ゲスト
(ka0000)
少年の片想い
マスター:びなっす

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~5人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/09/29 07:30
- 完成日
- 2018/10/09 10:23
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●幼馴染みへの恋心
密かに仲の良い幼馴染みマリーに恋心を抱いている少年ティム。
マリーは活発で元気な笑顔がとてもよく似合う女の子だ。
内気なティムとは対照的なマリーに、ティムはいつの間にか特別な感情を抱くようになっていた。
いままでは何も感じなかったことが、今はすべてが特別に思える。
この想いをマリーに伝えたいが、今の関係が壊れるのを恐れて、中々踏み出す事が出来ない。
でも、こうやってマリーの近くにいられるのなら、このままでも良いとさえ思えた。
そんなある日、マリーが大人っぽくて格好いい雰囲気の男子と話しているのを目撃してしまうティム。
そのマリーの楽しそうな表情を見て、ティムは焦りを感じた。
ティムはその男子に嫉妬してしまうが、彼の容姿風貌を見てその気も萎んでいく。
内気で頼りない自分なんかと違い、自信に満ち溢れ、しかも容姿もいい相手。
よくよく考えると、何の取り柄も無い自分より、彼の方がマリーの恋人にふさわしいかもしれない……そう、自分を偽り、毎日を過ごす。
それから数日後、偶然外で出会ったマリーと一緒に談笑する。
この一時がなによりも幸せに感じ、ティムは今まで抱えていた不安のことを忘れてしまう。
そんな時、例の男子が現れた。
彼はティムのことなど意にも介さず、爽やかにマリーへと声を掛ける。
「やあ、マリー。今度一緒に買い物でも行かないかい? 是非、連れて行きたい場所があるんだ」
「え~どうしよっかな~」
マリーは断る素振りも見せず、もったいぶった言い方をする。
その様子に、ティムは激しい焦りを感じた。
このままでは、マリーが手の届かない所へ離れていってしまいそうで……
そう思うと、いても立ってもいられなくなったティムは、突然大声を出しマリーに言う。
「あ、ああのさ! よかったら今度、いっひょに買い物に行かないかい? 良い場所を知ってるんだょ」
緊張のためか早口になり、さらに声も裏返り情けない姿を晒してしまうティム。
そんなティムの様子に、側にいた男子は吹き出してしまっていた。
それでもティムは、必死に言葉を続ける。
「マ、マリーが良かったらだけど……でも、嫌なら別によくて……でも、出来ることなら、一緒に行きたい……んだ」
途中から恥ずかしさのあまり目を閉じながら、精一杯の言葉を紡ぐティム。
その横で、口を手で覆い笑いを堪えようとする男子。
そんな中、マリーはティムに対しケロッとした顔で言った。
「いいね、行こっか。いつがいい?」
「え?」
「は?」
ティムは了承を得られたのが信じられなく、男子の方もただただ驚いていた。
「行かないの? じゃあ、他の人と行こっかな~」
「ちょっと待って!」
ティムは慌てて考える。
後先など考えずに言ってしまったため、予定のことなど全く考えていなかったが……
いやいや、会う日なんていつでもいい。
たとえ別の予定があったとしても、マリーとの時間以上に優先する事なんて無い。
「じゃ、じゃあ、来週の水曜日にしよう!」
土曜や日曜じゃ無く、中途半端な曜日を指定してしまうティム。
だが、マリーは特に気にした様子も無く返事をした。
「分かった。それじゃ、楽しみにしてるよ」
何事も無かったかのように颯爽と去るマリー。
そして取り残されたティムと男子は、2人とも呆然と立ち尽くしていた。
●押し寄せる不安
最近では、2人でいることに意識してしまっていたが……それでも今回のような胸の高鳴りは無かった。
約束の日を思うと、ティムは嬉しすぎてどうにかなってしまいそうだった。
マリーと出掛けること自体は別に珍しいことじゃない。今まで何度も買い物に付き合わされたことがあった。
しかし、今回はこれまでとは毛色が違う。
これは勘違いかもしれないが、マリーはあの男子よりも自分の誘いを選んだ……かも。
それはつまり自分にもチャンスがあるんじゃ無いだろうか……たぶん。
それから色々考えてティムは決心した。
来週の水曜日に、マリーに想いを伝えることを……
だが、それと同時にこの上ない不安と恐怖が襲う。
もし上手くいかなかったら……一度そう思ってしまうと、食事も喉を通らない。
約束の日が近付くごとに、不安はどんどん大きくなり、ティムの心が押し潰されてしまいそうになる。
ついには、自分なんかがマリーに釣り合うはずが無いと思ってしまった。
しかし、マリーを好きだという気持ちも捨てきれない。
そうして数日間を、大きな不安の中で過ごしたティムは、覚束ない足取りで歩き続け、気付けばハンターズソサエティの前に来ていた。
●後日、ハンターオフィスにて
「皆さん、とても大事な依頼です!」
ハンターオフィス内に、女性職員リュゼ=ミシュレンの声が響き渡る。
「この依頼は、雑魔も関係が無い依頼ですので、上の承認を得るのに時間が掛かってしまいました。今回皆さんには愛のキューピッド役をやってもらいます」
突然のリュゼの発言に、周りのハンターは何が何だか分からない顔をする。
「1人の恋に悩める少年のティム君が、大好きな幼馴染みをデートに誘い告白をするそうです。……ただ、その少年というのが、なんとも頼りなく内気な子なんです。このままだと失敗する可能性が高いと言うことで、ここへ依頼を出したようです。それについては、言いにくいですが私も同意です。皆さんからすれば、まともな依頼では無いかも知れませんが……彼はまだ若いのに、相場の報酬分のお金を頑張って用意したんです。かなり本気なんだと思います。私としても、彼が上手くいって欲しいと思っています。どうにかお願いします!」
そういい頭をぺこりと下げるリュゼ。彼女の態度を見るに、本当に少年の事を心配しているようだった。
「あ、ちなみにデートの日は今日で、ティム君はすでに待ち合わせ場所に向かっています」
さりげなく、しれっと言い放つリュゼの言葉に、ハンター達は驚いてしまう。
「仕方がないじゃないですか~最近は緊急性の高い依頼が集中していて、許可が中々降りなかったんです。でも安心して下さい。必要な情報は事前にティム君から根掘り葉掘り聞いています。デートプランもすでに入手済みです! そこはちゃんと分かりやすく、さっきメモにまとめましたので、向かいながら見て下さい」
そう言いながら、リュゼは柄付きの便せんを折ったものをハンター達に渡した。
「では、ティム君の事はお任せします! お土産話、期待していますね」
なにやら、リュゼは状況を楽しんでいるようにも見え、ハンター達は呆れながら待ち合わせの場所に向かった。
密かに仲の良い幼馴染みマリーに恋心を抱いている少年ティム。
マリーは活発で元気な笑顔がとてもよく似合う女の子だ。
内気なティムとは対照的なマリーに、ティムはいつの間にか特別な感情を抱くようになっていた。
いままでは何も感じなかったことが、今はすべてが特別に思える。
この想いをマリーに伝えたいが、今の関係が壊れるのを恐れて、中々踏み出す事が出来ない。
でも、こうやってマリーの近くにいられるのなら、このままでも良いとさえ思えた。
そんなある日、マリーが大人っぽくて格好いい雰囲気の男子と話しているのを目撃してしまうティム。
そのマリーの楽しそうな表情を見て、ティムは焦りを感じた。
ティムはその男子に嫉妬してしまうが、彼の容姿風貌を見てその気も萎んでいく。
内気で頼りない自分なんかと違い、自信に満ち溢れ、しかも容姿もいい相手。
よくよく考えると、何の取り柄も無い自分より、彼の方がマリーの恋人にふさわしいかもしれない……そう、自分を偽り、毎日を過ごす。
それから数日後、偶然外で出会ったマリーと一緒に談笑する。
この一時がなによりも幸せに感じ、ティムは今まで抱えていた不安のことを忘れてしまう。
そんな時、例の男子が現れた。
彼はティムのことなど意にも介さず、爽やかにマリーへと声を掛ける。
「やあ、マリー。今度一緒に買い物でも行かないかい? 是非、連れて行きたい場所があるんだ」
「え~どうしよっかな~」
マリーは断る素振りも見せず、もったいぶった言い方をする。
その様子に、ティムは激しい焦りを感じた。
このままでは、マリーが手の届かない所へ離れていってしまいそうで……
そう思うと、いても立ってもいられなくなったティムは、突然大声を出しマリーに言う。
「あ、ああのさ! よかったら今度、いっひょに買い物に行かないかい? 良い場所を知ってるんだょ」
緊張のためか早口になり、さらに声も裏返り情けない姿を晒してしまうティム。
そんなティムの様子に、側にいた男子は吹き出してしまっていた。
それでもティムは、必死に言葉を続ける。
「マ、マリーが良かったらだけど……でも、嫌なら別によくて……でも、出来ることなら、一緒に行きたい……んだ」
途中から恥ずかしさのあまり目を閉じながら、精一杯の言葉を紡ぐティム。
その横で、口を手で覆い笑いを堪えようとする男子。
そんな中、マリーはティムに対しケロッとした顔で言った。
「いいね、行こっか。いつがいい?」
「え?」
「は?」
ティムは了承を得られたのが信じられなく、男子の方もただただ驚いていた。
「行かないの? じゃあ、他の人と行こっかな~」
「ちょっと待って!」
ティムは慌てて考える。
後先など考えずに言ってしまったため、予定のことなど全く考えていなかったが……
いやいや、会う日なんていつでもいい。
たとえ別の予定があったとしても、マリーとの時間以上に優先する事なんて無い。
「じゃ、じゃあ、来週の水曜日にしよう!」
土曜や日曜じゃ無く、中途半端な曜日を指定してしまうティム。
だが、マリーは特に気にした様子も無く返事をした。
「分かった。それじゃ、楽しみにしてるよ」
何事も無かったかのように颯爽と去るマリー。
そして取り残されたティムと男子は、2人とも呆然と立ち尽くしていた。
●押し寄せる不安
最近では、2人でいることに意識してしまっていたが……それでも今回のような胸の高鳴りは無かった。
約束の日を思うと、ティムは嬉しすぎてどうにかなってしまいそうだった。
マリーと出掛けること自体は別に珍しいことじゃない。今まで何度も買い物に付き合わされたことがあった。
しかし、今回はこれまでとは毛色が違う。
これは勘違いかもしれないが、マリーはあの男子よりも自分の誘いを選んだ……かも。
それはつまり自分にもチャンスがあるんじゃ無いだろうか……たぶん。
それから色々考えてティムは決心した。
来週の水曜日に、マリーに想いを伝えることを……
だが、それと同時にこの上ない不安と恐怖が襲う。
もし上手くいかなかったら……一度そう思ってしまうと、食事も喉を通らない。
約束の日が近付くごとに、不安はどんどん大きくなり、ティムの心が押し潰されてしまいそうになる。
ついには、自分なんかがマリーに釣り合うはずが無いと思ってしまった。
しかし、マリーを好きだという気持ちも捨てきれない。
そうして数日間を、大きな不安の中で過ごしたティムは、覚束ない足取りで歩き続け、気付けばハンターズソサエティの前に来ていた。
●後日、ハンターオフィスにて
「皆さん、とても大事な依頼です!」
ハンターオフィス内に、女性職員リュゼ=ミシュレンの声が響き渡る。
「この依頼は、雑魔も関係が無い依頼ですので、上の承認を得るのに時間が掛かってしまいました。今回皆さんには愛のキューピッド役をやってもらいます」
突然のリュゼの発言に、周りのハンターは何が何だか分からない顔をする。
「1人の恋に悩める少年のティム君が、大好きな幼馴染みをデートに誘い告白をするそうです。……ただ、その少年というのが、なんとも頼りなく内気な子なんです。このままだと失敗する可能性が高いと言うことで、ここへ依頼を出したようです。それについては、言いにくいですが私も同意です。皆さんからすれば、まともな依頼では無いかも知れませんが……彼はまだ若いのに、相場の報酬分のお金を頑張って用意したんです。かなり本気なんだと思います。私としても、彼が上手くいって欲しいと思っています。どうにかお願いします!」
そういい頭をぺこりと下げるリュゼ。彼女の態度を見るに、本当に少年の事を心配しているようだった。
「あ、ちなみにデートの日は今日で、ティム君はすでに待ち合わせ場所に向かっています」
さりげなく、しれっと言い放つリュゼの言葉に、ハンター達は驚いてしまう。
「仕方がないじゃないですか~最近は緊急性の高い依頼が集中していて、許可が中々降りなかったんです。でも安心して下さい。必要な情報は事前にティム君から根掘り葉掘り聞いています。デートプランもすでに入手済みです! そこはちゃんと分かりやすく、さっきメモにまとめましたので、向かいながら見て下さい」
そう言いながら、リュゼは柄付きの便せんを折ったものをハンター達に渡した。
「では、ティム君の事はお任せします! お土産話、期待していますね」
なにやら、リュゼは状況を楽しんでいるようにも見え、ハンター達は呆れながら待ち合わせの場所に向かった。
リプレイ本文
依頼を受けたメンバーは話し合いの結果、ティムの穴だらけのプランをフォローする方向で動いた。
ひとまずGacrux(ka2726)と鞍馬 真(ka5819)は、待ち合わせ場所の噴水広場へと来ていた。
最初に少年と接触を図ろうとしたが、そもそも外見を知らない二人は、それらしい人物を探す。
すると噴水の前で、あからさまに緊張しきっている少年の姿を発見した。
「ガチガチだね。どうにか緊張をほぐしたいところだけど……」
真が少年に近付こうとしたした時、Gacruxが近付いてくる少女の姿に気付いた。
「おや、どうやらその時間は無いようですよ」
少年は過剰に反応しつつ、その少女の元へ駆け寄る。
どうやらあの二人が、今回仲を取り持つ事になった『ティム』と『マリー』で間違いないだろう。
落ち着きのないティムに対し、しれっと落ち着いている少女。
二人の対極的な様子に、見守る方は不安でしかない。
「心配だけど、合流されちゃあ、こっちからは迂闊に近付けないね」
「せっかく移動手段にと自転車も持ってきたのですが……ひとまずは様子をみましょうか」
「そうだね。みんなにも連絡をしておこうかな」
●即席露店
ジェミニー堂がある通りで、レイア・アローネ(ka4082)は着々と露店の準備をしていた。
空き場所の関係で、ジェミニー堂から少し離れた所に店を出すことになってしまったが、突然の事なのでそこは仕方がない。
店に出す品は、ディーナ・フェルミ(ka5843)が見つけてくれた小物店から借りてきた。
売り上げは店に渡す事を条件に、露店に必要なものまで借りることが出来た。
「ふぅ、準備は順調だな。しかし、私のようなのが売り子をやってもいいものか……まよいやディーナみたいな可愛い系が似合うと思うのだが……」
そうは思ったが、二人はそれぞれやる事があるようで別々に動いていた。
忙しいならば仕方が無いと、レイアは無理矢理納得し準備を進める。
一方、臨時休業とは知らずジェミニー堂へ向かっているティムとマリー。
連絡を受けて駆け付けたディーナは、そんな二人に聞こえる様に一芝居を打つ。
「今日はジェミニー堂が休みで残念だったの。でも代わりにそこの露店で可愛いものが買えて満足なの~」
「え? ジェミニー堂が休み!?」
予定していた店が休みという事実に、ティムはひどい焦りを感じてしまっているようだ。
「そこの露店って言ってたよね? あれの事かな?」
その声にハッとしたティムは、マリーの指さす方向を見る。
すると、そこにはポツンと露店が開かれていた。
「面白そうだね。行ってみよっか」
「え、マリー!?」
本当ならリードをするべきだったティムは、マリーに連れられ露店へと向かう。
二人を誘導できた事を確認したディーナは、こっそりと様子を見守ることにした。
準備が終わったばかりのレイアは、店へやってくる二人を迎え入れる。
「うわぁ、可愛いものが一杯だね」
「うん、そうだね。ねぇ、店員さん、おすすめのものってあります?」
「え~と……そうだな……これなんか……いや、こっちの方かな?」
小物の事に疎いのか、突然のマリーの質問に困惑してしまうレイア。
その様子を陰から見ていたディーナは、見ていられなくなりレイアの横から割って入った。
「これなんて、可愛くておすすめなの~」
「……ん? あれ? お姉さん、さっき会わなかったですか?」
「え? き、気のせいなの~」
マリーの疑問に対し、笑ってごまかすディーナ。
マリーは訝しげな顔をしていたが、すぐにアクセサリーの方に目が移る。
「あ、これ、可愛いな~」
マリーが目を留めたのは、猫の形をした赤い石のペンダントだ。
彼女は猫が好きなのか、それを食い入るように見つめている。
それを見たティムは、ここぞとばかりに口を開いた。
「気に入ったのなら、ぼ、ぼぼ僕が買ってあげるよ!」
「いいよ、そんな悪いし。自分のものぐらい自分で買えるよ」
「そ、そうだよね……はは」
あっさりと引き下がるティム。
その様子を見たディーナは、マリーに気付かれないように小声でティムに言う。
「ティム君、それでいいの?」
「え? なんで僕の名前を?」
「ちゃんと自分の気持ちを伝えないと、相手に分からないの!」
「っ!!」
ディーナは依頼の話を聞いて、マリーもティムのことに好意を持っていると判断していた。
なのでタイミングよりも、気持ちを伝えることが重要だと感じ取っていたのだ。
ディーナに言われたティムは、一瞬どうしようか迷っていたが、すぐさまマリーに向き直った。
「マ、マリー、やっぱり僕が買うよ」
「え? だからいいって……」
「僕がマリーに買ってあげたいんだ!」
弱腰のティムの、精一杯の押し。
それにはマリーも以外だったのか、ポカンとした顔をしていた。
それが良くないものと思ったティムは、焦りながら言葉を重ねる。
「いやその……なんていうか」
「えと……それじゃ、お言葉に甘えちゃおっかな」
戸惑いながら言うマリーに対し、ティムは泣きそうな顔を振り払い勢いよく声を上げた。
「う、うん。任せて!」
「……ありがと」
そんな二人のやり取りの中、レイアが突然話を振る。
「そう言えば、この辺りにおいしい料理店があるみたいだな!」
「(レイアさん、話のふりが唐突過ぎなの……)」
レイアの言った店は、ディーナがあちこちに駆け回っている最中に見つけておいた場所だ。
元々、ティムが予約していた高級料理店『リディビア』は、ドレスコードがあるため二人には少し厳しい店だった。
なので、おしゃれで評判も良く、ティム達のような若い人でも気軽にこれるような場所を見つけていた。
「へ~良さそうな所だね。今から行ってみる?」
「あ……でも、店はもう予約してて」
「え? そうなの?」
マリーは予約の事を知らなかったのか、驚いた顔をしている。
サプライズの予定だったのだろうか?
ティムをどうその気にさせるのかに、ディーナは頭を悩ませていると……
「少年!」
レイアが突然、ティムを見据え強い口調で言葉を放つ。
「いいか少年、戦場では臨機応変な立ち回りこそが、勝利を得るのに必要なんだ!」
「(レイアさん、言ってることがめちゃくちゃなの……思ってたよりも緊張してるの……)」
恋愛経験に乏しいレイアは、二人のもどかしい雰囲気にすっかり当てられてしまっていた。
しかし、レイアの言葉に何かを強く感じたのか、ティムは考えを変える。
「うん、マリーが行きたいなら、そっちに行こうか」
「え? でもいいの? 予約してるんでしょ?」
「マ、マリーが喜んでくれる方が大事だよ! せっかく行きたがってたんだし、そっちに行こう!」
●街頭インタビュー
「というわけで、私、夢路 まよい(ka1328)は街の大通りに来ています! ここでカップルに思い出の場所を聞いていきたいと思います!!」
インタビューをする体で、ノリノリなまよい。しかし心の内は真剣だった。
空は相変わらず雲がかかっていて、どけてくれる気配はない。
星空が見えないのでは、高台に行く意味が無い。
どうにかして、代わりの告白の場所を見つけようと、まよいは気合いを入れた。
「あの~そこのラブラブなお兄さん、お姉さん」
「今、色々なカップルにインタビューをしてるんですけど!」
「え? 僕達かい?」
最初に聞いたのは、二十代前半ぐらいのカップルだ。
「ズバリ、お二人の告白の場所はどこでしたか!?」
「え~と、高台の上に星空がよく見えるところがあるんだけど、そこで」
「そ、そうなんですか~……」
最初の一歩目で、まさかの丸かぶりに、まよいは幸先の悪さを感じた。
気を取り直し、まよいは手当たり次第、カップルを見つけては聞いて回った。
「お二人の告白の場所はどこでしたか~?」
「彼の家かな」
「いいですね~」
「一緒に道を歩いてたら突然」
「おぉ、なんか凄い!」
「お墓で肝試ししてる最中に」
「う~ん、マニアック!」
色々な人に聞いて回るが、中々いい場所がない。
この街では、目立った有名なスポットというものが無いようだった。
「う~ん……中々、これっていうところがないな……」
まよいはため息を付きながら、空を見る。
「これじゃ、星は見えないだろうし……どうしよっかな」
その時、またも仲の良さそうな男女を発見した。
今までインタビューをしてきたカップル達と比べると、熟年の男女だ。
参考になるかどうかは分からないが、当たって砕けろの精神で二人に突撃する。
「そこの仲良しで、紳士なおじさま~淑女なおばさま~」
「うん? 私達に何かようかな、お嬢さん?」
「ズバリ、お二人の告白の場所はどこですか!?」
色々なことを端折った質問に困惑しながらも、男性は答える。
「悪いけど、そんな昔のことは覚えてないな」
「ふふ、私はちゃんと覚えてますよ。あの時のアナタったら、全然余裕が無くて一生懸命でしたから」
「な、何を言っているんだ!?」
「そう言えば、あの日もこんな曇り空でしたね」
「そうだったかな?」
「え!? それ、詳しく教えてくれませんか?」
さらりと、“曇り”という単語が出てきたことで、まよいの期待が一気に膨らむ。
もう時間も無かったまよいは、一欠片の希望を胸に、二人の話を聞いた。
●高級料理店『リディビア』
上品で静かな雰囲気の中、スーツを着用してきたGacruxと真は、違和感なく店内に溶け込んでいた。
二人は本来予約していたティムの代わりに、食事に来ていた。
これでキャンセル料の心配もなく、店側にも迷惑は掛からない。
「さて、あの二人は上手く行きそうですか?」
Gacruxは二人の事が気になっているのか、連絡を取り合っている真に訪ねる。
「連絡によると、順調みたいだね。上手く別の料理店にも誘導できたみたいだし」
「それは良かった。後は告白の場所ですね。どうやら雲はどいてくれないようですし」
「そこは、まよい君が頑張って探しているみたいだけど、難しいだろうね」
二人が話していると、持っていた通信機が反応を示した。
「ん、噂をすれば……まよい君から連絡が来たみたいだね」
●少年と接触
ティムは料理店のテーブルで、一人窓の外を見ながら暗鬱な表情をしていた。
食事は既に終えて、マリーは御手洗いに行っている最中なのだが……ティムはこれからのことを思い頭を悩ませる。
予定していた高台で星空を見る計画も、この曇り空では到底無理だろう。
「ティム君、こんばんは」
「うわっ、びっくりした!」
突然の声に驚いたティムの目の前には、まよいの姿と、その後ろには真とGacruxの姿もあった。
「え……と、あなた達は?」
内気なティムを安心させるため、真は穏やかに伝える。
「私達は、君の依頼を受けて来たハンターだよ」
「え? あなた達が? ありがとうございます!」
まよいはさっそく本題を切り出した。
「それでさっそくだけどね、この天気じゃ高台に上っても星が見えないと思うの」
「そう……ですよね」
「だから、行き先を変更してもらいたいんだけど」
「え? どこですか?」
まよいは、その場所をティムに伝える。
「わ、分かりました。でも、そこってここから距離がありますよね?」
すると、後ろで控えていたGacruxが、店の窓の外を指さしながらティムに言った。
「あれを使ってください。外に自転車が用意してあります。彼女には通りがかった親戚の兄貴にでも借りたと言ってください」
「緊張するのは分かるけど落ち着いて、気取った言葉じゃ無くてもいいから、ありのままの気持ちを伝えられたらいいと思うよ」
Gacruxと真の心遣いに、ティムは深く頭を下げた。
「ありがとうございます。とても助かります」
●結果
あれからマリーを説得し、ひたすら目的の場所へ向かって自転車を漕ぐティム。そしてその後ろに乗るマリー。
しばらく走っていると、マリーがティムに問い掛けてきた。
「ここって、湖ぐらいしかないよね? こんな時間に、何しに行くの?」
ここは街の外れなのだが、マリーの言うように、ここで目立つものは湖しかない。
しかも、今のような薄暗い時間帯では、それさえもハッキリとは見えないだろう。
告白に適した場所とはとても思えない。
「え……と、なんでだろう」
「え?」
「いや、きっと何かあるはずだからさ!」
「う~ん……」
心配そうな表情をするマリー。
詳しい話を聞いていなかったティムも、先のことに不安を抱いていた。
そんな二人の不安は、湖に着いた途端に吹き飛んだ。
「え? 何これ?」
「す、すごい……」
そこには星空があった。
暗い湖の上を、無数の光の粒が飛んでいる。
手を伸ばせば掴めそうな程近くにある光の粒。その正体は、光虫だ。
光を放つ虫が集まり、まるで星空の様な光景を湖に作り出していた。
まよいがここの事を知ったのは、あの熟年の二人から得た情報からだった。
ここは普段からあまり人が来ないらしく、夜に来ようと思う物好はほとんどいないそうだ。
あの熟年の夫婦が、その物好きに該当してくれていたおかげで、まよいもこの場所を知ることが出来た。
「こんなの初めて知ったよ」
「うん、僕も」
「クスッ、知らないで来たの?」
「あ……何かあるのは分かってたんだけどさ」
そのまま、湖に広がる星空を見つめる二人。
そんな中、マリーがおもむろに口を開く。
「今日はありがとね、ティム」
「え?」
「ちゃんと私の事を考えてくれてるのが伝わったし、嬉しかった」
「マリーが楽しんでくれて、僕も嬉しいよ」
そこでティムは、ずっと心の内にしまっていた言葉を言おうとする。
「あのさ、マリー!」
「ん? どうしたの?」
「その……僕はマリーのことが……」
「……うん」
「…………」
緊張のせいで、前もって考えていた告白の言葉が消えてしまうティム。
あまりの焦りに気を失いそうな時、真の言葉を思い出し、勢いに任せマリーに想いのままを伝えた。
「マリー! 僕は君のことが大好きなんだ!」
「えっ!?」
「だからその……マリーさえ良ければ、僕と付き合ってください!」
「……やっと言ってくれたか。ずっと待ってたんだよ」
「え? そうなの!?」
「でも、本当に私でいいの?」
「も、もちろん! っていうか、マリーじゃなきゃダメなんだ!」
「そっか……それじゃあ、これからもよろしくね」
マリーはティムの想いに応え、言葉を返す。
すると、ティムはボロボロと目から涙を流してしまっていた。
「ちょっと、そこで泣く!?」
「や、だって安心したら気が抜けて……」
「もう、しょうが無いな~」
その様子を見守っていたハンター達は、達成感に包まれ、仲良く手を繋ぐ二人を穏やかな目で見ていた。
こうして、危なっかしい告白デート計画は、見事大成功に導くことが出来た。
ひとまずGacrux(ka2726)と鞍馬 真(ka5819)は、待ち合わせ場所の噴水広場へと来ていた。
最初に少年と接触を図ろうとしたが、そもそも外見を知らない二人は、それらしい人物を探す。
すると噴水の前で、あからさまに緊張しきっている少年の姿を発見した。
「ガチガチだね。どうにか緊張をほぐしたいところだけど……」
真が少年に近付こうとしたした時、Gacruxが近付いてくる少女の姿に気付いた。
「おや、どうやらその時間は無いようですよ」
少年は過剰に反応しつつ、その少女の元へ駆け寄る。
どうやらあの二人が、今回仲を取り持つ事になった『ティム』と『マリー』で間違いないだろう。
落ち着きのないティムに対し、しれっと落ち着いている少女。
二人の対極的な様子に、見守る方は不安でしかない。
「心配だけど、合流されちゃあ、こっちからは迂闊に近付けないね」
「せっかく移動手段にと自転車も持ってきたのですが……ひとまずは様子をみましょうか」
「そうだね。みんなにも連絡をしておこうかな」
●即席露店
ジェミニー堂がある通りで、レイア・アローネ(ka4082)は着々と露店の準備をしていた。
空き場所の関係で、ジェミニー堂から少し離れた所に店を出すことになってしまったが、突然の事なのでそこは仕方がない。
店に出す品は、ディーナ・フェルミ(ka5843)が見つけてくれた小物店から借りてきた。
売り上げは店に渡す事を条件に、露店に必要なものまで借りることが出来た。
「ふぅ、準備は順調だな。しかし、私のようなのが売り子をやってもいいものか……まよいやディーナみたいな可愛い系が似合うと思うのだが……」
そうは思ったが、二人はそれぞれやる事があるようで別々に動いていた。
忙しいならば仕方が無いと、レイアは無理矢理納得し準備を進める。
一方、臨時休業とは知らずジェミニー堂へ向かっているティムとマリー。
連絡を受けて駆け付けたディーナは、そんな二人に聞こえる様に一芝居を打つ。
「今日はジェミニー堂が休みで残念だったの。でも代わりにそこの露店で可愛いものが買えて満足なの~」
「え? ジェミニー堂が休み!?」
予定していた店が休みという事実に、ティムはひどい焦りを感じてしまっているようだ。
「そこの露店って言ってたよね? あれの事かな?」
その声にハッとしたティムは、マリーの指さす方向を見る。
すると、そこにはポツンと露店が開かれていた。
「面白そうだね。行ってみよっか」
「え、マリー!?」
本当ならリードをするべきだったティムは、マリーに連れられ露店へと向かう。
二人を誘導できた事を確認したディーナは、こっそりと様子を見守ることにした。
準備が終わったばかりのレイアは、店へやってくる二人を迎え入れる。
「うわぁ、可愛いものが一杯だね」
「うん、そうだね。ねぇ、店員さん、おすすめのものってあります?」
「え~と……そうだな……これなんか……いや、こっちの方かな?」
小物の事に疎いのか、突然のマリーの質問に困惑してしまうレイア。
その様子を陰から見ていたディーナは、見ていられなくなりレイアの横から割って入った。
「これなんて、可愛くておすすめなの~」
「……ん? あれ? お姉さん、さっき会わなかったですか?」
「え? き、気のせいなの~」
マリーの疑問に対し、笑ってごまかすディーナ。
マリーは訝しげな顔をしていたが、すぐにアクセサリーの方に目が移る。
「あ、これ、可愛いな~」
マリーが目を留めたのは、猫の形をした赤い石のペンダントだ。
彼女は猫が好きなのか、それを食い入るように見つめている。
それを見たティムは、ここぞとばかりに口を開いた。
「気に入ったのなら、ぼ、ぼぼ僕が買ってあげるよ!」
「いいよ、そんな悪いし。自分のものぐらい自分で買えるよ」
「そ、そうだよね……はは」
あっさりと引き下がるティム。
その様子を見たディーナは、マリーに気付かれないように小声でティムに言う。
「ティム君、それでいいの?」
「え? なんで僕の名前を?」
「ちゃんと自分の気持ちを伝えないと、相手に分からないの!」
「っ!!」
ディーナは依頼の話を聞いて、マリーもティムのことに好意を持っていると判断していた。
なのでタイミングよりも、気持ちを伝えることが重要だと感じ取っていたのだ。
ディーナに言われたティムは、一瞬どうしようか迷っていたが、すぐさまマリーに向き直った。
「マ、マリー、やっぱり僕が買うよ」
「え? だからいいって……」
「僕がマリーに買ってあげたいんだ!」
弱腰のティムの、精一杯の押し。
それにはマリーも以外だったのか、ポカンとした顔をしていた。
それが良くないものと思ったティムは、焦りながら言葉を重ねる。
「いやその……なんていうか」
「えと……それじゃ、お言葉に甘えちゃおっかな」
戸惑いながら言うマリーに対し、ティムは泣きそうな顔を振り払い勢いよく声を上げた。
「う、うん。任せて!」
「……ありがと」
そんな二人のやり取りの中、レイアが突然話を振る。
「そう言えば、この辺りにおいしい料理店があるみたいだな!」
「(レイアさん、話のふりが唐突過ぎなの……)」
レイアの言った店は、ディーナがあちこちに駆け回っている最中に見つけておいた場所だ。
元々、ティムが予約していた高級料理店『リディビア』は、ドレスコードがあるため二人には少し厳しい店だった。
なので、おしゃれで評判も良く、ティム達のような若い人でも気軽にこれるような場所を見つけていた。
「へ~良さそうな所だね。今から行ってみる?」
「あ……でも、店はもう予約してて」
「え? そうなの?」
マリーは予約の事を知らなかったのか、驚いた顔をしている。
サプライズの予定だったのだろうか?
ティムをどうその気にさせるのかに、ディーナは頭を悩ませていると……
「少年!」
レイアが突然、ティムを見据え強い口調で言葉を放つ。
「いいか少年、戦場では臨機応変な立ち回りこそが、勝利を得るのに必要なんだ!」
「(レイアさん、言ってることがめちゃくちゃなの……思ってたよりも緊張してるの……)」
恋愛経験に乏しいレイアは、二人のもどかしい雰囲気にすっかり当てられてしまっていた。
しかし、レイアの言葉に何かを強く感じたのか、ティムは考えを変える。
「うん、マリーが行きたいなら、そっちに行こうか」
「え? でもいいの? 予約してるんでしょ?」
「マ、マリーが喜んでくれる方が大事だよ! せっかく行きたがってたんだし、そっちに行こう!」
●街頭インタビュー
「というわけで、私、夢路 まよい(ka1328)は街の大通りに来ています! ここでカップルに思い出の場所を聞いていきたいと思います!!」
インタビューをする体で、ノリノリなまよい。しかし心の内は真剣だった。
空は相変わらず雲がかかっていて、どけてくれる気配はない。
星空が見えないのでは、高台に行く意味が無い。
どうにかして、代わりの告白の場所を見つけようと、まよいは気合いを入れた。
「あの~そこのラブラブなお兄さん、お姉さん」
「今、色々なカップルにインタビューをしてるんですけど!」
「え? 僕達かい?」
最初に聞いたのは、二十代前半ぐらいのカップルだ。
「ズバリ、お二人の告白の場所はどこでしたか!?」
「え~と、高台の上に星空がよく見えるところがあるんだけど、そこで」
「そ、そうなんですか~……」
最初の一歩目で、まさかの丸かぶりに、まよいは幸先の悪さを感じた。
気を取り直し、まよいは手当たり次第、カップルを見つけては聞いて回った。
「お二人の告白の場所はどこでしたか~?」
「彼の家かな」
「いいですね~」
「一緒に道を歩いてたら突然」
「おぉ、なんか凄い!」
「お墓で肝試ししてる最中に」
「う~ん、マニアック!」
色々な人に聞いて回るが、中々いい場所がない。
この街では、目立った有名なスポットというものが無いようだった。
「う~ん……中々、これっていうところがないな……」
まよいはため息を付きながら、空を見る。
「これじゃ、星は見えないだろうし……どうしよっかな」
その時、またも仲の良さそうな男女を発見した。
今までインタビューをしてきたカップル達と比べると、熟年の男女だ。
参考になるかどうかは分からないが、当たって砕けろの精神で二人に突撃する。
「そこの仲良しで、紳士なおじさま~淑女なおばさま~」
「うん? 私達に何かようかな、お嬢さん?」
「ズバリ、お二人の告白の場所はどこですか!?」
色々なことを端折った質問に困惑しながらも、男性は答える。
「悪いけど、そんな昔のことは覚えてないな」
「ふふ、私はちゃんと覚えてますよ。あの時のアナタったら、全然余裕が無くて一生懸命でしたから」
「な、何を言っているんだ!?」
「そう言えば、あの日もこんな曇り空でしたね」
「そうだったかな?」
「え!? それ、詳しく教えてくれませんか?」
さらりと、“曇り”という単語が出てきたことで、まよいの期待が一気に膨らむ。
もう時間も無かったまよいは、一欠片の希望を胸に、二人の話を聞いた。
●高級料理店『リディビア』
上品で静かな雰囲気の中、スーツを着用してきたGacruxと真は、違和感なく店内に溶け込んでいた。
二人は本来予約していたティムの代わりに、食事に来ていた。
これでキャンセル料の心配もなく、店側にも迷惑は掛からない。
「さて、あの二人は上手く行きそうですか?」
Gacruxは二人の事が気になっているのか、連絡を取り合っている真に訪ねる。
「連絡によると、順調みたいだね。上手く別の料理店にも誘導できたみたいだし」
「それは良かった。後は告白の場所ですね。どうやら雲はどいてくれないようですし」
「そこは、まよい君が頑張って探しているみたいだけど、難しいだろうね」
二人が話していると、持っていた通信機が反応を示した。
「ん、噂をすれば……まよい君から連絡が来たみたいだね」
●少年と接触
ティムは料理店のテーブルで、一人窓の外を見ながら暗鬱な表情をしていた。
食事は既に終えて、マリーは御手洗いに行っている最中なのだが……ティムはこれからのことを思い頭を悩ませる。
予定していた高台で星空を見る計画も、この曇り空では到底無理だろう。
「ティム君、こんばんは」
「うわっ、びっくりした!」
突然の声に驚いたティムの目の前には、まよいの姿と、その後ろには真とGacruxの姿もあった。
「え……と、あなた達は?」
内気なティムを安心させるため、真は穏やかに伝える。
「私達は、君の依頼を受けて来たハンターだよ」
「え? あなた達が? ありがとうございます!」
まよいはさっそく本題を切り出した。
「それでさっそくだけどね、この天気じゃ高台に上っても星が見えないと思うの」
「そう……ですよね」
「だから、行き先を変更してもらいたいんだけど」
「え? どこですか?」
まよいは、その場所をティムに伝える。
「わ、分かりました。でも、そこってここから距離がありますよね?」
すると、後ろで控えていたGacruxが、店の窓の外を指さしながらティムに言った。
「あれを使ってください。外に自転車が用意してあります。彼女には通りがかった親戚の兄貴にでも借りたと言ってください」
「緊張するのは分かるけど落ち着いて、気取った言葉じゃ無くてもいいから、ありのままの気持ちを伝えられたらいいと思うよ」
Gacruxと真の心遣いに、ティムは深く頭を下げた。
「ありがとうございます。とても助かります」
●結果
あれからマリーを説得し、ひたすら目的の場所へ向かって自転車を漕ぐティム。そしてその後ろに乗るマリー。
しばらく走っていると、マリーがティムに問い掛けてきた。
「ここって、湖ぐらいしかないよね? こんな時間に、何しに行くの?」
ここは街の外れなのだが、マリーの言うように、ここで目立つものは湖しかない。
しかも、今のような薄暗い時間帯では、それさえもハッキリとは見えないだろう。
告白に適した場所とはとても思えない。
「え……と、なんでだろう」
「え?」
「いや、きっと何かあるはずだからさ!」
「う~ん……」
心配そうな表情をするマリー。
詳しい話を聞いていなかったティムも、先のことに不安を抱いていた。
そんな二人の不安は、湖に着いた途端に吹き飛んだ。
「え? 何これ?」
「す、すごい……」
そこには星空があった。
暗い湖の上を、無数の光の粒が飛んでいる。
手を伸ばせば掴めそうな程近くにある光の粒。その正体は、光虫だ。
光を放つ虫が集まり、まるで星空の様な光景を湖に作り出していた。
まよいがここの事を知ったのは、あの熟年の二人から得た情報からだった。
ここは普段からあまり人が来ないらしく、夜に来ようと思う物好はほとんどいないそうだ。
あの熟年の夫婦が、その物好きに該当してくれていたおかげで、まよいもこの場所を知ることが出来た。
「こんなの初めて知ったよ」
「うん、僕も」
「クスッ、知らないで来たの?」
「あ……何かあるのは分かってたんだけどさ」
そのまま、湖に広がる星空を見つめる二人。
そんな中、マリーがおもむろに口を開く。
「今日はありがとね、ティム」
「え?」
「ちゃんと私の事を考えてくれてるのが伝わったし、嬉しかった」
「マリーが楽しんでくれて、僕も嬉しいよ」
そこでティムは、ずっと心の内にしまっていた言葉を言おうとする。
「あのさ、マリー!」
「ん? どうしたの?」
「その……僕はマリーのことが……」
「……うん」
「…………」
緊張のせいで、前もって考えていた告白の言葉が消えてしまうティム。
あまりの焦りに気を失いそうな時、真の言葉を思い出し、勢いに任せマリーに想いのままを伝えた。
「マリー! 僕は君のことが大好きなんだ!」
「えっ!?」
「だからその……マリーさえ良ければ、僕と付き合ってください!」
「……やっと言ってくれたか。ずっと待ってたんだよ」
「え? そうなの!?」
「でも、本当に私でいいの?」
「も、もちろん! っていうか、マリーじゃなきゃダメなんだ!」
「そっか……それじゃあ、これからもよろしくね」
マリーはティムの想いに応え、言葉を返す。
すると、ティムはボロボロと目から涙を流してしまっていた。
「ちょっと、そこで泣く!?」
「や、だって安心したら気が抜けて……」
「もう、しょうが無いな~」
その様子を見守っていたハンター達は、達成感に包まれ、仲良く手を繋ぐ二人を穏やかな目で見ていた。
こうして、危なっかしい告白デート計画は、見事大成功に導くことが出来た。
依頼結果
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相談卓 Gacrux(ka2726) 人間(クリムゾンウェスト)|25才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/09/29 06:35:41 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/09/28 18:49:04 |