ゲスト
(ka0000)
運び屋のお仕事
マスター:竜桐水仙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/09/27 19:00
- 完成日
- 2018/10/05 07:01
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●運び屋の仕事
辺境はノアーラ・クンタウに建つ、とある宿屋。その一室。
行商人のアラミス(kz0263)は、帰ってくるなり、椅子に腰を落としてじっと考え込んでいた。
その目的は、仕事の算段を付けること。
というのも、行きつけのバーにて、次のようなことがあったのである……。
バーのカウンターでウィスキーを楽しむアラミス。
その隣に、一人の男が並ぶ。
男はバーテンに適当なカクテルを頼むと、アラミスにぼそりと耳打ちしてきた。
「運び屋のアラミスさんですね」
「初対面……、でよろしかったですか?」
「仕事を頼みたい」
「なるほど……。伺いましょう」
話は、CAMの部品運搬についてだった。
試験的に作成した部品を、基地まで運んでほしいというのである。部品そのものの絶対数が少ないため、無事に、しかも確実に送り届ける必要があるらしい。その上興味本位で荷の詮索をされるのも望ましくない。
プロの運び屋ならそのあたりの心配がない。それで彼にお鉢が回ってきたようだった。
「……時間をいただけますか。できない仕事は私も受けられない。冷静な頭で、きちんと判断を下したい」
「そうでなければ困ります。それでは明日の夜、またこちらでお会いいたしましょう。よろしいですか」
「かしこまりました。明日の夜、またこちらで」
●段取り
考え込むアラミスは、ブツブツと独り言を垂れ流している。
「ブツは精密機械とはいえ、強度は折り紙付き。大抵の悪路には耐え得るだろう。問題はルートの選定、想定される障害物、それに対する対処法……」
移動はアラミスの馬車を用いる。
最短ルートの場合、川や森を抜ける街道を辿った後、そこから外れて草原を横断する、ある程度道の荒れた行程になる。
その上、森と草原ではよく歪虚の目撃情報が出る。最新の情報を集めてみなければ何とも言えないが、歪虚の妨害が入るとみて間違いない。
他の道を辿る選択肢もないわけではないが、歪虚の脅威はどのルートを通っても同じようなもの。報酬の多寡にもよるが、納期を延ばす理由としては弱い。
むしろ問題になるのは、単純な動き方をする歪虚よりも、罠を張ってくるような盗賊など……。
「まぁ、あとは明日の昼間に情報収集かな」
椅子から立ち上がったアラミスは、ベストを脱ぎながら、寝台に身を投げ出した。
●受注と発注
そして夜。
お茶を飲んでいるアラミスの隣に、例の男が腰を下ろす。
「こんばんは」
「やぁ、どうも」
鷹揚に頷くアラミスに、男が問いかける。
「例の件は、いかがですかな」
「結論から言うと、お引き受けしたい」
「色よいお返事で、安心しました」
「ただし、条件がある」
「どういったものでしょうか?」
「ハンターを雇いたい」
「……それはなぜ?」
「私自身には戦闘能力がなくてね。護衛が欲しい。雑魔なら逃げに徹する手もあるが、人間の賊となるとそうはいかない」
「……道理ですな。荷の詮索をしないことを条件に、許可しましょう」
「使うのはここから目的地までの最短ルート。雑魔をいなしつつ、荷の無事を最優先に運搬させてもらう」
「それで構いません」
「取引成立だ」
そういうことになった。
辺境はノアーラ・クンタウに建つ、とある宿屋。その一室。
行商人のアラミス(kz0263)は、帰ってくるなり、椅子に腰を落としてじっと考え込んでいた。
その目的は、仕事の算段を付けること。
というのも、行きつけのバーにて、次のようなことがあったのである……。
バーのカウンターでウィスキーを楽しむアラミス。
その隣に、一人の男が並ぶ。
男はバーテンに適当なカクテルを頼むと、アラミスにぼそりと耳打ちしてきた。
「運び屋のアラミスさんですね」
「初対面……、でよろしかったですか?」
「仕事を頼みたい」
「なるほど……。伺いましょう」
話は、CAMの部品運搬についてだった。
試験的に作成した部品を、基地まで運んでほしいというのである。部品そのものの絶対数が少ないため、無事に、しかも確実に送り届ける必要があるらしい。その上興味本位で荷の詮索をされるのも望ましくない。
プロの運び屋ならそのあたりの心配がない。それで彼にお鉢が回ってきたようだった。
「……時間をいただけますか。できない仕事は私も受けられない。冷静な頭で、きちんと判断を下したい」
「そうでなければ困ります。それでは明日の夜、またこちらでお会いいたしましょう。よろしいですか」
「かしこまりました。明日の夜、またこちらで」
●段取り
考え込むアラミスは、ブツブツと独り言を垂れ流している。
「ブツは精密機械とはいえ、強度は折り紙付き。大抵の悪路には耐え得るだろう。問題はルートの選定、想定される障害物、それに対する対処法……」
移動はアラミスの馬車を用いる。
最短ルートの場合、川や森を抜ける街道を辿った後、そこから外れて草原を横断する、ある程度道の荒れた行程になる。
その上、森と草原ではよく歪虚の目撃情報が出る。最新の情報を集めてみなければ何とも言えないが、歪虚の妨害が入るとみて間違いない。
他の道を辿る選択肢もないわけではないが、歪虚の脅威はどのルートを通っても同じようなもの。報酬の多寡にもよるが、納期を延ばす理由としては弱い。
むしろ問題になるのは、単純な動き方をする歪虚よりも、罠を張ってくるような盗賊など……。
「まぁ、あとは明日の昼間に情報収集かな」
椅子から立ち上がったアラミスは、ベストを脱ぎながら、寝台に身を投げ出した。
●受注と発注
そして夜。
お茶を飲んでいるアラミスの隣に、例の男が腰を下ろす。
「こんばんは」
「やぁ、どうも」
鷹揚に頷くアラミスに、男が問いかける。
「例の件は、いかがですかな」
「結論から言うと、お引き受けしたい」
「色よいお返事で、安心しました」
「ただし、条件がある」
「どういったものでしょうか?」
「ハンターを雇いたい」
「……それはなぜ?」
「私自身には戦闘能力がなくてね。護衛が欲しい。雑魔なら逃げに徹する手もあるが、人間の賊となるとそうはいかない」
「……道理ですな。荷の詮索をしないことを条件に、許可しましょう」
「使うのはここから目的地までの最短ルート。雑魔をいなしつつ、荷の無事を最優先に運搬させてもらう」
「それで構いません」
「取引成立だ」
そういうことになった。
リプレイ本文
●始まり
アラミス(kz0263)は、荷車を準備して、出発の時を待っていた。
そこへ続々と現れる、依頼を受注したハンターたち。
最初に姿を現したのは、レイア・アローネ(ka4082)。
「こんにちは。依頼主のアラミスとは、あなたのことか?」
「どうも! 確かにボクはアラミスだよ。依頼を受けたハンターさんかな。今日はよろしく!」
「あぁ、レイア・アローネだ。よろしく頼む」
次に現れたのは、和音・歩匡(ka6459)。
馬に跨がっている。
それを見た瞬間、レイアの肩がビクリと跳ねた。
和音はそれに気付かずに口を開く。
「護衛依頼の集合場所で合ってるか?」
「その通り! ハンターさんだよね、よろしく」
「和音だ、よろしく」
挨拶をしたアラミスが振り返る。
「で? きみは何が原因でそわそわしているのかな?」
話し掛けられたレイアが肩を震わす。
「それがー、だな……。そのー……」
蚊の鳴くような細い声で、馬が準備できていないと告げる。
アラミスは目を丸くした後、盛大に笑った。
「あっはっはっはっは! カッコいいお姉さんに見えて、意外と可愛らしい一面もあるんだねぇ」
ニコニコ微笑みながら。
「馬車を牽く馬のうち、一頭を貸そう。うちは速度を落とさないために、普通より多くの馬に馬車を牽かせているんだ。その代わり、道中は気張って頼むよ?」
ウィンクをしてそう告げる。
馬を馬車から外し終えた頃、ちょうど次の橘花 夕弦(ka6665)がやってきた。
「俺は橘花。このたび縁あって護衛の依頼を受けることとなりました。よろしくお願いします」
「どうも、依頼主のアラミスだ。よろしく頼むね」
最後にやってきた、グローリア(ka6430)。綺麗な金髪を王冠のように掲げて言う。
「護衛依頼を受けました、わたくしはグローリアといいますわ!」
「これはこれは。依頼主のアラミスといいます。道中はよろしく」
一同が顔を合わせる。
レイアを視界に収めたグローリアがピクリと眉を動かすが、特に何かをするわけではない。
ノアーラ・クンタウを出てもしばらくは安全と言うことで、アラミスは移動しながら打ち合わせを行うことにした。
話し合いの結果、グローリアが馬車の前面、レイアが右方、和音が左方、橘花が後方を守って移動することになる。
●休憩
街道を辿っていくと、道を横切る形で川が流れていた。アラミスの提案で、そこで昼休憩を取ることになった。
川に流れる水は綺麗で、それを見ながら食べる昼食は格別だ。
グローリアが取り出したのは、カップ麺。
目をキラキラさせながら、誰にともなくひとりごちる。
「いつでもどこでもお湯を入れて少し待てば食べられる。技術の結晶ですわ」
「ふむ、言われてみればその通りだな。リアルブルーの技術として慣れ親しんだものではあるが……。面白い」
レイアが話題に食いついた。
和音がそんな二人のやり取りに、くすりと笑みを漏らす。
「悪い、馬鹿にしてるわけじゃないんだがな。ちょっととぼけたような二人の会話が面白くて、つい」
立ち上がり、懐から煙草を取り出す。
「ちょっと一服いれてくるわ」
立ち去ろうとする。
カシャリ
全員の目が、一所に向く。
そこには、カメラを構えた橘花の姿。
「うるわしき仲間内のやりとり。得がたきもので、かつ有り難きもの。切り取って持ち運びたく思った次第。許して欲しい」
ふっと口許でのみ笑みを見せ、カメラの角度を変えて川などを撮影し始める。既に橘花の興味は他に向いていて。
怒るに怒れない、唐突にはしごを外されたような感覚の三人。
橘花の対応に嫌みのないところも、怒れない原因の一つだ。
一連のやり取りを眺めていたアラミスが、しみじみと言った。
「この仕事に就いているとよく思うんだけど、ハンターになるような人たちってキャラクター濃い人しかいないよねぇ」
「はは」
「むむむ」
和音は煙草を吸いに席を外し、グローリアはカップ麺を開けて食べ始めた。
麺をすするのに忙しいグローリアに、手持ち無沙汰気味のレイア。グローリアにゆっくり食べてもらうため、アラミスの隣に移動する。
「こんなものしか持っていないが、食べるか」
差し出したのは、何の変哲もない干し肉。
「いただこうかな」
干し肉を唾液でふやかしつつ、噛み千切る。
レイアがアラミスに、言葉を投げかける。
「護衛依頼などは、よく出すのか?」
「あぁ。街道を通るにしても、雑魔とかで何かと物騒だからね。またご縁があったらよろしく頼むよ」
「こちらこそ」
「町中で過ごすついでに情報収集するだけの、お手軽な依頼もたまに出すから、気が向いたらご協力をよろしく」
「それは興味深い」
穏やかに時間は過ぎ、休憩は終わりを迎えた。
●森の狩人
十字を描くような陣形で街道を辿っていくと、やがて森に突っ込んでゆくことになる。
見通しが悪い状況に、心なしか、ハンターたちの口数が減る。
背の高い下生えの向こうを見据えて、彼らの目が光る。
「おい」
「そちらもか、私も気付いた」
和音とレイアが、馬車の両脇で言う。
こういった状況には慣れているのか、アラミスが冷静に尋ねる。
「数の目安は付いているのかな?」
「右側に4、左側に2といったところか」
「左側は同感」
「右側も正しそうです」
「うぅ、直感的にそこまでは分かりませんわ……」
レイアの発言に、それぞれが反応を返す。
「それじゃ、先制攻撃をよろしく頼むよ、ハンター諸兄」
「「了解!」」
先手必勝と、戦いの火蓋を切って落とした。
最初に動いたのはレイア。
攻めの構え、ソウルエッジを発動し、目の前の敵に袈裟懸けを見舞った。
「やぁぁああああ!」
オオカミがざっくりと割れ、光の粒子と化した。
それに少し遅れて、馬車の反対側では、和音がプルガトリオを発動している。
そちら側にいた二匹とも、急所にあたり、一発で塵と化す。
「おっ、ラッキー! クリティカル入ったぜ」
それを見届けた橘花。右側の残り三匹のうち、二匹を捕らえるようにして、次元斬を仕掛ける。
空を裂く斬撃が二匹を襲い、両方を二つに切り分けた。
「世界も摂理も、丸ごと切り裂く斬閃。これを放てるようになったことを、喜ぶべきか、否か……」
クールに決める橘花。
最後の一匹に、グローリアが躍りかかった。彼女の武器、無窮なるミザルの威力は凄まじく、一撃で雑魔を消し飛ばして見せる。
「おーっほっほっほ! これぞ! 帝国の叡智! 雑魔なんて相手になりませんわ!!」
全員で、意気揚々と森をゆく。
その後、何度かオオカミ型雑魔の襲撃を受けたものの、危なげなくそれらを撃退し、一行は無傷で森を抜けていった。
●草原での突貫
森を抜けると、一面に草原が広がっていた。ゴトゴトと音を立てる馬車を囲んで、周囲を警戒するハンターたち。
見晴らしが良いため、和音などは双眼鏡を覗いて遠くを警戒している。
「それっぽいのが結構いるぜ」
渋い顔の和音が言う。
「振り切っちまうのが良いかもなぁ。いちいち相手してたら消耗が洒落になんねぇぞ。できないとは言わねぇが」
「避けられる戦闘は避けていくということですわね」
「確かに、いちいち足止めされて時間を食うのも馬鹿らしいな」
「一気に駆け抜けるのもまた一策、どうしましょうか」
雇い主であるアラミスに、視線が集まる。
「よし、それじゃあ駆け抜けようか」
そういうことになった。
馬に鞭あて、草原の中をひた突っ走る。
馬車の音に惹かれる雑魔。
その大半は、一行の速度に追いつけず、置き去りにされてしまう。
しかし、もちろん例外もあった。
「上空の鳥に見られています。報告にあった、ワシ型の雑魔でしょう」
空を舞うワシ型雑魔と、一行の進路上にいるキツネ型雑魔の群である。
キツネ型については、今のところ進路上には見えない。しかしすぐに現れるだろう。
目下の問題は、いつ襲いかかってくるか分からないワシ型。
「打ち落とせるか」
「わたくしにお任せください!」
レイアの問いに、グローリアが応える。馬の上で向きを変えたかと思うと、彼女の瞳が青く輝いた。
異変を察知したか、馬車に向けて急降下してくる雑魔。
「好都合!」
それを好都合と言い切り、グローリアは拳を振り抜いた。
練り上げられた気が放出され、気功波となって雑魔を襲う。
驚いた雑魔が体勢を変えるも、むしろそれが仇となって気功波が急所に突き刺さる。
一発で雑魔は灰となった。
「やるなぁ!」
口笛を吹く和音。
他の面々も、同意して頷いている。
「これしき、ですわ!」
その称賛を快く受けながらも、尻の据わりを悪くしているグローリア。
内心では、気功波ではない、新技を試したくてうずうずしているのだ。
その機会は、はからずも直ぐさまやってくる。
ちょっとした丘を越えたところで、進路上にキツネ型雑魔の群が居座っているのを発見したのだ。
「いい所を取られてばかりはいられない、出るぞ!」
瞬発の高いレイアが、一騎駆けを始める。ソウルエッジを掛けた二刀が、レイアの双肩に担がれる。
馬車に何が起きても良いよう、身構える和音。
橘花は次元斬を放った。三匹を巻き込んだ次元斬は、しかし二匹に逃げられてしまい、一匹を落とすにとどまる。
グローリアは今がその時と、練気をのせた青龍翔咬波を放った。その攻撃は、狙った二匹を見事撃ち抜き、塵へと変えて見せる。
残ったキツネたちが攻撃を仕掛けるも、攻撃によって分断されてしまった状態では、群の利点を活かせない。
効果的な攻撃を与えられずに、ハンターたちの反撃を浴びる。
「はぁぁぁあああああああ」
レイアの、攻めの構え・二刀流・ソウルエッジを重ね掛けした攻撃は、容易く雑魔の防御を割る。重ねて発動したアスラトゥーリも含めて、二匹の雑魔を消し飛ばした。
周囲の危なげのない戦いぶりに、自身は守護役と割り切っている和音は、馬車の隣から動かずにいる。もちろん、不意に抜けてきた雑魔がいれば、セイクリッドフラッシュやホーリーヴェールを発動する準備は怠らない。
残った一匹に、刀を掲げた橘花が肉薄する。
馬上から、刀がひるがえった。
しぶく液体、塵と化す影。
草原での戦闘は、こうして、終わりを告げた。
●その後
特に問題もなく目的地に到着した一行は、荷物の納品に向かった。
アラミスに交渉した男が荷物を改めて、傷や開封痕がないか、確認している。
「……確かに、受け取りました」
特に問題なかったらしい。
「いささかハードな道のりでしたでしょう、ご苦労様でした」
「いえいえ、そんなことは。今後ともぜひご贔屓に」
大仰ったくお辞儀をしてみせるアラミス。
苦笑いしながらそれを見た後、男はハンターたちに向き直る。
「ハンターの皆さまも、護衛をありがとうございます」
頭を下げた。
「いや、依頼だからな」
「ボーナスでも弾んでくれるのかな? そうだったら嬉しいが」
「……」
「CAM関連の部品とは聞いたが、覗いてはいけない理由でもありますの?」
それぞれに反応する中、グローリアが男に質問する。
「いえ、実際の所、これは本当に本当の試験段階で、技術が盗まれるようなことがあると困るので、詮索しない方に頼んだというわけなんです。実用化が成れば、ハンターの皆さまにも是非使っていただきたいと思っています」
「そういうことでしたの」
納得したグローリアが、男ににっこりと微笑みかけた。
後々、CAMのテストは上首尾とは行かず、実用化が見送られたという話が、噂されたとか、なんとか。
アラミス(kz0263)は、荷車を準備して、出発の時を待っていた。
そこへ続々と現れる、依頼を受注したハンターたち。
最初に姿を現したのは、レイア・アローネ(ka4082)。
「こんにちは。依頼主のアラミスとは、あなたのことか?」
「どうも! 確かにボクはアラミスだよ。依頼を受けたハンターさんかな。今日はよろしく!」
「あぁ、レイア・アローネだ。よろしく頼む」
次に現れたのは、和音・歩匡(ka6459)。
馬に跨がっている。
それを見た瞬間、レイアの肩がビクリと跳ねた。
和音はそれに気付かずに口を開く。
「護衛依頼の集合場所で合ってるか?」
「その通り! ハンターさんだよね、よろしく」
「和音だ、よろしく」
挨拶をしたアラミスが振り返る。
「で? きみは何が原因でそわそわしているのかな?」
話し掛けられたレイアが肩を震わす。
「それがー、だな……。そのー……」
蚊の鳴くような細い声で、馬が準備できていないと告げる。
アラミスは目を丸くした後、盛大に笑った。
「あっはっはっはっは! カッコいいお姉さんに見えて、意外と可愛らしい一面もあるんだねぇ」
ニコニコ微笑みながら。
「馬車を牽く馬のうち、一頭を貸そう。うちは速度を落とさないために、普通より多くの馬に馬車を牽かせているんだ。その代わり、道中は気張って頼むよ?」
ウィンクをしてそう告げる。
馬を馬車から外し終えた頃、ちょうど次の橘花 夕弦(ka6665)がやってきた。
「俺は橘花。このたび縁あって護衛の依頼を受けることとなりました。よろしくお願いします」
「どうも、依頼主のアラミスだ。よろしく頼むね」
最後にやってきた、グローリア(ka6430)。綺麗な金髪を王冠のように掲げて言う。
「護衛依頼を受けました、わたくしはグローリアといいますわ!」
「これはこれは。依頼主のアラミスといいます。道中はよろしく」
一同が顔を合わせる。
レイアを視界に収めたグローリアがピクリと眉を動かすが、特に何かをするわけではない。
ノアーラ・クンタウを出てもしばらくは安全と言うことで、アラミスは移動しながら打ち合わせを行うことにした。
話し合いの結果、グローリアが馬車の前面、レイアが右方、和音が左方、橘花が後方を守って移動することになる。
●休憩
街道を辿っていくと、道を横切る形で川が流れていた。アラミスの提案で、そこで昼休憩を取ることになった。
川に流れる水は綺麗で、それを見ながら食べる昼食は格別だ。
グローリアが取り出したのは、カップ麺。
目をキラキラさせながら、誰にともなくひとりごちる。
「いつでもどこでもお湯を入れて少し待てば食べられる。技術の結晶ですわ」
「ふむ、言われてみればその通りだな。リアルブルーの技術として慣れ親しんだものではあるが……。面白い」
レイアが話題に食いついた。
和音がそんな二人のやり取りに、くすりと笑みを漏らす。
「悪い、馬鹿にしてるわけじゃないんだがな。ちょっととぼけたような二人の会話が面白くて、つい」
立ち上がり、懐から煙草を取り出す。
「ちょっと一服いれてくるわ」
立ち去ろうとする。
カシャリ
全員の目が、一所に向く。
そこには、カメラを構えた橘花の姿。
「うるわしき仲間内のやりとり。得がたきもので、かつ有り難きもの。切り取って持ち運びたく思った次第。許して欲しい」
ふっと口許でのみ笑みを見せ、カメラの角度を変えて川などを撮影し始める。既に橘花の興味は他に向いていて。
怒るに怒れない、唐突にはしごを外されたような感覚の三人。
橘花の対応に嫌みのないところも、怒れない原因の一つだ。
一連のやり取りを眺めていたアラミスが、しみじみと言った。
「この仕事に就いているとよく思うんだけど、ハンターになるような人たちってキャラクター濃い人しかいないよねぇ」
「はは」
「むむむ」
和音は煙草を吸いに席を外し、グローリアはカップ麺を開けて食べ始めた。
麺をすするのに忙しいグローリアに、手持ち無沙汰気味のレイア。グローリアにゆっくり食べてもらうため、アラミスの隣に移動する。
「こんなものしか持っていないが、食べるか」
差し出したのは、何の変哲もない干し肉。
「いただこうかな」
干し肉を唾液でふやかしつつ、噛み千切る。
レイアがアラミスに、言葉を投げかける。
「護衛依頼などは、よく出すのか?」
「あぁ。街道を通るにしても、雑魔とかで何かと物騒だからね。またご縁があったらよろしく頼むよ」
「こちらこそ」
「町中で過ごすついでに情報収集するだけの、お手軽な依頼もたまに出すから、気が向いたらご協力をよろしく」
「それは興味深い」
穏やかに時間は過ぎ、休憩は終わりを迎えた。
●森の狩人
十字を描くような陣形で街道を辿っていくと、やがて森に突っ込んでゆくことになる。
見通しが悪い状況に、心なしか、ハンターたちの口数が減る。
背の高い下生えの向こうを見据えて、彼らの目が光る。
「おい」
「そちらもか、私も気付いた」
和音とレイアが、馬車の両脇で言う。
こういった状況には慣れているのか、アラミスが冷静に尋ねる。
「数の目安は付いているのかな?」
「右側に4、左側に2といったところか」
「左側は同感」
「右側も正しそうです」
「うぅ、直感的にそこまでは分かりませんわ……」
レイアの発言に、それぞれが反応を返す。
「それじゃ、先制攻撃をよろしく頼むよ、ハンター諸兄」
「「了解!」」
先手必勝と、戦いの火蓋を切って落とした。
最初に動いたのはレイア。
攻めの構え、ソウルエッジを発動し、目の前の敵に袈裟懸けを見舞った。
「やぁぁああああ!」
オオカミがざっくりと割れ、光の粒子と化した。
それに少し遅れて、馬車の反対側では、和音がプルガトリオを発動している。
そちら側にいた二匹とも、急所にあたり、一発で塵と化す。
「おっ、ラッキー! クリティカル入ったぜ」
それを見届けた橘花。右側の残り三匹のうち、二匹を捕らえるようにして、次元斬を仕掛ける。
空を裂く斬撃が二匹を襲い、両方を二つに切り分けた。
「世界も摂理も、丸ごと切り裂く斬閃。これを放てるようになったことを、喜ぶべきか、否か……」
クールに決める橘花。
最後の一匹に、グローリアが躍りかかった。彼女の武器、無窮なるミザルの威力は凄まじく、一撃で雑魔を消し飛ばして見せる。
「おーっほっほっほ! これぞ! 帝国の叡智! 雑魔なんて相手になりませんわ!!」
全員で、意気揚々と森をゆく。
その後、何度かオオカミ型雑魔の襲撃を受けたものの、危なげなくそれらを撃退し、一行は無傷で森を抜けていった。
●草原での突貫
森を抜けると、一面に草原が広がっていた。ゴトゴトと音を立てる馬車を囲んで、周囲を警戒するハンターたち。
見晴らしが良いため、和音などは双眼鏡を覗いて遠くを警戒している。
「それっぽいのが結構いるぜ」
渋い顔の和音が言う。
「振り切っちまうのが良いかもなぁ。いちいち相手してたら消耗が洒落になんねぇぞ。できないとは言わねぇが」
「避けられる戦闘は避けていくということですわね」
「確かに、いちいち足止めされて時間を食うのも馬鹿らしいな」
「一気に駆け抜けるのもまた一策、どうしましょうか」
雇い主であるアラミスに、視線が集まる。
「よし、それじゃあ駆け抜けようか」
そういうことになった。
馬に鞭あて、草原の中をひた突っ走る。
馬車の音に惹かれる雑魔。
その大半は、一行の速度に追いつけず、置き去りにされてしまう。
しかし、もちろん例外もあった。
「上空の鳥に見られています。報告にあった、ワシ型の雑魔でしょう」
空を舞うワシ型雑魔と、一行の進路上にいるキツネ型雑魔の群である。
キツネ型については、今のところ進路上には見えない。しかしすぐに現れるだろう。
目下の問題は、いつ襲いかかってくるか分からないワシ型。
「打ち落とせるか」
「わたくしにお任せください!」
レイアの問いに、グローリアが応える。馬の上で向きを変えたかと思うと、彼女の瞳が青く輝いた。
異変を察知したか、馬車に向けて急降下してくる雑魔。
「好都合!」
それを好都合と言い切り、グローリアは拳を振り抜いた。
練り上げられた気が放出され、気功波となって雑魔を襲う。
驚いた雑魔が体勢を変えるも、むしろそれが仇となって気功波が急所に突き刺さる。
一発で雑魔は灰となった。
「やるなぁ!」
口笛を吹く和音。
他の面々も、同意して頷いている。
「これしき、ですわ!」
その称賛を快く受けながらも、尻の据わりを悪くしているグローリア。
内心では、気功波ではない、新技を試したくてうずうずしているのだ。
その機会は、はからずも直ぐさまやってくる。
ちょっとした丘を越えたところで、進路上にキツネ型雑魔の群が居座っているのを発見したのだ。
「いい所を取られてばかりはいられない、出るぞ!」
瞬発の高いレイアが、一騎駆けを始める。ソウルエッジを掛けた二刀が、レイアの双肩に担がれる。
馬車に何が起きても良いよう、身構える和音。
橘花は次元斬を放った。三匹を巻き込んだ次元斬は、しかし二匹に逃げられてしまい、一匹を落とすにとどまる。
グローリアは今がその時と、練気をのせた青龍翔咬波を放った。その攻撃は、狙った二匹を見事撃ち抜き、塵へと変えて見せる。
残ったキツネたちが攻撃を仕掛けるも、攻撃によって分断されてしまった状態では、群の利点を活かせない。
効果的な攻撃を与えられずに、ハンターたちの反撃を浴びる。
「はぁぁぁあああああああ」
レイアの、攻めの構え・二刀流・ソウルエッジを重ね掛けした攻撃は、容易く雑魔の防御を割る。重ねて発動したアスラトゥーリも含めて、二匹の雑魔を消し飛ばした。
周囲の危なげのない戦いぶりに、自身は守護役と割り切っている和音は、馬車の隣から動かずにいる。もちろん、不意に抜けてきた雑魔がいれば、セイクリッドフラッシュやホーリーヴェールを発動する準備は怠らない。
残った一匹に、刀を掲げた橘花が肉薄する。
馬上から、刀がひるがえった。
しぶく液体、塵と化す影。
草原での戦闘は、こうして、終わりを告げた。
●その後
特に問題もなく目的地に到着した一行は、荷物の納品に向かった。
アラミスに交渉した男が荷物を改めて、傷や開封痕がないか、確認している。
「……確かに、受け取りました」
特に問題なかったらしい。
「いささかハードな道のりでしたでしょう、ご苦労様でした」
「いえいえ、そんなことは。今後ともぜひご贔屓に」
大仰ったくお辞儀をしてみせるアラミス。
苦笑いしながらそれを見た後、男はハンターたちに向き直る。
「ハンターの皆さまも、護衛をありがとうございます」
頭を下げた。
「いや、依頼だからな」
「ボーナスでも弾んでくれるのかな? そうだったら嬉しいが」
「……」
「CAM関連の部品とは聞いたが、覗いてはいけない理由でもありますの?」
それぞれに反応する中、グローリアが男に質問する。
「いえ、実際の所、これは本当に本当の試験段階で、技術が盗まれるようなことがあると困るので、詮索しない方に頼んだというわけなんです。実用化が成れば、ハンターの皆さまにも是非使っていただきたいと思っています」
「そういうことでしたの」
納得したグローリアが、男ににっこりと微笑みかけた。
後々、CAMのテストは上首尾とは行かず、実用化が見送られたという話が、噂されたとか、なんとか。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
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面白かった! | 4人 |
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/09/27 17:42:47 |
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相談卓 和音・歩匡(ka6459) 人間(クリムゾンウェスト)|26才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2018/09/27 18:41:16 |