した。
そして今なら勝てると、そう思った!
「But! そうはトンやが下ろしまセーン!」
風に乗って届いたの声に、ザワッと再び空気が揺れる。
「今の声、今の口調――」
まさか! そう誰かが放とうとした声が、激しい雷撃と共に吹き飛んだ。
響き渡る悲鳴と怒声。湧き上がる恐怖と嘆きの声の中、その声は姿と共に降って来た。
「帝国のエブバディー! スーパーひさしぶりデスネー!! ミーは紫電の刀鬼――またの名をライジングソルジャーといいマース♪」
よろしくね☆
そうフルヘルメットの下でウインクしたかは定かではないが、その姿を目撃した帝国兵とハンターが身構えたのは言うまでもない。
そもそもヴルツァライヒの戦力は不明な点が多かった。故に慎重に戦う必要もあった。
だが十三魔である紫電の刀鬼(kz0136)がいることは想定外だった――いや、想定外ではないかもしれない。
「ヒルデブラント……奴がいるから、か……」
聞いたことがある。
過去、革命軍の中に紫電の刀鬼らしき歪虚が混じっていたと。そしてその話を師団長の誰かがしていたとも。
「イエース、ザッツラーイト! ミーはユーたちを撃破して、新しい革命というのをみるデース♪」
「歪虚の手を借りるなど……そんなこと、許されるはずがない!!」
「その否定、いろいろと痛いデスよ?」
背中から引き抜かれた巨大な機械刀が、雷撃を纏ってハンターたちに向かう。
彼は言外に戦おう、とハンターを誘う。そしてその姿にハンターは静かに覚悟を決めたようだった。
「今日のミーは、ヒトアジ違いますヨー!!」
そう放ち、彼は帝国兵の壁を崩すべく斬り込んでいった。
リプレイ本文
戦場に突いた直後、マリエル(ka0116)は刀鬼の姿を見て驚きを隠せずにいた。
「なぜ、あの方が人間に……」
歪虚が人間の革命に協力する。そんな話、聞いたこともない。
そう零す彼女に ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は、何かを思い出すように目を細める。
「あいつは過去にも1度、人間に味方したことがあるのよ……」
正しくは『革命に参加した』ことがある、だがその辺りは言及しなくても良いだろう。それよりも、その時に参加した革命軍の首謀が問題だ。
「ヒルデブラントかなぁ?」
ユーリの声に呟く、ヒース・R・ウォーカー(ka0145)。
「ええ、そうよ。紫電の刀鬼が参加した革命戦争は、ここ……帝国のものよ」
刀鬼は現在の体制を築き上げたヒルデブラントという前皇帝が起こした革命に参加していた。
つまり彼が動いた理由に、あの人物がある可能性は高い。
「敵の秘密が元英雄ねぇ……なかなか面白そうじゃないか」
「依頼内容には敵勢力の制圧くらいしかなかった気がするんですけどね。なんだってこんな面倒……しかも厄災の十三魔が関わってるとか」
ややこしい。そうを零すテノール(ka5676)の肩を叩きながら、龍宮 アキノ(ka6831)は楽し気な笑い声を零す。
「ややこしいというよりも、何か色々と釈然としないわね。ただ、まぁ……できることを積み重ねていけば、辿り着くべき場所に辿り着くでしょう。そのためにもまずは目の前の敵からよね」
花厳 刹那(ka3984)は剣の柄を撫でながら視線を上げると、今まさに飛び掛かろうとする刀鬼と敵兵を見据えた。
今回の作戦は、雑兵と刀鬼を引き離すこと。
「くう~っ! いいなぁ~俺様ちゃんも紫電の刀鬼にいきたいじゃ~ん!!」
雑兵の相手と先に決められていたゾファル・G・初火(ka4407)はそう言いながらうずうずと表情を歪ませる。
ここに到着する直前まで、雑兵だけの相手と聞いていたのでやる気が激減していたが、刀鬼を見た瞬間にそれは回復した。
「早く倒せば、そのぶん俺様ちゃんにもチャンスがあるわけじゃんー!!」
ヤバイ、やる気マックスかもー! そんな声を上げるゾファルに目を瞬き、気を取り直す為にマリエルは咳払いを零す。
戦場はもう動き出す。マリエルはそう零してそう零して菊理媛を構えた。
意識を集中して刃から放つのは不浄を払う祝福。それをハンス・ラインフェルト(ka6750)とゾファル、アキノに向けられたもの。
「こんなところでヤンキーに会うとは……深いですね、クリムゾンウェスト」
騎乗しながらマリエルの技を受け取ったハンスは、若干目頭を押さえると、大きく息を吐いて手綱を握り直した。
「くっふっふー、こう死にそうな感じがびんびんしてくるじゃん」
「おいおい、死にに行くわけでじゃないんだ。あたしはここから先を見るのが楽しみなんだからね」
飛び出でステップを踏むソファルに、アキノは楽しそうに口角を上げている。
そして3人がそれぞれマリエルの技を受け取ると、ハンスの馬が嘶きを上げた。
「それでは――」「行くじゃんっ!」
ハンスの馬が大地を蹴るのと同時にゾファルとアキノも飛び出す。
馬は戦場を駆け、こちらへ向かう敵に突っ込んでゆく。そんな中、ハンスは兵の位置、武器の動き、刀鬼の場所、そして仲間の位置を確認して光の刃を抜き取った。目標位置は敵を分断できるど真ん中。
「貴方がたに刀鬼の味方をされても困りますし、貴方がたが居ると私は刀鬼に挑めないのですよ。だから……さっさと全滅して下さいッ!」
刃を振り下ろした時に目的としていた場所から放たれる一撃に、敵陣がどよめく。
どうやら前衛で剣を構えていた兵士と弓兵の1人が攻撃を受けたらしい。僅かに揺らぐ敵の壁。そこに更なる攻撃を放つ。
「陣形を乱さないと話にならないからね。休まずいくよ」
アキノは口角を上げ、ハンスの攻撃を受けて脆くなった一角にデルタレイを撃ち込んだ。これよって更に敵の人が乱れだす。
そして追い込みをかけるべくゾファルが突っ込むと、敵陣営が大きく揺らいだ。
「いいじゃんいいじゃん、ちょーいいじゃーんッ!!」
崩れた一角に踏み込み、膝を付く兵士の首を取る。だが敵の動きはまだ停止していない。
更なる攻撃が必要と判断したゾファルはもっと多くの敵を求めて兵の中に突っ込んでゆく。そんな彼女の脇を抜けるようにユーリが飛び出す。
「そちらは任せたわよ」
すれ違いざまにゾファルへ囁いたのはユーリの目的は「紫電の刀鬼」。
彼女は刀鬼との間合いを一気に詰めると、自らの射程に入るのを待たずに蒼姫刀「魂奏竜胆」を顔の横に構えた。
「久しぶりね刀鬼。ナイトハルトの……いえ、師匠との最期の戦いの時以来かしら?」
声が切れるか否かで、大きく踏み込んだ足を軸に刃を突き入れる。そこから放たれる直線の美しいまでの雷撃。それは綺麗なまでに刀鬼を範囲に納めた。だが――
「相変わらずデスね~♪」
「!?」
眼前に出現した土の突起物。それがユーリの攻撃を粉砕すると、続いて落雷音と共に衝撃が降ってくる。
自分が放った攻撃で崩れる土を見ながらユーリは地面に転がり落ち、態勢を整え切る前に叫んだ。
「刀鬼が柄を持ってる……反撃に備えてッ!!」
「ンン~♪ あともう一息、だったんですけどネ~♪」
空の柄を手にした刀鬼は謳うようにそう言うと、地に足を付けた状態でそれを振り下ろした。
出現したのは炎の剣。だがただの剣じゃない。
剣だと思った炎は、まるで生きた蛇の様に大地をくねり、自分へ向かうハンターの足を止め、更には崩れかけた兵を守る様にうねる。
そして一同が技の正体を見極めようと足を止めた瞬間、彼は崩れた壁の一角を補うように立った。
「瞬間移動を使った、のか……」
一瞬姿が消え、姿を現す時に響いた音。そして大地に色濃く残る焦げ跡がヒースの言葉を真実だと語っている。
「初めから全力とは……恐れ入りますね」
それだけハンターの実力を認められている。と取れば聞こえはいい。
だが現実は違う。
「囲まれたか」「どうも崩しきれなかったようだね」
外にいるテノールと、中にいるアキノ。2人の声が知れず重なり、現状が把握される。
ハンターたちは分断しようとしていたが、どうやら逆に分断させられてしまったようだ。しかも先に敵を崩しに向かった3名と刀鬼に向かった1名、あとの4名……という具合に。
「デハデハ~、本番スタートしまショ~♪」
刀鬼は持っていた柄を手の中で回すと、ポイッとフルヘルメットの中にしまった。
●形勢不利?
「何だ今のは……」
戦いに向かう準備を整え、今まさに踏み出した足を戻してテノールは呟いた。
「戦力の分断をしたと見せかけたパフォーマンス……いや、『見せただけ』かな……」
相変わらずふざけている。そんな思いがヒースの頭を過るが、思い返せば今更な感じがしなくもない。
その声には刹那も頷く。
「この程度の分断が崩せないほど、私たちは弱くありません。それがわからない方でもない……やはり『見せた』のでしょうね」
「見せたって……今の技をか? だがそんなことをして何の意味がある」
「意味はライジングソルジャーさんしかわかりません。どうしてここにいるのかも、誰の指示で動いているのかも……」
テノールの困惑した声に言葉を返し、マリエルは改めて切っ先に意識を集中する。
刹那が言うように戦力が分断されたこの状況を崩せないほど、こちらは弱くない。むしろこの分断、よく見れば相手側の戦力に穴が出ているように感じる。
「内と外、両方から突けば再び穴が開きます。そこがチャンスです――擬似接続開始。選択は『ロキ』。コール、イミテーション・ミストルティン!」
マリエルの声を合図にヒース、刹那それにテノールが飛び出す。そして彼らの視線の先に黒い槍の雨が降り注ぐと、戦線は再び動き出した。
「ボクは、予定通り刀鬼に行く……!」
飛び出したヒースは真っ直ぐに刀鬼を目指す。
その視線の先には刀鬼と数名の兵士も見えるが、彼の頭の中にはこのパターンさえも計算されていた。
ネーベルナハトの切っ先を下げたまま加速し、口中で詠唱を開始。そして全ての詠唱が終わると同時に槍を振り上げ、3点の光を兵士と刀鬼に打ち込んだ。
「やあ、刀鬼。お前がそっちにつく理由はヒルデブラントかなぁ? ヒルデブラントの思惑、お前は知っていると予想する。この真実――刃で確かめさせてもらう。ヒース・R・ウォーカー。全身全霊を持ってお前に挑む」
デルタレイと斬撃の双方を回避する為に飛び退いた刀鬼を追う様にヒースは更に踏み込む。そしてそこにテノールの連撃が加わると、刀鬼の口から口笛らしきものが響いた。
「Goodな連携デース♪」
「――褒めるのはまだ早いわ!」
いつの間に接近したのか。兵の対応をゾファルやハンス、アキノに託したユーリが刀鬼の背後を取る。
ヘルメットを掠めるように駆け抜けた雷撃、それに次いで注がれるのは刹那のフェイントだ。
「OK。そろそろちょびっと本気でいきまショー♪」
寸前の所で攻撃を交わす刀鬼は理解したのだろうか。彼に向かうハンターの誰もが隠し玉を持っていることを。
「いよいよですね……今回のテーマ、見せて差し上げます」
刹那はそう囁くと、背負う機械刀を抜き取る刀鬼を見詰め、己の武器を深く握りしめた。
●反撃開始
「うらうらうらうらうらうらー」
弓兵の矢で頬を傷つけ、それでもゾファルは疾走する。
拳を握り、まるで獣の様に戦場を駆ける彼女の顔には野生的な笑みが浮かぶ。鋭く戦況を見据え、己の拳を喰らわす瞬間を虎視眈々と狙う。
「そこだあああああ!!!」
一瞬、鋭い光が瞳に宿り、振り下ろした拳から複数の竜巻が放たれる。
突如現れた竜巻に兵たちの足が浮つくが、それこそが狙い。そもそも彼女の放った「エアーマンは倒せない」が発する竜巻は幻影。
驚きと巻き込まれるという恐怖、その両方に襲われた兵にゾファルは残酷な笑みを浮かべて踏み込む。
縦横無尽に敵を翻弄してゆく彼女は正に風。そんな風を視界に留め、ハンスの馬もまた戦場を駆けていた。
「やはりあそこを狙いますか」
敵陣はゾファルの攻撃で混乱の色を見せ始めている。それでも崩れ切らないのは彼らを支える者があるから。
それは刀鬼でも、この戦いの指揮官でもない。ただの聖導士。
「戦いにおいて、守ってくれる存在ってのは意外と重要なんだよ。特に混沌としたこういう場所ではね」
杖を揺らして技を紡ぐアキノは、囁きながら味方2人の動きを注視する。
やはり敵側も聖導士を倒されるのは避けたいらしい。ゾファルとハンスの動きに気付き、彼らに武器を向け始めている。
「ならばあたしはこう動くべきだろうねぇ」
飛び出した3つの光が弓兵の手を、足を、歩兵の腕を貫く。それでも攻撃を止めない彼らにアキノは更に術を成し、ハンスも馬上から攻撃を繰り出す準備を開始する。
「……勿体ないですが、トドメは任せましたよ」
きっと彼女に声は聞こえていないだろう。それでもこう動けば嫌でも意思は伝わるはず。
「先程も言いましたが、貴方がたがいると困るんですよ。ですから、これで終わりにしましょうッ!」
次元を切り裂く刃が容赦なく聖導士を、そしてその周囲にいた弓兵を傷つける。そして幾らかの兵が膝を折るのと同時にゾファルが飛び込んだ。
「――」
声なき悲鳴が上がり、鮮血が舞って鈍く乾いた音が地面に落ちる。そうなってようやく、敵兵の動きが止まった。
だがここからが本番である。彼らの目的は兵士を全て倒し、刀鬼と戦う仲間と合流することなのだから。
●対刀鬼
兵士たちが次々と倒される中、刀鬼との戦いも徐々にだが進み始めていた。
「テノールさん、回復です!」
降り注ぐ祈りの力を受け取たテノールは、何度目かの朱雀連武を撃ち込む。
本来であれば目にも留まらぬ速さで動く拳を避けることなど不可能に近いだろう。だが刀鬼は違った。
着物にこそ態と攻撃を当てさせるが、致命傷など全くなし。それどころか彼の拳を刀の腹で受け止めると「フフ~ン♪」と楽しげな声を零して、腹を蹴り上げた。
「っ、が!?」
衝撃に前のめりになり息が奪われる。だが、ただ攻撃を受けるだけで済まないのがハンターだ。
奥歯を噛み締め、息を吸うのも堪え、必死の思いで打ち込んだ拳にソードブレイカーを乗せる。そして拳が刀鬼の機械刀に触れた瞬間、彼の体が雷撃と共に吹き飛んだ。しかもそれを追い掛けれるように、刀鬼の姿も消えている。
「マリエル、ユーリ……頼む!」
ガンッと鈍い音と共にヒースの槍が宙を舞う。そして、テノールの前で止まるはずだった刀鬼の刃が、ユーリのガントレットで留まる。
じわじわと金属の焦げる臭いがするが、この場にいる全員が無事だ。
「アンタの移動、本当に真っ直ぐね。そんなんじゃ見切られちゃうわよ」
そう、刀鬼の瞬間移動は直線が基本だ。今のように目標がわかって消えた場合、彼の向かう先は容易に判断が出来る。
但し移動先がわかったからと言って受け止められるかどうかは別の話だが――
「少なくとも、ボクたちは止められたわけだ……ボクごと撃って構わない。回避はこっちでやってみせるからさぁ」
「擬似接続開始。目標補足!」
落ちてくる槍を受け取り、刀鬼の刃に自らのそれを重ねたヒース。そんな彼と刀鬼を補足してマリエルが放ったのはプルガトリオだ。
天から降る無数の槍。それに苦笑浮かべ、ヒースは回避のために用意しておいた紫電を使用する。
「何度も同じ手は通用しません――」
ふわりと無いはずの鼻孔を擽る香りに、刀鬼の足が動く。
だが気付くのが僅かに遅かった。
「あら、本当に刈れてしまいましたね」
宙を舞うヘルメットと、喉に突き入れられた赤い炎の剣はナイトカーテンを使用した刹那のものだ。
「うわあああああ!! ミーのヘルメットが何度目デスカー!!!」
「さて、何度目だろうねぇ」
よっ、と! ヒースの槍が飛んだヘルメットをキャッチ。しかもそれに気を取られた刀鬼の目に桜吹雪の幻影が飛び込んでくると、ユーリが勢いよく着物を引き裂いた。
「Nooooooo!!!」
これには刀鬼も半泣き状態。戦意を失ったのかハンターが届かない上空に飛び上がると、取られたヘルメットをじっと見ながら叫んだ。
「この恨みハラサデオクベキカー、デース! もう、ミーは帰りマース! ヒルちゃん助けてーー!!」
「あっ、おい!」
聞きたいことは山ほどある。
そう皆が声を上げようとしたが、刀鬼は振り返ることもなく去ってしまった。
「でも、わかったことがありますね」
「ヒルちゃん……ヒルデブラントが後ろにいる」
マリエルの言葉を拾うようにユーリが零すと、誰ともなくその言葉に同意し、僅かに重い空気がその場に漂った。
「なぜ、あの方が人間に……」
歪虚が人間の革命に協力する。そんな話、聞いたこともない。
そう零す彼女に ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は、何かを思い出すように目を細める。
「あいつは過去にも1度、人間に味方したことがあるのよ……」
正しくは『革命に参加した』ことがある、だがその辺りは言及しなくても良いだろう。それよりも、その時に参加した革命軍の首謀が問題だ。
「ヒルデブラントかなぁ?」
ユーリの声に呟く、ヒース・R・ウォーカー(ka0145)。
「ええ、そうよ。紫電の刀鬼が参加した革命戦争は、ここ……帝国のものよ」
刀鬼は現在の体制を築き上げたヒルデブラントという前皇帝が起こした革命に参加していた。
つまり彼が動いた理由に、あの人物がある可能性は高い。
「敵の秘密が元英雄ねぇ……なかなか面白そうじゃないか」
「依頼内容には敵勢力の制圧くらいしかなかった気がするんですけどね。なんだってこんな面倒……しかも厄災の十三魔が関わってるとか」
ややこしい。そうを零すテノール(ka5676)の肩を叩きながら、龍宮 アキノ(ka6831)は楽し気な笑い声を零す。
「ややこしいというよりも、何か色々と釈然としないわね。ただ、まぁ……できることを積み重ねていけば、辿り着くべき場所に辿り着くでしょう。そのためにもまずは目の前の敵からよね」
花厳 刹那(ka3984)は剣の柄を撫でながら視線を上げると、今まさに飛び掛かろうとする刀鬼と敵兵を見据えた。
今回の作戦は、雑兵と刀鬼を引き離すこと。
「くう~っ! いいなぁ~俺様ちゃんも紫電の刀鬼にいきたいじゃ~ん!!」
雑兵の相手と先に決められていたゾファル・G・初火(ka4407)はそう言いながらうずうずと表情を歪ませる。
ここに到着する直前まで、雑兵だけの相手と聞いていたのでやる気が激減していたが、刀鬼を見た瞬間にそれは回復した。
「早く倒せば、そのぶん俺様ちゃんにもチャンスがあるわけじゃんー!!」
ヤバイ、やる気マックスかもー! そんな声を上げるゾファルに目を瞬き、気を取り直す為にマリエルは咳払いを零す。
戦場はもう動き出す。マリエルはそう零してそう零して菊理媛を構えた。
意識を集中して刃から放つのは不浄を払う祝福。それをハンス・ラインフェルト(ka6750)とゾファル、アキノに向けられたもの。
「こんなところでヤンキーに会うとは……深いですね、クリムゾンウェスト」
騎乗しながらマリエルの技を受け取ったハンスは、若干目頭を押さえると、大きく息を吐いて手綱を握り直した。
「くっふっふー、こう死にそうな感じがびんびんしてくるじゃん」
「おいおい、死にに行くわけでじゃないんだ。あたしはここから先を見るのが楽しみなんだからね」
飛び出でステップを踏むソファルに、アキノは楽しそうに口角を上げている。
そして3人がそれぞれマリエルの技を受け取ると、ハンスの馬が嘶きを上げた。
「それでは――」「行くじゃんっ!」
ハンスの馬が大地を蹴るのと同時にゾファルとアキノも飛び出す。
馬は戦場を駆け、こちらへ向かう敵に突っ込んでゆく。そんな中、ハンスは兵の位置、武器の動き、刀鬼の場所、そして仲間の位置を確認して光の刃を抜き取った。目標位置は敵を分断できるど真ん中。
「貴方がたに刀鬼の味方をされても困りますし、貴方がたが居ると私は刀鬼に挑めないのですよ。だから……さっさと全滅して下さいッ!」
刃を振り下ろした時に目的としていた場所から放たれる一撃に、敵陣がどよめく。
どうやら前衛で剣を構えていた兵士と弓兵の1人が攻撃を受けたらしい。僅かに揺らぐ敵の壁。そこに更なる攻撃を放つ。
「陣形を乱さないと話にならないからね。休まずいくよ」
アキノは口角を上げ、ハンスの攻撃を受けて脆くなった一角にデルタレイを撃ち込んだ。これよって更に敵の人が乱れだす。
そして追い込みをかけるべくゾファルが突っ込むと、敵陣営が大きく揺らいだ。
「いいじゃんいいじゃん、ちょーいいじゃーんッ!!」
崩れた一角に踏み込み、膝を付く兵士の首を取る。だが敵の動きはまだ停止していない。
更なる攻撃が必要と判断したゾファルはもっと多くの敵を求めて兵の中に突っ込んでゆく。そんな彼女の脇を抜けるようにユーリが飛び出す。
「そちらは任せたわよ」
すれ違いざまにゾファルへ囁いたのはユーリの目的は「紫電の刀鬼」。
彼女は刀鬼との間合いを一気に詰めると、自らの射程に入るのを待たずに蒼姫刀「魂奏竜胆」を顔の横に構えた。
「久しぶりね刀鬼。ナイトハルトの……いえ、師匠との最期の戦いの時以来かしら?」
声が切れるか否かで、大きく踏み込んだ足を軸に刃を突き入れる。そこから放たれる直線の美しいまでの雷撃。それは綺麗なまでに刀鬼を範囲に納めた。だが――
「相変わらずデスね~♪」
「!?」
眼前に出現した土の突起物。それがユーリの攻撃を粉砕すると、続いて落雷音と共に衝撃が降ってくる。
自分が放った攻撃で崩れる土を見ながらユーリは地面に転がり落ち、態勢を整え切る前に叫んだ。
「刀鬼が柄を持ってる……反撃に備えてッ!!」
「ンン~♪ あともう一息、だったんですけどネ~♪」
空の柄を手にした刀鬼は謳うようにそう言うと、地に足を付けた状態でそれを振り下ろした。
出現したのは炎の剣。だがただの剣じゃない。
剣だと思った炎は、まるで生きた蛇の様に大地をくねり、自分へ向かうハンターの足を止め、更には崩れかけた兵を守る様にうねる。
そして一同が技の正体を見極めようと足を止めた瞬間、彼は崩れた壁の一角を補うように立った。
「瞬間移動を使った、のか……」
一瞬姿が消え、姿を現す時に響いた音。そして大地に色濃く残る焦げ跡がヒースの言葉を真実だと語っている。
「初めから全力とは……恐れ入りますね」
それだけハンターの実力を認められている。と取れば聞こえはいい。
だが現実は違う。
「囲まれたか」「どうも崩しきれなかったようだね」
外にいるテノールと、中にいるアキノ。2人の声が知れず重なり、現状が把握される。
ハンターたちは分断しようとしていたが、どうやら逆に分断させられてしまったようだ。しかも先に敵を崩しに向かった3名と刀鬼に向かった1名、あとの4名……という具合に。
「デハデハ~、本番スタートしまショ~♪」
刀鬼は持っていた柄を手の中で回すと、ポイッとフルヘルメットの中にしまった。
●形勢不利?
「何だ今のは……」
戦いに向かう準備を整え、今まさに踏み出した足を戻してテノールは呟いた。
「戦力の分断をしたと見せかけたパフォーマンス……いや、『見せただけ』かな……」
相変わらずふざけている。そんな思いがヒースの頭を過るが、思い返せば今更な感じがしなくもない。
その声には刹那も頷く。
「この程度の分断が崩せないほど、私たちは弱くありません。それがわからない方でもない……やはり『見せた』のでしょうね」
「見せたって……今の技をか? だがそんなことをして何の意味がある」
「意味はライジングソルジャーさんしかわかりません。どうしてここにいるのかも、誰の指示で動いているのかも……」
テノールの困惑した声に言葉を返し、マリエルは改めて切っ先に意識を集中する。
刹那が言うように戦力が分断されたこの状況を崩せないほど、こちらは弱くない。むしろこの分断、よく見れば相手側の戦力に穴が出ているように感じる。
「内と外、両方から突けば再び穴が開きます。そこがチャンスです――擬似接続開始。選択は『ロキ』。コール、イミテーション・ミストルティン!」
マリエルの声を合図にヒース、刹那それにテノールが飛び出す。そして彼らの視線の先に黒い槍の雨が降り注ぐと、戦線は再び動き出した。
「ボクは、予定通り刀鬼に行く……!」
飛び出したヒースは真っ直ぐに刀鬼を目指す。
その視線の先には刀鬼と数名の兵士も見えるが、彼の頭の中にはこのパターンさえも計算されていた。
ネーベルナハトの切っ先を下げたまま加速し、口中で詠唱を開始。そして全ての詠唱が終わると同時に槍を振り上げ、3点の光を兵士と刀鬼に打ち込んだ。
「やあ、刀鬼。お前がそっちにつく理由はヒルデブラントかなぁ? ヒルデブラントの思惑、お前は知っていると予想する。この真実――刃で確かめさせてもらう。ヒース・R・ウォーカー。全身全霊を持ってお前に挑む」
デルタレイと斬撃の双方を回避する為に飛び退いた刀鬼を追う様にヒースは更に踏み込む。そしてそこにテノールの連撃が加わると、刀鬼の口から口笛らしきものが響いた。
「Goodな連携デース♪」
「――褒めるのはまだ早いわ!」
いつの間に接近したのか。兵の対応をゾファルやハンス、アキノに託したユーリが刀鬼の背後を取る。
ヘルメットを掠めるように駆け抜けた雷撃、それに次いで注がれるのは刹那のフェイントだ。
「OK。そろそろちょびっと本気でいきまショー♪」
寸前の所で攻撃を交わす刀鬼は理解したのだろうか。彼に向かうハンターの誰もが隠し玉を持っていることを。
「いよいよですね……今回のテーマ、見せて差し上げます」
刹那はそう囁くと、背負う機械刀を抜き取る刀鬼を見詰め、己の武器を深く握りしめた。
●反撃開始
「うらうらうらうらうらうらー」
弓兵の矢で頬を傷つけ、それでもゾファルは疾走する。
拳を握り、まるで獣の様に戦場を駆ける彼女の顔には野生的な笑みが浮かぶ。鋭く戦況を見据え、己の拳を喰らわす瞬間を虎視眈々と狙う。
「そこだあああああ!!!」
一瞬、鋭い光が瞳に宿り、振り下ろした拳から複数の竜巻が放たれる。
突如現れた竜巻に兵たちの足が浮つくが、それこそが狙い。そもそも彼女の放った「エアーマンは倒せない」が発する竜巻は幻影。
驚きと巻き込まれるという恐怖、その両方に襲われた兵にゾファルは残酷な笑みを浮かべて踏み込む。
縦横無尽に敵を翻弄してゆく彼女は正に風。そんな風を視界に留め、ハンスの馬もまた戦場を駆けていた。
「やはりあそこを狙いますか」
敵陣はゾファルの攻撃で混乱の色を見せ始めている。それでも崩れ切らないのは彼らを支える者があるから。
それは刀鬼でも、この戦いの指揮官でもない。ただの聖導士。
「戦いにおいて、守ってくれる存在ってのは意外と重要なんだよ。特に混沌としたこういう場所ではね」
杖を揺らして技を紡ぐアキノは、囁きながら味方2人の動きを注視する。
やはり敵側も聖導士を倒されるのは避けたいらしい。ゾファルとハンスの動きに気付き、彼らに武器を向け始めている。
「ならばあたしはこう動くべきだろうねぇ」
飛び出した3つの光が弓兵の手を、足を、歩兵の腕を貫く。それでも攻撃を止めない彼らにアキノは更に術を成し、ハンスも馬上から攻撃を繰り出す準備を開始する。
「……勿体ないですが、トドメは任せましたよ」
きっと彼女に声は聞こえていないだろう。それでもこう動けば嫌でも意思は伝わるはず。
「先程も言いましたが、貴方がたがいると困るんですよ。ですから、これで終わりにしましょうッ!」
次元を切り裂く刃が容赦なく聖導士を、そしてその周囲にいた弓兵を傷つける。そして幾らかの兵が膝を折るのと同時にゾファルが飛び込んだ。
「――」
声なき悲鳴が上がり、鮮血が舞って鈍く乾いた音が地面に落ちる。そうなってようやく、敵兵の動きが止まった。
だがここからが本番である。彼らの目的は兵士を全て倒し、刀鬼と戦う仲間と合流することなのだから。
●対刀鬼
兵士たちが次々と倒される中、刀鬼との戦いも徐々にだが進み始めていた。
「テノールさん、回復です!」
降り注ぐ祈りの力を受け取たテノールは、何度目かの朱雀連武を撃ち込む。
本来であれば目にも留まらぬ速さで動く拳を避けることなど不可能に近いだろう。だが刀鬼は違った。
着物にこそ態と攻撃を当てさせるが、致命傷など全くなし。それどころか彼の拳を刀の腹で受け止めると「フフ~ン♪」と楽しげな声を零して、腹を蹴り上げた。
「っ、が!?」
衝撃に前のめりになり息が奪われる。だが、ただ攻撃を受けるだけで済まないのがハンターだ。
奥歯を噛み締め、息を吸うのも堪え、必死の思いで打ち込んだ拳にソードブレイカーを乗せる。そして拳が刀鬼の機械刀に触れた瞬間、彼の体が雷撃と共に吹き飛んだ。しかもそれを追い掛けれるように、刀鬼の姿も消えている。
「マリエル、ユーリ……頼む!」
ガンッと鈍い音と共にヒースの槍が宙を舞う。そして、テノールの前で止まるはずだった刀鬼の刃が、ユーリのガントレットで留まる。
じわじわと金属の焦げる臭いがするが、この場にいる全員が無事だ。
「アンタの移動、本当に真っ直ぐね。そんなんじゃ見切られちゃうわよ」
そう、刀鬼の瞬間移動は直線が基本だ。今のように目標がわかって消えた場合、彼の向かう先は容易に判断が出来る。
但し移動先がわかったからと言って受け止められるかどうかは別の話だが――
「少なくとも、ボクたちは止められたわけだ……ボクごと撃って構わない。回避はこっちでやってみせるからさぁ」
「擬似接続開始。目標補足!」
落ちてくる槍を受け取り、刀鬼の刃に自らのそれを重ねたヒース。そんな彼と刀鬼を補足してマリエルが放ったのはプルガトリオだ。
天から降る無数の槍。それに苦笑浮かべ、ヒースは回避のために用意しておいた紫電を使用する。
「何度も同じ手は通用しません――」
ふわりと無いはずの鼻孔を擽る香りに、刀鬼の足が動く。
だが気付くのが僅かに遅かった。
「あら、本当に刈れてしまいましたね」
宙を舞うヘルメットと、喉に突き入れられた赤い炎の剣はナイトカーテンを使用した刹那のものだ。
「うわあああああ!! ミーのヘルメットが何度目デスカー!!!」
「さて、何度目だろうねぇ」
よっ、と! ヒースの槍が飛んだヘルメットをキャッチ。しかもそれに気を取られた刀鬼の目に桜吹雪の幻影が飛び込んでくると、ユーリが勢いよく着物を引き裂いた。
「Nooooooo!!!」
これには刀鬼も半泣き状態。戦意を失ったのかハンターが届かない上空に飛び上がると、取られたヘルメットをじっと見ながら叫んだ。
「この恨みハラサデオクベキカー、デース! もう、ミーは帰りマース! ヒルちゃん助けてーー!!」
「あっ、おい!」
聞きたいことは山ほどある。
そう皆が声を上げようとしたが、刀鬼は振り返ることもなく去ってしまった。
「でも、わかったことがありますね」
「ヒルちゃん……ヒルデブラントが後ろにいる」
マリエルの言葉を拾うようにユーリが零すと、誰ともなくその言葉に同意し、僅かに重い空気がその場に漂った。
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刀鬼ぶったおし隊相談 ゾファル・G・初火(ka4407) 人間(リアルブルー)|16才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/09/21 08:49:04 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/09/19 06:59:22 |
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刀鬼への質問所 ヒース・R・ウォーカー(ka0145) 人間(リアルブルー)|23才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2018/09/20 20:36:49 |