ゲスト
(ka0000)
悪魔の囁き
マスター:きりん

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/10/03 15:00
- 完成日
- 2018/10/05 11:14
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●声が聞こえる
特にそれと分かる切欠があったわけではない。
ある男は、ふとした拍子に、誰かの囁き声がたえず耳に聞こえ続けるようになっていた。
何を言っているのかは不思議と判然しない、しかしそれが誰かの声だということは分かる不思議な現象は、男を酷く悩ませた。
当然だ。
四六時中誰かの声が聞こえるということは、どうしても意識がそちらに取られるということであり、気が散って仕事に支障をきたす。
囁き声に耐えながら仕事を始めた男だったが、昼にもならないうちに五つ目の失敗をして、上司に呆れられてしまった。
「今日は体調が悪いのか?」
「いえ、そういうわけではないんですが……」
「だったらもっと集中しろよ。ぼんやりしてるぞ」
「き、気をつけます」
上司に答えながら、男は心の中で悪態をついていた。
集中できるものならとっくにしている。
右から左から背後から、囁き声の主は姿を見せず、それでいて次々立ち位置を変えて声を聞かせてくるのだ。
男にしてみればたまったものではない。
結局、その日男はニ十回以上の失敗をして、仕事を首になった。
●惨劇
不本意にも無職になってしまった男は、憤りのままに囁き声の主を探していた。
「畜生、どこにいやがる!」
声を頼りに進んでも、ある程度の位置まで近づくと別の場所からまた囁き声が聞こえてくるので、中々男は囁き声の主を見つけることができない。
「絶対に見つけてやるぞ……! お前のせいで、俺は職を失ったんだ! 誰だか知らないが、ぶっ殺してやる!」
男は完全に頭に血が上っていた。
逆上のあまり怒りで真っ赤になった顔で、散々歩き回された男は、ついに囁き声の主を発見した。
それは、四人の美しい少女たちだった。
ゴシックドレスに身を包んだ、怪しい美を見せつける少女たちは、あどけない表情を笑みの形に変えて男を見ていた。
少女たちの目は、お気に入りのおもちゃを見る子どものような無邪気さに溢れている。
子どもにしか見えない幼さを思えば、ある意味それらしいといえるかもしれない。
しかし、男が一人の肩を掴んだ時、男はようやく少女たちの異常性に気付いた。
下に人間の肌があるとは思えないほど、触り心地が硬質だったのだ。
「なっ……!?」
驚く男の前で、少女たちがスカートの裾を持ち上げる。
ナイフ、剣、槍、斧、鉈、彫刻刀、エトセトラ。
日用品武器を問わず、無数の刃物が、冗談のようにスカートの中から出てきた。
そして、何より男を驚かせたのは、少女たちの身体だった。
関節部分が、球体関節でできている。
少女たちは刃物を一つ一つ手に取っては、男に突き立てていく。
刃物が一つ少女の手から無くなるたびに、男は絶叫を上げた。
全ての刃物を突き立て終えた少女たちが去った後には、ハリネズミのような姿になった男の死体だけが残されていた。
●ハンターズソサエティ
その日、ハンターズソサエティでは新たな依頼が発表されていた。
男を惨殺した四体の少女人形型歪虚を討伐すること。
それが、依頼の内容だった。
特にそれと分かる切欠があったわけではない。
ある男は、ふとした拍子に、誰かの囁き声がたえず耳に聞こえ続けるようになっていた。
何を言っているのかは不思議と判然しない、しかしそれが誰かの声だということは分かる不思議な現象は、男を酷く悩ませた。
当然だ。
四六時中誰かの声が聞こえるということは、どうしても意識がそちらに取られるということであり、気が散って仕事に支障をきたす。
囁き声に耐えながら仕事を始めた男だったが、昼にもならないうちに五つ目の失敗をして、上司に呆れられてしまった。
「今日は体調が悪いのか?」
「いえ、そういうわけではないんですが……」
「だったらもっと集中しろよ。ぼんやりしてるぞ」
「き、気をつけます」
上司に答えながら、男は心の中で悪態をついていた。
集中できるものならとっくにしている。
右から左から背後から、囁き声の主は姿を見せず、それでいて次々立ち位置を変えて声を聞かせてくるのだ。
男にしてみればたまったものではない。
結局、その日男はニ十回以上の失敗をして、仕事を首になった。
●惨劇
不本意にも無職になってしまった男は、憤りのままに囁き声の主を探していた。
「畜生、どこにいやがる!」
声を頼りに進んでも、ある程度の位置まで近づくと別の場所からまた囁き声が聞こえてくるので、中々男は囁き声の主を見つけることができない。
「絶対に見つけてやるぞ……! お前のせいで、俺は職を失ったんだ! 誰だか知らないが、ぶっ殺してやる!」
男は完全に頭に血が上っていた。
逆上のあまり怒りで真っ赤になった顔で、散々歩き回された男は、ついに囁き声の主を発見した。
それは、四人の美しい少女たちだった。
ゴシックドレスに身を包んだ、怪しい美を見せつける少女たちは、あどけない表情を笑みの形に変えて男を見ていた。
少女たちの目は、お気に入りのおもちゃを見る子どものような無邪気さに溢れている。
子どもにしか見えない幼さを思えば、ある意味それらしいといえるかもしれない。
しかし、男が一人の肩を掴んだ時、男はようやく少女たちの異常性に気付いた。
下に人間の肌があるとは思えないほど、触り心地が硬質だったのだ。
「なっ……!?」
驚く男の前で、少女たちがスカートの裾を持ち上げる。
ナイフ、剣、槍、斧、鉈、彫刻刀、エトセトラ。
日用品武器を問わず、無数の刃物が、冗談のようにスカートの中から出てきた。
そして、何より男を驚かせたのは、少女たちの身体だった。
関節部分が、球体関節でできている。
少女たちは刃物を一つ一つ手に取っては、男に突き立てていく。
刃物が一つ少女の手から無くなるたびに、男は絶叫を上げた。
全ての刃物を突き立て終えた少女たちが去った後には、ハリネズミのような姿になった男の死体だけが残されていた。
●ハンターズソサエティ
その日、ハンターズソサエティでは新たな依頼が発表されていた。
男を惨殺した四体の少女人形型歪虚を討伐すること。
それが、依頼の内容だった。
リプレイ本文
●囁き声に誘われて
依頼情報から敵を見た人物がいると推察した初月 賢四郎(ka1046)は、ハンターズソサエティにその人物と話し情報収集できないか交渉を持ちかけた。
交渉は成功し、得た情報を街の地図に書き込んでいく。
「少なくともある程度出没しそうな位置は絞っておきたいですね。戦闘に至るまで何をするかで八割方決まりますから……」
人形型歪虚を殲滅しようと勇んで依頼を受けた夢路 まよい(ka1328)は、複雑な思いを抱いていた。
「歪虚で人形型となると、嫉妬の眷属だったりするのかな? そうだったらどうというわけじゃないんだけど。お人形さんは私も大事にしてるのがあるから、あんまり敵にしたくはないんだけどな。供養と思って、壊しちゃうしかないかな」
「街中に歪虚が出るとなると厄介だな。人が集まってくる前にさっさと退治してしまいたいところだが」
歩くアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)の耳には早くも囁き声が聞こえ始めていた。
少し遅れて、他のメンバーの耳にも入ってくる。
聞こえてくる方角はバラバラだ。
しかし賢四郎が地図に記録した情報を見ると、分散しているにしては頻繁に方角が変わり過ぎるので、実際にその方角にいるわけではないのかもしれない。
ワープでもしていれば話は別だが、そんな能力があればハンターたちの耳に一番に入ってくるだろう。
それに聞こえる声はまだかなり小さく、遠い。
もしまよいか他の仲間が空を飛べる状態なら、上空から一般人がいないか確認して貰おうと思っていたレイア・アローネ(ka4082)は、当てが外れたものの次善の策を取った。
「街中での戦闘か……厄介だな。一般人を巻き込まないのが最優先だが、先に敵を見つけられるならそれでいい。私はこの囁き声を辿り、敵を見つけることにしよう」
「考えるだけで頭が痛くなりそうな奴だけど、ハンター相手に同じ手を使っても自分の居場所を教えているようなものじゃないか。これを自殺行為と言わずして何だと言うのかね?」
アレイダ・リイン(ka6437)は聞こえてくる囁き声を頼りに敵の居場所を突き止めてやろうと思っていた。
声が大きくなる方向を目指していくつもりだ。
囁き声を頼りに、ハンターたちは街を練り歩き、ついに人気のない町外れの路地裏で人形型歪虚たちと対峙することに成功した。
どうやら敵はハンターたちが辿り着くのを待っていたようだ。
囁き声も、方角ではなく大きさのみが位置関係を探るのに関係したらしい。魔法の一種なのだろう。
さあ、戦いの始まりだ!
●少女人形型歪虚を倒せ!
「こちらの連携が上か向こうの方が上か……勝負だな……!」
アルトが伏兵に出ようとするのを確認し、レイアは少女人形型歪虚たちの注意を引きつけるため、正面から戦いを挑んだ。
近付いたことで囁き声が増大し、まるで耳鳴りのようになっている。
一応耳栓をしているものの、まるで効果がない。実際に耳に聞こえているのではなく、魔法的なもののようだ。
乱暴に耳栓を外したレイアへ、少女人形型歪虚たちがうっすらと笑みを浮かべながら近付いてくる。
集中が乱れる事も考慮し、攻めを重視した構えを取ったうえで自分の生体マテリアルを魔導剣に流し込み、強化すると、集団戦を意識して動きながら、大きく踏み込みながら魔導剣で一直線に突きを放ち、返す刃でマテリアルをこめた衝撃波を放つ。
正面からレイアが仕掛けるのを見ながら、アルトはその隙に自身をマテリアルのオーラに紛れさせた。
アルトの全身からマテリアルのオーラが迸り、まるでフィルムの早回しのように残像を纏って加速していく。
踏み足にマテリアルをこめてさらに加速を得たアルトは、周囲の壁を蹴り鋭角的な三次元機動で少女人形型歪虚に襲い掛かる。
加速に追い付かず一拍遅れてアルトの耳元で大音量の囁き声が鳴り響き、すぐに消えた。どうやらまよいが対抗魔法で打ち消すことに成功したようだ。
対する少女人形型歪虚がドレスのスカートをたくし上げる。
ドレスの下の空間が揺らいでたくさんの刃物が現れ、全てボトボトと地面に落ちた。どうやらこれもまよいが対抗魔法で妨害したようである。
蹲って必死に刃物を拾い集める少女人形型歪虚はちょっと焦っているようにも見える。
「貰ったぞ!」
そんな隙を見逃すアルトでもなく、全速力で駆け抜けながら、すれ違いざまにその首を斬り飛ばし、さらにその奥にいた少女人形型歪虚の右腕を断ち斬っていく。
片腕を失った少女人形型歪虚が反撃とばかりに刃物を突き立てようとするが、もうそこにアルトはいなかった。
耳栓が無効ということを知ったアルトは、用済みになったそれを外した。
奇襲を仕掛けたアルトが一体を屠り、もう一体に重症を与えたのをレイアは見た。
同時に聞こえていた囁き声が消える。まよいの尽力だ。
「その隙、逃さん!」
アルトと入れ替わりに片腕の少女人形型歪虚に向けて突撃したレイアは、魔導剣に満ちたオーラを解放する。
魔力により急激な加速を受けた斬撃を、少女人形型歪虚は辛うじて片腕で構えた刃物で受け止めたものの、魔力の放出で強化された重く鋭い一撃によって、構えた刃物ごと両断された。
「うん、予想通り! 対抗魔法で全部解除できるね!」
思い通り事が進んだことで、まよいは上機嫌だった。
見つけるまでならともかく、戦闘中は囁き声など邪魔になるだけ。
なのでまずは対抗魔法で囁き声に干渉して、集中を阻害する効果を打ち消せないか試してみたのだ。
これが想像以上に上手くいき、囁き声自体をカットすることに成功した。
さらに、スカートの中からどうみてもおかしい量の刃物が冗談のように出てくる様を見たまよいは、反射的にそれに対しても対抗魔法で妨害を試みていた。
結果は見ての通り。刃物を落として動揺した一体はあっさりとアルトに始末され、もう一体に重傷を負わせ、それもレイアが止めを刺した。
対抗魔法は連発するのが難しいので、続けざまに動かれていたら難しがっただろうが、少し間が空いていたので対処ができた。
残るは二体。
「当たったら、ちょっと痛いかもしれないよ!」
魔法の矢を作り出したまよいは、残る少女人形型歪虚たちに矢をけしかける。
一体は魔法の矢を叩き落とそうして失敗し、逆に腹を貫かれて消滅したが、最後の一体は手に取った刃物を次々魔法の矢に当てて軌道を逸らしていき、最後には叩き斬った。
「やるね!」
好奇心で目を輝かせるまよいに対し、少女人形型歪虚に余裕は見られない。
無理もなかった。
後衛として動こうと考えていた賢四郎は、すぐさま自分たちの優勢に大きく傾いた戦況に、周辺警戒に注意を割くことにした。
伏兵がいるかもしれないと想定することもそうだが、迷い込む人間がいないとも限らない。
街外れの路地裏といえど、街の中には違いないのだから。
最後の一体になった人形型歪虚は、アルトたちをすり抜けて賢四郎やまよいがいる後衛に突っ込んできた。
捨て鉢な自爆同然の特効は、だからこそ歴戦のハンターたちの虚をつく。
しかし迎え撃つ賢四郎は冷静だった。
「起死回生の手段として、脆そうな自分たち後衛を狙う。順当に考えれば、そう来るよな」
肉薄する少女人形が一矢報いれると思ったのか歓喜の表情を浮かべるのを見て、静かに手を指鉄砲の形に構え、向けた。
指鉄砲の指先に光球が現れ、そこから光の銃弾が放たれる。
目を見開く少女人形型歪虚を撃ち抜いた銃弾は輝きを失い、黒のAと8のツーペアと一枚の伏せられた札に変じた後、粒子となって消滅した。
念のため展開しておいた、マテリアルを変成して作った光の防御壁が、役目を終えてガラスのように割れながら空気中に霧散する。
少女人形型歪虚は隙だらけだ。
「お膳立て感謝するよ!」
堅い獣皮や甲殻を持つ動物霊の力を借りることで自身の防御力を高めたアレイダは、そのまま最後の少女人形型歪虚に祖霊の力を込めた神布を巻いた拳を叩きつけ、大きく振り抜いた。
よろける少女人形型歪虚は最後の悪あがきとばかりにドレスをたくし上げるが、まよいの対抗魔法によって妨害され出てくる刃物は全て地面に散らばる。
さすがに他の個体の行く末を見て学習したのか、少女人形型歪虚は刃物の一つを足で蹴り、浮かせて空中で器用にキャッチした。
「誘き寄せたのがハンターで残念な気分かい? どうやら不用心が過ぎたようだね。しかし自分から居場所を教えてくれたことは感謝するよ。お前たちの命と引き換えに報酬が待っている。潔く散ってくれ、可愛いお嬢さん」
少女人形型歪虚が突き立てようとする刃物を払い除けたアレイダは、握り締めた拳を少女人形型歪虚に叩きつけ、重い一撃により弾き飛ばした。
衝撃で、少女人形型歪虚のドレスが破れ、中の球体関節が露になる。
美しい顔を憎悪に歪ませながら最後の力を振り絞りアレイダに襲い掛かってくる少女人形に、走り寄ったアルトの一撃が命中しガラクタに変えた。
●討伐終了
少女人形型歪虚たちはハンターたちの活躍により無事退治された。
街は平和を取り戻した。
それから、その街で少女人形型歪虚を見かけたという話はハンターズソサエティには伝わっていないし、新たな犠牲者が出たという報告もない。
これにて、依頼解決である。
依頼情報から敵を見た人物がいると推察した初月 賢四郎(ka1046)は、ハンターズソサエティにその人物と話し情報収集できないか交渉を持ちかけた。
交渉は成功し、得た情報を街の地図に書き込んでいく。
「少なくともある程度出没しそうな位置は絞っておきたいですね。戦闘に至るまで何をするかで八割方決まりますから……」
人形型歪虚を殲滅しようと勇んで依頼を受けた夢路 まよい(ka1328)は、複雑な思いを抱いていた。
「歪虚で人形型となると、嫉妬の眷属だったりするのかな? そうだったらどうというわけじゃないんだけど。お人形さんは私も大事にしてるのがあるから、あんまり敵にしたくはないんだけどな。供養と思って、壊しちゃうしかないかな」
「街中に歪虚が出るとなると厄介だな。人が集まってくる前にさっさと退治してしまいたいところだが」
歩くアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)の耳には早くも囁き声が聞こえ始めていた。
少し遅れて、他のメンバーの耳にも入ってくる。
聞こえてくる方角はバラバラだ。
しかし賢四郎が地図に記録した情報を見ると、分散しているにしては頻繁に方角が変わり過ぎるので、実際にその方角にいるわけではないのかもしれない。
ワープでもしていれば話は別だが、そんな能力があればハンターたちの耳に一番に入ってくるだろう。
それに聞こえる声はまだかなり小さく、遠い。
もしまよいか他の仲間が空を飛べる状態なら、上空から一般人がいないか確認して貰おうと思っていたレイア・アローネ(ka4082)は、当てが外れたものの次善の策を取った。
「街中での戦闘か……厄介だな。一般人を巻き込まないのが最優先だが、先に敵を見つけられるならそれでいい。私はこの囁き声を辿り、敵を見つけることにしよう」
「考えるだけで頭が痛くなりそうな奴だけど、ハンター相手に同じ手を使っても自分の居場所を教えているようなものじゃないか。これを自殺行為と言わずして何だと言うのかね?」
アレイダ・リイン(ka6437)は聞こえてくる囁き声を頼りに敵の居場所を突き止めてやろうと思っていた。
声が大きくなる方向を目指していくつもりだ。
囁き声を頼りに、ハンターたちは街を練り歩き、ついに人気のない町外れの路地裏で人形型歪虚たちと対峙することに成功した。
どうやら敵はハンターたちが辿り着くのを待っていたようだ。
囁き声も、方角ではなく大きさのみが位置関係を探るのに関係したらしい。魔法の一種なのだろう。
さあ、戦いの始まりだ!
●少女人形型歪虚を倒せ!
「こちらの連携が上か向こうの方が上か……勝負だな……!」
アルトが伏兵に出ようとするのを確認し、レイアは少女人形型歪虚たちの注意を引きつけるため、正面から戦いを挑んだ。
近付いたことで囁き声が増大し、まるで耳鳴りのようになっている。
一応耳栓をしているものの、まるで効果がない。実際に耳に聞こえているのではなく、魔法的なもののようだ。
乱暴に耳栓を外したレイアへ、少女人形型歪虚たちがうっすらと笑みを浮かべながら近付いてくる。
集中が乱れる事も考慮し、攻めを重視した構えを取ったうえで自分の生体マテリアルを魔導剣に流し込み、強化すると、集団戦を意識して動きながら、大きく踏み込みながら魔導剣で一直線に突きを放ち、返す刃でマテリアルをこめた衝撃波を放つ。
正面からレイアが仕掛けるのを見ながら、アルトはその隙に自身をマテリアルのオーラに紛れさせた。
アルトの全身からマテリアルのオーラが迸り、まるでフィルムの早回しのように残像を纏って加速していく。
踏み足にマテリアルをこめてさらに加速を得たアルトは、周囲の壁を蹴り鋭角的な三次元機動で少女人形型歪虚に襲い掛かる。
加速に追い付かず一拍遅れてアルトの耳元で大音量の囁き声が鳴り響き、すぐに消えた。どうやらまよいが対抗魔法で打ち消すことに成功したようだ。
対する少女人形型歪虚がドレスのスカートをたくし上げる。
ドレスの下の空間が揺らいでたくさんの刃物が現れ、全てボトボトと地面に落ちた。どうやらこれもまよいが対抗魔法で妨害したようである。
蹲って必死に刃物を拾い集める少女人形型歪虚はちょっと焦っているようにも見える。
「貰ったぞ!」
そんな隙を見逃すアルトでもなく、全速力で駆け抜けながら、すれ違いざまにその首を斬り飛ばし、さらにその奥にいた少女人形型歪虚の右腕を断ち斬っていく。
片腕を失った少女人形型歪虚が反撃とばかりに刃物を突き立てようとするが、もうそこにアルトはいなかった。
耳栓が無効ということを知ったアルトは、用済みになったそれを外した。
奇襲を仕掛けたアルトが一体を屠り、もう一体に重症を与えたのをレイアは見た。
同時に聞こえていた囁き声が消える。まよいの尽力だ。
「その隙、逃さん!」
アルトと入れ替わりに片腕の少女人形型歪虚に向けて突撃したレイアは、魔導剣に満ちたオーラを解放する。
魔力により急激な加速を受けた斬撃を、少女人形型歪虚は辛うじて片腕で構えた刃物で受け止めたものの、魔力の放出で強化された重く鋭い一撃によって、構えた刃物ごと両断された。
「うん、予想通り! 対抗魔法で全部解除できるね!」
思い通り事が進んだことで、まよいは上機嫌だった。
見つけるまでならともかく、戦闘中は囁き声など邪魔になるだけ。
なのでまずは対抗魔法で囁き声に干渉して、集中を阻害する効果を打ち消せないか試してみたのだ。
これが想像以上に上手くいき、囁き声自体をカットすることに成功した。
さらに、スカートの中からどうみてもおかしい量の刃物が冗談のように出てくる様を見たまよいは、反射的にそれに対しても対抗魔法で妨害を試みていた。
結果は見ての通り。刃物を落として動揺した一体はあっさりとアルトに始末され、もう一体に重傷を負わせ、それもレイアが止めを刺した。
対抗魔法は連発するのが難しいので、続けざまに動かれていたら難しがっただろうが、少し間が空いていたので対処ができた。
残るは二体。
「当たったら、ちょっと痛いかもしれないよ!」
魔法の矢を作り出したまよいは、残る少女人形型歪虚たちに矢をけしかける。
一体は魔法の矢を叩き落とそうして失敗し、逆に腹を貫かれて消滅したが、最後の一体は手に取った刃物を次々魔法の矢に当てて軌道を逸らしていき、最後には叩き斬った。
「やるね!」
好奇心で目を輝かせるまよいに対し、少女人形型歪虚に余裕は見られない。
無理もなかった。
後衛として動こうと考えていた賢四郎は、すぐさま自分たちの優勢に大きく傾いた戦況に、周辺警戒に注意を割くことにした。
伏兵がいるかもしれないと想定することもそうだが、迷い込む人間がいないとも限らない。
街外れの路地裏といえど、街の中には違いないのだから。
最後の一体になった人形型歪虚は、アルトたちをすり抜けて賢四郎やまよいがいる後衛に突っ込んできた。
捨て鉢な自爆同然の特効は、だからこそ歴戦のハンターたちの虚をつく。
しかし迎え撃つ賢四郎は冷静だった。
「起死回生の手段として、脆そうな自分たち後衛を狙う。順当に考えれば、そう来るよな」
肉薄する少女人形が一矢報いれると思ったのか歓喜の表情を浮かべるのを見て、静かに手を指鉄砲の形に構え、向けた。
指鉄砲の指先に光球が現れ、そこから光の銃弾が放たれる。
目を見開く少女人形型歪虚を撃ち抜いた銃弾は輝きを失い、黒のAと8のツーペアと一枚の伏せられた札に変じた後、粒子となって消滅した。
念のため展開しておいた、マテリアルを変成して作った光の防御壁が、役目を終えてガラスのように割れながら空気中に霧散する。
少女人形型歪虚は隙だらけだ。
「お膳立て感謝するよ!」
堅い獣皮や甲殻を持つ動物霊の力を借りることで自身の防御力を高めたアレイダは、そのまま最後の少女人形型歪虚に祖霊の力を込めた神布を巻いた拳を叩きつけ、大きく振り抜いた。
よろける少女人形型歪虚は最後の悪あがきとばかりにドレスをたくし上げるが、まよいの対抗魔法によって妨害され出てくる刃物は全て地面に散らばる。
さすがに他の個体の行く末を見て学習したのか、少女人形型歪虚は刃物の一つを足で蹴り、浮かせて空中で器用にキャッチした。
「誘き寄せたのがハンターで残念な気分かい? どうやら不用心が過ぎたようだね。しかし自分から居場所を教えてくれたことは感謝するよ。お前たちの命と引き換えに報酬が待っている。潔く散ってくれ、可愛いお嬢さん」
少女人形型歪虚が突き立てようとする刃物を払い除けたアレイダは、握り締めた拳を少女人形型歪虚に叩きつけ、重い一撃により弾き飛ばした。
衝撃で、少女人形型歪虚のドレスが破れ、中の球体関節が露になる。
美しい顔を憎悪に歪ませながら最後の力を振り絞りアレイダに襲い掛かってくる少女人形に、走り寄ったアルトの一撃が命中しガラクタに変えた。
●討伐終了
少女人形型歪虚たちはハンターたちの活躍により無事退治された。
街は平和を取り戻した。
それから、その街で少女人形型歪虚を見かけたという話はハンターズソサエティには伝わっていないし、新たな犠牲者が出たという報告もない。
これにて、依頼解決である。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
---|
面白かった! | 4人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談打ち合わせ 初月 賢四郎(ka1046) 人間(リアルブルー)|29才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2018/10/05 12:56:43 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/10/02 21:50:40 |